説明

電磁継電器

【課題】接点開閉時に発生するアークを早期に消弧させる。
【解決手段】接離可能な一対の接点からなる接点組を有する接点開閉部3と、接点開閉部3を駆動して接点を開閉させる電磁石ブロック2と、接点の接離方向とは直交する方向に配置される対向壁106を、中間部を介して連続させてなる接続部材105と、対向壁106の対向部分に配置される永久磁石104とからなるアーク消弧部材103とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器として、鉄心にスプールを介してコイルを巻回してなる電磁石ブロックを励磁・消磁することにより、鉄心に加締固定したヨークに回動可能に支持した可動鉄片を回動させ、可動接触片を駆動することにより、可動接点を、対向して配置した固定接触片の固定接点に開閉するようにしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電磁継電器では、接点開閉部の上方側に永久磁石を配置し、接点間に磁界を発生させることにより、接点開閉時にアーク電流が発生した場合には、このアーク電流を側方に伸長させて早期に消弧させるようにしている。
【0004】
しかしながら、前記従来の電磁継電器では、接点開閉部の上方側に配置した単一の永久磁石によって磁界を発生させるようにしている。永久磁石の下方側のN極から下方に向かって発生した磁界が、接点間から側方、次いで、各接触片に沿って上方へと向かい、上方側のS極に至ることになる。このため、磁束が周囲の空間に漏れやすく、接点開閉部に集中できないという問題がある。この結果、永久磁石に強力な磁力を発揮できるものが必要となり、コストアップを招来している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−87918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、接点開閉時に発生するアークを早期に消弧させることのできる小型で安価なアーク消弧機能を備えた電磁継電器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
電磁継電器を、
接離可能な一対の接点からなる接点組を有する接点開閉部と、
前記接点開閉部を駆動して接点を開閉させる電磁石ブロックと、
前記接点の接離方向とは直交する方向に配置される対向壁を、中間部を介して連続させてなる接続部材と、前記対向壁の対向部分に配置される永久磁石とからなるアーク消弧部材と、
を備えた構成としたものである。
【0008】
この構成により、永久磁石から発生する磁界は、周囲雰囲気に比べて透磁率の高い接続部材を介して閉ループを構成する。したがって、磁束を接点開閉位置に集中させることができる。この結果、接点開閉時に発生したアーク電流に対して、アーク消弧部材による磁界の影響力を十分に作用させることができ、アーク電流を、上方へと十分に引き延ばし、早期に消弧することができる。
【0009】
前記接点開閉部と前記電磁石ブロックが載置されるベースブロックと、
前記ベースブロックに取り付けられ、前記接点開閉部と前記電磁石ブロックとを覆うケースを備え、
前記ケースは、前記アーク消弧部材の対向壁及び永久磁石を配置可能な凹部を備えるのが好ましい。
【0010】
この構成により、アーク消弧部材を内部構成部品である接点開閉部及び電磁石ブロックとは完全に絶縁状態に配置することができる。
【0011】
前記各永久磁石の対向面の極性と、接点開閉時に発生するアーク電流が流れる方向とを、前記アーク電流に前記接続部材の中間部側へと変位する力を発生させることができるように決定するのが好ましい。
【0012】
この構成により、アーク電流の悪影響を最も与えにくい位置へとアーク電流を変形させて消弧することができる。
【0013】
前記接点開閉部は、一対の可動接触片と、各可動接触片の可動接点が接離可能に対向する固定接点を備えた一対の固定接触片とを備え、
前記可動接触片の一方と、前記固定接触片の一方とを電気接続する接続端子を備えるのが好ましい。
【0014】
この構成により、接続端子を追加するだけの簡単な構成で、自由に電路の構成を変更することができる。
【0015】
前記ベースブロックは、前記各接触片及び前記電磁石ブロックを有する第1ベース部と、前記各接触片及び前記電磁石ブロックのコイル端子にそれぞれ接続されるタブ端子を有する第2ベースとで構成するのが好ましい。
【0016】
