説明

電線供給装置

【課題】作業者の負担を軽減するとともに、多品種少量生産に適した電線供給を可能にする電線供給装置を提供する。
【解決手段】供給装置本体16に複数個設けられた筒状の受箱部15と、受箱部15内に挿脱可能に収容される箱状のケース部、及び電線が巻かれた電線ドラムをケース部内で回動可能に支持するドラム支持部を有するカセット式電線繰出し部30とを具備する。また、供給装置本体16は、夫々の挿入口23が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、複数の受箱部15を所定の水平面に沿ってループ状に配列し、そのループ状を維持したまま水平面上で回転させる回転式供給ユニット169と、複数組の回転式供給ユニット169を所定の間隔で上下方向に積層した電線供給積層体と、それを昇降させる昇降装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線供給装置に関するものであり、特に、電線の端末加工処理を行う端末処理装置に対して多種類の電線を供給することが可能な電線供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末処理装置として、電線の端部の被覆材を除去し、その端部に端子を圧着するとともに、電線を所定の長さに切断する端子圧着装置が知られている。この端子圧着装置の中には、電線の先端部と後端部の両方に端子を圧着することのできるものもある。
【0003】
具体的には、図10に示すように、端子圧着装置101は、電線癖取装置102と、電線Lの先端側及び後端側に端子を圧着させるための第一圧着機構103,第二圧着機構104と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構105と、電線Lの先端側を第一圧着機構103に送り込む電線送込み機構106と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構104に送り込むチャック機構(図示しない)と、端子Tを圧着し終えた電線Lを蓄えた後に所定数の電線Lを纏めて外部へ排出する排出装置(図示しない)とを備えている。
【0004】
第一圧着機構103と第二圧着機構104とは基本的な構成が等しく、端子を圧着するためのアプリケータ109がフレーム部材110に取付けられている。つまり、フレーム部材110の側面には、切欠き111が形成され、その切欠き111内にアプリケータ109が取付けられている。詳しくは、切欠き111の上方にはアプリケータ109の上側ユニット112が、また、切欠き111の下方には、アプリケータ109の下側ユニット113が夫々取付けられている。
【0005】
また、電線送込み機構106は、電線取込みガイド157、電線Lの長さを測長するエンコーダ158、及び、所定距離離間して配置される一対のローラ159等から構成されている。(特許文献1参照)。
【0006】
一方、端子圧着装置101に電線を供給する方法として、例えば互いに異なる電線が巻かれた複数の電線ドラムを備え、複数の電線ドラムの中から加工処理する電線を、手作業で端子圧着装置101に供給することが一般的に行われている。つまり、電線ドラムに巻かれた電線の先端を、端子圧着装置101の電線癖取装置102を通して電線送込み機構106にセットする方法であり、その後は、電線送込み機構106の設けられた一対のローラ159の動力(引張操作)によって、電線ドラムから電線を繰出させることができる。
【0007】
ところで、電気製品には配線用の被覆電線が数多く使用されている。これらの被覆電線は、銅等で形成された芯線と、塩化ビニール等の樹脂で形成され芯線を絶縁するための被覆とから構成され、配線場所、用途、消費電力、及び接続方法等の使用条件に適するように、その全長、芯線の直径、及び芯線の露出長さ等が夫々設定される。
【0008】
また、複数の電気部品を電気的に接続するために、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスが使用されることもある。そして、このワイヤーハーネスでは複数の色(例えば13色)の被覆電線が用いられている。
【0009】
なお、近年、電気製品の多品種化に伴い、それに使用される被覆電線の種類も極めて多様になってきており、しかも在庫をもたずに適切なタイミングで適切な分だけ納品できるように少量生産が一般的に行われている。特に車両に用いられるワイヤーハーネスでは、複数の色の被覆電線を単品生産することも要望されている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−166399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の電線供給方法では、電線の種類が変わるごとに電線を手作業で掛け換える作業が必要となることから、端子圧着装置の稼動率が大幅に低下していた。具体的には、端子圧着装置101の加工処理能力が3000本/時間であっても、電線の掛け換えに1分間要する場合には、1時間当りの生産量は60本以下となっていた。つまり、多品種少量生産の場合、生産性が極めて悪くなり、ひいては製造コストの増加、及び作業者の負担の増加が問題となっていた。
【0012】
また、一般の電線ドラムは比較的大型であることから、それらを数多く並べるには極めて広いスペースが必要となり、設備の導入が困難となっていた。また、電線ドラムに巻かれている電線が残り少なくなった場合には、新たな電線ドラムと交換しなければならないが、この際、大きな電線ドラムを現場で取外したりセットしたりする作業が必要となり、稼動率の低下、及び作業者の負担の増加が助長されていた。
【0013】
また、現場に十分な配設スペースがない場合には、一つまたは頻繁に使用する電線ドラムのみを端子圧着装置の近傍に配置し、残り全ての電線ドラムを倉庫や収納庫で保管しておくことも一般的に行われているが、これによれば、保管された電線ドラムを使用する際に、倉庫等から端子圧着装置の近傍まで電線ドラムを搬送しなければならず、電線の掛け換えが完了するまでに一層長い時間を要していた。
【0014】
なお、収納庫に保管された複数の電線ドラムの中から加工処理する電線ドラムを適宜選択し、その電線ドラムを端子圧着装置まで自動で搬送しセットする装置、所謂、自動搬送システムを構築することも考えられるが、これのようなシステムは極めて大掛かりな設備となり、膨大な費用が必要となる。
【0015】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、作業者の負担を軽減するとともに、多品種少量生産に適した電線供給を可能にする電線供給装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる電線供給装置は、「電線の端末処理装置に対して電線を供給するための供給装置本体と、
