電磁結合器、それを搭載した無線端末、及び電磁結合器の設計方法
【課題】電極の構造の制約を受けずに静電界や誘導電界を用いて通信することができる電磁結合器を提供する。
【解決手段】縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長である電磁結合器。
【解決手段】縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長である電磁結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離に配置された無線端末間で静電界や誘導電界を用いて情報等を無線通信する無線通信システムに好適な電磁結合器、それを搭載した無線端末、及び電磁結合器の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁結合器としては、特許文献1に記載されている電磁結合器(高周波結合器)がある。この電磁結合器は、近距離において縦波の静電界若しくは誘導電界を用いて通信を行うことができる。また、広帯域信号を用いるUWB(Ultra Wide Band)通信方式により、電磁結合器を搭載した無線端末間で大容量のデータを通信することが可能である。
【0003】
また、この無線通信システムにおいて送信側の無線端末(送信機)と受信側の無線端末(受信機)に搭載される電磁結合器は、平板状の電極と直列インダクタ、並列インダクタを給電線(高周波信号伝送路)にて接続して構成される。電磁結合器が向かい合うように配置したときに無線通信で対象とする周波数帯においてインピーダンス・マッチングが取れるように、2つの電極によるコンデンサの定数、直列インダクタ、及び並列インダクタが設定される。これにより、対象とする周波数帯において、向かい合った2つの電磁結合器が全体としてバンドパス・フィルタのように動作するため、2つの電磁結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4345851号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】羽石操、外2名,「小形・平面アンテナ」,社団法人電子情報通信学会,p.23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、従来技術の電磁結合器は、平板状の電極と直列インダクタ、並列インダクタにより構成される。この電磁結合器の設計パラメータとしては、電極の寸法、直列インダクタの値、並列インダクタの値となる。直列インダクタと並列インダクタとしてはチップ部品を用いることができるが、通常のチップ部品は、対象とする周波数帯によっては損失が大きく、コストも比較的高い。一方、低損失なチップ部品は、コストがさらに高いという問題がある。
【0007】
そこで、従来の電磁結合器は、チップ部品を用いる代わりに、汎用のプリント基板を用いて形成することができる。この場合、直列インダクタ、並列インダクタは、マイクロストリップのような伝送線路を用いて形成される。プリント基板を用いて電磁結合器を形成することで、損失の増加を抑制することができると共に、チップ部品を用いる場合よりコストを低減することができる。しかしこの場合は、電極の寸法の他に、直列インダクタと並列インダクタを構成する伝送線路の線路幅、線路長、及び配置が設計パラメータとなる。
【0008】
従来の電磁結合器は、対向して配置したときに、電極間の距離がある値であれば、電極間に適当な容量値のコンデンサが実現され、ある周波数において通信が可能である。一方で、適当な値のコンデンサが実現されない場合には、通信が困難となる。しかし、電磁結合器を搭載した無線端末を互いに対向させて配置した場合、それぞれの電磁結合器の電極間の距離によっては、適当な容量値のコンデンサが得られないこともあり得る。例えば、電磁結合器の電極間の距離が最も近くなるように無線端末同士を配置した場合でも、無線端末の構造等により電極間の距離が比較的大きい場合は希望する容量値を得ることが困難である。このような場合は適当な容量値のコンデンサが実現されないため、通信が困難となる。容量値の調整は電極の面積を変更することによって可能ではあるが、電極の構造には対向する電極の面積が等しいなどの制約があるため、電極の面積を変更することは困難である。
【0009】
また、このような電磁結合器を用いた通信において、場合によっては通信可能な方向の増加が必要となる。通信可能な方向の増加は、電極の面積を増加させ、電極から生じる電界を広範囲に発生させることで可能となる。しかしながら、従来の電磁結合器は、電極間に適当な容量値を実現する必要があり電極の構造に制約があるため、従来の電磁結合器では、通信可能な方向を増加させることは困難である。
【0010】
そこで、本発明は、電極の構造の制約を受けずに静電界や誘導電界を用いて通信することができる電磁結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であるものである。
【0012】
上記の電磁結合器において、前記放射導体は、前記複数の矩形導体の長辺と平行な直線とのなす角度がπ/2rad以外となる直線を対称軸として線対称となるように前記複数の矩形導体が配置されていてもよい。
【0013】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが同一平面上に形成されていてもよい。
【0014】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体は、それぞれ、λ/4の整数倍の電気長の長辺を有してもよい。
【0015】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体は、前記波長λの0.15倍より小さい電気長の短辺を有してもよい。
【0016】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが誘電体基板に形成されてもよい。
【0017】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが金属板から形成されてもよい。
【0018】
上記の電磁結合器において、前記放射導体の一端が開放されており、前記給電部から前記放射導体の開放された一端までの長さが、λ/4の奇数倍であってもよい。
【0019】
上記の電磁結合器において、前記放射導体の一端が短絡されており、前記給電部から前記放射導体の短絡された一端までの長さが、λ/4の偶数倍であってもよい。
【0020】
また、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器と、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュールとを備えた無線端末において、前記電磁結合器は、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であり、前記送受信モジュールの信号線は、前記放射導体の前記給電部に接続されているものである。
【0021】
上記の無線端末において、前記送受信モジュールは、前記電磁結合器の前記グラウンド導体に配置されていてもよい。
【0022】
また、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器の設計方法において、初期構造として、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択するステップと、選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップと、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップとを有しているものである。
【0023】
上記の電磁結合器の設計方法において、前記選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たさないと評価された場合に、前記矩形導体と前記グラウンド導体の距離、及び前記矩形導体の長辺の電気長の少なくとも一方を調整するステップを有してもよい。
【0024】
上記の電磁結合器の設計方法において、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしていないと評価された場合に、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と前記放射導体の両端までの電気長を、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4の整数倍の中から選択するステップを有してもよい。
【0025】
上記の電磁結合器の設計方法において、初期構造として、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を選択してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電極の構造の制約を受けずに静電界や誘導電界を用いて通信することができる電磁結合器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、電界の縦波と横波を説明する図である。
【図2】式(1)、式(2)を元に計算した電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示す。
【図3】図3は、矩形導体を有する電磁結合器が放射する電界を説明する図である。
【図4】図4は、矩形導体を有する電磁結合器が放射する電界を説明する図である。
【図5】図5は、本発明に係る電磁結合器の設計方法の一例を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態の電磁結合器11を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態の電磁結合器11の試作品を示す図である。
【図8】図8は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定方法を示す図である。
【図9】図9は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態の電磁結合器21を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施形態の電磁結合器31を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態の電磁結合器41を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第5の実施形態の電磁結合器51を示す図である。