この構成により、第2ベース部を追加するだけで、他の部品で構成される部分が既存のものであっても、タブ端子により接続位置を自由に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接点開閉位置の周囲に接続部材を配置し、その対向部分に永久磁石を配置するようにしたので、永久磁石から発生する磁界を、接点開閉位置へと効果的に集中させることができる。このため、接点開閉時にアーク電流が発生したとしても、このアーク電流を磁界によって上方へと変形させ、早期に消弧させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電磁継電器の斜視図である。
【図2】図1からケース及びアーク消弧部材を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】図1からケースのみを除去した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】(a)は第1ベース部を上方側から見た状態を示す斜視図、(b)は第1ベース部を下方側から見た状態を示す斜視図である。
【図6】第2ベース部及びタブ端子の分解斜視図である。
【図7】図6を下方側から見た状態を示す斜視図である。
【図8】可動接触片、固定接触片、コイル端子、接続端子、タブ端子の接続状態を示す斜視図である。
【図9】図2に示す電磁石ブロック及び可動鉄片の分解斜視図である。
【図10】図9を反対側から見た状態を示す斜視図である。
【図11】アーク電流、磁界の方向、アーク電流に作用する力の関係を示す部分斜視図である。
【図12】図1からケースを除去した状態を示す接点閉成時の断面図である。
【図13】図1からケースを除去した状態を示す接点開放時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(1.全体構成)
図1から図4は、本実施形態に係る電磁継電器を示す。この電磁継電器は、大略、ベースブロック1に、電磁石ブロック2、接点開閉部3、及び、可動鉄片4を設け、ケース5を被せたものである。
【0021】
(1−1.ベースブロック1)
ベースブロック1は、図2に示すように、第1ベース部6と、第2ベース部7とで構成されている。(以下、長辺に沿って長手方向に延びる方向をX軸、短辺に沿って短手方向に延びる方向をY軸、高さ方向に延びる方向をZ軸として説明する)。
【0022】
第1ベース部6は、図5に示すように、合成樹脂材料を成形加工することにより平面視矩形状に形成したもので、長手方向(XX´方向)の2箇所には、第1装着部8と第2装着部9が並設されている
【0023】
第1装着部8は、後述する電磁石ブロック2を装着するためのもので、周縁部を除いて上方に膨出した台座部10が形成されている。台座部10の一端側(X方向側)には、短手方向(YY´方向)に延びる凹所11が形成されている。凹所11の両端部には、さらに深くなった位置決め凹部12がそれぞれ形成されている。位置決め凹部12には、後述する電磁石ブロック2のスプール52に形成したガイド突部66が位置決めされる。位置決め凹部12の底面には、コイル端子67の接続端子部70が挿通する貫通孔29aが形成されている。凹所11の両側(各位置決め凹部12の外側近傍)には、長手方向(XX´方向)に延び、上下面に貫通するコイル端子孔13がそれぞれ形成されている。
【0024】
また、第1ベース部6の中央部分には、第2装着部9との境界部分にガイド部14が形成されている。ガイド部14は、短手方向(YY´方向)に対向して設けた一対のガイド壁15と、これらを結ぶ絶縁壁16とで構成されている。ガイド壁15の対向面には、上下方向に延びるガイド溝17がそれぞれ形成されている。両ガイド溝17により、後述するヨーク55の両側部がガイドされる。また、ガイド壁15と絶縁壁16で囲まれた領域には、短手方向(YY´方向)に所定間隔で一対の突起18及び凹部19がそれぞれ形成されている。これら突起18及び凹部19によってヒンジバネがガイドされる。
【0025】
第2装着部9は、接点開閉部3を装着するためのもので、突条部20によって短手方向(YY´方向)仕切られた凹部21a、21bがそれぞれ形成されている。各凹部21a、21bには、前記ガイド壁15に沿ってスリット状の第1端子孔22a、22bが上下面に開口するようにそれぞれ形成されている。各第1端子孔22a、22bには、後述する可動接触片79がそれぞれ圧入されるようになっている。また、第2装着部9は、一端側(X´方向側)に肉厚部23が形成されている。肉厚部23は、中央部に長手方向(XX´方向)に延びる溝23aを備え、2分割された各部位には短手方向(YY´方向)に沿ってスリット状の第2端子孔24a、24bが上下面に開口するようにそれぞれ形成されている。各第2端子孔24a、24bには、後述する固定接触片78がそれぞれ圧入固定される。