該供給装置本体に複数個設けられ、少なくとも一端側に挿入口を有する筒状の受箱部と、
前記挿入口を介して前記受箱部内に挿脱可能に収容される箱状のケース部、電線が巻かれた電線ドラムを前記ケース部内で回動可能に支持するドラム支持部、及び、前記ケース部に設けられ、前記電線ドラムに巻かれた電線を前記ケース部における所定の部位から一定方向に繰出させる電線ガイド部を有するカセット式電線繰出し部と
を具備し、
前記供給装置本体は、夫々の前記挿入口が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、前記複数の受箱部を所定の水平面に沿ってループ状に配列し、該ループ状を維持したまま前記水平面上で回転させる回転式供給ユニットと、
複数組の該回転式供給ユニットを所定の間隔で上下方向に積層した電線供給積層体と、
該電線供給積層体を昇降させる昇降装置と
を備える」ものである。
【0017】
ここで、「端末処理装置」としては電線の端部に端子を圧着する端子圧着装置を例示することができる。「回転式供給ユニット」における駆動源の構成としては特に限定されるものではないが、ループ状を維持したまま平面上で回転させる無端のチェーンと、そのチェーンに回転力を付与するモータとから構成することができる。
【0018】
本発明の電線供給装置によれば、電線ドラムがドラム支持部によって支持されると、電線ドラムをケース部内で回動させることが可能になる。電線ドラムから延出された電線は、電線ガイド部を通ってケース部の外部へ配線されているため、ケース部の外部において、ケース部から突出した電線の先端部分を引張れば、電線ドラムに巻かれた電線をケース部外へ繰出させることが可能になる。また、このケース部は、カセット式電線繰出し部を構成しており、供給装置本体に設けられた筒状の受箱部内に収容させることが可能となっている。そして、カセット式電線繰出し部が受箱部内に収容されると、その受箱部から電線を繰出すことが可能になる。特に、供給装置本体には複数の受箱部が設けられているため、供給装置本体から互いに異なる種類の電線を随時供給することが可能になる。
【0019】
特に、カセット式であるため、供給装置本体に電線ドラムを装着する作業が極めて容易になる。また、決められた位置から一定の方向に電線が繰出されるため、電線の円滑な受渡しが可能になる。さらに、電線ドラムを交換する際には、受箱部からカセット式電線繰出し部を取出し、そのケース部内に収容された電線ドラムを交換することとなるため、安全な場所での交換作業が可能になるとともに、電線ドラムの交換作業中であっても、他の電線ドラムが収容された受箱部から電線を供給し続けることが可能になる。
【0020】
また、供給装置本体には回転式供給ユニットが設けられており、複数の受箱部は、夫々の挿入口が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、所定の水平面に沿ってループ状に配列されている。そして、複数の受箱部は、そのループ状を維持したまま水平面上で回転する。また、複数の回転式供給ユニットが所定の間隔で積層され、電線供給積層体を構成するとともに、その電線供給積層体が昇降装置によって昇降可能となっている。このため、回転式供給ユニットの駆動源及び昇降装置をともに動作させることにより、水平面に沿って配置された複数の受箱部のみではなく、それらを上下方向に重ねた数多くの受箱部を、所定の取出位置まで移動させることが可能になる。また、複数のカセット式電線繰出し部を規則正しく配列することができ、しかも比較的簡易な構造で支持することが可能になる。したがって、狭いスペースでも数多くの電線ドラムを保持することが可能となり、ひいては電線供給装置の小型化が可能になる。特に、複数の受箱部を水平面上で回転させる回転式供給ユニットの駆動源と、電線供給積層体を昇降させる昇降装置とを別々に構成しているため、回転及び昇降を同時に行うことが可能になり、選択された回転ドラムを所定の取出位置まで速やかに移動させることが可能になる。従って比較的安価に製造できるとともに、装置を一層小型化させることができる。
【0021】
また、本発明の電線供給装置において、「夫々の前記回転式供給ユニットは、前記水平面に沿って配設され複数のスプロケットに巻き掛けられた無端のチェーンと、いずれか一つの前記スプロケットを介して前記チェーンに回転力を付与する回動駆動源とを有し、
複数の前記受箱部は、前記チェーンの外周縁に沿って所定の間隔で配置され、前記チェーンに対して放射状に連結されている」構成とすることができる。
【0022】
本発明の電線供給装置によれば、モータ等の回動駆動源が動作すると、その回転力がチェーンに付与され、チェーンは、スプロケットに巻き掛けられたまま回転する。チェーンの外周縁には所定の間隔で複数の受箱部が放射状に連結されているため、複数の受箱部をループ状に維持したまま水平面上で回転させることが可能になる。特に放射状になるように連結されていることから、受箱部における電線の繰出し側からカセット式電線繰出し部を挿入させることが可能になり、例えば電線供給装置の前面を化粧板等で塞いだ場合でも、夫々の受箱内に対して、電線供給装置の背面側から電線ドラムを容易に着脱させることが可能になる。
【0023】
なお、上記の構成を採用する場合には、「夫々の前記回転式供給ユニットは、前記複数の受箱部を回転可能に載置する載置板をさらに備え、
前記受箱部の底面には、前記載置板上で転動する複数のローラが設けられている」ことが好ましい。
【0024】
これによれば、夫々の回転式供給ユニットでは、複数の受箱部が載置板の上に載置され、受箱部のみが回転するようになっている。つまり、載置板は回転せず、複数の受箱部が互いに連結された状態で回転(旋回)するようになっている。このため、載置板の平面視形状を略長方形とし、複数の受箱部を略長方形状(または楕円形状)に配置することが可能になる。そして、このような形状を採用した場合には、回転式供給ユニットを直方体形状に形成することが可能となり、ひいては加工現場等における電線供給装置の配置場所を効率よく用いることができる。つまり、載置板が円板状であれば、周囲に無駄なスペースが生じ易いが、長方形の載置板とすることにより、例えば装置の側面を部屋の壁面に当接させる等、無駄なスペースを生じさせることなく効率的に空間を用いることが可能になる。また、受箱部の底面には、載置板上で転動可能な複数のローラが設けられているため、載置板上での摩擦抵抗を低減し、滑らかに摺動させることができる。
【0025】
さらに、受箱部及びそれに収容されたカセット式電線繰出し部の荷重が、チェーンに加わらないため、荷重によるチェーンの撓みを防止するとともに、回転負荷の増大による駆動源の大型化を抑制することが可能になる。また、安定した状態で回転させることが可能になる。
【0026】
また、本発明の電線供給装置において、「前記回動駆動源及び前記昇降装置を制御し、複数の前記受箱部の中から供給対象として指示された電線の受箱部を所定の取出位置まで移動させる移動制御手段と、
