説明

電磁誘導加熱用発熱板

【課題】硬化の前後において体積が変化せず、高出力の電磁調理器に長時間使用可能な耐熱性能に優れた発熱板を提供する。
【解決手段】発熱板11は、強磁性体で形成された略平坦な板状の発熱体12と、粒子状の無機中空体14と、粉末の骨材19と、珪酸アルカリ化合物の水溶液である接着剤15とを含み、接着剤15が硬化した硬化体であって発熱体12の下側に設けられる断熱体13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱装置のトッププレート上に載置されて、鍋や被調理物を加熱する発熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器用発熱板としては従来、例えば、特公平1−37836号公報(特許文献1)に記載のごとき技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、鉄板の両面をステンレス鋼板で積層した三層構造の発熱体プレートと、この発熱体プレートの裏面側に配設された断熱材とを備える。そして、発熱体プレートを上向きにして電磁調理器のトッププレート上に載せ、発熱体プレートの上に調理用鍋を載せる。この状態で発熱体プレートは、電磁誘導作用により発熱して調理用鍋を加熱する。一方で、発熱体プレートとトッププレートの間には断熱材が介在することから、トッププレートの異常温度上昇を防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−37836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のような発熱板にあっては、断熱材の材料についてなんら開示されていなかった。一方で、電磁調理器が一般に普及するにしたがって、電磁調理器の高出力化が進み、長時間連続して調理される機会が多くなってきた。かかる事情の下で、耐熱性能が低い材料を用いることとすれば、断熱材自身が損傷する懸念がある。例えば断熱材が、炭素(C)を主成分とする樹脂や、動物および植物由来の原料から形成される場合、断熱材が変質劣化してしまう懸念がある。
【0005】
また、製造工程の前後において、断熱材が膨張するなどして、その体積が変化する場合がある。この場合、同一寸法・同一品質の発熱板を安定して製造することができない。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑み、製造工程の前後において体積が変化せず、高出力の電磁調理器に長時間使用可能な耐熱性能に優れた発熱板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明による電磁誘導加熱用発熱板は、強磁性体で形成された略平坦な板状の発熱体と、粒子状の無機中空体と、粉末の骨材と、珪酸アルカリ化合物の水溶液である接着剤とを含み、接着剤が硬化した硬化体であって発熱体の下側に設けられる断熱体とを備える。
【0008】
かかる本発明によれば、断熱体が無機系の材料であって、植物質あるいは動物質を原材料としないことから、耐熱性能に優れ、高温に長期間晒されても変質劣化することがない。しかも、無機中空体はバルーン状の粒状体であることから、かかる粒状体を含む本発明の断熱体は断熱性能に優れる。したがって発熱体の下側に設けられる断熱体によって、電磁誘導加熱される発熱体からトッププレートへの熱伝導を防止することができ、電磁調理器を高温から保護することができる。
【0009】
さらに、断熱体が発熱体から下方への熱伝導を遮断する結果、発熱体から上方への熱伝導が促進され、発熱体の上側に載置される調理鍋および被調理物を効率よく加熱することができる。
【0010】
また本発明によれば、接着剤が、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸リチウム水溶液、および珪酸カリウム水溶液など、珪酸アルカリ化合物の水溶液であることから、製造工程において、接着剤が化学反応せず、断熱体の硬化前と硬化後において体積が変化することがない。したがって同一寸法・同一品質の発熱板を安定して製造することができる。
【0011】
本発明の発熱体は、発熱体の上側に載置される調理用鍋の鍋底を加熱する。したがって、調理用鍋がアルミ鍋であったり土鍋であったりするなど、電磁誘導加熱することができない材質の鍋であっても熱伝導により加熱することができる。あるいは本発明の発熱体は、発熱体の上に載置される被調理物(肉、野菜など)を直接加熱することもできる。このため、いわゆるホットプレートとして焼肉の用に供する使用形態も可能である。
【0012】
発熱体は鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体で形成された板状のものであればよく、その形状については特に限定されない。平坦な形状であれば、電磁調理器のトッププレートの上に隙間なく載置され、電磁誘導により無数のうず電流を効率よく発生することができる。略平坦形状の例として、発熱体は網状体である。または複数の貫通孔が形成された平板である。そして断熱体は発熱体の外縁を回り込み発熱体の上側にも設けられ、発熱体は断熱体の中に埋設される。かかる実施形態によれば、発熱体の網目や貫通孔に断熱体が充填されることから、発熱体の上側に位置する断熱材と発熱体の下側に位置する断熱体が相互に固着し、発熱体に断熱体が確りと付着することができる。
