説明

電磁振動フィーダの駆動制御方法及びその装置

【課題】変位検出手段の取り付け状態にかかわらず、確実に共振点追従制御を行える電磁振動フィーダの駆動制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】電磁石3の電磁コイル4に入力される電流または電圧と可動部の振動変位との位相差を検出して位相差が所定値となるように、電磁コイル4に入力される電流または電圧の周波数を変化させて可動部を共振振動させる電磁振動フィーダの駆動制御方法において、共振振動させる制御に先立ち、所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、電磁コイル4へ電流を入力する周波数掃引を行い、周波数掃引中の電磁コイル4に入力される電流または電圧と可動部の振動変位との位相差の変化を検出し、その位相差の変化に基づいて電磁コイル4に入力される電流または電圧の周波数を上昇方向に変化させる第1態様とするか、下降方向に変化させる第2態様とするかを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁振動フィーダの駆動制御方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁振動フィーダの一例である振動パーツフィーダは、ボウルと基台とを板ばねで結合したものである。そして、可動部としてのボウルには磁性体から構成された接極子が取り付けられている。一方、基台には、前記接極子に空隙をおくようにして電磁石が取り付けられている。このように構成された振動パーツフィーダは、電磁コイルに交流電流を流すことで電磁石が励磁され、この励磁された電磁石と前記接極子との間に交番磁気吸引力が発生して、ボウルを振動させる。
【0003】
このような振動パーツフィーダでは、ボウルを共振振動させることにより、電磁コイルへの入力電流に対してボウルの振幅を最大にできる。そのため、ボウルを共振振動させることがエネルギー効率の点で好ましい。
【0004】
そこで、ボウルの振動変位と電磁石の電磁コイルに入力される電流または電圧との位相差を検出して、この位相差が所定値(この所定値は、例えば電流を基準とした場合では、図3に示すように90度となる)となるように、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を変化させ、当該周波数を共振周波数(例えば電流を基準とした場合の共振周波数は、図3に示すω0となる)に近づけるような制御(共振周波数の探査制御)を行い、ボウルを共振振動させる(特許文献1参照)。この制御を「共振点追従制御」という。
【0005】
なお、前記共振点追従制御を行うためには、ボウルの振動変位を検出する必要がある。そのため、振動パーツフィーダには、振動センサ等の変位検出手段が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4066480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、この変位検出手段は、振動パーツフィーダへの取り付け状態によって、ボウルの振動変位が同一であるにもかかわらず、検出される結果が異なってしまう場合がある。例えば、板ばねに対して変位検出手段を図1に示した「P」の位置に取り付けた場合と「P'」の位置に取り付けた場合とでは、検出される結果が異なる。以下、一の取り付け状態を「第1の取り付け状態」と称し、他の取り付け状態を「第2の取り付け状態」と称する。
【0008】
具体的に述べると、変位検出手段の振動パーツフィーダへの取り付け状態により、変位検出手段で検出される振動変位の位相が角度で言うと180度分ずれてしまう(図6における、振動変位についての実線表記の検出波形と破線表記の検出波形との関係を参照)。
【0009】
すなわち、変位検出手段の振動パーツフィーダへの取り付け状態が第1の取り付け状態である場合には、電磁コイルに接極子が吸引されることで両者が近づく際において、変位検出手段で検出される振動変位が正の方向に検出されるものとする(第1の関係)。前記関係を前提とすると、変位検出手段の振動パーツフィーダへの取り付け状態が第2の取り付け状態である場合には、前記第1の関係とは逆に、変位検出手段で検出される振動変位が負の方向に検出される(第2の関係)。このように、第1の関係と第2の関係とでは、電磁コイルと接極子との間に働く力(磁気吸引力)の位相と、変位検出手段で検出される振動変位の位相との関係が、図6における実線表記の検出波形と破線表記の検出波形のように、逆の関係となる。
【0010】
