説明

電磁駆動装置

【課題】簡単な構成で可動部材を可動部材の軸線方向に移動させるとともに、可動部材を軸線方向に垂直な軸周りに回転移動させることのできる電磁駆動装置を提供する。
【解決手段】Z軸に垂直な軸周りに巻き回されてZ軸回りに均等な角度で配置される偶数個の駆動用コイル141〜144と、それぞれの磁極面が各駆動用コイル141〜144とのZ軸と直交する方向に延長する辺14u(または、辺14d)にそれぞれ向き合うように配置され、かつ、互いに隣接する駆動用磁石の極性が互いに異なっている駆動用磁石151U〜154U(または、151D〜154D)とを備えた電磁駆動手段を用いて、可動部材であるレンズホルダー12を固定部材であるケースに対して、Z軸方向に移動させたり、Z軸に垂直な軸周りに回転させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、撮影用光学機器などに用いられる手振れ抑制装置や手振れ抑制機能付レンズ駆動装置に適用可能な電磁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラはイメージセンサーの画素数が増大されて撮影画像の高品質化が進んでいる。これに伴って、搭載されるレンズ系についても、従来の固定焦点のレンズ駆動装置から可動焦点のレンズ駆動装置へと移行しつつある。これは、固定焦点のレンズ駆動装置では、焦点ボケが生じて、高画素数イメージセンサーの分解能に対応することができないためである。
可動焦点のレンズ駆動装置におけるレンズ系の駆動方式としては、図14に示すような、ボイスコイルモータ型のレンズ駆動装置が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
レンズ駆動装置50は、ケース51に、レンズホルダー52の軸線に対して放射方向に着磁された円筒状の磁石から成る駆動用磁石53を配置するとともに、レンズ54の光軸周りに巻き回された駆動用コイル55をレンズホルダー52に装着し、駆動用コイル55に通電することで、同図の矢印で示す駆動用コイル55に被写体方向へ向けたローレンツ力を発生させ、レンズホルダー52を前後の板バネ56A,56Bの復元力と釣り合った位置に移動させることにより、レンズ54を所定の位置に移動させる。なお、図14において、符号57は、駆動用磁石53の発生する磁界を駆動用コイル55に導くために設けられた断面がU字状の磁気ヨークである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−280031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレンズ駆動装置50では、可動部材であるレンズホルダー52をレンズ54の光軸方向に移動させることはできるものの、レンズ光軸と直交する軸周りに回転移動させる必要がある場合には、別途、可動部材であるレンズホルダー52を固定部材であるケース51に対して揺動させる機構を付加する必要があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で可動部材を当該可動部材の軸線方向に移動させることができるとともに、可動部材を当該可動部材の軸線方向に垂直な軸周りに回転移動させることのできる電磁駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に記載の発明は、固定部材と、柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を前記固定部材に揺動可能に懸架する懸架手段と、前記可動部材を前記固定部材に対して揺動させる電磁駆動手段とを備えた電磁駆動装置であって、前記可動部材の軸線方向をZ軸方向としたときに、前記電磁駆動手段が、Z軸方向に直交する磁極面を有しZ軸周りに均等な角度で配置される偶数個の駆動用磁石と、前記駆動用磁石に空隙を隔てて対向して配置される駆動用コイルとを備え、前記駆動用磁石のうちの互いに隣接する駆動用磁石の極性が互いに異なっており、前記駆動用コイルと前記駆動用磁石のいずれか一方が前記可動部材に装着され、他方が前記固定部材に装着され、前記駆動用コイルの、Z軸及び前記駆動用磁石の磁極面に垂直な方向に延長する辺の通電方向が当該辺に対応する駆動用磁石の極性に応じて異なっていることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、可動部材をZ軸に平行な方向に駆動したり、Z軸に垂直な軸周りに回転駆動することができるので、例えば、構造が簡単な手振れ抑制機能付レンズ駆動装置を得ることができる。また、本発明による電磁駆動装置では、駆動用磁石が駆動用コイルのZ軸と直交する方向に延長する辺に空隙を隔てて向き合うように配置されるので、駆動用コイルに有効に磁界を印加できる。したがって、駆動効率の高い電磁駆動装置を得ることができる。また、本発明の電磁駆動装置は、手振れ抑制装置としてのみ用いることも可能である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電磁駆動装置であって、前記駆動用コイルが、Z軸に垂直な軸周りに巻き回されるZ軸及び前記駆動用磁石の磁極面に垂直な方向に延長する辺を有する偶数個のコイルから成ることを特徴とする。