【0013】
本発明は一実施形態に限定されるものではないが、発熱体の上側を覆う板状部と、板状部の外縁に沿って延在し下方に突出する壁であって、発熱体の外縁および断熱体の外縁を囲繞する外縁壁部とを有する外枠をさらに備えてもよい。かかる実施形態によれば、製造工程において外枠の中にまず発熱体を設け、次に断熱体を流し込んで硬化させることによって製造することができる。したがって、製造が容易になる。なお完成後の使用状態では外枠の板状部が上にされ、外枠の外縁壁部が下にされるが、製造工程では、外枠を上下に裏返して外縁壁部を上向き姿勢にして断熱体を流し込む。
【0014】
外枠は高熱に晒されるため熱に強い材料、好ましくは金属製である。より好ましくは、外枠はアルミニウム製またはアルミニウムを主とする合金製である。かかる実施形態によれば、熱伝導率にすぐれ、外枠の上に載置される調理鍋を効果的に加熱することができる。
【0015】
発熱体は鉄板であってもよい。あるいは、外枠の板状部の下面に溶射された鉄である。あるいは、外枠の板状部の下面に沿って設けられた鉄粉である。かかる実施形態によれば、外枠の中に鉄粉を流し込んで発熱体を製造することができる。なお鉄粉は接着剤と混合されて外枠の板状部に隣接して配設される。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明は、断熱体が珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、および珪酸カリウムなど珪酸アルカリ化合物の水溶液である接着剤、無機中空体、および骨材を含むことから、製造工程において、断熱体の硬化前と硬化後において体積が変化することがない。したがって同一品質の発熱板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例になる電磁誘導加熱用発熱板を示す断面図である。
【図2】断熱体を模式的に示す拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施例になる電磁誘導加熱用発熱板を一部断面にして示す斜視図である。
【図4】図3の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【図5】図3の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【図6】図3の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【図7】図3の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【図8】本発明のさらに他の実施例になる電磁誘導加熱用発熱板を示す断面図である。
【図9】図8の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【図10】図8の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例になる電磁誘導加熱用発熱板を示す断面図である。図2は、図1の断熱体を模式的に示す断面図である。本実施例の発熱板11は、強磁性体で形成された板状の発熱体12と、発熱体12の下側に設けられる断熱体13とを備える2層構造である。このように発熱板11は2層構造とされ、発熱体12を上側かつ断熱体13を下側にして、電磁調理器101のトッププレート102の上に載置される。
【0019】
発熱板11の平面形状は円形あるいは角が丸められた正方形であり、土鍋、アルミ鍋といった一般的な調理鍋の鍋底と略同じ大きさである。発熱体12の材質として、鉄、マンガン、ニッケル、あるいはこれらを含む合金である。このように発熱体12は強磁性体であることから、電磁調理器101の電磁誘導作用により、無数のうず電流が流れて高温にされる。これにより、発熱板11に載せられる肉や野菜といった被調理物104は、調理される。
【0020】
図2を参照して、断熱体13は、無機中空体14、接着剤15、および骨材19を含む硬化体である。これらの配合比率は特に規定されず、さまざまな配合比が可能である。
【0021】
無機中空体14は、岩石あるいは鉱物を原料または材料とするバルーン状に発泡した粒子であり、本実施例では発泡バルーン状パーライトである。発泡バルーン状パーライトの表面部16と中心部17とを比較すると、表面部16が相対的に緻密であるのに対しその中心部17は相対的に空隙に富む多孔質である。無機中空体14の粒子長は、特に規定されないが、実施の目安として好ましくは0.1〜1.0[mm]である。
【0022】
無機中空体14は炭素(C)を主成分としない無機系であることから熱に強く、耐熱性能に優れる。また、中空であることから熱伝導率が低く、断熱性能に優れる。なお、無機中空体14は、発泡バルーン状パーライトの他、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ガラスバルーン、あるいは他の無機中空バルーン焼成体であってもよく、またはこれらを2種類以上用いたものであってもよい。
