説明

電線束

【課題】芯線どうしが接合された接合部を有する電線束において、電線に加わる引っ張り力によって接合部に加わる力を緩和し、接合部の接合が外れる不都合を回避することを目的とする。
【解決手段】電線束1は、導電体の芯線40と該芯線の周囲を覆う絶縁被覆70とからなる複数の絶縁電線10を備え、複数の絶縁電線10各々の一部において芯線40どうしが接合された接合部45が形成されている。この複数の絶縁電線10各々の絶縁被覆70は、内側に形成された内側絶縁被覆30と、内側絶縁被覆30の外側に形成されるとともに、隣接する他の絶縁電線10との間で相互に溶着した外側絶縁被覆20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線で構成された電線束に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に代表される車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、複数の絶縁電線の芯線が電気的に接続される場合がある。この場合、複数の絶縁電線各々の一部に形成された裸芯線部どうしが、溶接又は導電性スリーブの圧着などによって接合され、接合部が形成される。例えば、特許文献1には、電線束の端部における複数の裸芯線が、導電性スリーブの圧着により接合されることについて記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、電線束における末端の接合部よりも根元側の絶縁被覆の部分が、テープで巻かれることによって結束されることについても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−129326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今、車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、軽量化及びコスト低減のため、より細い電線の採用が望まれている。しかしながら、複数の細い電線の芯線どうしが接合される場合、接合部の接合強度を十分に確保することが難しく、電線に加わる引っ張り力によって接合部の接合が外れやすいという問題が顕在化する。そのことが、細い電線の採用によるワイヤハーネスの軽量化及びコスト低減の支障となっている。
【0006】
例えば、特許文献1に示されるように、接合部が形成された電線束が、粘着テープ又はベルトなどの結束材で結束されても、各電線における絶縁被覆の部分は相互に滑りやすい。そのため、電線に加わる引っ張り力は、ほぼそのまま接合部にも加わってしまい、接合部の接合が外れやすい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、芯線どうしが接合された接合部を有する電線束において、電線に加わる引っ張り力によって接合部に加わる力を緩和し、接合部の接合が外れる不都合を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、導電体の芯線と該芯線の周囲を覆う絶縁被覆とからなる複数の絶縁電線を備え、複数の前記絶縁電線各々の一部において前記芯線どうしが接合された接合部が形成された電線束であって、複数の前記絶縁電線各々の前記絶縁被覆は、内側に形成された内側絶縁被覆と、前記内側絶縁被覆の外側に形成されるとともに、隣接する他の前記絶縁電線との間で相互に融着した外側絶縁被覆と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る電線束であって、前記外側電線被覆は前記内側絶縁被覆よりも融点が低い材料で形成されている。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に係る電線束であって、前記接合部を覆う熱収縮性の絶縁キャップをさらに備える。
【0011】
第4の発明は、第1又は第2の発明に係る電線束であって、複数の前記絶縁電線各々の前記外側絶縁被覆の一部は、前記接合部へ溶け出した後に前記接合部を覆う状態で固化した絶縁カバー部を形成する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明において、複数の絶縁電線各々の絶縁被覆は二重構造を有し、複数の絶縁電線各々は、隣接する他の前記絶縁電線との間で、融着した外側絶縁被覆によって相互に接着されている。このため、絶縁電線に加わった引っ張り力は、主として外側絶縁電線の融着部分に作用し、接合部に伝わる力は大幅に緩和される。その結果、絶縁電線に加わった引っ張り力によって接合部の接合が外れる不都合が回避される。
