説明

電磁振動を遮断したスピンドルユニット

【課題】モータによる電磁振動をスピンドルシャフトに伝達させないようにする。
【解決手段】ロータ7がスピンドルシャフト2と直結され、ステータハウジング6に備えた電磁コイル8がロータ7を回転させる構成のスピンドルユニット1において、端面ホルダ10bと2個以上の側面ホルダ10aとスピンドルハウジング3とでステータハウジング6を囲い、それぞれに設けた噴出口100、101、300から噴出されるエアによって非接触状態でステータハウジングを支持する。ステータハウジング6がスピンドルハウジング3に接触していないため、モータ5から発生する電磁振動を遮断して電磁振動がスピンドルシャフト2に伝達されるのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによる電磁振動を遮断したスピンドルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置に搭載されるスピンドルユニットは、モータの駆動によってスピンドルを高速回転させて工具を回転させるように構成されている。
【0003】
しかし、モータ本体をスピンドル本体部に直結している構造では、モータの駆動により発生する電磁振動がスピンドル本体部に伝達されて、所望の加工結果を得られないという問題がある。そこで、モータから発生する電磁振動を低減させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−323193号公報
【特許文献2】特開2009−254012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、モータ本体をスピンドル本体部に直結している構造では、モータの駆動により発生する電磁振動がスピンドル本体部に伝達されるため、スピンドルによる回転振動であるかのような現象が発生し、被加工物の加工結果に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、モータから発生する電磁振動を遮断し、当該電磁振動をスピンドル本体部に伝達させないスピンドルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転軸であるスピンドルシャフトをラジアル方向及びスラスト方向からエアで支持するエアベアリングと、エアベアリングにエアを供給するための複数の噴出口を持つスピンドルハウジングと、ロータとステータハウジングとから構成され回転駆動源となるモータと、ロータと直結されたスピンドルシャフトと、を備えたエアスピンドルユニットに関するもので、ステータハウジングは、ロータの回転軸を中心軸とし、中心部分がくり貫かれた円筒形状に形成され、内壁には2個以上の電磁コイルが配設されロータの外壁を囲う形に配置され、ステータハウジングが中心軸に対して垂直な方向に動作すること及び中心軸を中心として回転方向に動作することを静止する回転静止手段と、ステータハウジングが軸方向に動作することを静止する軸方向静止手段と、を備え、回転静止手段は、ステータハウジングの中心軸に向けてエアを噴出する複数の噴出口を備え、スピンドルハウジングの外壁に固定されステータハウジングの外壁を囲う2個以上の離間した側面ホルダにより構成され、軸方向静止手段は、ステータハウジングの軸方向の一方の面に向けてエアを噴出する噴出口を備えるとともに側面ホルダに連結されステータハウジングの軸方向の一方の面に対面する端面ホルダと、スピンドルハウジングに形成されステータハウジングの軸方向の他方の面に対してエアを噴出する複数の噴出口とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、回転静止手段及び軸方向静止手段によってステータハウジングが静止されるように支持されるとともに、ステータハウジングとスピンドルハウジングとが非接触となるため、モータから発生する電磁振動を遮断することができ、電磁振動がスピンドルシャフトに伝達されなくなる。したがって、スピンドルシャフトの振動を抑制することができ、電磁振動のバランス修正をする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】スピンドルユニットの一例を示す縦断面図である。
【図2】スピンドルユニットの一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すスピンドルユニット1は、回転軸となるスピンドルシャフト2と、スピンドルシャフト2を非接触状態で支持するスピンドルハウジング3とを備えている。スピンドルシャフト2の上端には、スピンドルシャフト2を回転駆動するための回転駆動源となるモータ5が装着されている。モータ5は、スピンドルシャフト2の上端部に直結されたロータ7と、ロータ7を回転駆動する電磁コイル8と、電磁コイル8を支持するステータハウジング6とから構成されている。
