電磁誘導透過を用いる量子情報処理
量子情報処理構造および方法は、1キュービットおよび2キュービット量子ゲート、2光子移相器およびベル状態測定デバイスに関する電磁誘導透過(EIT)構成において、光子と4準位物質系とを用いる。物質系を光子バスから分離しながら、物質系と光子とを効率的に結合するために、分子かごまたは分子鎖が、原子/分子を光子の電磁場内、たとえば光子を搬送する光ファイバのコアを包囲するエバネセント場内に保持する。自然放出によって引き起こされるデコヒーレンスを低減するために、物質系をフォトニックバンドギャップ結晶内に埋め込むことができるか、または準安定エネルギー準位を含むように物質系を選択することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
量子システムの開発に最近成功していること、およびその技術の期待される能力に起因して、ここ数年の間に量子情報処理への関心が劇的に高まっている。詳細には、実用的な量子暗号法が開発されており、もし大型(多数キュービット)の量子コンピュータを構築することができるなら、量子コンピュータは、古典的なコンピュータよりも、はるかに効率的に数多くのタスクを実行することができるであろう。たとえば数十または数百キュービット(量子ビット)を有する量子プロセッサがあれば、いかなる古典的なマシンでも達成することができない量子シミュレーションを実行することができるであろう。また、そのような量子プロセッサは、量子通信の実用的な距離および適用性を広げる可能性もある。
【0002】
量子コンピューティング用のハードウエアのための数多くの候補技術が現在研究されている。どの技術が最も実用的であるかが分かったにしても、個別の量子プロセッサをリンクするために、量子コヒーレント通信が必要になる可能性が高いであろう。光ファイバ、または自由空間を進行する光は、長い距離にわたって量子情報を搬送することができるので、コヒーレントな電磁場(たとえばフォトニックキュービット)は量子コンピュータ間の通信のために、及び、一般的な量子通信のために理想的であると考えられる。さらに、量子コンピューティングの中には、非線形または線形量子光学プロセスを用いて、フォトニックキュービット(または、光量子ビット。以下同じ)に対して直接実行できるものもある。
【0003】
光子と物質との相互作用は、量子情報技術を大規模に実施する際の重要な要素である可能性が高く、進行しているフォトニックキュービットと静止している物質キュービットとを容易に相互変換する能力が必要とされるであろう。さらに、いくつかの量子通信およびコンピューティングの場合に、光子状態に符号化されるキュービットに対して量子ゲート(たとえば1キュービットゲートおよび2キュービットゲート)を直接実行できることが極めて望ましい。
【0004】
図1は、光子が物質と相互作用する1つの例示的な系(またはシステム。以下同じ)100を示す。この例では、系100は、原子110と、原子110と相互作用するために角周波数ωaの一方向に進行する電磁波を誘導する低損失共鳴器120とを含む。原子110として実際には、1つまたは複数の原子、分子、または少なくとも2つの利用可能な量子エネルギー準位を有する他の系の集団を用いることができる。原子110の利用可能なエネルギー状態のうちの2つ|1>および|2>は量
【数1】
だけエネルギーが異なる。ただし、
【数2】
は換算プランク定数である(以下では、表記の都合上、この定数を式中を除きhと記載する)。進行波内の各光子のエネルギー(h・ωa)は、式1に示されるように、原子110の2つのエネルギー準位間のエネルギー差から離調することができる。ただし、離調パラメータvaは角周波数ωaに比べて小さい。
【0005】
【数3】
【0006】
原子110が2つの利用可能なエネルギー準位しか持たない場合には、離調パラメータvaが0である(すなわち光子が原子110の共鳴周波数にある)ときに、原子110はエネルギーh・ωaの光子のピーク吸収を有するであろう。吸収係数は一般的に、パラメータvaの他の値については0以外のままである。
【0007】
電磁誘導透過(EIT:Eelectromagnetically Induced Transparency)は、共鳴器120において、原子110を周波数ωaの光子に対して透過性にすることができる現象である。EITを達成するために、原子110は少なくとも3つの利用可能なエネルギー準位を有し、レーザまたは他のデバイスが制御場と呼ばれる電磁場を原子110に印加して、フォトニック状態(光子状態)と物質状態との間に量子干渉が引き起こされる。
【0008】
図2Aは、原子110の3つの利用可能なエネルギー状態|1>、|2>および|3>のエネルギー準位を、共鳴器120内の光子のエネルギーh・ωa、および原子110に印加された制御場内の光子のエネルギーh・ωbと比較した準古典的エネルギー(semi-classical energy)準位図である。式2に示されるように、制御場内の各光子のエネルギーh・ωbは原子110のエネルギー状態|3>と|2>との間のエネルギー差hω32に概ね等しい。ただし、離調パラメータvbは角周波数ωbに比べて小さい。
【0009】
【数4】
【0010】
図2Bは系100の積状態(product state)|X,A,B>のエネルギー準位を示す。積状態|X,A,B>の場合、Xは1、2または3であって、原子110のエネルギー準位を示しており、AおよびBはそれぞれ角周波数ωaおよびωbの光子の数である。図2Bのラビ周波数(Rabi frequency)ΩaおよびΩbは、光子の電場と原子110の対応する双極子モーメントとの電気双極子相互作用によって引き起こされる角周波数ωaおよびωbの光子の吸収および誘導放出の速度を表す。系100の共鳴器120内の光子の吸収または誘導放出の一例は積状態|1,na+1,nb>と|2,na,nb>との間の遷移である。自然放出では、励起された原子110が光子を自由空間内に散乱させることができる(たとえば、状態|2,na,nb>から状態|1,na,nb>への遷移において)。
【0011】
制御場周波数ωbを調整して、原子110が角周波数ωaの光子を吸収する速度を最小にする光子および原子の状態の量子干渉を引き起こすことができる。詳細には、原子110が角周波数ωaの光子を吸収する吸収係数α(ωa)は、離調パラメータvaが0に等しいときに0になる。こうして、制御場をかけることにより、原子110が共鳴器120内の光子に対して透過性になる。
【0012】
量子情報処理のために、原子110とフォトニック信号との1つの有用な相互作用は、原子110が光子に対して透過性であるか、あるいは、信号損失を引き起こさない(または最小限に抑える)ときに、光子の電場演算子の期待値に位相変化を導入するであろう。しかしながら、吸収係数が0(または最小)であるとき、3準位原子110は、透過した光子の状態に位相変化を全く(またはほとんど)引き起こさない。したがって、3準位原子は現時点では、フォトニックキュービットに位相変化を導入するのに適しているとは考えられない。
【非特許文献1】Gray他著「Nonequilibrium Phase Behavior During the Random Sequential Adsorption of Tethered Hard Disks」(Phys. Rev. Lett., 85, 4430-4433)
【非特許文献2】Gray他著「Microstructure Formation and Kinetics in the Random Sequential Adsorption of Polydisperse Tethered Nanoparticles Modeled as Hard Disks」(2001 Langmuir, 17, 2317-2328)
【非特許文献3】D. J. Cram著「Molecular Container Compounds」(Nature 356(6364), 29-36 March 5, 1992)
【非特許文献4】A. Yariv著「Optical Electronics in Modern Communications」5th ed.(Oxford, 1997)
【非特許文献5】E. Knill、R. LaflammeおよびG. J. Milburn著、Nature 409, 46(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野の現状に鑑みて、光子状態の吸収または位相ずれを生じることなく、光量子状態に位相変化を導入するために、光量子状態またはキュービットと物質系との相互作用を可能にする系を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[概要]
本発明の一態様によれば、光子と、4つの利用可能な量子状態を有する原子または物質系との相互作用が、フォトニックキュービットにおいて無視し得る吸収係数および調整可能な位相シフトを与えることができる。原子の利用可能なエネルギー準位のうちの2つが、フォトニックキュービットとの相互作用機構を提供し、フォトニックキュービットに関連付けられた光子のエネルギーからわずかに離調したエネルギー差を有する。第3の利用可能なエネルギー準位は第2のエネルギー準位の下にあり、第4のエネルギー準位は第3のエネルギー準位の上にある。物質に印加された制御場が物質とフォトニックキュービット状態との間に量子干渉を引き起こし、物質系と相互作用する選択されたフォトニックキュービット状態の位相シフトを制御する。これまでは理解されていなかったことであるが、第4のエネルギー準位からの原子の遷移によって生じる自然放出は抑圧されるべきであり、それにより、比較的小さな離調定数が保持され、かつフォトニックキュービットの成分に大きな位相シフトを与える概ね透過性の4準位物質系が達成される。
【0015】
第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するための1つの仕組みは、第4のエネルギー準位からの自然放出に関連付けられた波長を有する光子が伝搬できないようにするフォトニックバンドギャップ結晶に、相互作用する各原子(または他の4準位物質系)を埋め込む。フォトニックバンドギャップ結晶内の線欠陥が、原子に制御場を印加するための経路を提供すると同時に、望ましくない自然放出を依然として適切に抑圧することができる。
【0016】
第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するための別の仕組みは、その第4のエネルギー準位が準安定である4準位系を用いる。準安定状態への遷移は、2つの光子または磁気光学効果のいずれかを用いて行うことができる。いずれの場合でも、第4のエネルギー準位からの実効的な遷移速度は小さいが、第4のエネルギー準位に遷移させる制御場の強度または離調を小さくして、信号光子状態の位相シフトが適度な速度で確実に累積されるようにすることができる。
【0017】
本発明の選択された実施形態では、分子鎖(molecular tether)または分子かご(molecular cage。たとえば、カルセランドあるいはフラーレン)が、各4準位原子または分子を導波管または光ファイバに取り付けて、デコヒーレンスを引き起こす可能性がある光子から原子または分子を離隔するのを助けることができる。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態は、導波管と、物質系と、抑圧構造とを備えるデバイスである。導波管は、フォトニックキュービットのような電磁信号のために用いられる。物質系は、電磁信号と相互作用するように配置され、電磁信号と相互作用するために利用(または到達)可能である複数(通常4つまたはそれ以上)の量子エネルギー準位を有する。抑圧構造には物質系を包囲するフォトニックバンドギャップ結晶を用いることができ、抑圧構造は物質系からの自然放出を抑圧するように動作し、物質系の状態が電磁信号の量子状態と絡み合うときに重要な役割を果たすことができる。
【0019】
そのデバイスの一実施形態は、フォトニックキュービットのための調整可能な電磁誘導透過(EIT)を実施し、単一フォック状態のフォトニックキュービットまたはコヒーレント状態フォトニックキュービットのための調整可能な移相器を作り出す。調整可能な移相器のために、物質系に印加される制御場を変化させて、フォトニックキュービットが物質系と相互作用するときに引き起こされる位相シフトを選択することができる。同様に、制御場の変化を用いて光スイッチを実施することができ、この制御場によって、物質系の透過性が変化し、それにより、そのスイッチが、進行する光子を透過させるか、吸収するかが制御される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、2キュービット位相ゲートが第1のフォトニックキュービットおよび第2のフォトニックキュービットに対して作用する(またはそれらのキュービットに基づいて動作する)。2キュービット位相ゲートは、2つのフォトニックキュービット(または2つのフォトニックキュービットの成分)が加えられる4準位物質系を含む。第1のフォトニックキュービットは、4準位物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の遷移に関連付けられた、共鳴からわずかに離調した周波数(たとえば角周波数ωa)に対応する光子状態を用いる。第2のフォトニックキュービットは、4準位物質系の2つの他のエネルギー準位間の遷移に関連付けられた、共鳴からわずかに離調した周波数(たとえば角周波数ωc)に対応する光子状態を用いる。物質系に印加された制御場は、4準位物質系の別の一対のエネルギー準位に関連付けられた周波数(たとえば角周波数ωb)を有する光子を与える。2キュービット位相ゲートは、物質系と相互作用するために両方の信号周波数(たとえば角周波数ωaおよびωc)の光子を与えるクロス乗積(cross-product)状態に対してのみ相対的な位相シフトを導入する。2キュービット位相ゲートからCNOT量子ゲートを構成することができる。
【0021】
CNOTゲートを構成するために用いることができる本発明の別の実施形態は、4準位物質系を含む2光子移相器である。2光子移相器は、一定の光子数0、1および2の成分を含む入力光子状態に作用する(または、その入力光子状態に基づいて動作する)。4準位物質系に印加される制御場は、物質系の第2のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の遷移、および第4のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の遷移に対応する角周波数を有する。信号光子は、物質系の第2のエネルギー準位と第1のエネルギー準位との間のエネルギー差の半分に関連付けられた角周波数を有する。したがって、入力光子状態の2光子成分は、物質系の第1のエネルギー準位から第2のエネルギー準位への遷移を引き起こすだけの十分なエネルギーを有し、EITおよび位相シフトを受け、他の成分は、十分なエネルギーを持たず、位相シフトを受けない。1つの特定の実施形態では、4準位物質系はさらに、第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の概ね中間にある第5の利用可能なエネルギー準位を有することができる。第5のエネルギー準位によって、1光子状態の相互作用が可能になり、1光子状態を位相シフトすることなく、1光子状態と2光子状態との間の伝搬遅延を等しくすることができる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、ベル状態測定デバイスが、本発明の他の実施形態による2キュービット位相ゲートまたは2光子移相器を用いて実施することができるCNOTゲートを備える。その測定デバイス内のCNOTゲートは、各入力ベル状態を、対応する出力クロス乗積状態に変換し、検出器が出力クロス乗積状態内の要素状態を個別に特定して入力ベル状態を決定することができる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態は量子情報処理方法である。その方法は、物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する光子を含む量子情報信号を用いる。物質系の第3のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子、および物質系の第3のエネルギー準位と第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子を含む電磁場が物質系に印加され、一方で、量子情報信号が物質系と相互作用するように誘導される。その方法はさらに、物質系の第4のエネルギー準位からの遷移に対応する自然放出を抑圧することを含む。その抑圧は、物質系を包囲するフォトニックバンドギャップ結晶を用いて自然放出を阻止することができるか、または物質系を選択することにより第4のエネルギー準位を準安定にすることができる。
【0024】
それぞれの図面では、類似または同一の要素を指示するために同じ参照記号を用いる。
【実施例】
【0025】
[詳細な説明]
フォトニックプローブパルスの位相および強度の正確な確定的制御は、プローブパルスおよび一対の制御場と相互作用する4準位物質系を用いて達成することができる。図3Aは、角周波数ωa、ωbおよびωcを有する光子のエネルギーに対する、4準位系のエネルギー状態|1>、|2>、|3>および|4>のエネルギー準位を示す。角周波数ωaの光子は原子のエネルギー準位|1>をエネルギー準位|2>に結合する。角周波数ωbおよびωcの光子は、準安定エネルギー準位|3>をそれぞれエネルギー準位|2>およびエネルギー準位|4>に結合する。離調パラメータva、vbおよびvcはそれぞれ、式3に示されるような物質系のエネルギー準位遷移の共鳴からの角周波数ωa、ωbおよびωcの離調の量を示す。式3では、状態|1>と|2>との間のエネルギー差、状態|3>と|2>との間のエネルギー差および状態|3>と|4>との間のエネルギー差はそれぞれhω12、hω32およびhω34である。
【0026】
【数5】
【0027】
図3Bは、積状態|X,A,B,C>に対応するマニホールドを示す。ただしXは物質系のエネルギー準位を示し、A、BおよびCはそれぞれ角周波数ωa、ωbおよびωcの光子の数を示す。例示したマニホールドは、角周波数ωaのna個の光子、角周波数ωbのnb個の光子および角周波数ωcのnc個の光子の場合に、状態|1>の物質系に最も近いエネルギー状態を含む。周囲環境への光子の自然放出は、その系を、図3Bに示されるマニホールドに類似であるが、その環境に対して失われるタイプの光子がより少ないマニホールド内の1つのエネルギー準位に移動させるであろう。
【0028】
計算のために、図3Bの積状態を拡張して、各積状態に角周波数ωa、ωbまたはωcの光子の散乱の発生を示す入力を付加することにより、その環境に対するエネルギー散逸を含むようにすることができる。それゆえ、散逸されたエネルギーを捕捉し、密度行列のトレースを保存する3重縮退の非共鳴サブマニホールドが、その環境を表すことができる。
【0029】
図3Cは、角周波数ωa、ωbおよびωdを有する光子のエネルギーに対する別の4準位系のエネルギー状態|1>、|2>、|3>および|4>のエネルギー準位を示す。図3Aの4準位系と同様に、角周波数ωaの光子は原子エネルギー準位|1>をエネルギー準位|2>に結合し、角周波数ωbの光子は準安定エネルギー準位|3>をエネルギー準位|2>に結合する。しかしながら、図3Cの4準位系の場合、エネルギー状態|4>は、第3のエネルギー状態|3>と同様に、単一光子自然放出が許されないという点で準安定である。たとえば、エネルギー状態のスピン/角運動量および利用可能なより低いエネルギー状態が、その低い状態に遷移するときに保存則により単一の光子の放出が禁止されるようなものである場合には、結果として準安定になる場合がある。第4のエネルギーへの遷移をもたらす制御場は、第4のエネルギー状態への2光子遷移を可能にするための遷移エネルギーhω34の概ね半分であるエネルギーhωdを有する。別法では、磁気光学効果が第4のエネルギー準位への遷移をもたらすことができる。後にさらに説明されるように、第4のエネルギー準位の準安定性および結果としての第4のエネルギー準位からの自然放出の減少は量子情報処理のために有益である。
【0030】