【0023】
接着剤15は、具体的には珪酸ナトリウムであり、発泡バルーン状パーライト14の粒子同士を接着する役割を果たす。あるいは接着剤15は、珪酸ナトリウムに代えて、珪酸リチウムであったり、珪酸カリウムであったりしてもよい。あるいは接着剤15は、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸カリウムからなる群から選ばれる混合物であってもよい。これらの混合比は特に限定されず、任意の混合比が可能である。
【0024】
骨材19は、接着剤15とともに発泡バルーン状パーライト14同士の間を埋める役割を果たす。本実施例の骨材19は高炉スラグ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック粉末、セメント、からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の材料である。これら材料の混合比は特に限定されず、任意の混合比が可能である。
【0025】
つぎに、発熱板11の製造方法について説明する。
【0026】
まず、液体の接着剤100重量部、粒子状の無機中空体30〜70重量部、および粉末の骨材10〜30重量部を攪拌混合し、スラリーないしペーストを作製する。なお、これらの配合比率は特に規定されず、さまざまな配合比が可能である。これらの上限値および下限値はおおよその目安であり、この範囲を越えると物性が大きく変化するといった格別な臨界的意義を有するものではない。
【0027】
粒子状の無機中空体14と粉末の骨材19とを接着する接着剤15は珪酸アルカリ化合物の水溶液である。珪酸アルカリ化合物は、珪酸イオンとアルカリ金属イオンとの化合物である。具体例として接着剤15は、珪酸ナトリウム水溶液(液体の珪酸ソーダ)、珪酸リチウム水溶液、および珪酸カリウム水溶液からなる群から選ばれた少なくとも1つ以上の材料である。高濃度の液体の珪酸ソーダは珪酸ナトリウムおよび水分子を含み粘性が大きいいわゆる水ガラスであり、相対的に密着性・接着性に富む。珪酸リチウムの場合は相対的に耐水性・耐吸湿性に富む。珪酸カリウムの場合は、珪酸ナトリウムと珪酸リチウムとの中間の特性(密着性・接着性・耐水性・耐吸湿性)を有する。したがって目的に応じて接着剤の材質・割合を変更すればよい。
【0028】
粒子状の無機中空体14として、好ましくは発泡バルーン状パーライトの粒子が挙げられる。粉末の骨材19として、好ましくは高炉スラグが挙げられる。
【0029】
次に、スラリーないしペーストを、金属板である発熱体12の下側に塗布して断熱体13を成型する。
【0030】
次に、発熱板11を高温下で所定時間静置し、スラリーないしペースト内の水分を蒸発させて接着剤15を硬化させる。これにより断熱体13が硬化して発熱板11が完成する。本実施例によれば、接着剤15から水分が蒸発して硬化するのであって、接着剤15が化学反応により硬化するものではないことから、硬化前と硬化後で断熱体13が体積変化しない。これにより、一定品質の発熱板11を安定して製造することができる。
【0031】
本実施例の断熱体13として、液体の珪酸ソーダ100重量部、粒子状の発泡バルーン状パーライト40重量部、粉末の骨材であるベントナイト10重量部、粉末の骨材である炭酸カルシウム10重量部とを含み、珪酸ソーダを硬化させて作製した実施例1を作製した。また、液体の珪酸ソーダ100重量部、粒子状の発泡バルーン状パーライト55重量部、粉末の骨材である高炉スラグ10重量部を含み、珪酸ソーダを硬化させて作製した実施例2を作製した。また液体の珪酸ソーダ100重量部、粒子状の発泡バルーン状パーライト50重量部、粉末の骨材である高炉スラグ8重量部、粉末の骨材であるホワイトカーボン2重量部、骨材であるブラックカーボン2重量部を含み、珪酸ソーダを硬化させて作製した実施例3を作製した。
【0032】
これら3種類の実施例1〜3については、製造工程における硬化前と硬化後において断熱体13の体積が変化せず、断熱性および耐熱性に優れ、発熱体12との密着性・接着性が良く、製品として良好であった。
【0033】
本実施例の発熱板11は、発熱体12の下側に断熱体13を設けたことから、発熱体12よりも下方へ熱が伝導し難い。したがって、トッププレート102が高温にならず、電磁調理器101内部のコイルおよび電子回路を高温から保護することが可能となる。しかも発熱体12よりも上方へ熱が伝導し易いため、発熱体12の上に載置される調理用鍋の鍋底や被調理物を効率よく加熱することができる。
【0034】
次に本発明の他の実施例を説明する。図3は本発明の他の実施例を一部断面にして示す斜視図である。図3の実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。図3の実施例は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる発熱板であり、発熱板21が発熱体12および断熱体13を備える略平坦な円板である点で共通する。ただし、発熱体12は略平坦な網状体または複数の貫通孔が形成された略平坦な平板であり、断熱体13は発熱体12の外縁を回り込み発熱体12の上側にも設けられ、発熱体12は断熱体13の中に埋設される。換言すれば、発熱板21は、上側の断熱体13uと、発熱体12と、下側の断熱体13dとの3層構造を有する。
