説明

電磁放射を用いた選択的焼結によって少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末から製造される三次元物体の特定の機械特性を操作すること

【課題】粉末の電磁放射を用いた選択的焼結プロセスによってポリマー材料の粉末から製造される三次元物体の提供。
【解決手段】三次元物体は、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結プロセスによってポリマー材料の粉末から製造される。ここで、粉末は予め選択されたポリマー又はコポリマーを含み、且つ製造される三次元物体が、特性のバランス、特にヤング係数、引張強度及び破断伸びを含む機械特性を改善するような範囲の最終結晶性を有するように、粉末に選択的焼結を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、粉末が、少なくとも1つのポリマー材料を含み、且つ製造される三次元物体が、電磁放射を用いた従来の選択的焼結と比べて効果的に低い結晶性を有するような三次元物体を製造する方法に関する。さらに、本発明は、上記方法により得られる三次元物体、上記方法のための装置、及び上記方法における予め選択されたポリマー粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から既知であるように、電磁放射を用いた選択的焼結による三次元物体を製造する方法は、電磁放射線源を用いて層状に(layer-wise)実行される。このような方法において、三次元物体は、粉末層を塗布すること、及び物体の横断面に対応する層位置における粉末の選択的固化によってそれらを互いに結着することにより層状に製造される。
【0003】
図1は、三次元物体の層状製造法を実施し得るレーザー焼結装置の一例を示している。図1から明らかなように、装置は容器1を備える。この容器の頂部は開いており、且つ形成される物体3を支持する支持体4によって底部は制限されている。容器の上縁2によって(又はその側壁によって)、作業面6が画定、規定される。物体は、支持体4の上面に配置され、且つ電磁放射を用いて固化させることができる粉末形態の構築材料の複数の層から形成される。ここで、これらの層は支持体4の上面と平行である。支持体は、高さ調節装置を介して鉛直方向、即ち、容器1の側壁と平行に移動し得る。これにより、作業面6に対して支持体4の位置を調節することができる。
【0004】
容器1、又はむしろ作業面6の上には、固化する粉末材料11を支持体表面5又は事前に固化した層上に塗布するために塗布装置10が設けられている。また、指向性光ビーム(directed light beam)8を発光するレーザー7のような照射装置を作業面6の上方に配置する。光ビーム8は、回転鏡等の偏向装置9によって作業面6に向かう偏向ビーム8’として方向付けられる。制御ユニット40は、支持体4、塗布装置10及び偏向装置9を制御することを可能にする。これらの部材(items)1〜6、10及び11は、機械フレーム100内に配置されている。
【0005】
三次元物体3を製造する際、粉末材料11を、支持体4又は事前に固化した層上に層状に塗布し、物体に対応する各粉末層の位置でレーザービーム8’を用いて固化させる。層の各選択的固化後、続いて塗布される粉末層の厚み分だけ支持体を下げる。
【0006】
上記システムを比較されるべき、電磁放射を用いた選択的焼結によって三次元物体を製造する方法及び装置の多くの変更形態が存在し、使用されている。例えば、レーザー及び/又は光ビームを用いる代わりに、例えばマスク露光システム等に使用される電磁放射を選択的に送出する他のシステムを用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第44 10 046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリマー粉末の電磁放射を用いて選択的に焼結するこれまでの方法では、製造される物体の機械特性に十分な関心が払われてこなかった。
【0009】
したがって、本発明の物体は、製造される物体の機械特性を改善できる、ポリマー粉末の電磁放射を用いて選択的焼結によって三次元物体を製造する方法の改良を提供することである。
【0010】
本発明によれば驚くべきことに、製造された三次元物体が、特定範囲の結晶性を有することが観察された場合、限定するものではないが、高い剛性、高い圧縮強度、高い衝撃強度、高い最大引張強度及び曲げ強度、並びに高い破断伸び及び高い加熱撓み温度を含む或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善が得られると共に、他方で、良好な化学薬品耐性及び後結晶化による低い後収縮等の反力又はトレードオフ特性のバランスが保たれることが見出された。さらに驚くべきことに、特に、焼結後の冷却期間に関する特定プロセス条件、及び予め選択されるポリマー材料に関する特定の選択基準がそれぞれ単独で又は組み合わされて、上記機械特性及びバランス特性の十分な改善に寄与することが見出された。さらに、製造される三次元物体における制御された結晶性と低い多孔性とを備えた著しく改善された組合せを達成することができ、上記特性のさらなる改善が与えられる。本発明の利点は、ポリアリールエーテルケトンポリマー又はポリアリールエーテルケトンコポリマーをポリマー粉末のポリマー材料として適切に使用する場合に、又はポリアミドポリマー又はポリアミドコポリマーをポリマー粉末のポリマー材料として適切に使用する場合に特に実現可能である。さらに、本発明の利点は、結晶度が複合体のポリマーマトリクスに関する複合体にも適している。かかる複合体は、各ポリマー、コポリマー又は配合物のマトリクスに加えて、1つ又は複数のフィラー及び/又は添加剤を含む。
【0011】
例えば射出成形のようなポリマーの加圧加工を伴う典型的なポリマー加工技術に対する好ましい代替法として、本発明による方法は、固化可能な粉末材料から形成される物体の連続層をその後、物体の横断面に対応する位置で電磁放射により固化する付加的なプロセスにおいて層状に実行することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の項目に概説されるような本発明の様々な態様、有益な特徴及び好ましい実施形態はそれぞれ単独で又は組み合わされて、本発明の課題の解決に寄与する。
【0013】
(1)粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、粉末が、予め選択されたポリマー又はコポリマーを含み、且つ製造される三次元物体が、ヤング係数、引張強度及び破断伸びの機械特性全体のバランスを改善するような範囲の最終結晶性を有するように、粉末に選択的焼結を施す、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法。ポリマー又はコポリマーのヤング係数は、好ましくは少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも1000MPa、及び特に少なくとも2000MPaであり、引張強度は、好ましくは20MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、及び特に少なくとも40MPaであり、且つ破断伸びは、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも5%、及び特に少なくとも20%である。
【0014】
より具体的な値を提示すると、例えば、ポリアリールエーテルケトンポリマー及びポリアリールエーテルケトンコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも3000MPa、より好ましくは少なくとも3500MPa、及び特に少なくとも4000MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも70MPa、及び特に少なくとも90MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも3%、及び特に少なくとも5%であり、且つ、ポリアミドポリマー及びポリアミドコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1500MPa、さらにより好ましくは少なくとも2500MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも45MPa、及び特に少なくとも70MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも40%、及び特に少なくとも60%である。
【0015】
