説明

電磁波吸収体

【課題】耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性にも優れた電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】電磁波吸収シート1は、フッ素系ポリマー膜2と、電磁波吸収層3と、電磁波反射層4とが積層されることにより構成される。また、電磁波吸収シート1は壁等の被着体5に対して接着層6を介して貼着される。そして、フッ素系ポリマー膜2には、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散され、フッ素系ポリマー膜2に紫外線遮蔽効果を付与するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の電子部品から発せられる電磁波を吸収する電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動モータやコンピュータ等の電子機器から発せられる電磁波によって、他の電子機器の正常な動作を妨げる事態が少なからず生じていた。また、電磁波が人体に悪影響を与える虞もあった。そこで、従来より電磁波を吸収する電磁波吸収体を用いることによって、電磁波による悪影響を防止する方法が行われていた。具体的には、電磁波を発する電子機器の周囲の壁部に対して電磁波吸収体を配置したり、建物の壁に対して電磁波吸収体を配置することにより、電子機器から発せされる電磁波を吸収していた。
【0003】
そして、上記のような電磁波吸収体は屋内のみに限らず屋外で用いられる場合も多かった。ここで、従来、屋外に設置する電磁波吸収体としては電磁波吸収材料を分散させた塗料、ボードやパネル、シートなどが知られている。また、その電磁波吸収材料としては特許第2612592号に記載されているように、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂等のアクリレ−ト共重合体変性樹脂が用いられる。また、特開2006−86422号公報に記載されているようなポリアミドイミドや合成ゴムなどのゴム系材料等も用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2612592号(第3頁〜第5頁)
【特許文献2】特開2006−86422号公報(第4頁〜第6頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、屋外に設置される電磁波吸収体は、長期間継続的に使用されるものであり、従って、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に優れることが望まれる。しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に用いられている材料では、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に乏しいため、経時により劣化しやすく、そのために物性が低下し、破壊に至りやすいという問題があった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、フッ素系ポリマー膜を積層することにより、薄層であっても高い電磁波吸収性能を示すと共に、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性にも優れた電磁波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る電磁波吸収体は、電磁波を吸収する電磁波吸収層と、前記電磁波吸収層に対して積層されたフッ素系ポリマー膜と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る電磁波吸収体は、請求項1に記載の電磁波吸収体において、前記フッ素系ポリマー膜中には紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る電磁波吸収体は、請求項1又は請求項2に記載の電磁波吸収体において、前記紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤は、電磁波を吸収する電磁波吸収材料であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る電磁波吸収体は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電磁波吸収体において、前記電磁波吸収層は、電磁波吸収材料を含む熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0011】
更に、請求項5に係る電磁波吸収体は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電磁波吸収体において、前記電磁波吸収層の一方の面に対して積層され、入射された電磁波を反射する電磁波反射層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の電磁波吸収体によれば、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に優れたフッ素系ポリマー膜を電磁波吸収層に対して積層することにより、薄層であっても高い電磁波吸収性能を示すと共に、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、請求項2に記載の電磁波吸収体によれば、フッ素系ポリマー膜に紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されているので、フッ素系ポリマー膜に紫外線遮蔽効果を付与することができる。従って、フッ素系ポリマー膜は、それ以降の下層における紫外線による劣化を抑制して、より耐候性の向上させることが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の電磁波吸収体によれば、フッ素系ポリマー膜に分散させる紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤として、電磁波吸収材料を用いるので、フッ素系ポリマー膜により紫外線の電磁波吸収層への進入を防止しつつ、フッ素系ポリマー膜を電磁波吸収層としても作用させることが可能となる。その結果、電磁波吸収体の更なる薄層化が可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の電磁波吸収体によれば、簡易な構造により汎用性の高い電磁波吸収体を成形することが可能である。従って、製造が容易となり、様々な用途に用いることが可能となる。