本発明の一態様によれば、量子ゲートが、光子と、図3Aおよび図3Bまたは図3Cに示されるエネルギー準位を有する4準位物質系とを用いる。たとえば、図4Aは、4準位物質系410を用いる1キュービットゲート400Aを示す。4準位物質系410は一般的に、1つまたは複数の原子、分子、またはゲートにおいて用いられる光子と相互作用するために利用可能である少なくとも4つのエネルギー準位を有する他の系の集団を含むであろう。物質系の4つのエネルギー準位は、図3Aまたは図3Cに示されるような光子エネルギー(あるいは角周波数)に関連する。
【0031】
1キュービットゲート400は、自由空間、導波管または光ファイバを経由してシステム410に入ることができる、周波数ωaを有する入力フォトニックキュービット状態|Qin>を有する。4準位物質系410と相互作用するために入力フォトニックキュービットを誘導するための構造は後にさらに説明される。入力キュービット状態|Qin>は一般的に、状態|Q0>および|Q1>の重ね合わせである。ただし、状態|Q0>はキュービットの1つの2進値(たとえば0)を表し、状態|Q1>はキュービットの他の2進値(たとえば1)を表す。1キュービットゲート400Aの場合、状態|Q0>および|Q1>のうちの一方は角周波数ωaの単一の光子の存在に対応し、状態|Q1>および|Q0>のうちの他方は角周波数ωaの任意の光子の不在に対応する。真空(すなわち、光子がない)状態は4準位物質系410と相互作用しないが、角周波数ωaの光子の存在に対応する状態は4準位系410と相互作用し、出力キュービット状態|Qout>が入力キュービット状態|Qin>とは異なるようにする。
【0032】
図4Bは、4準位系410との相互作用を用いて入力キュービット状態|Qin>を出力キュービット状態|Qout>に変換する、干渉計をベースとした1キュービットゲート400Bを示す。1キュービットゲート400Bの場合、キュービット状態|Qin>の成分状態|Q0>および|Q1>はいずれも、角周波数ωaを有する光子パルスを表すが、空間的に分離できるように、状態|Q0>および|Q1>に対応する光子は異なる。図4Bの例示的な実施形態では、状態|Q0>および|Q1>は角周波数ωaを有する単一の光子の異なる直交偏光、またはコヒーレント光子パルスの異なる直交偏光に対応し、ビームスプリッタ430(たとえば偏光ビームスプリッタ)が2つの成分状態|Q0>と|Q1>を空間的に分離する。別のキュービット符号化の場合、成分状態|Q0>および|Q1>は異なるスピン(すなわち、それらの角運動量のz成分において異なる状態)を有する光子を、またはわずかに異なる運動量を有する光子を表すことができる。他のキュービット符号化も可能であり、成分状態|Q0>と|Q1>を分離する素子(たとえば偏光ビームスプリッタ430)を、用いられるキュービット符号化に従って選択することができる。
【0033】
図4Bでは、1キュービットゲート400Bは、4準位物質系410と相互作用するための状態|Q1>の光子を誘導する。4準位系410が状態|Q1>と相互作用した後に、4準位系410から出る光子は、ミラー434から反射されて、ビームコンバイナ438に入る。状態|Q0>の光子はビームスプリッタ430からミラー436まで進行し、ミラー436からビームコンバイナ438に入り、4準位系410とは相互作用しない。ビームコンバイナ438は、偏光符号化されたキュービット用の偏光ビームスプリッタを用いて実施することができ、2つの経路からの光子を合成して出力キュービット状態|Qout>を構成する。
【0034】
図4Cに示される1キュービットゲート400Cは、4準位物質系410と相互作用するための状態|Q1>の光子を誘導し、かつ4準位物質系410’と相互作用するための状態|Q0>の光子を誘導する。それぞれの4準位系410および410’と相互作用した後に、入力状態|Q1>および|Q0>に対応する光子はビームコンバイナ438に入り、ビームコンバイナ438は光子状態を合成して、出力キュービット状態|Qout>を構成する。物質系410および410’は個別の発生源420および420’からの制御場を有し、これにより、状態|Q1>および|Q0>と物質系410および410’との相互作用は異なる効果(たとえば、逆方向への位相シフト)を有し、1キュービットゲート400Cの機能に依存して、出力キュービット状態|Qout>は入力キュービット状態|Qin>と異なる。
【0035】
レーザまたは他の光源420が、角周波数ωbおよびωcの光子を含む電磁制御場を4準位系410に加える。制御場は、角周波数ωaの光子状態と物質系410のエネルギー状態との間に量子干渉を実効的に引き起こす。詳細には、制御場を加えることにより、第3のエネルギー準位のACシュタルクシフト(AC Stark shift)が与えられ、それが4準位系410の吸収および屈折率に影響を及ぼす。制御場内の光子の角周波数ωbおよびωcを調整して、角周波数ωaの光子のための所望の相互作用(たとえば透過性および所望の位相シフト)を引き起こすことができる。
【0036】
ゲート400Cでは、個別のレーザまたは光源420’が、角周波数ω’bおよびω’cの光子を含む電磁制御場を4準位系410’に加える。角周波数ω’bおよびω’cを調整して、角周波数ωaの光子と4準位系410’との所望の相互作用を引き起こすことができる。たとえば、4準位系410’を調整して、4準位系410において引き起こされるたと反対方向への位相シフトを引き起こすことができ、それにより、状態|Q0>に対する状態|Q1>の位相シフトが4準位系410において導入された位相シフトの2倍になるであろう。したがって、2つの4準位系410および410’を用いることにより、応答時間を半分に短縮することができ、それによりキュービットのためのコヒーレンス時間を短くできるようになる。さらに、キュービットの両方の成分状態と相互作用する4準位系を備えることにより、状態|Qout>の出力光子パルスのタイミングをさらに良好に一致させることができる。
【0037】
量子情報の生成、送信、受信、記憶および処理のための4準位系410のコヒーレントポピュレーション移動(population transfer)の有用性は、4準位系に入力される離散的な状態(たとえば状態|Qin>)のコヒーレントな重ね合わせの時間依存性を評価することにより利用することができる。たとえば、システムが最初に式4のような2つのマニホールド状態の重ね合わせからなる純粋な状態|Ψ>にある、図1の光子/原子を組み合わせた系について考える。式4では、状態|1,0>は、原子が第1のエネルギー準位(たとえば基底状態)にあり、図1の共鳴器120内に光子が存在しないことを表し、状態|1,na>は、原子が第1のエネルギー準位にあり、共鳴器120内にna個の光子が存在することを表す。
【0038】
【数6】
【0039】
式5は単位位相シフト演算子Φ(φ)を定義しており、ここで演算子
【数7】
およびaは周波数ωaの光子のための生成および消滅演算子である。式5の単位位相シフト演算子Φ(φ)は、状態|Ψ>を式6に示されるような状態|Ψ’>に変換する。各フォック状態光子は、状態|1,0>と|1,na>との間の全ての累積された相対位相シフトnaφに等しく寄与することに留意されたい。
【0040】
【数8】
【0041】
位相シフト演算子Φ(φ)は、式7に示されるようなフォック状態に関して定義される、コヒーレントな光子状態に対しても同じように適用することができる。式7では、フォック状態|n>は角周波数ωのn個の光子を含む状態を表しており、nvはコヒーレント状態|α(t)>の平均占有数である。空の共鳴器と、(状態|Ψ>のフォック状態|1,na>の代わりとして)コヒーレント状態|1,α>との重ね合わせで開始することにより、式8の位相シフト結果が生成され、それは古典的な場についての本発明者らの直観に従っている。
【0042】
【数9】
【0043】
光子と4準位系410との相互作用が所望の位相シフトを生成する場合には、ゲート400Aが位相シフト演算子を物理的に実施することができる。同様に、光子−物質相互作用が所望の特性を有する場合には、図4Bに示されるマッハ−ツェンダー干渉計が、デュアルレールのコヒーレントな重ね合わせ用の位相シフト演算子の物理的な実施を提供することができる。
【0044】
光子−物質相互作用の特性を解明するために、積状態を増加させて、制御場および自然放出を明らかにすることができる。その後、結果として生成される、光子と4準位物質系との間の双極子相互作用のための密度行列運動方程式を解いて、ラビ周波数Ωa、Ωb、Ωcおよびレーザ離調パラメータva、vb、vcのような実験的に決定されたパラメータによって、式6および式8内の位相φからの直接読み出しを可能にする密度行列要素を決定することができる。状態|1,0>と状態|1,na>との間のコヒーレンスに対応する、計算された密度行列要素ρ10が式9において与えられる。ここで、式10は、4準位物質系による光子の吸収を最小限に抑えるために離調パラメータva、vbが0に設定されるときの密度行列要素ρ10の位相W10を定義する。
【0045】
【数10】
【0046】
式9および10では、γ10、γ20、γ30およびγ40はそれぞれ物質系の第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位の場合のデコヒーレンス速度(またはデコヒーレンスの割合。以下、同じ)である。デコヒーレンス速度γ20またはγ40は、4準位物質系が対応する第2のエネルギー準位または第4のエネルギー準位からそれより低いエネルギー準位に遷移するときの光子の自然放出に対応する寄与を含む。デコヒーレンス速度γ30は、自然放出に対応する寄与を有するのではなく、速度γ10と同様に、4準位物質系が第3のエネルギー準位に対応する状態にあるときの位相ずれに単に起因するものである。低デコヒーレンス速度が一般的には望ましいが、以下に説明される理由から、4準位物質系と光子の相互作用から望まれる量子コンピューティングおよび通信特性を達成するために、第4のエネルギー準位からの自然放出は抑圧されるべきである。
【0047】
位相W10の実数部は4準位物質系との相互作用において遭遇する光子状態の実際の位相シフトを表し、位相W10の虚数部は光子の残留吸収を表す。位相ずれ速度(または位相ずれの割合)が上位の原子の準位の占有数減少速度(depopulation rate)(または占有数減少の割合)よりもはるかに小さい場合には、位相W10の実数部と虚数部との比は式11Aにおいて与えられ、速度γ20とγ40が概ね同じであり、かつ|Ωb|2が|Ωc|2よりもはるかに大きい場合には、その比は式11Bに簡略化される。式11Bは、W10の実数部と虚数部との比を大きくするために、離調パラメータvcがγ40に対して大きくなければならないことを示す。この限度内で、式12は近似的な位相シフトを与え、式13はρ10(t)の振幅の減衰速度を与える。
【0048】
【数11】
【0049】
式12によって与えられる位相シフトは、2準位系の離調パラメータが式14に与えられる実効的な離調パラメータv’cによって置き換えられるということを除いて、2準位系についての対応する位相シフトと同じ基本形を有する。それゆえ、所与の位相シフトは、2準位系よりもはるかに小さな離調を用いて、4準位系において求めることができる。しかしながら、4準位系の忠実度およびエントロピーは比γ40π/vcによって決定されることになり、相互作用領域内の原子の数Nとは無関係である。したがって、デコヒーレンス速度γ40を十分に小さくできない場合には、高い忠実度および低いエントロピーで−πの位相シフトを達成するには、非常に大きな離調vcおよび/または極めて長い相互作用時間が必要とされる場合がある。
【0050】
後にさらに説明される本発明の一態様によれば、相互作用領域は、図3Aの第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するように設計されたフォトニックバンドギャップ結晶(PBGC)内に配置することができる。これは望ましくない自然放出を抑圧するが、角周波数ωcを有する制御光子の入力も妨げる可能性がある。しかしながら、角周波数ωcを有する制御光子を、PBGC内の欠陥を通して注入することができる。別法では、第4のエネルギー準位は図3Cの場合のように準安定にすることができ、それにより自然放出が抑圧される。さらに、電磁的手段または化学的手段を用いて、バンドギャップ結晶に4準位計を埋め込むことなく、第4のエネルギー準位からの自然放出を強制的に抑圧することができる4準位系(たとえば分子)を合成することもできる。周波数ωbおよびωcを有する制御場の場合に、ラビ周波数|Ωb|2がラビ周波数|Ωc|2よりもはるかに大きく、かつγ20|Ωc|2がγ40|Ωb|2よりもはるかに大きいなら、位相W10の実数部と虚数部との比、位相シフトおよび減衰速度はそれぞれ式15、式16および式17によって与えられる。
【0051】
【数12】
【0052】
式15〜式17が有効である領域内で動作する系は、デコヒーレンス速度γ40が0に移行する範囲内で、2準位系と数学的に類似である。詳細には、4準位、2光子非線形位相シフトは、2準位系の離調パラメータを実効的な離調パラメータv’cで単に置き換えることにより、2準位、1光子線形位相シフトに移し変えることができる。しかしながら、4準位系の離調vcは、光子状態の忠実度および位相シフトが同じ場合に、2準位系の対応する光子離調よりもはるかに小さくすることができる。この非線形の位相シフトを対応する線形位相シフトと同じ程度に大きくできることは、角周波数ωa、ωbおよびωcの3つの場を結合する非常に大きな3次カー(型)非線形性の存在を示す。この非線形性を適度な離調でのみ達成して、準古典的な領域において大きな差の位相シフトおよび小さな吸収速度の両方を与えることができる。
【0053】
角周波数ωaの光子の場合の吸収係数α(ωa)および屈折率η2(ωa)−1は、状態|1,na,nb,nc>と|2,na−1,nb,nc>との間のコヒーレンスに対応する密度行列要素ρ21を用いて計算することができる。図5Aは、比vc/γ41の3つの異なる値についての、比va/γ21に対する吸収係数α(ωa)の計算された依存性を示す。比va/γ21およびvc/γ41は、第2のエネルギー準位および第4のエネルギー準位から第1のエネルギー準位への遷移に対応する自然放出を含むそれぞれのデコヒーレンス速度γ21およびγ41に対する、それぞれの離調パラメータvaおよびvcの比である。デコヒーレンスまたは位相ずれ速度γ31は外部の相互作用に起因する。デコヒーレンス速度γ31が0に近づき、かつ角周波数ωcが共鳴している(すなわちvc=0である)とき、図4Aは、吸収係数α(ωa)が、例示した範囲内のva/γ21の全ての値について約0.8よりも大きいことを示す。比va/γ21の特定の値について、比vc/γ41が比較的大きい(たとえば、約5よりも大きい)ときには、吸収係数α(ωa)は概ね0まで降下する。したがって、第4のエネルギー準位のデコヒーレンス速度γ41が適度に低く保たれる場合、特定の周波数ωaについて、制御場の角周波数ωcを変更することにより、吸収係数α(ωa)を透過性から不透過性に切り替えることができる。
【0054】
図5Bは、第1のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の相対的な位相ずれの速度γ31が0に近づくときの、比vc/γ41の3つの異なる値のついての比va/γ21に対する屈折率η2(ωa)−1の依存性を示す。図5Aと図5Bを比較すると、吸収係数α(ωa)が小さいとき、比vc/γ41が適切に選択される場合に、4準位系が依然として光子状態に評価可能な程度の相対的な位相変化を引き起こすことがわかる。後にさらに説明されるように、この特性によって、1キュービットゲート400A、400Bまたは400Cは、調整可能な移相器として動作できるようになる。
【0055】
図5Cは、離調パラメータvaが0であるときの、正規化された離調vc/γ41の関数としての図5Bの3次感受率(または3次磁化率)χの挙動を示す。離調パラメータvcが0に近づくと、プローブ周波数ωaにおいて大きな相対的吸収が生じること(それは「量子スイッチ」のために有用である)、および離調パラメータvcの大きな値が、小さな吸収に対してかなりの位相シフトを生じること(それは「量子移相器」のために有用である)に留意されたい。
【0056】
先に説明されたように量子情報処理のために適したEITは、透過性を与え、コヒーレンスを保持し、さらに絡み合ったフォトニックキュービットに影響を及ぼす自然放出を回避すべきものである。制御場は、4準位物質系の第2のエネルギー準位の占有数を激減させて、透過性を与える。十分に低い温度、たとえば約4゜K未満の温度で系を動作させることにより、デコヒーレンスの発生源としての位相ずれを抑圧することができる。4準位系は、第1のエネルギー準位および第3のエネルギー準位が、いずれも単一光子の自然放出を生じないという点で準安定であるように選択される。実効的な離調v’cをスケーリングして、式15における比について所望の値を達成することができるので、第2のエネルギー準位からの自然放出の制御は不要である。しかしながら、第4のエネルギー準位からの自然放出が、絡み合ったフォトニックキュービットにおいてデコヒーレンスを引き起こす。離調パラメータvcの大きさを非常に大きな値まで増加することにより、フォトニックキュービットの絡み合いは減少するであろうが、EIT系によって導入された位相シフトも減少するであろう。本発明の一態様によれば、プローブ光子と4準位系とを相互作用させるための構造は、第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧し、デコヒーレンス速度γ40を減少させるための仕組みを含む。
【0057】
図6Aは、プローブ光子が4準位物質系と相互作用できるようにし、かつ相互作用サイトの第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する構造600Aを示す。構造600Aは、導波管615を含む、フォトニックバンドギャップ結晶、シリカ、または他の光学材料のような材料の基板610を備える。同じく、導波管615には、基板610に対応するクラッディングを有する光ファイバのコアを用いることができる。導波管615は、角周波数ωaを有するプローブ光子を誘導する。一実施形態では、導波管615は、フォトニックバンドギャップ結晶から形成され、角周波数ωaの(および実施形態によっては制御周波数ωbの)光子は伝搬することができるが、相互作用サイト620の第4のエネルギー準位からの自然放出に対応する角周波数ω14およびω34を有する光子は伝搬することができない。
【0058】
相互作用サイト620は、それぞれ図3Aまたは図3Cに示されるような関連する4つの利用可能なエネルギー準位を有し、導波管615に沿って進行する光子と相互作用するように配置される。この目的を果たすために、相互作用サイト620を、導波管615の内部に、または導波管615の外部に(図6Aに示されるように)配置することができ、相互作用サイト620は、進行している光子のエバネセント場と相互作用する。各相互作用サイト620には、原子(たとえばカルシウム(Ca)原子、プラセオジム(Pr)原子あるいは他の重原子)、分子、または光子と相互作用し、かつ4つの利用可能なエネルギー準位を有する任意の他の系を用いることができる。プローブパルスの角周波数ωaならびに制御場の角周波数ωbおよびωcまたはωdは一般的に、相互作用サイト620のエネルギー準位に従って選択される。
【0059】
基板610に接着した分子鎖640は、相互作用サイト620を基板610の表面付近に閉じ込める(制限する)。分子鎖620には、分子、特に有機分子を固定化するためによく知られているポリマーまたは他の材料を用いることができる。分子鎖はさらに、たとえば、上記非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。各分子鎖640の構造は、鎖640において励起された光子を著しく減衰させるように、かつ基板610において生成された光子をフィルタリングするように選択されることが好ましい。分子鎖は、プローブ光子および制御場光子に対して透過性であることが好ましい。
【0060】