このように、駆動用コイルをZ軸に垂直な軸周りに巻き回される複数のコイルから構成すれば、駆動用コイルのZ軸と直交する方向に延長する辺と駆動用磁石とを容易に向き合うようにできるので、駆動用コイルを有効に駆動するための磁界を確実に印加できる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電磁駆動装置であって、前記駆動用コイルが、Z軸周りに巻き回される少なくとも1対のコイル対を備え、前記コイル対を構成する2つのコイルのZ軸方向の位置が当該コイル対に対向する駆動用磁石の極性に応じて入れ替わることを特徴とする。
駆動用コイルをこのような1対のコイル対から構成することにより、少ないコイル数で駆動用コイルに向き合うZ軸と直交する方向に延長する辺を構築できるので、駆動効率を向上させることができる。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電磁駆動装置であって、前記各コイルのZ軸と直交する方向に延長する辺であって、前記駆動用磁石が向き合っている辺とは異なる辺と向き合うように配置された第2の磁石を更に備え、前記第2の磁石の前記異なる辺に対向する面である磁極面の極性が前記駆動用磁石の極性と異なっていることを特徴とする。
これにより、駆動用コイルの各コイルのZ軸方向前方に位置する辺とZ軸方向後方に位置する辺の両方に駆動力(ローレンツ力)を発生させることができるので、駆動効率が一層向上する。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電磁駆動装置であって、前記各コイルをそれぞれ独立に通電制御する電流制御手段を備えたことを特徴とする。
このように、駆動用コイルの各コイルをそれぞれ独立に通電制御すれば、可動部材をZ軸に垂直な軸周りに効率よく回転駆動することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電磁駆動装置であって、前記駆動用磁石、もしくは、前記駆動用磁石と前記第2の磁石の前記駆動用コイル前記駆動用磁石、もしくは、前記駆動用磁石と前記第2の磁石の前記駆動用コイルに対向する面とは反対側の面側に磁気ヨークが配設されていることを特徴とする。
これにより、駆動用コイルに印加される磁束の法線方向密度を増加させることができるので、可動部材を効率よく駆動することができる。
【0008】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の構成を示す縦断面図及び平面図である。
【図2】手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の要部斜視図である。
【図4】駆動用磁石の作る磁界の一例を示す図である(直方体磁石)。
【図5】駆動用コイルの位置と駆動用コイルに作用する磁束の法線方向密度との関係を示す図である(直方体磁石)。
【図6】前側駆動用磁石のみを有する手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明による手振れ抑制装置の構成を示す図である。
【図8】三角柱状磁石から成る駆動用磁石を用いた手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の構成を示す図である。
【図9】駆動用磁石の作る磁界の一例を示す図である(三角柱磁石)。
【図10】駆動用コイルの位置と駆動用コイルに作用する磁束の法線方向密度との関係を示す図である(三角柱磁石)。
【図11】本発明による手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の駆動部の他の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明による手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の駆動用コイルの他の構成を示す図である。
【図13】本発明による手振れ抑制機能付きレンズ駆動装置の駆動用コイルの他の構成を示す図である。
【図14】従来のレンズ駆動装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1〜図3は、本発明の実施の形態を示す図で、図1(a),(b)はそれぞれ電磁駆動装置としての手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10の構成を示す縦断面図と平面図、図2は分解斜視図、図3は要部斜視図である。
手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10は、固定部材としてのケース11と、可動部材としてのレンズホルダー12と、レンズホルダー12をケース11に揺動可能に懸架する懸架手段としての前側及び後側バネ部材13A,13Bと、レンズホルダー12の外周側に装着された4個の駆動用コイル141〜144と、それぞれの磁極面が前記各駆動用コイル141〜144のZ軸と直交する方向に延長する前側及び後側の辺14u,14dにそれぞれ向き合うように前記各駆動用コイル141〜144と空隙を隔てて配置される駆動用磁石としての前側駆動用磁石151U〜154U及び第2の磁石としての後側駆動用磁石151D〜154Dと、前側及び後側駆動用磁石151U〜154U,151D〜154Dの駆動用コイル141〜144とは反対側に設けられた磁気ヨーク16と、電流制御手段17とを備える。
前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dは、磁気ヨーク16を介して、ケース11の内周側に取付けられる。
【0012】
