電線保持部材
【課題】電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で電線保持部材を取り付ける。
【解決手段】本発明は、充電用コネクタ10を構成するハウジング11の内部に取り付けられる金属クリップ60であって、一対の半割体62,62を互いに組み付けてなる箱形状の本体部61を備え、この本体部61の外面がハウジング11の内面に面接触することにより本体部61がハウジング11に対して電線Wの軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、本体部61の外面に、電線Wを挿通させる電線挿通孔67が設けられ、この電線挿通孔67は、両半割体62,62の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部66,66が向き合うように両半割体62,62を組み付けることで構成されており、電線Wは、両湾曲部66,66によって狭持されることにより本体部61に保持されている構成としたところに特徴を有する。
【解決手段】本発明は、充電用コネクタ10を構成するハウジング11の内部に取り付けられる金属クリップ60であって、一対の半割体62,62を互いに組み付けてなる箱形状の本体部61を備え、この本体部61の外面がハウジング11の内面に面接触することにより本体部61がハウジング11に対して電線Wの軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、本体部61の外面に、電線Wを挿通させる電線挿通孔67が設けられ、この電線挿通孔67は、両半割体62,62の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部66,66が向き合うように両半割体62,62を組み付けることで構成されており、電線Wは、両湾曲部66,66によって狭持されることにより本体部61に保持されている構成としたところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電用コネクタに用いられる電線保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電線保持部材として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、複数の電線挿通孔を備えたゴム製の円柱状部材であって、複数の電線が電線挿通孔に挿通された後、かしめリングなどの締め付け部材によって全周から締め付けられて圧縮されることで電線を保持するようになっている。そして、電線を保持した状態の電線保持部材が、充電用コネクタのハウジング内に収められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−324621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電線保持部材は、電線挿通孔の内周面と電線の外周面の間で摩擦力を発生させることによって電線を保持しているにすぎないため、その摩擦力を超える強い力で電線が引っ張られるなどした場合、電線を保持することができず、ハウジングの内部で電線が断線するなどのおそれがある。このため、電線の保持力を高める方法として、例えば電線保持用クリップなどを用いて電線を強力に保持する方法も考えられるものの、電線の傷付きやハウジングに対する回り止めなどを併せて検討する必要がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で電線保持部材を取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充電用コネクタを構成するハウジングの内部に取り付けられる電線保持部材であって、一対の半割体を互いに組み付けてなる箱形状の本体部を備え、この本体部の外面がハウジングの内面に面接触することにより本体部がハウジングに対して電線の軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、本体部の外面に、電線を挿通させる電線挿通孔が設けられ、この電線挿通孔は、両半割体の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部が向き合うように両半割体を組み付けることで構成されており、電線は、両湾曲部によって狭持されることにより本体部に保持されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、箱形状の本体部を設けたから、本体部の外面がハウジングの内面に面接触することにより本体部をハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。また、両湾曲部が向き合うようにして電線挿通孔を構成し、両湾曲部によって電線を狭持するようにしたから、電線の傷付きを防止した上で電線を本体部に保持することができる。したがって、金属製の電線保持部材で電線を保持するに際して、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
一対の半割体は、同一部品である構成としてもよい。
このような構成によると、部品の種類を削減でき、部品コストを低減できる。
【0009】
湾曲部は、円弧状とされている構成としてもよい。
このような構成によると、電線に対する押圧力を均一化することができ、電線の傷付きをより防止できる。
【0010】
湾曲部の両端部には、電線挿通孔の径方向外側に傾斜した逃がし部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、両半割体を組み付ける際に湾曲部が電線の外周面に対して過度に押圧された場合であっても、電線の一部が逃がし部に入り込むことにより、電線の傷付きを防止できる。
【0011】
一対の電線挿通孔が、電線の軸方向に間隔を空けて同軸で配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、二箇所の電線挿通孔で電線を保持すればよいため、各電線挿通孔で電線にかかる押圧力を下げることができる。これにより、電線の傷付きをより防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線保持部材で電線を保持するに際して、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】充電用コネクタの斜視図
【図2】充電用コネクタの側面図
【図3】図1においてカバー側ハウジングを外した状態を示した斜視図
【図4】図3におけるベース側ハウジングのみを示した斜視図
【図5】図3における金属クリップを側方から見た側面図
【図6】図3における金属クリップを電線の軸方向に沿って上下方向に切断し側方から見た断面図
【図7】図2におけるA−A線断面図
【図8】ベース側ハウジングの内面側を示す側面図
【図9】カバー側ハウジングの内面側を示す側面図