【0016】
更に、請求項5に記載の電磁波吸収体によれば、電磁波吸収層の厚さや材料定数を制御し、吸収体の表面上において無反射となる無反射条件を利用したλ/4型電磁波吸収体を実現することにより、電磁波吸収体に進入した電磁波を減衰させることが可能となる。それにより、薄層であっても高い電磁波吸収性能を示す電磁波吸収体を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電磁波吸収シート1について示した説明図である。
【図2】本発明に係る電磁波吸収シート1のフッ素系ポリマー膜2の構成について示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電磁波吸収体について具体化した実施形態について以下に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
ここで、電磁波吸収体は、その形状や構成から多層型電磁波吸収体、シート型電磁波吸収体、塗料型電磁波吸収体に区分することができるが、本発明に係る電磁波吸収体は、薄層で高い電磁波吸収性能を実現するためにシート型電磁波吸収体を用いる。このシート型電磁波吸収体では、例えば金属製の電磁波反射層の前面に所定の厚みの電磁波吸収材からなる電磁波吸収層を一層又は複数層積層した構造とする。そして、電磁波が入射した際に、電磁波吸収体の特性インピーダンスと空気中の特性インピーダンスとが整合するように電磁波吸収層の厚みや材料定数を設計する。それによって、電磁波吸収体に進入した電磁波を減衰することが可能となる。
【0020】
先ず、本発明に係る電磁波吸収体である電磁波吸収シート1の構成について図1に基づき説明する。図1は本発明に係る電磁波吸収シート1について示した説明図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る電磁波吸収シート1は、基本的にフッ素系ポリマー膜2と、電磁波吸収層3と、電磁波反射層4とから構成される。また、電磁波の入射方向に対してフッ素系ポリマー膜2、電磁波吸収層3、電磁波反射層4の順に積層されている。また、図1では電磁波吸収シート1が壁等の被着体5に対して接着層6を介して貼着されている例を示す。
【0022】
フッ素系ポリマー膜2は、フッ素系樹脂、より具体的にはフッ素系ポリマーにより形成されたフィルム、塗布層、含浸膜などからなる。尚、フッ素系ポリマー膜2を形成するフッ素系ポリマーとしては、適宜なものを用いることができ、特に限定されることはない。例えば、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体やエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)やエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフロリド(PVDF)やポリビニルフロリド(PVF)などがあげられる。これらのフッ素系ポリマーは耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に優れた材料である。また、上記のフッ素系ポリマーの内、複数種類のフッ素系ポリマーを用いてもよい。更に、フッ素系ポリマー膜2には、必要に応じて繊維等の補強基材を混入させても良い。
【0023】
また、フッ素系ポリマー膜2は、物性の改良などを目的にフッ素系ポリマー以外の適宜なポリマーを併用して形成しても良い。但し、その併用量は、耐候性の維持などの点よりフッ素系ポリマーの80重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは20重量%以下とする。
【0024】
尚、フッ素系ポリマー膜2は、電磁波吸収層3と熱圧着するため、上記フッ素系ポリマーの内、特に融点が300℃以下、好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下のフッ素系ポリマーが好ましい。具体的には、PVDF、ECTFE、PCTFE、PVF等を用いることが好ましい。ここで、特にPVDFのような溶媒に可溶な材料を選択すれば、スロットダイ方式の塗布装置によりフッ素系ポリマー膜2を成形することが可能となる。尚、スロットダイ方式の塗布装置によりフッ素系ポリマー膜2を成形することとすれば、より薄層で均一なフッ素系ポリマー膜2を成形することが可能となる。
【0025】
更に、フッ素系ポリマー膜2には、例えば、酸化チタン等の無機系酸化物からなる顔料やカーボン等の紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されている。それによって、フッ素系ポリマー膜2に紫外線の吸収性又は散乱性をもたせることが可能となる。
【0026】
例えば、図2にはフッ素系ポリマー膜2に紫外線散乱剤である酸化チタンを分散した例を示す。図2に示すように、フッ素系ポリマー膜2中に分散された酸化チタン10は、電磁波吸収シート1へと進入する紫外線を物理的に反射、散乱させる。その結果、紫外線が電磁波吸収層3へと進入することを防止できる。
尚、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の配合量は、膜強度や耐紫外線性などの点より、フッ素系ポリマー100重量部あたり1〜1000重量部、好ましくは5〜300重量部、更に好ましくは10〜50重量部とする。
【0027】
