説明

電線皮剥ぎ器

【課題】 芯線を傷つけるのを防止して電線の被覆材を剥ぎ取ることができる電線皮剥ぎ器を提供する。
【解決手段】 芯線Zが被覆材Yで被覆される電線Xに対して適用される電線皮剥ぎ器1であって、少なくとも一端側同士が接離可能な一対の本体部2,3を備えると共に、少なくとも一方の本体部2,3は、対となる本体部3,2側に突出し且つ対となる本体部3,2との一端側同士が接近する方向と略平行に配置される切刃20,30を少なくとも一つ備え、切刃20,30は、各本体部2,3の一端側同士が接近し且つ各本体部2,3及び電線Xの少なくとも何れか一方が電線Xの軸心方向を中心として回転することにより、各本体部2,3間に案内された電線Xの所定箇所における被覆材Yを切断するよう構成されることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯線が被覆材で被覆される電線の被覆材を剥ぎ取る電線皮剥ぎ器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体の芯線が絶縁体で且つ弾性体の被覆材で被覆される電線の被覆材を剥ぎ取る電線皮剥ぎ器として、図9に示すように、電線Xの先端側を圧入される挿入孔201と、挿入孔201の出口を斜めに切断した形状の傾斜壁面に固定される切刃202とを備える電線皮剥ぎ器200が知られている(例えば、特許文献1)。そして、かかる電線皮剥ぎ器200は、電線Xが回転される(図9(b)における矢印方向)、又は、電線Xに対して回転されることにより、切刃202の刃部203で被覆材Yを剥ぎ取って芯線Zを露出させることができる。
【特許文献1】特開2000−102131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる電線皮剥ぎ器200は、例えば、電線Xの軸心方向と挿入孔201の軸心方向とが交差するように、電線Xが挿入孔201内で傾くと、電線Xの軸心の位置が切刃202の回転における軸心の位置と相違するため、切刃202が芯線Zを傷付けるという問題がある。そして、特に、かかる電線皮剥ぎ器200が高圧電気設備の間接活線作業における電線Xの皮剥ぎ作業に使用される場合、一人の作業員が絶縁操作棒(例えば、絶縁ヤットコ)で電線Xを保持し、もう一人の作業員が電線皮剥ぎ器200を先端に装着させた絶縁操作棒(例えば、2軸回転操作棒)で電線皮剥ぎ器200(切刃202)を回転させる必要があるため、上記問題が発生しやすい。しかも、かかる作業は、作業員が二人必要であり、非常に複雑である。
【0004】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、芯線を傷つけるのを防止して電線の被覆材を剥ぎ取ることができる電線皮剥ぎ器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電線皮剥ぎ器は、芯線が被覆材で被覆される電線に対して適用される電線皮剥ぎ器であって、少なくとも一端側同士が接離可能な一対の本体部を備えると共に、少なくとも一方の本体部は、対となる本体部側に突出し且つ対となる本体部との一端側同士が接近する方向と略平行に配置される切刃を少なくとも一つ備え、切刃は、各本体部の一端側同士が接近し且つ各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転することにより、各本体部間に案内された電線の所定箇所における被覆材を切断するよう構成されることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、少なくとも一端側同士が接離可能な一対の本体部間に、芯線が被覆材で被覆される電線を案内する。そして、各本体部の一端側同士が接近すると共に、各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転する。すると、少なくとも一方の本体部に少なくとも一つ設けられる切刃が、対となる本体部側に突出し且つ対となる本体部との一端側同士が接近する方向と略平行に配置されるため、切刃が電線の所定箇所における被覆材を切断する。
【0007】
したがって、本体部(特に、切刃)に対して電線を位置決めした状態で、各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転することができるため、電線の軸心の位置と切刃の(電線周りの)回転における軸心の位置とを略一致することができる。なお、被覆材を切断したあと、切刃が切断された被覆材の部位を掛止した状態で、各本体部が電線の軸心方向に移動すると、切断された被覆材の部位が剥ぎ取られ(抜き取られ)、芯線が露出する。
【0008】