【図14】図14は、本発明の第6の実施形態の電磁結合器61を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有するものである。この複数の矩形導体は、各矩形導体の長辺(長辺の延長線を含む)が隣接する矩形導体の長辺(長辺の延長線を含む)とπrad以外の角度で交わるように接続されている。また、給電部から放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長である。
【0029】
矩形導体は、短辺の長さに対応する電気長が対象とする周波数帯の中心に対する波長の0.15倍より小さく、かつ、長辺の長さに対応する電気長が対象とする周波数帯の中心に対する波長の約1/4倍の整数倍であることが好ましい。このとき、矩形導体は、短辺の中心点と、該中心点から最も近いグラウンド導体の一箇所から矩形導体方向を見た入力アドミタンスの実数成分が対象とする周波数帯の中心周波数において極大値を持つ。
【0030】
本発明の電磁結合器は、矩形導体とグラウンド導体間の距離を調整することで、結合強度の調整を行うことができる。この距離と対象とする周波数帯における入力アドミタンスの実数成分の極大値は負の相関関係にあり、また、実数成分が極大値をもつ周波数にて虚数成分が零である。よってこの距離を調整することで、入力アドミタンスの虚数成分が零である給電系との整合調整が容易に可能である。
【0031】
なお、本明細書において結合強度とは、2つの電磁結合器を対向して配置し、電磁結合器間の距離が、電磁結合器間の無線通信において静電界や誘導電界が支配的となる距離にある場合に、一方の電磁結合器からのある周波数の信号を入力したときの入力電力に対する他方の電磁結合器からの出力電力の比を示す。ここで、電磁結合器間の無線通信において静電界や誘導電界が支配的となる距離とは、対象とする周波数帯の中心周波数に対応する波長の1/10倍より小さい距離を意味する。また、結合範囲とは、ある一定の結合強度(結合強度の希望値)を実現する場合の両電磁結合器の相対位置の範囲を示す。
【0032】
図1は、電界の縦波と横波を説明する図である。式(1)、式(2)、および図1に示すように、微小ダイポール(Il)から生じる電界には縦波(Er)と横波(Eθ)がある(非特許文献1)。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、Ilは原点Oを通りZ軸上にある微小ダイポールを示す。noはこのときの特性インピーダンスを、Erは観測点Pにおける縦波を、Eθは観測点Pにおける横波を、rは微小ダイポールから観測点Pまでの距離を、koは波数を、jは虚数単位を、wは角周波数を、εoは真空の誘電率を、μoは真空の透磁率を、θはZ軸(微小ダイポール)と観測点Pのなす角を示す。
【0036】
図2に式(1)と式(2)を元に計算した電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示す。図2の横軸は電界の波長と距離の比(r/λ)を示し、図2の縦軸は電界強度を対数で示している。図2には、以下の(a)〜(d)の5つの電界成分の大きさを示す。
【0037】
(a)縦波の1/r^2を含む項の絶対値
(b)縦波の1/r^3を含む項の絶対値
(c)横波の1/r^1を含む項の絶対値
(d)横波の1/r^2を含む項の絶対値
(e)横波の1/r^3を含む項の絶対値
【0038】
図2に示すように、電界強度の対数とr/λは負の比例関係にあるが、比例係数の差によりそれぞれ傾きが異なっている。したがって、電磁結合器同士が結合する場合、最大の結合強度を得るために用いるべき電界成分は、両者間のr/λに依存する。特に、電磁結合として利用するr/λが0.1より小さい領域では(b)と(e)が支配的であることがわかる。本発明では、以下に説明するように、それぞれの矩形導体の長辺がなす角を選択することによって、適当な電界成分を選択することが可能である。
【0039】
例えば、図3に示す電磁結合器1は、平面上の微小ダイポールと等価の電流が生じる1つの矩形導体2と、グラウンド導体3と、矩形導体2とグラウンド導体3との間に接続された電源4とから構成される。矩形導体2の長辺と平行な直線と、矩形導体2と結合対象である他の電磁結合器を結ぶ仮想直線(結合方向)と平行なZ軸となす角度がπ/2radであるとき、Z方向と平行な電界成分は生じず、Z方向には(c)、(d)、(e)の電界成分(横波)のみが放射される。
【0040】
一方、図4に示す電磁結合器6は、平面上の微小ダイポールと等価の電流が生じる1つの矩形導体7と、グラウンド導体8と、矩形導体7とグラウンド導体8との間に接続された電源9とから構成される。矩形導体7の長辺と平行な直線と、矩形導体7と結合対象である電磁結合器を結ぶ仮想直線(結合方向)と平行なZ軸となす角度がπ/4radであるとき、Z方向と平行な電界成分が生じ、Z方向には(a)〜(e)すべての電界成分(横波と縦波)が放射される。
【0041】
図3の電磁結合器1と図4の電磁結合器6において、矩形導体からのr/λが0.03の地点における電界強度の和は、それぞれ153.5dBと157.1dBであり、図4の電磁結合器6の方が大きい。このように結合方向に対する矩形導体の角度により放射する電界強度が異なるため、角度を適当に選択することで結合強度の調整が可能である。
【0042】
また、式(1)と式(2)からわかるように、縦波の電界成分は、横波の電界成分と異なり1/rに比例する項を持たないため、距離に対する減衰量が大きい。したがって、図4に示す電磁結合器6は、Z方向に縦波を放射しない図3に示す電磁結合器1と比較して、距離に対する電界強度の減衰が大きい。このため、図4に示す電磁結合器6同士を対向させた場合の結合強度は、図3に示す電磁結合器1同士を対向させた場合の結合強度と比較して、電磁結合器間の距離に対する減衰が急である。したがって、図4のように結合方向に対して矩形導体7を傾けることは、近距離で情報を無線通信する電磁結合器にとって好適な構成である。また、結合方向に対する矩形導体の角度を適当に選択することで距離に対する結合強度の調整も可能である。
【0043】
また、本発明の電磁結合器は、構成要素が矩形導体およびグラウンド導体であり、電極が不要であるため、構造が単純である。本発明の電磁結合器は、汎用のプリント基板や導体板を用いて形成することができ、低コスト化を実現することができる。
【0044】
次に、本発明による電磁結合器の設計方法について説明する。この設計方法の目的は、所望の結合強度と結合範囲を達成する電磁結合器を実現することである。結合強度を増加する方法のひとつとして、電磁結合器と給電系の整合条件を向上する方法があり、結合範囲を増加する方法のひとつとして、電磁結合器から生じる電界の範囲が広くなるように、電磁結合器の形状を変更する方法がある。
【0045】
図5の設計フローチャートを用いて、本発明に係る電磁結合器の設計方法を説明する。
【0046】
図5は、本発明に係る電磁結合器の設計方法の一例を説明する設計フローチャートである。設計方法の対象は電磁結合器である。最初に電磁結合器の初期構造を決定する(S1)。初期構造としては、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択することができる。例えば、より小型な電磁結合器を求める場合は、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長λの約1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を初期構造として選択することができる。
【0047】
次に、初期構造に関し、結合範囲の中心において結合強度を評価する(S2)。結合範囲の中心において結合強度が希望値を満たしているかどうかを判定し(S3)、希望値を満たしている場合は、次に結合範囲での結合強度を評価する(S4)。結合範囲において結合強度が希望値を満たしているかどうかを判定し(S5)、希望値を満たしている場合は、設計を終了する。
【0048】
一方、結合範囲の中心において結合強度が希望値を満たさない場合は、矩形導体(放射導体)とグラウンド導体との距離及び矩形導体(放射導体)の電気長を調整し、給電系との整合条件を調整する(S6)。対象とする周波数帯における矩形導体の入力アドミタンスの実数成分の値は、矩形導体とグラウンド導体との距離に依存し、矩形導体の入力アドミタンスの虚数成分は、矩形導体の長辺の電気長に依存する。このため、矩形導体とグラウンド導体との距離と矩形導体の長辺の電気長を調整することにより、給電系との整合条件を調整することが可能である。このように整合条件の調整を行うことで、結合範囲の中心において希望値を満たす結合強度を実現することができる。
【0049】
また、前述のようにそれぞれの矩形導体の長辺のなす角度を適度に調整することにより、放射する電界成分の方向を調整し、結合強度を調整することができる。これにより、結合範囲の中心において希望値を満たす結合強度を実現することができる。
【0050】
一方、結合範囲における結合強度の評価結果が希望値を満たさない場合は、電磁結合器の構造を変更する(S7)。例えば、結合範囲のうちある特定の範囲において結合強度が弱い場合は、この特定の範囲に電界が乗じるように放射導体の給電部から両端までの長さを約λ/4の整数倍の電気長に変更するとよい。このとき、放射導体の両端が開放である場合は、放射導体の給電部から両端までの電気長を、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の約1/4の奇数倍となるように矩形導体を配置すればよい。また、放射導体の両端が短絡である場合は、放射導体の給電部から両端までの電気長を、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の約1/4の偶数倍となるように矩形導体を配置すればよい。
【0051】
放射導体の電気長をこのように選択することで、矩形導体の入力インピーダンスは対象とする周波数帯において共振周波数を持ち、入力インピーダンスの虚数成分は零となる。よって、一般的な入力インピーダンスの虚数成分が零である給電系との整合調整が容易となり、結合強度の調整が容易となる。これら電磁結合器の構造変更の後に、図5のフローチャートの結合範囲の中心での結合強度を評価するところに戻り、設計を進めて行く。
【0052】
以上のように、本発明によれば、希望する結合強度及び結合範囲を有する電磁結合器を容易に設計することができる。また、結合範囲の中心において結合強度を評価するステップと、結合範囲での結合強度を評価するステップとに分けて結合強度が希望値を満たしているかを評価することによって、設計に要する時間を短縮することができる。