また、フッ素系ポリマー膜2に配合する紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤としては、電磁波吸収材料を用いても良い。具体的には、セラミック材料、炭素材料、金属材料等が用いることができる(セラミック材料としてはチタン酸バリウムやフェライト等、カーボン材料としてはカーボンブラックや黒鉛、カーボンファイバー等、金属材料としてはアルミニウムやニッケル、銅等が挙げられるがそれらに限定されるものではない)。それによって、フッ素系ポリマー膜2により紫外線の電磁波吸収層3への進入を防止しつつ、フッ素系ポリマー膜2を電磁波吸収層としても作用させることが可能となる。
【0028】
また、フッ素系ポリマー膜2の厚さD1は、強度や耐候性などの点より、0.1μm以上とすることが好ましい。例えば20μmとする。
【0029】
そして、本発明に係る電磁波吸収シート1では、上記したように耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に優れたフッ素系ポリマーにより形成されたフッ素系ポリマー膜2を電磁波吸収層3に対して積層しているので、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性を向上させることが可能となる。また、フッ素系ポリマー膜2に紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されているので、フッ素系ポリマー膜2に紫外線遮蔽効果を付与することができる。その結果、フッ素系ポリマー膜2は、それ以降の下層における紫外線による劣化を抑制してより耐候性の向上させることが可能となる。尚、図1に示す例ではフッ素系ポリマー膜2は、紫外線の吸収層や散乱層として電磁波吸収シート1の表層部に一層配置されているが、中間部に配置しても良い。また、複数層配置することも可能である。
【0030】
一方、電磁波吸収層3は、電磁波吸収材料が分散された熱可塑性樹脂により形成される。尚、電磁波吸収層3に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられるが、フィルム成型が可能な材料であれば特に限定されるものではない。また、電磁波吸収材料としては、セラミック材料、炭素材料、金属材料等が用いることができる(セラミック材料としてはチタン酸バリウムやフェライト等、カーボン材料としてはカーボンブラックや黒鉛、カーボンファイバー等、金属材料としてはアルミニウムやニッケル、銅等が挙げられるがそれらに限定されるものではない)。ここで、電磁波吸収層3に用いられる熱可塑性樹脂としては、フッ素系ポリマー膜2及び電磁波反射層4に対してそれぞれ接着可能な材料を用いる。
【0031】
また、電磁波吸収層3の厚みD2については、先ず、電磁波吸収層3の比誘電率及び比透磁率に対応するd/λの値を無反射曲線との対応で求め、設計周波数(例えば720MHz)に応じたdの値を設計厚みとする。特に、算出されたdの値の±数%の範囲内で電磁波吸収層3を作製することが望ましい。例えば1.5mmとする。
【0032】
一方、電磁波反射層4は、入射された電磁波を反射する反射手段として用いられる層であり、アルミニウム、銅、鉄やステンレス等の金属板や、高分子フィルムに真空蒸着やめっきで上記金属の薄膜を形成したもの、炭素繊維等の導電材で樹脂等を補強したものなどにより成形される。尚、電磁波吸収層3と電磁波反射層4との積層方法は、例えば、直接熱接着する方法、電磁波吸収特性に影響を与えない程度の薄い接着剤で接着する方法等がある。また、電磁波吸収シート1に対して入射する電磁波の入射方向は、電磁波反射層4が積層されている面と反対側の面から入射するように設計する。但し、図1では電磁波の入射方向は、電磁波反射層4に対して垂直となっているが、入射方向は電磁波反射層4に対して垂直でなくても良い。
【0033】
また、本発明に係る電磁波吸収シート1には、必要に応じて被着体5に取り付けるための接着層6を設けることができる。その接着層6は、適宜な接着剤にて形成しうるが、接着作業の簡便性などの点より、粘着層であることが好ましい。尚、粘着層の形成には、適宜な粘着性物質を用いることができる。一般には、例えば、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤やビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤やポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤やセルロース系粘着剤などの有機系のものが用いられる。
【0034】
また、接着層6は、電磁波吸収シート1を被着体5に取り付けるまでの適宜な段階で設けることができる。従って電磁波吸収シート1に予め設けることもできるし、電磁波吸収シート1とした後に設けることもできる。
【0035】
電磁波吸収シート1への接着層6の付設は、カレンダーロール法等の圧延方式、ドクターブレード法やグラビアロールコータ法等のシート形成方式などの適宜な方式で粘着性物質を電磁波吸収シート1に付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に接着層6を形成してそれを電磁波吸収シートに移着する方法などの適宜な方式で行ってよい。
【0036】
また、付設する接着層6の厚さは、使用目的に応じて決定でき一般には1〜500μmとされる。尚、設けた接着層6が表面に露出する場合には、それを被着体5に接着するまでの間、必要に応じてセパレータ等にて被覆して汚染等を防止することもできる。
【0037】
本発明による電磁波吸収シート1は、例えばETC料金所やガソリンスタンド等の建造物、その他のガードレールなどの車両用防護柵、高層ビルのような建造物などの電磁波対策の目的に好ましく用いうる。特に耐候性と耐擦過性に優れることより、電磁波吸収シートを取り付けた状態で屋外等に暴露される物品に好ましく用いうる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例について比較例と比較しつつ説明する。
(実施例1)
