説明

電線保護具およびワイヤハーネス

【課題】様々な形状の電線に柔軟に対応してこれを保護可能な電線保護具を簡易に形成できる技術を提供する。
【解決手段】電線保護具2は、互いに連結される複数の保護パーツ20を備える。各保護パーツ20は、その長尺方向と直交する断面が弧状のカバー部21と、その長尺方向に沿うカバー部21の端部に連なる平板状の平板部22と、平板部22に形成された雄部241および雌部242とを備える。各保護パーツ20は、その長尺方向が電線1の延在方向に沿うように配置されるとともに、平板部22が他の保護パーツ20の平板部22と重ねられた状態で、当該重ねられた一方の平板部22に形成された雄部241と、他方の平板部22に形成された雌部242とが嵌め合わされることによって、当該他の保護パーツ20と、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護する電線保護具およびそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、定められた枝形状に布線されて車両等に搭載される。ワイヤハーネスの布線形状は多種多様であり、複雑に分岐した形状とされることも珍しくない。特許文献1,2には、ワイヤハーネスの姿勢を定められた枝形状に規制する技術が開示されている。
【0003】
ところで、ワイヤハーネスは、電線(あるいは、複数の電線を束ねた電線束)が振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材と接触しないように保護する電線保護具(プロテクタ)を備えることが多い。ここで、例えば分岐部分のような形状が特殊な電線部分を保護する電線保護具は、専用の金型を用いて特別に成形されることが一般的である。また、形状が特殊な電線部分については、PVCシート等で包み込んで保護するという方法もよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−155227号公報
【特許文献2】特開2007−95640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
形状が特殊な電線部分を保護する電線保護具を専用の金型を用いて成型した場合、ワイヤハーネスに設計変更が生じると、その電線保護具の金型から作り直す必要がある。したがって、設計変更に柔軟に対応することができないという問題がある。また、専用の金型を用いて成型した電線保護具は、形状が少しでも異なるワイヤハーネスには用いることができないため、汎用性に乏しいという問題もある。
【0006】
一方、PVCシート等で包み込んで電線を保護する方法は、電線の分岐部分をPVCシートで覆う作業に手間がかかるため、作業効率の点において好ましくない。また、この方法は、仕上がり寸法にバラツキが大きいという問題もある。
【0007】
また、上記の各方法においては、電線を、その周方向に沿う全体を完全に覆う構成となるため、電線保護具の装着部分においてワイヤハーネスの径サイズが大きくなってしまう。このため、車両の小型化に伴うワイヤハーネスのスリム化の要請に応じることができないという点も問題視されている。
【0008】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、様々な形状の電線に柔軟に対応してこれを保護可能な電線保護具を簡易に形成できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、電線を保護する電線保護具であって、長尺状の部材であって、互いに連結されることにより前記電線保護具を形成する複数の保護パーツ、を備え、前記複数の保護パーツのそれぞれが、前記長尺方向と直交する断面が弧状のカバー部と、前記長尺方向に沿う前記カバー部の端部に連なる平板状の平板部と、前記平板部に形成された雄部および雌部と、を備え、前記複数の保護パーツのそれぞれは、前記長尺方向が前記電線の延在方向に沿うように配置されるとともに、前記平板部が他の保護パーツの平板部と重ねられた状態で、当該重ねられた一方の平板部に形成された雄部と、他方の平板部に形成された雌部とが嵌め合わされることによって、前記他の保護パーツと、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る電線保護具であって、前記保護パーツが、前記カバー部に形成され、山部と谷部とを前記保護パーツの長尺方向に沿って交互に設けた蛇腹部、を備える。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る電線保護具であって、前記保護パーツが、前記カバー部と前記平板部との間に形成され、前記平板部から前記カバー部に向かうにつれて、曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変部、を備える。