ちなみに、前記第1の関係を、電磁コイルと接極子との間に働く力(磁気吸引力)の位相と振動変位の位相とが一致する関係にあることから「同相」と称することがある(例えば、図4Bに示す電磁コイルに入力される電流(位相が前記磁気吸引力の位相と一致する)の時間的変化と、図4Cに示す振動変位の時間的変化との関係を参照)。また、前記第2の関係を、前記各位相が逆になる関係にあることから「逆相」と称することがある。
【0011】
このため、変位検出手段の検出結果を用いて求められたボウルの振動変位の位相と、電磁コイルに入力される電流または電圧の位相との位相差が、見かけ上同じであったとしても、前記第1の関係(仮に図6における実線表記の位相の波形とする)の場合と第2の関係(同破線表記の位相の波形とする)の場合とでは、共振周波数の探査アルゴリズム、つまり、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数が共振周波数よりも低いために電流または電圧の周波数を上昇方向に変化させて共振周波数の探査を行う(第1態様)べきか、電流または電圧の周波数が共振周波数よりも高いために電流または電圧の周波数を下降方向に変化させて共振周波数の探査を行う(第2態様)べきかの選択が異なってくる。
【0012】
そのため、第1態様か第2態様かの選択を誤れば、検出された位相差に応じて電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を変化させても、当該周波数が共振周波数に近づかず、むしろ共振振動の状態から遠ざかってしまうことがある。この場合では、共振点追従制御は正常に行えず、共振振動を実現できない。
【0013】
そこで本発明は、変位検出手段の取り付け状態にかかわらず、確実に共振点追従制御を行える、電磁振動フィーダの駆動制御方法及びその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、可動部と基台とがばねで結合され、前記可動部あるいは前記基台に電磁石が取り付けられた電磁振動フィーダに対し、前記電磁石の電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差を検出して、当該位相差が所定値となるように、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、上昇方向に変化させる第1態様、または、下降方向に変化させる第2態様のいずれかにて変化させて前記可動部を共振振動させる電磁振動フィーダの駆動制御方法において、前記可動部を共振振動させる制御を行うに先立ち、所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、前記電磁コイルへと電流を入力する周波数掃引を行い、前記周波数掃引中の、前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差の変化を検出し、前記検出した位相差の変化に基づいて、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、前記第1態様とするか第2態様とするかを選択することを特徴としている。
【0015】
前記方法によると、周波数掃引中の、電磁コイルに入力される電流または電圧と可動部の振動変位との位相差の変化を検出し、前記検出した位相差の変化に基づいて、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、第1態様とするか第2態様とするかを選択する。このため、可動部を共振振動させる制御を行う際に、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、上昇方向に変化させる(第1態様)か、または、下降方向に変化させる(第2態様)かを正確に選択できる。
【0016】
また、本発明においては、前記周波数掃引中の、前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差が、減少していくか増加していくかにより、電磁振動フィーダに取り付けられて前記可動部の振動変位を検出する変位検出手段の、前記可動部に対する取り付け状態が第1の取り付け状態であるか、第2の取り付け状態であるかを判別し、前記判別結果により、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、前記第1態様とするか第2態様とするかを選択するものとすることが好ましい。
【0017】
前記好ましい方法によると、周波数掃引中の、電磁コイルに入力される電流または電圧と可動部の振動変位との位相差が、減少していくか増加していくかにより、電磁振動フィーダに取り付けられて前記可動部の振動変位を検出する変位検出手段の、前記可動部に対する取り付け状態が第1の取り付け状態であるか、第2の取り付け状態であるかを判別し、前記判別結果により、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、前記第1態様とするか第2態様とするかを選択する。このため、この判別結果を用いて、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数の選択を正確に行うことができる。