図6Bは別の構造600Bを示しており、分子かご645がそれぞれの相互作用サイト620を固定された場所に保持する。分子かご645には、カルセランド、カルセプレックス(carceplex)、内包フラーレン(endohedral fullerene)または類似の分子構造を用いることができる。そのような構造は当該技術分野において既知であり、たとえば、上記非特許文献3に記載されている。分子かご645のために用いられる特定の化合物は、プローブ光子および制御場光子に対して透過性であることが好ましく、一般的に相互作用サイト620のために用いられる特定の原子または分子のために選択されるであろう。相互作用サイト620を、相互作用サイト620と分子かご645の「壁」との間の相互作用を最小限に抑えるsタイプ基底状態にする際に冷却することが有益な場合がある。
【0061】
量子情報システムのために4準位相互作用サイト620の電磁誘導透過を用いることは、先にあげられた理由により、相互作用サイト620の第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧することから利益を得るであろう。これらの自然放出を抑圧するために、構造600Aおよび600Bはさらにフォトニックバンドギャップ結晶630を含み、相互作用サイト620およびそれらに関連する閉じ込め構造640または645がフォトニックバンドギャップ結晶630の点欠陥に存在する。フォトニックバンドギャップ結晶はよく知られており、バンドギャップ結晶630は、種々の既知の技術を用いて製造することができる。1つの製造技法は、相互作用サイト629上に薄い誘電体膜を繰返し形成して、選択された1つまたは複数の周波数の光の伝搬を抑圧する周期的な誘電体材料を作製することにより、フォトニックバンドギャップ結晶を形成する。フォトニックバンドギャップ結晶630は、第4のエネルギー準位から第1のエネルギー準位および第3のエネルギー準位への遷移にそれぞれ対応する角周波数ω14およびω34を有する光子の伝搬を禁止する構造を有する。
【0062】
角周波数ω14およびω34の光子が伝搬するのを禁止するフォトニックバンドギャップ結晶630は、一般的には、離調パラメータvcが小さいときの角周波数ω34に概ね等しい角周波数ωcを有する制御場の入力も阻止するであろう。バンドギャップ結晶630内の欠陥635によって、角周波数ωcの制御場光子を相互作用サイト620に加えることができる。欠陥635は種々の幾何学的形状を有することができる。たとえば、図6Aは、それぞれの相互作用サイト620への個別のライトパイプを有する構成を示す。図6Bは、単一の導波管が複数の相互作用サイトに制御場光子を与える構成を示す。フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635のための特定の構成は一般的に、角周波数ωbの制御場を印加することができるようにしながら、望ましくない自然放出を最小限に抑えるという、競合する目標に基づいて設計されるであろう。角周波数ωbの制御場光子は、それぞれの実施形態において、欠陥635または導波管615を介して相互作用サイト620に加えることができる。
【0063】
欠陥635は、制御角周波数ωcを有する光子(実施形態によっては、制御角周波数ωbを有する光子)が伝搬できるようにする材料の領域として作製される永久的な欠陥にすることができる。別法では、フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635は、高速に(電子工学的に、または他の方法で)オンおよびオフに切り替えられる一時的な欠陥にすることができる。電気光学効果が、欠陥をオンおよびオフに切り替えるための1つの仕組みを提供する(非特許文献4を参照されたい)。
【0064】
フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635によって、制御場のレーザまたは他の外部の光源が、線欠陥635を通して相互作用サイト620まで角周波数ωcの光子を誘導できるようになる。角周波数ωcとω34が概ね等しいとき、欠陥635によって、角周波数ω34の光も結晶630から逃げることができるようになるが、結晶630および欠陥635の特性を選択して、依然として角周波数ω14を有する光の伝搬を阻止することができる。欠陥635があっても、フォトニックバンドギャップ結晶630は、光子が自然に放出されるために利用可能な状態の密度を下げることにより、第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する。欠陥635の幾何学的形状および特性を、自然放出のために利用可能な状態を最小限に抑えながら、制御場を印加することができるように最適化することができる。こうして、デコヒーレンス速度γ41への自然放出の寄与を小さくすることができ、それは量子ゲートを動作させるために不可欠である。
【0065】
図6Aおよび図6Bの実施形態では、相互作用サイト620の数は、相互作用の累積的な効果、たとえばプローブ光子状態の減衰または位相変化が所望のレベルに達するように選択される。相互作用のレベルは、光子が相互作用サイト620と相互作用する時間の長さによる。相互作用サイト620の数を増やすことにより、プローブ光子と4準位系との間の相互作用時間が実効的に長くなる。
【0066】
図7は、「ウィスパリングギャラリー(whispering gallery)」を用いて、プローブ光子と相互作用サイト720との相互作用時間を長くする構造700を示す。構造700は、光ファイバ710と、相互作用サイト720と、シリコンマイクロスフェア730とを備える。光ファイバ710はプローブ光子を搬送し、シリカマイクロスフェア730は、光ファイバ710のコアに隣接し、光ファイバ710のエバネセント場からの光子を捕捉する。相互作用サイト720は、図6Aおよび図6Bに関して先に説明されたような分子鎖または分子かごを用いて、シリカスフェア(シリカ球)730の表面近くに制限することができる。また構造700は、相互作用サイト720を包囲して自然放出を抑圧するフォトニックバンドギャップ結晶(図示せず)も含む。
【0067】
マイクロスフェア730は、プローブ光子の波長の何倍もの(たとえば、通常約10倍の)直径を有し、光ファイバ710のコアを包囲するエバネセント場に結合するように配置される。結果として、マイクロスフェア730は、高いQ値の共鳴器を与え、プローブ光子が光ファイバ710に戻る前に、プローブ光子と相互作用サイト720との間で長時間にわたって相互作用できるようにする。制御場は、導波管または経路740を介して、相互作用サイト720に入射する。
【0068】
図4A、図4Bおよび図4Cの1キュービットゲート400A、400Bおよび400Cは、スイッチまたは量子移相器を実施する際に、4準位系410として図6A、図6Bまたは図7の構造のうちの任意のものを用いることができる。そのスイッチは、制御場の外部制御を通して操作される。相互作用サイトにおいて、制御場が、共鳴周波数ω32に概ね等しい角周波数ωcを有する光子、および共鳴周波数ω42に等しい角周波数ωbを有する光子を与える場合には、4準位物質系は、ω31に等しい角周波数ωaを有するプローブ光子を吸収する高い確率を有する。そうでない場合には、プローブ光子は透過されるであろう。
【0069】
こうして、従来の光学データまたはフォトニックキュービットの切替えが同じ構造を用いて可能となる。詳細には、図4Aの構造400Aを用いて、角周波数ωbが4準位物質系410の共鳴に同調するとき(すなわちωb=ω32)、角周波数ωcを共鳴に同調させることにより(すなわちωc=ω42)、角周波数ωaを有する光学信号がオフに切り替えられる。角周波数ωcを離調させることにより(たとえば、これにより、比vc/γ41が約10〜100の範囲内になり)EITを引き起こすので、物質系410は光学データ信号を透過させる。同様に、フォトニックキュービットが、物質系410と相互作用する角周波数ωaの成分状態を含むとき、その成分状態を、量子的にコヒーレントなやり方で切り替える(すなわち選択的に透過または吸収する)ことができる。
【0070】
図4A、図4Bおよび図4Cの構造400A、400Bおよび400Cは、フォトニックキュービットのための調整可能な移相器を実施することもできる。たとえば、単一のフォック状態調整可能移相器が、形式c0|Q0>+c1|Q1>の初期状態|Qin>(ただし、|Q0>および|Q1>は角周波数ωaを有する光子のフォック状態である)を、形式c0|Q0>+c1ejθ|Q1>の出力状態|Qout>に変換する。4準位系410は、状態|Q1>に対して位相シフトθを導入する。ただし、θは制御場および相互作用サイトの数に依存する。図4Aの構造400Aは、4準位物質系410の1−2チャネル内にある、角周波数ωaの単一の光子パルスの不在および存在に対応するキュービット成分状態|Q0>および|Q1>を有する。
【0071】
図4Bの1キュービットゲート400Bは、いずれも角周波数ωaを有する単一の光子状態であるキュービット成分状態|Q0>および|Q1>を用いることができる。状態|Q0>および|Q1>は、ビームスプリッタ430が状態|Q0>と|Q1>を空間的に分離できるようにする特性(たとえば偏光)も有する。この場合、4準位物質系410内の状態|Q1>の相互作用は、状態|Q0>に対して位相シフトθを引き起こす。
【0072】
1キュービットゲート400Aまたは400Bいずれの場合でも、状態|Q1>の光子は、論理キュービット状態|Q0>と|Q1>との間に所望の相対的な位相を確立するだけの十分な時間にわたって、物質系410内の4準位相互作用サイトを通過する(または循環する)。1キュービットゲート400Cは、キュービット成分状態|Q1>および|Q0>の両方を、それぞれの4準位物質系410および410’に通す(またはその中を循環させる)。1つの構成では、1キュービットゲート400Cは、各状態|Q1>および|Q0>の位相をθ/2だけシフトして、出力状態|Qout>が形式c0e―jθ/2|Q0>+c1e+jθ/2|Q1>を有するようにする。4準位物質系410および410’はそれぞれ、1キュービットゲート400Aおよび400B内の4準位系が与える位相シフトの半分しか与えないので、相互作用時間も同様に半分に短縮され、必要とされるコヒーレンス時間を短縮することができる。
【0073】
1キュービットゲートの導入された位相シフトθはπの程度になるまで調整することができる。位相の大きさは、相互作用サイトを通るサイクル数によってだけでなく、相互作用サイトの異なる遷移に印加される制御場の強度および/または周波数を通して調整することができる。これにより、極めて正確な位相シフトθが確立できるようになる。デコヒーレンス(および特に位相ずれ)は、0とπとの間の位相シフトの所望の調整可能な範囲について、同じ位相シフトθに対する理想的なゲートと比べたときにゲートが高い忠実度(または正確さ)で動作するようなレベルに保持されるべきである。上記のフォトニックバンドギャップ材料を用いることにより、位相ずれを抑圧するのを助けることができる。調整可能な単一光子移相器は、線形光学系量子情報処理のための最も有用な量子ゲートのうちの1つである。
【0074】
一定の数の光子を含むフォック状態ではなく、コヒーレント状態|α(t)>であるキュービット状態|Q1>の場合にも、調整可能な移相器を実施することができる。コヒーレント状態は式7において先に定義されている。1つの例示的な系では、コヒーレント状態は通常、光子の平均数nvとして3〜5を有する。フォック状態の場合と同様に、コヒーレント状態は、形式c0|Q0>+c1|Q1>の初期状態|Qin>から形式c0|Q0>+c1ejθ|Q1>の出力状態|Qout>に変化する。ただし、論理状態|Q0>および|Q1>は、4準位物質系の1−2チャネル内のコヒーレント状態パルス(振幅αを有する)の不在または存在に対応する。位相シフトθが|Q1>状態において導入される。|Q0>状態においては位相シフトは生じない。
【0075】
図4Aの構造400Aはコヒーレント状態移相器を実施することができ、コヒーレントパルス|α(t)>が、状態|Q0>と|α(t)>との間の所望の相対的な位相シフトθを確立するだけの十分な時間にわたって、4準位相互作用サイトに繰返し通される。このゲートは、論理基底状態(またはキャットステート(cat state))の任意の入力の重ね合わせについて作用し、コヒーレント状態量子情報処理に極めて有用である。再び、デコヒーレンスは最小限に抑えられるべきである。
【0076】
本明細書において説明される4準位物質系のEIT特性は、2キュービットゲートおよび条件付き光スイッチも実施することができる。図8Aは、本発明の一実施形態による、2キュービットゲートとして動作することができる1つの例示的な構造800を示す。構造800は、4準位物質系410と、制御場を加えるレーザ820または別の電磁放射源とを備える。入力信号として、構造800はターゲットキュービット|QTin>および制御キュービット|QCin>を有する。例示した構造800は、ターゲットおよび制御キュービットのためのそれぞれ角周波数ωaおよびωcの光子と、レーザ820からの制御場のための角周波数ωbの光子とを用いる。本発明の別の一実施形態では、角周波数ωbおよびωcの光子の役割を逆にして、制御キュービットが角周波数ωbの光子に対応し、レーザ820からの制御場が角周波数ωcの光子を含むようにすることができる。本発明のさらに別の実施形態では、制御キュービットが角周波数ωbの光子に対応し、レーザ820からの制御場が角周波数ωddの光子を含む。
【0077】
入力キュービット|QTin>および|QCin>が適切な角周波数ωaおよびωcの古典的な光学信号TinおよびCinで置き換えられる場合において、光信号Cin(および制御場)がEITを与える角周波数の光子を含む場合には、構造800は光信号Tinを通過させる条件付き光スイッチとして動作する。こうして、信号Cinが信号Tinの透過を制御する。構造800の切替え能力はフォトニックキュービット|QTin>および|QCin>にも同じく当てはまる。
【0078】
図8Aの構造800が2キュービット位相ゲートとして動作するとき、各入力キュービット|QTin>および|QCin>には、周波数ωaおよびωcについての1光子フォック状態である、それぞれの「光子が存在する」状態|QT1>および|QC1>と、周波数ωaおよびωcについての0光子フォック状態である、それぞれの「光子が存在しない」状態|QT0>および|QC0>との任意の重ね合わせを用いることができる。
【0079】
構造800は、2フォトニックキュービットについての条件付き位相ゲートまたは制御式位相ゲートを実施することができ、それは単一の光子を用いる量子情報処理に有用である。制御式位相ゲートの場合、
【数13】
は式18を満たす。位相シフトθは状態|QC1>|QT1>においてのみ生じる。なぜなら、状態|QC1>|QT1>だけが、4準位物質系810が位相シフトを引き起こすことができるようにする両方の角周波数ωaおよびωcの光子を与えるためである。位相シフトθがπに等しい特別な場合には、この2キュービットゲートは位相ゲートと呼ばれ、制御式NOT(CNOT)ゲートと(ローカルユニタリ変換まで)同等であり、そのゲートは量子情報処理において用いられる基本ゲートのうちの1つである。
【0080】
【数14】
【0081】
図8Aの構造800では、制御およびターゲットキュービットについての論理状態0および1は真空または単一光子のいずれかによって表される。0光子状態は、いくつかの別の空間的レールまたは偏光レールでは単一光子パルスに対応することができる。たとえば、図8Bは、光子偏光に従ってキュービットの成分状態を分離する2キュービットゲートについての1つの例示的な構造850を示す。構造850は、先に説明されたような4準位物質系410と、制御場を生成するレーザ820と、種々の偏光のターゲット光子を分離し、誘導する偏光ビームスプリッタ430および438ならびに反射器434および436と、種々の偏光の制御光子を分離し、誘導する偏光ビームスプリッタ830および838ならびに反射器834および836とを含む。偏光ビームスプリッタ430は、偏光に従ってターゲットキュービット|QTin>を分割して成分状態|QT1>と|QT0>を空間的に分離し、入力ビームスプリッタ830も同様に、偏光に従って制御キュービット|QCin>を分割して成分状態|QC1>と|QC0>を空間的に分離する。この実施形態では、状態|QT0>および|QT1>は角周波数ωaの光子の異なる直交偏光に対応し、状態|QC0>および|QC1>は角周波数ωcの光子の異なる直交偏光に対応する。構造850では、状態|QT1>は4準位物質系410と相互作用するが、状態|QT0>は相互作用しない。同様に、状態|QC1>は状態|QT1>と4準位物質系410との相互作用を制御するが、状態|QC0>は制御しない。
【0082】
制御キュービット|QCin>は4準位系410の3−4チャネル内の入力であるのに対して、ターゲットキュービット|QTin>は1−2チャネルへの入力である。そのパルスは、両方の光子(制御状態|QC1>およびターゲット状態|QT1>のそれぞれ1つの光子)が存在する場合に4準位系410が1−2遷移のみを行うように配列される。その系は、相対的な位相θを確立するだけの十分な時間にわたって光子を循環させる。位相θの大きさは、4準位系410内の相互作用サイトの数によってだけでなく、レーザ820が4準位系410内の異なる遷移に加える外部の古典的場の強度および/または周波数ωbを介しても調整することができる。こうして、位相θは、πまで、またはπよりも大きな任意の値に調整することができる。πの条件付き位相シフトの場合、ゲート850は、2つの最初は絡み合っていないフォトニックキュービットを最大限に絡み合わせることが可能な一般的な2キュービットゲートを形成する。位相が調整可能であることは、さらに大きな自由度を与える。
【0083】
基本ゲートおよびビームスプリッタからCNOTゲートを作製することができる。図9は、制御式位相ゲート910および2つのアダマールゲート920、930を用いて実施されたCNOTゲート900を示す。制御式位相ゲート910は、位相シフトθがπに等しいように構造850のための動作パラメータが選択されるときの図8Bの構造850を用いて実施することができる。アダマールゲート920および930は、偏光符号化されたターゲットキュービットに対して作用し、アダマール変換を実行し、ビームスプリッタ、偏光器、移相器またはホログラムのような既知の線形光学素子を用いて実施することができる。たとえば、アダマールゲート920は、式19に示されるように、ターゲットキュービット成分状態|QT0>および|QT1>に対して作用する。
【0084】
【数15】
【0085】
E. Knill、R. LaflammeおよびG. J. Milburn(Nature 409, 46(2001))は、非線形符号シフトゲートとして知られているゲートを用いるCNOTゲートの構成を発表した。基本的には、非線形符号シフトゲートは、形式c0|0>+c1|1>+c2|2>の入力状態|IN>を受け取り、形式c0|0>+c1|1>+c2ejθ|2>の出力状態|OUT>を出力する。ただし、状態|0>、|1>、|2>はそれぞれ、0光子フォック状態、1光子フォック状態、2光子フォック状態である。
【0086】
本発明の一態様によれば、フォトニックキュービットおよび4準位(または5準位)物質系を用いて実施される2光子移相器が、位相シフトθがπに等しい特別な場合に、非線形符号シフトゲートとして動作する。図10Aは、本発明の一実施形態による2光子移相器1000を示す。2光子移相器1000は、図4Aの4準位系410と構造的に同じにすることができる多準位系1010を含むが、2光子移相器1000は角周波数(1/2)ωaを有する光子を用いる入力状態|IN>を有する。多準位系1010は、図3Aまたは図3Cに示される少なくとも4つのエネルギー準位を有する。プローブ光子は、多準位物質系1010内の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の遷移に関連付けられたエネルギーの半分のみを有するので、2光子成分状態|2>だけが、位相シフトを導入するEITプロセスを励起するのに十分なエネルギーを有する。
【0087】