【0053】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について図6を用いて説明する。
【0054】
図6に示される電磁結合器11は、グラウンド導体12と、2つの矩形導体13a,13bが一列に接続された放射導体13と、2つの矩形導体13a,13bの接続部に形成された給電部14とを有する。2つの矩形導体13a,13bは、その長辺の延長線同士がπrad以外の角度(本実施形態ではπ/2rad)で交わるように接続されている。また、グラウンド導体12と給電部14との間には、電源15が接続されている。
【0055】
放射導体13は、対称軸Aに対して線対称となるように2つの矩形導体13a,13bが配置されている。対称軸Aと、矩形導体13a,13bの各長辺に対し平行な直線とのなす角度は、π/2rad以外のπ/4radとなっている。ただし、当該角度は、必ずしもπ/4radでなくとも良く、必要な結合強度や結合範囲に応じて適宜調整することができる。この調整は、前述の設計方法に基づき行うことができ、計算によって行うことができる。
【0056】
2つの矩形導体13a,13bの各々1つの短辺は給電部14から並列に接続され、矩形導体13a,13bの接続されない短辺はグラウンド導体12と接続されずに開放されている。したがって、放射導体13の両端がそれぞれ開放されているため、給電部14から放射導体13の両端までの長さは、電磁結合器11が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長とする。ここでは、矩形導体13a,13bとしては、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4またはその奇数倍の導体を用いる。
【0057】
本実施形態では、対称軸Aは、結合対象である他の電磁結合器を結ぶ仮想直線と平行な直線となっている。また、本実施形態ではさらに、対称軸Aは、グラウンド導体12の放射導体13と対向した辺から垂直に伸びている。
【0058】
グラウンド導体12と放射導体13は、同一平面上に形成されている。このため、例えば、汎用の1層のガラスエポキシプリント基板で電磁結合器11を形成することができ、低コスト化を実現することができる。また、銅板、鉄板などの金属板を用いて電磁結合器11を形成することもできる。この場合、打ち抜き加工を用いて電磁結合器を形成することができる。また、打ち抜き後の金属板に対しては、同軸ケーブル等の給電線を接続した後に、絶縁フィルム等によりラミネートしてもよい。
【0059】
前述のように、従来の電磁結合器を汎用のプリント基板を用いて形成した場合、電極の寸法と、直列インダクタと並列インダクタを構成する伝送線路の線路幅、線路長、及び配置が設計パラメータとなる。これに対して、本発明では、矩形導体の幅、長さ、及び配置が設計パラメータとなるが、電極は不要である。したがって、従来の電磁結合器と比較すると、本発明の電磁結合器は、電極の設計が不要になった分だけ設計パラメータが減少しているため、設計が容易となると共にコストが低減される。また、本発明の電磁結合器は、電極の構造の制約を受けずに結合強度や結合範囲の調整をすることができる。
【0060】
また、本発明の電磁結合器は矩形導体の電気長や組み合わせを変えることにより、結合範囲の調整が可能である。このため、比較的広い結合範囲を有する電磁結合器を実現することが可能である。したがって、本発明によると、電磁結合器を含む無線端末や装置の設計の自由度が高い。
【0061】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図10を用いて説明する。
【0062】
図10に示される電磁結合器21は、グラウンド導体22と、2つの矩形導体23a,23bが一列に接続された放射導体23と、2つの矩形導体23a,23bの接続部に形成された給電部24とを有する。グラウンド導体22と給電部24との間には、電源25が接続されている。放射導体23の両端はそれぞれ開放されており、給電部24から放射導体23の両端までの長さは、電磁結合器21が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長である。したがって、矩形導体23a,23bは、その長手方向の長さがそれぞれ約λ/4またはその奇数倍の導体を用いている。
【0063】
ここで、第2の実施形態の電磁結合器21は、2つの矩形導体23a,23bの配置において第1の実施形態の電磁結合器11と異なっている。すなわち、2つの矩形導体23a,23bは、第1の実施形態と同様に、その長辺の延長線同士がπ/2radで交わるように接続されていると共に、対称軸Aに対して線対称となるように配置されているが、対称軸Aに対する矩形導体23a,23bの各長辺と平行な直線の方向が第1の実施形態と異なっている。なお、本実施形態の電磁結合器21は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏する。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について図11を用いて説明する。
【0065】
図11に示される電磁結合器31は、グラウンド導体32と、4つの矩形導体33a〜33dが一列に接続された放射導体33と、4つの矩形導体33a〜33dの接続部の一箇所に形成された給電部34とを有する。この4つの矩形導体33a〜33dは、各長辺の延長線が隣接する矩形導体の長辺の延長線とπ/2radで交わるようにジグザグに接続されている。給電部34は、矩形導体33aと矩形導体33bとの接続部に形成されている。また、グラウンド導体32と給電部34との間には、電源35が接続されている。
【0066】
放射導体33は、対称軸Aに対して線対称となるように矩形導体33a〜33dが配置されている。また、対称軸Aと矩形導体33a〜33dの各長辺と平行な直線とのなす角度は、それぞれπ/4radとなっている。矩形導体33a〜33dとしては、電磁結合器31が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4の電気長の導体を用いている。したがって、給電部34から放射導体33の両端までの長さは、約λ/4と約3λ/4となっている。放射導体33の両端はそれぞれ開放されているが、給電部34から放射導体33の両端までの長さは、波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長という条件を満足している。
【0067】
本実施形態の電磁結合器31は、第1の実施形態の電磁結合器11と比較して、給電部34から放射導体33の一方の端部までの線路長が長いため、結合範囲がより大きい。また、本実施形態の電磁結合器31は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏することもできる。
【0068】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について図12を用いて説明する。
【0069】
図12に示される電磁結合器41は、グラウンド導体42と、4つの矩形導体43a〜43dが一列に接続され、その両端がそれぞれグラウンド導体42に短絡された放射導体43と、4つの矩形導体43a〜43dの接続部の一箇所に形成された給電部44とを有する。この4つの矩形導体43a〜43dは、各長辺の延長線が隣接する矩形導体の長辺の延長線とπ/2radで交わるように接続されている。給電部44は、矩形導体43bと矩形導体43cとの接続部に形成されている。また、グラウンド導体42と給電部44との間には、電源45が接続されている。
【0070】
放射導体43は、対称軸Aに対して線対称となるように矩形導体43a〜43dが配置されている。また、対称軸Aと矩形導体43a〜43dの各長辺と平行な直線とのなす角度は、それぞれπ/4radとなっている。矩形導体43a〜43dとしては、電磁結合器41が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4の導体を用いている。したがって、給電部44から放射導体43の両端までの長さは、それぞれ約λ/2となっている。放射導体43の両端はそれぞれグラウンド導体42に短絡されているが、給電部44から放射導体43の両端までの長さは、波長λに関して、約λ/4の偶数倍の電気長という条件を満足している。
【0071】
本実施形態の電磁結合器41は、第1の実施形態の電磁結合器11と比較して、給電部44から放射導体43の両端までの長さが長いため、結合範囲がより大きい。また、本実施形態の電磁結合器41は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏することもできる
【0072】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態について図13を用いて説明する。
【0073】
図13に示される電磁結合器51は、グラウンド導体52と、2つの矩形導体53a,53bが一列に接続された放射導体53と、2つの矩形導体53a,53bの接続部に形成された給電部54とを有する。これらの構成については、第1の実施形態の電磁結合器11と同様である。しかし、本実施形態の電磁結合器51では、グラウンド導体52と給電部54との間には、電源55が接続されているが、同軸ケーブル56を用いて給電が行われている。すなわち、同軸ケーブル56の中心導体が給電部54に接続され、同軸ケーブル56の外部導体がグラウンド導体52に接続されている。
【0074】
本実施形態では、同軸ケーブル56を用いることで電磁結合器51の配置の自由度が向上する。この結果、結合強度や結合範囲が好適な場所に電磁結合器51を配置することが可能であり、電磁結合器51の特性向上が可能である。なお、第2〜第4の実施形態の電磁結合器についても、同軸ケーブルを用いて給電を行うことができる。
【0075】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態について図14を用いて説明する。
【0076】
図14に示される電磁結合器61は、グラウンド導体62と、2つの矩形導体63a,63bが一列に接続された放射導体63と、2つの矩形導体63a,63bの接続部に形成された給電部64とを有する。これらの構成については、第1の実施形態の電磁結合器11と同様である。しかし、本実施形態の電磁結合器61では、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュール68がグラウンド導体62に配置されている。
【0077】