【0018】
そして、本発明においては、前記周波数掃引は、周波数を一方向に下降または上昇させる途中に、前記可動部の共振周波数が含まれるようになされることが好ましい。
【0019】
前記好ましい構成によると、電磁振動フィーダが、例えば、共振周波数を挟み位相差が急激に変化するような特性を有していても、共振周波数を挟むように周波数掃引がなされるから、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数の選択を正確に行うことができる。
【0020】
また、本発明においては、可動部と、基台と、前記可動部及び前記基台を結合するばねと、前記可動部あるいは前記基台に取り付けられた電磁石とを有する電磁振動フィーダに設けられ、前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差の変化を検出する位相差検出手段と、所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、前記電磁コイルへと電流を入力する周波数掃引を行う際の前記位相差の変化に基づいて、前記可動部が共振振動するように、前記電磁コイルに周波数を上昇方向または下降方向に変化させて電流を入力する可変周波数電源とを有する。
【0021】
前記構成によると、電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差の変化を検出する位相差検出手段と、所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、前記電磁コイルへと電流を入力する周波数掃引を行う際の前記位相差の変化に基づいて、前記可動部が共振振動するように、前記電磁コイルに周波数を上昇方向または下降方向に変化させて電流を入力する可変周波数電源とを有する。このため、可動部を共振振動させる制御を行う際に、周波数を上昇方向に変化させるか、または、下降方向に変化させるかを正確に選択して、電磁コイルに電流を入力できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、可動部を共振振動させる制御を行う際に、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、上昇方向に変化させる(第1態様)か、または、下降方向に変化させる(第2態様)かを正確に選択できる。このため、確実に共振点追従制御を行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による振動パーツフィーダ及びこの駆動制御用の共振点追従制御回路を共に示すブロック図である。
【図2】図1における共振点追従制御回路の詳細を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態の、周波数に対する力(電流)の変位と振動変位との位相差の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態を示すグラフであり、Aは電磁コイルに入力される電圧の時間的変化、Bは電磁コイルに入力される電流の時間的変化、Cは共振周波数より低い周波数で駆動されるときの振動変位の時間的変化、Dは共振周波数より高い周波数で駆動されるときの振動変位の時間的変化を示す。
【図5】本発明の一実施形態の、初期セットアップ及び共振点追従制御を示すフロー図である。
【図6】変位検出手段で検出される振動変位の位相がずれた例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0025】
本実施形態では、電磁振動パーツフィーダとして、図1に示す振動パーツフィーダが適用される。図示していないが、この振動パーツフィーダには、平面視において円形のボウル1内の内周壁部にスパイラル状にトラックが形成されている。ボウル1は下方の基台2に対し等角度及び等間隔で配設されたばね(板ばね)5により結合されている。そして、基台2には電磁コイル4を備えた電磁石3が固定されている。一方、ボウル1には接極子(図示しない)が取り付けられている。そして、振動パーツフィーダ全体は防振ゴム6を介して床上に設置されている。
【0026】
変位検出手段としての振動ピックアップPは板ばね5の近傍に設けられている。この振動ピックアップPとして、本実施形態では渦電流式近接センサが用いられているが、変位検出手段の種類はこれに限定されない。例えば、その他原理による検出を行う変位センサ、加速度センサを挙げることができる。