【0026】
第2ベース部7は、図6に示すように、前記第1ベース部6と同様に、合成樹脂材料を成形加工することにより平面視矩形状に形成したものである。第2ベース部7の上面には、周壁25によって囲まれた矩形凹所26が形成され、前記第1ベース部6の下面部が載置されるようになっている。矩形凹所26内には、接続端子39を配置するための縦長凹部27と、4箇所の貫通孔28a〜28dとがそれぞれ形成されている。
【0027】
2箇所の貫通孔28a、28bにはコイル端子67の接続端子部70が挿通され、残る2箇所の貫通孔28c、28dには一方の可動接触片79の端子部79dと、一方の固定接触片78の端子部78bとがそれぞれ挿通される。また、第2ベース部7の両側部には、周壁25の外面に沿って3箇所ずつ突部29a、29b、29cが形成されている。各突部29a、29b、29cには、圧入孔30a、30b、30cが形成されている。両側の各2箇所の圧入孔30a、30bには第1タブ端子41の圧入部41b及び第2タブ端子42の圧入部42bがそれぞれ圧入し、残る各1箇所の圧入孔30cには第3タブ端子46の圧入部45b及び第4タブ端子45の圧入部46bがそれぞれ圧入される。
【0028】
第2ベース部7の底面には、図7に示すように、前記各貫通孔28a〜28dに対応する4箇所の位置に凹部(第1凹部31、第2凹部32、第3凹部34、第4凹部35)がそれぞれ形成されている。
【0029】
2箇所の凹部(第1凹部31及び第2凹部32)は、コイル端子67に接続される第1タブ端子41用及び第2タブ端子42用のものである。第1凹部31及び第2凹部32の一端両側には、側縁部に沿って前記2箇所の圧入孔30a、30bが開口し、他端側中央部にはコイル端子67の接続端子部70が突出する貫通孔28a、28bが開口している。そして、貫通孔28a、28bの近傍部分の内側面の一部には、第2ベース部7の側縁部から徐々に深くなる傾斜面31a、32aが形成されている。
【0030】
また、第3凹部34は、可動接触片79に接続される第3タブ端子46用のものであり、第4凹部35は、固定接触片78に接続される第4タブ端子45用のものである。
【0031】
第3凹部34の一端側方には、前記圧入孔30cが開口し、第3タブ端子46の圧入部46bが圧入される。そして、この圧入孔30cに連続して、第3タブ端子46のストッパ部46dが当接するスリット状のガイド凹部37が形成されている。また、第3凹部34の他端側中央部には、一方の可動接触片79Bの端子部79dが挿通する貫通孔28cが開口している。そして、貫通孔28cの近傍の内側面の一部には傾斜面34aが形成されている。
【0032】
第4凹部35の一端側方には、第4タブ端子45の圧入部45dが圧入する圧入孔30cが開口している。そして、前記同様、この圧入孔30dに連続して、前記第4タブ端子45のストッパ部45dが当接するスリット状のガイド凹部38が形成されている。また、第4凹部35の他端側中央部には、一方の固定接触片78Aの端子部78bが挿通する貫通孔28dが開口している。また、第4凹部35の一部は、第2ベース部7の側面に開口している。
【0033】
接続端子39は、両端が円弧状に形成された導電性板材からなり、両端部には貫通孔40a、40bがそれぞれ形成されている。各貫通孔40a、40bには、残る他方の可動接触片79Aの端子部79dと、残る他方の固定接触片78Bの端子部78bがそれぞれ挿通され、半田付けにより互いに電気接続される。
【0034】
第1タブ端子41及び第2タブ端子42は、図6に示すように、導電性材料からなる板状のもので、端子部41a、42aと、その上縁両側からそれぞれ突出する一対の圧入部41b、42bの間で端子部41a、42aに対して直角に折り曲げられた接続部41c、42cとで構成されている。圧入部41b、42bは、前記第2ベース部7の圧入孔30a、30bに圧入され、第1タブ端子41が第2ベース部7に固定されるようになっている。接続部41c、42cの先端部分は円板状で、その中心には貫通孔41d、42dがそれぞれ形成されている。貫通孔41d、42dには、コイル端子67の接続端子部70が挿通され、半田付けにより互いに電気接続される。
【0035】