送受信モジュール68は複数の信号線を有しており、そのうち一つの信号線Bは放射導体63の給電部64に接続されている。図14の信号線C〜信号線Fは、それぞれ外部に接続されている。本実施形態では、信号線Cは、送受信モジュール68にDC電流を給電するためのものであり、信号線Dは、送受信モジュール68に外部から制御信号を入力するためのものであり、信号線Eは、電磁結合器61を用いて無線通信する信号を送受信モジュール68に入力するためのものであり、信号線Fは、電磁結合器61から送受信モジュール68に入力した信号を外部に送信するためのものである。
【0078】
送受信モジュール68は、信号線Cを介して外部からDC電流が給電され、信号線Dを介して外部から送受信モジュール68の動作を制御するための制御信号を受信する。送受信モジュール68と電磁結合器61とを搭載した無線端末が送信を行う場合、無線通信する信号は信号線Eを介して送受信モジュール68に送信され、この信号は送受信モジュール68内で無線通信に適した信号に変調され、変調された信号は電磁結合器61から放射される。また、この無線端末が受信を行う場合、電磁結合器61から受信された信号は送受信モジュール68に送信され、この信号は送受信モジュール68の内部で復調され、復調された信号は信号線Fを介し外部に送信される。
【0079】
送受信モジュール68のグラウンド導体は、電磁結合器61のグラウンド導体62に配置されている。このように、電磁結合器61と送受信モジュール68を一体とすることで、電磁結合器61と送受信モジュール68とを搭載した無線端末の小型化が可能である。なお、第2〜第5の実施形態の電磁結合器についても、それぞれのグラウンド導体に送受信モジュール68を配置することができる。
【実施例】
【0080】
次に、第1の実施形態に係る電磁結合器11の実施例(試作品)を図7に示す。この実施例の電磁結合器11’を2つ作製し、これら2つの電磁結合器11’を対向して配置し、結合強度と結合範囲の測定を行った。
【0081】
作製した電磁結合器11’の試作品の寸法は、図7の通りである。電磁結合器11’の材料は、厚さが0.3mmの片面銅箔のガラスエポキシプリント基板を用いた。ガラスエポキシプリント基板を用いたことによる波長短縮率は約0.7である。また、対象とする周波数帯の中心周波数は、4.5GHzとした。中心周波数4.5GHzに対応する波長は、約67mmである。矩形導体の長辺の長さは、図7に示すように約12mmであるが、これは、中心周波数4.5GHzに対応する波長の1/4の電気長に概ね等しい長さである(波長×短縮率×1/4)。
【0082】
図8は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定方法を示す図である。図8に示すように、放射導体13’同士が向かい合うように2つの電磁結合器11’を対向して配置し、それぞれの電磁結合器11’に同軸ケーブル16を接続した。同軸ケーブル16の中心導体は、放射導体13’の給電部14’に接続されている。また、同軸ケーブル16の外部導体は、電磁結合器11’のグラウンド導体12’に接続されている。各電磁結合器11’に接続した同軸ケーブル16をそれぞれネットワークアナライザ17に接続し、結合強度を測定する。測定周波数は、4.5GHzである。このとき、図8に示すように、一方の電磁結合器11’の先端を原点として、それぞれ直行するX、Y、Z軸を定め2つの電磁結合器11’の相対位置をパラメータとする。電磁結合器11’の外形は矩形形状であるので、相対位置は矩形形状の対向する辺の中心同士の2点に関わるものである。
【0083】
相対位置Z=−10mmとした場合の測定結果を図9に示す。図9より、実施例の電磁結合器11’では、−10mm<X<10mm、−12mm<Y<12mmにおいて結合強度−30dB以上を実現できており、十分な結合強度と結合範囲を実現できていることがわかる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術思想、技術的範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正が可能であることは明らかである。例えば、放射導体を構成する矩形導体は、同等の機能を奏する範囲であれば、若干の湾曲や角の面取り等の変形が可能である。また、給電部から放射導体の両端までの長さは、対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関し、λ/4の整数倍の電気長を持つとしているが、同等の機能を奏する範囲であれば、若干の長さの差異があっても本発明の技術思想に含まれる。このことは、矩形導体についても同様である。
【符号の説明】
【0085】
11、21、31、41、51、61・・・電磁結合器
12、22、32、42、52、62・・・グラウンド導体
13、23、33、43、53、63・・・放射導体
13a〜13b、23a〜23b、33、43、53、63・・・矩形導体
14、24、34、44、54・・・給電部
15、25、35、45、55・・・電源
16、56・・・同軸ケーブル
17・・・ネットワークアナライザ
68・・・送受信モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離に配置された無線端末間で静電界や誘導電界を用いて情報等を無線通信する無線通信システムに好適な電磁結合器、それを搭載した無線端末、及び電磁結合器の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁結合器としては、特許文献1に記載されている電磁結合器(高周波結合器)がある。この電磁結合器は、近距離において縦波の静電界若しくは誘導電界を用いて通信を行うことができる。また、広帯域信号を用いるUWB(Ultra Wide Band)通信方式により、電磁結合器を搭載した無線端末間で大容量のデータを通信することが可能である。
【0003】
また、この無線通信システムにおいて送信側の無線端末(送信機)と受信側の無線端末(受信機)に搭載される電磁結合器は、平板状の電極と直列インダクタ、並列インダクタを給電線(高周波信号伝送路)にて接続して構成される。電磁結合器が向かい合うように配置したときに無線通信で対象とする周波数帯においてインピーダンス・マッチングが取れるように、2つの電極によるコンデンサの定数、直列インダクタ、及び並列インダクタが設定される。これにより、対象とする周波数帯において、向かい合った2つの電磁結合器が全体としてバンドパス・フィルタのように動作するため、2つの電磁結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4345851号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】羽石操、外2名,「小形・平面アンテナ」,社団法人電子情報通信学会,p.23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、従来技術の電磁結合器は、平板状の電極と直列インダクタ、並列インダクタにより構成される。この電磁結合器の設計パラメータとしては、電極の寸法、直列インダクタの値、並列インダクタの値となる。直列インダクタと並列インダクタとしてはチップ部品を用いることができるが、通常のチップ部品は、対象とする周波数帯によっては損失が大きく、コストも比較的高い。一方、低損失なチップ部品は、コストがさらに高いという問題がある。
【0007】
そこで、従来の電磁結合器は、チップ部品を用いる代わりに、汎用のプリント基板を用いて形成することができる。この場合、直列インダクタ、並列インダクタは、マイクロストリップのような伝送線路を用いて形成される。プリント基板を用いて電磁結合器を形成することで、損失の増加を抑制することができると共に、チップ部品を用いる場合よりコストを低減することができる。しかしこの場合は、電極の寸法の他に、直列インダクタと並列インダクタを構成する伝送線路の線路幅、線路長、及び配置が設計パラメータとなる。
【0008】
従来の電磁結合器は、対向して配置したときに、電極間の距離がある値であれば、電極間に適当な容量値のコンデンサが実現され、ある周波数において通信が可能である。一方で、適当な値のコンデンサが実現されない場合には、通信が困難となる。しかし、電磁結合器を搭載した無線端末を互いに対向させて配置した場合、それぞれの電磁結合器の電極間の距離によっては、適当な容量値のコンデンサが得られないこともあり得る。例えば、電磁結合器の電極間の距離が最も近くなるように無線端末同士を配置した場合でも、無線端末の構造等により電極間の距離が比較的大きい場合は希望する容量値を得ることが困難である。このような場合は適当な容量値のコンデンサが実現されないため、通信が困難となる。容量値の調整は電極の面積を変更することによって可能ではあるが、電極の構造には対向する電極の面積が等しいなどの制約があるため、電極の面積を変更することは困難である。
【0009】
また、このような電磁結合器を用いた通信において、場合によっては通信可能な方向の増加が必要となる。通信可能な方向の増加は、電極の面積を増加させ、電極から生じる電界を広範囲に発生させることで可能となる。しかしながら、従来の電磁結合器は、電極間に適当な容量値を実現する必要があり電極の構造に制約があるため、従来の電磁結合器では、通信可能な方向を増加させることは困難である。
【0010】
そこで、本発明は、電極の構造の制約を受けずに静電界や誘導電界を用いて通信することができる電磁結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であるものである。
【0012】
上記の電磁結合器において、前記放射導体は、前記複数の矩形導体の長辺と平行な直線とのなす角度がπ/2rad以外となる直線を対称軸として線対称となるように前記複数の矩形導体が配置されていてもよい。
【0013】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが同一平面上に形成されていてもよい。
【0014】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体は、それぞれ、λ/4の整数倍の電気長の長辺を有してもよい。
【0015】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体は、前記波長λの0.15倍より小さい電気長の短辺を有してもよい。
【0016】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが誘電体基板に形成されてもよい。
【0017】
上記の電磁結合器において、前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが金属板から形成されてもよい。