(2)単独又は上記(1)と組み合わされる、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、粉末が、予め選択されたポリマー又はコポリマーを含み、且つ製造される三次元物体が、80%以下、好ましくは50%以下、特に5%〜70%、より好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%の最終結晶性を有するように、粉末に選択的焼結を施す、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法。
【0016】
(3)固化可能な粉末材料から形成される物体の層が、物体の横断面に対応する位置で連続的に固化する、(1)又は(2)に記載の方法。
【0017】
(4)電磁放射をレーザーにより供給する、項目(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
(5)焼結工程の完了後に規定の且つ/又は制御された冷却工程を含む、項目(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
(6)製造される三次元物体が、10%未満、好ましくは5%未満、及びより好ましくは3%未満、最も好ましくは2%未満の多孔性を有する、項目(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
(7)ポリマー又はコポリマーを含む粉末は、100℃〜450℃、好ましくは150℃〜400℃、及びより好ましくは250℃〜400℃の範囲の融点Tを有する、項目(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
(8)ポリマー又はコポリマーが、少なくとも10000、好ましくは20000〜200000、及びより好ましくは20000〜100000の分子量M、又は20000、好ましくは30000〜500000、及びより好ましくは30000〜200000のMを有する、項目(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
(9)ポリマー又はコポリマーが、好ましくは10〜10000、より好ましくは20〜5000、及び特に50〜1000の重合度を有する、項目(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
(10)ポリマー又はコポリマーが、主鎖に、好ましくは主鎖の繰り返し単位の少なくとも1つに少なくとも1つの芳香族基を含む、項目(1)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
(11)芳香族基が互いに独立して、非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素を示す、項目(10)に記載の方法。
【0025】
(12)芳香族基がそれぞれ及び独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’−ターフェニレン、並びに2,2−ジ−(4−フェニレン)プロパンから成る群から選択される、項目(10)又は(11)に記載の方法。
【0026】
(13)芳香族基が1つ又は複数の側鎖で置換される、項目(10)〜(12)に記載の方法。
【0027】
(14)側鎖がそれぞれ独立して、C1〜C6直鎖又は分岐鎖又は環状アルキル及びアルコキシ基、並びにアリール基の群から選択される、項目(10)〜(13)に記載の方法。
【0028】
(15)側鎖がそれぞれ独立して、メチル、イソプロピル、t−ブチル又はフェニルから選択される、項目(13)又は(14)に記載の方法。
【0029】
(16)ポリマー又はコポリマーの主鎖の末端基を修飾する、項目(1)〜(15)のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
(17)少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーの配合物を使用する、項目(1)〜(16)のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
(18)配合物の1つの構成成分が、製造される物体の最終結晶性を低減させる、(17)に記載の方法。
【0032】
(19)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー及び配合物から成る群から選択される、項目(1)〜(18)のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
(20)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー及び配合物から成る群から選択される、項目(1)〜(19)のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
(21)ポリマー又はコポリマーが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)及びポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー及び配合物から成る群から選択されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)である、項目(1)〜(20)のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
(22)ポリマー又はコポリマーが、PEEK、PEK、PEKEKK、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー及び配合物の群から選択されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)である、項目(1)〜(21)のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
(23)コポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)コポリマーである、項目(1)〜(22)のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
(24)PAEK/PAESコポリマー中のスルホン基の量とケト基の量との比率が50:50〜10:90の範囲である、(23)に記載の方法。
【0038】
(25)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)コポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEKトリブロックコポリマーから成る群から、好ましくは(PEK)/(PES)ジブロックコポリマー及びPEK/PES/PEKトリブロックコポリマーから成る群から選択される、(23)又は(24)に記載の方法。
【0039】
(26)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマー又はコポリマーが、少なくとも9000、好ましくは10000〜100000、より好ましくは15000〜50000、及び最も好ましくは20000〜35000の分子量M、又は20000〜500000、好ましくは40000〜200000、及びより好ましくは50000〜125000のMを有する、(19)〜(25)のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
(27)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマー又はコポリマーが、0.05kNs/m〜1.0kNs/m、好ましくは0.15kNs/m〜0.6kNs/m、及び特に0.2kNs/m〜0.45kNs/mの範囲の溶融粘度を有する、(20)〜(26)のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
(28)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマー又はコポリマーが、好ましくは10〜1000、より好ましくは20〜500、及び特に40〜250の重合度nを有する、(19)に記載の方法。
【0042】
(29)ポリマー又はコポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)であり、製造される三次元物体が、5%〜45%、好ましくは10%〜40%、より好ましくは15%〜35%、さらにより好ましくは15%〜30%、及び最も好ましくは20%〜25%の最終結晶性を有する、(19)〜(28)のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
(30)ポリマー又はコポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)であり、製造される三次元物体が、少なくとも1.24g/cm、より好ましくは1.26g/cm、さらにより好ましくは1.28g/cmであり、且つ最も好ましくは1.30g/cmを超える密度を有する、(19)〜(29)のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