【0012】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る電線保護具であって、前記蛇腹部が、前記カバー部の一部にのみ形成される。
【0013】
第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様に係る電線保護具であって、前記保護パーツが、前記カバー部における前記長尺方向と直交する幅方向の一方の端部に形成されたバンド部と、他方の端部に形成され、前記バンド部の先端が挿通係止されるロック部と、を備える。
【0014】
第6の態様は、電線と、前記電線を保護する電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、前記電線保護具が、長尺状の部材であって、互いに連結されることにより前記電線保護具を形成する複数の保護パーツ、を備え、前記複数の保護パーツのそれぞれが、前記長尺方向と直交する断面が弧状のカバー部と、前記長尺方向に沿う前記カバー部の端部に連なる平板状の平板部と、前記平板部に形成された雄部および雌部と、を備え、前記複数の保護パーツのそれぞれは、前記長尺方向が前記電線の延在方向に沿うように配置されるとともに、前記平板部が他の保護パーツの平板部と重ねられた状態で、当該重ねられた一方の平板部に形成された雄部と、他方の平板部に形成された雌部とが嵌め合わされることによって、前記他の保護パーツと、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結される。
【発明の効果】
【0015】
第1〜第6の態様によると、電線保護具は、複数の保護パーツが互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結されることにより形成される。したがって、様々な形状の電線に柔軟に対応してこれを保護可能な電線保護具を簡易に形成できる。特に、電線保護具は、各保護パーツの連結部分が平板部の重ね合わせにより形成されるので、連結部分において厚みの増加を抑制しつつ、連結部分における保護性能が高められている。一方で、連結部分以外の部分においては、カバー部が、電線の周方向に沿うように電線の保護対象領域を覆うので、ここでも高い保護性能が担保されている。つまり、この態様においては、電線保護具をコンパクトに形成しつつ、高い保護性能を実現できる。
【0016】
特に、第2の態様によると、電線保護具を形成する保護パーツが蛇腹部を備えるので、電線が屈曲している場合であっても、電線保護具を電線の延在方向に沿うように屈曲させて電線に装着することができる。
【0017】
特に、第3の態様によると、電線保護具を形成する保護パーツが、カバー部と平板部との間に形成された徐変部を備えるので、電線保護具が電線を傷つけにくくなる。
【0018】
特に、第4の態様によると、蛇腹部がカバー部の一部にのみ形成される。この構成によると、例えば、保護パーツの蛇腹部が形成されていない部分を介して、テープを電線に巻付けることによって、電線保護具を電線に対して確実に固定することができる。
【0019】
特に、第5の態様によると、電線保護具を形成する保護パーツのバンド部を電線に巻付けてロック部に挿通係止することによって、電線保護具を電線に対して簡単に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】車両に搭載された状態のワイヤハーネスの様子を模式的に示す断面図である。
【図3】保護パーツの斜視図である。
【図4】保護パーツの正面図である。
【図5】保護パーツの側断面図である。
【図6】電線に電線保護具を装着する各工程の様子を模式的に示す図である。
【図7】電線に電線保護具を装着する各工程の様子を模式的に示す図である。
【図8】Y字状の電線に装着された電線保護具を示す図である。
【図9】枝部分が屈曲した電線に装着された電線保護具を示す図である。
【図10】各枝部分の径サイズが異なる電線に装着された電線保護具を示す図である。
【図11】4分岐の電線に装着された電線保護具を示す図である。
【図12】5分岐の電線に装着された電線保護具を示す図である。
【図13】直列の連結を含む電線保護具を示す図である。
【図14】直列の連結を含む電線保護具を示す図である。
【図15】変形例に係る保護パーツの斜視図である。
【図16】変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、例えば、自動車などの車両に搭載され、バッテリ又はインバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を接続する。