【0018】
上記の電磁結合器において、前記放射導体の一端が開放されており、前記給電部から前記放射導体の開放された一端までの長さが、λ/4の奇数倍であってもよい。
【0019】
上記の電磁結合器において、前記放射導体の一端が短絡されており、前記給電部から前記放射導体の短絡された一端までの長さが、λ/4の偶数倍であってもよい。
【0020】
また、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器と、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュールとを備えた無線端末において、前記電磁結合器は、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であり、前記送受信モジュールの信号線は、前記放射導体の前記給電部に接続されているものである。
【0021】
上記の無線端末において、前記送受信モジュールは、前記電磁結合器の前記グラウンド導体に配置されていてもよい。
【0022】
また、本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器の設計方法において、初期構造として、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択するステップと、選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップと、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップとを有しているものである。
【0023】
上記の電磁結合器の設計方法において、前記選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たさないと評価された場合に、前記矩形導体と前記グラウンド導体の距離、及び前記矩形導体の長辺の電気長の少なくとも一方を調整するステップを有してもよい。
【0024】
上記の電磁結合器の設計方法において、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしていないと評価された場合に、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と前記放射導体の両端までの電気長を、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4の整数倍の中から選択するステップを有してもよい。
【0025】
上記の電磁結合器の設計方法において、初期構造として、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を選択してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電極の構造の制約を受けずに静電界や誘導電界を用いて通信することができる電磁結合器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、電界の縦波と横波を説明する図である。
【図2】式(1)、式(2)を元に計算した電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示す。
【図3】図3は、矩形導体を有する電磁結合器が放射する電界を説明する図である。
【図4】図4は、矩形導体を有する電磁結合器が放射する電界を説明する図である。
【図5】図5は、本発明に係る電磁結合器の設計方法の一例を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態の電磁結合器11を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態の電磁結合器11の試作品を示す図である。
【図8】図8は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定方法を示す図である。
【図9】図9は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態の電磁結合器21を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施形態の電磁結合器31を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態の電磁結合器41を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第5の実施形態の電磁結合器51を示す図である。
【図14】図14は、本発明の第6の実施形態の電磁結合器61を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有するものである。この複数の矩形導体は、各矩形導体の長辺(長辺の延長線を含む)が隣接する矩形導体の長辺(長辺の延長線を含む)とπrad以外の角度で交わるように接続されている。また、給電部から放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長である。
【0029】
矩形導体は、短辺の長さに対応する電気長が対象とする周波数帯の中心に対する波長の0.15倍より小さく、かつ、長辺の長さに対応する電気長が対象とする周波数帯の中心に対する波長の約1/4倍の整数倍であることが好ましい。このとき、矩形導体は、短辺の中心点と、該中心点から最も近いグラウンド導体の一箇所から矩形導体方向を見た入力アドミタンスの実数成分が対象とする周波数帯の中心周波数において極大値を持つ。
【0030】
本発明の電磁結合器は、矩形導体とグラウンド導体間の距離を調整することで、結合強度の調整を行うことができる。この距離と対象とする周波数帯における入力アドミタンスの実数成分の極大値は負の相関関係にあり、また、実数成分が極大値をもつ周波数にて虚数成分が零である。よってこの距離を調整することで、入力アドミタンスの虚数成分が零である給電系との整合調整が容易に可能である。
【0031】
なお、本明細書において結合強度とは、2つの電磁結合器を対向して配置し、電磁結合器間の距離が、電磁結合器間の無線通信において静電界や誘導電界が支配的となる距離にある場合に、一方の電磁結合器からのある周波数の信号を入力したときの入力電力に対する他方の電磁結合器からの出力電力の比を示す。ここで、電磁結合器間の無線通信において静電界や誘導電界が支配的となる距離とは、対象とする周波数帯の中心周波数に対応する波長の1/10倍より小さい距離を意味する。また、結合範囲とは、ある一定の結合強度(結合強度の希望値)を実現する場合の両電磁結合器の相対位置の範囲を示す。
【0032】
図1は、電界の縦波と横波を説明する図である。式(1)、式(2)、および図1に示すように、微小ダイポール(Il)から生じる電界には縦波(Er)と横波(Eθ)がある(非特許文献1)。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、Ilは原点Oを通りZ軸上にある微小ダイポールを示す。noはこのときの特性インピーダンスを、Erは観測点Pにおける縦波を、Eθは観測点Pにおける横波を、rは微小ダイポールから観測点Pまでの距離を、koは波数を、jは虚数単位を、wは角周波数を、εoは真空の誘電率を、μoは真空の透磁率を、θはZ軸(微小ダイポール)と観測点Pのなす角を示す。
【0036】
図2に式(1)と式(2)を元に計算した電界の波長と距離の比(r/λ)と電界強度との関係を示す。図2の横軸は電界の波長と距離の比(r/λ)を示し、図2の縦軸は電界強度を対数で示している。図2には、以下の(a)〜(d)の5つの電界成分の大きさを示す。
【0037】
(a)縦波の1/r^2を含む項の絶対値
(b)縦波の1/r^3を含む項の絶対値
(c)横波の1/r^1を含む項の絶対値
(d)横波の1/r^2を含む項の絶対値
(e)横波の1/r^3を含む項の絶対値
【0038】
図2に示すように、電界強度の対数とr/λは負の比例関係にあるが、比例係数の差によりそれぞれ傾きが異なっている。したがって、電磁結合器同士が結合する場合、最大の結合強度を得るために用いるべき電界成分は、両者間のr/λに依存する。特に、電磁結合として利用するr/λが0.1より小さい領域では(b)と(e)が支配的であることがわかる。本発明では、以下に説明するように、それぞれの矩形導体の長辺がなす角を選択することによって、適当な電界成分を選択することが可能である。
【0039】
例えば、図3に示す電磁結合器1は、平面上の微小ダイポールと等価の電流が生じる1つの矩形導体2と、グラウンド導体3と、矩形導体2とグラウンド導体3との間に接続された電源4とから構成される。矩形導体2の長辺と平行な直線と、矩形導体2と結合対象である他の電磁結合器を結ぶ仮想直線(結合方向)と平行なZ軸となす角度がπ/2radであるとき、Z方向と平行な電界成分は生じず、Z方向には(c)、(d)、(e)の電界成分(横波)のみが放射される。
【0040】
一方、図4に示す電磁結合器6は、平面上の微小ダイポールと等価の電流が生じる1つの矩形導体7と、グラウンド導体8と、矩形導体7とグラウンド導体8との間に接続された電源9とから構成される。矩形導体7の長辺と平行な直線と、矩形導体7と結合対象である電磁結合器を結ぶ仮想直線(結合方向)と平行なZ軸となす角度がπ/4radであるとき、Z方向と平行な電界成分が生じ、Z方向には(a)〜(e)すべての電界成分(横波と縦波)が放射される。
【0041】
図3の電磁結合器1と図4の電磁結合器6において、矩形導体からのr/λが0.03の地点における電界強度の和は、それぞれ153.5dBと157.1dBであり、図4の電磁結合器6の方が大きい。このように結合方向に対する矩形導体の角度により放射する電界強度が異なるため、角度を適当に選択することで結合強度の調整が可能である。
【0042】
また、式(1)と式(2)からわかるように、縦波の電界成分は、横波の電界成分と異なり1/rに比例する項を持たないため、距離に対する減衰量が大きい。したがって、図4に示す電磁結合器6は、Z方向に縦波を放射しない図3に示す電磁結合器1と比較して、距離に対する電界強度の減衰が大きい。このため、図4に示す電磁結合器6同士を対向させた場合の結合強度は、図3に示す電磁結合器1同士を対向させた場合の結合強度と比較して、電磁結合器間の距離に対する減衰が急である。したがって、図4のように結合方向に対して矩形導体7を傾けることは、近距離で情報を無線通信する電磁結合器にとって好適な構成である。また、結合方向に対する矩形導体の角度を適当に選択することで距離に対する結合強度の調整も可能である。