PVDF100部(重量部、以下同じ)を溶解したジメチルホルムアミド溶液にカーボンブラック(中越黒鉛株式会社製BF−5AK)200部を混合してPETフィルム上に塗工後、乾燥させて、そのPETフィルムより剥離して厚さ20μmのフィルム(フッ素系ポリマー膜2)を形成した。その後、形成したフィルムを厚さ1.48mmのアクリルフィルム(電磁波吸収層3)上に180℃で熱ラミネートし、各フィルムを熱圧着した。また、熱圧着したフィルムに対して、アクリルフィルム側にアルミニウム箔(電磁波反射層4)を接着剤等で接着した。更に、アルミニウム箔面にセパレータ上に設けた厚さ30μmのアクリル系粘着層を付設して電磁波吸収シートを作成した。
【0039】
(実施例2)
カーボンブラック200部に代えて、ニッケル粉末(JFEミネラル社製NFP401)500部を用いてフッ素系ポリマー膜を形成した。他は実施例1に準じて電磁波吸収シートを作成した。
【0040】
(実施例3)
カーボンブラック200部に代えて、電磁波吸収フィラー(キンセイマテック社製) 500部を用いてフッ素系ポリマー膜を形成した。他は実施例1に準じて電磁波吸収シートを得た。
【0041】
(比較例1)
フッ素系ポリマー膜を設けず、電磁波吸収層及び電磁波反射層のみで電磁波吸収シートを形成した。他は実施例1に準じて電磁波吸収シートを作成した。
【0042】
(評価試験)
上記実施例1〜3及び比較例1で得た電磁波吸収シートよりセパレータを剥がしてその粘着層を介しステンレス板に圧着し、サンシャインウエザーメータにて屋外暴露10年間相当の暴露を行ったのち、電磁波吸収シートの表面を綿布にて払拭してフッ素系ポリマー膜、電磁波吸収層の残存状態、電磁波吸収特性(材料定数)変化を調べた。
その結果、実施例の構成ではフッ素系ポリマー膜、電磁波吸収層ともに劣化がなく、また材料定数の変化も防ぐことができたため、実施例1〜3で得た電磁波吸収シートは、比較例1と比較して耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性が向上していることが分かる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁波吸収シート1は、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性に優れたフッ素系ポリマー膜を電磁波吸収層に対して積層することにより、薄層であっても高い電磁波吸収性能を示すと共に、耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性を向上させることが可能となる。
また、フッ素系ポリマー膜2に紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されているので、フッ素系ポリマー膜2に紫外線遮蔽効果を付与することができる。従って、フッ素系ポリマー膜2は、それ以降の下層における紫外線による劣化を抑制して、より耐候性の向上させることが可能となる。
また、フッ素系ポリマー膜2に分散させる紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤として、電磁波吸収材料を用いることとすれば、フッ素系ポリマー膜2により紫外線の電磁波吸収層3への進入を防止しつつ、フッ素系ポリマー膜2を電磁波吸収層3としても作用させることが可能となる。その結果、電磁波吸収シート1の更なる薄層化が可能となる。
また、電磁波吸収層3は、電磁波吸収材料を含む熱可塑性樹脂からなるので、簡易な構造により汎用性の高い電磁波吸収体を成形することが可能である。従って、製造が容易となり、様々な用途に用いることが可能となる。
また、電磁波反射層4を用い且つ電磁波吸収層3の厚さや材料定数を制御すれば、電磁波吸収シート1の表面上において無反射となる無反射条件を利用したλ/4型電磁波吸収体を実現することができ、電磁波吸収シート1に進入した電磁波を減衰させることが可能となる。それにより、薄層であっても高い電磁波吸収性能を示す電磁波吸収シート1を実現することが可能となる。
【0044】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、フッ素系ポリマー膜2及び電磁波吸収層3に用いる材料は上記実施形態に記載した材料以外であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 電磁波吸収体
2 フッ素系ポリマー膜
3 電磁波吸収層
4 電磁波反射層
10 紫外線散乱剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を吸収する電磁波吸収層と、
前記電磁波吸収層に対して積層されたフッ素系ポリマー膜と、を有することを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記フッ素系ポリマー膜中には紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が分散されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤は、電磁波を吸収する電磁波吸収材料であることを特徴とする請求項2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記電磁波吸収層は、電磁波吸収材料を含む熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記電磁波吸収層の一方の面に対して積層され、入射された電磁波を反射する電磁波反射層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電磁波吸収体。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−245112(P2010−245112A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89256(P2009−89256)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】