(31)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド(PA)であり、製造される三次元物体が、10%〜50%、より好ましくは15%〜40%、さらにより好ましくは15%〜35%、及び最も好ましくは20%〜30%の最終結晶性を有する、(19)に記載の方法。
【0045】
(32)ポリアミド(PA)ポリマー又はコポリマーが、主鎖の少なくとも1つの繰り返し単位を有し、少なくとも1つの脂肪鎖の長さが、好ましくはC4〜C18、より好ましくはC6〜C12、及び特にC10〜C12の範囲である、(31)に記載の方法。
【0046】
(33)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド(PA)であり、製造される三次元物体が、少なくとも0.90g/cm、より好ましくは0.95g/cm、及び特に1.00g/cmの密度を有する、(32)に記載の方法。
【0047】
(34)物体の完成後に、物体を、粉末により構成されるポリマー又はコポリマーのTよりも低い1℃〜50℃、より好ましくは1℃〜30℃、さらにより好ましくは1℃〜20℃、及び最も好ましくは1℃〜10℃である温度から、粉末により構成されるポリマー又はコポリマーのTへと、0.01℃/分〜10℃/分、好ましくは0.1℃/分〜5℃/分、より好ましくは1℃/分〜5℃/分の冷却速度で冷却させる工程を含み、それぞれ、Tは粉末により構成されるポリマー又はコポリマーの溶融温度であり、且つTはそのガラス転移温度である、項目(1)〜(33)のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
(35)粉末の電磁放射を用いた選択的焼結工程によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、粉末が、少なくとも1つのポリマー又はコポリマー材料を含み、前記方法が、焼結工程の完了後に規定の且つ/又は制御された冷却工程を含む、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結工程によって粉末から三次元物体を製造する方法。
【0049】
(36)製造される三次元物体が、ヤング係数、引張強度及び破断伸びの機械特性全体のバランスを改善するような範囲の最終結晶性を有するように、冷却工程を規定及び/又は制御する、(34)又は(35)に記載の方法。ポリマー又はコポリマーのヤング係数は、好ましくは少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも1000MPa、及び特に少なくとも2000MPaであり、引張強度は、好ましくは少なくとも20MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、及び特に少なくとも40MPaであり、且つ破断伸びは、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも5%、及び特に少なくとも20%である。より具体的な値を提示すると、例えば、ポリアリールエーテルケトンポリマー及びポリアリールエーテルケトンコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも3000MPa、より好ましくは少なくとも3500MPa、及び特に少なくとも4000MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも70MPa、及び特に少なくとも90MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも3%、及び特に少なくとも5%であり、且つ、ポリアミドポリマー及びポリアミドコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1500MPa、さらにより好ましくは少なくとも2500MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも45MPa、及び特に少なくとも70MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも40%、及び特に少なくとも60%である。
【0050】
(37)製造される物体の最終結晶性が80%以下、好ましくは50%以下、特に5%〜70%、より好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%である、(35)又は(36)に記載の方法。
【0051】
(38)上記冷却工程は、物体の完成後に、物体を、粉末により構成されるポリマー又はコポリマーのTよりも低い1℃〜50℃、より好ましくは1℃〜30℃、及び最も好ましくは1℃〜10℃である温度から、粉末により構成されるポリマー又はコポリマーのTへと、0.01℃/分〜10℃/分、好ましくは0.1℃/分〜5℃/分、より好ましくは1℃/分〜5℃/分の冷却速度で冷却させ、それぞれ、Tは粉末により構成されるポリマー又はコポリマーの溶融温度であり、且つTはそのガラス転移温度である、項目(35)〜(37)のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
(39)ポリマー又はコポリマーが(7)〜(33)に規定されるようなものである、(35)〜(38)のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
(40)電磁放射を用いて粉末形態のポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の選択的焼結により得られる三次元物体であって、最終結晶性が、ヤング係数、引張強度及び破断伸びの機械特性全体のバランスを改善するような範囲である、電磁放射を用いて粉末形態のポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の選択的焼結により得られる三次元物体。ポリマー又はコポリマーのヤング係数は、好ましくは少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも1000MPa、及び特に少なくとも2000MPaであり、引張強度は、好ましくは少なくとも20MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、及び特に少なくとも40MPaであり、且つ破断伸びは、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも5%、及び特に少なくとも20%である。より具体的な値を提示すると、例えば、ポリアリールエーテルケトンポリマー及びポリアリールエーテルケトンコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも3000MPa、より好ましくは少なくとも3500MPa、及び特に少なくとも4000MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも70MPa、及び特に少なくとも90MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも3%、及び特に少なくとも5%であり、且つ、ポリアミドポリマー及びポリアミドコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1500MPa、さらにより好ましくは少なくとも2500MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも45MPa、及び特に少なくとも70MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも40%、及び特に少なくとも60%である。単独で又は(40)と組み合わされる、電磁放射を用いて粉末形態のポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の選択的焼結により得られる三次元物体であって、最終結晶性が、80%以下、好ましくは50%以下、特に5%〜70%、より好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%である、三次元物体。
【0054】
(41)ポリマー又はコポリマーが(7)〜(33)に規定されるようなものである、(40)に記載の三次元物体。
【0055】
(42)粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する装置であって、物体の製造が完了した後、物体に対して予め規定された冷却を行うための温度制御装置を備える、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する装置。
【0056】
(43)粉末材料に応じて温度制御装置を設定する、(42)に記載の装置。
【0057】