【0043】
また、本発明の電磁結合器は、構成要素が矩形導体およびグラウンド導体であり、電極が不要であるため、構造が単純である。本発明の電磁結合器は、汎用のプリント基板や導体板を用いて形成することができ、低コスト化を実現することができる。
【0044】
次に、本発明による電磁結合器の設計方法について説明する。この設計方法の目的は、所望の結合強度と結合範囲を達成する電磁結合器を実現することである。結合強度を増加する方法のひとつとして、電磁結合器と給電系の整合条件を向上する方法があり、結合範囲を増加する方法のひとつとして、電磁結合器から生じる電界の範囲が広くなるように、電磁結合器の形状を変更する方法がある。
【0045】
図5の設計フローチャートを用いて、本発明に係る電磁結合器の設計方法を説明する。
【0046】
図5は、本発明に係る電磁結合器の設計方法の一例を説明する設計フローチャートである。設計方法の対象は電磁結合器である。最初に電磁結合器の初期構造を決定する(S1)。初期構造としては、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択することができる。例えば、より小型な電磁結合器を求める場合は、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長λの約1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を初期構造として選択することができる。
【0047】
次に、初期構造に関し、結合範囲の中心において結合強度を評価する(S2)。結合範囲の中心において結合強度が希望値を満たしているかどうかを判定し(S3)、希望値を満たしている場合は、次に結合範囲での結合強度を評価する(S4)。結合範囲において結合強度が希望値を満たしているかどうかを判定し(S5)、希望値を満たしている場合は、設計を終了する。
【0048】
一方、結合範囲の中心において結合強度が希望値を満たさない場合は、矩形導体(放射導体)とグラウンド導体との距離及び矩形導体(放射導体)の電気長を調整し、給電系との整合条件を調整する(S6)。対象とする周波数帯における矩形導体の入力アドミタンスの実数成分の値は、矩形導体とグラウンド導体との距離に依存し、矩形導体の入力アドミタンスの虚数成分は、矩形導体の長辺の電気長に依存する。このため、矩形導体とグラウンド導体との距離と矩形導体の長辺の電気長を調整することにより、給電系との整合条件を調整することが可能である。このように整合条件の調整を行うことで、結合範囲の中心において希望値を満たす結合強度を実現することができる。
【0049】
また、前述のようにそれぞれの矩形導体の長辺のなす角度を適度に調整することにより、放射する電界成分の方向を調整し、結合強度を調整することができる。これにより、結合範囲の中心において希望値を満たす結合強度を実現することができる。
【0050】
一方、結合範囲における結合強度の評価結果が希望値を満たさない場合は、電磁結合器の構造を変更する(S7)。例えば、結合範囲のうちある特定の範囲において結合強度が弱い場合は、この特定の範囲に電界が乗じるように放射導体の給電部から両端までの長さを約λ/4の整数倍の電気長に変更するとよい。このとき、放射導体の両端が開放である場合は、放射導体の給電部から両端までの電気長を、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の約1/4の奇数倍となるように矩形導体を配置すればよい。また、放射導体の両端が短絡である場合は、放射導体の給電部から両端までの電気長を、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の約1/4の偶数倍となるように矩形導体を配置すればよい。
【0051】
放射導体の電気長をこのように選択することで、矩形導体の入力インピーダンスは対象とする周波数帯において共振周波数を持ち、入力インピーダンスの虚数成分は零となる。よって、一般的な入力インピーダンスの虚数成分が零である給電系との整合調整が容易となり、結合強度の調整が容易となる。これら電磁結合器の構造変更の後に、図5のフローチャートの結合範囲の中心での結合強度を評価するところに戻り、設計を進めて行く。
【0052】
以上のように、本発明によれば、希望する結合強度及び結合範囲を有する電磁結合器を容易に設計することができる。また、結合範囲の中心において結合強度を評価するステップと、結合範囲での結合強度を評価するステップとに分けて結合強度が希望値を満たしているかを評価することによって、設計に要する時間を短縮することができる。
【0053】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について図6を用いて説明する。
【0054】
図6に示される電磁結合器11は、グラウンド導体12と、2つの矩形導体13a,13bが一列に接続された放射導体13と、2つの矩形導体13a,13bの接続部に形成された給電部14とを有する。2つの矩形導体13a,13bは、その長辺の延長線同士がπrad以外の角度(本実施形態ではπ/2rad)で交わるように接続されている。また、グラウンド導体12と給電部14との間には、電源15が接続されている。
【0055】
放射導体13は、対称軸Aに対して線対称となるように2つの矩形導体13a,13bが配置されている。対称軸Aと、矩形導体13a,13bの各長辺に対し平行な直線とのなす角度は、π/2rad以外のπ/4radとなっている。ただし、当該角度は、必ずしもπ/4radでなくとも良く、必要な結合強度や結合範囲に応じて適宜調整することができる。この調整は、前述の設計方法に基づき行うことができ、計算によって行うことができる。
【0056】
2つの矩形導体13a,13bの各々1つの短辺は給電部14から並列に接続され、矩形導体13a,13bの接続されない短辺はグラウンド導体12と接続されずに開放されている。したがって、放射導体13の両端がそれぞれ開放されているため、給電部14から放射導体13の両端までの長さは、電磁結合器11が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長とする。ここでは、矩形導体13a,13bとしては、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4またはその奇数倍の導体を用いる。
【0057】
本実施形態では、対称軸Aは、結合対象である他の電磁結合器を結ぶ仮想直線と平行な直線となっている。また、本実施形態ではさらに、対称軸Aは、グラウンド導体12の放射導体13と対向した辺から垂直に伸びている。
【0058】
グラウンド導体12と放射導体13は、同一平面上に形成されている。このため、例えば、汎用の1層のガラスエポキシプリント基板で電磁結合器11を形成することができ、低コスト化を実現することができる。また、銅板、鉄板などの金属板を用いて電磁結合器11を形成することもできる。この場合、打ち抜き加工を用いて電磁結合器を形成することができる。また、打ち抜き後の金属板に対しては、同軸ケーブル等の給電線を接続した後に、絶縁フィルム等によりラミネートしてもよい。
【0059】
前述のように、従来の電磁結合器を汎用のプリント基板を用いて形成した場合、電極の寸法と、直列インダクタと並列インダクタを構成する伝送線路の線路幅、線路長、及び配置が設計パラメータとなる。これに対して、本発明では、矩形導体の幅、長さ、及び配置が設計パラメータとなるが、電極は不要である。したがって、従来の電磁結合器と比較すると、本発明の電磁結合器は、電極の設計が不要になった分だけ設計パラメータが減少しているため、設計が容易となると共にコストが低減される。また、本発明の電磁結合器は、電極の構造の制約を受けずに結合強度や結合範囲の調整をすることができる。
【0060】
また、本発明の電磁結合器は矩形導体の電気長や組み合わせを変えることにより、結合範囲の調整が可能である。このため、比較的広い結合範囲を有する電磁結合器を実現することが可能である。したがって、本発明によると、電磁結合器を含む無線端末や装置の設計の自由度が高い。
【0061】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図10を用いて説明する。
【0062】
図10に示される電磁結合器21は、グラウンド導体22と、2つの矩形導体23a,23bが一列に接続された放射導体23と、2つの矩形導体23a,23bの接続部に形成された給電部24とを有する。グラウンド導体22と給電部24との間には、電源25が接続されている。放射導体23の両端はそれぞれ開放されており、給電部24から放射導体23の両端までの長さは、電磁結合器21が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長である。したがって、矩形導体23a,23bは、その長手方向の長さがそれぞれ約λ/4またはその奇数倍の導体を用いている。
【0063】
ここで、第2の実施形態の電磁結合器21は、2つの矩形導体23a,23bの配置において第1の実施形態の電磁結合器11と異なっている。すなわち、2つの矩形導体23a,23bは、第1の実施形態と同様に、その長辺の延長線同士がπ/2radで交わるように接続されていると共に、対称軸Aに対して線対称となるように配置されているが、対称軸Aに対する矩形導体23a,23bの各長辺と平行な直線の方向が第1の実施形態と異なっている。なお、本実施形態の電磁結合器21は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏する。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について図11を用いて説明する。
【0065】
図11に示される電磁結合器31は、グラウンド導体32と、4つの矩形導体33a〜33dが一列に接続された放射導体33と、4つの矩形導体33a〜33dの接続部の一箇所に形成された給電部34とを有する。この4つの矩形導体33a〜33dは、各長辺の延長線が隣接する矩形導体の長辺の延長線とπ/2radで交わるようにジグザグに接続されている。給電部34は、矩形導体33aと矩形導体33bとの接続部に形成されている。また、グラウンド導体32と給電部34との間には、電源35が接続されている。
【0066】
放射導体33は、対称軸Aに対して線対称となるように矩形導体33a〜33dが配置されている。また、対称軸Aと矩形導体33a〜33dの各長辺と平行な直線とのなす角度は、それぞれπ/4radとなっている。矩形導体33a〜33dとしては、電磁結合器31が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4の電気長の導体を用いている。したがって、給電部34から放射導体33の両端までの長さは、約λ/4と約3λ/4となっている。放射導体33の両端はそれぞれ開放されているが、給電部34から放射導体33の両端までの長さは、波長λに関して、約λ/4の奇数倍の電気長という条件を満足している。