【図10】図8におけるB−B線断面図
【図11】半割体の斜視図
【図12】金属クリップの側面図
【図13】金属クリップの平面図
【図14】金属クリップの正面図
【図15】図12におけるC−C線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図15の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は、図1に示すように、全体としてピストル形状(ガン形状)をなすハウジング11を有しており、このハウジング11は、車両側コネクタ(図示せず)と嵌合可能なフロントハウジング20と、このフロントハウジング20を左右両側から挟み付けるベース側ハウジング30およびカバー側ハウジング40とを備えて構成されている。また、ハウジング11には、図2に示すように、複数のボルトBによってボルト締結されており、これらのボルトBによってベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40とが一体に組み付けられている。
【0015】
本実施形態の電線Wは、図3に示すように、金属製の金属クリップ60に保持されており、この金属クリップ60は、ハウジング11の手持ち部分であるグリップ部13の内部に収容されている。グリップ部13は、解除ボタン52から下方に向かうほど後方に向かう斜め方向に延びる形態をなしている。なお、以下のグリップ部13および金属クリップ60の内部構造の説明においては電線Wの軸方向を前後方向として、電線Wの引き出し方向を後方とする。
【0016】
グリップ部13の後方には電線Wが引き出されている。この電線Wは、家庭用の電源に接続されるようになっており、この充電用コネクタ10を車両側コネクタに嵌合することによって車両内部に搭載されたバッテリ(図示せず)への充電が行われるようになっている。
【0017】
グリップ部13における電線Wの引出口には、ゴムブッシュ15が装着されている。ゴムブッシュ15は可撓性を有するゴム材からなり、図6に示すように、グリップ部13の後端よりも後方に突出する形態をなしている。ゴムブッシュ15は、グリップ部13の内周面に対して凹凸嵌合した状態で前後方向に抜け止めされて保持されている。ゴムブッシュ15の内部には、電線Wが貫通しており、電線Wが上下左右に振られた場合に、その電線Wがグリップ部13の後端に接触するなどして傷付くことを規制している。
【0018】
両ハウジング30,40の内部には、図3に示すように、レバー50が収容されており、レバー50の前端側には、ロック爪51が設けられている。このロック爪51は、両ハウジング30,40の前端開口から前方に突出するとともに、フロントハウジング20の上方に配置されている。充電用コネクタ10を車両側コネクタに嵌合させると、ロック爪51が車両側コネクタに設けられたロック突部(図示せず)に対して嵌合方向に係止することにより、充電用コネクタ10と車両側コネクタが嵌合状態に保持される。
【0019】
一方、レバー50の後端側には、解除ボタン52が設けられている。この解除ボタン52は、ハウジング11の後端角部(グリップ部13の上端角部)に開設された解除窓12から上方に突出して設けられており、この解除ボタン52を押し下げると、ロック爪51が持ち上がってその係止状態が解除され、充電用コネクタ10を車両側コネクタから離脱させることができるようになっている。この解除ボタン52の押し下げ動作は、グリップ部13を手で握ったまま親指を使うことで行われる。
【0020】
フロントハウジング20は合成樹脂製であって、円筒状をなして前方に開口する形態をなしている。フロントハウジング20の内部には、複数の端子収容部21が前方に突出して設けられている。端子収容部21は、略円筒状をなしており、各端子収容部21の内部には、雌端子(図示せず)が収容されている。この雌端子に圧着接続された小径の電線がハウジング11の内部で一纏めに集められて大径の電線Wとなり、この大径の電線Wがグリップ部13の内部を通り、その後端から外部に導出されている。
【0021】
フロントハウジング20の後部における外周面には、図3に示すように、フランジ部22が外側に張り出すようにして周設されている。一方、ベース側ハウジング30の前端部には、図4および図8に示すように、フランジ部22の半周分が適合して嵌り込むベース側の装着溝31が周設されている。同じく、カバー側ハウジング40の前端部には、図9に示すように、フランジ部22の残りの半周分が適合して嵌り込むカバー側の装着溝41が周設されている。両装着溝31,41によってフランジ部22を左右両側から挟み込み、両ハウジング30,40をボルトBによって締結すると、フロントハウジング20がベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40とによって左右両側から狭持された状態で強固に保持される。
【0022】
このように、ハウジング11における前端側はがたつきがないリジッドな状態となって剛体として構成されるため、ベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40を組み付けてボルトBを締結する際に両ハウジング30,40が位置ずれするなどのおそれはない。しかしながら、グリップ部13においては、フロントハウジング20のように強固に保持される部材がないため、ボルトBを締結する際に、両ハウジング30,40がボルトBの締結方向に位置ずれするおそれがある。
【0023】
詳細に説明すると、ハウジング11の内部には複数のボルト締結部35,45が設けられており、これらのボルト締結部35,45のうちフロントハウジング20から最も離れた位置にあるボルト締結部35,45がグリップ部13の内部におけるゴムブッシュ15の近傍に設けられている。両ハウジング30,40を組み付ける前の状態では、図8および図9に示すように、グリップ部13におけるベース側ハウジング30の開口縁にボルト締結部35が連設され、グリップ部13におけるカバー側ハウジング40の開口縁にボルト締結部45が連設されている。これらのボルト締結部35,45にボルトBが締結されると、カバー側ハウジング40には、ボルト締結部45を中心とする時計回り方向の力が発生することになる。この結果、ボルト締結部45と反対側に位置する開口縁がベース側ハウジング30のボルト締結部35側に近づくように回転しようとする。
【0024】
そこで、カバー側ハウジング40の回転を防ぐべく、ベース側ハウジング30の内部には、位置決めリブ16が設けられている。この位置決めリブ16は、ボルト締結部35側の開口縁と対向する開口縁に連設されており、ボルト締結部35からできるだけ離れて配置されているため、回転方向の力をできるだけ小さくできるようになっている。位置決めリブ16は、ベース側ハウジング30の開口縁からカバー側ハウジング40の内部に突出する形態をなしており、両ハウジング30,40が正規の姿勢で組み付けられた場合に、位置決めリブ16がカバー側ハウジング40の内面に接触するようになっている。これにより、カバー側ハウジング40の回転が阻止されている。