【0013】
第2の発明において、外側絶縁被覆は内側絶縁被覆よりも融点が低い材料で形成されている。このため、加熱という簡易な工程で、外側絶縁被覆を溶融させて、絶縁電線間を相互に溶着させることができる。
【0014】
第3の発明において、絶縁被覆から延び出ている芯線が、熱収縮性の絶縁キャップに覆われている。従って、一連の加熱工程により、外側絶縁被覆の融着と接合部の絶縁とを実現できるため、工数を削減できる。
【0015】
第4の発明において、外側絶縁被覆の一部が、接合部へ溶け出した後に接合部を覆う状態で固化した絶縁カバー部を形成する。このため、別部材となるキャップ部材を取り付けることなく接合部を電気的に絶縁及び保護することができる。また、一連の加熱工程により外側絶縁被覆の融着と接合部の絶縁とを実現することができるため、工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電線束1の斜視図である。
【図2】絶縁電線10の断面図である。
【図3】電線束1の製造工程の一部である芯線接合工程を示す図である。
【図4】電線束1製造工程の一部である加熱工程を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る電線束1bの製造工程の一部である皮剥工程を示す図である。
【図6】電線束1bの製造工程の一部である芯線接合工程を示す図である。
【図7】電線束1bの製造工程の一部である加熱工程を示す図である。
【図8】電線束1b及びカバー形成装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る電線束1の斜視図が示されている。また、図2には、電線束1を構成する絶縁電線10の断面図が示されている。便宜上、図1において、電線束1が備える絶縁キャップ60は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0019】
図1に示されるように、電線束1は、導電体の芯線40と芯線40の周囲を覆う絶縁被覆70とからなる複数の絶縁電線10(図1では2本の絶縁電線10)を備えており、複数の絶縁電線10各々の一部において芯線40どうしが接合された接合部45が形成されている。本実施形態では、接合部45は絶縁電線10の端末において絶縁被覆70から延び出た芯線40(以下において、芯線露出部41と称する場合がある。)どうしが接合されることで形成されている。さらに、接合部45は、絶縁キャップ60で覆われている。なお、図1に示される芯線40は、よりあわされた複数の細い導線からなる撚り線であるが、芯線40が単線であることも考えられる。
【0020】
複数の絶縁電線10各々は接合部45によって電気的に接続されている。接合部45は、超音波溶接などの溶接、又は導電性の部材が芯線40全体を一括して束ねる状態で芯線40に圧着されることなどによって形成される。図1には、溶接によって接合された接合部45が示されている。
【0021】
図2に示されるように、絶縁電線10を構成する絶縁被覆70は、内側に形成された内側絶縁被覆30と内側絶縁被覆30の外側に形成された外側絶縁被覆20とを備える。つまり、絶縁被覆70は2種類の材料で構成された二重構造を有している。
【0022】
内側絶縁被覆30には、従来の一般的な絶縁電線の絶縁被覆として採用されてきた材料が使用される。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどがこれに当てはまる。
【0023】
一方、本実施形態における外側絶縁被覆20には、内側絶縁被覆30の材料よりも融点が低い材料が使用される。例えば、ポリエステルとアクリル酸エチレートとの共重合体であるEMA(Ethyl MethAcrylate)が外側絶縁被覆20に採用される。EMAは融点がおよそ90度であって、絶縁被覆として一般的に用いられる材料、すなわち内側絶縁被覆に使用される材料よりも融点が低い。従って、絶縁被覆70が外側絶縁被覆20として使用される材料の融点と同等の温度で加熱されると、内側絶縁被覆30が芯線40を覆った状態は維持されるが、外側絶縁被覆20は内側絶縁被覆30の外周面で溶融する。
【0024】
なお、外側絶縁被覆20には、内側絶縁被覆30よりも融点が低い材料のみならず、アルコールなどの溶剤が塗布されることによって溶融する材料が採用されても構わない。この場合、絶縁電線10の部分をアルコールなどの溶剤中に浸漬させることによって、外側絶縁被覆20を溶融させることができる。