【0035】
発熱板21は、略平坦な板状の円板であるが、理解を容易にするために図3では発熱板21を半分に切断してその切断面を示す。発熱板21も、電磁調理器のトッププレート上に載置される。そして発熱板21の上にアルミ鍋や土鍋や鉄鍋といった調理用鍋が載せられる。この状態で、電磁誘導加熱により発熱体12が高温にされ、熱伝導により調理用鍋の鍋底を加熱する。
【0036】
なお、好ましくは、発熱体12よりも上側の断熱体13uの上下方向厚みを発熱体12よりも下側の断熱体13dの上下方向厚みよりも小さくするとよい。かかる実施例によれば、発熱体12が断熱体13の中に埋設されていることから、断熱体13が確りと発熱体12と付着する。そして、発熱体12の熱が上側の断熱体13uを経由して調理用鍋の鍋底に伝導する。これにより調理用鍋を加熱する。また、発熱体12の熱が下側の断熱体13dを経由して電磁調理器のトッププレートに伝導し難くして、トッププレートより下方に設けられた電磁調理器のコイルを熱から保護する。
【0037】
次に図3に示す実施例の変形例を、図4〜図7を参照して説明する。図4〜図7は、図3の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【0038】
図4に示す変形例の発熱板31は、断熱体13の表面が非磁性金属で覆われる。具体的には、アルミニウム製カバー32で上側の断熱体13uの上面と、断熱体13の円周方向360度の側面とが覆われる。このように円板形状の発熱板31の両面のうち一方面がカバー32で覆われ、残る他方面が外方へ露出する。
【0039】
図4の発熱板31は、断熱体13のこれら上面および側面が覆われることにより、発熱板31の強度、耐水性、および美観が向上する。発熱板31も、発熱板21と同様に、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止することができる。
【0040】
図5に示す変形例の発熱板41は、断熱体13の円周方向360度の側面に非磁性金属製、具体的にはアルミニウム製あるいはアルミニウム合金製、のリング42が組み付けられる。リング42は、断熱体13と略同じ厚みであって、所定の径方向寸法を有し、剛性が大きい。これにより、発熱板41の強度が向上する。またリング42は、非磁性金属であることから、電磁誘導作用により加熱されない。したがって発熱板41が置かれるトッププレートが熱くなることを回避することができる。発熱板41は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止することができる。
【0041】
図6に示す変形例の発熱板51は、上側の断熱体13uの上面を、相対的に強度が大きな断熱体53で覆う。同様に、下側の断熱体13dの下面を、相対的に強度が大きな断熱体54で覆う。断熱体の強度の差は、配合比の変更によって実現する。一例として、断熱体53,54に含まれる発泡バルーン状パーライトの割合を、断熱体13に含まれる発泡バルーン状パーライトの割合よりも少なくし、断熱体53,54を相対的に緻密にする。これにより、発熱板51の強度が向上する。発熱板51は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止することができる。
【0042】
図7に示す変形例の発熱板61は、断熱体13の表面がガラスの被膜でコーティングされる。具体的には、ガラス膜62で上側の断熱体13uの上面と、断熱体13の円周方向360度の側面と、下側の断熱体13dの下面とが覆われる。断熱体13のこれら上面、下面および側面が覆われることにより、発熱板61の強度および耐水性が向上する。なおガラス膜62の例としては、トップコートと同じ材質の耐熱ガラスや、熱膨張率が通常よりも小さいガラスが挙げられる。発熱板61は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止することができる。
【0043】
次に本発明のさらに他の実施例を説明する。図8は本発明のさらに他の実施例を示す断面図である。図8の実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。図8の実施例では、発熱板71が発熱体12および断熱体13を備える略平坦な円板である点で共通する。ただし、発熱体12の上側を覆う外枠72をさらに備える。外枠72はアルミニウム製、あるいはアルミニウムを主とする合金製であり、熱伝導率が大きい。発熱板71は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。
【0044】
発熱板71は、略平坦な板状の円板であるが、理解を容易にするために図8では発熱板71を半分に切断してその切断面を示す。外枠72は、発熱体12の上側を覆う円板形状の板状部73と、板状部73の外縁に沿って一周するように延在する外縁壁部74とを有する。外縁壁部74は、図8に示すように板状部73から下方に突出する壁であって、発熱体12の外縁および断熱体13の外縁を囲繞する。