(44)粉末材料により構成されるポリマー、コポリマー又はポリマー配合物の種類に応じて温度制御装置を設定する、(42)又は(43)に記載の装置。
【0058】
(45)選択的電磁放射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用であって、ポリマーが、製造される物体の最終結晶性を下げるように予め選択される、選択的電磁放射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用。
【0059】
(46)ヤング係数、引張強度及び破断伸びの機械特性全体のバランスが改善するように結晶性を下げる、(45)に記載の使用。ポリマー又はコポリマーのヤング係数は、好ましくは少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも1000MPa、及び特に少なくとも2000MPaであり、引張強度は、好ましくは少なくとも20MPa、より好ましくは少なくとも30MPa、及び特に少なくとも40MPaであり、且つ破断伸びは、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも5%、及び特に少なくとも20%である。
【0060】
より具体的な値を提示すると、例えば、ポリアリールエーテルケトンポリマー及びポリアリールエーテルケトンコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも3000MPa、より好ましくは少なくとも3500MPa、及び特に少なくとも4000MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも70MPa、及び特に少なくとも90MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも3%、及び特に少なくとも5%であり、且つ、ポリアミドポリマー及びポリアミドコポリマーでは、ヤング係数が、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1500MPa、さらにより好ましくは少なくとも2500MPaであり、引張強度が、好ましくは少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも45MPa、及び特に少なくとも70MPaであり、且つ破断伸びが、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも40%、及び特に少なくとも60%である。
【0061】
(47)最終結晶性が80%以下、好ましくは50%以下、特に5%〜70%、より好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%となるように、結晶性を下げる、(45)又は(46)に記載の使用。
【0062】
(48)予め選択されたポリマーが(7)〜(33)に規定されるようなものである、(45)〜(47)のいずれか1つに記載の使用。
【0063】
(49)ポリマーがさらに、製造される三次元物体の多孔性を下げるように予め選択される、(45)〜(48)のいずれか1つに記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】三次元物体の層状製造のためのレーザー焼結装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法を改良するために、機械特性が改善された三次元物体を製造するのに特に好適な重要因子を見出すような大規模な一連の試験を本発明者らによって行った。
【0066】
それにより、ポリマー粉末材料の選択的焼結によって製造される三次元物体の或る特定の機械特性が、製造される物体の結晶性を限定する場合に、及び特に、得られる結晶性を特定の範囲内に調節する場合に有意に改善されることが見出された。驚くべきことに、これにより、限定するものではないが、高い剛性、高い圧縮強度、高い衝撃強度、高い最大引張強度及び曲げ強度、並びに高い破断伸び及び高い加熱撓み温度を含む或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善がもたらされると共に、他方で、良好な化学薬品耐性及び後結晶化による低い後収縮等のトレードオフ特性のバランスが良好に保たれる。さらに、製造される物体の多孔性の減少が実現可能となり、これは、製造される物体の機械特性の改善にさらに寄与する。
【0067】
少なくとも1つのポリマーを含む粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって製造される物体は一般的に、例えば射出成形のような典型的なポリマー加工技術によって製造される物体よりも実質的に高い結晶度を有する。即ち、少なくとも1つのポリマーを含む粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法において、図1に例示されるようなタイプの例に関して、本発明による結晶性の調節を行わなければ、このように製造される物体の結晶度は顕著なものとなる傾向にある。詳細には、層状構築プロセスでは、ポリマーの融点T未満の約1℃〜50℃、好ましくは1℃〜30℃、さらにより好ましくは1℃〜20℃、及び最も好ましくは1℃〜10℃である高い粉末床温度が一般に用いられる。物体は典型的に、比較的高い加工温度にかなりの時間曝され、さらに通常非常に長い冷却時間を経る。構築プロセス中の局部(part)のカールを防止するか又は最小限に抑えるには、連続層の良好な結合をもたらし、粉末粒子の不適切な溶融に起因する孔の形成が最小限に抑えるために、加工温度をポリマー粉末の融点付近に維持しなければならない。その結果、粉末床の温度が、全構築プロセス中にポリマーの結晶化温度Tよりも高温に維持される。生じた物体自体は、Tよりも高い温度に長時間曝される可能性がある。構築プロセスの最後に、焼結装置の全ての熱源のスイッチを切ると、物体のT以下への冷却が環境への自然な熱損失に起因して始まる。ポリマー粉末の熱伝導性が低く且つ粉末床が大きいことから、この自然な熱損失には、(使用されるポリマー粉末及び加工条件に応じて、即ち適切な冷却速度を規定することなく)数時間から数日かかる可能性がある。これは、結局のところ冷却プロセス中のポリマー物体の結晶化をさらに増幅させる。適切な制御がなければ、レーザー焼結されたポリマー物体の後結晶化さえも起こる可能性がある。結果として、本発明に従って結晶性特徴を適切に観察しなければ、製造される物体における比較的高い結晶性及び部分的に極めて高い結晶性がもたらされる。さらに、結晶性を適切に限定しなければ、物体の関連する機械特性も悪くなるおそれがある。
【0068】
他方、本発明による選択的焼結プロセスでは、製造される物体の結晶性は、製造される物体の高い耐化学薬品性、Tを超える温度における低い後収縮、又は高い剛性に好ましい影響を与えるように常に十分に有益に調節することが可能である。このため、特性の優れたバランスを本発明によって達成することができる。
【0069】
ポリマー粉末材料から製造される物体の結晶性が適切に限定され、且つ好ましくは特定の範囲内に調節される場合、引張強度、ヤング係数及び破断伸びのような或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善を達成することができる。1)適切なタイプのポリマー材料を予め選択すること、2)予め選択された粉末に含まれるポリマーの構造特性及び/又はその修正を調節すること、及び/又は3)物体の焼結プロセスの完了後に行われる予め規定された及び/又は制御された冷却工程に関心を払うことが、製造される物体の結晶度を限定及び調節するのに特に有効であり、且つ好ましい手段である。
【0070】
それゆえ、本発明の好ましい実施形態によれば、焼結後に物体を完成させた後の予め規定された及び/又は制御された冷却工程が好ましくは物体に適用される。予め規定された及び/又は制御された冷却工程は、場合により自然(受動)冷却よりも遅い規定の徐冷によって、又は高速冷却をもたらすために能動冷却によって実現され得る。予め規定された及び/又は制御された冷却工程の条件は主に、使用されるポリマー、コポリマー又はポリマー配合物のタイプ及び仕様に応じて決まるため、上記冷却工程に関する有用な設定は、実験により試験することができる。但し、最終結晶性は、好ましくは80%以下、好ましくは50%以下、特に5%〜70%、より好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%である。
【0071】