【0022】
<1.ワイヤハーネス>
本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、ワイヤハーネス100の斜視図である。図2は、車両に搭載された状態のワイヤハーネス100の様子を模式的に示す断面図である。
【0023】
ワイヤハーネス100は、1本又は複数本の電線1と、電線1に装着された電線保護具2とを備える。
【0024】
<1−1.電線>
電線1は、導線が絶縁被覆によって覆われたケーブルであり、例えば、丸ケーブル又はフラットケーブルなどである。電線1の端部には、通常、コネクタ(図示省略)等が設けられる。電線1の表面領域において、ワイヤハーネス100が車両等に配設された際に車両内に搭載された他部品等の物体Xと接触する可能性がある領域部分は、保護すべき領域(保護対象領域)Aとして規定される(図2、図6の上段参照)。例えば、車体パネルPに沿って配索されたワイヤハーネス100の場合、車体パネルP側の弧状領域は保護する必要はなく、物体Xに対向する弧状領域のみを保護すればよい。この場合、電線1の周方向からみて弧状の領域が、保護対象領域Aとして規定される。
【0025】
<1−2.電線保護具>
電線保護具2は、電線1の保護対象領域Aを覆う用具である。電線1は、その保護対象領域Aが電線保護具2に覆われることにより、車両に搭載された状態において、電線1が周囲に存在する物体Xと接触して損傷することが防止される。電線保護具2は、複数個の保護パーツ20が互いに連結されることにより形成される。以下において、保護パーツ20の構成について詳細に説明する。
【0026】
<2.保護パーツ20>
保護パーツ20の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、保護パーツ20の斜視図である。図4は、保護パーツ20を図3の矢印K1からみた正面図である。図5は、保護パーツ20を図2の矢印K2からみた側断面図である。
【0027】
保護パーツ20は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)などの樹脂、あるいは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)などのゴム、または、これらを複合した材料を例えば一体成形することにより形成される長尺状の部材である。
【0028】
保護パーツ20は、カバー部21を備える。カバー部21は、保護パーツ20の長尺方向と直交する断面が弧状に形成される。
【0029】
また、保護パーツ20は、保護パーツ20の長尺方向に沿ってカバー部21の両端に連なる平板部22を備える。平板部22は、平板状(保護パーツ20の長尺方向と直交する断面が扁平な矩形状)に形成される。
【0030】
さらに、保護パーツ20は、カバー部21と平板部22との間に形成され、平板部22からカバー部21に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変部23を備える。
【0031】
保護パーツ20は、さらに、平板部22に形成された連結部24を備える。連結部24は、保護パーツ20を他の保護パーツ20との連結する際に供される部材であり、具体的には、雄部241と雌部242とを備える。雄部241は、例えば、平板部22に突設された軸部と、軸部の先端に着設された軸部より大径の大径部とから構成される。また、雌部242は、雄部241を挿通させる貫通孔により構成される。ただし、雌部242の孔サイズは、雄部241の大径部の径サイズより小さく、雄部241の軸部の径サイズよりも大きく形成されており、雄部241の大径部を雌部242の貫通孔に強制挿通させると、雄部241と雌部242とが抜け防止状態に嵌め合わされた状態となる。
【0032】
保護パーツ20は、さらに、カバー部21に形成された蛇腹部25を備える。蛇腹部25は、保護パーツ20の長尺方向に沿って山部と谷部とを交互に設けた構成となっている。蛇腹部25が形成されることによって、保護パーツ20は、その長尺方向と交差する方向に屈曲可能となる。
【0033】
ただし、保護パーツ20において、蛇腹部25は、カバー部21の一部のみに形成する構成として、カバー部21における蛇腹部25が形成されない領域部分を設けることが好ましい。この構成によると、当該領域部分を、保護パーツ20を電線1に固定するためのテープ巻き(あるいは、クリップ止め等でもよい)に供されるテープ止め部210として機能させることができる。
【0034】
<3.電線保護具2の装着>
電線1の保護対象領域Aに電線保護具2を装着する方法について、図1〜図5に加え、図6〜図7を参照しながら説明する。図6〜図7は、電線1に電線保護具2を装着する各工程の様子を模式的に示す図である。
