説明

電線保持具

【課題】 経年変化等によっても電線を曲げたまま保持することが可能な電線保持具を提供する。
【解決手段】 この電線保持具1は、軸方向の中程で、100°の角度で折り曲げられている。また、この電線保持具1には、電線保持具1の内径よりも狭い開口部3が軸方向の一端から他端まで設けられている。このように構成された電線保持具1に、開口部3を介して配電線10を嵌め込むと、曲げられた配電線10の復元力により電線保持具1内で、電線保持具1の軸中心に対して偏って配置される。そのため、この電線保持具1に嵌めこまれた配電線10は、電線保持具1の内径と開口部3の幅との差の部分に引っ掛かり、曲げられた状態で電線保持具1から抜けることなく確実に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用の変圧器やコンデンサ等に電気を引き込む各相の配電線には、カットアウトと呼ばれるヒューズ入りの箱状、筒状の碍子が接続されている。
そしてこのカットアウトから引き出される配電線は、隣接するカットアウトに接触しないように、クセを付けて曲げられた状態で配線されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図4に示すように、配電線10のクセは経年変化及び風圧、冠雪等によってしだいにほぐれ、配電線10は隣接するカットアウト12に接触してしまうことがあった。
このような接触があると、配電線10が燃えたり、カットアウト12が焦げたり、破損したりする恐れがあった。
【0004】
そこで本発明では、上述した問題点を解決し、経年変化等によっても電線を曲げたまま保持することが可能な電線保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した問題を解決するためになされた発明である請求項1に記載の発明は、電気機器や電気器具から引き出される電線を曲げて所定の方向に送るために、電線を曲げたまま保持する電線保持具であって、電線の外径よりも大きい内径を有するチューブ状に形成され、電線を当該電線保持具内に挿入するための開口であって前記内径よりも幅が狭い筋状の開口部が当該電線保持具の軸方向の一端から他端まで設けられ、前記軸方向の中程で90°以上の角度に折り曲げられ、前記開口部は、当該電線保持具の一端側から他端側に向かって捻られた形状に形成されるとともに、当該電線保持具の一端側と他端側とで180°異なる方向に向かって開口していることを特徴とする。
【0006】
この電線保持具に嵌めこまれた電線は、電線保持具の内径が電線の外径よりも大きいので、電線の復元力により電線保持具の軸中心に対して偏って配置される。一方、この電線保持具の開口部の幅は電線保持具の内径よりも幅が狭い。そのため、この電線保持具に嵌めこまれた電線は、電線保持具の内径と開口部の幅との間で差のある部分(図2(b)において記号βで示した部分)に引っ掛かり、電線保持具の曲がりに沿って曲げられた状態で電線保持具内に確実に保持される。
【0007】
従って、この電線保持具を用いれば、経年変化等によっても電線を曲げたまま保持することができる。
他に、この電線保持具を用いれば、電線を90°以上の角度に折り曲げた状態で確実に保持できるので、発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、経年変化等により曲がりがほぐれた電線が、隣接する電気機器や電気器具に接触して短絡する事故も確実に防止できる。
【0008】
また、この電線保持具は、電線を90°以上の角度に折り曲げた状態で確実に保持できるので、電気機器や電気器具から引き出された電線を、その電気機器や電気器具から確実に遠ざけることができる。そのため、この電線保持具を用いれば、電気機器や電気器具から引き出された電線が、その電気機器や電気器具に接触して短絡する事故をも確実に防止することができる。
【0009】
尚、この請求項1に記載された角度は、チューブ状のものを折り曲げたものであるので、180°未満である。
次に、請求項2に記載したように、角度は、90°〜130°であることが好ましい。130°より大きいと隣接する電気機器や電気器具に電線が接触し、90°以下であると、電線が引き出された電気機器や電気器具に電線が接触して、短絡する恐れがあるからである。とりわけ、請求項3に記載したように、角度は、約100°であることが好ましい。
【0010】
ところで、前述したように、電線保持具に嵌めこまれた電線は、その復元力により電線保持具の軸中心に対して、請求項1で記載した折り曲げによって90°以上の角度をなす側とは反対側(図2(a)では記号イで示した側)に偏って配置される。
【0011】
そこで、この請求項4に記載の電線保持具のように、開口部は、この電線保持具の中心軸に対し、請求項1で記載した折り曲げによって90°以上の角度をなす側(言い換えると、電線が偏る側とは反対側、図2(a)では記号アで示した側)に偏って設けられていることが好ましい。
【0012】
これによれば、電線が偏る側では、電線保持具の内径と開口部の幅との差の部分(図2(b)において記号βで示した部分)が、このように構成しない場合に比べて大きくなるので、電線保持具内に嵌め込まれた電線はこの部分に引っ掛かかり、曲げられた状態で電線保持具内により確実に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。