代表例としてPAEK材料を用い、且つカールを防止しようとする場合に例示した例と同様に、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)も、物体の焼結/構築プロセス後の明確な遅い冷却速度を必要とするのに対し、PEK(ポリエーテルケトン)のような他のPAEK材料は焼結/構築プロセス後に高速冷却速度で冷却されることが好ましい。焼結/構築プロセス後のPAEKの好ましい冷却速度は次の通りである:製造される物体が、好ましくは粉末の融点よりも低い1℃〜10℃の温度である加工温度から使用されるPAEKのTに冷却される場合、後結晶化及び局部のカールを最小限に抑え且つ後結晶化及び局部のカールを低度に保証するために、冷却速度は、好ましくは0.01℃/分〜10℃/分、及びより好ましくは0.1℃/分〜5℃/分、及び最も好ましくは1℃/分〜5℃/分である。例えば、PEK粉末を予め選択し、且つ例えば0.3℃/分の冷却速度を適切に適用すると、例えば36%の低い結晶性が達成される。これにより、79MPaの引張強度といった機械特性の改善がもたらされる(実施例5を参照)。例えば0.3℃/分を超えるようなより速い冷却速度を適用することにより結晶性を31%にさらに限定することにより、88MPaの引張強度という驚くべきさらなる改善がもたらされる(実施例6)。
【0072】
しかしながら、物体の完成後の冷却速度は、物体のカール、それゆえ寸法安定性にも影響を及ぼす可能性がある。驚くべきことに、三次元物体が、特定範囲の結晶性を有することにより上記の有益な機械特性がもたらされるだけでなく、高い寸法安定性も有する、即ち三次元物体がカールしないように、冷却速度を規定することができることが見出された。
【0073】
PAEKポリマーを用いることによって例示的に示される例と同様に、PEEK粉末が低い結晶性及び高い寸法安定性(カールの回避)の両方を達成するために、PEK粉末に比べて比較的遅い冷却速度、例えば約0.1℃/分〜0.3℃/分を必要とすることが見出された(実施例2及び実施例3を参照)。冷却速度が速いほど、この材料はカール現象を生じやすい。
【0074】
以下では、電磁放射による選択的焼結プロセスにかけるために予め選択するのに適する、ポリマー材料又はコポリマー材料の幾つかの有意な構造的な特徴又はその修飾を、PAEKポリマー及びコポリマーについて例示的に説明する。以下に説明される構造的特徴又は修飾が同様に他の種類のポリマーにも当てはまることは、当業者にとって明らかとなろう。
【0075】
PEAKポリマー及びコポリマー以外の特に好適な代替的なポリマー材料としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、及びそのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリアミドポリマー又はコポリマーは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド1212、及び上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー、並びにポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標)系材料)等のポリアミドエラストマーから成る群から選択され得る。好適なポリエステルポリマー又はコポリマーは、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、PET、PBT)及び1,4−シクロヘキサンジメチロールを有するそれらのコポリマーから成る群から選択され得る。好適なポリオレフィンポリマー又はコポリマーは、ポリエチレン及びポリプロピレンから成る群から選択され得る。好適なポリスチレンポリマー又はコポリマーは、シンジオタクチックポリスチレン及びイソタクチックポリスチレンから成る群から選択され得る。
【0076】
参照としてPAEK等の選択される所与のポリマーの分子量について考えると、粉末に含まれるポリマーの分子量の比較的わずかな増大によって容易に、製造される物体における結晶性の驚くべき著しい低減がもたらされ、さらに、製造される物体の或る特定の非常に有益な機械特性の有意な改善へと繋がることが本発明者らにより見出された。例えば、典型的にM=23000及びM=68000の分子量を有するものよりも典型的にM=32000及びM=99000の相対的に大きな分子量を有するPEEKポリマー材料を予め選択することにより、製造される物体の結晶性を50%未満に低下させることが促される(例えば、52%から45%への低下を示す実施例1及び実施例2を参照)。分子量の増大は、密度を下げ、それゆえ多孔性を増大させるが、引張強度及び破断伸びを増大させるのに実質的に寄与する(例えば、44MPaから71MPaへの引張強度の大幅な増大、及び約1%から約2%への破断伸びの増大を示す実施例1及び実施例2を参照)。しかしながら、特定の分子量を超えると、飽和効果が起きる。結晶性の考慮すべき増大及び機械特性の増大は、これ以上起こり得ない(実施例3を参照)。したがって、分子量Mは好ましくは、少なくとも9000、好ましくは10000〜100000、より好ましくは15000〜50000、及び最も好ましくは20000〜35000に調節され、Mは好ましくは、20000〜500000、好ましくは40000〜200000、及びより好ましくは50000〜125000に調節される。
【0077】
分子量に関する上述のような類似の説明は、ポリマー又はコポリマーの溶融粘度についても当てはまる。溶融粘度は、ポリマー又はコポリマーの分子量が大きいと、その溶融粘度も大きくなるというような、ポリマー又はコポリマーの分子量との相関関係を有する。このため、PAEKポリマー又はコポリマーでは、0.05kNs/m〜1.0kNs/m、より好ましくは0.15kNs/m〜0.6kNs/m、及び特に0.2kNs/m〜0.45kNs/mの範囲の溶融粘度が好ましい。
【0078】
下記式は、レーザー焼結される物体を構築するのに好ましいPAEK又はPAESポリマー及びコポリマーの一般構造を示しており、所望通りに低い結晶性を得るための構造特性を以下でさらに説明する。
【0079】
【化1】

【0080】
Ar、Ar及びArは互いに独立して、非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素を示し、任意の置換基はRf、Rf、Rfから選択され得る:
Rf、Rf、Rf=互いに独立して、C1〜C6直鎖又は分岐鎖又は環状アルキル及びアルコキシ基、並びにアリール基、好ましくはMe、i−Pr、t−Bu、Phを示し、各Ar、Ar及びArは、1つ又は複数のRf、Rf、Rf置換基をそれぞれ有し得る。
【0081】
X=O及び/又はS
Y=CO及び/又はSO
Z=SO、CO、O及び/又はS
aは、0より大きい小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
bは、0より大きい小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
cは、0又は小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
nは重合度を示す。
【0082】
上記一般式中、指数a、b及びcはそれぞれ、ポリマーの繰り返し単位又はコポリマーの繰り返し単位における大括弧(squared brackets)内のそれぞれの単位の数を示し、同じ種類の1つ又は複数の単位(例えばaの指数を有する単位)は、異なる種類の単位(例えば、b及び/又はcの指数を有する単位)の間に位置していてもよい。繰り返し単位におけるそれぞれの単位の位置は、PAEK誘導体の略号に由来し得る。
【0083】
例えば、PEKに関して、繰り返し単位は、非置換フェニレンであるAr、OであるXを含み且つa=1であり、非置換フェニレンであるAr、COであるYを含み且つb=1及びc=0である。これにより、PEKは下記式の構造を有する。
【0084】
【化2】

【0085】
式中、nは重合度を示す。さらなる例として、PEEKに関して、繰り返し単位は、非置換フェニレンであるAr、OであるXを含み且つa=2であり、非置換フェニレンであるAr、COであるYを含み且つb=1及びc=0である。それぞれのエステル単位及びケトン単位の位置に関して、略号PEEKは、2つのエステル(E)単位の次に1つのケトン(K)単位が続くことを示しており、このためPEEKは下記式の構造を有する。
【0086】
【化3】

【0087】
式中、nは重合度を示す。さらなる例として、PEKEKKに関して、繰り返し単位は、非置換フェニレンであるAr、OであるXを含み且つa=2であり、非置換フェニレンであるAr、COであるYを含み且つb=3及びc=0である。それぞれのエステル単位及びケトン単位の位置に関して、略号PEKEKKは、1つのエステル(E)単位の次に1つのケトン(K)単位が続き、1つのエーテル単位が次にきた後、2つのケトン単位が続くことを示しており、このためPEKEKKは下記式の構造を有する。
【0088】
【化4】

【0089】
式中、nは重合度を示す。
PAEKポリマー及びコポリマーに関して、重合度nは、好ましくは10〜1000、より好ましくは20〜500、及び特に40〜250である。芳香族炭化水素基Ar、Ar及びArの所要空間が大きいほど、芳香族炭化水素基は剛性の棒状セグメントのように挙動し、製造される物体の最終結晶性は小さくなる。それゆえ、芳香族炭化水素基Ar、Ar及びArはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’−ターフェニレン、並びにα−ジ−(4−フェニレン)フタリドから成る群から選択されることが好ましい。