また、本発明に係る電線皮剥ぎ器においては、各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転する際に、各本体部と被覆材における剥ぎ取られる部位とが相対的に回転変位するのを規制する規制手段を備えてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、規制手段により、各本体部が被覆材における剥ぎ取られる部位に対して回転変位するのを規制しつつ、各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転する。したがって、規制手段が被覆材の剥ぎ取られる部位に芯線と相対的に回転変位するような力を付勢できるため、被覆材を芯線から剥ぎ取るのを容易にする。
【0010】
また、本発明に係る電線皮剥ぎ器においては、規制手段は、切刃を有する少なくとも一方の本体部に、対となる本体部側に突出して設けられ、且つ、切刃が被覆材を切断するのに伴い、被覆材における剥ぎ取られる部位に貫入する尖形部を備えてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、切刃を有する少なくとも一方の本体部に、対となる本体部側に突出する尖形部が設けられ、切刃が被覆材を切断するのに伴い、尖形部が被覆材における剥ぎ取られる部位に貫入する。これにより、切刃が被覆材の切断を開始する際には、尖形部が被覆材に貫入しないため、一対の本体部及び電線の少なくとも何れか一方が円滑に回転することができ、さらに、切刃が被覆材の切断を完了する際には、尖形部が被覆材に貫入しているため、被覆材の剥ぎ取られる部位に、芯線と相対的に回転変位するような力を確実に付勢することができる。したがって、被覆材を切断し、切断した被覆材を芯線から剥ぎ取るのをさらに容易にする。
【0012】
また、本発明に係る電線皮剥ぎ器においては、各本体部間に配置され、電線を内部に案内する筒状の案内部材を備え、案内部材は、各本体部と接離可能に構成され、さらに、案内部材が電線を案内するのに各本体部の一端側同士が離間された状態において、切刃を有する本体部から離間するように案内部材を位置決めさせる位置決め手段が設けられてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、電線を内部に案内する筒状の案内部材が、各本体部と接離可能で且つ各本体部間に配置される。そして、各本体部の一端側同士が離間された状態で、案内部材が切刃を有する本体部から離間するように、位置決め手段が案内部材を位置決めする。これにより、筒状の案内部材が電線を案内(挿入)する方向において切刃と重ならないように位置決めされるため、案内部材が電線を案内する際に、切刃が電線と干渉するのを防止できる。
【0014】
また、本発明に係る電線皮剥ぎ器においては、各本体部間に配置され、電線を内部に案内する筒状の案内部材を備え、切刃は、一方の本体部に設けられ、案内部材は、他方の本体部に固定されてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、切刃が一方の本体部に設けられ、案内部材が各本体部間に配置されて且つ他方の本体部に固定される。これにより、筒状の案内部材が電線を案内(挿入)する方向において切刃と重ならないように位置決めされるため、案内部材が電線を案内する際に、切刃が電線と干渉するのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明に係る電線皮剥ぎ器によれば、電線の軸心の位置と切刃の回転における軸心の位置とを略一致させることができるため、芯線を傷つけるのを防止して電線の被覆材を剥ぎ取ることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る電線皮剥ぎ器における一実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。また、本実施形態においては、電線皮剥ぎ器が間接活線作業に使用される絶縁操作棒に装着されて使用される場合について説明する。なお、図1〜図7において、図9の符号と同一の符号を付した部分は、従来技術と同一の構成又は要素を表す。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る電線皮剥ぎ器を装着可能な絶縁操作棒(以下、「絶縁ヤットコ」ともいう)100は、絶縁性を有する主軸101と、主軸101の先端部に配置される把持部102と、主軸101の基部に配置される操作部103と、操作部103の操作を把持部102に伝達する伝達部104とを備える。また、絶縁ヤットコ100は、主軸101の中間部に樹脂製の絶縁傘105と、基端部にゴムキャップ106と、ゴムキャップ106の近傍にストラップ107とを備える。
【0019】