【0027】
この振動ピックアップPは、共振点追従制御回路7に電線路W1を介して接続されている。更に、共振点追従制御回路7と電磁石3の電磁コイル4とは電線路W2を介して接続されている。
【0028】
本実施形態の振動ピックアップPは、図1にて実線表記された方の板ばね5の上端近傍に設けられている。しかし、例えば、この板ばね5の下端近傍等、他の位置に設けられていても良い。また、図1で破線表記された板ばね5(実線表記された板ばね5の180度反対側に設けられている)の近傍に設けられたものであっても良い(振動ピックアップP'として図示)。また、ボウル1の近傍に設けられたものであっても良い。
【0029】
図2は、図1における共振点追従制御回路7の詳細を示すものである。この共振点追従制御回路7は、主として、可変周波数電源10、位相検出回路11、メモリ15及び定振幅制御回路22、そして、振動ピックアップ取付状態判別部31を備えている。
【0030】
可変周波数電源10には、図1にも示されるように、交流電源8がスイッチSを介して接続されており、この可変周波数電源10の出力は定振幅制御回路22及び増幅器12を介して電磁石3の電磁コイル4に入力される。また、図1における振動ピックアップPの出力は電線路W1を介して増幅器13に入力される。そして、この増幅器13による増幅出力は切替スイッチ32を介して位相検出回路11に入力される。つまり、振動ピックアップPにより得られた板ばね5の振動変位の位相は、位相検出回路11に入力される。
【0031】
位相検出回路11は、後述する切替スイッチ32の二つの接点x1,x−1の切り替えに応じ、当該位相検出回路11で検出される振動変位の波形(正弦波)が、切り替え前とは逆波形となるようにされている。また、位相検出回路11には、更に増幅器12の出力(電圧)が電線路W3を介して入力されている。つまり、増幅器12の出力(電圧)は、位相検出回路11に入力される。そして、位相検出回路11の出力は可変周波数電源10及び振動ピックアップ取付状態判別部31に入力される。なお、本実施形態の位相検出回路11は電圧を検出するものであるが、電流を検出するものであっても良い。
【0032】
ところで、本実施形態によれば、可変周波数電源10に定振幅制御回路22が接続されている。そして、この定振幅制御回路22には、所定の振幅指令を与えるための振幅指令回路21が接続されている。この定振幅制御回路22には更に、振動ピックアップPの出力が電線路W1及び増幅器13を介して入力されている。また、可変周波数電源10には、スイッチSを入れた後、前回の駆動終了時に記憶した共振周波数がメモリ15から供給され、スイッチSが入ると共にこの記憶されていた周波数の電流を、可変周波数電源10から定振幅周波数制御回路22を介して増幅器12側に入力する。
【0033】
また、可変周波数電源10と位相検出回路11とには振動ピックアップ取付状態判別部31が接続されている。また、増幅器13と位相検出回路11との間には切替スイッチ32が設けられている。この切替スイッチ32は、接点x1と接点x−1とで接続を切り替えることができるものであり、振動ピックアップ取付状態判別部31により切り替えの操作がなされる。
【0034】
次に、この振動パーツフィーダの駆動手順について、フロー図である図5を示しつつ説明する。
【0035】
振動パーツフィーダのユーザーがスイッチSを入れると、交流電源8が可変周波数電源10に接続される。そして、可変周波数電源10からの電流は増幅器12を介して電磁石3の電磁コイル4に入力される。この電流の入力により、電磁石3に交番磁気吸引力が発生するため、板ばね5により支持されたボウル1に捩り振動が発生する。振動ピックアップPは板ばね5の振動変位を検出し、この振動変位の検出値が増幅器13により増幅されて位相検出回路11に入力される。また、位相検出回路11は、この際における増幅器12と電磁コイル4との間の電圧を検出する。
【0036】
振動パーツフィーダの初期セットアップを行う際(振動パーツフィーダの最初の運転に先立つ調整の際)、あるいは、改造・分解点検等の後に再セットアップを行う際には、振動パーツフィーダにユーザーによる初期セットアップ指示がなされたことを条件として(ステップS11)、まず、周波数掃引が行われる(ステップS12)。
【0037】
周波数掃引とは、可変周波数電源10から増幅器12を介し、電磁コイル4に対して、所定の上限値と下限値との間で周波数を下降または上昇させつつ、電流を入力することを言う。本実施形態では、全波出力の上限周波数(180Hz)から下限周波数(90Hz)まで、可変周波数電源10の電源周波数を一方向に(途中で上昇させることなく)下降させて電磁コイル4に電流が入力される。この際、上限周波数と下限周波数との間には、可動部(ボウル)1の共振周波数(設計上の共振周波数)が含まれるようになされる。