【0011】
スピンドルシャフト2の下端部には、工具を装着するためのマウント15が装着されている。マウント15には、基台14aの下部に複数の砥石14bが固着された構成の研削ホイール14がネジ16によって固定されている。
【0012】
スピンドルハウジング3は、円筒形状に形成され、スピンドルシャフト2を軸方向に貫通させるための軸穴2aを有しており、この軸穴2aにスピンドルシャフト2が挿通されている。スピンドルシャフト2の外周面とスピンドルハウジング3の軸穴2aの内周面との間には隙間が形成されている。また、スピンドルハウジング3の軸穴2aの内周面には、スピンドルシャフト2の軸心に向けてエアを噴出する噴出口120が複数形成されている。
【0013】
スピンドルシャフト2の下部には、スピンドルシャフト2の軸方向に直交する平面を有する円板状のスラストプレート2bが設けられている。スラストプレート2bは、スピンドルシャフト2よりも外径が大きく形成されている。また、スピンドルハウジング3には、スラストプレート2bに向けて軸方向にエアを噴出する噴出口130が複数形成されている。
【0014】
スピンドルハウジング3には、スピンドルシャフト2を支持するためのエアベアリングを備えている。ここで、エアベアリングは、スピンドルシャフト2をラジアル方向に支持するラジアルベアリング12とスラスト方向に支持するスラストベアリング13とから構成される。ラジアルベアリング12は軸穴2aの内周面に形成された噴出口120からエアを噴出し、スラストベアリング13は、スラストプレート2bに対面する噴出口130からエアを噴出する。
【0015】
ラジアルベアリング12及びスラストベアリング13を構成する噴出口120、130は、それぞれエア流路18aを介してスピンドルハウジング3の外壁3aに設けられたエア供給口18に連通している。したがって、エア供給口18から導入されたエアがエア流路18aを通って噴出口120、130から噴出されることにより、スピンドルシャフト2を非接触状態で回転可能に支持している。また、噴出口120、130から噴出されたエアは、スピンドルハウジング2の一端に形成された排出口180、181から排出される。
【0016】
ステータハウジング6は、図1に示すように、スピンドルハウジング3の上方に配置されており、ロータ7の回転軸である中心軸4を有している。図2(a)及び(b)に示すように、ステータハウジング6は、その中心部分が貫かれて円筒形状に形成されており、当該くり貫かれた領域にロータ7が挿通されている。
【0017】
ステータハウジング6の内壁、すなわち、円筒形状にくり抜かれた領域の内壁には、2個以上の電磁コイル8が備えられており、ロータ7の外壁を囲うようにして配設されている。
【0018】
図1に示すように、スピンドルハウジング3の外壁3aには、側面ホルダ10aが固定されている。側面ホルダ10aには、ステータハウジング6の中心軸4に向けてエアを噴出することができる複数の噴出口100が形成されており、複数の噴出口100によって回転静止手段400が構成されている。噴出口100は、ステータハウジング6の内部に形成されたエア流路17aを介してエア供給口17に連通しており、エア供給口17から流入するエアを噴出する。回転静止手段400は、噴出口100からエアを噴出することにより、ステータハウジング6が中心軸4に対して垂直な方向に動作することを静止するとともに、中心軸4を中心として回転方向に動作することを静止する機能を有する。
【0019】
図2(a)に示すように、ステータハウジング6の外周側においては、断面L字型の2個の側面ホルダ10aが離間してステータハウジング6の外壁6aを囲んでいる。
【0020】
図1に示すように、側面ホルダ10aの端部には、端面ホルダ10bが連結されている。端面ホルダ10bは、ステータハウジング6の軸方向の一方の面である端面6bに対面しており、当該端面6bに向けてエアを噴出する噴出口101を複数備えている。噴出口101は、エア流路17aを介してエア供給口17に連通しており、エア供給口17から流入するエアを噴出する。
【0021】
また、エア供給口17は、エア流路17aを介してスピンドルハウジング3の内部に形成されたエア流路30に連通しており、エア流路30は、スピンドルハウジング3の一方の端面に形成された噴出口300に連通している。噴出口300は、ステータハウジング6の軸方向の他方の面6cに対してエアを噴出する。なお、ステータハウジング6に形成されたエア流路17aとスピンドルハウジング3に形成された流路30とを連通させずに、エア供給口18と噴出口300とを連通させ、エア供給口18から流入するエアを噴出口300から噴出させるようにしてもよい。