前記取出位置に配置された前記受箱部と対向し、該受箱部に収容されている前記カセット式電線繰出し部から延出された電線を、引張って繰出させるとともに、該電線の先端部分を前記端末処理装置に供給する電線送り機構と
をさらに備える」ようにしてもよい。
【0027】
ここで、「電線送り装置」の構成は特に限定されるものではないが、例えば、回転することにより電線を挟持して送る一対の送りローラと、その送りローラによって送られる電線を一定方向に案内する筒状の案内部材とから構成することができる。また、電線の先端部分を挟持可能なチャック部と、端末処理装置と供給装置本体との間に配設されチャック部をスライド可能に支持する支持杆と、その支持杆に沿ってチャック部を摺動させる駆動源とから構成するようにしてもよい。
【0028】
本発明の電線供給装置によれば、複数の受箱部の中から一つの受箱部が供給対象として指示されると、移動制御手段は回動駆動源及び昇降装置を制御し、指示された受箱部を所定の取出位置まで移動させる。また、取出位置に対向するように電線送り装置が設けられており、電線送り装置は、取出位置のカセット式電線繰出し部から電線を引張って繰出させるとともに、その電線の先端部分を端末処理装置に受渡す。
【0029】
このように、選択された一つの受箱部を所定の取出位置に移動させる動作、及びカセット式電線繰出し部から延出された電線を端末処理装置に受渡す動作、を機械的に行うため、一連の作業を自動化することができ、作業者の負担を軽減するとともに、加工すべき電線を間違いなく且つ速やかに供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明の電線供給装置によれば、作業者の負担を軽減するとともに、多品種少量生産に適した電線の供給を行うことができる。また、複数の受箱部を水平面上で回転させる回転式供給ユニットの駆動源と、電線供給積層体を昇降させる昇降装置とを別々に構成しているため、回転及び昇降を同時に行うことが可能になり、選択された回転ドラムを所定の取出位置まで速やかに移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態である電線供給装置を備えた電線処理システムについて、図1乃至図9に基づき説明する。図1は本実施形態の電線処理システムの概略構成を示す模式図であり、図2は電線供給装置の構成を示す平面図であり、図3は電線供給装置の構成を示す正面図であり、図4は電線供給装置の構成を示す底面図であり、図5は電線供給装置における受箱部の構成を示す斜視図であり、図6は受箱部及びカセット式電線繰出し部の構成を示す分解斜視図であり、図7はカセット式電線繰出し部の構成を示す平面図であり、図8は電線送り装置における要部の構成を説明するための概念図であり、図9は電線供給制御に関する機能的構成を示すブロック図である。
【0032】
図1に示すように、電線処理システム1は、電線の端部の被覆材を除去し、その端部に端子を圧着するとともに、電線を所定の長さに切断する端子圧着装置2と、端子圧着装置2に対して、多種類の電線を供給することを可能にする電線供給装置3と、電線供給装置3から電線を繰出させるとともに電線の先端部分を端子圧着装置2に受渡す電線送り装置4と、を具備して構成されている。ここで、端子圧着装置2が本発明の端末処理装置に相当する。
【0033】
端子圧着装置2としては、図10に基づいて先に説明した従来の端子圧着装置101と略同様の構成が採用され、加工中の電線Lの向きを変えることなく、直線状に電線Lを送りながら加工することが可能になっている。すなわち、図1に示すように、端子圧着装置2は、電線Lの先端側に端子を圧着させるための第一圧着機構103と、電線Lの後端側に端子を圧着させるための第二圧着機構104と、電線Lの端部の被覆材を除去する切断刃を有する第一切断機構105aと、電線Lを切断する切断刃を有する第二切断機構105bと、電線Lの先端側を第一圧着機構103に送り込む電線送込み機構106とを具備している。また、従来の端子圧着装置101に設けられていない新たな構成として、第二圧着機構104の下流側に配設され、電線Lを挟持し回転によって送ることが可能な一対の送りローラ110が備えられている。
【0034】
電線送込み機構106は、電線取込みガイド157、電線Lの長さを測長するエンコーダ158、所定距離離間して配置される一対のローラ159、及び電線Lの先端が通過したことを検出する先端検出センサ160等から構成されている。なお、一対のローラ159は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、また、ローラ159は、ローラ駆動手段(図示しない)により回転駆動され、回転方向及び回転数を制御することにより、電線Lを任意の長さ送るとともに、エンコーダ158によるフィードバック制御も行われている。
【0035】
なお、図10に示す従来の端子圧着装置101では、電線の曲り癖等を矯正する電線癖取装置102が備えられていたが、本例の端子圧着装置2には電線癖取装置が設けられておらず、電線供給装置3内において癖取りが行われるようになっている(詳細は後述する)。
【0036】
電線供給装置3は、図2〜図4に示すように、平面視が横長の八角形である金属製の架台枠165内に収容されており、主に、電線供給積層体166と、電線供給積層体166を昇降させる昇降装置167と、架台枠165の底面中央から立設された支持枠部材170と、を具備する供給装置本体16から構成されている。電線供給積層体166は、複数の回転式供給ユニット169を所定の間隔で上下方向に積層したものであり、直方体形状の支持枠部材170を囲むように設けられている。
【0037】
図2を基に、回転式供給ユニット169について詳細に説明する。この回転式供給ユニット169は、枠状の内側載置面171及び格子状の外側載置面172からなる板状の載置板173と、外側載置面172上に載置された複数の受箱部15と、内側載置面171上に載置され受箱部15を可動させる駆動機構11とを備えている。駆動機構11は、外側載置面172の外縁に沿ってループ状に配列された複数の受箱部15を、ループ状を維持したまま旋回させるとともに、複数の受箱部15の中から選択された一つの受箱部15を所定の取出位置、例えば、図1においては「A」位置まで移動させるものである。詳しく説明すると、電線供給装置3は、夫々の受箱部15における挿入口23(詳細は後述する)が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、複数の受箱部15を外側載置面172に沿って放射状に配列しており、選択された所定の受箱部15が取出位置Aに位置するように、放射状を維持したまま水平面上で回転させる構成となっている。具体的に、駆動機構11は、水平面に沿って配設され四つのスプロケット12と、それらのスプロケット12に巻き掛けられた無端のチェーン13と、いずれか一つのスプロケット12を介してチェーン13に回転力を付与するモータ17とを有している。なお、モータ17の回転軸18と一つのスプロケット12とが無端のベルト19によって連結されており、モータ17の回転力がベルト19を介してチェーン13に伝達されるようになっている。ここで、モータ17が本発明の回動駆動源に相当する。