【0090】
主鎖中の芳香族炭化水素の側鎖Rf、Rf、Rfは、溶融物中のポリマー鎖の移動度に影響を与えるため、好ましくは有益に作用して、製造される物体の最終結晶性を下げることが可能である。
【0091】
さらに、ケト基Yの量とエーテル基又はチオエーテル基Xの量との比率は好ましくは1:4〜4:1である。この比率範囲内では、結晶性がかなり低減され得る。例えば、類似の典型的な分子量を有するPEK(比率1:1)とPEEK(比率2:1)との使用を比較すると(実施例1及び実施例4を参照)、より低い結晶性を達成するという観点からPEKの方がPEEKよりも好ましい。他方で、他の補償制御を利用することにより、例えば、対応して高い分子量のPEEKを使用することにより、又は速い冷却速度で焼結後の冷却を適切に規定することにより、PEEKを使用する場合にも同様の制御された結晶性を達成することができる。
【0092】
選択的焼結プロセス後の製造される物体の最終結晶性を所望通りに限定するようにポリマーを適応させるさらなる可能性は、適切なコポリマーを使用することである。PAEKでは、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)を有するコポリマーが好ましく、特にポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEK−トリブロックコポリマー、より特にポリエーテルケトン(PEK)/ポリエーテルスルホン(PES)ジブロックコポリマー又はPEK/PES/PEK−トリブロックコポリマーである。ポリアリールエーテルスルホン成分の量が多いほど、製造される物体の結晶性が低くなることが見出された。それゆえ特に、スルホン基Zの量とケト基Yの量との比率は好ましくは50:50〜10:90である。この比率範囲内では、電磁放射を用いた選択的焼結によって三次元物体を製造する装置におけるポリマーの加工に適する、ポリマー材料のガラス転移温度(T)及び融点(T)を調節することができる。選択的焼結プロセスに好適な加工温度を提供するには、上記PEK/PESコポリマーが好ましくは180℃よりも高いT及び300℃〜430℃の溶融温度Tを有する。
【0093】
ポリマー又はコポリマーの主鎖の末端基が結晶化中に結晶種として作用し得ることがさらに見出された。したがって、結晶化を阻害するためにポリマー又はコポリマーの末端基を誘導体化し、それにより、製造される物体の結晶性を抑えることができる。
【0094】
末端基はまた、好ましくはポリマーのTよりも高い温度における末端基同士の化学反応によって、例えば、重縮合、芳香族求電子(electrophilic)置換又は芳香族求核置換、カップリング反応等によって、ポリマー鎖又はコポリマー鎖の伸張をもたらすように選択されてもよい。これにより、分子質量の増大に起因して、製造される物体の結晶性の低下がもたらされる。
【0095】
ポリマー又はコポリマーの主鎖の末端基は、合成に使用されるモノマーの種類及び重合の種類に応じて決まる。以下に、異なる末端基を有する異なる種類のPAEKをもたらす2つの異なる種類のPAEK合成スキームを示す。
【0096】
PAEKは、2つの方法において、即ち芳香族求電子置換(Friedel−Crafts-Acylation)又は芳香族求核置換によって通常合成することができる。例えば、PAEKの求核合成では、1,4−ビスヒドロキシベンゼンを4,4’−ジハロゲン化ベンゾフェノン成分と重合する。
【0097】
xHO-Ph-OH + (y+1)Hal-Ph-CO-Ph-Hal →
Hal-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-Hal
(式中、HalはF、Cl、Brであり、且つx及びyは、ポリマー中に組み込まれるモノマーの数を示す)
【0098】
結果として、上記例PEEKにおけるPAEK主鎖は、重合後に、主鎖の片側末端(図示せず)又は両端(図示)においてハロゲン残基で、最も好適にはフッ素で、任意に代替的には塩素又は臭素で終端化されてもよく、又は終端化されなくてもよい(図示せず)。これはジハロゲン化ケトン単位が部分的にジハロゲン化芳香族スルホンで置換され得る、PAEK又はポリエーテルスルホン(PAES)コポリマーの合成にも当てはまる。芳香族ビスヒドロキシ成分も同様に、部分的に又は完全にビスチオール成分で置換され得る。
【0099】
例えば、ポリマーのハロゲン置換された末端を、フェノールによる停止反応により誘導体化してもよい。
【0100】
2Ph-OH + Hal-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-Hal →
Ph-O-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-O-Ph
好ましくは、上記式中のHalはFである。
【0101】
芳香族求電子置換反応によるPAEKポリマー又はコポリマーの合成の場合、ジアシル芳香物質、例えば、芳香族二酸、又は好ましくは芳香族二酸塩化物又は芳香族二酸無水物を、ビス芳香族エーテル又はチオエーテル成分と重合する。例えばPEKKでは、これにより、主鎖の片側末端(図示せず)又は両端(図示)にフェニル基を有するか又はいずれの末端にもフェニル基を有しない(図示せず)PEKKポリマー又はコポリマーがもたらされ得る。
【0102】
xRAOC-Ph-CORA + (y+1)Ph-O-Ph →
Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-H
(式中、RはCl又は−OHであり、且つx及びyは、ポリマー中に組み込まれるモノマーの数を示す)
【0103】
代替的に、例えば芳香族一酸塩化物を用いた単一モノマー経路による合成を適用してもよい。
【0104】
例えば、ポリマーの末端におけるフェニル基を、安息香酸クロリドによる停止反応によって誘導体化してもよい。
【0105】
2Ph-COCl + Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-H →
Ph-CO-Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-OC-Ph
【0106】
求核置換反応又は芳香族置換反応が選択されるかにかかわらず、ポリマーの結晶化を遅らせるためには、例えば、PAEKポリマーが下記式を有するように、好ましくは末端基を置換することができる。
【0107】
RT-U-[PAEK]-U-RT
(式中、Uは連結部位、例えばNH、O、CO、CO−O−、SO、単結合、−(CH(式中、kは1〜6等であり、且つ左側構造部位及び右側構造部位Rは同じ構造基であっても異なる構造基であってもよく、通常、構造部位Rは同じである。好ましくは、Rは、非置換又は置換の脂肪族又は芳香族炭化水素残基の群から選択される。)Uは、ポリマー又はコポリマーの末端との直接反応によって形成され得る。)例えば、単官能性ヒドロキシ化合物はUとしてOを形成し得るか、又は停止試薬の置換基として導入され得る。例えば、HO−Ph−COO−tert−ブチルはUとしてCOOを形成し得る。
【0108】
さらに、製造される三次元物体の結晶性を適切に調節するために結晶化速度の増大が必要であれば、ハロゲン化末端基を有するポリアリールエーテルケトンを、例えばNaOPhSONa又はNaOPhCOPhOPhSONa等のフェノキシド塩のようなイオン性末端基で末端封止することができる。例えばHClによるフェノキシド塩のその後の酸性化により、多少低い核形成効果を示す−SOH末端基がもたらされる。
【0109】
ポリマー又はコポリマーは、少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーが使用される配合物中で合金成分と配合されていてもよい。このような配合物では、配合物の少なくとも1つの成分が、製造される物体の最終結晶性を低下させることが好ましい。
【0110】
PAEKについて説明される類似の構造特徴又は修飾は、上記の代替的なポリマー材料又はコポリマー材料にも同様に当てはめることができる。
【0111】
さらに、粉末は、それぞれのポリマー、コポリマー又は配合物のマトリクスの他に1つ又は複数のフィラー及び/又は添加剤を含む複合粉末であってもよい。フィラーは、製造される物体の機械特性をさらに改善するのに使用され得る。例えば、限定するものではないが、炭素繊維、ガラス繊維、Kevlar繊維、カーボンナノファイバを含む繊維、又は低いアスペクト比を有するフィラー(ガラスビーズ、アルミニウム顆粒等)又は二酸化チタン等の鉱物フィラー等のフィラーを、少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末中に組み込んでもよい。さらに、粉末の加工性を改善するプロセス添加物、例えば、Aerosilシリーズの1つ(例えばAerosil R974、Aerosil 200)等の易流動性剤、又は熱安定剤、酸化安定剤、顔料(カーボンブラック、グラファイト等))のような他の機能性添加剤を使用してもよい。