第3タブ端子46及び第4タブ端子45は、導電性材料からなる板状のもので、端子部45a、46aと、その上縁から幅狭となって突出する圧入部45b、46bと、同じく上縁から直角に折り曲げられた接続部45c、46cと、接続部45c、46cとは反対側方に突出するストッパ部45d、46dとで構成されている。圧入部45b、46bは、前記第2ベースの圧入孔30cに圧入され、第3タブ端子46及び第4端部端子46が第2ベース部7に固定されるようになっている。接続部45c、46cの先端部分は円板状で、その中心には貫通孔45e、46eがそれぞれ形成されている。貫通孔45e、46eには、一方の可動接触片79Bの端子部79d、一方の固定接触片78Aの端子部78bが挿通され、半田付けにより互いに電気接続される。ストッパ部45d、46dは、前記圧入孔30cに連続するガイド凹部37、38の底面に当接して位置決めされる。
【0036】
(1−2.電磁石ブロック2)
電磁石ブロック2は、図9及び図10に示すように、鉄心51にスプール52を介してコイル53を巻回したものである。
【0037】
鉄心51は、磁性材料を棒状としたもので、下端部に鍔状の磁極部54が形成され、上端部にはヨーク55が加締固定されるようになっている。
【0038】
スプール52は、合成樹脂材料を成形加工することにより得られ、中心孔56を形成する筒状の胴部57と、その上下両端部に形成される鍔部(上端側鍔部58及び下端側鍔部59)とで構成されている。
【0039】
上端側鍔部58は、上面に逃がし溝60が形成され、そこには中心孔56が開口している。逃がし溝60には、後述するヨーク55の一端部が配置される。下端側鍔部59には中心孔56が開口し、そこから鉄心51を挿入可能となっている。
【0040】
下端側鍔部59の両側部には、下方に向かって突出する端子取付部61が形成され、下端側鍔部59の底面とで溝部を構成している。端子取付部61には端子保持孔62がそれぞれ形成されている。各端子保持孔62は断面略T字形で、後述するコイル端子67の圧入膨出部67aが圧入される端子固定部62aと、接続端子部70が挿通する逃がし部62bとで構成されている。各端子取付部61の上方段部には、端子保持孔62に圧入固定したコイル端子67のコイル巻付部68がそれぞれ突出するようになっている。
【0041】
下端側鍔部59には、胴部57から側端面に掛けて、前記端子取付部61の一方の上方側段部へと連通する案内溝65が形成されている。案内溝65には、胴部57に巻回するコイル53の一端側(巻き始め側)が配置され、コイル端子67のコイル巻付部68に巻き付けられるようになっている。
【0042】
下端側鍔部59の底面には所定間隔で一対のガイド突部66が設けられている。これらガイド突部66は、第1ベース部6の位置決め凹部12に位置してベースブロック1に対してスプール52すなわち電磁石ブロック2を位置決めする役割を果たす。
【0043】
コイル端子67は、導電性材料を平板状としたもので、中央部とその両側とにはそれぞれプレス加工により反対側の面に膨出する圧入膨出部67aが形成されている。また、コイル端子67の上端縁部からは水平方向に突出するコイル巻付部68と、斜め下方に突出する傾斜突部69とが形成されている。コイル巻付部68の近傍からは、側方から下方に向かって突出する接続端子部70が突出している。接続端子部70は、スプール52の下端側鍔部59から突出する。
【0044】
コイル53は、スプール52の胴部57に巻回された後、外周面に絶縁シート71が貼着されるようになっている。コイル53の一端部が前記スプール52の案内溝65に配置され、スプール52の胴部57への巻回後、両端部はそれぞれ各コイル端子67のコイル巻付部68に巻き付けられて半田付けされる。
【0045】
前記鉄心51の一端部にはヨーク55が加締固定されている。
ヨーク55は、磁性材料を略L字形となるように折り曲げたものである。ヨーク55の一端部には、前記鉄心51の一端部を挿通して加締固定するための開口部55aが形成されている。ヨーク55の他端部は幅広となって、その下端部両側には突出部72がそれぞれ形成されている。両突出部72の間には、後述する可動鉄片4が位置し、一方の角部が可動鉄片4を回動可能に支持する支点として機能する。
【0046】