2光子移相器1000の1つの変形形態では、多準位物質系1010が、第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の概ね中間にある第5のエネルギー準位を有する。このオプションの構成の場合、1光子フォック状態|1>は物質系1010と相互作用する。この構成の利点は、物質系1010内の1光子状態および2光子状態についての相互作用遅延がさらに良好に一致し、これにより、光子の数に関係なく、光子パルスが物質系1010から同時に出るようになることである。一般的に、タイミング遅延は0光子状態(たとえば真空状態)の場合には問題ではない。出力1光子フォック状態|1>は、多準位系1010がさらに別のエネルギー準位を有し、1光子フォック状態|1>において位相シフトを引き起こすように選択された制御場が加えられることがない限り、有意な位相シフトを生じないであろう。
【0088】
図10Bは、一対の2光子移相器1020および1030を用いて実施される2キュービット位相ゲート1050を示す。制御式位相ゲート1050では、ターゲットキュービットおよび制御キュービットの両方が、角周波数(1/2)ωaを有する光子の存在または不在に対応する成分状態を有する。キュービット状態は偏光されておらず、任意の特定の直線偏光を生じる等しい確率を有する。偏光ビームスプリッタ1040がターゲットキュービットの反射された部分と制御キュービットの透過された部分とを合成し、結果として合成されたものが2光子移相器1030に入力される。同様に、偏光ビームスプリッタ1040はターゲットキュービットの透過された部分と制御キュービットの反射された部分とを合成し、結果として合成されたものが2光子移相器1020に入力される。2光子移相器1020および1030では、制御キュービットおよびターゲットキュービットの両方について光子存在状態を含む成分状態だけが位相シフト(すなわち符号変化)を受ける。偏光ビームスプリッタ1045は、制御キュービットに対応する光子を、ターゲットキュービットに対応する光子から分離する。
【0089】
本発明のさらに別の態様によれば、ベル状態検出器が、2光子移相器を用いて、または用いることなく実施することができる2キュービット位相ゲートを用いて実施されたCNOTゲートを用いることができる。ベル状態は一般的に、キュービット相互作用から生じる絡み合った状態であり、CNOTゲートはベル状態を部分的にほどくことができることが知られている。表1の1列目(左端の列を除く)は、成分状態|QT0>および|QT1>を有するターゲットキュービットと成分状態|QC0>および|QC1>を有する制御キュービットとの絡み合い(関わり合い)から生じ得る、正規化されていないベル状態を示している。
【0090】
【表1】
【0091】
図11Aは、本発明の一実施形態によるベル状態検出器1100を示す。ベル状態検出器1100は、CNOTゲート1110と、制御キュービットにおいて用いられる周波数を有する光子用の光子状態検出器1120と、ターゲットキュービットにおいて用いられる周波数を有する光子用の光子状態検出器1130とを備える。CNOTゲート1110は、2つのアダマールゲート1112および1116と、制御式位相ゲート1114とを備える。CNOTゲート1110の他のインプリメンテーション(実施)もベル状態検出器1110に適している。上記のように、CNOTゲート1110(および制御式位相ゲート1114)は、角周波数ωcまたはωb(あるいは(1/2)ωa)の光子を用いる制御キュービットおよび角周波数ωa(あるいは(1/2)ωa)の光子を用いるターゲットキュービット用に構成することができる。図11Aの特定の実施形態の場合、検出器1100のための制御キュービットおよびターゲットキュービットはそれぞれ、対応する周波数の光子の不在または存在に対応する成分状態を用いて符号化される。表1の2列目は、CNOTゲート1110を、表1の1列目に記載されているベル状態に適用した結果を示す。
【0092】
光子状態検出器1120がCNOTゲートの出力状態を測定し、制御周波数(たとえばωc、ωbまたは(1/2)ωa)を有する光子の状態を判定し、かつ光子状態検出器1130がCNOTゲートの出力状態を測定し、ターゲット周波数(たとえばωaまたは(1/2)ωa)を有する光子の状態を判定する。図11Aでは、光子状態検出器1120はアダマールゲート1122および光子検出器1125を含む。アダマールゲート1122は制御光子に作用し、表1の3列目の結果的状態をもたらす。
【0093】
ベル状態検出器1100は、光子状態検出器1120および1130が実行する測定から、元の入力ベル状態を特定する。詳細には、検出器1120が状態|QC0>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態1またはベル状態3のいずれかであった。検出器1120が状態|QC1>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態2またはベル状態4のいずれかであった。検出器1130が状態|QT0>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態1またはベル状態2のいずれかであり、検出器1130が状態|QT1>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態3またはベル状態4のいずれかであった。したがって、状態検出器1120および1130からの測定値は、入力ベル状態を一意的に特定する2ビットデジタル値を示す。
【0094】
ベル状態検出器1100は、本発明に沿って種々の方法で変更することができる。たとえば、制御キュービットおよびターゲットキュービットを、異なる偏光、スピンまたは運動量の光子のような、測定によって区別することができる特性に対応する成分状態を用いて符号化することができる。図11Bは、キュービットが偏光符号化を用いる、1つの例示的なベル状態検出器1150を示す。ベル状態検出器1150は、偏光ビームスプリッタ1142および1144を用いて制御キュービットの偏光成分を分離および再結合し、偏光ビームスプリッタ1146および1148を用いてターゲットキュービットの偏光成分を分離および再結合する。結果として、状態|QC1>|QT1>だけが、制御式位相ゲート1114を通して符号変化を受ける。光子状態測定のために、偏光ビームスプリッタ1128および1138がそれぞれ出力制御およびターゲットキュービットの偏光成分を分離する。その後、光子検出器1124および1126が制御キュービットの2つの偏光チャネル内の光子の存在または不在を測定し、光子検出器1134および1136がターゲットキュービットの2つの偏光チャネル内の光子の存在または不在を測定する。光子検出器1124、1126、1134および1136からの4つの測定結果から、元の入力ベル状態が判定される。
【0095】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、その説明は本発明の応用形態の一例にすぎず、限定するものとして見なされるべきではない。開示した実施形態の特徴の種々の適合化および組み合わせは特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】光子と物質との間のコヒーレントな相互作用を提供し、電磁誘導透過を可能にする系(システム)を表す図である。
【図2A】相互作用している原子が3つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図2B】相互作用している原子が3つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての量子エネルギーマニホールドを示す図である。
【図3A】相互作用している原子または分子が4つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図3B】相互作用している原子または分子が4つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての量子エネルギーマニホールドを示す図である。
【図3C】第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する、相互作用してる原子または分子についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図4A】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図4B】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図4C】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図5A】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する屈折率の計算された依存性を示すプロット図である。
【図5B】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する吸収係数の計算された依存性を示すプロット図である。
【図5C】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する3次感受率(または3次磁化率)の計算された依存性を示すプロット図である。
【図6A】導波管内のプローブ光子のエバネセント場を物質系と相互作用させるための本発明の別の実施形態による構造を示す図である。
【図6B】導波管内のプローブ光子のエバネセント場を物質系と相互作用させるための本発明の別の実施形態による構造を示す図である。
【図7】光ファイバ内の光子のエバネセント場を物質系に結合するためにウィスパリングギャラリー(whispering gallery)モードを用いる本発明の一実施形態による構造を示す図である。
【図8A】本発明の別の実施形態による2キュービットゲートのブロック図である。
【図8B】本発明の別の実施形態による2キュービットゲートのブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態による制御式位相ゲートを用いるCNOTゲートのブロック図である。
【図10A】本発明の一実施形態による2光子移相器のブロック図である。
【図10B】図10Aに示されるような2光子移相器を用いて構成された制御式位相ゲートのブロック図である。
【図11A】本発明の別の実施形態によるベル状態検出器のブロック図である。
【図11B】本発明の別の実施形態によるベル状態検出器のブロック図である。
【技術分野】
【0001】
[背景]
量子システムの開発に最近成功していること、およびその技術の期待される能力に起因して、ここ数年の間に量子情報処理への関心が劇的に高まっている。詳細には、実用的な量子暗号法が開発されており、もし大型(多数キュービット)の量子コンピュータを構築することができるなら、量子コンピュータは、古典的なコンピュータよりも、はるかに効率的に数多くのタスクを実行することができるであろう。たとえば数十または数百キュービット(量子ビット)を有する量子プロセッサがあれば、いかなる古典的なマシンでも達成することができない量子シミュレーションを実行することができるであろう。また、そのような量子プロセッサは、量子通信の実用的な距離および適用性を広げる可能性もある。
【0002】
量子コンピューティング用のハードウエアのための数多くの候補技術が現在研究されている。どの技術が最も実用的であるかが分かったにしても、個別の量子プロセッサをリンクするために、量子コヒーレント通信が必要になる可能性が高いであろう。光ファイバ、または自由空間を進行する光は、長い距離にわたって量子情報を搬送することができるので、コヒーレントな電磁場(たとえばフォトニックキュービット)は量子コンピュータ間の通信のために、及び、一般的な量子通信のために理想的であると考えられる。さらに、量子コンピューティングの中には、非線形または線形量子光学プロセスを用いて、フォトニックキュービット(または、光量子ビット。以下同じ)に対して直接実行できるものもある。
【0003】
光子と物質との相互作用は、量子情報技術を大規模に実施する際の重要な要素である可能性が高く、進行しているフォトニックキュービットと静止している物質キュービットとを容易に相互変換する能力が必要とされるであろう。さらに、いくつかの量子通信およびコンピューティングの場合に、光子状態に符号化されるキュービットに対して量子ゲート(たとえば1キュービットゲートおよび2キュービットゲート)を直接実行できることが極めて望ましい。
【0004】
図1は、光子が物質と相互作用する1つの例示的な系(またはシステム。以下同じ)100を示す。この例では、系100は、原子110と、原子110と相互作用するために角周波数ωaの一方向に進行する電磁波を誘導する低損失共鳴器120とを含む。原子110として実際には、1つまたは複数の原子、分子、または少なくとも2つの利用可能な量子エネルギー準位を有する他の系の集団を用いることができる。原子110の利用可能なエネルギー状態のうちの2つ|1>および|2>は量
【数1】
だけエネルギーが異なる。ただし、
【数2】
は換算プランク定数である(以下では、表記の都合上、この定数を式中を除きhと記載する)。進行波内の各光子のエネルギー(h・ωa)は、式1に示されるように、原子110の2つのエネルギー準位間のエネルギー差から離調することができる。ただし、離調パラメータvaは角周波数ωaに比べて小さい。
【0005】
【数3】
【0006】
原子110が2つの利用可能なエネルギー準位しか持たない場合には、離調パラメータvaが0である(すなわち光子が原子110の共鳴周波数にある)ときに、原子110はエネルギーh・ωaの光子のピーク吸収を有するであろう。吸収係数は一般的に、パラメータvaの他の値については0以外のままである。
【0007】
電磁誘導透過(EIT:Eelectromagnetically Induced Transparency)は、共鳴器120において、原子110を周波数ωaの光子に対して透過性にすることができる現象である。EITを達成するために、原子110は少なくとも3つの利用可能なエネルギー準位を有し、レーザまたは他のデバイスが制御場と呼ばれる電磁場を原子110に印加して、フォトニック状態(光子状態)と物質状態との間に量子干渉が引き起こされる。
【0008】
図2Aは、原子110の3つの利用可能なエネルギー状態|1>、|2>および|3>のエネルギー準位を、共鳴器120内の光子のエネルギーh・ωa、および原子110に印加された制御場内の光子のエネルギーh・ωbと比較した準古典的エネルギー(semi-classical energy)準位図である。式2に示されるように、制御場内の各光子のエネルギーh・ωbは原子110のエネルギー状態|3>と|2>との間のエネルギー差hω32に概ね等しい。ただし、離調パラメータvbは角周波数ωbに比べて小さい。
【0009】
【数4】
【0010】
図2Bは系100の積状態(product state)|X,A,B>のエネルギー準位を示す。積状態|X,A,B>の場合、Xは1、2または3であって、原子110のエネルギー準位を示しており、AおよびBはそれぞれ角周波数ωaおよびωbの光子の数である。図2Bのラビ周波数(Rabi frequency)ΩaおよびΩbは、光子の電場と原子110の対応する双極子モーメントとの電気双極子相互作用によって引き起こされる角周波数ωaおよびωbの光子の吸収および誘導放出の速度を表す。系100の共鳴器120内の光子の吸収または誘導放出の一例は積状態|1,na+1,nb>と|2,na,nb>との間の遷移である。自然放出では、励起された原子110が光子を自由空間内に散乱させることができる(たとえば、状態|2,na,nb>から状態|1,na,nb>への遷移において)。
【0011】
制御場周波数ωbを調整して、原子110が角周波数ωaの光子を吸収する速度を最小にする光子および原子の状態の量子干渉を引き起こすことができる。詳細には、原子110が角周波数ωaの光子を吸収する吸収係数α(ωa)は、離調パラメータvaが0に等しいときに0になる。こうして、制御場をかけることにより、原子110が共鳴器120内の光子に対して透過性になる。
【0012】
量子情報処理のために、原子110とフォトニック信号との1つの有用な相互作用は、原子110が光子に対して透過性であるか、あるいは、信号損失を引き起こさない(または最小限に抑える)ときに、光子の電場演算子の期待値に位相変化を導入するであろう。しかしながら、吸収係数が0(または最小)であるとき、3準位原子110は、透過した光子の状態に位相変化を全く(またはほとんど)引き起こさない。したがって、3準位原子は現時点では、フォトニックキュービットに位相変化を導入するのに適しているとは考えられない。
【非特許文献1】Gray他著「Nonequilibrium Phase Behavior During the Random Sequential Adsorption of Tethered Hard Disks」(Phys. Rev. Lett., 85, 4430-4433)
【非特許文献2】Gray他著「Microstructure Formation and Kinetics in the Random Sequential Adsorption of Polydisperse Tethered Nanoparticles Modeled as Hard Disks」(2001 Langmuir, 17, 2317-2328)
【非特許文献3】D. J. Cram著「Molecular Container Compounds」(Nature 356(6364), 29-36 March 5, 1992)
【非特許文献4】A. Yariv著「Optical Electronics in Modern Communications」5th ed.(Oxford, 1997)
【非特許文献5】E. Knill、R. LaflammeおよびG. J. Milburn著、Nature 409, 46(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野の現状に鑑みて、光子状態の吸収または位相ずれを生じることなく、光量子状態に位相変化を導入するために、光量子状態またはキュービットと物質系との相互作用を可能にする系を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[概要]
本発明の一態様によれば、光子と、4つの利用可能な量子状態を有する原子または物質系との相互作用が、フォトニックキュービットにおいて無視し得る吸収係数および調整可能な位相シフトを与えることができる。原子の利用可能なエネルギー準位のうちの2つが、フォトニックキュービットとの相互作用機構を提供し、フォトニックキュービットに関連付けられた光子のエネルギーからわずかに離調したエネルギー差を有する。第3の利用可能なエネルギー準位は第2のエネルギー準位の下にあり、第4のエネルギー準位は第3のエネルギー準位の上にある。物質に印加された制御場が物質とフォトニックキュービット状態との間に量子干渉を引き起こし、物質系と相互作用する選択されたフォトニックキュービット状態の位相シフトを制御する。これまでは理解されていなかったことであるが、第4のエネルギー準位からの原子の遷移によって生じる自然放出は抑圧されるべきであり、それにより、比較的小さな離調定数が保持され、かつフォトニックキュービットの成分に大きな位相シフトを与える概ね透過性の4準位物質系が達成される。
【0015】
第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するための1つの仕組みは、第4のエネルギー準位からの自然放出に関連付けられた波長を有する光子が伝搬できないようにするフォトニックバンドギャップ結晶に、相互作用する各原子(または他の4準位物質系)を埋め込む。フォトニックバンドギャップ結晶内の線欠陥が、原子に制御場を印加するための経路を提供すると同時に、望ましくない自然放出を依然として適切に抑圧することができる。
【0016】
第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するための別の仕組みは、その第4のエネルギー準位が準安定である4準位系を用いる。準安定状態への遷移は、2つの光子または磁気光学効果のいずれかを用いて行うことができる。いずれの場合でも、第4のエネルギー準位からの実効的な遷移速度は小さいが、第4のエネルギー準位に遷移させる制御場の強度または離調を小さくして、信号光子状態の位相シフトが適度な速度で確実に累積されるようにすることができる。
【0017】