レンズホルダー12は、内側に対物レンズや接眼レンズの組み合わせから成るレンズ18を保持する平面視正方形の筒状の部材で、以下、図1(a)の矢印で示す、レンズホルダー12の軸線方向をZ軸、Z軸に直交する2方向をそれぞれX軸及びY軸とする。
また、レンズホルダー12にレンズ18を搭載したときの被写体方向をZ軸前方とする。本例では、レンズホルダー12を、互いに対向する2つの側面121,122がX軸に垂直になるように配置した。すなわち、レンズホルダー12は、X軸前方に位置する側面121と、X軸後方に位置する側面122と、Y軸前方に位置する側面123と、Y軸後方に位置する側面124とを備える。
【0013】
ケース11は、上ケース11Aと下ケース11Bとを備える。
上ケース11Aは、Z軸前方に開口部を有しZ軸後方が開放されている四角筒状の部材で、下ケース11Bは、中心に開口部11hが形成された正方形板状の台座11aと、この台座11aの4隅にZ軸前方に突出するように設けられた支持柱11bと、開口部11hの外縁部からZ軸前方に突出してレンズホルダー12の後端に当接する係止部11cと、後側バネ部材13Bの外枠13aの外縁部の位置を規制する規制部11dとを備える。下ケース11Bは上ケース11AのZ軸後方に配置される。下ケース11Bの4本の支持柱11bの開口部11h側には、それぞれ、磁気ヨーク16を取付けるための取付用段差部11kが形成されている。
【0014】
前側及び後側バネ部材13A,13Bは、図2に示すように、それぞれ、矩形板状の外枠13a及び内枠13bと、外枠13aと内枠13bとを連結する4本の直線状の腕部13cと、各腕部13cの両端部において、腕部13cと外枠13a、もしくは、腕部13cと内枠13bとを連結する連結片13dとを備える。なお、後側バネ部材13Bの外枠13aは、下ケース11Bに設けられた支持柱11bを避けて取付けるため、外周の4隅に切欠き部13kが設けられている。
前側バネ部材13Aの外枠13aは上ケース11AのZ軸後方の外縁部に固定され、内枠13bはレンズホルダー12のZ軸前方の外縁部に固定される。
一方、後側バネ部材13Bの外枠13aは下ケース11Bの台座11aの開口部11hと支持柱11bと規制部11dとの間に固定され、内枠13bはレンズホルダー12のZ軸後方の外縁部に固定される。
4本の腕部13cがレンズホルダー12をケース11にZ軸方向に可動自在に懸架支持するバネとして機能する。
本例では、下ケース11Bにレンズホルダー12の後端に当接する係止部11cを設けて前側及び後側バネ部材13A,13Bのそれぞれにオフセットを加えることで、レンズホルダー12を常にZ軸後方に付勢するようにしている。
【0015】
駆動用コイル141〜144は、被覆導線をX軸周りまたはY軸周りに巻き回して形成される。詳細には、駆動用コイル141〜144は、Z軸と直交する方向に延長しZ軸方向前方に位置する前側の辺14uと、辺14uに平行な方向に延長しZ軸方向後方に位置する後側の辺14dと、Z軸と平行な方向に延長する右側及び左側の辺14r,14lとを備え、それぞれ、レンズホルダー12の側面121〜124に配置される。すなわち、駆動用コイル141〜144は、それぞれZ軸に垂直な軸周りに巻き回され、レンズホルダー12の側面121〜124に、当該レンズホルダー12の中心軸であるZ軸を中心として等間隔(90°間隔)で配置される。
【0016】
前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dは、それぞれレンズホルダー12側の面15aが磁極面である直方体状の永久磁石で、ケース11の内周面のZ軸前方に前側駆動用磁石151U〜154Uが、Z軸後方に後側駆動用磁石151D〜154Dが、それぞれ、磁気ヨーク16を介して配置される。
前側駆動用磁石151U〜154Uの磁極面は、それぞれ駆動用コイル141〜144の前側の辺14uに空隙を隔てて対向するように配置され、後側駆動用磁石151D〜154Dの磁極面は、それぞれ駆動用コイル141〜144の後側の辺14dに空隙を隔てて対向するように配置される。すなわち、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dは、それぞれ、駆動用コイル141〜144と同様に、レンズホルダー12の中心軸を中心としてZ軸を中心として等間隔(90°間隔)で配置される。
本例では、Z軸周り、及び、Z軸方向に互いに隣接する駆動用磁石の極性を互いに異なる極性になるよう前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dを配置している。
具体的には、前側駆動用磁石151Uの駆動用コイル141側の極性をN極とすると、前側駆動用磁石152Uの駆動用コイル142側の極性はN極で、前側駆動用磁石153Uの駆動用コイル143側の極性と前側駆動用磁石154Uの駆動用コイル144側の極性とがS極となるように前側駆動用磁石151U〜154Uを配置する。一方、後側駆動用磁石151D〜154Dは、後側駆動用磁石151Dの駆動用コイル141側の極性と後側駆動用磁石152Dの駆動用コイル142側の極性がS極で、後側駆動用磁石153Dの駆動用コイル143側の極性と後側駆動用磁石154Dの駆動用コイル144側の極性とがN極となるように配置する。
【0017】
磁気ヨーク16は軟磁性体から成る四角筒状の部材で、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dの駆動用コイル141〜144とは反対側の面に当接するように配置される。
