説明

電線コード

【課題】細い電線を用いて軽量化を図り、可撓性を確保しながら断線を防止できることを第一とし、できれば外観や手触りの改善を図ることのできる電線コードを提供する。
【解決手段】電線11と添え線12とを一体に第一被覆繊維13及び第二被覆繊維14を巻回した電線コード1である。
【効果】従来の電線コードでは重すぎて使えなかったり、小さく曲げることのできなかったりした場所でも、電線コードを利用できるほか、審美性が向上し、手触りもよいため、外部に露出して人の手に触れる場所でも、電線コードを利用できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード等の低電圧機器に接続する電線コードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般的な電線コードは、銅線等の導体である電線を、熱可塑性樹脂であるビニール樹脂やポリウレタン樹脂等の樹脂製の絶縁被膜で包んだ構成である(特許文献1参照。特許文献1が開示する電線コードは、カーボンナノチューブを含む実質的に炭素から構成される電線を特徴とする)。また、特許文献2に見られるように、前記樹脂製の絶縁被膜に代えて、ケイ素、炭素、チタン又はジルコニウム及び酸素から構成される無機質繊維からなる編組体で電線を包み込む構成もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-303516号公報
【特許文献2】実開平02-079518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電線コードは、外面が樹脂製の絶縁被膜であったり、ケイ素、炭素、チタン又はジルコニウム及び酸素から構成される無機質繊維の編組体であったりして、外観がいかにも電気製品の部品らしく見え、もちろん手触りがよくなかった。これは、電線コードに対する仕様要求が通電及び絶縁性で、外部に露出しない部分で使用される場合に前記仕様要求だけで問題がなく、外観や手触りがあまり気にされていなかったからである。しかし、電線コードが外部に露出し、また手に触れる部分で使用する場合、やはり外観がよく、手触りに優れていることが求められる。
【0005】
また、従来の電線コードは、軽量化のために細くしすぎると電線(特に導体)が断線しやすくなる問題があった。このため、電線コードは、軽量化が難しくなり、また小さな曲率半径で曲げる可撓性が損なわれていた。例えば発光ダイオード等の低電圧機器に接続する電線コードは、それほど電流を流す必要がないことから、できれば電線を細くし、軽量化や可撓性を確保することが望まれていた。そこで、細い電線を用いて軽量化を図り、可撓性を確保しながら断線を防止できることを第一とし、できれば外観の改善(審美性の向上)や手触りの改善を図ることのできる電線コードを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、電線と添え線とを一体に被覆繊維を巻回してなる電線コードである。本発明の電線コードは、引っ張りや曲げに添え線を対抗させ、電線が断線したり、折れ曲がったりすることを防止する。これにより、電線は可能な限り細くすることができ、電線コードとしての軽量化が実現され、可撓性も確保される。電線及び添え線は、1本又は複数本を用いる。添え線は、電線が導体を絶縁被膜に包んだ構成であれば素材の種類を問わず、電線同様、軽量かつ引っ張り強度の強い糸条が用いられ、電線が導体のみからなる構成であれば絶縁体である天然糸条又は合成糸条を用い、導体と短絡する事態を防止するとよい。
【0007】
被覆繊維は、電線に代わって引っ張りや曲げに抗する添え線と前記電線との一体性を確保すると共に、電線及び添え線を保護する働きを有する。このとき、被覆繊維を天然糸条又は合成糸条にすると、電線コードとしての外観や手触りを改善し、電線コードとしての絶縁性も確保される。また、被覆繊維は、電線と添え線とを一体に2層以上巻回するとよい。各層の被覆繊維は、互い違いに巻回方向を異ならせると、各層の被覆繊維が互いにズレを抑制できてよい。また、各層の被覆繊維の色を同じにすると、外層の被覆繊維が少しずれても内層の被覆繊維の色が同じなので、被覆繊維のズレが外部から分かりにくくなる。逆に、各層の被覆繊維の色を異ならせると、外層が少しずれた場合に色がまだらになり、審美性が高くなる。
【0008】
例えば電線コードを給電に用いる場合、+極及び−極(接地極)を結ぶ2本が用いられる。これから、本発明の電線コードは、電線と添え線とを一体に内被覆繊維を巻回してコード単位を構成し、複数のコード単位を一体に外被覆繊維を巻回して構成するとよい。複数のコード単位がそれぞれ+極及び−極(接地極)に接続される。この場合、内被覆繊維は、電線と添え線とを一体に一層のみ巻回すればよいが、外被覆繊維は、複数のコード単位を一体に2層以上巻回するとよい。各層の外被覆繊維は、互い違いに巻回方向を異ならせると、各層の外被覆繊維が互いにズレを抑制できてよい。また、各層の外被覆繊維の色を同じにすると、外被覆繊維のズレが外部から分かりにくくなり、各層の外被覆繊維の色を異ならせると、外層が少しずれた場合に色がまだらになり、審美性が高くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電線コードは、できる限り細い電線を用いながら、前記電線の断線及び折れ曲がりを添え線により防止して、軽量化や可撓性を実現する。そして、本発明の電線コードは、被膜繊維を好適に選択することで、外観の改善(審美性の向上)や手触りの改善を実現する。これにより、従来の電線コードでは重すぎて使えなかったり、小さく曲げることのできなかったりした場所でも、電線コードを利用できるようになる。更に、審美性が向上し、手触りもよいため、外部に露出して人の手に触れる場所でも、電線コードを利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した電線コードの一例を表す部分破断斜視図である。