【0038】
なお、夫々の受箱部15は、連結金具184を介してチェーン13に連結されている。図示しないが、チェーン13は、一対のローラと、これらのローラを夫々ピンを介して回転可能に支持する外側リンクと、これらを互いに連結する内側リンクとからなる、一般的なローラチェーンが使用されている。連結金具184は、チェーン13の外側から嵌合された断面略コ字形の部材からなり、チェーン13における複数のローラを上下から挟むように取付けられている。このように、複数のローラにわたって連結金具184を取付けることから、受箱部15が接続される部分は、スプロケット12に螺合させながらも直線状に保持され、受箱部15を安定して支持させることを可能にしている。つまり、受箱部15を回転させる際に、受箱部15が連結金具184を中心に振れたり、傾いたりすることを防止している。なお、連結金具184がスプロケット12の周囲に位置した状態(すなわち駆動機構11の四隅に位置した状態)と、スプロケット12から離れた状態とでは、チェーン13における全周の長さが僅かに変化する場合があるが、本例では、スプロケット12を水平方向に摺動可能に支持するとともに、そのスプロケット12を外側に向って付勢する長さ調節機構(図示しない)を備えており、チェーン13の長さに拘らず、チェーン13に適度のテンションを加えている。
【0039】
また、内側載置面171には、チェーン13の内周面に接するように、複数のチェーン受けローラ183が所定間隔で配置されており、チェーン受けローラ183は鉛直方向を軸方向として夫々回転するようになっている。つまり、受箱部15にカセット式電線繰出し部30(後述する)を挿入する際でも、このチェーン受けローラ183によって、チェーン13の撓みを防止している。また、内側載置面171には、複数の回転式供給ユニット169を所定の間隔で積層するために、複数のスペーサ185が、内側載置面171の内周縁に沿って所定の間隔で配置されている。このスペーサ185は、内側載置面171の上面から立設されており、受箱部15の高さよりも高く形成されることにより、受箱部15の上面と、その上段の回転式供給ユニット169における載置板173とが当接しないようになっている。
【0040】
一方、図3に示すように、昇降装置167は、載置板173を貫通するとともに載置板173に固定された四つの軸受部174と、夫々の軸受部174に螺合され回転によって軸受部174を昇降させることが可能な四本の送りネジ部175と、これらの送りネジ部175を任意の方向に回転させる一対のモータ177とを具備して構成されている。なお、送りネジ部175は、上端が支持枠部材170の上面に取付板176を介して支持され、下端は架台枠165の底板178を貫通して支持されている。なお、図4に示すように、底板178を貫通する送りネジ部175の下端にはプーリ179が嵌着されており、底板178を貫通するモータ177の回転軸180と無端のベルト181によって連結されている。このため、二つのモータ177が動作すると、ベルト181を介して四本の送りネジ部175が同一速度で同一方向に回転し、軸受部174が取付けられた載置板173を昇降させる。なお、軸受部174が設けられている回転式供給ユニット169は、電線供給積層体166の最下段に配置された回転式供給ユニット169のみであり、その他の回転式供給ユニット169には、送りネジ部175が挿通する貫通孔(図示しない)が穿設されている。つまり、昇降装置167によって駆動力が付与されるのは最下段の回転式供給ユニット169のみであり、その回転式供給ユニット169が昇降すると、その上に積層された全ての回転式供給ユニット169、すなわち電線供給積層体166全体が一体的に上下方向に移動するようになっている。
【0041】
図5及び図6に示すように、受箱部15は、略直方体形状を呈する筒状の部材であり、一端側の側面にはカセット式電線繰出し部30を挿入させるための挿入口23が設けられている。また、受箱部15の挿入口23側には、固定部24aを支点として外方に弾性変形可能な係止部材24が設けられており、弾性力に抗して係止部材24を手で外方に撓ませることによりカセット式電線繰出し部30の挿脱が可能となり、カセット式電線繰出し部30を受箱部15内に挿入した後、係止部材24から手を離すと、係止部材24は弾性力によって元の状態に戻り、先端の爪部24aによって受箱部15からカセット式電線繰出し部30(以下、単に「カセット部30」と称す)が脱離することが防止されるようになっている。
【0042】
また、受箱部15の内底面には、カセット部30の挿入位置を規制するストッパー25が突設されている。このストッパー25は、略G字形の部材であり、端部側25aのみが固定され、一端が切欠かれた中央側の片部25bは挿脱方向に対して弾性変形可能となっている。つまり、受箱部15内にカセット部30が挿入されると、その端部が片部25bに当接し、片部25bを弾性変形させた状態、すなわちカセット部30を挿入口23側に向って押圧した状態となる。なお、この際、カセット部30の先端は係止部材24によって係止されるため、受箱部15が挿入口23から飛び出すことはなく、カセット部30の先端が挿入口23に一致した状態で保持される。一方、解除操作によって係止部材24が弾性変形すると、係止部材24の係止状態が解消され、カセット部30はストッパー25における片部25bの弾性力によって挿入口23から押し出される。これにより、カセット部30を容易に引き出しことが可能になる。
【0043】
また、受箱部15の底面には、複数のローラ110(図3参照)が転動可能に設けられており、複数の受箱部15を載置板173上で滑らかに移動させることが可能となっている。
【0044】
一方、カセット部30は、図6及び図7に示すように、底板31とその両側から立設された一対の側面板32とを有する断面略コ字形のケース部33と、一対の側面板32の上面に架け渡され、電線Lが巻かれた電線ドラム36を回動可能に支持するドラム支持部38とを具備して構成されている。なお、電線ドラム36の大きさは特に限定されるものではないが、本例では、直径が約15〜20cmで、幅が約5〜10cmである比較的小型のドラムが用いられている。
【0045】