電流制御手段17は、それぞれ、駆動用コイル141〜144に電気的に接続されて、各駆動用コイル141〜144に通電する電流値の大きさを独立に制御する。
【0018】
次に、駆動用コイル141〜144に印加される磁界について説明する。
図4(a),(b)は、XY平面内に幅a=5mm、長さb=0.5mm、厚さ1mmの4個の直方体状の永久磁石14a〜14dを正方形状に配置したときの永久磁石14a〜14dの作る磁界の一例を示す図で、対向する永久磁石14a,14c及び永久磁石14b,14d間の距離はともに7mmである。
(a)図は永久磁石14a〜14dの極性が全て永久磁石14a〜14dの作る正方形の内側を向くように配置した例、(b)図は本例の手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10と同様に、永久磁石14a〜14dを、Z軸周りに隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性になるように配置した例である。
(a)図及び(b)図の一点鎖線で示す正方形ABCDは、永久磁石14a〜14dの内周側の辺に平行な4つの直線で囲まれた正方形の内側(例えば、0.2mm内側)であって、駆動用コイル141〜144が配設される位置を含む正方形である。この正方形ABCDの辺AB上の磁界を比較すると、(a)図では、辺ABに叉交する磁束密度が低いだけでなく、辺ABに直交する磁界成分が小さいのに対し、(b)図では、辺ABに叉交する磁束密度が高く、かつ、磁力線がほぼ辺ABに直交していることが分かる。辺BC,辺CD,辺DAについても同様である。
【0019】
図5は、正方形ABCDの辺AB及び辺BCに叉交する磁界の大きさを示す図で、横軸は折れ線ABC上の位置[mm]、縦軸は磁束の法線方向密度[T]である。同図の実線が隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性になるように永久磁石14a〜14dを配置したときの磁束の法線方向密度で、破線が永久磁石14a〜14dの極性が全て内側を向くように配置したときの磁束の法線方向密度である。なお、折れ線CDA上における磁界の方向と大きさは折れ線ABC上における磁界の方向と大きさと同じであるので、折れ線CDA上の位置[mm]と磁束の法線方向密度[T]との関係は、図5と同じである。
図4(a),(b)及び図5から明らかなように、永久磁石14a〜14dの極性が全て内側を向くように配置した場合には、磁束の法線方向密度の磁束密度そのものが低いだけでなく、磁束流が反転する領域(反転磁界領域)が広いことが分かる。反転磁界領域が広いと、駆動用コイル141〜144に有効に磁界を印加できない。これに対して、隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性である場合には、磁束の法線方向密度の磁束密度も高く、かつ、反転磁界領域が狭い。
したがって、本例の手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10のように、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dを、隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性になるように配置すれば、駆動用コイル141〜144の前側の辺14uと後側の辺14dとに、当該辺14u,14dの延長方向とZ軸とに直交する方向の磁界を有効に印加することができることが確認された。
【0020】
次に、手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10の動作について説明する。
まず、レンズホルダー12を被写体方向(Z軸方向)に移動させる、いわゆる自動焦点駆動する場合について、図3を参照して説明する。
具体的には、電流制御手段17により、レンズホルダー12の側面121に装着された駆動用コイル141に同図の矢印に示すようなX軸方向反時計回りの電流Iを流すと、駆動用コイル141の前側の辺14uには前側駆動用磁石151Uからの−X軸方向の磁界が作用しているので、前側の辺14uには同図の上向きの矢印で示す+Z方向を向いたローレンツ力Fが発生する。後側の辺14dに流れる電流の方向は前側の辺14uとは逆方向(−Y軸方向)で、かつ、後側の辺14dには後側駆動用磁石151Dからの+X軸方向の磁界が作用しているので、後側の辺14dにも+Z方向を向いたローレンツ力Fが発生する。左右の辺14r,14lに作用する磁界は電流の向きに直交する成分が殆どほとんどないのでローレンツ力は発生しない。
したがって、駆動用コイル141にX軸方向反時計回りの電流Iを流すと、駆動用コイル141には当該駆動用コイル141を+Z方向に移動させようとする力が作用する。
また、側面121とは反対側の側面122に装着された駆動用コイル142に駆動用コイル141とは逆方向の電流(X軸方向時計回りの電流)Iを流すと、図示しない駆動用コイル142の前側の辺14uには前側駆動用磁石152Uからの+X軸方向の磁界が作用し、後側の辺14dには後側駆動用磁石152Dからの−X軸方向の磁界が作用しているので、前側の辺14uと後側の辺14dとにはそれぞれ+Z方向を向いたローレンツ力Fが発生する。なお、駆動用コイル141の場合と同様に、左右の辺14r,14lにはローレンツ力は発生しない。