【0022】
端面ホルダ10bと、スピンドルハウジング3に形成された噴出口300とで、軸方向静止手段500が構成されている。軸方向静止手段500は、ステータハウジング6が軸方向に動作することを静止する機能を有している。
【0023】
このように構成されるエアスピンドルユニット1においては、モータ5を構成する電磁コイル8に交流電力を印加することによりロータ7が回転し、ロータ7に連結されたスピンドルシャフト2も回転し、スピンドルシャフト2に装着された研削ホイール14が回転して砥石14bによって研削加工を行うことができる。
【0024】
モータ5は、回転静止手段400を構成する側面ホルダ10aに形成された噴出口100、軸方向静止手段500を構成する端面ホルダ10bに形成された噴出口101及びスピンドルハウジング3に形成された噴出口300から噴出されるエアによって非接触状態で支持されているため、モータ5の作動によりモータ5に電磁振動が生じたとしても、その電磁振動がスピンドルハウジング3に伝わることはない。また、ステータハウジング6が静止状態で支持されるため、ロータ7の振動を抑制することができる。したがって、モータ5の電磁振動がスピンドルシャフト2に伝わることがないため、電磁振動のバランス修正が不要となる。
【0025】
なお、図2(b)に示すように、ステータハウジング6の外周側においては、断面L字型の4個の側面ホルダ10aが離間してステータハウジング6の外壁6aを囲んでいる構成としてもよい。
【0026】
上記の実施形態では、スピンドルユニット1に研削ホイール14を装着した例について説明したが、本発明に係るスピンドルユニット1を搭載する装置は、研削装置に限定されるものではない。例えば切削装置などの他の装置にもスピンドルユニット1を搭載することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:スピンドルユニット
2:スピンドルシャフト 2a:スラストプレート 2b:軸穴
3:スピンドルハウジング 3a:外壁 30:エア流路 300:噴出口
4:中心軸
5:モータ
6:ステータハウジング 6a:外壁 6b:一方の面(端面) 6c:他方の面
7:ロータ
8:電磁コイル
10a:側面ホルダ 100:噴出口
10b:端面ホルダ 101:噴出口
12:ラジアルベアリング 120:噴出口
13:スラストベアリング 130:噴出口
14:研削ホイール 14a:基台 14b:砥石
17:エア供給口 17a:エア流路
18:エア供給口 18a:エア流路
180、181:エア排出口
400:回転静止手段
500:軸方向静止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸であるスピンドルシャフトをラジアル方向及びスラスト方向からエアで支持するエアベアリングと、該エアベアリングにエアを供給するための複数の噴出口を持つスピンドルハウジングと、ロータとステータハウジングとから構成され回転駆動源となるモータと、該ロータと直結されたスピンドルシャフトと、を備えたエアスピンドルユニットにおいて、
該ステータハウジングは、該ロータの回転軸を中心軸とし、中心部分がくり貫かれた円筒形状に形成され、内壁には2個以上の電磁コイルが配設され該ロータの外壁を囲う形に配置され、
該ステータハウジングが該中心軸に対して垂直な方向に動作すること及び該中心軸を中心として回転方向に動作することを静止する回転静止手段と、
該ステータハウジングが軸方向に動作することを静止する軸方向静止手段と、
を備え、
該回転静止手段は、該ステータハウジングの中心軸に向けてエアを噴出する複数の噴出口を備え、該スピンドルハウジングの外壁に固定され該ステータハウジングの外壁を囲う2個以上の離間した側面ホルダにより構成され、
該軸方向静止手段は、該ステータハウジングの軸方向の一方の面に向けてエアを噴出する噴出口を備えるとともに該側面ホルダに連結され該ステータハウジングの該軸方向の一方の面に対面する端面ホルダと、該スピンドルハウジングに形成され該ステータハウジングの軸方向の他方の面に対してエアを噴出する複数の噴出口と、を備えた
エアスピンドルユニット。

【図1】
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【図2】
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