【0067】
本実施形態の電磁結合器31は、第1の実施形態の電磁結合器11と比較して、給電部34から放射導体33の一方の端部までの線路長が長いため、結合範囲がより大きい。また、本実施形態の電磁結合器31は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏することもできる。
【0068】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について図12を用いて説明する。
【0069】
図12に示される電磁結合器41は、グラウンド導体42と、4つの矩形導体43a〜43dが一列に接続され、その両端がそれぞれグラウンド導体42に短絡された放射導体43と、4つの矩形導体43a〜43dの接続部の一箇所に形成された給電部44とを有する。この4つの矩形導体43a〜43dは、各長辺の延長線が隣接する矩形導体の長辺の延長線とπ/2radで交わるように接続されている。給電部44は、矩形導体43bと矩形導体43cとの接続部に形成されている。また、グラウンド導体42と給電部44との間には、電源45が接続されている。
【0070】
放射導体43は、対称軸Aに対して線対称となるように矩形導体43a〜43dが配置されている。また、対称軸Aと矩形導体43a〜43dの各長辺と平行な直線とのなす角度は、それぞれπ/4radとなっている。矩形導体43a〜43dとしては、電磁結合器41が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、長手方向の長さがそれぞれ約λ/4の導体を用いている。したがって、給電部44から放射導体43の両端までの長さは、それぞれ約λ/2となっている。放射導体43の両端はそれぞれグラウンド導体42に短絡されているが、給電部44から放射導体43の両端までの長さは、波長λに関して、約λ/4の偶数倍の電気長という条件を満足している。
【0071】
本実施形態の電磁結合器41は、第1の実施形態の電磁結合器11と比較して、給電部44から放射導体43の両端までの長さが長いため、結合範囲がより大きい。また、本実施形態の電磁結合器41は、第1の実施形態の電磁結合器11と同様の作用効果を奏することもできる
【0072】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態について図13を用いて説明する。
【0073】
図13に示される電磁結合器51は、グラウンド導体52と、2つの矩形導体53a,53bが一列に接続された放射導体53と、2つの矩形導体53a,53bの接続部に形成された給電部54とを有する。これらの構成については、第1の実施形態の電磁結合器11と同様である。しかし、本実施形態の電磁結合器51では、グラウンド導体52と給電部54との間には、電源55が接続されているが、同軸ケーブル56を用いて給電が行われている。すなわち、同軸ケーブル56の中心導体が給電部54に接続され、同軸ケーブル56の外部導体がグラウンド導体52に接続されている。
【0074】
本実施形態では、同軸ケーブル56を用いることで電磁結合器51の配置の自由度が向上する。この結果、結合強度や結合範囲が好適な場所に電磁結合器51を配置することが可能であり、電磁結合器51の特性向上が可能である。なお、第2〜第4の実施形態の電磁結合器についても、同軸ケーブルを用いて給電を行うことができる。
【0075】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態について図14を用いて説明する。
【0076】
図14に示される電磁結合器61は、グラウンド導体62と、2つの矩形導体63a,63bが一列に接続された放射導体63と、2つの矩形導体63a,63bの接続部に形成された給電部64とを有する。これらの構成については、第1の実施形態の電磁結合器11と同様である。しかし、本実施形態の電磁結合器61では、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュール68がグラウンド導体62に配置されている。
【0077】
送受信モジュール68は複数の信号線を有しており、そのうち一つの信号線Bは放射導体63の給電部64に接続されている。図14の信号線C〜信号線Fは、それぞれ外部に接続されている。本実施形態では、信号線Cは、送受信モジュール68にDC電流を給電するためのものであり、信号線Dは、送受信モジュール68に外部から制御信号を入力するためのものであり、信号線Eは、電磁結合器61を用いて無線通信する信号を送受信モジュール68に入力するためのものであり、信号線Fは、電磁結合器61から送受信モジュール68に入力した信号を外部に送信するためのものである。
【0078】
送受信モジュール68は、信号線Cを介して外部からDC電流が給電され、信号線Dを介して外部から送受信モジュール68の動作を制御するための制御信号を受信する。送受信モジュール68と電磁結合器61とを搭載した無線端末が送信を行う場合、無線通信する信号は信号線Eを介して送受信モジュール68に送信され、この信号は送受信モジュール68内で無線通信に適した信号に変調され、変調された信号は電磁結合器61から放射される。また、この無線端末が受信を行う場合、電磁結合器61から受信された信号は送受信モジュール68に送信され、この信号は送受信モジュール68の内部で復調され、復調された信号は信号線Fを介し外部に送信される。
【0079】
送受信モジュール68のグラウンド導体は、電磁結合器61のグラウンド導体62に配置されている。このように、電磁結合器61と送受信モジュール68を一体とすることで、電磁結合器61と送受信モジュール68とを搭載した無線端末の小型化が可能である。なお、第2〜第5の実施形態の電磁結合器についても、それぞれのグラウンド導体に送受信モジュール68を配置することができる。
【実施例】
【0080】
次に、第1の実施形態に係る電磁結合器11の実施例(試作品)を図7に示す。この実施例の電磁結合器11’を2つ作製し、これら2つの電磁結合器11’を対向して配置し、結合強度と結合範囲の測定を行った。
【0081】
作製した電磁結合器11’の試作品の寸法は、図7の通りである。電磁結合器11’の材料は、厚さが0.3mmの片面銅箔のガラスエポキシプリント基板を用いた。ガラスエポキシプリント基板を用いたことによる波長短縮率は約0.7である。また、対象とする周波数帯の中心周波数は、4.5GHzとした。中心周波数4.5GHzに対応する波長は、約67mmである。矩形導体の長辺の長さは、図7に示すように約12mmであるが、これは、中心周波数4.5GHzに対応する波長の1/4の電気長に概ね等しい長さである(波長×短縮率×1/4)。
【0082】
図8は、図7の試作品の結合強度と結合範囲の測定方法を示す図である。図8に示すように、放射導体13’同士が向かい合うように2つの電磁結合器11’を対向して配置し、それぞれの電磁結合器11’に同軸ケーブル16を接続した。同軸ケーブル16の中心導体は、放射導体13’の給電部14’に接続されている。また、同軸ケーブル16の外部導体は、電磁結合器11’のグラウンド導体12’に接続されている。各電磁結合器11’に接続した同軸ケーブル16をそれぞれネットワークアナライザ17に接続し、結合強度を測定する。測定周波数は、4.5GHzである。このとき、図8に示すように、一方の電磁結合器11’の先端を原点として、それぞれ直行するX、Y、Z軸を定め2つの電磁結合器11’の相対位置をパラメータとする。電磁結合器11’の外形は矩形形状であるので、相対位置は矩形形状の対向する辺の中心同士の2点に関わるものである。
【0083】
相対位置Z=−10mmとした場合の測定結果を図9に示す。図9より、実施例の電磁結合器11’では、−10mm<X<10mm、−12mm<Y<12mmにおいて結合強度−30dB以上を実現できており、十分な結合強度と結合範囲を実現できていることがわかる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術思想、技術的範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正が可能であることは明らかである。例えば、放射導体を構成する矩形導体は、同等の機能を奏する範囲であれば、若干の湾曲や角の面取り等の変形が可能である。また、給電部から放射導体の両端までの長さは、対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関し、λ/4の整数倍の電気長を持つとしているが、同等の機能を奏する範囲であれば、若干の長さの差異があっても本発明の技術思想に含まれる。このことは、矩形導体についても同様である。
【符号の説明】
【0085】
11、21、31、41、51、61・・・電磁結合器
12、22、32、42、52、62・・・グラウンド導体
13、23、33、43、53、63・・・放射導体
13a〜13b、23a〜23b、33、43、53、63・・・矩形導体
14、24、34、44、54・・・給電部
15、25、35、45、55・・・電源
16、56・・・同軸ケーブル
17・・・ネットワークアナライザ
68・・・送受信モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、
グラウンド導体と、
複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、
前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と
を有し、
前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、
前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項2】
請求項1記載の電磁結合器において、