【0025】
金属クリップ60は、略箱形状をなす本体部61を有している。ハウジング11の内部には、本体部61が装着される装着部が設けられている。この装着部は、図8と図9を見比べればわかるように、ベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40によって左右対称に分割されており、両ハウジング30,40を組み付けた状態では、ベース側ハウジング30側の装着部とカバー側ハウジング40側の装着部とが対向して配置されるようになっている。
【0026】
ベース側ハウジング30側の装着部は、図8に示すように、本体部61の前後方向の移動を規制する一対のベース側抜止部32,32と、本体部61の上下方向の移動を規制する一対のベース側規制部33,33と、本体部61の左右方向の移動を規制する一対のベース側狭持部34,34とからなる。一方、カバー側ハウジング40側の装着部は、図9に示すように、本体部61の前後方向の移動を規制する一対のカバー側抜止部42,42と、本体部61の上下方向の移動を規制する一対のカバー側規制部43,43と、本体部61の左右方向の移動を規制する一対のカバー側狭持部44,44とからなる。ここで、上下方向および左右方向については図7を基準として説明する。
【0027】
両ベース側抜止部32,32と両カバー側抜止部42,42はいずれも板状をなし、図6に示すように、本体部61の前後両面にほぼ面接触しており、本体部61が前後方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。また、両ベース側抜止部32,32と両カバー側抜止部42,42との間には、電線Wを通す通し孔14が形成されている。
【0028】
ベース側挟持部34とカバー側挟持部44は、図8および図9に示すように、前後方向に延びる前後リブと、上下方向に延びる上下リブとから構成されている。具体的には、図示2本の前後リブが並列に並んで配置され、図示2本の上下リブが直列に並んで配置されている。図7に示すように、ベース側挟持部34とカバー側挟持部44は、本体部61の左右両側面にほぼ線接触しており、本体部61が左右方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。
【0029】
両ベース側規制部33,33と両カバー側規制部43,43はいずれも板状をなし、図7に示すように、ベース側規制部33とカバー側規制部43の対向部は、左右方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、両ベース側規制部33,33は、本体部61の上下両面にほぼ面接触しており、本体部61が上下方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。一方、両カバー側規制部43,43についても、両ベース側規制部33,33とともに、本体部61の上下両面にほぼ面接触しており、本体部61が上下方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。すなわち、金属クリップ60の本体部61は、三方向(上下方向、左右方向、前後方向)で移動が規制された状態でかつ傾動が規制された状態にあるため、ハウジング11に対して回り止め状態で保持される。
【0030】
前後一対の抜止部32,42のうち後側の抜止部32,42は、ボルト締結部35,45に連設されている。両ハウジング30,40の開口縁におけるボルト締結部35,45の前後両側には、それぞれ凹部36,46が凹設されている。両ハウジング30,40を組み付けると、ベース側の凹部36とカバー側の凹部46とによって前後一対の水抜き孔が構成されるようになっている。これにより、グリップ部13の内部に浸入した水は、両水抜き孔から外部に排出される。
【0031】
金属クリップ60の本体部61は、図11に示す半割体62を互いに組み付けることで構成されている。両半割体62は同一部品であって、底壁63と、この底壁63の前縁および後縁から対向状態で上方に立ち上がる前壁64Fおよび後壁64Rと、底壁63の左右両側縁から対向状態で上方に立ち上がる左右一対の両側壁65L,65Rとを備えて構成されている。底壁63の四隅には、開口部63Bが設けられている。この開口部63Bによって、本体部61の内部に浸入した水を外部に排出できるようになっている。
【0032】
底壁63の中央には、図13に示すように、円孔63Aが貫通して形成されている。両半割体62,62を組み付けた状態では、図13に示すように、両円孔63A,63Aが同軸に配置される。また、底壁63は、図7に示すように、ベース側狭持部34とカバー側狭持部44によって左右両側から狭持される。両挟持部34,44において両円孔63A,63Aと対応する位置には、溝部34A,44Aが凹設されている。これにより、金属クリップ60の本体部61の内部に浸入した水を円孔63A、両溝部34A,44A、両凹部36,46などを介して外部に排出することができるようになっている。
【0033】
両前壁64Fの端縁同士は、図14に示すように、左右両側から突き合わせるように対向した配置とされている。両前壁64F,64Fの突き合わせ縁には、それぞれ円弧状をなす湾曲部66が設けられている。両湾曲部66,66が向き合うように両半割体62,62が組み付けられることで、電線Wを挿通させる電線挿通孔67が形成されている。両半割体62,62によって電線Wを挟持した状態では、図6に示すように、両湾曲部66,66が電線Wに食い込んだ状態となっているものの、この食い込みは、電線Wの被覆を傷付けることなく弾性的に押圧する程度とされている。したがって、金属クリップ60によって電線Wを傷付けることなく強固に抜け止めできるようになっている。
【0034】
また、湾曲部66の両端部には、図14に示すように、電線挿通孔67の径方向外側に傾斜した一対の逃がし部68,68が設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態において両逃がし部68,68によって挟まれた領域には、電線挿通孔67に連通する逃がし空間が形成されている。この逃がし空間には、電線Wが両湾曲部66,66によって過度に強く挟持された場合に、その電線Wの一部を逃がすことができるようになっている。また、前後両壁64F,64Rは、両湾曲部66,66が電線Wに対して強固に押し当てられた場合に、底壁63を中心として開き変形することで、電線Wにかかる押圧力を緩和できるように構成されている。これらによって、両湾曲部66,66による電線Wの傷付きをさらに規制することができる。
【0035】
両電線挿通孔67,67は、図14に示すように、両電線挿通孔67,67に挿通される電線Wの軸方向に所定の間隔を空けて同軸で配置されている。このため、一つの電線挿通孔67だけで電線Wを保持する場合よりも、電線Wに対する押圧力を小さくすることができる。
【0036】