把持部102は、主軸101に固定される固定部材(以下、「固定顎」ともいう)108と、固定部材108に枢着される可動部材(以下、「可動顎」ともいう)109と備える。具体的には、把持部102は、基部が主軸101の先端部に固定される固定顎108と、中間部が固定顎108の中間部に枢着される可動顎109とを備える。そして、把持部102は、可動顎109が回動(図1(a)における矢印A方向)し、固定顎108及び可動顎109の先端部同士が接離することにより、対象物を把持又は解放可能に構成される。
【0020】
操作部103は、把持部102の可動顎109を可動させる操作レバー110を備える。具体的には、操作部103は、主軸101に固定される固定具111と、固定具111に枢着される操作レバー110とを備え、操作レバー110が回動することにより、可動顎109が可動するように構成される。また、操作部103は、操作レバー110の先端部を主軸101から離反する方向(図1(a)における矢印B方向)に付勢する巻きバネ112を備える。
【0021】
したがって、操作部103が巻きバネ112の弾性力(付勢力)に反して操作レバー110を回動させる(図1(a)における矢印B方向と反対方向)ことにより、可動顎109が回動し、固定顎108の先端部と可動顎109の先端部とが接近するように構成される。反対に、操作部103の操作レバー110が開放される(巻きバネ112の弾性力に反する力が操作レバー110に加えられず、操作レバー110が図1(a)における矢印B方向に回動する)と、固定顎108の先端部と可動顎109の先端部とが巻きバネ112の弾性力によって離反するように構成される。
【0022】
伝達部104は、把持部102の可動顎109と操作部103の操作レバー110とを連結し、操作レバー110の手動操作を把持部102の把持操作に伝達する連結軸113を備える。かかる連結軸113は、絶縁性を有し、一端部が可動顎109に枢着され、他端部が操作レバー110に枢着される。
【0023】
本実施形態に係る電線皮剥ぎ器は、導電体の芯線Zが絶縁体の被覆材Yで被覆される電線Xに対して適用される。また、図2〜図4に示すように、電線皮剥ぎ器1は、少なくとも一端側同士が接離可能な一対の本体部(以下、「第1本体部」及び「第2本体部」ともいう)2,3を備える。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、他端側同士が枢着されて一端側同士が接離可能に構成される一対の第1本体部2及び第2本体部3を備える。より具体的には、電線皮剥ぎ器1は、他端側同士がヒンジ部材4に固定されて、他端側を中心にそれぞれ回動可能な一対の第1本体部2及び第2本体部3を備える。
【0024】
そして、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3間に配置され、電線Xを内部に案内する筒状の案内部材5を備える。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3間に一端側(先端側)から電線Xを案内するように、一端側から他端側(基端側)に向けて配置される筒状の案内部材5を備える。より具体的には、電線皮剥ぎ器1は、第1本体部2及び第2本体部3間に、電線Xに緩挿される円筒状の案内部材5を備える。
【0025】
さらに、電線皮剥ぎ器1は、少なくとも一方の本体部2(3)が、対となる本体部3(2)側に突出し且つ対となる本体部3(2)との一端側同士が接近する方向と略平行に配置される切刃20(30)を少なくとも一つ備える。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3が他端側を中心に回動する方向と略直交するように配置される板状の切刃20,30を備える。より具体的には、電線皮剥ぎ器1は、第1本体部2が第2本体部3側に突出する回転可能な円盤状の切刃20を一つ備え、第2本体部3が第1本体部2側に突出する回転可能な円盤状の切刃30,30を二つ備える。
【0026】
各本体部2,3は、一端側同士が接近することにより、電線X及び案内部材5を収容する空間を形成する溝部21,31を備える。具体的には、各本体部2,3は、一端側同士が当接して一体化することにより、電線X及び案内部材5を内部に収容する円孔を形成する溝部21,31を備える。より具体的には、各本体部2,3は、略直方体状に形成され、対向する部位で且つ幅方向の中央部に長手方向に延びる溝部21,31を備え、一端側同士が当接して一体化することにより円筒状の案内部材5を嵌合(保持)するように構成される。
【0027】