前記放射導体は、前記複数の矩形導体の長辺と平行な直線とのなす角度がπ/2rad以外となる直線を対称軸として線対称となるように前記複数の矩形導体が配置されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが同一平面上に形成されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体は、それぞれ、λ/4の整数倍の電気長の長辺を有することを特徴とする電磁結合器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体は、前記波長λの0.15倍より小さい電気長の短辺を有することを特徴とする電磁結合器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが誘電体基板に形成されることを特徴とする電磁結合器。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが金属板から形成されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記放射導体の一端が開放されており、
前記給電部から前記放射導体の開放された一端までの長さが、λ/4の奇数倍であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記放射導体の一端が短絡されており、
前記給電部から前記放射導体の短絡された一端までの長さが、λ/4の偶数倍であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項10】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器と、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュールとを備えた無線端末において、
前記電磁結合器は、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、
前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、
前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であり、
前記送受信モジュールの信号線は、前記放射導体の前記給電部に接続されていることを特徴とする無線端末。
【請求項11】
請求項10の無線端末において、
前記送受信モジュールは、前記電磁結合器の前記グラウンド導体に配置されていることを特徴とする無線端末。
【請求項12】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器の設計方法において、
初期構造として、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択するステップと、
選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップと、
結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が、結合範囲において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップとを有していることを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項13】
請求項12記載の電磁結合器の設計方法において、
前記選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たさないと評価された場合に、前記矩形導体と前記グラウンド導体の距離、及び前記矩形導体の長辺の電気長の少なくとも一方を調整するステップを有することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項14】
請求項12又は13記載の電磁結合器の設計方法において、
結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしていないと評価された場合に、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と前記放射導体の両端までの電気長を、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4の整数倍の中から選択するステップを有することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項15】
請求項12〜14の何れか1項記載の電磁結合器の設計方法において、
初期構造として、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を選択することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項1】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器において、
グラウンド導体と、
複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、
前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と
を有し、
前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、
前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項2】
請求項1記載の電磁結合器において、
前記放射導体は、前記複数の矩形導体の長辺と平行な直線とのなす角度がπ/2rad以外となる直線を対称軸として線対称となるように前記複数の矩形導体が配置されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが同一平面上に形成されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体は、それぞれ、λ/4の整数倍の電気長の長辺を有することを特徴とする電磁結合器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体は、前記波長λの0.15倍より小さい電気長の短辺を有することを特徴とする電磁結合器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが誘電体基板に形成されることを特徴とする電磁結合器。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記複数の矩形導体と前記グラウンド導体とが金属板から形成されていることを特徴とする電磁結合器。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記放射導体の一端が開放されており、
前記給電部から前記放射導体の開放された一端までの長さが、λ/4の奇数倍であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項記載の電磁結合器において、
前記放射導体の一端が短絡されており、
前記給電部から前記放射導体の短絡された一端までの長さが、λ/4の偶数倍であることを特徴とする電磁結合器。
【請求項10】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器と、信号の変調と復調を行う通信用の送受信モジュールとを備えた無線端末において、
前記電磁結合器は、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とを有し、
前記複数の矩形導体は、隣接する矩形導体とπrad以外の角度で交わるように接続されており、
前記給電部から前記放射導体の両端までの長さは、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数の波長λに関して、λ/4の整数倍の電気長であり、
前記送受信モジュールの信号線は、前記放射導体の前記給電部に接続されていることを特徴とする無線端末。
【請求項11】
請求項10の無線端末において、
前記送受信モジュールは、前記電磁結合器の前記グラウンド導体に配置されていることを特徴とする無線端末。
【請求項12】
縦波の静電界と誘導電界の少なくとも一方を用いて信号の伝達を行う電磁結合器の設計方法において、
初期構造として、グラウンド導体と、複数の矩形導体が一列に接続された放射導体と、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部とからなる構造を選択するステップと、
選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップと、
結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が、結合範囲において結合強度の希望値を満たしているか評価するステップとを有していることを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項13】
請求項12記載の電磁結合器の設計方法において、
前記選択された構造が、結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たさないと評価された場合に、前記矩形導体と前記グラウンド導体の距離、及び前記矩形導体の長辺の電気長の少なくとも一方を調整するステップを有することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項14】
請求項12又は13記載の電磁結合器の設計方法において、
結合範囲の中心において結合強度の希望値を満たしていると評価された構造が結合範囲において結合強度の希望値を満たしていないと評価された場合に、前記複数の矩形導体の接続部の一箇所に形成された給電部と前記放射導体の両端までの電気長を、電磁結合器が対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4の整数倍の中から選択するステップを有することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【請求項15】
請求項12〜14の何れか1項記載の電磁結合器の設計方法において、
初期構造として、対象とする周波数帯の中心周波数に対する波長の1/4倍の電気長を持つ2つの矩形導体からなり、両端が開放された放射導体を選択することを特徴とする電磁結合器の設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−223569(P2011−223569A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66936(P2011−66936)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
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