本発明の選択された実施形態では、分子鎖(molecular tether)または分子かご(molecular cage。たとえば、カルセランドあるいはフラーレン)が、各4準位原子または分子を導波管または光ファイバに取り付けて、デコヒーレンスを引き起こす可能性がある光子から原子または分子を離隔するのを助けることができる。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態は、導波管と、物質系と、抑圧構造とを備えるデバイスである。導波管は、フォトニックキュービットのような電磁信号のために用いられる。物質系は、電磁信号と相互作用するように配置され、電磁信号と相互作用するために利用(または到達)可能である複数(通常4つまたはそれ以上)の量子エネルギー準位を有する。抑圧構造には物質系を包囲するフォトニックバンドギャップ結晶を用いることができ、抑圧構造は物質系からの自然放出を抑圧するように動作し、物質系の状態が電磁信号の量子状態と絡み合うときに重要な役割を果たすことができる。
【0019】
そのデバイスの一実施形態は、フォトニックキュービットのための調整可能な電磁誘導透過(EIT)を実施し、単一フォック状態のフォトニックキュービットまたはコヒーレント状態フォトニックキュービットのための調整可能な移相器を作り出す。調整可能な移相器のために、物質系に印加される制御場を変化させて、フォトニックキュービットが物質系と相互作用するときに引き起こされる位相シフトを選択することができる。同様に、制御場の変化を用いて光スイッチを実施することができ、この制御場によって、物質系の透過性が変化し、それにより、そのスイッチが、進行する光子を透過させるか、吸収するかが制御される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、2キュービット位相ゲートが第1のフォトニックキュービットおよび第2のフォトニックキュービットに対して作用する(またはそれらのキュービットに基づいて動作する)。2キュービット位相ゲートは、2つのフォトニックキュービット(または2つのフォトニックキュービットの成分)が加えられる4準位物質系を含む。第1のフォトニックキュービットは、4準位物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の遷移に関連付けられた、共鳴からわずかに離調した周波数(たとえば角周波数ωa)に対応する光子状態を用いる。第2のフォトニックキュービットは、4準位物質系の2つの他のエネルギー準位間の遷移に関連付けられた、共鳴からわずかに離調した周波数(たとえば角周波数ωc)に対応する光子状態を用いる。物質系に印加された制御場は、4準位物質系の別の一対のエネルギー準位に関連付けられた周波数(たとえば角周波数ωb)を有する光子を与える。2キュービット位相ゲートは、物質系と相互作用するために両方の信号周波数(たとえば角周波数ωaおよびωc)の光子を与えるクロス乗積(cross-product)状態に対してのみ相対的な位相シフトを導入する。2キュービット位相ゲートからCNOT量子ゲートを構成することができる。
【0021】
CNOTゲートを構成するために用いることができる本発明の別の実施形態は、4準位物質系を含む2光子移相器である。2光子移相器は、一定の光子数0、1および2の成分を含む入力光子状態に作用する(または、その入力光子状態に基づいて動作する)。4準位物質系に印加される制御場は、物質系の第2のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の遷移、および第4のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の遷移に対応する角周波数を有する。信号光子は、物質系の第2のエネルギー準位と第1のエネルギー準位との間のエネルギー差の半分に関連付けられた角周波数を有する。したがって、入力光子状態の2光子成分は、物質系の第1のエネルギー準位から第2のエネルギー準位への遷移を引き起こすだけの十分なエネルギーを有し、EITおよび位相シフトを受け、他の成分は、十分なエネルギーを持たず、位相シフトを受けない。1つの特定の実施形態では、4準位物質系はさらに、第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の概ね中間にある第5の利用可能なエネルギー準位を有することができる。第5のエネルギー準位によって、1光子状態の相互作用が可能になり、1光子状態を位相シフトすることなく、1光子状態と2光子状態との間の伝搬遅延を等しくすることができる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、ベル状態測定デバイスが、本発明の他の実施形態による2キュービット位相ゲートまたは2光子移相器を用いて実施することができるCNOTゲートを備える。その測定デバイス内のCNOTゲートは、各入力ベル状態を、対応する出力クロス乗積状態に変換し、検出器が出力クロス乗積状態内の要素状態を個別に特定して入力ベル状態を決定することができる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態は量子情報処理方法である。その方法は、物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する光子を含む量子情報信号を用いる。物質系の第3のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子、および物質系の第3のエネルギー準位と第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子を含む電磁場が物質系に印加され、一方で、量子情報信号が物質系と相互作用するように誘導される。その方法はさらに、物質系の第4のエネルギー準位からの遷移に対応する自然放出を抑圧することを含む。その抑圧は、物質系を包囲するフォトニックバンドギャップ結晶を用いて自然放出を阻止することができるか、または物質系を選択することにより第4のエネルギー準位を準安定にすることができる。
【0024】
それぞれの図面では、類似または同一の要素を指示するために同じ参照記号を用いる。
【実施例】
【0025】
[詳細な説明]
フォトニックプローブパルスの位相および強度の正確な確定的制御は、プローブパルスおよび一対の制御場と相互作用する4準位物質系を用いて達成することができる。図3Aは、角周波数ωa、ωbおよびωcを有する光子のエネルギーに対する、4準位系のエネルギー状態|1>、|2>、|3>および|4>のエネルギー準位を示す。角周波数ωaの光子は原子のエネルギー準位|1>をエネルギー準位|2>に結合する。角周波数ωbおよびωcの光子は、準安定エネルギー準位|3>をそれぞれエネルギー準位|2>およびエネルギー準位|4>に結合する。離調パラメータva、vbおよびvcはそれぞれ、式3に示されるような物質系のエネルギー準位遷移の共鳴からの角周波数ωa、ωbおよびωcの離調の量を示す。式3では、状態|1>と|2>との間のエネルギー差、状態|3>と|2>との間のエネルギー差および状態|3>と|4>との間のエネルギー差はそれぞれhω12、hω32およびhω34である。
【0026】
【数5】
【0027】
図3Bは、積状態|X,A,B,C>に対応するマニホールドを示す。ただしXは物質系のエネルギー準位を示し、A、BおよびCはそれぞれ角周波数ωa、ωbおよびωcの光子の数を示す。例示したマニホールドは、角周波数ωaのna個の光子、角周波数ωbのnb個の光子および角周波数ωcのnc個の光子の場合に、状態|1>の物質系に最も近いエネルギー状態を含む。周囲環境への光子の自然放出は、その系を、図3Bに示されるマニホールドに類似であるが、その環境に対して失われるタイプの光子がより少ないマニホールド内の1つのエネルギー準位に移動させるであろう。
【0028】
計算のために、図3Bの積状態を拡張して、各積状態に角周波数ωa、ωbまたはωcの光子の散乱の発生を示す入力を付加することにより、その環境に対するエネルギー散逸を含むようにすることができる。それゆえ、散逸されたエネルギーを捕捉し、密度行列のトレースを保存する3重縮退の非共鳴サブマニホールドが、その環境を表すことができる。
【0029】
図3Cは、角周波数ωa、ωbおよびωdを有する光子のエネルギーに対する別の4準位系のエネルギー状態|1>、|2>、|3>および|4>のエネルギー準位を示す。図3Aの4準位系と同様に、角周波数ωaの光子は原子エネルギー準位|1>をエネルギー準位|2>に結合し、角周波数ωbの光子は準安定エネルギー準位|3>をエネルギー準位|2>に結合する。しかしながら、図3Cの4準位系の場合、エネルギー状態|4>は、第3のエネルギー状態|3>と同様に、単一光子自然放出が許されないという点で準安定である。たとえば、エネルギー状態のスピン/角運動量および利用可能なより低いエネルギー状態が、その低い状態に遷移するときに保存則により単一の光子の放出が禁止されるようなものである場合には、結果として準安定になる場合がある。第4のエネルギーへの遷移をもたらす制御場は、第4のエネルギー状態への2光子遷移を可能にするための遷移エネルギーhω34の概ね半分であるエネルギーhωdを有する。別法では、磁気光学効果が第4のエネルギー準位への遷移をもたらすことができる。後にさらに説明されるように、第4のエネルギー準位の準安定性および結果としての第4のエネルギー準位からの自然放出の減少は量子情報処理のために有益である。
【0030】
本発明の一態様によれば、量子ゲートが、光子と、図3Aおよび図3Bまたは図3Cに示されるエネルギー準位を有する4準位物質系とを用いる。たとえば、図4Aは、4準位物質系410を用いる1キュービットゲート400Aを示す。4準位物質系410は一般的に、1つまたは複数の原子、分子、またはゲートにおいて用いられる光子と相互作用するために利用可能である少なくとも4つのエネルギー準位を有する他の系の集団を含むであろう。物質系の4つのエネルギー準位は、図3Aまたは図3Cに示されるような光子エネルギー(あるいは角周波数)に関連する。
【0031】
1キュービットゲート400は、自由空間、導波管または光ファイバを経由してシステム410に入ることができる、周波数ωaを有する入力フォトニックキュービット状態|Qin>を有する。4準位物質系410と相互作用するために入力フォトニックキュービットを誘導するための構造は後にさらに説明される。入力キュービット状態|Qin>は一般的に、状態|Q0>および|Q1>の重ね合わせである。ただし、状態|Q0>はキュービットの1つの2進値(たとえば0)を表し、状態|Q1>はキュービットの他の2進値(たとえば1)を表す。1キュービットゲート400Aの場合、状態|Q0>および|Q1>のうちの一方は角周波数ωaの単一の光子の存在に対応し、状態|Q1>および|Q0>のうちの他方は角周波数ωaの任意の光子の不在に対応する。真空(すなわち、光子がない)状態は4準位物質系410と相互作用しないが、角周波数ωaの光子の存在に対応する状態は4準位系410と相互作用し、出力キュービット状態|Qout>が入力キュービット状態|Qin>とは異なるようにする。
【0032】
図4Bは、4準位系410との相互作用を用いて入力キュービット状態|Qin>を出力キュービット状態|Qout>に変換する、干渉計をベースとした1キュービットゲート400Bを示す。1キュービットゲート400Bの場合、キュービット状態|Qin>の成分状態|Q0>および|Q1>はいずれも、角周波数ωaを有する光子パルスを表すが、空間的に分離できるように、状態|Q0>および|Q1>に対応する光子は異なる。図4Bの例示的な実施形態では、状態|Q0>および|Q1>は角周波数ωaを有する単一の光子の異なる直交偏光、またはコヒーレント光子パルスの異なる直交偏光に対応し、ビームスプリッタ430(たとえば偏光ビームスプリッタ)が2つの成分状態|Q0>と|Q1>を空間的に分離する。別のキュービット符号化の場合、成分状態|Q0>および|Q1>は異なるスピン(すなわち、それらの角運動量のz成分において異なる状態)を有する光子を、またはわずかに異なる運動量を有する光子を表すことができる。他のキュービット符号化も可能であり、成分状態|Q0>と|Q1>を分離する素子(たとえば偏光ビームスプリッタ430)を、用いられるキュービット符号化に従って選択することができる。
【0033】
図4Bでは、1キュービットゲート400Bは、4準位物質系410と相互作用するための状態|Q1>の光子を誘導する。4準位系410が状態|Q1>と相互作用した後に、4準位系410から出る光子は、ミラー434から反射されて、ビームコンバイナ438に入る。状態|Q0>の光子はビームスプリッタ430からミラー436まで進行し、ミラー436からビームコンバイナ438に入り、4準位系410とは相互作用しない。ビームコンバイナ438は、偏光符号化されたキュービット用の偏光ビームスプリッタを用いて実施することができ、2つの経路からの光子を合成して出力キュービット状態|Qout>を構成する。
【0034】
図4Cに示される1キュービットゲート400Cは、4準位物質系410と相互作用するための状態|Q1>の光子を誘導し、かつ4準位物質系410’と相互作用するための状態|Q0>の光子を誘導する。それぞれの4準位系410および410’と相互作用した後に、入力状態|Q1>および|Q0>に対応する光子はビームコンバイナ438に入り、ビームコンバイナ438は光子状態を合成して、出力キュービット状態|Qout>を構成する。物質系410および410’は個別の発生源420および420’からの制御場を有し、これにより、状態|Q1>および|Q0>と物質系410および410’との相互作用は異なる効果(たとえば、逆方向への位相シフト)を有し、1キュービットゲート400Cの機能に依存して、出力キュービット状態|Qout>は入力キュービット状態|Qin>と異なる。
【0035】
レーザまたは他の光源420が、角周波数ωbおよびωcの光子を含む電磁制御場を4準位系410に加える。制御場は、角周波数ωaの光子状態と物質系410のエネルギー状態との間に量子干渉を実効的に引き起こす。詳細には、制御場を加えることにより、第3のエネルギー準位のACシュタルクシフト(AC Stark shift)が与えられ、それが4準位系410の吸収および屈折率に影響を及ぼす。制御場内の光子の角周波数ωbおよびωcを調整して、角周波数ωaの光子のための所望の相互作用(たとえば透過性および所望の位相シフト)を引き起こすことができる。
【0036】
ゲート400Cでは、個別のレーザまたは光源420’が、角周波数ω’bおよびω’cの光子を含む電磁制御場を4準位系410’に加える。角周波数ω’bおよびω’cを調整して、角周波数ωaの光子と4準位系410’との所望の相互作用を引き起こすことができる。たとえば、4準位系410’を調整して、4準位系410において引き起こされるたと反対方向への位相シフトを引き起こすことができ、それにより、状態|Q0>に対する状態|Q1>の位相シフトが4準位系410において導入された位相シフトの2倍になるであろう。したがって、2つの4準位系410および410’を用いることにより、応答時間を半分に短縮することができ、それによりキュービットのためのコヒーレンス時間を短くできるようになる。さらに、キュービットの両方の成分状態と相互作用する4準位系を備えることにより、状態|Qout>の出力光子パルスのタイミングをさらに良好に一致させることができる。
【0037】
量子情報の生成、送信、受信、記憶および処理のための4準位系410のコヒーレントポピュレーション移動(population transfer)の有用性は、4準位系に入力される離散的な状態(たとえば状態|Qin>)のコヒーレントな重ね合わせの時間依存性を評価することにより利用することができる。たとえば、システムが最初に式4のような2つのマニホールド状態の重ね合わせからなる純粋な状態|Ψ>にある、図1の光子/原子を組み合わせた系について考える。式4では、状態|1,0>は、原子が第1のエネルギー準位(たとえば基底状態)にあり、図1の共鳴器120内に光子が存在しないことを表し、状態|1,na>は、原子が第1のエネルギー準位にあり、共鳴器120内にna個の光子が存在することを表す。
【0038】
【数6】
【0039】
式5は単位位相シフト演算子Φ(φ)を定義しており、ここで演算子
【数7】
およびaは周波数ωaの光子のための生成および消滅演算子である。式5の単位位相シフト演算子Φ(φ)は、状態|Ψ>を式6に示されるような状態|Ψ’>に変換する。各フォック状態光子は、状態|1,0>と|1,na>との間の全ての累積された相対位相シフトnaφに等しく寄与することに留意されたい。
【0040】
【数8】
【0041】
位相シフト演算子Φ(φ)は、式7に示されるようなフォック状態に関して定義される、コヒーレントな光子状態に対しても同じように適用することができる。式7では、フォック状態|n>は角周波数ωのn個の光子を含む状態を表しており、nvはコヒーレント状態|α(t)>の平均占有数である。空の共鳴器と、(状態|Ψ>のフォック状態|1,na>の代わりとして)コヒーレント状態|1,α>との重ね合わせで開始することにより、式8の位相シフト結果が生成され、それは古典的な場についての本発明者らの直観に従っている。
【0042】
【数9】
【0043】
光子と4準位系410との相互作用が所望の位相シフトを生成する場合には、ゲート400Aが位相シフト演算子を物理的に実施することができる。同様に、光子−物質相互作用が所望の特性を有する場合には、図4Bに示されるマッハ−ツェンダー干渉計が、デュアルレールのコヒーレントな重ね合わせ用の位相シフト演算子の物理的な実施を提供することができる。
【0044】
光子−物質相互作用の特性を解明するために、積状態を増加させて、制御場および自然放出を明らかにすることができる。その後、結果として生成される、光子と4準位物質系との間の双極子相互作用のための密度行列運動方程式を解いて、ラビ周波数Ωa、Ωb、Ωcおよびレーザ離調パラメータva、vb、vcのような実験的に決定されたパラメータによって、式6および式8内の位相φからの直接読み出しを可能にする密度行列要素を決定することができる。状態|1,0>と状態|1,na>との間のコヒーレンスに対応する、計算された密度行列要素ρ10が式9において与えられる。ここで、式10は、4準位物質系による光子の吸収を最小限に抑えるために離調パラメータva、vbが0に設定されるときの密度行列要素ρ10の位相W10を定義する。
【0045】
【数10】
【0046】
式9および10では、γ10、γ20、γ30およびγ40はそれぞれ物質系の第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位の場合のデコヒーレンス速度(またはデコヒーレンスの割合。以下、同じ)である。デコヒーレンス速度γ20またはγ40は、4準位物質系が対応する第2のエネルギー準位または第4のエネルギー準位からそれより低いエネルギー準位に遷移するときの光子の自然放出に対応する寄与を含む。デコヒーレンス速度γ30は、自然放出に対応する寄与を有するのではなく、速度γ10と同様に、4準位物質系が第3のエネルギー準位に対応する状態にあるときの位相ずれに単に起因するものである。低デコヒーレンス速度が一般的には望ましいが、以下に説明される理由から、4準位物質系と光子の相互作用から望まれる量子コンピューティングおよび通信特性を達成するために、第4のエネルギー準位からの自然放出は抑圧されるべきである。
【0047】
位相W10の実数部は4準位物質系との相互作用において遭遇する光子状態の実際の位相シフトを表し、位相W10の虚数部は光子の残留吸収を表す。位相ずれ速度(または位相ずれの割合)が上位の原子の準位の占有数減少速度(depopulation rate)(または占有数減少の割合)よりもはるかに小さい場合には、位相W10の実数部と虚数部との比は式11Aにおいて与えられ、速度γ20とγ40が概ね同じであり、かつ|Ωb|2が|Ωc|2よりもはるかに大きい場合には、その比は式11Bに簡略化される。式11Bは、W10の実数部と虚数部との比を大きくするために、離調パラメータvcがγ40に対して大きくなければならないことを示す。この限度内で、式12は近似的な位相シフトを与え、式13はρ10(t)の振幅の減衰速度を与える。
【0048】
【数11】
【0049】