ヒンジバネ44は、図4に示すように、板状のバネ材をフォーク状としたもので、連結部73から一方に、両側の位置決め用腕部74と、中央部の弾性支持部75とが突出している。また、連結部73から弾性支持部75とは反対側にガイド部76が突出している。位置決め用腕部74は、先端に向かうに従って徐々に上方へと傾斜し、先端部は下方に向かい、次いで斜め上方に向かうように屈曲した係止部77となっている。係止部77は、前記第1ベース部6の上面に形成した突起18及び凹部19によって位置決めされ、可動鉄片4の回動支点を下方側からガイドする。弾性支持部75は、連結部73から徐々に斜め上方に向かい、中間部からさらに上方側へと屈曲し、可動鉄片4を回動可能に支持する。ガイド部76は、可動鉄片4の被吸引部88の下面に当接し、鉄心51の磁極部54から離間した際の回動範囲を規制する。
【0047】
(1−3.接点開閉部3)
接点開閉部3は、図4及び図8に示すように、銅等の導電性材料を板状にプレス加工した、固定接触片78と可動接触片79とで構成されている。
【0048】
固定接触片78は、圧入部78aと、圧入部78aから下方側に延びる端子部78bと、圧入部78aから上方側に延びる接触片部78cとで構成されている。圧入部78aには、プレス加工により片面から膨出する膨出部78dが形成されている。この膨出部78dにより第1ベース部6の第2端子孔24a、24bに圧入可能となっている。接触片部78cの上端部には貫通孔78eが形成され、そこには固定接点80が加締固定されている。
【0049】
可動接触片79は、圧入部79aと、圧入部79aに加締固定されて上方に延びる接触片部79bとで構成されている。圧入部79aは、クランク状に屈曲されており、幅広の部分には膨出部79cが形成され、その下方側は幅狭の端子部79dとなっている。膨出部79cが第1ベース部6の端子孔22aに圧入される。一方の可動接触片79の端子部79dは、第1ベース部6から第2ベース部7の貫通孔28cに挿通され、第3凹部34内に突出し、他方の端子部79dは、接続端子39の貫通孔40aに挿通される。接触片部79bは、弾性変形容易となるように、圧入部79aに比べて薄肉に形成され、圧入部79aの近傍部分から屈曲されて斜めに延びている。接触片部79bの上端部には貫通孔79eが形成され、そこには可動接点81が加締固定されている。可動接触片79は、圧入部79aを第1ベース部6の第1端子孔22a、22bに圧入された状態で、可動接点62が第2端子孔24a、24bに圧入された固定接触片78の固定接点81に接離可能に対向する。
【0050】
(1−4.可動鉄片4)
可動鉄片4は、図9及び図10に示すように、板状の磁性材料をプレス加工により略L字形に形成したものである。可動鉄片4の一端側は、鉄心51の磁極部54に吸引される被吸引部88である。被吸引部88の先端部及び基部は幅狭となっており、スプール52の底面に形成したガイド突部66と、ヨーク55の下端部に形成した突出部72との干渉がそれぞれ回避されている。可動鉄片4の他端側には開口部89が形成されている。可動鉄片4の他端部には、開口部89の上方部分の2箇所に貫通孔90が形成され、そこにはカード部材65の突起93aが熱加締されることにより一体化される。なお、熱加締位置の両側にはスリット91が形成され、熱加締する際に樹脂がはみ出さないようにするための凹部92を形成する際、その部分での側方への変形を許容するための空間を提供している。
【0051】
カード部材65は、合成樹脂材料からなり、一方の面には可動鉄片4の上端側が配置される窪み部93が形成されている。窪み部93には上下2箇所に突起93aが形成され、これらは前記可動鉄片4の貫通孔90に挿通された後、熱加締するために利用される。また、カード部材の他方の面には、上下方向に延びる3列の第1リブ94が形成されている。第1リブ94の上端部は互いに連結壁95によって互いに連結され、その前縁部からは前方に向かって左右2つ1組で突起96が形成されている。各1組の突起18の間に可動接触片79の上端部がガイドされ、連結壁95の前端部に圧接する。カード部材65の上端部には、前方へと突出する第1遮蔽壁97が形成され、下端部には、前方に突出した後、下方側へと延びる第2遮蔽壁98が形成されている。
【0052】
(1−5.ケース5)
ケース5は、図2に示すように、合成樹脂材料を下面が開口する箱状としたものである。ケース5の上面角部には樹脂封止孔99が形成されている。樹脂封止孔99は、ベースブロック1とケース5の嵌合部分のシール後に熱封止される。ケース5の上面縁部(樹脂封止孔99と反対側)には、両側にスリット状の凹部100がそれぞれ形成されている。各凹部100の間には、上面よりも窪んだ凹所101が形成されており、その上面中央部には突起102がそれぞれ形成されている。なお、5aは、電磁継電器をネジ止め固定するための取付部である。
【0053】
前記ケース5には、凹部100及び凹所101を利用してアーク消弧部材103が取り付けられている。