ここで、図1は、本実施形態の電線保持具1の説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。図2は、本実施形態の電線保持具1で配電線10を保持する様子を説明するための説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0014】
尚、図4で示した符号を付して説明することができるものは、以下の説明においても、同じ符号を付して説明する。
1.全体構成
本実施形態の電線保持具1は、主に、カットアウト12から引き出される配電線10を曲げて所定の方向に送るために、配電線10を曲げたまま保持するものである。
【0015】
この電線保持具1は、図1に示すように、ポリカーボネイトあるいは、高密ポリエチレン、ナイロン等の合成樹脂を用いてチューブ状に形成されている。また、この電線保持具1は、図2(b)に示すように、配電線10の外径10aよりも大きい内径2で形成され、さらに、図1(a)に示すように、電線保持具1の軸方向の中程で100°の角度で折り曲げられている。
【0016】
また、この電線保持具1には、配電線10を電線保持具1内に挿入するための開口であって電線保持具1の内径2よりも幅が狭い筋状の開口部3(図1(b)参照)が、軸方向の一端から他端まで設けられている。そして、この開口部3は、図1に示すように、電線保持具1の一端側から他端側に向かって、軸を中心に時計周りに捻られた形状に設けられているとともに、電線保持具1の一端側と他端側とで180°異なる方向に向かって開口している。またこの開口部3は、電線保持具1が折り曲げられた部分では、折り曲げによって100°の角度をなす側(図1(a)では記号アで示した側)とは反対側(図1(a)では記号イで示した側)を通って形成されている。
【0017】
さらに、この電線保持具1の開口部3は、図1(a)に示すように、折り曲げが行われていない部分では、この電線保持具1の中心軸1aに対し、100°の角度をなす側(図1(a)では記号アで示した側)に偏って設けられている。この点、図1では、開口部3の幅方向と平行な方向で見て、開口部3の幅方向の中心3aが、電線保持具1の中心軸1aに対し、符号αで示された幅の分だけ、100°の角度をなす側(図1(a)では記号アで示した側)に偏って形成されていることを図示することで示している。
2.使用方法
上述のように構成された電線保持具1を用いて配電線10を曲げた状態に保持する場合、まず、この電線保持具1の曲げられた地点から見て軸方向の一方の側の開口部3に配電線10を宛がい、電線保持具1を配電線10に強く押し当て、開口部3をやや押し開いて、配電線10を電線保持具1内に嵌め込む。
【0018】
次に、この配電線10が取り付けられた部分の電線保持具1と配電線10とを把持しつつ、電線保持具1を配電線10に嵌め込む方向とは反対側に配電線10を引き寄せ、その引き寄せに伴って、電線保持具1が曲げられた部分の開口部3に配電線10を嵌め込んでいく。
【0019】
そして、この電線保持具1の曲げられた地点から見て軸方向の他方の側の開口部3に対向する位置まで配電線10を引き寄せ、この開口部3に対向する位置に配電線10が来たら、配電線10を開口部3に強く押し当て、開口部3を押し開いて配電線10を電線保持具1に嵌め込む。
【0020】
すると、図2(a)に示すように、カットアウト12から引き出された配電線10は、この電線保持具1により所定の方向に折り曲げられて保持される。
3.電線保持具1の特徴的な作用
この電線保持具1に開口部3を介して嵌めこまれた配電線10は、図2(b)に示すように、電線保持具1の内径2が配電線10の外径10aよりも大きいので、配電線10の復元力により電線保持具1の軸中心に対して偏って配置される。一方、この電線保持具1の開口部3の幅は電線保持具1の内径よりも幅が狭い。そのため、この電線保持具1に嵌めこまれた配電線10は、電線保持具1の内径2と開口部3の幅との間で差のある部分(図2(b)において記号βで示した部分)に引っ掛かり、電線保持具1の曲がりに沿って曲げられた状態で電線保持具1内に確実に保持される。
【0021】
しかも、この電線保持具1の開口部3は、100°の角度をなす側(言い換えると、配電線10が偏る側とは反対側、図2(a)では記号アで示した側)に偏って設けられている。そのため、前述した差の部分(図2(b)において記号βで示した部分)が、このように構成しない場合に比べて大きくなり、電線保持具1内に嵌め込まれた配電線10はこの部分βに引っ掛かかって、曲げられた状態で電線保持具1内により確実に保持される。
【0022】
従って、この電線保持具1を用いれば、経年変化等によっても配電線10を曲げたまま保持することができる。
他に、この電線保持具1を用いれば、図3に示すように、配電線10を100°の角度に折り曲げた状態で確実に保持できるので、発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、経年変化等により曲がりがほぐれた配電線10が、隣接するカットアウト12に接触して短絡する事故も確実に防止できる。