【0035】
上述したとおり、電線1には保護対象領域Aが規定される。ここでは、電線1は途中で分岐(図示の例では3分岐)しており、保護対象領域Aは、電線1の分岐部を含み、電線1の周方向からみて弧状の領域に規定されるものとする(図6の上段)。
【0036】
この保護対象領域Aに電線保護具2を装着する場合、まず、第1の保護パーツ20(以下「第1保護パーツ201」という)で、保護対象領域Aの一部分を覆った状態とする。具体的には、第1保護パーツ201の一方の平板部22(好ましくは、平板部22に形成された連結部24)を電線1の分岐中心Qに位置させるとともに、第1保護パーツ201の長尺方向を、電線1のいずれかの枝部分(以下「第1枝部分11」という)に沿わせた状態とする。そして、この状態で、第1保護パーツ201のテープ止め部210を介してテープTを第1枝部分11に巻き付けて第1保護パーツ201を第1枝部分11に固定する。これによって、第1保護パーツ201が保護対象領域Aの一部を覆った状態で、第1枝部分11に固定されることになる(図6の下段)。なお、保護パーツ20を枝線部分に固定する態様は必ずしもテープ止めによるものである必要はなく、例えば、クリップ等で固定してもよい。
【0037】
続いて、第2の保護パーツ20(以下「第2保護パーツ202」という)で、保護対象領域Aにおける残りの露出部分(保護パーツ20で覆われていない部分)を覆った状態とする。具体的には、まず、第2保護パーツ202の一方の平板部22を電線1の分岐中心Qに位置している第1保護パーツ201の平板部22の上に重ねて、第1保護パーツ201の平板部22に形成された雄部241を、当該平板部22に重ねられた第2保護パーツ202の平板部22に形成された雌部242に嵌め合わせる。これによって、第1保護パーツ201と第2保護パーツ202とが、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結されることになる。さらに、第2保護パーツ202の長尺方向を、保護パーツ20で覆われていない枝部分のいずれか(以下「第2枝部分12」という)に沿わせた状態とする。そして、この状態で、第2保護パーツ202のテープ止め部210を介してテープTを第2枝部分12に巻き付けて第2保護パーツ202を第2枝部分12に固定する。これによって、第2保護パーツ202が保護対象領域Aの一部を覆った状態で、第2枝部分12に固定されることになる(図7の上段)。
【0038】
続いて、第3の保護パーツ20(以下「第3保護パーツ203」という)で、保護対象領域Aにおける残りの露出部分を覆った状態とする。具体的には、まず、第3保護パーツ203の一方の平板部22を電線1の分岐中心Qに位置している第2保護パーツ202の平板部22の上に重ねて、第2保護パーツ202の平板部22に形成された雄部241を、当該平板部22に重ねられた第3保護パーツ203の平板部22に形成された雌部242に嵌め合わせる。これによって、第2保護パーツ202と第3保護パーツ203とが、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結されることになる。さらに、第3保護パーツ203の長尺方向を、保護パーツ20で覆われていない残りの枝部分(以下「第3枝部分13」という)に沿わせた状態とする。そして、この状態で、第3保護パーツ203のテープ止め部210を介してテープTを第3枝部分13に巻き付けて第3保護パーツ203を第3枝部分13に固定する。これによって、第3保護パーツ203が保護対象領域Aの残りの部分を覆った状態で、第3枝部分13に固定されることになる(図7の下段)。
【0039】
以上の工程によって、保護対象領域Aに電線保護具2が装着され、ワイヤハーネス100が得られることになる(図1参照)。なお、上記の説明では、各保護パーツ201,202,203を一つずつ各枝線部11,12,13に固定する態様であったが、3個の保護パーツ201,202,203を放射状に連結した上で、当該連結体(すなわち、3個の保護パーツ201,202,203が互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変な状態で放射状に連結された連結体)を保護対象領域Aに載置し、各保護パーツ201,202,203を各枝線部11,12,13に沿わせて固定する態様としてもよい。
【0040】
<4.電線保護具2のその他の構成例>
上記の説明においては、電線保護具2は、3分岐した電線1の分岐部を含む保護対象領域Aに装着されるものとしたが、電線保護具2は、他の形状の電線1にも対応することができる。電線保護具2の他の構成例について例示する。
【0041】
<4−1.第1の構成例>