式12によって与えられる位相シフトは、2準位系の離調パラメータが式14に与えられる実効的な離調パラメータv’cによって置き換えられるということを除いて、2準位系についての対応する位相シフトと同じ基本形を有する。それゆえ、所与の位相シフトは、2準位系よりもはるかに小さな離調を用いて、4準位系において求めることができる。しかしながら、4準位系の忠実度およびエントロピーは比γ40π/vcによって決定されることになり、相互作用領域内の原子の数Nとは無関係である。したがって、デコヒーレンス速度γ40を十分に小さくできない場合には、高い忠実度および低いエントロピーで−πの位相シフトを達成するには、非常に大きな離調vcおよび/または極めて長い相互作用時間が必要とされる場合がある。
【0050】
後にさらに説明される本発明の一態様によれば、相互作用領域は、図3Aの第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧するように設計されたフォトニックバンドギャップ結晶(PBGC)内に配置することができる。これは望ましくない自然放出を抑圧するが、角周波数ωcを有する制御光子の入力も妨げる可能性がある。しかしながら、角周波数ωcを有する制御光子を、PBGC内の欠陥を通して注入することができる。別法では、第4のエネルギー準位は図3Cの場合のように準安定にすることができ、それにより自然放出が抑圧される。さらに、電磁的手段または化学的手段を用いて、バンドギャップ結晶に4準位計を埋め込むことなく、第4のエネルギー準位からの自然放出を強制的に抑圧することができる4準位系(たとえば分子)を合成することもできる。周波数ωbおよびωcを有する制御場の場合に、ラビ周波数|Ωb|2がラビ周波数|Ωc|2よりもはるかに大きく、かつγ20|Ωc|2がγ40|Ωb|2よりもはるかに大きいなら、位相W10の実数部と虚数部との比、位相シフトおよび減衰速度はそれぞれ式15、式16および式17によって与えられる。
【0051】
【数12】
【0052】
式15〜式17が有効である領域内で動作する系は、デコヒーレンス速度γ40が0に移行する範囲内で、2準位系と数学的に類似である。詳細には、4準位、2光子非線形位相シフトは、2準位系の離調パラメータを実効的な離調パラメータv’cで単に置き換えることにより、2準位、1光子線形位相シフトに移し変えることができる。しかしながら、4準位系の離調vcは、光子状態の忠実度および位相シフトが同じ場合に、2準位系の対応する光子離調よりもはるかに小さくすることができる。この非線形の位相シフトを対応する線形位相シフトと同じ程度に大きくできることは、角周波数ωa、ωbおよびωcの3つの場を結合する非常に大きな3次カー(型)非線形性の存在を示す。この非線形性を適度な離調でのみ達成して、準古典的な領域において大きな差の位相シフトおよび小さな吸収速度の両方を与えることができる。
【0053】
角周波数ωaの光子の場合の吸収係数α(ωa)および屈折率η2(ωa)−1は、状態|1,na,nb,nc>と|2,na−1,nb,nc>との間のコヒーレンスに対応する密度行列要素ρ21を用いて計算することができる。図5Aは、比vc/γ41の3つの異なる値についての、比va/γ21に対する吸収係数α(ωa)の計算された依存性を示す。比va/γ21およびvc/γ41は、第2のエネルギー準位および第4のエネルギー準位から第1のエネルギー準位への遷移に対応する自然放出を含むそれぞれのデコヒーレンス速度γ21およびγ41に対する、それぞれの離調パラメータvaおよびvcの比である。デコヒーレンスまたは位相ずれ速度γ31は外部の相互作用に起因する。デコヒーレンス速度γ31が0に近づき、かつ角周波数ωcが共鳴している(すなわちvc=0である)とき、図4Aは、吸収係数α(ωa)が、例示した範囲内のva/γ21の全ての値について約0.8よりも大きいことを示す。比va/γ21の特定の値について、比vc/γ41が比較的大きい(たとえば、約5よりも大きい)ときには、吸収係数α(ωa)は概ね0まで降下する。したがって、第4のエネルギー準位のデコヒーレンス速度γ41が適度に低く保たれる場合、特定の周波数ωaについて、制御場の角周波数ωcを変更することにより、吸収係数α(ωa)を透過性から不透過性に切り替えることができる。
【0054】
図5Bは、第1のエネルギー準位と第3のエネルギー準位との間の相対的な位相ずれの速度γ31が0に近づくときの、比vc/γ41の3つの異なる値のついての比va/γ21に対する屈折率η2(ωa)−1の依存性を示す。図5Aと図5Bを比較すると、吸収係数α(ωa)が小さいとき、比vc/γ41が適切に選択される場合に、4準位系が依然として光子状態に評価可能な程度の相対的な位相変化を引き起こすことがわかる。後にさらに説明されるように、この特性によって、1キュービットゲート400A、400Bまたは400Cは、調整可能な移相器として動作できるようになる。
【0055】
図5Cは、離調パラメータvaが0であるときの、正規化された離調vc/γ41の関数としての図5Bの3次感受率(または3次磁化率)χの挙動を示す。離調パラメータvcが0に近づくと、プローブ周波数ωaにおいて大きな相対的吸収が生じること(それは「量子スイッチ」のために有用である)、および離調パラメータvcの大きな値が、小さな吸収に対してかなりの位相シフトを生じること(それは「量子移相器」のために有用である)に留意されたい。
【0056】
先に説明されたように量子情報処理のために適したEITは、透過性を与え、コヒーレンスを保持し、さらに絡み合ったフォトニックキュービットに影響を及ぼす自然放出を回避すべきものである。制御場は、4準位物質系の第2のエネルギー準位の占有数を激減させて、透過性を与える。十分に低い温度、たとえば約4゜K未満の温度で系を動作させることにより、デコヒーレンスの発生源としての位相ずれを抑圧することができる。4準位系は、第1のエネルギー準位および第3のエネルギー準位が、いずれも単一光子の自然放出を生じないという点で準安定であるように選択される。実効的な離調v’cをスケーリングして、式15における比について所望の値を達成することができるので、第2のエネルギー準位からの自然放出の制御は不要である。しかしながら、第4のエネルギー準位からの自然放出が、絡み合ったフォトニックキュービットにおいてデコヒーレンスを引き起こす。離調パラメータvcの大きさを非常に大きな値まで増加することにより、フォトニックキュービットの絡み合いは減少するであろうが、EIT系によって導入された位相シフトも減少するであろう。本発明の一態様によれば、プローブ光子と4準位系とを相互作用させるための構造は、第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧し、デコヒーレンス速度γ40を減少させるための仕組みを含む。
【0057】
図6Aは、プローブ光子が4準位物質系と相互作用できるようにし、かつ相互作用サイトの第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する構造600Aを示す。構造600Aは、導波管615を含む、フォトニックバンドギャップ結晶、シリカ、または他の光学材料のような材料の基板610を備える。同じく、導波管615には、基板610に対応するクラッディングを有する光ファイバのコアを用いることができる。導波管615は、角周波数ωaを有するプローブ光子を誘導する。一実施形態では、導波管615は、フォトニックバンドギャップ結晶から形成され、角周波数ωaの(および実施形態によっては制御周波数ωbの)光子は伝搬することができるが、相互作用サイト620の第4のエネルギー準位からの自然放出に対応する角周波数ω14およびω34を有する光子は伝搬することができない。
【0058】
相互作用サイト620は、それぞれ図3Aまたは図3Cに示されるような関連する4つの利用可能なエネルギー準位を有し、導波管615に沿って進行する光子と相互作用するように配置される。この目的を果たすために、相互作用サイト620を、導波管615の内部に、または導波管615の外部に(図6Aに示されるように)配置することができ、相互作用サイト620は、進行している光子のエバネセント場と相互作用する。各相互作用サイト620には、原子(たとえばカルシウム(Ca)原子、プラセオジム(Pr)原子あるいは他の重原子)、分子、または光子と相互作用し、かつ4つの利用可能なエネルギー準位を有する任意の他の系を用いることができる。プローブパルスの角周波数ωaならびに制御場の角周波数ωbおよびωcまたはωdは一般的に、相互作用サイト620のエネルギー準位に従って選択される。
【0059】
基板610に接着した分子鎖640は、相互作用サイト620を基板610の表面付近に閉じ込める(制限する)。分子鎖620には、分子、特に有機分子を固定化するためによく知られているポリマーまたは他の材料を用いることができる。分子鎖はさらに、たとえば、上記非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。各分子鎖640の構造は、鎖640において励起された光子を著しく減衰させるように、かつ基板610において生成された光子をフィルタリングするように選択されることが好ましい。分子鎖は、プローブ光子および制御場光子に対して透過性であることが好ましい。
【0060】
図6Bは別の構造600Bを示しており、分子かご645がそれぞれの相互作用サイト620を固定された場所に保持する。分子かご645には、カルセランド、カルセプレックス(carceplex)、内包フラーレン(endohedral fullerene)または類似の分子構造を用いることができる。そのような構造は当該技術分野において既知であり、たとえば、上記非特許文献3に記載されている。分子かご645のために用いられる特定の化合物は、プローブ光子および制御場光子に対して透過性であることが好ましく、一般的に相互作用サイト620のために用いられる特定の原子または分子のために選択されるであろう。相互作用サイト620を、相互作用サイト620と分子かご645の「壁」との間の相互作用を最小限に抑えるsタイプ基底状態にする際に冷却することが有益な場合がある。
【0061】
量子情報システムのために4準位相互作用サイト620の電磁誘導透過を用いることは、先にあげられた理由により、相互作用サイト620の第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧することから利益を得るであろう。これらの自然放出を抑圧するために、構造600Aおよび600Bはさらにフォトニックバンドギャップ結晶630を含み、相互作用サイト620およびそれらに関連する閉じ込め構造640または645がフォトニックバンドギャップ結晶630の点欠陥に存在する。フォトニックバンドギャップ結晶はよく知られており、バンドギャップ結晶630は、種々の既知の技術を用いて製造することができる。1つの製造技法は、相互作用サイト629上に薄い誘電体膜を繰返し形成して、選択された1つまたは複数の周波数の光の伝搬を抑圧する周期的な誘電体材料を作製することにより、フォトニックバンドギャップ結晶を形成する。フォトニックバンドギャップ結晶630は、第4のエネルギー準位から第1のエネルギー準位および第3のエネルギー準位への遷移にそれぞれ対応する角周波数ω14およびω34を有する光子の伝搬を禁止する構造を有する。
【0062】
角周波数ω14およびω34の光子が伝搬するのを禁止するフォトニックバンドギャップ結晶630は、一般的には、離調パラメータvcが小さいときの角周波数ω34に概ね等しい角周波数ωcを有する制御場の入力も阻止するであろう。バンドギャップ結晶630内の欠陥635によって、角周波数ωcの制御場光子を相互作用サイト620に加えることができる。欠陥635は種々の幾何学的形状を有することができる。たとえば、図6Aは、それぞれの相互作用サイト620への個別のライトパイプを有する構成を示す。図6Bは、単一の導波管が複数の相互作用サイトに制御場光子を与える構成を示す。フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635のための特定の構成は一般的に、角周波数ωbの制御場を印加することができるようにしながら、望ましくない自然放出を最小限に抑えるという、競合する目標に基づいて設計されるであろう。角周波数ωbの制御場光子は、それぞれの実施形態において、欠陥635または導波管615を介して相互作用サイト620に加えることができる。
【0063】
欠陥635は、制御角周波数ωcを有する光子(実施形態によっては、制御角周波数ωbを有する光子)が伝搬できるようにする材料の領域として作製される永久的な欠陥にすることができる。別法では、フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635は、高速に(電子工学的に、または他の方法で)オンおよびオフに切り替えられる一時的な欠陥にすることができる。電気光学効果が、欠陥をオンおよびオフに切り替えるための1つの仕組みを提供する(非特許文献4を参照されたい)。
【0064】
フォトニックバンドギャップ結晶630内の欠陥635によって、制御場のレーザまたは他の外部の光源が、線欠陥635を通して相互作用サイト620まで角周波数ωcの光子を誘導できるようになる。角周波数ωcとω34が概ね等しいとき、欠陥635によって、角周波数ω34の光も結晶630から逃げることができるようになるが、結晶630および欠陥635の特性を選択して、依然として角周波数ω14を有する光の伝搬を阻止することができる。欠陥635があっても、フォトニックバンドギャップ結晶630は、光子が自然に放出されるために利用可能な状態の密度を下げることにより、第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する。欠陥635の幾何学的形状および特性を、自然放出のために利用可能な状態を最小限に抑えながら、制御場を印加することができるように最適化することができる。こうして、デコヒーレンス速度γ41への自然放出の寄与を小さくすることができ、それは量子ゲートを動作させるために不可欠である。
【0065】
図6Aおよび図6Bの実施形態では、相互作用サイト620の数は、相互作用の累積的な効果、たとえばプローブ光子状態の減衰または位相変化が所望のレベルに達するように選択される。相互作用のレベルは、光子が相互作用サイト620と相互作用する時間の長さによる。相互作用サイト620の数を増やすことにより、プローブ光子と4準位系との間の相互作用時間が実効的に長くなる。
【0066】
図7は、「ウィスパリングギャラリー(whispering gallery)」を用いて、プローブ光子と相互作用サイト720との相互作用時間を長くする構造700を示す。構造700は、光ファイバ710と、相互作用サイト720と、シリコンマイクロスフェア730とを備える。光ファイバ710はプローブ光子を搬送し、シリカマイクロスフェア730は、光ファイバ710のコアに隣接し、光ファイバ710のエバネセント場からの光子を捕捉する。相互作用サイト720は、図6Aおよび図6Bに関して先に説明されたような分子鎖または分子かごを用いて、シリカスフェア(シリカ球)730の表面近くに制限することができる。また構造700は、相互作用サイト720を包囲して自然放出を抑圧するフォトニックバンドギャップ結晶(図示せず)も含む。
【0067】
マイクロスフェア730は、プローブ光子の波長の何倍もの(たとえば、通常約10倍の)直径を有し、光ファイバ710のコアを包囲するエバネセント場に結合するように配置される。結果として、マイクロスフェア730は、高いQ値の共鳴器を与え、プローブ光子が光ファイバ710に戻る前に、プローブ光子と相互作用サイト720との間で長時間にわたって相互作用できるようにする。制御場は、導波管または経路740を介して、相互作用サイト720に入射する。
【0068】
図4A、図4Bおよび図4Cの1キュービットゲート400A、400Bおよび400Cは、スイッチまたは量子移相器を実施する際に、4準位系410として図6A、図6Bまたは図7の構造のうちの任意のものを用いることができる。そのスイッチは、制御場の外部制御を通して操作される。相互作用サイトにおいて、制御場が、共鳴周波数ω32に概ね等しい角周波数ωcを有する光子、および共鳴周波数ω42に等しい角周波数ωbを有する光子を与える場合には、4準位物質系は、ω31に等しい角周波数ωaを有するプローブ光子を吸収する高い確率を有する。そうでない場合には、プローブ光子は透過されるであろう。
【0069】
こうして、従来の光学データまたはフォトニックキュービットの切替えが同じ構造を用いて可能となる。詳細には、図4Aの構造400Aを用いて、角周波数ωbが4準位物質系410の共鳴に同調するとき(すなわちωb=ω32)、角周波数ωcを共鳴に同調させることにより(すなわちωc=ω42)、角周波数ωaを有する光学信号がオフに切り替えられる。角周波数ωcを離調させることにより(たとえば、これにより、比vc/γ41が約10〜100の範囲内になり)EITを引き起こすので、物質系410は光学データ信号を透過させる。同様に、フォトニックキュービットが、物質系410と相互作用する角周波数ωaの成分状態を含むとき、その成分状態を、量子的にコヒーレントなやり方で切り替える(すなわち選択的に透過または吸収する)ことができる。
【0070】
図4A、図4Bおよび図4Cの構造400A、400Bおよび400Cは、フォトニックキュービットのための調整可能な移相器を実施することもできる。たとえば、単一のフォック状態調整可能移相器が、形式c0|Q0>+c1|Q1>の初期状態|Qin>(ただし、|Q0>および|Q1>は角周波数ωaを有する光子のフォック状態である)を、形式c0|Q0>+c1ejθ|Q1>の出力状態|Qout>に変換する。4準位系410は、状態|Q1>に対して位相シフトθを導入する。ただし、θは制御場および相互作用サイトの数に依存する。図4Aの構造400Aは、4準位物質系410の1−2チャネル内にある、角周波数ωaの単一の光子パルスの不在および存在に対応するキュービット成分状態|Q0>および|Q1>を有する。
【0071】
図4Bの1キュービットゲート400Bは、いずれも角周波数ωaを有する単一の光子状態であるキュービット成分状態|Q0>および|Q1>を用いることができる。状態|Q0>および|Q1>は、ビームスプリッタ430が状態|Q0>と|Q1>を空間的に分離できるようにする特性(たとえば偏光)も有する。この場合、4準位物質系410内の状態|Q1>の相互作用は、状態|Q0>に対して位相シフトθを引き起こす。
【0072】
1キュービットゲート400Aまたは400Bいずれの場合でも、状態|Q1>の光子は、論理キュービット状態|Q0>と|Q1>との間に所望の相対的な位相を確立するだけの十分な時間にわたって、物質系410内の4準位相互作用サイトを通過する(または循環する)。1キュービットゲート400Cは、キュービット成分状態|Q1>および|Q0>の両方を、それぞれの4準位物質系410および410’に通す(またはその中を循環させる)。1つの構成では、1キュービットゲート400Cは、各状態|Q1>および|Q0>の位相をθ/2だけシフトして、出力状態|Qout>が形式c0e―jθ/2|Q0>+c1e+jθ/2|Q1>を有するようにする。4準位物質系410および410’はそれぞれ、1キュービットゲート400Aおよび400B内の4準位系が与える位相シフトの半分しか与えないので、相互作用時間も同様に半分に短縮され、必要とされるコヒーレンス時間を短縮することができる。
【0073】
1キュービットゲートの導入された位相シフトθはπの程度になるまで調整することができる。位相の大きさは、相互作用サイトを通るサイクル数によってだけでなく、相互作用サイトの異なる遷移に印加される制御場の強度および/または周波数を通して調整することができる。これにより、極めて正確な位相シフトθが確立できるようになる。デコヒーレンス(および特に位相ずれ)は、0とπとの間の位相シフトの所望の調整可能な範囲について、同じ位相シフトθに対する理想的なゲートと比べたときにゲートが高い忠実度(または正確さ)で動作するようなレベルに保持されるべきである。上記のフォトニックバンドギャップ材料を用いることにより、位相ずれを抑圧するのを助けることができる。調整可能な単一光子移相器は、線形光学系量子情報処理のための最も有用な量子ゲートのうちの1つである。
【0074】