【0025】
このような外側絶縁被覆20は、図1に示されるように、絶縁電線10と隣接する他の絶縁電線10との間で相互に溶着している。つまり、一体の外側絶縁被覆20が、各絶縁電線10を構成する内側絶縁被覆30各々の外周面を覆っている。このように、電線束1を構成する複数の絶縁電線10は、芯線露出部41における接合部45のみならず、それぞれの絶縁被覆70の部分においても接合されている。
【0026】
図1に示される電線束1において、接合部45の保護及び外部との電気的な絶縁を図るため、絶縁キャップ60が芯線露出部41に対して取り付けられている。
【0027】
以下において、電線束1の製造工程について、図3及び図4を用いて説明する。図3には、接合部45の形成のための芯線接合工程における絶縁電線10の側面図が示されている。また、図4には、複数の絶縁電線10の接合及び絶縁キャップ60の取り付けのための加熱工程における電線束1の側面図が示されている。
【0028】
接合の対象となる複数の絶縁電線10各々は、予めその一部において絶縁被覆70を除去する皮剥処理が施される。この皮剥処理により、絶縁電線10各々は、接合部45が形成される部分において、芯線40が部分的に露出した状態に加工される。なお、本実施形態では、皮剥処理が絶縁電線10の端末に施されて、芯線露出部41が形成される。なお、本実施形態においては、皮剥処理は、絶縁電線10の端部に対して行われる。
【0029】
皮剥処理後の複数の絶縁電線10は、それぞれの芯線露出部41が1箇所に揃う状態で束ねられ、芯線露出部41の溶接、例えば超音波溶接が行われる。これによって、図3に示されるように、芯線露出部41の一部において、芯線40どうしは一括に接合され、接合部45が形成される。絶縁電線10各々は、接合部45で電気的に接続される。
【0030】
続いて、絶縁電線10の束の端部における接合部45が形成された芯線露出部41から絶縁被覆70に亘る部分に対して、熱収縮性を有する材料で形成された絶縁キャップ60が被せられる。なお、この段階では、絶縁キャップ60は、絶縁電線10の束の端部に被せられて未収縮の状態であり、絶縁キャップ60の内面と絶縁電線10との間には隙間が形成されている。絶縁キャップ60は、熱収縮チューブ61と、その熱収縮チューブ61の一方の開口を塞ぐ栓62とにより構成されている。栓62は、例えば樹脂部材である。
【0031】
次に、未収縮の絶縁キャップ60が一部に被せられた複数の絶縁電線10に対して、加熱処理が施される。
【0032】
加熱処理は、例えば複数の絶縁電線10がドライヤーによって熱風を吹き付けられることによって行われる。このとき、ドライヤーによる熱風の吹き付けは、主に、絶縁電線10の外側絶縁被覆20が互いに接している部分及び芯線露出部41に嵌め込まれた絶縁キャップ60の外側部分に対して行われる。
【0033】
なお、加熱処理はドライヤーによる熱風の吹き付けのみならず、恒温槽などを用いて高温に保持された空間内に絶縁電線10を挿入することによって行われてもよい。又、通電による絶縁電線10の抵抗発熱を利用して行われてもよい。
【0034】
加熱処理が行われている間、複数の絶縁電線10は、それらを束ねる工具、テープ又は人の手などによって仮結束された状態で保持されている。
【0035】
このように、加熱処理が施されて、絶縁電線10の外側絶縁被覆20が互いに接している部分の温度が外側絶縁被覆20の融点に達すると、外側絶縁被覆20は溶融し始める。そして、溶融した外側絶縁被覆20は、内側絶縁被覆30の外周面の間に行き渡り、各絶縁電線10間の空間を埋めて一体となる。
【0036】
外側絶縁被覆20が溶融すると、加熱処理は停止されるため、溶融した外側絶縁被覆20の温度は降下する。この結果、溶融した外側絶縁被覆20が固化し、複数の絶縁電線10を構成する内側絶縁被覆30の外側で、外側絶縁被覆20が相互に溶着する。
【0037】
また、加熱処理は、芯線露出部41に嵌め込まれた絶縁キャップ60の外側部分に対しても行われ、絶縁キャップ60の熱収縮チューブ61は加熱によって収縮する。従って、絶縁キャップ60は芯線露出部41を含む絶縁電線10の束の端部に密着し、芯線露出部41はその絶縁キャップ60によって覆われる。このようにして、絶縁キャップ60は芯線露出部41に取り付けられた状態となる。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る電線束1では、複数の絶縁電線10各々の絶縁被覆70が二重構造を有し、複数の絶縁電線10各々は、隣接する他の絶縁電線10との間で、溶着した外側絶縁被覆20によって相互に接着されている。