また、図7に示すように、カセット部30は、電線ドラム36に圧接し電線ドラム36の回転を制動する制動部材39と、電線Lを繰出す際、電線ドラム36に対する制動部材39の圧接状態を解除する制動解除機構40とを具備している。具体的には、制動部材39は、電線ドラム36に圧接し電線ドラム36との間で摩擦力を発生させる圧接部48を備えている。圧接部48は、全体的に逆U字形の形状を呈した板バネ状の部材からなり、一端側が取付部材47を介して底板31に固定され、他端側が側面板32に沿って延出された操作杆46に連結されている。操作杆46は、長手方向に摺動可能な状態で支持されており、圧接部48が電線ドラム36に当接する位置(制動位置)と、電線ドラム36から離れる位置(解除位置)との間でスライドさせることが可能になっている。また、一定方向(圧接部48が電線ドラム36に圧接する方向)に付勢する弾性体(図示しない)が取付けられている。
【0046】
制動解除機構40は、操作杆46上で回動可能に支持された可動ローラ51から構成されている。そして、電線ドラム36から延出された電線Lは、可動ローラ51を経由してガイドローラ41に掛けられているため、電線Lをカセット部30から繰出す際、電線Lに引張り力が作用すると、可動ローラ51には電線ドラム36側に向う力が作用し、その力によって操作杆46は、弾性体の弾性力に抗して変位することとなる。つまり、電線Lを繰出す際の引張り力が所定量よりも大きくなると、操作杆46が変位して圧接部48によるロック状態が解除される。換言すれば、電線Lの繰出し操作が行われるまでは、制動状態が維持され電線ドラム36の回転が防止されるが、電線Lの繰出し操作が行われると、制動状態が解除され電線ドラム36の回転負荷が軽くなる。
【0047】
また、カセット部30には、ケース部33内に、ガイドローラ41と癖取り部42とが設けられている。癖取り部42は複数のローラを組合せてなり、夫々のローラ間で張力を作用させることにより、電線Lのねじり癖や曲がり癖を矯正している。また、ケース部33には、電線ドラム36に巻かれた電線Lをケース部33の先端部分から一定方向に繰出させる電線ガイド部43が設けられている。この電線ガイド部43は円錐筒状であり、先端から真直ぐに電線Lを突出させることが可能となっている。
【0048】
さらに、カセット部30におけるケース部33の先端側(図7では上端側)には、カセット部30を持ち運ぶ際に把持される円柱状の把持部55が設けられ、把持部55の表面には、夫々のカセット部30に付与された識別番号を記憶したバーコード56が貼着されている。このバーコード56に記憶された識別番号は、電線Lの種別に関する情報、具体的には、夫々の電線ドラム36に巻かれた電線の色、電線の径、及び被覆材の材質と、対応付けられており、後述する情報読出制御手段86(具体的にはバーコードリーダー)によって識別番号を読出すことにより、電線Lの種別に関する情報を認識することが可能となっている。なお、バーコード56の代りにICチップを設け、電線Lの種別に関する情報を書込み及び読出し可能に記憶させるようにしてもよい。なお、ICチップでは、高周波などの電波を受信すると、その電波を電気に変換して蓄え、その電力が所定量に達すると、ICチップの記憶部に情報を書込んだり、情報を発信したりすることが可能になる。
【0049】
一方、図1に示すように、電線送り装置4は、送り機構本体60とガイドユニット61とを具備して構成されている。送り機構本体60は、所定の取出位置Aとガイドユニット61との間に配置されるとともに、矢印Yの方向に摺動可能に支持された可動ベース板62と、可動ベース板62を駆動させる動力源(図示しない)と、可動ベース板62上で鉛直方向の軸を中心として回転する一対の送りローラ63とを備えている。なお、一対の送りローラ63は、所定距離離間して配置され、電線Lを挟持しながら繰出させるものである。また、一対の送りローラ63は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、離反させることにより一対の送りローラ63の間に電線Lを挿脱させることが可能になり、接近させて回転させることにより電線Lを繰出させることが可能になる。
【0050】
また、可動ベース板62には、一対の第二切断刃53が配設されており、繰出された電線Lを、端子圧着装置2から送信された指令に基づいて切断するようになっている。これによれば、電線供給装置3から繰出された電線Lを根元側である電線供給装置3内で切断することにより、電線Lを交換する場合でも、既に繰出されている電線Lを電線ドラム36に巻き戻す等の処理が不要となり、カセット部30内での構成を簡素化することが可能である。
【0051】
また、可動ベース板62には、電線Lの先端位置を検出する先端検出センサ64が設けられており、この先端検出センサ64で電線Lが検出された時点を基準として、繰出される電線Lが測長されるようになっている(詳細は後述する)。
【0052】
さらに、可動ベース板62の先端面には、取出位置Aのカセット部30に向って突出した突起部が形成されており、その先端部分に位置決めローラ65が回転可能に支持されている。この位置決めローラ65は、可動ベース板62をカセット部30側に摺動させた際に、ケース部33の底板31に形成された略三角形状の切欠57(図7参照)内に挿入されるものであり、取出位置Aにおけるカセット部30を、位置決めローラ65を基準とした正規の位置までスライドさせることにより、カセット部30から突出する電線Lを、一対の送りローラ63に対向させることが可能になる。なお、切欠57に位置決めローラ65が挿入された状態では、受箱部15の位置も固定されることから、位置決めローラ65は受箱部15の回転止めとしても機能している。
【0053】
図8に示すように、ガイドユニット61は、送り機構本体60の送りローラ63によって繰出される電線Lを、端子圧着装置2に案内するものである。具体的には、一対の側壁の間に電線Lが通過するスペースを有する案内箱87と、案内箱87の上部に固定され電線Lの送り方向に延びる上側案内部材88と、上側案内部材88の下方に配置され上側案内部材88と平行に延びる下側案内部材89とを具備して構成されている。特に、下側案内部材89における出口側(端子圧着装置2側)の端部付近は、軸支部材90によって回動可能に支持されており、実線で示す直線案内位置と二点鎖線で示す可撓案内位置との間で変位するように回動駆動源98(図9参照)に連結されている。ここで、直線案内位置とは、下側案内部材89における入口側(送り機構本体60側)の端部を送り機構本体60の送りローラ63に対向させた位置であり、この位置に変位すると、送りローラ63から繰出される電線Lを真直ぐ直線状に案内することが可能になる。一方、可撓案内位置とは、下側案内部材89における入口側の端部を垂下させ送りローラ63から離間させる位置であり、この位置に変位すると、送りローラ63から繰出される電線Lを、送りローラ63と端子圧着装置2との間で撓ませることが可能になる。つまり、送りローラ63と下側案内部材89との間において、繰出された電線Lを余剰させることが可能になる。
【0054】
