説明

電線横出し式のコネクタ

【課題】コネクタハウジングの形状の単純な変更により、コストアップを招かずに、端子収容室の隔壁の損傷の問題を解消することのできる電線横出し式のコネクタを提供する。
【解決手段】樹脂製のコネクタハウジング10の外周壁(上下壁11、12及び左右側壁13)で囲まれた空間の内部に、外周壁よりも薄肉の隔壁16で仕切られた前後方向に延びる複数の端子収容室15が形成され、各端子収容室にそれぞれ端子が収容された際に、各端子に接続された電線が、端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに引き出し方向と交差する横方向へ曲げて誘導される電線横出し式のコネクタにおいて、コネクタハウジングの外周壁の後端のうち少なくとも電線曲げ方向に位置する側壁13の後端に、隔壁16の後端よりも後方へ突出する突出壁14が延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングの各端子収容室に収容された端子から延びる電線が端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに引き出し方向と交差する方向へ曲げて誘導される電線横出し式のコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の配索レイアウト上の都合などにより、コネクタハウジングの後端から引き出した電線をすぐに横方向に屈曲させて引き延ばした電線横出しコネクタが知られている。
【0003】
図3は一般的なコネクタハウジングの後方から見た外観を示す斜視図、図4はそのコネクタハウジングの一部に端子を収容して電線を横方向に誘導した状態を示す水平断面図である。
【0004】
コネクタハウジング110の外周壁は、互いに平行な上壁11及び下壁12と、上下壁11、12の幅方向両端を連結する互いに平行な左右側壁13とからなる正面視矩形状をなしている。これら上壁11、下壁12、左右側壁13で囲まれた空間の内部には、薄肉の隔壁16で仕切られた多数の端子収容室15が設けられており、端子収容室15は、左右方向に直線状に上下2段に配列されている。これら端子収容室15の後側は電線引出部17とされており、電線横出し式のコネクタでは、各端子収容室15に挿入された端子21から後方に延びる電線25は、端子収容室15の後端開口から電線引出部17に引き出された後、すぐに左右方向のうちの一方向である横方向(図4中矢印C方向)にまとめて屈曲させられて誘導されている。
【0005】
ところで、このような電線横出しコネクタの場合、コネクタハウジング110から出てきた電線25をすぐに横方向に屈曲させているので、屈曲内周側に位置する電線25の影響で、端子収容室15の隔壁16の後端に強い力がかかり、その部分が損傷することがあった。特に、最近では、コネクタの小型化や端子ピッチの狭小化の要請により、端子収容室15の隔壁16を極力薄くする傾向にあり、隔壁16がより損傷を受けやすいという問題があった。
【0006】
そのような問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に記載の電線横出しコネクタが知られている。
【0007】
この特許文献1に記載のコネクタは、コネクタハウジングの後端を斜めに形成することで、同後端の位置を、屈曲内周側の電線に接続された端子が位置する側ほど、屈曲外周側の電線に接続された端子が位置する側よりも、コネクタハウジングの前端側に設定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−54356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記特許文献1に記載のコネクタのように、コネクタハウジングの後端を斜めに形成する場合、コネクタハウジングの形状が複雑になってしまい、コストがかかってしまう問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮し、コネクタハウジングの形状の単純な変更により、コストアップを招かずに、端子収容室の隔壁の損傷の問題を解消することのできる電線横出し式のコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、樹脂製のコネクタハウジングの外周壁で囲まれた空間の内部に、前記外周壁よりも薄肉の隔壁で仕切られた前後方向に延びる複数の端子収容室が形成され、該各端子収容室にそれぞれ端子が収容された際に、該各端子に接続された電線が、前記端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに引き出し方向と交差する方向へ曲げて誘導される電線横出し式のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングの外周