上述したとおり、電線保護具2は各保護パーツ20の互いの長尺方向に沿う軸のなす角度を自由に調整可能に形成されている。したがって、例えば、電線1がY字状に分岐しており、当該分岐部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合、図8に示すように、各分岐部11,12,13のなす角度と一致するように調整することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。
【0042】
<4−2.第2の構成例>
電線保護具2を形成する各保護パーツ20には、蛇腹部25が形成されている。したがって、例えば、電線1が屈曲しており、当該屈曲部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合、図9に示すように、屈曲した枝部分に固定される保護パーツ20を、当該枝部分に沿うように屈曲させ、当該屈曲状態で保護パーツ20と枝部分とを一体にテープ巻き固定する。これによって、保護パーツ20が屈曲した枝部分に沿う屈曲姿勢で当該枝部分に固定され、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2が形成される。
【0043】
<4−3.第3の構成例>
電線保護具2は、複数の保護パーツ20を連結することにより形成されており、各保護パーツ20は、周方向に沿う曲率が保護パーツ20の曲率以下であるような全ての電線1に対応することができる。したがって、例えば、図10に示すように、第2枝部分12が他の枝部分11,13よりも径サイズが小さい場合、各保護パーツ201,202,203を、各枝部分11,12,13の径サイズにあうように僅かに弾性変形させながらテープ巻き固定することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。このように、電線保護具2においては、電線1の分岐部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合において、各枝部分の径サイズがバラバラであっても、問題なく当該保護対象領域Aを保護することができる。
【0044】
<4−4.第4の構成例>
電線保護具2は、無数の保護パーツ20を連結可能に形成されている。したがって、例えば、電線1が4分岐しており、当該分岐部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合、図11に示すように、4個の保護パーツ201,202,203,204を、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が各枝部分11,12,13,14のなす角度と一致するように調整して各枝部分11,12,13,14に装着することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。同様に、電線1が5分岐しており、当該分岐部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合、図12に示すように、5個の保護パーツ201,202,203,204,205を、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が各枝部分11,12,13,14,15のなす角度と一致するように調整して各枝部分11,12,13,14,15に装着することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。つまり、n股(nは任意の自然数)の分岐部を含む領域が保護対象領域Aとされている場合、n個の保護パーツ20を放射状に連結するとともに、各保護パーツ20のなす角度を各枝部分がなす角度と一致するように調整して各枝部分に装着することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。
【0045】
<4−5.第5の構成例>
また、電線保護具2は、無数の保護パーツ20を放射状にだけではなく、直列状にも連結可能に形成されている。したがって、例えば、図1に例示される態様において、1個の保護パーツ20だけでは、当該保護パーツ20が固定された枝部分の保護対象領域Aをカバーできない場合、図13に示すように、別の保護パーツ20を当該保護パーツ20と直列に連結することによって、当該保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することができる。図14に示すように、一端において他の保護パーツ20と直列に連結された保護パーツ20の他端に、複数の保護パーツ20を放射状に連結することによって、より複雑な形状の保護対象領域Aを覆う電線保護具2を形成することもできる。
【0046】
<5.効果>