【0045】
発熱板71の製造方法について説明すると、外枠72を上下逆にし、外枠72の内部にまず発熱体12を設置する。この設置は、板状部33の面に鉄を溶射して行う。あるいは鉄粉を配置する。あるいは鉄粉と接着剤との混合物を塗布硬化させる。次に発熱体12の面に前述のスラリーを流し込む。そして、発熱板71を高温下で一定時間静置しスラリーが硬化させる。この結果、スラリーが硬化した断熱体13は、外縁壁部74および発熱体12に確りと付着する。
【0046】
図8の実施例では、発熱板71が外縁壁部74を有することから、スラリーの状態から一定形状の断熱体13を容易に製造することが可能となる。したがって製造効率が向上する。また、外枠72の熱伝導率が大きいことから、発熱板71の上に載せられる調理用鍋の鍋底を効率よく加熱することができる。また、断熱体13によって発熱体12から下方への熱伝導が抑制されることと相俟って、発熱体12から上方への熱伝導が促進され、発熱板71の上に載せられる調理用鍋を効率よく加熱することができる。
【0047】
次に図8に示す実施例の変形例を、図9および図10を参照して説明する。図9および図10は、図8の実施例の変形例を一部断面にして示す斜視図である。
【0048】
図9に示す変形例の発熱板81は、外枠72の上面を断熱体53で覆う。同様に、断熱体13の下面および外縁壁部74の先端部を、断熱体54で覆う。これら断熱体53,54の強度は断熱体13よりも相対的に大きい。断熱体の強度の差は、配合比の変更によって実現する。一例として、断熱体53,54に含まれる発泡バルーン状パーライトの割合を、断熱体13に含まれる発泡バルーン状パーライトの割合よりも少なくし、断熱体53,54を相対的に緻密にする。これにより、発熱板81の強度および断熱性能が向上する。発熱板81は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止することができる。
【0049】
図10に示す変形例の発熱板91は、断熱体13の下面および外縁壁部74の先端部がガラスの被膜でコーティングされる。具体的には、断熱体13の下面から外縁壁部74までを連続して広がるガラス膜62で覆う。断熱体13の下面がガラス膜62で覆われることにより、発熱板91の強度および耐水性が向上する。なおガラス膜62の例としては、電磁調理器のトップコートと同じ材質の耐熱ガラスや、熱膨張率が通常よりも小さいガラスが挙げられる。発熱板91は、調理用鍋の鍋底と電磁調理器のトッププレートとの間に敷かれる。これにより電磁調理器が高温になることを防止しつつ調理用鍋を効率よく加熱することができる。
【0050】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明になる電磁誘導加熱用発熱板は、IHクッキングヒータなど、トッププレートを備える電磁調理器において有利に利用される。
【符号の説明】
【0052】
11 発熱板、12 発熱体、13,13u,13d 断熱体、14 発泡バルーン状パーライト、15 接着剤、19 骨材、21 発熱板、31 発熱板、53,54 断熱体、62 ガラス膜、72 外枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体で形成された略平坦な板状の発熱体と、
粒子状の無機中空体と、粉末の骨材と、珪酸アルカリ化合物の水溶液である接着剤とを含み、前記接着剤が硬化した硬化体であって前記発熱体の下側に設けられる断熱体とを備える、電磁誘導加熱用発熱板。
【請求項2】
前記発熱体は略平坦な網状体または複数の貫通孔が形成された略平坦な平板であり、
前記断熱体は前記発熱体の外縁を回り込み発熱体の上側にも設けられ、発熱体は断熱体の中に埋設される、請求項1に記載の電磁誘導加熱用発熱板。
【請求項3】
発熱体の上側を覆う板状部と、前記板状部の外縁に沿って延在し下方に突出する壁であって前記発熱体の外縁および前記断熱体の外縁を囲繞する外縁壁部とを有する外枠をさらに備える、請求項1に記載の電磁誘導加熱用発熱板。
【請求項4】
前記外枠はアルミニウム製またはアルミニウムを主とする合金製である、請求項3に記載の電磁誘導加熱用発熱板。
【請求項5】
前記発熱体は前記外枠の板状部の下面に溶射された鉄である、請求項3または4に記載の電磁誘導加熱用発熱板。
【請求項6】
前記発熱体は前記外枠の板状部の下面に沿って設けられた鉄粉である、請求項3または4に記載の電磁誘導加熱用発熱板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−258494(P2011−258494A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133716(P2010−133716)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(509008053)サンライズ産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】