【0112】
本発明の結果から、一般に、ポリマー又はコポリマーの以下の構造特徴又は修飾が限定される結晶性特徴に有利に働くため、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、及びそのコポリマーの中から、特定タイプのポリマー又はコポリマーが予め選択される場合に特に好ましい:
(i)比較的高いM若しくはM又は溶融粘度を選択
(ii)長い鎖長又は高い重合度nを使用
(iii)互いに独立して非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素を示す芳香族基を主鎖に導入。好ましくは芳香族基はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’−ターフェニレン、並びにα−ジ(4−フェニレン)フタリドから成る群から選択される。
(iv)1つ又は複数の側鎖による芳香族基の置換。ここで、側鎖はそれぞれ独立して、C1〜C6直鎖又は分岐鎖又は環状アルキル及びアルコキシ基、及びアリール基の群から選択され、好ましくは側鎖はそれぞれ独立して、メチル、イソプロピル、t−ブチル又はフェニルから選択される。
(v)好ましくは脂肪族又は芳香族末端基によるポリマー又はコポリマーの主鎖の末端基の修飾。
(vi)少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーを配合することによる配合又は合金化。
【0113】
実施例
製造される物体の結晶性は、当業者に既知の種々の方法によって求めることができる。結晶性は、本発明による参照法として用いられるDIN 53765に従い示差走査熱量測定(DSC)に基づき求めることができる。科学文献に見ることができる理論上100%結晶性のポリマーの値、例えばPEEKに関して130J/g及びPEKに関して160J/g(P C Dawson and D J Blundell, Polymer 1980, 21, 577-578)を用いて、下記式により最終結晶性を算出することが可能である。
【0114】
【数1】

【0115】
複合粉末、即ち、ポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の他に1つ又は複数のフィラー又は添加剤を含む粉末から製造される物体の場合、その結晶度は複合体のポリマーマトリクスに関連し、同様に上記のように算出することができる。
【0116】
結晶性は、広角X線散乱(WAXS)測定によって求めることもできる。この手法も当業者により既知である。
【0117】
本発明の参照法として、DIN 53765に従いMettler−Toledo DSC 823により実施されるDSC測定に基づく以下の実施例において、結晶性を求めた。DSC試料は、レーザー焼結装置の交換可能フレームの縁からx方向、y方向に少なくとも5cm構築したASTM D638引張試験片の中央部から準備した。その後、上記式を用いて結晶性を求めた。
【0118】
Satorius Density Determination Set YDK 01を用いてKern 770−60秤によりISO 1183に従い密度を測定した。その後、下記式によって多孔性を算出する。
【0119】
【数2】

100%=100%結晶性のPAEKの理論密度
0%=非晶質PAEKの理論密度
=PAEK成型品の結晶性
【0120】
理論上100%結晶性のPEEK(d100%=1.40g/cm)及びPEK(d100%=1.43g/cm)、並びに非晶質PEEK(d0%=1.265g/cm)及びPEK(d0%=1.272g/cm)の密度値は文献(P C Dawson and D J Blundell, Polymer 1980, 21, 577-578)において既知である。ポリマーの理論密度値が知られていなければ、多孔性をマイクロコンピュータ断層撮影(micro-computer-tomographie)によって求めることもできる。有用な装置は、例えばSCANCO(Medical AG(Bruettisellen, Switzerland))により供給されているμ−CT40である。この手法は当業者により既知である。
【0121】
実施例において、米国特許出願公開第2006/0251878号明細書に従い、タングステンカーバイド(wolfram-carbid)ノズルを備える毛細管粘度計において、400℃及び1000s−1の剪断速度で溶融粘度を求める。
【0122】
以下の実施例は、本発明を例示しているに過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するようにみなされるものではない。実施例及び変更形態、又はそれらの他の等価物は、本発明の全開示を鑑みて当該技術分野に精通する者にとって明らかであろう。
【実施例1】
【0123】
(本発明によるものではない)
48μmの平均粒径分布を有するPEEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEEKポリマーは、M=23000及びM=65000の分子質量、並びに0.15kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0124】
0.45g/cmの容積密度を有するPEEK粉末を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は335℃であった。
【0125】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、335℃〜PEEKのT(145℃)の後加熱によって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0126】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.316g/cm
多孔性(密度/結晶性により算出)=1.4%
結晶性(DSC)=52%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=4500MPa
引張強度=44MPa
破断伸び=1.04%
【実施例2】
【0127】
(本発明による)
48μmの平均粒径分布を有するPEEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEEKポリマーは、M=32000及びM=65000の分子質量、並びに0.45kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0128】
0.40g/cmの容積密度を有するPEEK粉末を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は335℃であった。
【0129】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、335℃〜PEEKのT(145℃)の後加熱によって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0130】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.303g/cm
多孔性(密度/結晶性により算出)=1.6%
結晶性=45%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=4200MPa
引張強度=71MPa
破断伸び=1.9%
【実施例3】
【0131】
(本発明による)
48μmの平均粒径分布を有するPEEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEEKポリマーは、0.54kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0132】
PEEK粉末を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は335℃であった。
【0133】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、335℃〜PEEKのT(145℃)の後加熱によって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0134】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.300g/cm
結晶性=42%
多孔性(密度/結晶性により算出)=1.6%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=3800MPa
引張強度=74MPa
破断伸び=2.2%
【実施例4】
【0135】
(本発明による)