【0039】
このため、絶縁電線10に加わった引っ張り力は、主として外側絶縁被覆20の溶着部分に作用し、接合部45に伝わる力は大幅に緩和される。その結果、絶縁電線10に加わった引っ張り力によって接合部45の接合が外れる不都合が回避される。特に、より細い絶縁電線10が接合される際に有効である。
【0040】
また、外側絶縁被覆20は内側絶縁被覆30よりも融点が低い材料で形成されている。このため、加熱という簡易な工程で、外側絶縁被覆20を溶融させて、絶縁電線10間を相互に溶着させることができる。
【0041】
また、芯線露出部41、すなわち絶縁被覆70から延び出ている芯線40は、熱収縮性の絶縁キャップ60に覆われている。従って、一連の加熱工程により、外側絶縁被覆20の溶着と接合部45を含む芯線露出部41の絶縁及び保護とを実現することができるため、工数を削減できる。
【0042】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る電線束1bについて、図5〜図8を用いて説明する。図5には、本発明の第2の実施形態に係る電線束1bの製造工程の一部である皮剥工程が示されているまた、図6には、電線束1bの製造工程の一部である芯線接合工程が示されている。また、図7には、電線束1bの製造工程の一部である加熱工程が示されている。また、図8には、電線束1b及びカバー形成装置の側面図が示されている。なお、第1の実施形態と同じ部材については同符号を付して、具体的な説明は省略するものとする。
【0043】
電線束1bは、図8に示されるように、第1の実施形態に係る電線束1が備える絶縁キャップ60の代わりに、外側絶縁被覆20の一部が成形された部分である絶縁カバー部90を備える。以下において、電線束1bの作製工程について説明する。
【0044】
はじめに、接合対象となる複数の絶縁電線10各々に対して皮剥処理が行われる。皮剥処理において、まず、絶縁電線10の端末が、図示しない端末固定具によって固定保持される。そして、端末固定具が保持する絶縁電線10の部分とは反対方向に向かって絶縁被覆70の皮剥処理を行い、芯線40を部分的に露出させる。これにより、芯線露出部41が形成される。なお、端末固定具によって保持された絶縁電線10の端末固定部48(図5における一点鎖線部分)は、後ほど切除される。或いは、端末固定部48に残存する絶縁被覆70が、芯線40の末端から引き抜かれて除去される。
【0045】
本実施形態においては、芯線露出部41の部分から剥がされた絶縁被覆70は、第1の実施形態のように取り除かれることなく、芯線露出部41の根元部分の近傍(絶縁被覆70の端部)に残される。つまり、絶縁被覆70における芯線40から剥がされた部分は、絶縁被覆70の端部の周囲にめくり上がった状態で残存する。このめくり上がった絶縁被覆70の部分を、以下において残存被覆部75と称する。絶縁被覆70は内側絶縁被覆30と外側絶縁被覆20との二重構造であるため、より詳細には、残存被覆部75は、内側絶縁被覆30の部分である残存内側被覆部76と外側絶縁被覆20の部分である残存外側被覆部77とを含む。
【0046】
このように残存被覆部75が形成された状態に加工された絶縁電線10各々は、それぞれの芯線露出部41が1箇所に揃う状態で束ねられ、芯線露出部41の溶接、例えば超音波溶接が行われる。これによって、芯線露出部41の芯線40どうしは一括に接合されて、接合部45が形成される。絶縁電線10各々は接合部45で電気的に接続される。
【0047】
そして、接合部45が形成された絶縁電線10に対して加熱処理が行われる。この加熱処理は、絶縁電線10の外側絶縁被覆20が互いに接している部分の加熱処理によって絶縁電線10を溶着する工程と、カバー形成装置110を用いた加熱処理によって絶縁カバー部90を形成する工程とを含む。以下、絶縁電線10を溶着する工程と絶縁カバー部90を形成する工程とが同時進行で実施される形態について説明するが、絶縁電線10の溶着工程と絶縁カバー部90の形成工程とが個別に実施されても構わない。
【0048】
絶縁電線10の外側絶縁被覆20が互いに接している部分の加熱処理については、第1の実施形態と同様である。そのため、ここでは、カバー形成装置110による加熱処理について説明する。
【0049】
カバー形成装置110は、熱伝導性の高い部材で形成されており、内部にヒータ112が埋め込まれている。ヒータ112の駆動により、カバー形成装置110の温度は少なくとも外側絶縁被覆20が溶融する温度にまで高めることができる。