次に、電線Lの供給制御に関する機能的構成、及びその作用を、図9に基づき説明する。なお、これらの機能的構成は、中央演算装置としてのCPU、読み出し専用メモリとしてのROM、読み書き可能メモリとしてのRAM等により実現されている。端子圧着装置2には、電線ドラム選択手段70が設けられており、加工処理する電線Lに対応した電線ドラムを、複数の電線ドラム36の中から選択する。具体的には、夫々の受箱部15には予め番号が付与されているため、各受箱部15の番号を特定することで、一つの電線ドラム36を選択する。
【0055】
電線ドラム選択手段70によって選択された受箱部15の番号は、送受信制御手段71によって電線供給装置3に送信される。すると、電線供給装置3では、その番号が送受信制御手段83によって受信され、電線供給制御手段84に送られる。電線供給制御手段84は、回転位置制御手段85によってモータ17を駆動するとともに、昇降位置制御手段190によってモータ177を駆動し、電線ドラム選択手段70によって特定された受箱部15が所定の取出位置に位置するように制御する。なお、特定された受箱部15が、取出位置に対向する回転式供給ユニット169に含まれている場合には、モータ177を駆動させることなく(すなわち電線供給積層体166を昇降させることなく)、モータ17のみを駆動し、受箱部15が含まれる回転式供給ユニット169を回転させる。また、電線ドラム選択手段70によって特定された受箱部15と取出位置との高さのみが異なる場合には、モータ17を駆動させることなく(すなわち回転式供給ユニット169)を回転させることなく)、モータ17のみを駆動し、受箱部15が含まれる回転式供給ユニット169を取出位置に対向する高さまで昇降させる。ここで、電線供給制御手段84が本発明の移動制御手段に相当する。
【0056】
なお、モータ17は正転及び反転が可能であり、現在取出位置に位置する受箱部15と、選択された受箱部15との位置関係を基に回転方向を決定する。すなわち、回転角度が少なくなるように回転方向を決定する。なお、各受箱部15の位置はモータ17及びモータ177の回転量を検出するエンコーダ(図示しない)によって認識されるようになっている。
【0057】
また、電線供給装置3には、カセット部30のケース部33に取付けられたバーコード56から識別番号を読出す情報読出手段86(バーコードリーダを有する)が設けられており、取出位置の受箱部15に収容されている電線ドラム(または電線)に関しての情報(具体的には電線の色、電線の径、及び被覆材の材質、さらには電線ドラム36に巻かれた電線Lの初期長さ)を、バーコード56に記録された識別番号と、その識別番号に対応付けて予め記憶されている情報とを基に取得する。この情報は送受信制御手段83を介して端子圧着装置2に送信され、端子圧着装置2に設けられた電線表示手段72によってディスプレイに表示される。なお、電線ドラム36に関する情報は、電線ドラム36に電線が巻かれる毎に、識別番号と対応づけて記憶させるようにしてもよいが、電線Lの初期長さのみが毎回変化し、その他の情報が一定の場合には(すなわち、夫々のカセット部30に収容される電線Lの種類が変化しない場合には)、電線Lの初期長さに関する情報のみを更新するようにしてもよい。
【0058】
また、端子圧着装置2には、情報読出手段86によって読出された電線Lの初期長さを記憶する初期長記憶手段74と、端末加工処理された夫々の電線Lの長さ(累計)を個別に測長する電線測長手段75と、初期長記憶手段74に記憶された電線Lの初期長さ、及び電線測長手段75によって測長された夫々の電線Lの長さに基づいて、夫々の電線ドラム36に巻かれている電線Lの残り長さを算出する残長算出手段76とを備えている。つまり、電線Lの種類毎に、元の長さから、使用した分の長さが差し引かれ、残りの長さが求められる。これによれば、端子圧着装置2において、夫々の電線ドラム36に巻かれている残りの長さを一元的に管理することが可能になる。特に、本例では、算出された電線Lの残り長さが、所定量以下になった場合、報知制御手段73によってその電線Lの種別を知らせるようになっている。このため、残量が少なくなったことを作業者に認識させることが可能になり、新たな電線ドラム36を予め準備させることが可能になる。
【0059】
一方、電線送り装置4には、端子圧着装置2の送受信制御手段71と通信を行う送受信制御手段77と、送りローラ63を回転させるモータ79(ステッピングモータ)を駆動し電線Lの繰出しを制御する電線送り制御手段78と、第二切断刃53を駆動して電線Lを切断する切断制御手段54とが備えられている。
【0060】
ところで、電線ドラム36を交換する際には、第二切断刃53によって電線Lを切断することとなるが、端子圧着装置2において一連の処理が終わってから、すなわち所定長さの電線Lが生成された後に電線Lを切断するものでは、端子圧着装置2と電線供給装置3との間に繰出された電線Lが端尺として残ってしまい、材料に無駄が生じてしまう。特に、多品種少量生産の場合には、端尺の電線Lが数多く発生することから、材料費が大幅に増加することが懸念される。
【0061】
そこで、本例の電線送り装置4では、端子圧着装置2において生成される電線Lの必要長さを認識する必要長認識手段93と、送りローラ63を経て第二切断刃53を通過した電線Lの長さを測長する繰出長さ測長手段94とを備え、切断制御手段54は、繰出長さ測長手段94によって測長された電線Lの長さが、必要長認識手段93によって認識された電線Lの必要長さに一致した際に、第二切断刃53を動作させて電線Lを切断するようにしている。このため、既に繰出されている電線Lが端子圧着装置2において残らず使用されることになり、端尺の電線Lが発生することを回避することができる。なお、電線Lの必要長さは、端子圧着装置2から送信された情報を送受信制御手段77を介して受信することで認識され、第二切断刃53を通過する電線Lの長さは、モータ79におけるステップ数をカウントすることにより測長される。
【0062】
また、第二切断刃53から一定の距離には、電線Lの先端を検出する先端検出センサ64が設けられており、繰出長さ測長手段94によって測長される電線Lの長さが、先端検出センサ64の出力に基づいて補正されるようになっている。具体的には、電線Lの先端が検出された後に測長される電線Lの長さから、第二切断刃53から先端検出センサ64までの距離を差引くことにより、第二切断刃53を通過する電線Lの長さを認識している。これによれば、夫々のカセット部30から突出する電線Lの長さにバラツキがあっても、先端検出センサ64を利用して電線の初期長さを補正することが可能になり、正確な長さの電線Lを生成することができる。
【0063】
また、電線送り制御手段78は、送り機構本体60の送りローラ63を、端子圧着装置2におけるローラ159の動作状態に拘らず、一定速度で回転させ、必要長さの電線Lが繰出されるまで電線ドラム36から電線Lを連続的に繰出させるようにしている。つまり、例えば端子圧着装置2において電線Lの端部の被覆材を除去する際等、電線Lを逆方向に送る場合、あるいは電線Lの端部に端子を圧着する際等、電線Lの送込みを一端中断した状態で端末処理加工を実行する場合でも、電線送り装置4の送りローラ63を一定方向に定速で回転させることにより、電線ドラム36から電線Lを連続的に繰出させる。
