説明

電磁波吸収体

【課題】シート厚さを抑えたままで、所定の電磁波の透過抑制効果を発揮する電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】電磁波吸収体10は、磁性粉体1aがバインダー1bに密に混合され、シート状に形成された磁性層1と、導電性インクが印刷された導電層2と、を有する。したがって、磁性層1に入射した電磁波3aは磁性層1において吸収され、完全に吸収されないで一部が透過した場合でも、透過した電磁波3bが導電層2において反射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体、特に、板状の電磁波吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器から放出される不要電磁波の低減や電子機器に生じる電磁障害の抑制のため、バインダーに磁性粉を分散させ、シート状の磁性層を形成して磁気シートが用いられていた。このとき、使用環境による厚みの変化を抑え、透磁率の低下を防止し、電気抵抗を向上するため、バインダーに絶縁性ゴム微粒子を含有させた磁気シートおよびその製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−295671号公報(第4−6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、電磁波の透過抑制効果を高めようとすると、その厚さを増す必要があるため、シート厚さを抑えたままで、所定の電磁波の透過抑制効果を発揮する電磁波吸収体およびその製造方法が求められていた。
【0005】
本発明は、上記要求に応えるものであって、シート厚さを抑えたままで、所定の電磁波の透過抑制効果を発揮する電磁波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の電磁波吸収体は、磁性粉体がバインダーに密に混合され、シート状に形成された磁性層と、該磁性層の一方の面に形成された導電層と、を有することを特徴とする。
(2)また、前記導電層が印刷された導電性インクあるいは塗布された導電性ペーストであることを特徴とする。
(3)あるいは、前記導電層がメッキまたは蒸着された金属膜であることを特徴とする。
(4)さらに、前記バインダーが天然ゴム、人工ゴムあるいは合成樹脂の何れかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電磁波吸収体は、磁性層の一方の面に形成された導電層を有するから、磁性層に入射した電磁波が磁性層において完全に吸収されないで、一部が透過した場合でも、該透過した電磁波が導電層において反射される。したがって、導電層の磁性層側でない方向への電磁波の漏れが最少に抑えられる。また、導電層において反射され、再度磁性層に入射した電磁波は、再度吸収され、磁性層の導電層側でない方向への電磁波の反射が最少に抑えられる。
したがって、所定の電磁波の透過抑制効果を得るために必要な磁性層の厚さを、薄くすることができる。
また、導電層が印刷された導電性インク等であるから、導電層自体も薄くすることができ、電磁波吸収体の全体厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁波吸収体を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。
図1において、電磁波吸収体10は、シート状の磁性層1と、磁性層1に印刷された導電層2と、を有している。
磁性層1は磁性粉体1aがバインダー1bに密に混合され、シート状に形成されたものである。また、導電層2は導電性インクが印刷されたものである。
したがって、磁性層1に入射した電磁波3aは磁性層1において吸収される。また、
完全に吸収されないで、一部が透過した場合でも、透過した電磁波3bが導電層2において反射されるから、導電層2の磁性層1側でない方向(図中、上方向)への電磁波3bの漏れが最少に抑えられる。さらに、導電層2において反射され、再度磁性層に入射した電磁波3cは、再度吸収され、磁性層の導電層側でない方向(図中、下方向)への電磁波の反射が最少に抑えられる。
したがって、所定の電磁波の透過抑制効果を得るために必要な磁性層の厚さを、薄くすることができる。また、導電層2が導電性インクを印刷したものであるから、導電層2自体も薄くすることができ、電磁波吸収体10全体の厚さを薄くすることができる。
【0010】
なお、本発明は、磁性粉体1aやバインダー1bの化学成分や形態(粒径等)を限定するものではない。例えば、磁性粉体1aは一定方向に並べたものであっても、ランダムに配置したものであってもよい。また、バインダー1bは、天然ゴム、人工ゴム、合成樹脂等、何れであってもよい。
なお、印刷方法および導電性インクについても限定するものではない。さらに、印刷に代えて、導電性ペーストを塗布したり、金属膜をメッキや蒸着によって形成したりしてもよい。
なお、以上は、磁性層1が平面状のシートであるものを図示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、曲面状であったり、厚さが不均一であったりしてもよい。
【0011】
よって、所望の電磁波吸収性能を有する電磁波吸収体の厚さを薄くすることができる。また、導電層を安価に設けることができるから、電磁波吸収体を安価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明に係る電磁波吸収体を設置することができる電子機器は限定されるものではないから、周囲への電磁波の伝播を抑えたり、周囲からの電磁波の影響を避けたい各種電子機器に広く設置することができる。
【符号の説明】
【0013】
1 磁性層
1a 磁性粉体
1b バインダー
2 導電層
3a 電磁波
3b 電磁波
3c 電磁波
10 電磁波吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体がバインダーに密に混合され、シート状に形成された磁性層と、
該磁性層の一方の面に形成された導電層と、
を有することを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記導電層が印刷された導電性インクあるいは塗布された導電性ペーストであることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記導電層がメッキまたは蒸着された金属膜であることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記バインダーが天然ゴム、人工ゴムあるいは合成樹脂の何れかであることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−181815(P2011−181815A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46504(P2010−46504)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000145378)株式会社秀峰 (32)
【Fターム(参考)】