両前壁64F,64Fの突き合わせ縁における一方の端部には、位置決め突部69が設けられ、他方の端部には、位置決め突部69が嵌り込む段部70が設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態では、位置決め突部69が段部70に嵌り込んで上下方向に係止することにより、両半割体62,62の位置ずれが規制されている。
【0037】
左右両側壁65L,65Rの一方には、係止孔71が貫通して設けられ、他方には、撓み可能な係止片72が切り起こしによって設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態では、図15に示すように、一方の半割体62の係止片72が他方の半割体62の係止孔71に嵌り込み、係止片72の先端が係止孔71の内面に係止することにより、両半割体62,62が抜け止めされる。なお、係止片72が係止孔71に嵌り込んだ状態では、係止片72を係止孔71に対して両半割体62,62の組み付け方向と直交する方向に離脱させようとすると、位置決め突部69と段部70が接触するようになっており、これにより係止片72が係止孔71に嵌った状態に保持され、両半割体62,62が組み付け状態に保持される。
【0038】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、ベース側ハウジング30に、フロントハウジング20,レバー50などの部品を組み付けていき、電線Wに金属クリップ60を取り付ける。金属クリップ60の取り付けにあたっては、一方の半割体62の両湾曲部66によって電線Wを支持させた状態としておき、この状態から他方の半割体62を一方の半割体62に組み付けて両半割体62,62の両湾曲部66,66によって電線Wを挟持する。これにより、金属クリップ60が電線Wに対して固定される。
【0039】
次に、金属クリップ60をグリップ部13内の両ベース側抜止部32,32の間、および両ベース側規制部33,33の間に正規の姿勢で装着する。この状態では、半割体62の前後両壁64F,64Rが両ベース側抜止部32,32に面接触するとともに、半割体62の左右両側壁65L,65Rが両ベース側規制部33,33に面接触し、半割体62の底壁63がベース側挟持部34に線接触する。そして、他方の半割体62を一方の半割体62に組み付けると、電線Wが両湾曲部66,66によって押圧されるとともに、両係止片72,72が左右両側壁65L,65Rによって撓み変形させられつつ正規の取付位置に至ると、両係止片72,72が弾性的に復帰して両係止孔71,71に嵌り込む。これにより、両半割体62,62が組み付け状態に保持されてなる本体部61が構成され、この本体部61が電線Wに固定される。
【0040】
続けて、カバー側ハウジング40をベース側ハウジング30に対して組み付けると、フロントハウジング20のフランジ部22が両ハウジング30,40の装着溝31,41に嵌合し、フロントハウジング20が両ハウジング30,40によって挟持される。次に、複数のボルト締結部35,45に対してボルトBを締め込んでいく。ここで、グリップ部13内のボルト締結部35,45にボルトBを締め込んでいくと、締め込み時のトルクによってカバー側ハウジング40が時計回り方向に回転しようとする。しかしながら、カバー側ハウジング40の内面がベース側ハウジング30の位置決めリブ16に当接することでカバー側ハウジング40の回転が規制される。こうして、全てのボルトBを締め込むことで、充電用コネクタ10が完成する。
【0041】
以上のように本実施形態では、金属クリップ60の本体部61が両抜止部32,42によって前後方向から挟まれた状態で抜け止めされるとともに、両規制部33,43によって上下方向から挟まれた状態に保持されるとともに、両挟持部34,44によって左右両側から挟まれた状態に保持される。したがって、金属クリップ60の本体部61がグリップ部13内で電線Wの軸回り方向に回り止めされるとともに、電線Wの軸方向に抜け止めされる。また、両湾曲部66,66によって電線Wを均一に押圧することができるから、電線Wの傷付きを防ぐことができる。また、電線Wの一部を逃がす逃がし部68を設けるとともに、電線挿通孔67を前後一対設けたから、電線Wにかかる押圧力を下げることができ、電線Wの傷付きをさらに防ぐことができる。
【0042】
また、ボルトBを締結する際に、カバー側ハウジング40がボルト締結部35を中心として時計回り方向に回転しようとするものの、グリップ部13におけるボルト締結部35と反対側の開口縁に位置決めリブ16を設けたから、この位置決めリブ16をカバー側ハウジング40の内面に接触させることで、カバー側ハウジング40の回転を阻止することができる。すなわち、ベース側ハウジング30のみに位置決めリブ16を設ければよく、カバー側ハウジング40に何らかの位置決め防止機構を設けなくてよいから、スペース上の制約を受けることなく、両ハウジング30,40の位置決めを行うことができる。また、位置決めリブ16をボルト締結部35から離れた位置に設けたから、位置決めリブ16にかかる回転方向の力をできるだけ小さくすることができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線保持部材として金属クリップ60を用いているものの、本発明によると、樹脂製のクリップを用いてもよい。その場合には、可撓性を有するヒンジによって両半割体を連結してもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、湾曲部が円弧状とされているものの、本発明によると、湾曲部は円弧状に限定されず、電線Wを挟持できる形状であれば他の曲面形状でもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、両逃がし部68,68が湾曲部66の両端部にそれぞれ設けられているものの、本発明によると、湾曲部の中央に逃がし部を設けてもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、半割体62に前後一対の電線挿通孔67,67を設けているものの、本発明によると、電線挿通孔を一つだけ設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…充電凹コネクタ
11…ハウジング
60…金属クリップ(電線保持部材)
61…本体部
67…電線挿通孔
66…湾曲部
68…逃がし部