壁の後端のうち少なくとも前記電線曲げ方向に位置する外周壁の後端に、前記隔壁の後端よりも後方へ突出する突出壁が延設されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電線横出し式のコネクタであって、前記コネクタハウジングの外周壁が、左右方向の幅寸法の大きい上下壁と、該上下壁の左右方向の幅寸法よりも上下方向の高さ寸法の小さい左右側壁とから正面視横長矩形状に構成され、前記端子収容室が左右方向に複数配列され、前記電線が、前記端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに左右方向の一方へ曲げてまとめて誘導され、前記左右側壁の後端のうち前記電線曲げ方向に位置する側壁の後端に前記突出壁が延設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、次の効果を得ることができる。即ち、電線を端子収容室の後端開口から後方へ真っ直ぐに引き出すのではなく、端子収容室の後端開口から後方へ引き出した後に、引き出し方向と交差する方向に曲げながら誘導する電線横出し式のコネクタの場合、電線の屈曲部の内周側が当たる部分に過剰なストレスがかかる。従って、端子収容室を仕切る隔壁が、コネクタの小型化や端子ピッチの狭小化の要請などにより薄肉化されている場合には、その隔壁の後端部分に電線の屈曲部から過大な力が加わることから、隔壁が損傷を受ける可能性がある。この点、請求項1の発明のコネクタでは、その電線の屈曲部やその直後の部分を、隔壁の後端から離れた位置で、肉厚の外周壁の後端に延設した突出壁によって受けることができるので、その突出壁に電線からの力が多く受け止められることになり、隔壁の後端に作用する過大な力を緩和することができて、隔壁の損傷を回避することができる。しかも、そのように隔壁を保護する効果は、コネクタハウジングの外周壁の後端のうち少なくとも電線曲げ方向に位置する外周壁の後端に突出壁を設けるだけで得られるから、コネクタハウジングの形状の僅かな変更だけですみ、コネクタハウジングの形状を複雑にしてコストアップを招くようなこともない。
【0014】
請求項2の発明によれば、次の効果を得ることができる。即ち、横長形状のコネクタハウジングにおいて多数の電線を横方向(左右方向)に屈曲させながら誘導する場合、屈曲部の外周側の電線が内周側の電線に重層的に重なることになり、内周側の電線に外周側の電線からの曲げ力が重なって作用することなりやすい。従って、電線の屈曲部の内周側に位置する隔壁に過大な力がかかりやすくなる。その点、請求項2の発明では、電線曲げ方向に位置する側壁の後端に突出壁を設けて、その突出壁で電線の屈曲部やその直後の部分を受けるようにしているので、過大な力がかかりやすい内周側に位置する隔壁の後端の損傷を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のコネクタのコネクタハウジングの後部の構成を示す斜視図である。
【図2】同コネクタハウジングの一部に端子を収容して電線を横方向に誘導した状態を示す水平断面図である。
【図3】従来の一般的なコネクタハウジングの後方から見た外観を示す斜視図である。
【図4】同コネクタハウジングの一部に端子を収容して電線を横方向に誘導した状態を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は実施形態のコネクタのコネクタハウジングの後部の構成を示す斜視図、図2は同コネクタハウジングの一部に端子を収容して電線を横方向に誘導した状態を示す水平断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のコネクタの主要素である樹脂製のコネクタハウジング10の外周壁は、互いに平行な上壁11及び下壁12と、これら上下壁11、12の幅方向両端を連結する互いに平行な左右側壁13とからなる正面視矩形状をなしている。上下壁11、12は、左右方向の幅寸法が大きく、左右側壁13は、上下壁11、12の左右幅寸法よりも上下方向の高さ寸法が小さく設定されており、外周壁は正面視横長矩形状に構成されている。
【0019】
これら上壁11、下壁12、左右側壁13で囲まれた長方形空間の内部には、外周壁よりも薄肉の隔壁16で仕切られた多数の端子収容室15が設けられており、端子収容室15は、左右方向に直線状に上下2段に配列されている。これら端子収容室15の後側は電線引出部17とされており、各端子収容室15に挿入された端子21から後方に延びる電線25は、端子収容室15の後端開口から電線引出部17に引き出された後、すぐに左右方向のうちの一方向である横方向(図2中矢印C方向)にまとめて屈曲させられて誘導されている。
【0020】
また、コネクタハウジング10の左右両側壁13の後端には、端子収容室15間の隔壁16の後端よりも後方へ突出する突出壁14が側壁13と同じ肉厚で延設されており、隔壁16の後端は突出壁14よりも引っ込んでいる。