また、各本体部2,3は、ヒンジ部材4に他端側が固定される基部材22,32と、切刃20,30,30を固定するために基部材22,32の一端側に固定される先端部材23,33とを備える。具体的には、各本体部2,3は、円盤状の切刃20,30,30を軸支する、軸部材24,34,34を介設し且つ支持する基部材22,32及び先端部材23,33を備える。そして、各本体部2,3が基部材22,32及び先端部材23,33間に各切刃20,30を介設することにより、各本体部2,3の一端側同士が当接した際には、各切刃20,30が案内部材5より一端側に配置される。
【0028】
切刃20,30,30は、各本体部2,3の一端側同士が接近し且つ各本体部2,3及び電線Xの少なくとも何れか一方が電線Xの軸心方向を中心として回転することにより、各本体部2,3間に案内された電線Xの所定箇所における被覆材Yを切断するよう構成される。具体的には、切刃20,30,30は、第1本体部2及び第2本体部3が回転することにより被覆材Yを切断すべく、外周縁の全周に亘って鋭利に形成される刃部25,35,35を備える。
【0029】
そして、切刃20,30,30は、各本体部2,3の一端部側同士が当接する状態において、回転軸(軸部材24,34の軸心)が互いに平行であり、さらに、各回転軸(軸部材24,34の軸心)間の距離が回転軸(軸部材24,34の軸心)と直交する面において等しくなるように配置される。具体的には、切刃20,30,30は、互いに略同径(略同形状)に形成され、さらに、第1本体部2及び第2本体部3の対向する面同士が当接する状態において、各回転軸(軸部材24,34の軸心)と案内部材5の中心軸(案内部材5に緩挿する電線Xの中心軸)との距離が、案内部材5の中心軸と直交する面において等しくなるように配置される。
【0030】
また、各切刃20,30は、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士が当接する状態において、芯線Zと離間するように配置される(または、径寸法が設定される)。具体的には、各切刃20,30は、第1本体部2及び第2本体部3の一端側部同士が当接する状態において、外周縁の刃部25,35が芯線Zの外周面のやや外側に位置するように配置される(または、径寸法が設定される)。
【0031】
さらに、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3の一端側同士が接近することにより電線Xを保持、即ち、各本体部2,3に対して電線X(特に、芯線Z)を位置決めするように構成される。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、第1本体部2及び第2本体部3が電線Xと接触することにより、電線Xを保持、即ち、各本体部2,3に対して芯線Zを位置決めするように構成される。
【0032】
案内部材5は、各本体部2,3と接離可能に構成される。また、案内部材5は、他端側が一対の本体部2,3と枢着される。具体的には、案内部材5は、他端側がヒンジ部材4に固定される。そして、案内部材5は、電線Xの案内状況を確認すべく、他端部に開口部50を備える。なお、案内部材5は、他端部だけでなく、例えば、円筒状の周面部の一部に開口部を備えてもよい。また、案内部材5は、第2本体部3側、即ち、第2本体部3と対向する周面部に貫通孔51を備える。
【0033】
また、電線皮剥ぎ器1は、案内部材5が電線Xを案内するのに各本体部2,3の一端側同士が離間された状態において、案内部材5が切刃20,30,30を有する本体部2,3から離間するように案内部材5を位置決めさせる位置決め手段6が設けられる。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3の一端側同士が離間された状態において、電線Xを案内する方向で案内部材5と切刃20,30,30とが重なるのを防止するように案内部材5を位置決めさせる位置決め手段6が設けられる。
【0034】
より具体的には、電線皮剥ぎ器1は、第1本体部2と案内部材5との間に弾性体6を介設し、各本体部2,3の一端側同士が離反するのに伴い、第1本体部2と案内部材5とを弾性力(復元力)により離反させるように構成される。また、弾性体6は、円筒状のバネであって、一端部が第1本体部2に固定され、他端部が案内部材5に固定される。
【0035】
また、電線皮剥ぎ器1は、各本体部2,3及び電線Xの少なくとも何れか一方が電線Xの軸心方向を中心として回転する際に、各本体部2,3と被覆材Yにおける剥ぎ取られる部位とが相対的に回転変位するのを規制する規制手段36を備える。かかる規制手段36は、切刃30,30を有する少なくとも一方の本体部(第2本体部)3に、対となる本体部(第1本体部)2側に突出して設けられ、且つ、切刃20,30,30が被覆材Yを切断するのに伴い、被覆材Yにおける剥ぎ取られる部位に貫入する尖形部36を備える。
【0036】