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電用コネクタに用いられる電線保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電線保持部材として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、複数の電線挿通孔を備えたゴム製の円柱状部材であって、複数の電線が電線挿通孔に挿通された後、かしめリングなどの締め付け部材によって全周から締め付けられて圧縮されることで電線を保持するようになっている。そして、電線を保持した状態の電線保持部材が、充電用コネクタのハウジング内に収められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−324621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電線保持部材は、電線挿通孔の内周面と電線の外周面の間で摩擦力を発生させることによって電線を保持しているにすぎないため、その摩擦力を超える強い力で電線が引っ張られるなどした場合、電線を保持することができず、ハウジングの内部で電線が断線するなどのおそれがある。このため、電線の保持力を高める方法として、例えば電線保持用クリップなどを用いて電線を強力に保持する方法も考えられるものの、電線の傷付きやハウジングに対する回り止めなどを併せて検討する必要がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で電線保持部材を取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充電用コネクタを構成するハウジングの内部に取り付けられる電線保持部材であって、一対の半割体を互いに組み付けてなる箱形状の本体部を備え、この本体部の外面がハウジングの内面に面接触することにより本体部がハウジングに対して電線の軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、本体部の外面に、電線を挿通させる電線挿通孔が設けられ、この電線挿通孔は、両半割体の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部が向き合うように両半割体を組み付けることで構成されており、電線は、両湾曲部によって狭持されることにより本体部に保持されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、箱形状の本体部を設けたから、本体部の外面がハウジングの内面に面接触することにより本体部をハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。また、両湾曲部が向き合うようにして電線挿通孔を構成し、両湾曲部によって電線を狭持するようにしたから、電線の傷付きを防止した上で電線を本体部に保持することができる。したがって、金属製の電線保持部材で電線を保持するに際して、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
一対の半割体は、同一部品である構成としてもよい。
このような構成によると、部品の種類を削減でき、部品コストを低減できる。
【0009】
湾曲部は、円弧状とされている構成としてもよい。
このような構成によると、電線に対する押圧力を均一化することができ、電線の傷付きをより防止できる。
【0010】
湾曲部の両端部には、電線挿通孔の径方向外側に傾斜した逃がし部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、両半割体を組み付ける際に湾曲部が電線の外周面に対して過度に押圧された場合であっても、電線の一部が逃がし部に入り込むことにより、電線の傷付きを防止できる。
【0011】
一対の電線挿通孔が、電線の軸方向に間隔を空けて同軸で配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、二箇所の電線挿通孔で電線を保持すればよいため、各電線挿通孔で電線にかかる押圧力を下げることができる。これにより、電線の傷付きをより防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線保持部材で電線を保持するに際して、電線の傷付きを防止しつつハウジングに対して回り止め状態で取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】充電用コネクタの斜視図
【図2】充電用コネクタの側面図
【図3】図1においてカバー側ハウジングを外した状態を示した斜視図
【図4】図3におけるベース側ハウジングのみを示した斜視図
【図5】図3における金属クリップを側方から見た側面図
【図6】図3における金属クリップを電線の軸方向に沿って上下方向に切断し側方から見た断面図
【図7】図2におけるA−A線断面図
【図8】ベース側ハウジングの内面側を示す側面図
【図9】カバー側ハウジングの内面側を示す側面図
【図10】図8におけるB−B線断面図
【図11】半割体の斜視図
【図12】金属クリップの側面図
【図13】金属クリップの平面図
【図14】金属クリップの正面図
【図15】図12におけるC−C線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図15の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は、図1に示すように、全体としてピストル形状(ガン形状)をなすハウジング11を有しており、このハウジング11は、車両側コネクタ(図示せず)と嵌合可能なフロントハウジング20と、このフロントハウジング20を左右両側から挟み付けるベース側ハウジング30およびカバー側ハウジング40とを備えて構成されている。また、ハウジング11には、図2に示すように、複数のボルトBによってボルト締結されており、これらのボルトBによってベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40とが一体に組み付けられている。
【0015】
本実施形態の電線Wは、図3に示すように、金属製の金属クリップ60に保持されており、この金属クリップ60は、ハウジング11の手持ち部分であるグリップ部13の内部に収容されている。グリップ部13は、解除ボタン52から下方に向かうほど後方に向かう斜め方向に延びる形態をなしている。なお、以下のグリップ部13および金属クリップ60の内部構造の説明においては電線Wの軸方向を前後方向として、電線Wの引き出し方向を後方とする。
【0016】
グリップ部13の後方には電線Wが引き出されている。この電線Wは、家庭用の電源に接続されるようになっており、この充電用コネクタ10を車両側コネクタに嵌合することによって車両内部に搭載されたバッテリ(図示せず)への充電が行われるようになっている。
【0017】
グリップ部13における電線Wの引出口には、ゴムブッシュ15が装着されている。ゴムブッシュ15は可撓性を有するゴム材からなり、図6に示すように、グリップ部13の後端よりも後方に突出する形態をなしている。ゴムブッシュ15は、グリップ部13の内周面に対して凹凸嵌合した状態で前後方向に抜け止めされて保持されている。ゴムブッシュ15の内部には、電線Wが貫通しており、電線Wが上下左右に振られた場合に、その電線Wがグリップ部13の後端に接触するなどして傷付くことを規制している。
【0018】
両ハウジング30,40の内部には、図3に示すように、レバー50が収容されており、レバー50の前端側には、ロック爪51が設けられている。このロック爪51は、両ハウジング30,40の前端開口から前方に突出するとともに、フロントハウジング20の上方に配置されている。充電用コネクタ10を車両側コネクタに嵌合させると、ロック爪51が車両側コネクタに設けられたロック突部(図示せず)に対して嵌合方向に係止することにより、充電用コネクタ10と車両側コネクタが嵌合状態に保持される。