【0038】
位相検出回路11は、電磁コイル4へ入力される電圧を検出する。そして、この位相検出回路11は、前記電圧の入力位相と、振動ピックアップPにより得られた板ばね5の振動変位の位相との位相差も検出する。つまり、本実施形態における位相検出回路11は、電磁コイル4に入力される電圧と、振動ピックアップPにより得られた板ばね5の振動変位との位相差を検出する位相差検出手段として機能する。
【0039】
振動ピックアップ取付状態判別部31は、上限周波数から下限周波数まで周波数を下降させる周波数掃引中の位相差の変化(より詳しくは、位相差が減少していくか(図3上の矢印aの変化)、増加していくか(図3上の矢印bの変化))を検出する(ステップS13)ことにより、振動ピックアップPの取り付け状態を判別する。言い換えると、図3に示す、位相差の変化を示す曲線の傾きが負か(図3上の矢印aの変化)、正か(図3上の矢印bの変化)を検出し、例えば、図1に示した振動ピックアップPの取り付け状態か、あるいは振動ピックアップP'の取り付け状態かを判別する。なお、前記各取り付け状態は、課題欄にて述べた第1の取り付け状態、第2の取り付け状態のうちいずれかに対応する。
【0040】
ここで、振動ピックアップPの取り付け状態が、前記第1の取り付け状態(電磁コイルに働く力(吸引力)の位相と振動変位の位相が一致する関係(「第1の関係」、「同相」とも言う))である場合は、前記の上限周波数から下限周波数までの周波数掃引に伴い、位相差は減少していく。
【0041】
これに対し、前記第2の取り付け状態(電磁コイルに働く力(吸引力)の位相と振動変位の位相が逆になる関係(第2の関係、「逆相」とも言う))である場合は、上限周波数から下限周波数までの周波数掃引に伴い、位相差は増加していく。
【0042】
このように、第1の取り付け状態と第2の取り付け状態とで、周波数掃引中の位相差の変化(図3上の曲線の傾き)が異なる。よって、振動ピックアップ取付状態判別部31は、前記位相差の変化を検出することにより、振動ピックアップPの取り付け状態の判別をすることができる。
【0043】
前記判別により、振動ピックアップ取付状態判別部31は、切替スイッチ32を、第1の取り付け状態の場合は接点x1で接続し(ステップS14)、第2の取り付け状態の場合には接点x−1で接続する(ステップS15)。この接点切り替えにより、位相検出回路11では、検出される振動変位の波形(正弦波)が、切り替え前とは逆波形となるようにされている。つまり、図6における検出波形を例とすると、切り替え前に例えば実線表記であった波形が、切り替え後は破線表記の波形(実線表記とは上下が逆となった波形)として位相検出回路11で検出される。本実施形態では、波形は正弦波であるので、逆波形とはすなわち、振動変位の位相を角度で言うと180度分ずらしたのと同じ波形となる。
【0044】
ここで、図3は、力の周波数ω(本実施形態では、可変周波数電源10から増幅器12を介して電磁コイル4へ向かう電流Iの周波数)に対する、電流Iとボウル1の振動変位との位相差φの関係を示したものである。図3で実線表示したように、位相差φは180度から0度まで変化し、周波数ωが大きい方が大きい位相差となる。図上、ω0は共振点における周波数(共振周波数)を示し、共振点での位相差φは90度となる。なお、図3において、C1、C2、C3は振動系の粘性係数を表しており、C3>C2>C1である。また、図3における破線表示は、前述した第2の取り付け状態における、電流Iとボウル1の振動変位との位相差φの関係を、第1の取り付け状態と比較するために便宜上示したものである。これは、位相検出回路11に入力される振動変位の波形が、変位検出手段Pの振動パーツフィーダへの取り付け状態により逆の波形になった場合に対応している。
【0045】
また、図4Aは、電磁コイル4へ入力される電圧Vの時間的変化を示したものである。図4Bは、電磁コイル4へ入力される電流Iの時間的変化を示したものである。いずれも、波形は正弦波となる。また、回路中に電磁コイル4が存在することにより、電圧の位相と電流の位相とには角度で言うと90度のずれが生じる。
【0046】
初期セットアップ等は前述のようにして行われ、その後、以下のように共振点追従制御が行われる。
【0047】
続いて、共振点追従制御について、フロー図である図5を示しつつ説明する。初期セットアップが既に終わっており、振動パーツフィーダに初期セットアップ指示がされなかった場合は、振動パーツフィーダを起動させた直後に、この共振点追従制御を開始する状態となる。
【0048】
まず、電磁コイル4へ入力される電圧(または電流)、及び、振動ピックアップPにより得られた板ばね5の振動変位の位相を検出する(ステップS21)。そして、前記電圧(または電流)の位相と振動変位の位相との位相差が所定値であるか判断する(ステップS22)。
【0049】