【0064】
なお、電線送り装置4には、案内方向切替制御手段97が備えられており、電線ドラム36から繰出された電線Lの先端が端子圧着装置2のローラ159に送られると、回動駆動源98を駆動し、下側案内部材89を直線案内位置から可撓案内位置に変位させる。これにより、送りローラ63と端子圧着装置2との間において繰出された電線Lを余剰させることが可能になる。換言すれば、端子圧着装置2のローラ159が停止中または逆回転している場合であっても、電線送り装置4の送りローラ63によって電線Lを継続して繰出させることが可能になり、必要な長さの電線Lを速やかに繰出させることが可能になる。
【0065】
このように、本例の電線処理システム1によれば、複数の受箱部15を水平面上で回転させる回転式供給ユニット169を、積層して電線供給積層体166を構成するとともに、その電線供給積層体166を昇降装置167によって昇降可能としたことにより、水平面に沿ってループ状に配置された複数の受箱部15のみではなく、それらを上下方向に重ねた数多くの受箱部15を、所定の取出位置まで移動させることができる。したがって、比較的狭いスペースでも数多くの電線ドラム36を保持することが可能となり、ひいては電線供給装置3の小型化が可能になる。特に、複数の受箱部15を水平面上で回転させる回転式供給ユニット169のモータ17と、電線供給積層体166を昇降させるモータ177とを別々に駆動しているため、回転及び昇降を同時に行うことが可能になり、選択された電線ドラム36を所定の取出位置まで速やかに移動させることが可能になる。従って比較的安価に製造できるとともに、装置を一層小型化させることができる。
【0066】
また、本例の電線処理システム1によれば、載置板173を回転させずに、複数の受箱部15のみを回転させるため、載置板173の平面視形状を略長方形とし、複数の受箱部を略長方形状のループに沿って配置することができ、ひいては、配置スペースを有効に用いた小型の電線供給装置3を提供することが可能になる。また、受箱部15の底面には、載置板173上で転動可能な複数のローラ110が設けられているため、載置板173上での摩擦抵抗を低減し、滑らかに摺動させることができる。
【0067】
本例の電線処理システム1によれば、選択された一つの受箱部15を所定の取出位置に移動させる動作、及びカセット部30から延出された電線Lを端子圧着装置2に受渡す動作、を機械的に行うため、一連の作業を自動化することができ、作業者の負担を軽減するとともに、加工すべき電線を間違いなく且つ速やかに供給することが可能となる。
【0068】
また、本例の電線処理システム1によれば、電線送り装置4には、取出位置に対向して配置された第二切断刃53が備えられており、端子圧着装置2から送信される情報に基づいて動作するようになっている。このため、端子圧着装置2で使用される電線Lを交換する際、繰出された電線Lを根元側で切断することができ、電線Lを電線ドラム36に巻き戻す等の処理が不要となる。すなわち、電線供給装置3における構成を簡素化することが可能になる。
【0069】
また、本例の電線処理システム1によれば、供給装置本体16には複数の受箱部15が設けられているため、供給装置本体16から互いに異なる種類の電線を随時供給することが可能になる。特に、カセット式であるため、供給装置本体16に電線ドラム36を装着する作業が極めて容易になる。また、決められた位置から一定の方向に電線Lが繰出されるため、電線送り装置4によって電線Lを確実に把持することができ、円滑な受渡しが可能になる。さらに、電線ドラム36を交換する際には、受箱部15からカセット部30を取出し、そのケース部33内に収容された電線ドラム36を交換することとなるため、安全な場所での交換作業が可能になるとともに、電線ドラム36の交換作業中であっても、他の電線ドラム36が収容された受箱部15から電線Lを供給し続けることが可能になる。また、複数のカセット部30を規則正しく配列することができ、しかも比較的簡易な構造で支持できるため、狭いスペースでも数多くの電線ドラム36を保持することが可能となり、ひいては端子圧着装置2の小型化が可能になる。
【0070】
また、本例の電線処理システム1によれば、電線ドラム36から突出した電線Lが一対の送りローラ63の間に挟持され、一対の送りローラ63を互いに反対方向に回転させることにより、電線Lが電線ドラム36から繰出され、繰出された電線Lは、ガイドユニット61を通過することにより、端子圧着装置2に向って案内される。このため、比較的簡単な構成で電線Lの先端を端子圧着装置2に受け渡すことが可能になる。特に、電線送り装置4では、端子圧着装置2において生成される電線Lの必要長さを認識するとともに、第二切断刃53を通過する電線Lの長さを測長し、測長された電線Lの長さが、認識している電線Lの必要長さに一致した際に、第二切断刃53を動作させて電線Lを切断する。このため、既に繰出されている電線Lが端子圧着装置2において残らず使用されることになり、端尺の電線Lが発生することを回避することが可能になる。
【0071】
また、本例の電線処理システム1によれば、端子圧着装置2にローラ159が備えられているが、電線送り装置4における送りローラ63は、端子圧着装置2におけるローラ159の動作状態に拘らず電線ドラム36から電線Lを繰出させるため、例えば端子圧着装置2において電線Lの端部の被覆材を除去する際等、電線Lを逆方向に送る場合、あるいは電線Lの端部に端子を圧着する際等、電線Lの送込みを一端中断した状態で端末処理加工を実行する場合でも、電線送り装置4の送りローラ63を一定方向に回転させることにより、電線ドラム36から電線Lを連続的に繰出させる。したがって、端子圧着装置2において電線Lの加工が終了する時よりも早く必要長さの電線Lを繰出すことが可能になり、さらには端子圧着装置2において電線を加工している最中でも、電線供給装置3においては次に加工する電線を繰出すための準備、具体的には選択された電線ドラム36を所定の取出位置に移動させる動作を行わせることができる。そして、この場合には、段取り時間が大幅に削減され、端子圧着装置2における稼働率を一層高めることが可能になる。特に、電線ドラム36から繰出された電線Lの先端が端子圧着装置2のローラ159に送られると、回動駆動源98が駆動され、下側案内部材89は直線案内位置から傾斜案内位置に変位し、送りローラ63から繰出される電線Lを、送りローラ63と下側案内部材89との間で撓ませることが可能になる。このため、端子圧着装置2のローラ159が停止中または逆回転している場合であっても、電線送り装置4の送りローラ63によって電線Lを継続して繰出させることが可能になり、必要な長さの電線Lを速やかに繰出させることが可能になる。
【0072】