【0019】
一方、レバー50の後端側には、解除ボタン52が設けられている。この解除ボタン52は、ハウジング11の後端角部(グリップ部13の上端角部)に開設された解除窓12から上方に突出して設けられており、この解除ボタン52を押し下げると、ロック爪51が持ち上がってその係止状態が解除され、充電用コネクタ10を車両側コネクタから離脱させることができるようになっている。この解除ボタン52の押し下げ動作は、グリップ部13を手で握ったまま親指を使うことで行われる。
【0020】
フロントハウジング20は合成樹脂製であって、円筒状をなして前方に開口する形態をなしている。フロントハウジング20の内部には、複数の端子収容部21が前方に突出して設けられている。端子収容部21は、略円筒状をなしており、各端子収容部21の内部には、雌端子(図示せず)が収容されている。この雌端子に圧着接続された小径の電線がハウジング11の内部で一纏めに集められて大径の電線Wとなり、この大径の電線Wがグリップ部13の内部を通り、その後端から外部に導出されている。
【0021】
フロントハウジング20の後部における外周面には、図3に示すように、フランジ部22が外側に張り出すようにして周設されている。一方、ベース側ハウジング30の前端部には、図4および図8に示すように、フランジ部22の半周分が適合して嵌り込むベース側の装着溝31が周設されている。同じく、カバー側ハウジング40の前端部には、図9に示すように、フランジ部22の残りの半周分が適合して嵌り込むカバー側の装着溝41が周設されている。両装着溝31,41によってフランジ部22を左右両側から挟み込み、両ハウジング30,40をボルトBによって締結すると、フロントハウジング20がベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40とによって左右両側から狭持された状態で強固に保持される。
【0022】
このように、ハウジング11における前端側はがたつきがないリジッドな状態となって剛体として構成されるため、ベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40を組み付けてボルトBを締結する際に両ハウジング30,40が位置ずれするなどのおそれはない。しかしながら、グリップ部13においては、フロントハウジング20のように強固に保持される部材がないため、ボルトBを締結する際に、両ハウジング30,40がボルトBの締結方向に位置ずれするおそれがある。
【0023】
詳細に説明すると、ハウジング11の内部には複数のボルト締結部35,45が設けられており、これらのボルト締結部35,45のうちフロントハウジング20から最も離れた位置にあるボルト締結部35,45がグリップ部13の内部におけるゴムブッシュ15の近傍に設けられている。両ハウジング30,40を組み付ける前の状態では、図8および図9に示すように、グリップ部13におけるベース側ハウジング30の開口縁にボルト締結部35が連設され、グリップ部13におけるカバー側ハウジング40の開口縁にボルト締結部45が連設されている。これらのボルト締結部35,45にボルトBが締結されると、カバー側ハウジング40には、ボルト締結部45を中心とする時計回り方向の力が発生することになる。この結果、ボルト締結部45と反対側に位置する開口縁がベース側ハウジング30のボルト締結部35側に近づくように回転しようとする。
【0024】
そこで、カバー側ハウジング40の回転を防ぐべく、ベース側ハウジング30の内部には、位置決めリブ16が設けられている。この位置決めリブ16は、ボルト締結部35側の開口縁と対向する開口縁に連設されており、ボルト締結部35からできるだけ離れて配置されているため、回転方向の力をできるだけ小さくできるようになっている。位置決めリブ16は、ベース側ハウジング30の開口縁からカバー側ハウジング40の内部に突出する形態をなしており、両ハウジング30,40が正規の姿勢で組み付けられた場合に、位置決めリブ16がカバー側ハウジング40の内面に接触するようになっている。これにより、カバー側ハウジング40の回転が阻止されている。
【0025】
金属クリップ60は、略箱形状をなす本体部61を有している。ハウジング11の内部には、本体部61が装着される装着部が設けられている。この装着部は、図8と図9を見比べればわかるように、ベース側ハウジング30とカバー側ハウジング40によって左右対称に分割されており、両ハウジング30,40を組み付けた状態では、ベース側ハウジング30側の装着部とカバー側ハウジング40側の装着部とが対向して配置されるようになっている。
【0026】
ベース側ハウジング30側の装着部は、図8に示すように、本体部61の前後方向の移動を規制する一対のベース側抜止部32,32と、本体部61の上下方向の移動を規制する一対のベース側規制部33,33と、本体部61の左右方向の移動を規制する一対のベース側狭持部34,34とからなる。一方、カバー側ハウジング40側の装着部は、図9に示すように、本体部61の前後方向の移動を規制する一対のカバー側抜止部42,42と、本体部61の上下方向の移動を規制する一対のカバー側規制部43,43と、本体部61の左右方向の移動を規制する一対のカバー側狭持部44,44とからなる。ここで、上下方向および左右方向については図7を基準として説明する。
【0027】
両ベース側抜止部32,32と両カバー側抜止部42,42はいずれも板状をなし、図6に示すように、本体部61の前後両面にほぼ面接触しており、本体部61が前後方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。また、両ベース側抜止部32,32と両カバー側抜止部42,42との間には、電線Wを通す通し孔14が形成されている。
【0028】
ベース側挟持部34とカバー側挟持部44は、図8および図9に示すように、前後方向に延びる前後リブと、上下方向に延びる上下リブとから構成されている。具体的には、図示2本の前後リブが並列に並んで配置され、図示2本の上下リブが直列に並んで配置されている。図7に示すように、ベース側挟持部34とカバー側挟持部44は、本体部61の左右両側面にほぼ線接触しており、本体部61が左右方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。
【0029】