尖形部36は、案内部材5の貫通孔51に対応する第2本体部3の位置に設けられる。そして、尖形部36は、切刃20,30,30が電線X(被覆材Y)の外周部と当接する際(被覆材Yを切断する前)には、電線Xと離間し、切刃20,30,30が被覆材Yを切断するのに伴い(少なくとも各本体部2,3の一端側同士が当接した際には)、被覆材Yに貫入するように構成される。具体的には、尖形部36は、切刃20,30,30が電線X(被覆材Y)の外周部と当接する際には、案内部材5の内周面から突出しないが、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士が当接する際には、案内部材5の内周面から少なくとも一部が突出するように構成される。
【0037】
さらに、電線皮剥ぎ器1は、絶縁ヤットコ100に装着されるための固定部7を備える。かかる固定部7は、絶縁ヤットコ100の一方の顎(固定顎108又は可動顎109)における先端部を固定するように構成される。具体的には、固定部7は、第1本体部2の外側(第2本体部3に対向する部位と反対側)に配置され、一方の顎108(109)の先端部を収容して圧着するように構成される。
【0038】
また、電線皮剥ぎ器1は、第2本体部3の外側(第1本体部2に対向する部位と反対側)に、他方の顎109(108)の先端部に対応して形成される傾斜部8を備える。具体的には、電線皮剥ぎ器1は、固定顎108及び可動顎109の先端部同士が接近する際に、他方の顎109(108)の先端部に密接される傾斜部8を備える。
【0039】
本実施形態に係る電線皮剥ぎ器1の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態にかかる電線皮剥ぎ器1における電線Xの被覆材Yを剥ぎ取る作用について説明する。
【0040】
まず、絶縁ヤットコ100における可動顎109の先端部に、固定部7で電線皮剥ぎ器1を固定する。このとき、巻きバネ112の弾性力に反する力が操作レバー110に加えられていないため、固定顎108の先端部と可動顎109の先端部とが巻きバネ112の弾性力によって離間している。
【0041】
これにより、固定顎108の先端部と電線皮剥ぎ器1(傾斜部8)とが離間しているため、ヒンジ部材4により他端側同士が枢着される第1本体部2及び第2本体部3は、一端側同士が離間している。このとき、弾性体6を介設する第1本体部2と案内部材5とが離間しているため、電線Xを挿入する方向において、案内部材5が第1本体部2の切刃20及び第2本体部3の切刃30,30と重ならないように位置決め(配置)されている。
【0042】
したがって、各切刃20,30に干渉されることなく、電線Xの先端を円筒状の案内部材5の内周面に沿って、第1本体部2及び第2本体部3間に案内できる。そして、案内部材5の他端部に設けられる開口部50から電線Xの案内状況を確認しつつ、電線Xの先端がヒンジ部材4に当接するまで挿入し、案内部材5に電線Xを緩挿する。これにより、電線Xの挿入長さが一定となるため、電線Xにおける被覆材Yの剥ぎ取り長さが一定となる。
【0043】
そして、巻きバネ112の弾性力に反して操作レバー110を回動させると、可動顎109が回動し、固定顎108の先端部と可動顎109の先端部とが接近するため、固定顎108の先端部が電線皮剥ぎ器1の傾斜部8と当接する。さらに、操作レバー110を回動し続けると、第1本体部2の一端側と第2本体部3の一端側とが接近する。
【0044】
すると、第1本体部2の溝部21と第2本体部3の溝部31とが、案内部材5を嵌合するようにして保持すると共に、溝部21に突出する第1本体部2の切刃20と溝部31に突出する第2本体部3の切刃30,30とが、図5に示すように、電線Xの外周部に当接して電線Xを保持する。このとき、尖形部36は、案内部材5の内周面から突出することなく、電線X(被覆材Y)と離間している。
【0045】
さらに、各本体部2,3の一端側同士を接近させるようにして切刃20,30,30で電線Xを押圧すると、図6に示すように、切刃20,30,30が被覆材Yに食い込む。そして、かかる状態を維持しつつ、絶縁ヤットコ100を介して、電線皮剥ぎ器1(第1本体部2及び第2本体部3)を電線Xの軸心方向を中心に回転させる。すると、保持される電線Xの軸心方向と略直交する切刃20,30,30が、外周縁の全周に亘って鋭利に形成される刃部25,35により、被覆材Yを周方向に沿って切断する。このとき、被覆材Yを切断するのに伴い、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士がさらに接近している。
【0046】