【0054】
アーク消弧部材103は、アークを消弧させるために所定間隔で配置した一対の永久磁石104a、104bと、これら永久磁石104a、104bを磁気的に接続するための磁性材料からなる接続部材105とで構成されている。
【0055】
永久磁石104a、104bは略直方体形状で、接続部材105の両対向壁106の内面に取り付けた状態で、対向面が異なる極性となるように配置される。但し、対向面の極性は、接点間で電流が流れる方向の違いに応じてアーク電流に作用する力の方向が、後述する接続部材105の中間壁107側へと向かうように設定すればよい。
【0056】
接続部材105は、板状の磁性材料をプレス加工により、両端側が互いに対向するように屈曲したものである。各対向壁106の内面には永久磁石104a、104bがそれ自身の磁力によって吸着固定されている。一方の永久磁石104a、104bから発生した磁束は、他方の永久磁石104a、104bから接続部材105を介して戻る磁気回路として閉ループを構成する。
【0057】
このように、前記アーク消弧部材103によれば、一対の永久磁石104a、104bだけでなく、これらを磁気的に接続するための接続部材105を設けるようにしている。このため、閉ループとなる磁気回路が形成され、磁束漏れが発生しにくくなる。この結果、接点開閉時にアークが発生したとしても、このアークは、フレミング左手の法則によってアーク電流が流れる方向とは直交する方向に伸長され、短時間で消弧されることになる。
【0058】
(2.組立方法)
続いて、前記構成からなる電磁継電器の組立方法について説明する。
【0059】
スプール52の胴部57にコイル53を巻回し、下端側鍔部59の端子保持孔62にコイル端子67を圧入固定する。コイル53の両端部は、コイル端子67のコイル巻付部68に巻き付けて半田付けする。また、スプール52の中心孔56に、下端側から鉄心51を挿通し、上端から突出する部分にヨーク55を加締固定する。これにより、電磁石ブロック2が完成する。
【0060】
第1ベース部6に完成した電磁石ブロック2を装着する。
電磁石ブロック2の装着では、カード部材65を一体化した可動鉄片4及びヒンジバネ44と共に、第1ベース部6の第1装着部8に取り付ける。すなわち、ヒンジバネ44の係止部77を第1ベース部6の突起18及び凹部19に位置決めする。そして、ヒンジバネ44の上方に可動鉄片4を配置し、さらにその上方に電磁石ブロック2を配置する。電磁石ブロック2は、ガイド突部66を位置決め凹部12に位置させ、ヨーク55の両端部をガイド溝17に挿入し、コイル端子67をコイル端子孔13に圧入することにより第1ベース部6に固定する。これにより、可動鉄片4は、ヨーク55の下端角部に回動可能に支持される。
【0061】
この状態では、ヨーク55の突出部72の底面と、スプール52の端子取付部61の底面とがそれぞれ第1ベース部6の台座部10の上面に当接する。これにより、第1ベース部6の台座部10の上面とスプール52の下端部に露出する鉄心51の磁極部54との間に可動鉄片4が回動可能な隙間が形成される。可動鉄片4に一体化したカード部材65の遮蔽壁70がベースブロック1の絶縁壁16を越えて配置される。そして、ベースブロック1のガイド壁15及び絶縁壁16、カード部材65の遮蔽壁97、98によって、電磁石ブロック2と接点開閉部3との間の絶縁性が十分に確保される。
【0062】
第1ベース部6に接点開閉部3を装着する。
接点開閉部3の装着では、可動接触片79の端子部79dを第1端子孔22a、22bに挿入し、圧入部79cを圧入して固定する。可動接触片79の上端部は、先に装着したカード部材65の突起96の間に挟持され、連結部73に圧接する。これにより、可動接触片79の弾性力が可動鉄片4に作用し、可動鉄片4は、被吸引部88が鉄心51の磁極部54から離間した初期位置に位置決めされる。
【0063】
また、固定接触片78の端子部78bを第1ベース部6の第2端子孔24a、24bに挿入し、圧入部78aを圧入して固定する。この状態では、固定接触片78は可動接触片79に所定間隔で対向し、固定接点80に対して可動接点81が接離可能となる。
【0064】
さらに、第1ベース部6の底面から突出する一方の可動接触片79Aと、一方の固定接触片78Bを接続端子39によって接続する。すなわち、接続端子39の各貫通孔40a、40bに、一方の可動接触片79Aの端子部79dと、一方の固定接触片78Bの端子部78bをそれぞれ挿通し、半田付けにより電気接続する。
【0065】