【図2】本例の電線コードの断面図である。
【図3】本発明を適用した電線コードの別例を表す部分破断斜視図である。
【図4】別例の電線コードの断面図である。
【図5】本発明を適用した電線コードの更に別例を表す部分破断斜視図である。
【図6】更に別例の電線コードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用した電線コード1は、例えば図1及び図2に見られるように、銅線の導体111をポリウレタン被膜等の絶縁被膜112で包んだ電線11と、綿糸の添え線12とをそれぞれ1本ずつを一体に、内層にナイロン糸又はポリエステル糸の第一被覆繊維13を巻回し、更に外層に同じナイロン糸又はポリエステル糸の第二被覆繊維14を巻回して構成される。本例の電線コード1は、最も簡素な構成であり、本発明の構成において最も軽量かつ柔軟な構成にできるが、通電する電線11が1本であるため、例えば給電に用いる場合、+極及び−極(接地極)を結ぶため、2本1組で利用される。
【0012】
本例の電線コード1は、電線11の絶縁被膜112や第一被覆繊維13及び第二被覆繊維14がいずれも半田溶融温度で溶融する樹脂で、添え線12は前記半田溶融温度で炭化する木綿である。これから、半田付けにより本例の電線コード1を結線する際、第一被覆繊維13及び第二被覆繊維14を解したり、添え線12を切断分離したり、電線11から絶縁被膜112を剥がしたりする必要がなく、結線部位(例えば基板回路の端子等)に電線コード1の先端を宛てがって直ちに半田付けできる。このとき、前記結線部位近傍で電線コード1を結わえておくと、電線コード1を引っ張った際に半田付けした結線部位に負荷が掛からなくなり、結線部位において断線しにくくなる。
【0013】
添え線12は、細くすることで断線しやすくなった電線11の保護、特に引っ張り強度の補強の働きが求められるため、高強度アラミド繊維を複数本用いる構成にしてもよい。木綿である本例の添え線12は、必要な引っ張り強度を確保するため、電線11に対して相対的に外径が大きくなる(図2参照)ものの、軽量かつ可撓性に富むため、電線11と第一被覆繊維13との隙間を満たし(図2参照)、電線11との密着度を上げて前記電線11を保護しやすくなる利点のほか、入手が容易かつ安価な利点がある。
【0014】
第一被覆繊維13は、撚糸カバーリング技術を利用し、電線11及び添え線12を一体にして隙間なく螺旋状に巻回する。また、第二被覆繊維14は、同じく撚糸カバーリング技術を利用し、電線11及び添え線12に巻回した前記第一被覆繊維13に対して隙間なく螺旋状に、前記第一被覆繊維13と逆向きに巻回する。第一被覆繊維13は、主に電線11及び添え線12を一体に束ねる働きを有し、第二被覆繊維14は、前記第一被覆繊維13がずれないようにする働きを有する。このため、第一被覆繊維13及び第二被覆繊維14は、基本的には互い違いに巻回する(図1及び図2参照)。このとき、外部に露出する第二被覆繊維14を綿糸等の天然糸条を用いると、電線コード1の外観や手触りが通常糸のような自然な風合いにできる。
【0015】
本発明の電線コード2は、別に図3及び図4に見られるように、電線コード21を複数にしてもよい。別例の電線コード2は、導体211を絶縁被膜212で包んだ電線21を3本と、添え線22を1本とを一体に、内層に第一被覆繊維23を巻回し、外層に第二被覆繊維24を巻回した構成である。別例の電線コード2は、電線21が複数本あるので、例えば第一被覆繊維23及び第二被覆繊維24を解して露出させた電線21を、それぞれ+極及び−極(接地極)に割り当てて結線できる。別例の電線コード2において、図示を省略するが、電線11に代え、又は電線11と共に、添え線22を複数本にしてもよい。
【0016】
本発明の電線コード3は、更に別に図5及び図6に見られるように、それぞれに電線31を備えたコード単位35を複数内蔵する構成にもできる。各コード単位35は、導体311を絶縁被膜312で包んだ電線31を3本と、添え線32を1本とを一体に内被覆繊維351を券回して交差入れる。更に別例の電線コード3は、前記コード単位35を2本一組として、内層に第一外被覆繊維33を巻回し、外層に第二外被覆繊維34を巻回した構成である。更に別例の電線コード3は、各コード単位35をそれぞれ+極及び−極(接地極)に割り当てて結線できる。また、更に別例の電線コード3は、電線31の数が非常に多いので、更に複雑な信号を送受信する通信コードとしても利用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 電線コード
11 電線
12 添え線
13 第一被覆繊維
14 第二被覆繊維
2 電線コード
21 電線
22 添え線
23 第一被覆繊維
24 第二被覆繊維
3 電線コード
31 電線
32 添え線
33 第一外被覆繊維
34 第二外被覆繊維
35 コード単位
351 内被覆繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と添え線とを一体に被覆繊維を巻回してなる電線コード。
【請求項2】
被覆繊維は、電線と添え線とを一体に2層以上巻回してなる請求項1記載の電線コード。
【請求項3】
電線と添え線とを一体に内被覆繊維を巻回してコード単位を構成し、複数のコード単位を一体に外被覆繊維を巻回してなる電線コード。
【請求項4】
外被覆繊維は、複数のコード単位を一体に2層以上巻回してなる請求項3記載の電線コード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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