つまり、電磁コイル4へ入力される電流Iにより、電磁石3とボウル1に固定された接極子との間に交番磁気吸引力が発生する。このため、ボウル1に捩り振動が発生する。この際の振動変位S1が、図4Cに示すように電流Iの変位(図4B)と一致する場合には各変位の位相差φが0度となる(なお、電圧Vの変位(図4A)に対しては振動変位S1との位相差φが90度となる)。この位相差は所定値、本実施形態では、図3に示す、共振点における周波数(共振周波数)ω0における力(電流)と振動変位との位相差φ90度より小さい。この場合には、位相検出回路11が周波数を上昇させるべきであると判断して可変周波数電源10の出力周波数を上昇させる(ステップS23)。これにより、電磁石3の電磁コイル4には増幅器12を介して上昇させた周波数の電流が入力される。これにより、より高い周波数でボウル1が振動する。この際、電磁コイル4に入力される電流の周波数は共振点における周波数ω0により近づいたことから、ボウル1の振幅はより大きくなる。
【0050】
可変周波数電源10の出力周波数が更に上昇して共振点における周波数ω0を通過した場合、最終的には、図4Dに示すように、振動変位S2と電流Iの変位との関係は位相差φで180度となる(なお、電圧Vの変位(図4A)に対しては位相差φが270度となる)。このように、可変周波数電源10の出力周波数が共振点における周波数ω0を通過した場合には、位相差が所定値(本実施形態では90度)より大きくなるため、位相検出回路11が周波数を下降させるべきであると判断して可変周波数電源10の出力周波数を下降させる(ステップS24)。
【0051】
振動パーツフィーダに終了指示がなされない場合には、以上のようにして、可変周波数電源10が出力周波数を上昇及び下降させることを繰り返し(ステップS22〜S25の繰り返し)、ついには、ボウル1が共振点で振動し、この振動パーツフィーダは共振周波数で駆動するようになる。この際、振動パーツフィーダのボウル1内のスパイラルトラック(図示しない)では、部品が所定の姿勢になるように部品整列手段により整列される。部品は、この整列された状態で次工程に供給される。
【0052】
ここで、前記可変周波数電源10の出力周波数の変化については、共振周波数の探査を行うべく、電磁コイル4に入力される電流(または電圧)の周波数を、上昇方向に変化させる態様(第1態様)と、下降方向に変化させる態様(第2態様)とが挙げられる。前記のようにして初期セットアップ等が行われたことにより、振動ピックアップPの取り付け状態が第1の取り付け状態であるか第2の取り付け状態であるかは、既に判別されている。よって、共振点追従制御が行われる際には、図3に示すように、あらかじめ定められている、判別された振動ピックアップPの取り付け状態(第1の取り付け状態、第2の取り付け状態)に対応した、電流または電圧の周波数と位相差との関係を基準に、可変周波数電源10が、前記第1態様または第2態様にて、電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を変化させて振動パーツフィーダを共振周波数で駆動させる。
【0053】
一方、ユーザーが、振動パーツフィーダの駆動を停止させるべくスイッチSを切ると(つまり、振動パーツフィーダに終了指示がなされた場合)、可変周波数電源10からの出力はなくなり、ボウル1の振動は停止する(ステップS25)。この際、フロー図には記載していないが、不揮発性のメモリ15にはスイッチSを切る前の可変周波数電源10の出力周波数が記憶される。
【0054】
そして、振動パーツフィーダを再び駆動開始すべく、スイッチSを入れるとメモリ15で記憶されている共振周波数を出力すべく可変周波数電源10が駆動される。従って、振動パーツフィーダのボウル1は、スイッチSが入った時点から一定の共振周波数で駆動される。従って、再度の駆動の場合において、強制振動から共振周波数に移るときのショックがなくなり、また電源容量を小さくすることができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、本実施形態では、電磁振動フィーダとして直線的ねじり振動を行なう振動パーツフィーダについて説明したが、楕円振動パーツフィーダにも本発明は適用可能である。この場合には、垂直加振用板ばね、水平用加振板ばね及び垂直加振用電磁石及び水平加振用電磁石を有し、両加振力で得られる両振動変位の間に所定の位相差をもたせて楕円振動を行なわせるのであるが、この一方の駆動部、例えば水平加振力側に本発明を適用してもよい。また、直線的な振動を行なうリニア振動フィーダにも本発明は適用可能である。
【0057】