前記第1ベース部6に、タブ端子41、42、45、46を固定した第2ベース部7を装着する。
タブ端子41、42、45、46の固定では、第2ベース部7の各圧入孔29a〜29cに、各タブ端子41、42、45、46の圧入部41b、42b、45b、46bをそれぞれ圧入する。これにより、各タブ端子41、42、45、46の接続部41c、42c、45c、46cが、第1ベース部6の底面に形成した各凹部31、32、34、35に配置され、各接続部41c、42c、45c、46cの貫通孔41d、42d、45c、46eが第2ベース部7の各貫通孔28a〜28dの位置と合致する。
【0066】
第1ベース部6への第2ベース部7の装着では、第1ベース部6の下端部を第2ベース部7の矩形凹所26に嵌合一体化する。このとき、コイル端子67の端子部47が、第1タブ端子41の貫通孔41dと、第2タブ端子42の貫通孔42dに挿通する。また、可動接触片79の端子部79dが第3タブ端子46の貫通孔45eに挿通し、固定接触片78の端子部78bが第4タブ端子45の貫通孔46eに挿通する。そこで、各貫通孔28a〜28dに挿通する各接触片78B、79Aの端子部78b、79dを半田付けにより電気接続する。
【0067】
ケース5にアーク消弧部材103を取り付ける。
アーク消弧部材103の取付では、接続部材105の対向壁106に永久磁石104a、104bを取り付けた状態で、ケース5に形成した各凹部100に、接続部材105の対向壁106及び永久磁石104a、104bをそれぞれ挿通する。そして、接続部材105をケース5に熱加締により固定する。続いて、アーク消弧部材103を取り付けたケース5をベースブロック1に被せ、両者の嵌合部分をシールする。
【0068】
なお、内部空間は、樹脂封止孔99を熱封止することにより密封状態とすればよい。但し、樹脂封止孔99は開放したままとし、内部空間を周囲雰囲気と連通した状態で使用することも可能である。
【0069】
このようにして組み立てられた電磁継電器では、第2ベースを除く他の構成部品は、従来から使用していた構成を殆ど変更することなく、そのまま利用することができる。そして、第2ベース部7を設けることにより、他の形式に対応した電磁継電器とすることができる。ここでは、接続端子39を設けて可動接触片79と固定接触片78とを接続することにより、同一電路の途中の2箇所で接点を開閉部させるようにしている。また、4つのタブ端子41、42、45、46を設けることにより、電磁継電器の他の部品(例えば、プリント基板)への電気接続位置を自由に設定することができる。
【0070】
(3.動作)
次に、前記構成からなる電磁継電器の動作について説明する。
【0071】
コイル53に通電しておらず、電磁石ブロック2が消磁している状態では、可動鉄片4が可動接触片79A、79Bの弾性力によってヨーク55によって支持された支点を中心として被吸引部88を鉄心51の磁極部54から離間する初期位置に位置する。したがって、可動接点81は固定接点80から離間した開放状態を維持する。
【0072】
コイル53に通電し、電磁石ブロック2を励磁すると、図12に示すように、可動鉄片4は鉄心51の磁極部54に被吸引部88を吸引され、可動接触片79A、79Bの付勢力に抗して回動する。これにより、可動接触片79A、79Bが弾性変形し、可動接点81を固定接触片78の固定接点80に閉成する。
【0073】
コイル53への通電を遮断し、電磁石ブロック2を消磁すると、図13に示すように、可動鉄片4は鉄心51の吸引力を失って可動接触片79A、79Bの弾性力により回動する。そして、固定接点80から可動接点81が離間する。
【0074】
このとき、接点間にアークが発生することがあるが、接点開閉領域の周囲にはアーク消弧部材103が配置されているため、発生したアークは迅速に消弧される。
【0075】
すなわち、図11に示すように、一方の永久磁石104aのN極から発生した磁束が他方の永久磁石104bのS極に至り、接続部材105を介して一方の永久磁石104aのS極に戻ることにより閉ループとなる磁気回路を構成している。このため、周囲への磁束漏れが殆どなく、接点間に発生したアークに対して効果的に磁力を作用させることができる。具体的には、永久磁石104a、104bのみを配置した場合に比べて接続部材105を設けた場合には、接点開閉位置での磁束密度を、53.3%向上させることが可能となった。この結果、フレミング左手の法則により、発生したアークには、接点開放方向とは直交する方向に力が作用し、このアークは大きく引き延ばされて急速に消弧された。