両ベース側規制部33,33と両カバー側規制部43,43はいずれも板状をなし、図7に示すように、ベース側規制部33とカバー側規制部43の対向部は、左右方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、両ベース側規制部33,33は、本体部61の上下両面にほぼ面接触しており、本体部61が上下方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。一方、両カバー側規制部43,43についても、両ベース側規制部33,33とともに、本体部61の上下両面にほぼ面接触しており、本体部61が上下方向に移動することを規制しつつ、本体部61の傾動を規制している。すなわち、金属クリップ60の本体部61は、三方向(上下方向、左右方向、前後方向)で移動が規制された状態でかつ傾動が規制された状態にあるため、ハウジング11に対して回り止め状態で保持される。
【0030】
前後一対の抜止部32,42のうち後側の抜止部32,42は、ボルト締結部35,45に連設されている。両ハウジング30,40の開口縁におけるボルト締結部35,45の前後両側には、それぞれ凹部36,46が凹設されている。両ハウジング30,40を組み付けると、ベース側の凹部36とカバー側の凹部46とによって前後一対の水抜き孔が構成されるようになっている。これにより、グリップ部13の内部に浸入した水は、両水抜き孔から外部に排出される。
【0031】
金属クリップ60の本体部61は、図11に示す半割体62を互いに組み付けることで構成されている。両半割体62は同一部品であって、底壁63と、この底壁63の前縁および後縁から対向状態で上方に立ち上がる前壁64Fおよび後壁64Rと、底壁63の左右両側縁から対向状態で上方に立ち上がる左右一対の両側壁65L,65Rとを備えて構成されている。底壁63の四隅には、開口部63Bが設けられている。この開口部63Bによって、本体部61の内部に浸入した水を外部に排出できるようになっている。
【0032】
底壁63の中央には、図13に示すように、円孔63Aが貫通して形成されている。両半割体62,62を組み付けた状態では、図13に示すように、両円孔63A,63Aが同軸に配置される。また、底壁63は、図7に示すように、ベース側狭持部34とカバー側狭持部44によって左右両側から狭持される。両挟持部34,44において両円孔63A,63Aと対応する位置には、溝部34A,44Aが凹設されている。これにより、金属クリップ60の本体部61の内部に浸入した水を円孔63A、両溝部34A,44A、両凹部36,46などを介して外部に排出することができるようになっている。
【0033】
両前壁64Fの端縁同士は、図14に示すように、左右両側から突き合わせるように対向した配置とされている。両前壁64F,64Fの突き合わせ縁には、それぞれ円弧状をなす湾曲部66が設けられている。両湾曲部66,66が向き合うように両半割体62,62が組み付けられることで、電線Wを挿通させる電線挿通孔67が形成されている。両半割体62,62によって電線Wを挟持した状態では、図6に示すように、両湾曲部66,66が電線Wに食い込んだ状態となっているものの、この食い込みは、電線Wの被覆を傷付けることなく弾性的に押圧する程度とされている。したがって、金属クリップ60によって電線Wを傷付けることなく強固に抜け止めできるようになっている。
【0034】
また、湾曲部66の両端部には、図14に示すように、電線挿通孔67の径方向外側に傾斜した一対の逃がし部68,68が設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態において両逃がし部68,68によって挟まれた領域には、電線挿通孔67に連通する逃がし空間が形成されている。この逃がし空間には、電線Wが両湾曲部66,66によって過度に強く挟持された場合に、その電線Wの一部を逃がすことができるようになっている。また、前後両壁64F,64Rは、両湾曲部66,66が電線Wに対して強固に押し当てられた場合に、底壁63を中心として開き変形することで、電線Wにかかる押圧力を緩和できるように構成されている。これらによって、両湾曲部66,66による電線Wの傷付きをさらに規制することができる。
【0035】
両電線挿通孔67,67は、図14に示すように、両電線挿通孔67,67に挿通される電線Wの軸方向に所定の間隔を空けて同軸で配置されている。このため、一つの電線挿通孔67だけで電線Wを保持する場合よりも、電線Wに対する押圧力を小さくすることができる。
【0036】
両前壁64F,64Fの突き合わせ縁における一方の端部には、位置決め突部69が設けられ、他方の端部には、位置決め突部69が嵌り込む段部70が設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態では、位置決め突部69が段部70に嵌り込んで上下方向に係止することにより、両半割体62,62の位置ずれが規制されている。
【0037】
左右両側壁65L,65Rの一方には、係止孔71が貫通して設けられ、他方には、撓み可能な係止片72が切り起こしによって設けられている。両半割体62,62を組み付けた状態では、図15に示すように、一方の半割体62の係止片72が他方の半割体62の係止孔71に嵌り込み、係止片72の先端が係止孔71の内面に係止することにより、両半割体62,62が抜け止めされる。なお、係止片72が係止孔71に嵌り込んだ状態では、係止片72を係止孔71に対して両半割体62,62の組み付け方向と直交する方向に離脱させようとすると、位置決め突部69と段部70が接触するようになっており、これにより係止片72が係止孔71に嵌った状態に保持され、両半割体62,62が組み付け状態に保持される。
【0038】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、ベース側ハウジング30に、フロントハウジング20,レバー50などの部品を組み付けていき、電線Wに金属クリップ60を取り付ける。金属クリップ60の取り付けにあたっては、一方の半割体62の両湾曲部66によって電線Wを支持させた状態としておき、この状態から他方の半割体62を一方の半割体62に組み付けて両半割体62,62の両湾曲部66,66によって電線Wを挟持する。これにより、金属クリップ60が電線Wに対して固定される。
【0039】
次に、金属クリップ60をグリップ部13内の両ベース側抜止部32,32の間、および両ベース側規制部33,33の間に正規の姿勢で装着する。この状態では、半割体62の前後両壁64F,64Rが両ベース側抜止部32,32に面接触するとともに、半割体62の左右両側壁65L,65Rが両ベース側規制部33,33に面接触し、半割体62の底壁63がベース側挟持部34に線接触する。そして、他方の半割体62を一方の半割体62に組み付けると、電線Wが両湾曲部66,66によって押圧されるとともに、両係止片72,72が左右両側壁65L,65Rによって撓み変形させられつつ正規の取付位置に至ると、両係止片72,72が弾性的に復帰して両係止孔71,71に嵌り込む。これにより、両半割体62,62が組み付け状態に保持されてなる本体部61が構成され、この本体部61が電線Wに固定される。
【0040】