【0023】
また、この電線保持具1は、配電線10を100°の角度に折り曲げた状態で確実に保持できるので、カットアウト12から引き出された配電線10を、そのカットアウト120から確実に遠ざけることができる。そのため、この電線保持具1を用いれば、カットアウト12から引き出された配電線10が、そのカットアウト12に接触して短絡する事故をも確実に防止することができる。
【0024】
またこの電線保持具1は、図2(a)に示すように、配電線10を嵌め込む開口部3が、この電線保持具1の一端側と他端側とで180°異なる方向に向かって開口した1回捻られた形状に形成されているだけなので、配電線10を簡単に嵌め込むことができる。
【0025】
また、この電線保持具1は、開口部3が1回捻られただけの簡単な構成であるので凹凸が少なく、また、この電線保持具1に配電線10が嵌め込まれると、配電線10は、電線保持具1の中心軸1aに対して偏って配置されるので、図2(b)に示すように、配電線10と電線保持具1の内壁との間に隙間4が生じる。そのため、この電線保持具1に海水が付着しても凹凸部分に海水がたまらないばかりか、隙間4を介して外部に流れ出してしまう。従って、この電線保持具1を用いると、海水が付着して塩が溜り、この溜まった塩により配電線10が傷む塩害を確実に防止することができる。
4.実施形態と発明特定事項との対応関係
本実施形態の配電線10は、本発明の電線に相当する。また、本実施形態のカットアウト12は、本発明の送電機器や電気器具に相当する。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、時計周りに捻った形状の開口部3を備えた電線保持具1について説明したが、開口部3を軸周りに反時計周りに捻った形状に形成してもよい。
【0026】
上記実施形態では、カットアウト12から引き出された配電線10に用いる場合について説明したが、柱上変圧器や、コンデンサ、避雷器、開閉器など、各種電気機器や器具から引き出され、あるいはこれらの電気機器や器具に引き込まれる電線に用いることができることはもちろんである。
【0027】
上記実施形態では、100°に折り曲げた電線保持具1について説明したが、この折り曲げ角度は、90°以上であることが好ましく(180°未満)、実用的には、電気機器や電気器具間の間隔などにより、この折り曲げ角度は、90°〜130°の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の電線保持具の説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本実施形態の電線保持具で配電線を保持する様子を説明するための説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本実施形態の電線保持具で配電線を曲げた状態でカットアウトから引き出した様子を説明するための説明図である。
【図4】従来から行われている、カットアウトから配電線を引き出す方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…電線保持具、2…内径、3…開口部、4…隙間、10…配電線、12…カットアウト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器や電気器具から引き出される電線を曲げて所定の方向に送るために、電線を曲げたまま保持する電線保持具であって、
電線の外径よりも大きい内径を有するチューブ状に形成され、
電線を当該電線保持具内に挿入するための開口であって前記内径よりも幅が狭い筋状の開口部が当該電線保持具の軸方向の一端から他端まで設けられ、
前記軸方向の中程で90°以上の角度に折り曲げられ、
前記開口部は、
当該電線保持具の一端側から他端側に向かって捻られた形状に形成されるとともに、当該電線保持具の一端側と他端側とで180°異なる方向に向かって開口していることを特徴とする電線保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線保持具において、
前記角度は、90°〜130°であることを特徴とする電線保持具。
【請求項3】
請求項2に記載の電線保持具において、
前記角度は、約100°であることを特徴とする電線保持具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電線保持具において、
前記開口部は、
当該電線保持具の中心軸に対し、前記角度をなす側に偏って設けられていることを特徴とする電線保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−55680(P2009−55680A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218529(P2007−218529)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000139573)株式会社愛洋産業 (23)
【Fターム(参考)】