一定の数の光子を含むフォック状態ではなく、コヒーレント状態|α(t)>であるキュービット状態|Q1>の場合にも、調整可能な移相器を実施することができる。コヒーレント状態は式7において先に定義されている。1つの例示的な系では、コヒーレント状態は通常、光子の平均数nvとして3〜5を有する。フォック状態の場合と同様に、コヒーレント状態は、形式c0|Q0>+c1|Q1>の初期状態|Qin>から形式c0|Q0>+c1ejθ|Q1>の出力状態|Qout>に変化する。ただし、論理状態|Q0>および|Q1>は、4準位物質系の1−2チャネル内のコヒーレント状態パルス(振幅αを有する)の不在または存在に対応する。位相シフトθが|Q1>状態において導入される。|Q0>状態においては位相シフトは生じない。
【0075】
図4Aの構造400Aはコヒーレント状態移相器を実施することができ、コヒーレントパルス|α(t)>が、状態|Q0>と|α(t)>との間の所望の相対的な位相シフトθを確立するだけの十分な時間にわたって、4準位相互作用サイトに繰返し通される。このゲートは、論理基底状態(またはキャットステート(cat state))の任意の入力の重ね合わせについて作用し、コヒーレント状態量子情報処理に極めて有用である。再び、デコヒーレンスは最小限に抑えられるべきである。
【0076】
本明細書において説明される4準位物質系のEIT特性は、2キュービットゲートおよび条件付き光スイッチも実施することができる。図8Aは、本発明の一実施形態による、2キュービットゲートとして動作することができる1つの例示的な構造800を示す。構造800は、4準位物質系410と、制御場を加えるレーザ820または別の電磁放射源とを備える。入力信号として、構造800はターゲットキュービット|QTin>および制御キュービット|QCin>を有する。例示した構造800は、ターゲットおよび制御キュービットのためのそれぞれ角周波数ωaおよびωcの光子と、レーザ820からの制御場のための角周波数ωbの光子とを用いる。本発明の別の一実施形態では、角周波数ωbおよびωcの光子の役割を逆にして、制御キュービットが角周波数ωbの光子に対応し、レーザ820からの制御場が角周波数ωcの光子を含むようにすることができる。本発明のさらに別の実施形態では、制御キュービットが角周波数ωbの光子に対応し、レーザ820からの制御場が角周波数ωddの光子を含む。
【0077】
入力キュービット|QTin>および|QCin>が適切な角周波数ωaおよびωcの古典的な光学信号TinおよびCinで置き換えられる場合において、光信号Cin(および制御場)がEITを与える角周波数の光子を含む場合には、構造800は光信号Tinを通過させる条件付き光スイッチとして動作する。こうして、信号Cinが信号Tinの透過を制御する。構造800の切替え能力はフォトニックキュービット|QTin>および|QCin>にも同じく当てはまる。
【0078】
図8Aの構造800が2キュービット位相ゲートとして動作するとき、各入力キュービット|QTin>および|QCin>には、周波数ωaおよびωcについての1光子フォック状態である、それぞれの「光子が存在する」状態|QT1>および|QC1>と、周波数ωaおよびωcについての0光子フォック状態である、それぞれの「光子が存在しない」状態|QT0>および|QC0>との任意の重ね合わせを用いることができる。
【0079】
構造800は、2フォトニックキュービットについての条件付き位相ゲートまたは制御式位相ゲートを実施することができ、それは単一の光子を用いる量子情報処理に有用である。制御式位相ゲートの場合、
【数13】
は式18を満たす。位相シフトθは状態|QC1>|QT1>においてのみ生じる。なぜなら、状態|QC1>|QT1>だけが、4準位物質系810が位相シフトを引き起こすことができるようにする両方の角周波数ωaおよびωcの光子を与えるためである。位相シフトθがπに等しい特別な場合には、この2キュービットゲートは位相ゲートと呼ばれ、制御式NOT(CNOT)ゲートと(ローカルユニタリ変換まで)同等であり、そのゲートは量子情報処理において用いられる基本ゲートのうちの1つである。
【0080】
【数14】
【0081】
図8Aの構造800では、制御およびターゲットキュービットについての論理状態0および1は真空または単一光子のいずれかによって表される。0光子状態は、いくつかの別の空間的レールまたは偏光レールでは単一光子パルスに対応することができる。たとえば、図8Bは、光子偏光に従ってキュービットの成分状態を分離する2キュービットゲートについての1つの例示的な構造850を示す。構造850は、先に説明されたような4準位物質系410と、制御場を生成するレーザ820と、種々の偏光のターゲット光子を分離し、誘導する偏光ビームスプリッタ430および438ならびに反射器434および436と、種々の偏光の制御光子を分離し、誘導する偏光ビームスプリッタ830および838ならびに反射器834および836とを含む。偏光ビームスプリッタ430は、偏光に従ってターゲットキュービット|QTin>を分割して成分状態|QT1>と|QT0>を空間的に分離し、入力ビームスプリッタ830も同様に、偏光に従って制御キュービット|QCin>を分割して成分状態|QC1>と|QC0>を空間的に分離する。この実施形態では、状態|QT0>および|QT1>は角周波数ωaの光子の異なる直交偏光に対応し、状態|QC0>および|QC1>は角周波数ωcの光子の異なる直交偏光に対応する。構造850では、状態|QT1>は4準位物質系410と相互作用するが、状態|QT0>は相互作用しない。同様に、状態|QC1>は状態|QT1>と4準位物質系410との相互作用を制御するが、状態|QC0>は制御しない。
【0082】
制御キュービット|QCin>は4準位系410の3−4チャネル内の入力であるのに対して、ターゲットキュービット|QTin>は1−2チャネルへの入力である。そのパルスは、両方の光子(制御状態|QC1>およびターゲット状態|QT1>のそれぞれ1つの光子)が存在する場合に4準位系410が1−2遷移のみを行うように配列される。その系は、相対的な位相θを確立するだけの十分な時間にわたって光子を循環させる。位相θの大きさは、4準位系410内の相互作用サイトの数によってだけでなく、レーザ820が4準位系410内の異なる遷移に加える外部の古典的場の強度および/または周波数ωbを介しても調整することができる。こうして、位相θは、πまで、またはπよりも大きな任意の値に調整することができる。πの条件付き位相シフトの場合、ゲート850は、2つの最初は絡み合っていないフォトニックキュービットを最大限に絡み合わせることが可能な一般的な2キュービットゲートを形成する。位相が調整可能であることは、さらに大きな自由度を与える。
【0083】
基本ゲートおよびビームスプリッタからCNOTゲートを作製することができる。図9は、制御式位相ゲート910および2つのアダマールゲート920、930を用いて実施されたCNOTゲート900を示す。制御式位相ゲート910は、位相シフトθがπに等しいように構造850のための動作パラメータが選択されるときの図8Bの構造850を用いて実施することができる。アダマールゲート920および930は、偏光符号化されたターゲットキュービットに対して作用し、アダマール変換を実行し、ビームスプリッタ、偏光器、移相器またはホログラムのような既知の線形光学素子を用いて実施することができる。たとえば、アダマールゲート920は、式19に示されるように、ターゲットキュービット成分状態|QT0>および|QT1>に対して作用する。
【0084】
【数15】
【0085】
E. Knill、R. LaflammeおよびG. J. Milburn(Nature 409, 46(2001))は、非線形符号シフトゲートとして知られているゲートを用いるCNOTゲートの構成を発表した。基本的には、非線形符号シフトゲートは、形式c0|0>+c1|1>+c2|2>の入力状態|IN>を受け取り、形式c0|0>+c1|1>+c2ejθ|2>の出力状態|OUT>を出力する。ただし、状態|0>、|1>、|2>はそれぞれ、0光子フォック状態、1光子フォック状態、2光子フォック状態である。
【0086】
本発明の一態様によれば、フォトニックキュービットおよび4準位(または5準位)物質系を用いて実施される2光子移相器が、位相シフトθがπに等しい特別な場合に、非線形符号シフトゲートとして動作する。図10Aは、本発明の一実施形態による2光子移相器1000を示す。2光子移相器1000は、図4Aの4準位系410と構造的に同じにすることができる多準位系1010を含むが、2光子移相器1000は角周波数(1/2)ωaを有する光子を用いる入力状態|IN>を有する。多準位系1010は、図3Aまたは図3Cに示される少なくとも4つのエネルギー準位を有する。プローブ光子は、多準位物質系1010内の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の遷移に関連付けられたエネルギーの半分のみを有するので、2光子成分状態|2>だけが、位相シフトを導入するEITプロセスを励起するのに十分なエネルギーを有する。
【0087】
2光子移相器1000の1つの変形形態では、多準位物質系1010が、第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の概ね中間にある第5のエネルギー準位を有する。このオプションの構成の場合、1光子フォック状態|1>は物質系1010と相互作用する。この構成の利点は、物質系1010内の1光子状態および2光子状態についての相互作用遅延がさらに良好に一致し、これにより、光子の数に関係なく、光子パルスが物質系1010から同時に出るようになることである。一般的に、タイミング遅延は0光子状態(たとえば真空状態)の場合には問題ではない。出力1光子フォック状態|1>は、多準位系1010がさらに別のエネルギー準位を有し、1光子フォック状態|1>において位相シフトを引き起こすように選択された制御場が加えられることがない限り、有意な位相シフトを生じないであろう。
【0088】
図10Bは、一対の2光子移相器1020および1030を用いて実施される2キュービット位相ゲート1050を示す。制御式位相ゲート1050では、ターゲットキュービットおよび制御キュービットの両方が、角周波数(1/2)ωaを有する光子の存在または不在に対応する成分状態を有する。キュービット状態は偏光されておらず、任意の特定の直線偏光を生じる等しい確率を有する。偏光ビームスプリッタ1040がターゲットキュービットの反射された部分と制御キュービットの透過された部分とを合成し、結果として合成されたものが2光子移相器1030に入力される。同様に、偏光ビームスプリッタ1040はターゲットキュービットの透過された部分と制御キュービットの反射された部分とを合成し、結果として合成されたものが2光子移相器1020に入力される。2光子移相器1020および1030では、制御キュービットおよびターゲットキュービットの両方について光子存在状態を含む成分状態だけが位相シフト(すなわち符号変化)を受ける。偏光ビームスプリッタ1045は、制御キュービットに対応する光子を、ターゲットキュービットに対応する光子から分離する。
【0089】
本発明のさらに別の態様によれば、ベル状態検出器が、2光子移相器を用いて、または用いることなく実施することができる2キュービット位相ゲートを用いて実施されたCNOTゲートを用いることができる。ベル状態は一般的に、キュービット相互作用から生じる絡み合った状態であり、CNOTゲートはベル状態を部分的にほどくことができることが知られている。表1の1列目(左端の列を除く)は、成分状態|QT0>および|QT1>を有するターゲットキュービットと成分状態|QC0>および|QC1>を有する制御キュービットとの絡み合い(関わり合い)から生じ得る、正規化されていないベル状態を示している。
【0090】
【表1】
【0091】
図11Aは、本発明の一実施形態によるベル状態検出器1100を示す。ベル状態検出器1100は、CNOTゲート1110と、制御キュービットにおいて用いられる周波数を有する光子用の光子状態検出器1120と、ターゲットキュービットにおいて用いられる周波数を有する光子用の光子状態検出器1130とを備える。CNOTゲート1110は、2つのアダマールゲート1112および1116と、制御式位相ゲート1114とを備える。CNOTゲート1110の他のインプリメンテーション(実施)もベル状態検出器1110に適している。上記のように、CNOTゲート1110(および制御式位相ゲート1114)は、角周波数ωcまたはωb(あるいは(1/2)ωa)の光子を用いる制御キュービットおよび角周波数ωa(あるいは(1/2)ωa)の光子を用いるターゲットキュービット用に構成することができる。図11Aの特定の実施形態の場合、検出器1100のための制御キュービットおよびターゲットキュービットはそれぞれ、対応する周波数の光子の不在または存在に対応する成分状態を用いて符号化される。表1の2列目は、CNOTゲート1110を、表1の1列目に記載されているベル状態に適用した結果を示す。
【0092】
光子状態検出器1120がCNOTゲートの出力状態を測定し、制御周波数(たとえばωc、ωbまたは(1/2)ωa)を有する光子の状態を判定し、かつ光子状態検出器1130がCNOTゲートの出力状態を測定し、ターゲット周波数(たとえばωaまたは(1/2)ωa)を有する光子の状態を判定する。図11Aでは、光子状態検出器1120はアダマールゲート1122および光子検出器1125を含む。アダマールゲート1122は制御光子に作用し、表1の3列目の結果的状態をもたらす。
【0093】
ベル状態検出器1100は、光子状態検出器1120および1130が実行する測定から、元の入力ベル状態を特定する。詳細には、検出器1120が状態|QC0>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態1またはベル状態3のいずれかであった。検出器1120が状態|QC1>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態2またはベル状態4のいずれかであった。検出器1130が状態|QT0>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態1またはベル状態2のいずれかであり、検出器1130が状態|QT1>に対応する光子を測定する場合には、元の入力状態は表1のベル状態3またはベル状態4のいずれかであった。したがって、状態検出器1120および1130からの測定値は、入力ベル状態を一意的に特定する2ビットデジタル値を示す。
【0094】
ベル状態検出器1100は、本発明に沿って種々の方法で変更することができる。たとえば、制御キュービットおよびターゲットキュービットを、異なる偏光、スピンまたは運動量の光子のような、測定によって区別することができる特性に対応する成分状態を用いて符号化することができる。図11Bは、キュービットが偏光符号化を用いる、1つの例示的なベル状態検出器1150を示す。ベル状態検出器1150は、偏光ビームスプリッタ1142および1144を用いて制御キュービットの偏光成分を分離および再結合し、偏光ビームスプリッタ1146および1148を用いてターゲットキュービットの偏光成分を分離および再結合する。結果として、状態|QC1>|QT1>だけが、制御式位相ゲート1114を通して符号変化を受ける。光子状態測定のために、偏光ビームスプリッタ1128および1138がそれぞれ出力制御およびターゲットキュービットの偏光成分を分離する。その後、光子検出器1124および1126が制御キュービットの2つの偏光チャネル内の光子の存在または不在を測定し、光子検出器1134および1136がターゲットキュービットの2つの偏光チャネル内の光子の存在または不在を測定する。光子検出器1124、1126、1134および1136からの4つの測定結果から、元の入力ベル状態が判定される。
【0095】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、その説明は本発明の応用形態の一例にすぎず、限定するものとして見なされるべきではない。開示した実施形態の特徴の種々の適合化および組み合わせは特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】光子と物質との間のコヒーレントな相互作用を提供し、電磁誘導透過を可能にする系(システム)を表す図である。
【図2A】相互作用している原子が3つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図2B】相互作用している原子が3つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての量子エネルギーマニホールドを示す図である。
【図3A】相互作用している原子または分子が4つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図3B】相互作用している原子または分子が4つの利用可能なエネルギー準位を有するときの図1の系についての量子エネルギーマニホールドを示す図である。
【図3C】第4のエネルギー準位からの自然放出を抑圧する、相互作用してる原子または分子についての準古典的エネルギー準位を示す図である。
【図4A】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図4B】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図4C】本発明の別の実施形態による単一キュービットゲートのブロック図である。
【図5A】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する屈折率の計算された依存性を示すプロット図である。
【図5B】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する吸収係数の計算された依存性を示すプロット図である。
【図5C】離調パラメータおよびデコヒーレンス速度の比に対する3次感受率(または3次磁化率)の計算された依存性を示すプロット図である。
【図6A】導波管内のプローブ光子のエバネセント場を物質系と相互作用させるための本発明の別の実施形態による構造を示す図である。
【図6B】導波管内のプローブ光子のエバネセント場を物質系と相互作用させるための本発明の別の実施形態による構造を示す図である。
【図7】光ファイバ内の光子のエバネセント場を物質系に結合するためにウィスパリングギャラリー(whispering gallery)モードを用いる本発明の一実施形態による構造を示す図である。
【図8A】本発明の別の実施形態による2キュービットゲートのブロック図である。
【図8B】本発明の別の実施形態による2キュービットゲートのブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態による制御式位相ゲートを用いるCNOTゲートのブロック図である。
【図10A】本発明の一実施形態による2光子移相器のブロック図である。
【図10B】図10Aに示されるような2光子移相器を用いて構成された制御式位相ゲートのブロック図である。
【図11A】本発明の別の実施形態によるベル状態検出器のブロック図である。
【図11B】本発明の別の実施形態によるベル状態検出器のブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
量子コヒーレント電磁信号用の導波管(615)と、
前記電磁信号と相互作用するように配置された物質系(620)であって、前記電磁信号と相互作用するために利用可能な第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を含む少なくとも4つの量子エネルギー準位を有する、物質系と、
前記物質系(620)からの自然放出を抑圧するように動作する抑圧系(630)とを備える、デバイス。
【請求項2】
前記抑圧系は前記物質系のまわりにフォトニックバンドギャップ結晶(630)を含み、該フォトニックバンドギャップ結晶(630)は欠陥(635)を有し、該欠陥を通って第2の電磁信号が前記物質系(620)と相互作用することからなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記抑圧系は、準安定である前記4つの量子エネルギー準位のうちの少なくとも2つに起因する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電磁信号と前記物質系(620)との前記相互作用は、前記電磁信号の成分状態に位相変化を導入する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