続けて、カバー側ハウジング40をベース側ハウジング30に対して組み付けると、フロントハウジング20のフランジ部22が両ハウジング30,40の装着溝31,41に嵌合し、フロントハウジング20が両ハウジング30,40によって挟持される。次に、複数のボルト締結部35,45に対してボルトBを締め込んでいく。ここで、グリップ部13内のボルト締結部35,45にボルトBを締め込んでいくと、締め込み時のトルクによってカバー側ハウジング40が時計回り方向に回転しようとする。しかしながら、カバー側ハウジング40の内面がベース側ハウジング30の位置決めリブ16に当接することでカバー側ハウジング40の回転が規制される。こうして、全てのボルトBを締め込むことで、充電用コネクタ10が完成する。
【0041】
以上のように本実施形態では、金属クリップ60の本体部61が両抜止部32,42によって前後方向から挟まれた状態で抜け止めされるとともに、両規制部33,43によって上下方向から挟まれた状態に保持されるとともに、両挟持部34,44によって左右両側から挟まれた状態に保持される。したがって、金属クリップ60の本体部61がグリップ部13内で電線Wの軸回り方向に回り止めされるとともに、電線Wの軸方向に抜け止めされる。また、両湾曲部66,66によって電線Wを均一に押圧することができるから、電線Wの傷付きを防ぐことができる。また、電線Wの一部を逃がす逃がし部68を設けるとともに、電線挿通孔67を前後一対設けたから、電線Wにかかる押圧力を下げることができ、電線Wの傷付きをさらに防ぐことができる。
【0042】
また、ボルトBを締結する際に、カバー側ハウジング40がボルト締結部35を中心として時計回り方向に回転しようとするものの、グリップ部13におけるボルト締結部35と反対側の開口縁に位置決めリブ16を設けたから、この位置決めリブ16をカバー側ハウジング40の内面に接触させることで、カバー側ハウジング40の回転を阻止することができる。すなわち、ベース側ハウジング30のみに位置決めリブ16を設ければよく、カバー側ハウジング40に何らかの位置決め防止機構を設けなくてよいから、スペース上の制約を受けることなく、両ハウジング30,40の位置決めを行うことができる。また、位置決めリブ16をボルト締結部35から離れた位置に設けたから、位置決めリブ16にかかる回転方向の力をできるだけ小さくすることができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線保持部材として金属クリップ60を用いているものの、本発明によると、樹脂製のクリップを用いてもよい。その場合には、可撓性を有するヒンジによって両半割体を連結してもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、湾曲部が円弧状とされているものの、本発明によると、湾曲部は円弧状に限定されず、電線Wを挟持できる形状であれば他の曲面形状でもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、両逃がし部68,68が湾曲部66の両端部にそれぞれ設けられているものの、本発明によると、湾曲部の中央に逃がし部を設けてもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、半割体62に前後一対の電線挿通孔67,67を設けているものの、本発明によると、電線挿通孔を一つだけ設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…充電凹コネクタ
11…ハウジング
60…金属クリップ(電線保持部材)
61…本体部
67…電線挿通孔
66…湾曲部
68…逃がし部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電用コネクタを構成するハウジングの内部に取り付けられる電線保持部材であって、
一対の半割体を互いに組み付けてなる箱形状の本体部を備え、
この本体部の外面が前記ハウジングの内面に面接触することにより前記本体部が前記ハウジングに対して電線の軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、
前記本体部の外面に、前記電線を挿通させる電線挿通孔が設けられ、この電線挿通孔は、両半割体の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部が向き合うように前記両半割体を組み付けることで構成されており、前記電線は、両湾曲部によって狭持されることにより前記本体部に保持されていることを特徴とする電線保持部材。
【請求項2】
前記一対の半割体は、同一部品であることを特徴とする請求項1に記載の電線保持部材。
【請求項3】
前記湾曲部は、円弧状とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線保持部材。
【請求項4】
前記湾曲部の両端部には、前記電線挿通孔の径方向外側に傾斜した逃がし部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線保持部材。
【請求項5】
一対の前記電線挿通孔が、前記電線の軸方向に間隔を空けて同軸で配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電線保持部材。
【請求項1】
充電用コネクタを構成するハウジングの内部に取り付けられる電線保持部材であって、
一対の半割体を互いに組み付けてなる箱形状の本体部を備え、
この本体部の外面が前記ハウジングの内面に面接触することにより前記本体部が前記ハウジングに対して電線の軸方向および軸回り方向へ移動することが規制されており、
前記本体部の外面に、前記電線を挿通させる電線挿通孔が設けられ、この電線挿通孔は、両半割体の突き合わせ縁から湾曲状に切り欠かれた一対の湾曲部が向き合うように前記両半割体を組み付けることで構成されており、前記電線は、両湾曲部によって狭持されることにより前記本体部に保持されていることを特徴とする電線保持部材。
【請求項2】
前記一対の半割体は、同一部品であることを特徴とする請求項1に記載の電線保持部材。
【請求項3】
前記湾曲部は、円弧状とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線保持部材。
【請求項4】
前記湾曲部の両端部には、前記電線挿通孔の径方向外側に傾斜した逃がし部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線保持部材。
【請求項5】
一対の前記電線挿通孔が、前記電線の軸方向に間隔を空けて同軸で配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電線保持部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−195214(P2012−195214A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59437(P2011−59437)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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