また、本実施形態では、前述のように振動パーツフィーダの初期セットアップを行う際に、振動ピックアップPの取り付け状態が第1の取り付け状態であるか第2の取り付け状態であるかを判別した上、この判別結果を用いて、これ以降、振動パーツフィーダを運転する際に共振点追従制御がなされるものとされている。しかし、本発明はこのように取り付け状態の判別が明確になされる態様に限られるものではない。例えば、電磁コイル4に入力される電流または電圧と可動部(ボウル)1の振動変位との位相差を検出し、周波数掃引中の前記位相差の変化を検出して、この検出された位相差の変化に基づいて直接(振動ピックアップPの取り付け状態を判別することなく)、共振点追従制御がなされる態様であっても良い。
【0058】
また、前記振動ピックアップ取付状態判別部31は、周波数掃引中の位相差の減少・増加を検出できれば良い。そのため、この振動ピックアップ取付状態判別部31は、周波数掃引中に位相検出回路11によって検出された、異なる時間における位相差の値を少なくとも二点だけ用いることにより、振動ピックアップPの取り付け状態の判別を行うことも可能である。
【0059】
また、本実施形態では、位相検出回路11が可変周波数電源10の出力周波数を決定するため、周波数を検出するための手段が設けられていない(周波数は常に位相検出回路11で把握されている)が、外乱等により可変周波数電源10の出力周波数が変動してしまう可能性がある場合には、別途、周波数を検出するための手段を設けても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 可動部、ボウル
2 基台
3 電磁石
4 電磁コイル
5 ばね
10 可変周波数電源
11 位相検出回路
31 取付状態判別手段、振動ピックアップ取付状態判別部
P 変位検出手段、振動ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と基台とがばねで結合され、前記可動部あるいは前記基台に電磁石が取り付けられた電磁振動フィーダに対し、前記電磁石の電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差を検出して、当該位相差が所定値となるように、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、上昇方向に変化させる第1態様、または、下降方向に変化させる第2態様のいずれかにて変化させて前記可動部を共振振動させる電磁振動フィーダの駆動制御方法において、
前記可動部を共振振動させる制御を行うに先立ち、所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、前記電磁コイルへと電流を入力する周波数掃引を行い、
前記周波数掃引中の、前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差の変化を検出し、
前記検出した位相差の変化に基づいて、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、前記第1態様とするか第2態様とするかを選択することを特徴とする電磁振動フィーダの駆動制御方法。
【請求項2】
前記周波数掃引中の、前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差が、減少していくか増加していくかにより、電磁振動フィーダに取り付けられて前記可動部の振動変位を検出する変位検出手段の、前記可動部に対する取り付け状態が第1の取り付け状態であるか、第2の取り付け状態であるかを判別し、
前記判別結果により、前記電磁コイルに入力される電流または電圧の周波数を、前記第1態様とするか第2態様とするかを選択することを特徴とする請求項1に記載の電磁振動フィーダの駆動制御方法。
【請求項3】
前記周波数掃引は、周波数を一方向に下降または上昇させる途中に、前記可動部の共振周波数が含まれるようになされることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁振動フィーダの駆動制御方法。
【請求項4】
可動部と、基台と、前記可動部及び前記基台を結合するばねと、前記可動部あるいは前記基台に取り付けられた電磁石とを有する電磁振動フィーダに設けられ、
前記電磁コイルに入力される電流または電圧と前記可動部の振動変位との位相差の変化を検出する位相差検出手段と、
所定の上限値と下限値との間で周波数を一方向に下降または上昇させつつ、前記電磁コイルへと電流を入力する周波数掃引を行う際の前記位相差の変化に基づいて、前記可動部が共振振動するように、前記電磁コイルに周波数を上昇方向または下降方向に変化させて電流を入力する可変周波数電源とを有する電磁振動フィーダの駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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