また、本例の電線処理システム1によれば、ケース部33内に設けられた癖取り部42によって電線Lのねじり癖や曲がり癖が矯正されるため、略直線形状の電線Lを電線ガイド部43に案内することができ、ひいては、ケース部33から突出する電線の延出方向に直進性を持たせることができる。したがって、電線Lの受渡しを一層確実なものとすることができる。
【0073】
また、本例の電線処理システム1によれば、電線ドラム36の回転を制動する制動部材39が設けられているため、受箱部15の移動等に起因する電線ドラム36の回動による不具合、すなわち電線Lが自然に繰出されたり、ケース部33内で電線Lが撓んだり、電線ガイド部43から電線Lが抜けたりするという不具合を解消することができる。しかも、取出位置のカセット部30に対して制動解除機構40が作動するため、回転負荷を大きくすることなく、電線ドラム36を回転させることが可能になり、比較的小さな引張り力でも電線Lを容易に繰出させることが可能になる。特に、電線Lの引張り力を利用して制動状態を解除することから、制動及び解除操作においても自動化が可能である。
【0074】
さらに、本例の電線処理システム1によれば、挿入口23から受箱部15内に挿入したカセット部30を、係止部材24によって係止するため、受箱部15からカセット部30が脱離することを防止でき、安定した状態で可動させることができる。
【0075】
以上、本発明を実施するための二つの形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0076】
すなわち、上記実施形態における電線供給装置3では、載置板173を回転させることなく、受箱部15のみを回転させるものを示したが、載置板173をターンテーブルとして構成し、載置板173を回転させることにより受箱部15を回転させるようにしてもよい。この場合にはチェーン13等の駆動機構11を省略することが可能である。また、電線供給積層体166全体を一体的に回転させるように構成してもよい。これによれば、回転駆動機構が一つでよいことから、構成が簡素化されるとともに、大幅なコストダウンが可能になる。ただし、上記実施形態のように回転式供給ユニット169毎に駆動機構11を備えるようにすれば、先に電線が繰出される受箱部15とその後に繰出される受箱部15とが同じ回転式供給ユニット169に属していない場合には、電線の繰出し中に、次に繰出される受箱部15を回転させ始めることが可能になり、電線の切替え処理に要する時間を一層短縮することが可能になる。また、例えば、作業者の指示(具体的には補給スイッチの押圧操作)を基に、電線の残量が少なくなった受箱部15を電線供給装置3の背面に一列で並べる等の処理、を実現することが可能になり、これによれば、カセット部30の交換作業における負担を一層軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態の電線供給装置を有する電線処理システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】電線供給装置の最下部に配置された回転式供給ユニットの構成を示す平面図である。
【図3】電線供給装置の構成を示す正面図である。
【図4】電線供給装置の構成を示す底面図である。
【図5】電線供給装置における受箱部の構成を示す斜視図である。
【図6】受箱部とカセット式電線繰出し部との構成を示す分解斜視図である。
【図7】カセット式電線繰出し部の構成を示す平面図である。
【図8】電線送り装置におけるガイド部材の構成を模式的に示す模式図である。
【図9】電線供給制御に関する機能的構成を示すブロック図である。
【図10】従来の端子圧着装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
2 端子圧着装置(端末処理装置)
3 電線供給装置
4 電線送り装置
12 スプロケット
13 チェーン
15 受箱部
16 供給装置本体
17 モータ(回動駆動源)
23 挿入口
30 カセット式電線繰出し部
33 ケース部
36 電線ドラム
38 ドラム支持部
43 電線ガイド部
84 電線供給制御手段(移動制御手段)
110 ローラ
166 電線供給積層体
167 昇降装置
169 回転式供給ユニット
173 載置板
L 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末処理装置に対して電線を供給するための供給装置本体と、
該供給装置本体に複数個設けられ、少なくとも一端側に挿入口を有する筒状の受箱部と、
前記挿入口を介して前記受箱部内に挿脱可能に収容される箱状のケース部、電線が巻かれた電線ドラムを前記ケース部内で回動可能に支持するドラム支持部、及び、前記ケース部に設けられ、前記電線ドラムに巻かれた電線を前記ケース部における所定の部位から一定方向に繰出させる電線ガイド部を有するカセット式電線繰出し部と
を具備し、
前記供給装置本体は、夫々の前記挿入口が所定の回転軸心を中心として遠心方向を向くように、前記複数の受箱部を所定の水平面に沿ってループ状に配列し、該ループ状を維持したまま前記水平面上で回転させる回転式供給ユニットと、
複数組の該回転式供給ユニットを所定の間隔で上下方向に積層した電線供給積層体と、
該電線供給積層体を昇降させる昇降装置と
を備えることを特徴とする電線供給装置。
【請求項2】
夫々の前記回転式供給ユニットは、前記水平面に沿って配設され複数のスプロケットに巻き掛けられた無端のチェーンと、いずれか一つの前記スプロケットを介して前記チェーンに回転力を付与する回動駆動源とを有し、
複数の前記受箱部は、前記チェーンの外周縁に沿って所定の間隔で配置され、前記チェーンに対して放射状に連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電線供給装置。
【請求項3】
夫々の前記回転式供給ユニットは、前記複数の受箱部を回転可能に載置する載置板をさらに備え、
前記受箱部の底面には、前記載置板上で転動する複数のローラが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電線供給装置。
【請求項4】
前記回動駆動源及び前記昇降装置を制御し、複数の前記受箱部の中から供給対象として指示された電線の受箱部を所定の取出位置まで移動させる移動制御手段と、
前記取出位置に配置された前記受箱部と対向し、該受箱部に収容されている前記カセット式電線繰出し部から延出された電線を、引張って繰出させるとともに、該電線の先端部分を前記端末処理装置に供給する電線送り機構と
をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電線供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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