そして、切刃20,30,30の刃部25,35,35が芯線Zの外周面のやや外側の位置に到達すると、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士が当接する。これにより、刃部25,35,35がこれ以上芯線Zに接近しないため、芯線Zを傷つけることがない。また、このとき、切刃20,30,30が被覆材Yを切断するのに伴い、第2本体部3に設けられる尖形部36が、案内部材5の内周面から突出し、被覆材Yの剥ぎ取られる部位に貫入する。
【0047】
これにより、電線皮剥ぎ器1(第1本体部2及び第2本体部3)が被覆材Yの剥ぎ取られる部位と共に回転しようとするため、芯線Zの外周面のやや外側までしか被覆材Yを切断していなくても、即ち、被覆材Yの剥ぎ取られる部位と被覆材Yの残される部位とがまだ僅かに連結されていても、その回転により連結されている部位が引き裂かれ、被覆材Yが剥ぎ取られる部位と残される部位とで完全に分断される。
【0048】
さらに、電線皮剥ぎ器1を継続して回転させると、被覆材Yの剥ぎ取られる部位が、溶着(固定)されていた芯線Zに対して徐々に剥がれて(徐々に固定が解除されて)、芯線Zに対して相対的に回転変位するようになる。そして、図7に示すように、絶縁ヤットコ100を介して、電線皮剥ぎ器1を電線Xの軸心方向に引き抜く(図7における矢印方向)と、芯線Zとの固定が解除された被覆材Yの剥ぎ取られる部位を抜き取れる。このとき、剥ぎ取った被覆材Yが案内部材5の中に収容されている。
【0049】
以上より、本実施形態に係る電線皮剥ぎ器1は、一端側同士が接離可能な第1本体部2及び第2本体部3間に一端側から電線Xを案内し、かかる一端側同士を接近させることにより電線Xを保持し、さらに、各本体部2,3の一端側同士を接近させつつ第1本体部2及び第2本体部3を電線Xの軸心方向を中心に回転させて、第1本体部2及び第2本体部3の各切刃20,30で被覆材Yを切断する。
【0050】
したがって、電線Xの軸心の位置と各切刃20,30の回転における軸心の位置とを略一致させることができるため、芯線Zを傷つけるのを防止して、電線Xの被覆材Yを剥ぎ取ることができる。さらに、例えば、間接活線作業において、電線Xにおける被覆材Yの皮剥ぎ作業が絶縁ヤットコ100を用いて一人の作業員で実施できるため、かかる作業を簡素化できる。
【0051】
また、本実施形態に係る電線皮剥ぎ器1は、尖形部36が切刃30,30を備える第2本体部3に第1本体部2側に突出して設けられるため、切刃20,30,30が被覆材Yを切断するのに伴い、尖形部36が被覆材Yに貫入する。これにより、第1本体部2及び第2本体部3が電線Xの軸心方向を中心として回転する際に、第1本体部2及び第2本体部3が被覆材Yの剥ぎ取られる部位に対して回転変位するのを規制できる。
【0052】
したがって、被覆材Yが切断される前は、尖形部36が被覆材Yに貫入しないため、第1本体部2及び第2本体部3を円滑に回転させることができ、さらに、被覆材Yが切断されるのに伴い、尖形部36が被覆材Yに貫入していくため、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士が当接する際には、尖形部36が被覆材Yの剥ぎ取られる部位に芯線Zと相対的に回転変位するような力を確実に付勢することができる。これにより、被覆材Yを切断したのちに、被覆材Yの剥ぎ取られる部位と芯線Zとの固定を解除でき、被覆材Yの剥ぎ取られる部位を芯線Zから引き抜くのを容易にする。
【0053】
また、本実施形態に係る電線皮剥ぎ器1は、第1本体部2及び第2本体部3の一端側同士が離間された状態で、弾性体6が各本体部2,3に対して案内部材5を位置決めする。これにより、円筒状の案内部材5が電線Xを案内(挿入)する方向において、案内部材5が各切刃20,30と重ならないように各本体部2,3に対して位置決めされるため、案内部材5の内部に電線Xを案内する際に、各切刃20,30が電線Xと干渉するのを防止できる。
【0054】
なお、本発明に係る電線皮剥ぎ器は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0055】
例えば、本発明に係る電線皮剥ぎ器においては、図8に示すように、各本体部2’,3’間(第1本体部2’及び第2本体部3’間)に配置され、電線Xを内部に案内する筒状の案内部材5’を備え、切刃30’,30’は、一方の本体部(第2本体部)3’に設けられ、案内部材5’は、他方の本体部(第1本体部)2’に固定されてもよい。
【0056】
かかる電線皮剥ぎ器1’によれば、切刃30’,30’が第2本体部3’に設けられ、案内部材5’が第1本体部2’及び第2本体部3’間に配置されて且つ第1本体部2’に固定される。これにより、筒状の案内部材5’が電線Xを案内(挿入)する方向において切刃30’,30’と重ならないように位置決めされるため、案内部材5’の内部に電線Xを案内する際に、切刃30’,30’が電線Xと干渉するのを防止できる。
【0057】