48μmの平均粒径分布を有するPEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEKポリマーは、M=23000及びM=65000の分子質量、並びに0.22kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0136】
PEK粉末を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は365℃であった。
【0137】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、365℃〜PEKのT(157℃)の後加熱によって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0138】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.310g/cm
結晶性=39%
多孔性(密度/結晶性により算出)=1.8%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=4220MPa
引張強度=80MPa
破断伸び=2.2%
【実施例5】
【0139】
(本発明による)
48μmの平均粒径分布を有するPEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEKポリマーは、0.45kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0140】
PEK粉末を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は365℃であった。
【0141】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、365℃〜PEKのT(157℃)の後加熱によって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0142】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.277g/cm
結晶性=36%
多孔性(密度/結晶性により算出)=3.9%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=3820MPa
引張強度=79MPa
破断伸び=2.5%
【実施例6】
【0143】
(本発明による)
48μmの平均粒径分布を有するPEK(Victrex Plc(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より供給)から成る粉末(PEKポリマーは、0.45kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0144】
PEK粉末を、実施例4に記載したように高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。
【0145】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、レーザー焼結装置の全ての加熱を停止した。冷却速度の平均は0.3℃/分よりも高かった。
【0146】
成型品は以下の特性を示した:
密度=1.285g/cm
多孔性(密度/結晶性により算出)=2.8%
結晶性=31%
引張試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=3950MPa
引張強度=88MPa
破断伸び=2.8%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する方法であって、該粉末が、ポリアリールエーテルケトンポリマー又はポリアリールエーテルケトンコポリマーを含み、且つ製造される前記三次元物体が、5%〜45%の最終結晶性を有する、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する方法。
【請求項2】
製造される前記三次元物体が、5%未満、好ましくは3%未満の多孔性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアリールエーテルケトンポリマー又はポリアリールエーテルケトンコポリマーを含む前記粉末が、280℃〜450℃の範囲の融点Tを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する方法であって、該粉末が、ポリアミドポリマー又はポリアミドコポリマーを含み、且つ製造される前記三次元物体が、10%〜50%の最終結晶性を有する、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する方法。
【請求項5】
製造される前記三次元物体が、10%未満、好ましくは5%未満、及びより好ましくは3%未満の多孔性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粉末の電磁放射を用いた選択的焼結工程によって該粉末から三次元物体を製造する方法であって、該粉末が、少なくとも1つのポリマー又はコポリマー材料を含み、前記方法が、前記焼結工程の完了後の規定の及び/又は制御された冷却工程を特徴とする、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結工程によって該粉末から三次元物体を製造する方法。
【請求項7】
100℃〜450℃、好ましくは150℃〜400℃、及びより好ましくは250℃〜400℃の範囲の融点Tを有する粉末を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電磁放射を用いて粉末形態のポリアリールエーテルケトンのポリマー、コポリマー又は配合物の選択的焼結により得られる三次元物体であって、最終結晶性が5%〜45%である、電磁放射を用いて粉末形態のポリアリールエーテルケトンのポリマー、コポリマー又は配合物の選択的焼結により得られる三次元物体。
【請求項9】
多孔性が、5%未満、好ましくは2%未満である、請求項8に記載の三次元物体。
【請求項10】
密度が、少なくとも1.24g/cm、より好ましくは1.26g/cm、さらにより好ましくは1.28g/cmであり、且つ最も好ましくは1.30g/cmを超える、請求項8に記載の三次元物体。
【請求項11】
電磁放射を用いて粉末形態のポリアミドのポリマー、コポリマー又は配合物の選択的焼結により得られる三次元物体であって、最終結晶性が10%〜50%である、電磁放射を用いて粉末形態のポリアミドのポリマー、コポリマー又は配合物の選択的焼結により得られる三次元物体。
【請求項12】
多孔性が、10%未満、好ましくは5%未満、及びより好ましくは3%未満である、請求項11に記載の三次元物体。
【請求項13】
粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する装置であって、該三次元物体の完成後に該三次元物体を規定の冷却を行うための温度制御装置を備える、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する装置。
【請求項14】
選択的電磁放射焼結を用いた三次元物体の製造における粉末形態のポリマーの使用であって、該ポリマーが、製造される該三次元物体の結晶性を下げるように予め選択される、選択的電磁放射焼結を用いた三次元物体の製造における粉末形態のポリマーの使用。
【請求項15】
前記予め選択が、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミドのポリマー又はコポリマー、及び前記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマー、好ましくは、ポリアリールエーテルケトン又はポリアミドのポリマー又はコポリマー、より好ましくはポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEKトリブロックコポリマー、及び特にポリエーテルケトン(PEK)/ポリエーテルスルホン(PES)ジブロックコポリマー又はPEK/PES/PEKトリブロックコポリマーの一種から為される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ポリマーがさらに、製造される前記三次元物体の多孔性を下げるように予め選択される、請求項14又は15に記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7052(P2010−7052A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−120496(P2009−120496)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(503267906)イーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ (50)
【Fターム(参考)】