【0050】
このカバー形成装置110には、複数の絶縁電線10の芯線露出部41から残存被覆部75までが挿入される挿入口111が形成されており、当該挿入口111は上方に開口した窪み形状に形成されている。この挿入口111の内面が、絶縁カバー部90の外面と同じ形状を有している。
【0051】
複数の絶縁電線10は、このようなカバー形成装置110の挿入口111に、接合部45を下方に向けた状態で、接合部45から挿入される。挿入口111に挿入された絶縁電線10の芯線露出部41と挿入口111の内側面との間には、いずれの部分においても隙間が形成されており、残存被覆部75が挿入口111の内側面に接している。
【0052】
ヒータ112によりカバー形成装置110の温度が高められて、外側絶縁被覆20の融点に到達すると、挿入口111に挿入されている残存被覆部75のうち残存外側被覆部77が溶融し始める。溶融した残存外側被覆部77は、挿入口111の内側面に沿って、挿入口111の内部を下方に向かって流れ落ちる。上述のように芯線露出部41と挿入口111の内側面との間には隙間が形成されているため、溶出した残存外側被覆部77は、この隙間の部分を充たす。つまり、芯線露出部41は、挿入口111の内部で溶出した残存外側被覆部77に浸漬した状態となる。
【0053】
なお、残存内側被覆部76は、外側絶縁被覆20の融点程度の温度では影響を受けにくいため、内側絶縁被覆30の端末において形成された状態のままであり、溶出した残存外側被覆部77が芯線露出部41とともに覆っている。
【0054】
所定時間経過後、ヒータ112による加熱は停止され、カバー形成装置110の温度は降下する。カバー形成装置110が所定の温度に到達した段階で、絶縁電線10がカバー形成装置110から抜き出されると、溶出した残存外側被覆部77が挿入口111の型通りに固化した絶縁カバー部90が形成されている。絶縁カバー部90は、芯線露出部41及び残存内側被覆部76を密着して覆っている。このように、皮剥処理された外側絶縁被覆20が、芯線露出部41、特に接合部45の部分の保護及び電気的な絶縁のために、絶縁カバー部90として再利用される。
【0055】
以上のように、第2の実施形態では、外側絶縁被覆20の一部が、接合部45へ溶出した後に接合部45を覆う状態で固化した絶縁カバー部90を形成する。このため、別部材となる絶縁キャップを取り付けることなく、接合部45を保護及び電気的に絶縁することができる。
【0056】
また、一連の加熱工程により外側絶縁被覆20の溶着と接合部45の絶縁とを実現することができるため、工数を削減できる。
【符号の説明】
【0057】
1,1b 電線束
10 絶縁電線
20 外側絶縁被覆
30 内側絶縁被覆
40 芯線
41 芯線露出部
45 接合部
48 端末固定部
60 絶縁キャップ
70 絶縁被覆
75 残存被覆部
76 残存内側被覆部
77 残存外側被覆部
90 絶縁カバー部
110 カバー形成装置
111 挿入口
112 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体の芯線と該芯線の周囲を覆う絶縁被覆とからなる複数の絶縁電線を備え、複数の前記絶縁電線各々の一部において前記芯線どうしが接合された接合部が形成された電線束であって、
複数の前記絶縁電線各々の前記絶縁被覆は、
内側に形成された内側絶縁被覆と、
前記内側絶縁被覆の外側に形成されるとともに、隣接する他の前記絶縁電線との間で相互に融着した外側絶縁被覆と、を備えることを特徴とする電線束。
【請求項2】
請求項1に記載の電線束であって、
前記外側電線被覆は前記内側絶縁被覆よりも融点が低い材料で形成されている、電線束。
【請求項3】
請求項2に記載の電線束であって、
前記接合部を覆う熱収縮性の絶縁キャップをさらに備える、電線束。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電線束であって、
複数の前記絶縁電線各々の前記外側絶縁被覆の一部は、前記接合部へ溶け出した後に前記接合部を覆う状態で固化した絶縁カバー部を形成する、電線束。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26018(P2013−26018A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159566(P2011−159566)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】