また、上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、第1本体部2及び第2本体部3が他端側をヒンジ部材4で固定される場合を説明したが、かかる場合に限られず、第1本体部及び第2本体部が一端側だけでなく、他端側も接離可能に構成される場合でもよい。かかる構成の場合、絶縁ヤットコ100に装着されるために、第1本体部が可動顎109の先端部に固定されるだけでなく、第2本体部が固定顎108の先端部に固定される必要がある。
【0058】
また、上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、導電体の芯線Zを絶縁体の被覆材Yで被覆される電線Xの被覆材Yを剥ぎ取る場合を説明したが、かかる場合に限られず、導体の芯線Zを複層からなる被覆材で被覆される電線における、被覆材の少なくとも一部を剥ぎ取る場合でもよい。例えば、かかる被覆材には、導体のシールド材を有している場合でもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、第1本体部2及び第2本体部3間に案内部材5を備え、案内部材5の内部に電線Xを案内する場合を説明したが、かかる場合に限られず、案内部材を備えず、第1本体部及び第2本体部間に電線Xを案内する場合でもよい。例えば、第1本体部が第2本体部に対向する部位に溝部を備え、溝部に沿って電線Xを案内する場合でもよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、各本体部2,3の一端側、即ち、他端側が互いに枢着される各本体部2,3の回動方向に対して平行な方向から電線Xを案内する場合を説明したが、かかる場合に限られず、各本体部の側方側、即ち、他端側が互いに枢着される各本体部の回動方向に対して直交する方向から電線Xを案内する場合でもよい。
【0061】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、第1本体部2及び第2本体部3を回転させて被覆材Yを切断する場合を説明したが、かかる場合に限られず、電線Xを回転させる場合でもよく、また、第1本体部2及び第2本体部3だけでなく電線Xも併せて回転させる場合でもよい。要するに、各本体部2,3と電線Xとが電線Xの軸心方向を中心として相対的に回転変位すればよい。
【0062】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、各切刃20,30が各本体部2,3の一端側に配置される場合を説明したが、かかる場合に限られず、各切刃が各本体部の他端側に配置される場合でもよい。例えば、各切刃は、第1本体部及び第2本体部間に介設されて且つ一端側に配置される筒状の案内部材に対し、他端側に配置される場合でもよい。
【0063】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、各切刃20,30が各本体部2,3に対して軸部材24,34を中心に回転する回転刃である場合を説明したが、かかる場合に限られず、各切刃が各本体部に対して固定される固定刃(例えば、図9に示すような切刃202)である場合でもよい。
【0064】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、規制手段36が被覆材Yに貫入する尖形部36である場合を説明したが、かかる場合に限られず、規制手段は、例えば、第1本体部及び第2本体部が電線Xを挟持することにより、被覆材Yの剥ぎ取られる部位が各本体部に対して回転変位するのを規制する挟持部を備える場合でもよい。さらに、規制手段は、例えば、案内部材が電線Xを内嵌して、案内部材及び電線X間に摩擦力が発生したり、又は、案内部材が電線Xを係止したりすることにより、被覆材Yの剥ぎ取られる部位が各本体部に対して相対的に回転変位するのを規制する係止部を備える場合でもよい。
【0065】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、尖形部36が第2本体部3に設けられる場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、尖形部が第1本体部に設けられる場合でもよく、尖形部が第1本体部及び第2本体部に設けられる場合でもよく、そして、尖形部が一つの本体部に複数設けられる場合でもよい。さらに、一方の本体部が切刃を有しない電線皮剥ぎ器においては、切刃を有しない一方の本体部に尖形部が設けられる場合でもよい。
【0066】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、弾性体6が第1本体部2及び案内部材5間に介設される場合を説明したが、かかる場合に限られず、弾性体が第2本体部及び案内部材間に介設される場合でもよく、また、弾性体が第1本体部及び案内部材間と、第2本体部及び案内部材間とにそれぞれ設ける場合でもよい。