【0076】
ここでは、可動接触片79A、79Bで、両固定接触片78A、78B間を開閉するように構成したため、接点開放時のアーク電流が図11に示す向きに流れる。そこで、アークを接続部材105の中間壁107側へと変形させることができる磁束方向が得られるように、永久磁石104a、104bの磁極を対向面で異極となるように設定している。つまり、アークを接続部材105の中間壁107側へと変形させることで、アークの消弧をより確実なものとしている。
【符号の説明】
【0077】
1…ベースブロック
2…電磁石ブロック
3…接点開閉部
4…可動鉄片
5…ケース
6…第1ベース部
7…第2ベース部
8…第1装着部
9…第2装着部
10…台座部
11…凹所
12…位置決め凹部
13…コイル端子孔
14…ガイド部
15…ガイド壁
16…絶縁壁
17…ガイド溝
18…突起
19…凹部
20…突条部
21…凹部
22…第1端子孔
23…肉厚部
24…第2端子孔
25…周壁
26…矩形凹所
27…縦長凹部
28…貫通孔
29…突部
30…圧入孔
31…第1凹部
32…第2凹部
33…圧入孔
34…第3凹部
35…第4凹部
36…圧入孔
37…ガイド凹部
38…ガイド凹部
39…接続端子
40…貫通孔
41…第1タブ端子
42…第2タブ端子
45…第3タブ端子
46…第4タブ端子
51…鉄心
52…スプール
53…コイル
54…磁極部
55…ヨーク
56…中心孔
57…胴部
58…上端側鍔部
59…下端側鍔部
60…逃がし溝
61…端子取付部
62…端子取付孔
65…案内溝
66…ガイド突部
67…コイル端子
68…コイル巻付部
69…傾斜突部
70…接続端子部
71…絶縁シート
72…突出部
73…連結部
74…位置決め用腕部
75…弾性支持部
76…ガイド部
77…係止部
78A、78B…固定接触片
79A、79B…可動接触片
80…固定接点
81…可動接点
88…被吸引部
89…開口部
90…貫通孔
91…スリット
92…凹部
93…窪み部
94…第1リブ
95…連結壁
96…突起
97…第1遮蔽壁
98…第2遮蔽壁
99…樹脂封止孔
100…凹部
101…凹所
102…突起
103…アーク消弧部材
104…永久磁石
105…接続部材
106…対向壁
107…中間壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離可能な一対の接点からなる接点組を有する接点開閉部と、
前記接点開閉部を駆動して接点を開閉させる電磁石ブロックと、
前記接点の接離方向とは直交する方向に配置される対向壁を、中間部を介して連続させてなる接続部材と、前記対向壁の対向部分に配置される永久磁石とからなるアーク消弧部材と、
を備えたことを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記接点開閉部と前記電磁石ブロックが載置されるベースブロックと、
前記ベースブロックに取り付けられ、前記接点開閉部と前記電磁石ブロックとを覆うケースを備え、
前記ケースは、前記アーク消弧部材の対向壁及び永久磁石を配置可能な凹部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記各永久磁石の対向面の極性と、接点開閉時に発生するアーク電流が流れる方向とを、前記アーク電流に前記接続部材の中間部側へと変位する力を発生させることができるように決定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記接点開閉部は、一対の可動接触片と、各可動接触片の可動接点が接離可能に対向する固定接点を備えた一対の固定接触片とを備え、
前記可動接触片の一方と、前記固定接触片の一方とを電気接続する接続端子を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記ベースブロックは、前記各接触片及び前記電磁石ブロックを有する第1ベース部と、前記各接触片及び前記電磁石ブロックのコイル端子にそれぞれ接続されるタブ端子を有する第2ベースとで構成したことを特徴とする請求項4に記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−195102(P2012−195102A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56915(P2011−56915)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)