上記の実施形態によると、電線保護具2は、複数の保護パーツ20が互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結されることにより形成される。したがって、様々な形状の電線1に柔軟に対応してこれを保護可能な電線保護具2を簡易に形成できる。このため、個々の電線1の形状に合わせたプロテクタを形成する場合に比べてコスト面でも有利になる。また、急なレイアウト変更にも柔軟に対応できるという利点もある。
【0047】
特に、電線保護具2は、各保護パーツ20の連結部分が平板部22の重ね合わせにより形成されるので、連結部分において厚みの増加を抑制しつつ、連結部分における保護性能が高められている。一方で、連結部分以外の部分においては、カバー部21が、電線1の周方向に沿うように電線1の保護対象領域Aを覆うので、ここでも高い保護性能が担保されている。つまり、上記の実施形態に係る電線保護具2は、コンパクトに形成されつつ、高い保護性能が実現される。
【0048】
なお、上記の実施形態において、平板部22に形成された連結部24(具体的には、雄部241および雌部242)は、平板部22の端面からの離間距離d1,d2(図3)がなるべく大きく設定されることが好ましい。つまり、連結部24は、外筒部33の外周縁から離れた位置に形成することが好ましい。連結部24を平板部22の外周縁から離れた位置に形成しておけば、保護パーツ20同士が連結された状態において平板部22同士が重なる領域部分が大きくなる。したがって、電線保護具2において、各保護パーツ20の平板部22が複数枚重ねられる領域が大きくなる。すなわち、高い保護性を有する領域が大きくなる。これによって、電線保護具2における保護性能を高めることができる。特に、電線保護具2は、各保護パーツ20の平板部22が複数枚重ねられた領域において電線1の分岐中心Q付近を覆う可能性が高く、この構成においては、分岐中心Q付近を確実に保護することができる。
【0049】
また、上記の実施形態によると、電線保護具2は、電線1を、その周方向に沿う全体を完全に覆うのではなく、保護が必要な領域のみを覆うので、電線保護具2の装着部分においてワイヤハーネス100の径サイズが大きくなりにくい。したがって、車両の小型化に伴うワイヤハーネス100のスリム化の要請に応じることができる。
【0050】
また、上記の実施形態によると、保護パーツ20同士は、雄部241を雌部242に嵌め合わせることによって簡単に連結できるので、複雑な形状の電線1に対応した電線保護具2も簡単に形成することができる。また、各保護パーツ20をテープ止め等することによって電線保護具2を電線1に取り付けることができるので、電線保護具2を電線1に取り付ける際の作業性も良好なものとなる。
【0051】
また、上記の実施形態によると、電線保護具2を構成する各保護パーツ20が蛇腹部25を備えるので、電線1が屈曲している場合であっても、電線保護具を電線の延在方向に沿うように屈曲させて電線に装着することができる。
【0052】
また、上記の実施形態によると、電線保護具2を形成する各保護パーツ20が、カバー部21と平板部22との間に形成された徐変部23を備えるので、電線保護具2が電線1を傷つけにくくなる。
【0053】
また、上記の実施形態においては、蛇腹部25がカバー部21の一部にのみ形成されることによって、電線保護具2を電線1に対して確実に固定するためのテープ止め部210が形成される。この構成においては、テープ止め部210を介してテープT等を電線1に巻き付けることによって、保護パーツ20を(ひいては、電線保護具2を)電線1に対して確実に固定することができる。すなわち、蛇腹部25が形成されていない領域部分であるテープ止め部210においては、テープTが保護パーツ20に密着してずれにくいため、保護パーツ20を電線1に対して確実に固定することができる。
【0054】
<6.変形例>
上記の実施形態においては、テープ巻きにより各保護パーツ20を電線1に固定する態様としていたが、保護パーツ20を電線1に固定する態様は、必ずしもテープ巻きによる固定態様でなくともよい。例えば、保護パーツ20を電線1に固定するための機能部として、バンド部とロック部とを設ける構成としてもよい。
【0055】
図15には、この変形例に係る保護パーツ20aの構成が示されている。保護パーツ20aは、上記の実施形態に係る保護パーツ20と同様の構成に加え、カバー部21に形成された固定部26を備える。固定部26は、保護パーツ20を電線1に対して固定する部材であり、具体的には、バンド部261とバンド部の先端を挿通係止させるロック部262とを備える。バンド部261は、一端がカバー部21の一方の側縁(保護パーツ20aの長尺方向と直交する幅方向に沿う一方の側縁)に着設され、保護パーツ20aの長尺方向と直交する方向に沿って延びる。また、ロック部262は、カバー部21の他方の側縁に着設され、バンド部261の先端を挿通係止させて固定する貫通孔により構成される。固定部26を備える保護パーツ20aを電線1に固定する場合、図16に示すように、保護パーツ20aのバンド部261を電線1に巻き付けるとともに、その先端部をロック部262に挿通係止させればよい。