【0021】
なお、上壁11の上面には、相手コネクタと嵌合した際に相手コネクタハウジングの係合部と係合するロック部19を有したロックアーム18が設けられている。
【0022】
このように構成されたコネクタハウジング10を使用した電線横出し式のコネクタによれば、次の効果を得ることができる。
【0023】
即ち、本電線横出し式のコネクタのように、電線25を端子収容室15の後端開口から後方へ真っ直ぐに引き出すのではなく、端子収容室15の後端開口から後方へ引き出した後に引き出し方向と交差する方向に曲げながら誘導する場合、電線25の屈曲部の内周側が当たる部分に過剰なストレスがかかる。従って、端子収容室15を仕切る隔壁16が、コネクタの小型化や端子ピッチの狭小化の要請などにより薄肉化されている場合には、その隔壁16の後端部分に電線25の屈曲部から過大な力が加わることから、隔壁16が損傷を受ける可能性がある。
【0024】
しかしながら、本実施形態のコネクタでは、その電線25の屈曲部やその直後の部分を、隔壁16の後端から離れた位置で、肉厚の側壁13の後端に延設した突出壁14によって受けることができるので、その突出壁14に電線25からの力が多く受け止められることになり、隔壁16の後端に作用する過大な力を緩和することができて、隔壁16の損傷を回避することができる。
【0025】
特に、横長形状のコネクタハウジング10において多数の電線25を横方向(矢印C方向)に屈曲させながら誘導する場合、屈曲部の外周側の電線25が内周側の電線25に重層的に重なることになり、内周側の電線25に外周側の電線25からの曲げ力が重なって作用することなりやすい。従って、電線25の屈曲部の内周側に位置する隔壁16に過大な力がかかりやすくなるが、本実施形態のコネクタでは、多数の電線25が束状に曲げられる方向の側壁13の後端に突出壁14を設けて、その突出壁14で電線25の屈曲部やその直後の部分を受けるようにしているので、過大な力がかかりやすい内周側に位置する隔壁16の後端の損傷を効果的に回避することができる。
【0026】
しかも、そのように隔壁16を保護する効果は、側壁13の後端に突出壁14を設けるだけで得られるから、コネクタハウジング10の形状の僅かな変更だけですみ、コネクタハウジング10の形状を複雑にしてコストアップを招くようなこともない。
【0027】
なお、突出壁14は左右両側の側壁13に設けられているので、どちら側に電線25を曲げても、同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、上記実施形態では、左右側壁13に突出壁14を設けた場合を示したが、電線の曲げ方向が上下方向の場合は、上下壁11、12の後端に突出壁を延設してもよい。また、外周壁の全周に突出壁を延設してもよいし、部分的に突出壁を延設してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 コネクタハウジング
11 上壁(外周壁)
12 下壁(外周壁)
13 側壁(外周壁)
14 突出壁
15 端子収容室
16 隔壁
21 端子
25 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のコネクタハウジングの外周壁で囲まれた空間の内部に、前記外周壁よりも薄肉の隔壁で仕切られた前後方向に延びる複数の端子収容室が形成され、該各端子収容室にそれぞれ端子が収容された際に、該各端子に接続された電線が、前記端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに引き出し方向と交差する方向へ曲げて誘導される電線横出し式のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングの外周壁の後端のうち少なくとも前記電線曲げ方向に位置する外周壁の後端に、前記隔壁の後端よりも後方へ突出する突出壁が延設されていることを特徴とする電線横出し式のコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電線横出し式のコネクタであって、
前記コネクタハウジングの外周壁が、左右方向の幅寸法の大きい上下壁と、該上下壁の左右方向の幅寸法よりも上下方向の高さ寸法の小さい左右側壁とから正面視横長矩形状に構成され、前記端子収容室が左右方向に複数配列され、前記電線が、前記端子収容室の後端開口から後方に引き出された後、すぐに左右方向の一方へ曲げてまとめて誘導され、前記左右側壁の後端のうち前記電線曲げ方向に位置する側壁の後端に前記突出壁が延設されていることを特徴とする電線横出し式のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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