共鳴器として動作する球体(スフェア)(730)をさらに備え、該球体を介して前記物質系(720)が前記電磁信号と相互作用することからなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記物質系(620、720)は前記導波管(615、710)の外部にあり、かつ前記電磁信号のエバネセント場内にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記物質系(620)に取り付けられた分子鎖(640)をさらに備え、該分子鎖(640)は前記物質系(620)を乱す恐れがある光子を著しく減衰させる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記物質系(620)を包囲する分子かご(645)をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記物質系は前記電磁信号と相互作用するように配置された複数の原子/分子(620)を含み、該原子/分子(620)はそれぞれ前記電磁信号と相互作用するために利用可能な前記4つの量子エネルギー準位を有する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記物質系(620)に向けられる制御場の発生源(420、820)をさらに備え、それにより、電磁誘導透過を引き起こし、該電磁誘導透過により前記物質系(620)が前記電磁信号に対して透過性になるようにする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、フォトニックキュービット用の移相器(400A、400B、400C)であり、
前記電磁信号は1つのフォトニックキュービットを表すとともに、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有し、
前記デバイスはさらに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む電磁制御場の発生源(420)を備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、フォトニックキュービット用の2キュービットゲート(800、850)であり、
前記電磁信号は第1のフォトニックキュービットを表すとともに、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有し、
前記物質系に到達することができる第2の電磁信号が第2のフォトニックキュービットを表すとともに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第2の周波数を有し、
前記デバイスはさらに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第3の周波数を有する光子を含む電磁制御場の発生源(820)を備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスは2光子移相器(1000)であり、
前記電磁信号は、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差の約半分である第1の周波数を有する光子について、0光子成分状態、1光子成分状態および2光子成分状態である成分を含み、
前記デバイスはさらに、前記物質系(620)に電磁制御場を印加する発生源(420)を備え、前記電磁制御場は、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記2キュービットゲート(800、850)または前記2光子移相器(1000)の出力信号を測定するように配置された検出器(1125、1130)をさらに備え、該検出器からの測定により、該デバイスに入力されたベル状態を特定する、請求項12または19に記載のデバイス。
【請求項15】
量子情報処理方法であって、
物質系(620)と相互作用させるために量子情報信号を誘導するステップであって、該量子情報信号は前記物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する光子を使用し、前記量子情報信号と前記物質系(620)との相互作用が量子情報処理機能を実施することからなる、誘導するステップと、
前記物質系(620)の第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記物質系(620)の前記第3のエネルギー準位と第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを用いる電磁場を印加するステップと、
前記物質系(620)の前記第4のエネルギー準位からの遷移に対応する自然放出を抑圧するステップを含む、量子情報処理方法。
【請求項16】
前記自然放出を抑圧するステップは、フォトニックバンドギャップ結晶(630)で前記物質系を包囲するステップを含む、請求項15に記載の量子情報処理方法。
【請求項17】
前記自然放出を抑圧するステップは、前記第4のエネルギー準位が準安定になるように前記物質系(620)を選択するステップを含む、請求項15に記載の量子情報処理方法。
【請求項18】
前記量子情報処理機能は前記量子情報信号の成分状態の位相シフトを含む、請求項15ないし17に記載の量子情報処理方法。
【請求項19】
フォトニックキュービット用の移相器であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有するフォトニックキュービットのための導波管(615)と、
前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む、電磁制御場の発生源(420)
とを備える、移相器。
【請求項20】
前記フォトニックキュービットは、フォック状態によって表される値を有する、請求項19に記載の移相器。
【請求項21】
前記フォトニックキュービットはコヒーレント状態によって表される値を有する、請求項19に記載の移相器。
【請求項22】
フォトニックキュービット用の2キュービットゲートであって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する第1のフォトニックキュービット用の導波管(615)と、
前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第2の周波数を有する光子を含む電磁制御場の発生源(820)と、
前記物質系(410)への第2のフォトニックキュービットのための経路(615、635)
とを備え、
前記第2のフォトニックキュービットは、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第3の周波数を有する、フォトニックキュービットのための2キュービットゲート。
【請求項23】
2光子移相器であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(1010)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差の約半分である第1の周波数を有する光子について、0光子成分状態、1光子成分状態および2光子成分状態である成分を含む光子状態用の導波管(615)と、
前記物質系(1010)に電磁制御場を印加する発生源(410)
とを備え、
前記電磁制御場は、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含むことからなる、2光子移相器。
【請求項24】
前記物質系はさらに第5のエネルギー準位を有し、前記第1の周波数を有する光子は、前記第1のエネルギー準位と前記第5のエネルギー準位との間の結合を与える、請求項23に記載の2光子移相器。
【請求項25】
ベル状態検出器であって、
量子ゲート(1110)であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410、1010)であって、該物質系(410、1010)に制御場が印加される、物質系と、
ターゲット光子を用いるターゲットキュービットのための導波管(615)であって、整数個の前記ターゲット光子が、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差に対応する全エネルギーを有することからなる、導波管と、
制御光子を用いる制御キュービットのための経路(615、635)
とを備えることからなる、量子ゲートと、
前記量子ゲートの出力信号を測定するように配置された検出器(1120、1130)とを備え、
該検出器(1120、1130)は前記ターゲット光子についての第1の状態と、前記制御光子についての第2の状態とを特定する、ベル状態検出器。
【請求項1】
デバイスであって、
量子コヒーレント電磁信号用の導波管(615)と、
前記電磁信号と相互作用するように配置された物質系(620)であって、前記電磁信号と相互作用するために利用可能な第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を含む少なくとも4つの量子エネルギー準位を有する、物質系と、
前記物質系(620)からの自然放出を抑圧するように動作する抑圧系(630)とを備える、デバイス。
【請求項2】
前記抑圧系は前記物質系のまわりにフォトニックバンドギャップ結晶(630)を含み、該フォトニックバンドギャップ結晶(630)は欠陥(635)を有し、該欠陥を通って第2の電磁信号が前記物質系(620)と相互作用することからなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記抑圧系は、準安定である前記4つの量子エネルギー準位のうちの少なくとも2つに起因する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電磁信号と前記物質系(620)との前記相互作用は、前記電磁信号の成分状態に位相変化を導入する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
共鳴器として動作する球体(スフェア)(730)をさらに備え、該球体を介して前記物質系(720)が前記電磁信号と相互作用することからなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記物質系(620、720)は前記導波管(615、710)の外部にあり、かつ前記電磁信号のエバネセント場内にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記物質系(620)に取り付けられた分子鎖(640)をさらに備え、該分子鎖(640)は前記物質系(620)を乱す恐れがある光子を著しく減衰させる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記物質系(620)を包囲する分子かご(645)をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記物質系は前記電磁信号と相互作用するように配置された複数の原子/分子(620)を含み、該原子/分子(620)はそれぞれ前記電磁信号と相互作用するために利用可能な前記4つの量子エネルギー準位を有する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記物質系(620)に向けられる制御場の発生源(420、820)をさらに備え、それにより、電磁誘導透過を引き起こし、該電磁誘導透過により前記物質系(620)が前記電磁信号に対して透過性になるようにする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、フォトニックキュービット用の移相器(400A、400B、400C)であり、
前記電磁信号は1つのフォトニックキュービットを表すとともに、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有し、
前記デバイスはさらに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む電磁制御場の発生源(420)を備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、フォトニックキュービット用の2キュービットゲート(800、850)であり、
前記電磁信号は第1のフォトニックキュービットを表すとともに、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有し、
前記物質系に到達することができる第2の電磁信号が第2のフォトニックキュービットを表すとともに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第2の周波数を有し、
前記デバイスはさらに、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第3の周波数を有する光子を含む電磁制御場の発生源(820)を備える、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスは2光子移相器(1000)であり、
前記電磁信号は、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差の約半分である第1の周波数を有する光子について、0光子成分状態、1光子成分状態および2光子成分状態である成分を含み、
前記デバイスはさらに、前記物質系(620)に電磁制御場を印加する発生源(420)を備え、前記電磁制御場は、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記2キュービットゲート(800、850)または前記2光子移相器(1000)の出力信号を測定するように配置された検出器(1125、1130)をさらに備え、該検出器からの測定により、該デバイスに入力されたベル状態を特定する、請求項12または19に記載のデバイス。
【請求項15】
量子情報処理方法であって、
物質系(620)と相互作用させるために量子情報信号を誘導するステップであって、該量子情報信号は前記物質系の第1のエネルギー準位と第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する光子を使用し、前記量子情報信号と前記物質系(620)との相互作用が量子情報処理機能を実施することからなる、誘導するステップと、
前記物質系(620)の第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記物質系(620)の前記第3のエネルギー準位と第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを用いる電磁場を印加するステップと、
前記物質系(620)の前記第4のエネルギー準位からの遷移に対応する自然放出を抑圧するステップを含む、量子情報処理方法。
【請求項16】
前記自然放出を抑圧するステップは、フォトニックバンドギャップ結晶(630)で前記物質系を包囲するステップを含む、請求項15に記載の量子情報処理方法。
【請求項17】
前記自然放出を抑圧するステップは、前記第4のエネルギー準位が準安定になるように前記物質系(620)を選択するステップを含む、請求項15に記載の量子情報処理方法。
【請求項18】
前記量子情報処理機能は前記量子情報信号の成分状態の位相シフトを含む、請求項15ないし17に記載の量子情報処理方法。
【請求項19】
フォトニックキュービット用の移相器であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有するフォトニックキュービットのための導波管(615)と、
前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含む、電磁制御場の発生源(420)
とを備える、移相器。
【請求項20】
前記フォトニックキュービットは、フォック状態によって表される値を有する、請求項19に記載の移相器。
【請求項21】
前記フォトニックキュービットはコヒーレント状態によって表される値を有する、請求項19に記載の移相器。
【請求項22】
フォトニックキュービット用の2キュービットゲートであって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第1の周波数を有する第1のフォトニックキュービット用の導波管(615)と、
前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第2の周波数を有する光子を含む電磁制御場の発生源(820)と、
前記物質系(410)への第2のフォトニックキュービットのための経路(615、635)
とを備え、
前記第2のフォトニックキュービットは、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位および前記第4のエネルギー準位のうちの一方との間の結合を与える第3の周波数を有する、フォトニックキュービットのための2キュービットゲート。
【請求項23】
2光子移相器であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(1010)と、
前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差の約半分である第1の周波数を有する光子について、0光子成分状態、1光子成分状態および2光子成分状態である成分を含む光子状態用の導波管(615)と、
前記物質系(1010)に電磁制御場を印加する発生源(410)
とを備え、
前記電磁制御場は、前記第3のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間の結合を与える第2の周波数を有する光子と、前記第3のエネルギー準位と前記第4のエネルギー準位との間の結合を与える第3の周波数を有する光子とを含むことからなる、2光子移相器。
【請求項24】
前記物質系はさらに第5のエネルギー準位を有し、前記第1の周波数を有する光子は、前記第1のエネルギー準位と前記第5のエネルギー準位との間の結合を与える、請求項23に記載の2光子移相器。
【請求項25】
ベル状態検出器であって、
量子ゲート(1110)であって、
第1のエネルギー準位、第2のエネルギー準位、第3のエネルギー準位および第4のエネルギー準位を有する物質系(410、1010)であって、該物質系(410、1010)に制御場が印加される、物質系と、
ターゲット光子を用いるターゲットキュービットのための導波管(615)であって、整数個の前記ターゲット光子が、前記第1のエネルギー準位と前記第2のエネルギー準位との間のエネルギー差に対応する全エネルギーを有することからなる、導波管と、
制御光子を用いる制御キュービットのための経路(615、635)
とを備えることからなる、量子ゲートと、
前記量子ゲートの出力信号を測定するように配置された検出器(1120、1130)とを備え、
該検出器(1120、1130)は前記ターゲット光子についての第1の状態と、前記制御光子についての第2の状態とを特定する、ベル状態検出器。
【図1】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2006−526794(P2006−526794A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503439(P2006−503439)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/003788
【国際公開番号】WO2004/072806
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/003788
【国際公開番号】WO2004/072806
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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