したがって、電流制御手段17により、駆動用コイル141にX軸方向反時計回りの電流Iを流すとともに、駆動用コイル142に駆動用コイル141に流す電流と同じ大きさの電流IをX軸方向時計回りに流すようにすれば、レンズホルダー12を+Z側に移動させることができる。レンズホルダー12は、前記ローレンツ力とバネ部材13A,13Bの復元力とが釣り合った位置まで移動する。
レンズホルダー12を−Z側に移動させようとする場合には、駆動用コイル141にX軸方向時計回りの電流Iを流し、駆動用コイル142にX軸方向反時計回りの電流Iを流せばよい。なお、この場合も、駆動用コイル141に流す電流の大きさと駆動用コイル142に流す電流の大きさとを同じにすることはいうまでもない。
【0021】
同様に、レンズホルダー12の側面123に装着された図示しない駆動用コイル143にY軸方向時計回りの電流Iを流すと、駆動用コイル143の前側の辺14uと後側の辺14dとにはそれぞれ+Z方向を向いたローレンツ力Fが発生し、側面123とは反対側の側面124に装着された駆動用コイル144に駆動用コイル143とは逆方向の電流(Y軸方向反時計回りの電流)Iを流すと、駆動用コイル144の前側の辺14uと後側の辺14dとにはそれぞれ+Z方向を向いたローレンツ力Fが発生する。
したがって、電流制御手段17により、駆動用コイル143にY軸方向時計回りの電流Iを流すとともに、駆動用コイル144にY軸方向反時計回りの電流Iを流すようにすれば、レンズホルダー12を+Z側に移動させることができる。なお、レンズホルダー12は、ローレンツ力とバネ部材13A,13Bの復元力とが釣り合った位置まで移動する。
レンズホルダー12を−Z側に移動させようとする場合には、駆動用コイル143にY軸方向反時計回りの電流Iを流し、駆動用コイル144にY軸方向時計回りの電流Iを流すようにすればよい。
したがって、全ての駆動用コイル141〜144のそれぞれに前述した方向でかつ大きさの等しい電流を流せば、レンズホルダー12をZ軸方向に移動させることができる。
【0022】
次に、手振れを抑制する場合について説明する。
まず、レンズ18に手振れが生じたか否かを、例えば、レンズホルダー12に装着された図示しない角速度センサーにて検出する。手振れが生じている場合には、角速度センサーで検出した手振れの大きさと方向とを電流制御手段17に送る。電流制御手段17では、検出された手振れの大きさと方向に応じて、駆動用コイル141〜144に通電する電流量と通電方向とを制御して、レンズホルダー12を揺動させて前記手振れを抑制する。
例えば、レンズ18を保持するレンズホルダー12をY軸周りに右回転させるような手振れが生じた場合には、駆動用コイル141にX軸方向反時計回りの電流I1を流し駆動用コイル142にX軸方向時計回りの電流I2を流すとともに、前記電流I1の大きさを前記電流I2の大きさよりもより大きくすればよい(|I1|>|I2|)。
駆動用コイル141〜144に流す電流の方向と駆動用コイル141〜144に作用するローレンツ力との関係は、前述した自動焦点駆動の場合と同じなので、駆動用コイル141に作用する+Z方向のローレンツ力F1の方が、駆動用コイル142に作用する+Z方向のローレンツ力F2よりも大きい。これにより、レンズホルダー12を+Z側に移動させつつY軸周りに左回転させることができるので、レンズホルダー12をY軸周りに右回転させるような手振れを抑制することができる。
レンズホルダー12を−Z側に移動させつつY軸周りに左回転させるには、駆動用コイル141にX軸方向時計回りの電流I’1を流し、駆動用コイル142に大きさが前記電流I’1の大きさよりもより大きなX軸方向反時計回りの電流I’2を流せばよい。
なお、レンズホルダー12を、Z軸方向に移動させつつY軸周りに左回転させるような手振れが生じた場合には、駆動用コイル141,142に流す電流I1及び電流I2の大きさを逆にすることで、レンズホルダー12をY軸周りに右回転させるようにすればよい。
また、レンズホルダー12をZ軸方向に移動させずにY軸周りに左回転させるには、駆動用コイル141と駆動用コイル142とにX軸方向反時計回りの電流を流し、Y軸周りに右回転させるには、駆動用コイル141と駆動用コイル142とにX軸方向時計回りの電流を流せばよい。
【0023】
また、レンズホルダー12をX軸周りに右回転させるような手振れが生じた場合には、駆動用コイル143にY軸方向時計回りの電流I3を流し駆動用コイル144にY軸方向反時計回りの電流I4を流すとともに、前記電流I3の大きさを前記電流I4の大きさよりもより小さくすればよい(|I3|<|I4|)。これにより、レンズホルダー12を+Z側に移動しつつX軸周りに左回転させることができるので、レンズホルダー12をX軸周りに右回転させるような手振れを抑制することができる。
また、レンズホルダー12を−Z側に移動させつつX軸周りに左回転させるには、駆動用コイル143にY軸方向反時計回りの電流I’3を流し、駆動用コイル144に大きさが前記電流I’3の大きさよりもより小さなY軸方向時計回りの電流I’4を流せばよい。
なお、レンズホルダー12を、Z軸方向に移動させつつX軸周りに左回転させるような手振れが生じた場合には、駆動用コイル143,144に流す電流I3及び電流I4の大きさを逆にすればよい。
また、レンズホルダー12をZ軸方向に移動させずにX軸周りに左回転させるには、駆動用コイル143と駆動用コイル144とにY軸方向反時計回りの電流を流し、X軸周りに右回転させるには、駆動用コイル143と駆動用コイル144とにY軸方向時計回りの電流を流せばよい。