【0056】
この変形例によると、電線保護具2aを形成する各保護パーツ20aを電線1に対して簡単に固定することができる。なお、固定部26を設ける場合、テープ止め部210を形成する必要性は低くなるため、カバー部21の全体に蛇腹部25を形成してもよい。ただし、固定部26を用いた固定態様はテープ巻きによる固定態様と併用してもよく、この場合は、テープ止め部210を形成しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
100 ワイヤハーネス
1 電線
2 電線保護具
20,202,202,203,204,205 保護パーツ
21 カバー部
22 平板部
23 徐変部
24 連結部
25 蛇腹部
26 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を保護する電線保護具であって、
長尺状の部材であって、互いに連結されることにより前記電線保護具を形成する複数の保護パーツ、
を備え、
前記複数の保護パーツのそれぞれが、
前記長尺方向と直交する断面が弧状のカバー部と、
前記長尺方向に沿う前記カバー部の端部に連なる平板状の平板部と、
前記平板部に形成された雄部および雌部と、
を備え、
前記複数の保護パーツのそれぞれは、
前記長尺方向が前記電線の延在方向に沿うように配置されるとともに、前記平板部が他の保護パーツの平板部と重ねられた状態で、当該重ねられた一方の平板部に形成された雄部と、他方の平板部に形成された雌部とが嵌め合わされることによって、前記他の保護パーツと、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結される、電線保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線保護具であって、
前記保護パーツが、
前記カバー部に形成され、山部と谷部とを前記保護パーツの長尺方向に沿って交互に設けた蛇腹部、
を備える、電線保護具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電線保護具であって、
前記保護パーツが、
前記カバー部と前記平板部との間に形成され、前記平板部から前記カバー部に向かうにつれて、曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変部、
を備える、電線保護具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電線保護具であって、
前記蛇腹部が、前記カバー部の一部に形成される、電線保護具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電線保護具であって、
前記保護パーツが、
前記カバー部における前記長尺方向と直交する幅方向の一方の端部に形成されたバンド部と、
他方の端部に形成され、前記バンド部の先端が挿通係止されるロック部と、
を備える、電線保護具。
【請求項6】
電線と、前記電線を保護する電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、
前記電線保護具が、
長尺状の部材であって、互いに連結されることにより前記電線保護具を形成する複数の保護パーツ、
を備え、
前記複数の保護パーツのそれぞれが、
前記長尺方向と直交する断面が弧状のカバー部と、
前記長尺方向に沿う前記カバー部の端部に連なる平板状の平板部と、
前記平板部に形成された雄部および雌部と、
を備え、
前記複数の保護パーツのそれぞれは、
前記長尺方向が前記電線の延在方向に沿うように配置されるとともに、前記平板部が他の保護パーツの平板部と重ねられた状態で、当該重ねられた一方の平板部に形成された雄部と、他方の平板部に形成された雌部とが嵌め合わされることによって、前記他の保護パーツと、互いの長尺方向に沿う軸のなす角度が可変に連結される、
ワイヤハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−253961(P2012−253961A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126134(P2011−126134)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】