また、前記X軸周りの回転とY軸周りの回転とを合成すれば、レンズホルダー12を、Z軸方向に駆動しつつ、もしくは、Z軸方向に移動させずにZ軸と垂直な任意の軸周りに回転させることができるので、レンズ18に生じたZ軸と垂直な任意の軸周りの手振れを抑制することができる。
【0024】
なお、前記実施の形態では、Z軸方向前方とZ軸方向後方とにそれぞれ前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dを配置したが、図6に示すように、前側駆動用磁石151U〜154Uのみを配置するか、もしくは、後側駆動用磁石151D〜154Dのみを配置してもよい。この場合、前記実施の形態に比較して駆動力は小さくなるが、部品点数を少なくできるという利点がある。
なお、前側駆動用磁石151U〜154Uのみを配置する場合には、前側駆動用磁石151U〜154Uのそれぞれを駆動用コイル141〜144の前側の辺14uに対向させるように配置し、後側駆動用磁石151D〜154Dのみを配置する場合には、後側駆動用磁石151D〜154Dのそれぞれを駆動用コイル141〜144の後側の辺14dに対向させるように配置することが肝要で、前側駆動用磁石151U〜154Uもしくは前側駆動用磁石151U〜154Uを、辺14uと辺14dの中間に配置した場合には、辺14uや辺14dに印加される駆動用コイル141〜144の面に垂直な磁界成分が大幅に低下するので、本実施の形態のように、レンズホルダー12を移動もしくは回転させることは困難である。
【0025】
また、前記例では、電磁駆動装置を手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10としたが、図7(a),(b)に示すように、可動体であるレンズホルダー12を回転機能を有しないレンズ駆動装置20に置き換えるとともに、固定部材としてのケース11をレンズ駆動装置を保持する固定体31に置き換えれば、レンズ駆動装置20の手振れを抑制する手振れ抑制装置40を構成することができる。
すなわち、レンズ駆動装置20を固定体31に前側及び後側バネ部材13A,13Bにより揺動自在に懸架するとともに、レンズ駆動装置20の外周側に駆動用コイル141〜144を装着し、固定体31の内周側に、それぞれの磁極面が前記各駆動用コイル141〜144のZ軸と直交する方向に延長する前側及び後側の辺14u,14dにそれぞれ向き合うように前記各駆動用コイル141〜144と空隙を隔てて前側駆動用磁石151U〜154Uと後側駆動用磁石151D〜154Dとを配置すればよい。なお、この場合には、前側及び後側バネ部材13A,13Bにはオフセットを付ける必要がないので、下ケース11Bの係止部11cを省略したものと同構成の下部固定体31Bを用いる。また、上部固定体31Aとしては前側バネ部材13Aの外枠13aを固定可能な筒状の部材を用いればよい。あるいは、上部固定体31Aを省略して下部固定体31Bの図示しない支持柱のZ軸前側の端部に取付けてもよい。
手振れを抑制する際には、例えば、レンズ駆動装置20に取付けられた図示しない角速度センサーで検出した手振れの大きさと方向とに応じて駆動用コイル141〜144に通電する電流量と通電方向とを制御して、レンズ駆動装置20をZ軸と垂直な任意の軸周りに検出された手振れとは逆方向に回転させるようにすればよい。
なお、手振れの抑制方法については、前述した手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10における手振れ抑制の場合と同様であるので説明を省略する。
【0026】
また、前記例では、駆動用コイル141〜144を可動部材であるレンズホルダー12側に装着し、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dを固定部材であるケース11側に取付けたが、駆動用コイル141〜144をケース11側に装着し、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dをレンズホルダー12側に取付けても、同様の効果を得ることができる。
また、前記例では、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154DをZ軸の周りに4個配置したが、駆動用磁石の数はこれに限るものではなく、2個、6個、あるいは、8個など偶数個であればよい。但し、2個の場合には、自動焦点駆動については問題ないが、回転は1つの軸周りしかできないので、駆動用磁石の数としては4個以上の偶数個とすることが好ましい。また、駆動用磁石をZ軸方向の前方と後方とに配置する場合には、Z軸方向前方に配置する駆動用磁石の数とZ軸方向前後方に配置する駆動用磁石の数とを同じにすることが制御上好ましい。
【0027】
また、前記例では、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dの形状を直方体状としたが、図8に示すように、三角柱状にするとともに、レンズホルダー12の形状を八角柱状とすれば、手振れ抑制機能付レンズ駆動装置10を小型化することができる。なお、駆動用コイル141〜144の前側の辺14uの大部分と後側の辺14dの大部分とは、八角柱状のレンズホルダー12の側面のうち、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dに対向する側面に配置する必要があることはいうまでもない。
【0028】
図9(a),(b)は、XY平面の8mm×8mmの枠内に、縦2.5mm、横2.5mm、厚さ1mmの4個の三角柱状の永久磁石14p〜14sを配置したときの永久磁石14p〜14sの作る磁界の一例を示す図である。
(a)図は永久磁石14p〜14sの極性が全て枠の内側を向くように配置した例、(b)図は永久磁石14p〜14sを、Z軸周りに隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性になるように配置した例である。
(a)図及び(b)図の一点鎖線で示す折れ線DEFGHIは、永久磁石14p〜14sの斜面の内側(例えば、0.2mm内側)の駆動用コイル141,143が配設される位置に位置する線分EF及び線分GHを含む折れ線で、始点Dは永久磁石14sと永久磁石14pの中点、終点Iは永久磁石14qと永久磁石14rの中点である。線分EF及び線分GH上の磁界を比較すると、(a)図では線分EF及び線分GHに直交する磁界成分が小さいのに対し、(b)図では磁力線がほぼ線分EF及び線分GHに直交していることが分かる。
【0029】
図10は、折れ線DEFGHIに叉交する磁界の大きさを示す図で、横軸は折れ線DEFGHIの位置[mm]、縦軸は磁束の法線方向密度の磁束密度[T]である。同図の実線が隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性になるように永久磁石14p〜14sを配置したときの磁束密度で、破線が永久磁石14p〜14sの極性が全て内側を向くように配置したときの磁束密度である。
図9(a),(b)及び図10から明らかなように、永久磁石14p〜14sの極性が全て内側を向くように配置した場合には、磁束の法線方向密度の磁束密度そのものが低いだけでなく、磁束流が反転する領域(反転磁界領域)が広いが、隣接する永久磁石の極性が互いに異なる極性である場合には、磁束の法線方向密度の磁束密度が高く、かつ、反転磁界領域は狭いことが分かる。
したがって、三角柱状の永久磁石14p〜14sを用いた場合も、線分EF及び線分GHに駆動用コイル141,143を配置すれば、駆動用コイル141,143の前側の辺14uと後側の辺14dとに、当該辺14u,14dの延長方向とZ軸とに直交する磁界を有効に印加することができることが確認された。
また、三角柱状の永久磁石14p〜14sの作る磁界は図9(a),(b)の上半分と下半分とで同じなので、駆動用コイル142,144の前側の辺14uと後側の辺14dとにも、当該辺14u,14dの延長方向とZ軸とに直交する磁界を有効に印加することができることはいうまでもない。
【0030】
また、前記例では、レンズホルダー12の形状を平面視正方形の筒状の部材としたが、これに限るものではなく、図11に示すように八角柱状としてもよい。この場合も、図8の場合と同様に、駆動用コイル141〜144の前側の辺14uの大部分と後側の辺14dの大部分とは、八角柱状のレンズホルダー12の側面のうち、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dに対向する側面に配置する。
あるいは、図12に示すように、レンズホルダー12の形状を円筒状にしてもよい。この場合には、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dをそれぞれ円弧柱状の永久磁石とすることが好ましい。
【0031】
また、前記例では、前側及び後側のバネ部材13A,13Bを用いてレンズホルダー12をケース11に懸架支持したが、レンズホルダー12に、レンズホルダー12の軸方向に延長してレンズホルダー12を貫通するガイド孔を設けるとともに、ケース11の台座11aに前記ガイド孔を貫通するガイドピンを立設して、レンズホルダー12をガイドピンに沿ってZ軸方向に移動させるなど、他の支持手段を用いてレンズホルダー12をケース11に移動可能に支持してもよい。
【0032】
また、前記例では、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dの駆動用コイル14とは反対側の面に磁気ヨーク16を設けたが、磁気ヨーク16を駆動用コイル141〜144の内周側に配置してもよい。あるいは、磁気ヨーク16を、前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dの駆動用コイル14とは反対側の面と駆動用コイル141〜144の内周側の両方に設けてもよい。なお、磁気ヨーク16は本発明の必須の要素ではないのでこれを省略してもよいが、磁気ヨーク16を設けることで、駆動用コイル141〜144に作用する前側駆動用磁石151U〜154U及び後側駆動用磁石151D〜154Dからの磁束の法線方向密度が増加するので、本例のように、磁気ヨーク16を設けることが好ましい。
【0033】
また、前記例では、被覆導線をX軸周りまたはY軸周りに巻き回して形成し駆動用コイル141〜144を用いたが、図13(a)に示すような、Z軸周りに巻き回した2本の駆動用コイル146,147を用いてもよい。この場合には、図13(b)の展開図に示すように、駆動用コイル146と駆動用コイル147とを、90°毎にZ軸方向の位置が前方側と後方側とが入れ替わるように巻き回すとともに、前側駆動用磁石151U〜154Uを駆動用コイル146,147の辺のうちのZ軸前方に位置する辺に対向するように配置し、後側駆動用磁石151D〜154Dを駆動用コイル146,147の辺のうちのZ軸後方に位置する辺に対向するように配置する。そして、駆動用コイル146,147の通電方向を逆にすれば、駆動用コイル146,147の各辺には全てZ軸前方に向いたローレンツ力、もしくは、全てZ軸後方に向いたローレンツ力が作用するので、レンズホルダー12をZ軸に沿って移動させることができる。
【0034】
なお、前記実施の形態でも、駆動用コイル141の前側の辺14uは駆動用磁石151Uの磁極面であるN極に対向し、後側の辺14dは駆動用磁石151Dの磁極面であるS極に対向しているが、Z軸周りに隣接する駆動用コイル143の前側の辺14uは駆動用磁石153Uの磁極面であるS極に対向し、後側の辺14dは駆動用磁石153Dの磁極面であるN極に対向している。そして、図3に示すように、駆動用コイル141の前側の辺14uの通電方向がZ軸方向時計回りで後側の辺14dの通電方向がZ軸方向反時計回りであるに対し、駆動用コイル143の前側の辺14uの通電方向がZ軸方向反時計回りで後側の辺14dの通電方向がZ軸方向時計回りである。Z軸周りに隣接する駆動用コイル143と駆動用コイル142、駆動用コイル142と駆動用コイル144、及び、駆動用コイル144と駆動用コイル141についても同様である。
したがって、前記実施の形態においても、図13(a),(b)と同様に、駆動用コイルの辺のうち、Z軸及び駆動用磁石の磁極面に垂直な方向に延長する辺の通電方向が当該辺に対応する駆動用磁石の極性に応じて異なっており、同じ通電方向の辺がZ軸方向の位置が90°毎に前方側と後方側とで入れ替わっている。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
10 手振れ抑制機能付レンズ駆動装置、11 ケース、11A 上ケース、
11B 下ケース、12 レンズホルダー、121〜124 レンズホルダーの側面、
13A,13B バネ部材、141〜144 駆動用コイル、
151U〜154U 前側駆動用磁石、151D〜154D 後側駆動用磁石、
16 磁気ヨーク、17 電流制御手段、18 レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、柱状もしくは筒状の可動部材と、前記可動部材を前記固定部材に揺動可能に懸架する懸架手段と、前記可動部材を前記固定部材に対して揺動させる電磁駆動手段とを備えた電磁駆動装置であって、
前記可動部材の軸線方向をZ軸方向としたときに、
前記電磁駆動手段が、Z軸方向に直交する磁極面を有しZ軸周りに均等な角度で配置される偶数個の駆動用磁石と、前記駆動用磁石に空隙を隔てて対向して配置される駆動用コイルとを備え、
前記駆動用磁石のうちの互いに隣接する駆動用磁石の極性が互いに異なっており、
前記駆動用コイルと前記駆動用磁石のいずれか一方が前記可動部材に装着され、他方が前記固定部材に装着され、
前記駆動用コイルの、Z軸及び前記駆動用磁石の磁極面に垂直な方向に延長する辺の通電方向が当該辺に対応する駆動用磁石の極性に応じて異なっていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記駆動用コイルが、Z軸に垂直な軸周りに巻き回されるZ軸及び前記駆動用磁石の磁極面に垂直な方向に延長する辺を有する偶数個のコイルから成ることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記駆動用コイルが、Z軸周りに巻き回される少なくとも1対のコイル対を備え、前記コイル対を構成する2つのコイルのZ軸方向の位置が当該コイル対に対向する駆動用磁石の極性に応じて入れ替わることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記各コイルのZ軸と直交する方向に延長する辺であって、前記駆動用磁石が向き合っている辺とは異なる辺と向き合うように配置された第2の磁石を更に備え、前記第2の磁石の前記異なる辺に対向する面である磁極面の極性が前記駆動用磁石の極性と異なっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記各コイルをそれぞれ独立に通電制御する電流制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記駆動用磁石、もしくは、前記駆動用磁石と前記第2の磁石の前記駆動用コイルに対向する面とは反対側の面側に磁気ヨークが配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電磁駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−97028(P2013−97028A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236974(P2011−236974)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(507186609)マイクロウインテック株式会社 (26)
【出願人】(502426061)大立光電股▲ふん▼有限公司 (34)
【出願人】(509035613)
【出願人】(511116177)厦▲門▼新▲鴻▼洲精密科技有限公司 (10)
【氏名又は名称原語表記】XINHONGZHOU PRECISION TECHNOLOGY CO,.LTD
【住所又は居所原語表記】No.11 Xintian Road,Xinchun,Houxi Town,Jimei District,Xiamen,China
【Fターム(参考)】