【0067】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、弾性体6が切刃20,30を有する各本体部2,3から案内部材5を離間するように位置決めする場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、一方の本体部に切刃を有しない電線皮剥ぎ器においては、他方の本体部と案内部材5との間に弾性体を介設し、他方の本体部から案内部材を離間させると共に、一方の本体部に案内部材を当接させる状態が維持するように、弾性体が案内部材を位置決めする場合でもよい。
【0068】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、位置決め手段6が円筒状のバネである場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、位置決め手段6が板バネの場合でもよく、また、第1本体部及び案内部材と、第2本体部及び案内部材とがそれぞれ反発し合うように、第1本体部、第2本体部、及び案内部材が少なくとも一部に磁性を有して形成される場合でもよく、さらに、位置決め手段がリンク機構やカム機構で構成される場合でもよい。
【0069】
上記実施形態に係る電線皮剥ぎ器1においては、切刃20,30が被覆材Yに食い込んだのちに各本体部2,3を回転させる場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、各本体部2,3の一端側同士を当接するまで接近させて被覆材Yを切断させたのちに、各本体部2,3を回転させる場合でもよく、また、例えば、各本体部2,3を回転させることで切刃20,30が被覆材Yに食い込み始める(被覆材Yの切断を開始する)場合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る電線皮剥ぎ器が装着される絶縁操作棒(絶縁ヤットコ)の全体図であって、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る電線皮剥ぎ器の全体図であって、斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る電線皮剥ぎ器の全体図であって、(a)は正面図、(b)は背面図を示す。
【図4】同実施形態に係る電線皮剥ぎ器の全体図であって、(a)は側面図、(b)は平面図を示す。
【図5】同実施形態に係る電線の被覆材を剥ぎ取る説明図であって、電線を保持した状態における、(a)は全体斜視図、(b)は要部拡大斜視図を示す。
【図6】同実施形態に係る電線の被覆材を剥ぎ取る説明図であって、電線を切断した状態における、(a)は全体斜視図、(b)は要部拡大斜視図を示す。
【図7】同実施形態に係る電線の被覆材を剥ぎ取る説明図であって、被覆材を引き抜く状態における、(a)は全体斜視図、(b)は要部拡大斜視図を示す。
【図8】本発明の他の実施形態に係る電線皮剥ぎ器の全体斜視図であって、(a)は一対の本体部の一端側同士が離間した状態、(b)は一対の本体部の一端部同士が当接した状態を示す。
【図9】従来における電線皮剥ぎ器の全体図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図を示す。
【符号の説明】
【0071】
1…電線皮剥ぎ器、2…本体部(第1本体部)、3…本体部(第2本体部)、5…案内部材、6…位置決め手段(弾性体)、20…切刃、30…切刃、36…規制手段(尖形部)、X…電線、Y…被覆材、Z…芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線が被覆材で被覆される電線に対して適用される電線皮剥ぎ器であって、少なくとも一端側同士が接離可能な一対の本体部を備えると共に、少なくとも一方の本体部は、対となる本体部側に突出し且つ対となる本体部との一端側同士が接近する方向と略平行に配置される切刃を少なくとも一つ備え、切刃は、各本体部の一端側同士が接近し且つ各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転することにより、各本体部間に案内された電線の所定箇所における被覆材を切断するよう構成されることを特徴とする電線皮剥ぎ器。
【請求項2】
各本体部及び電線の少なくとも何れか一方が電線の軸心方向を中心として回転する際に、各本体部と被覆材における剥ぎ取られる部位とが相対的に回転変位するのを規制する規制手段を備える請求項1に記載の電線皮剥ぎ器。
【請求項3】
規制手段は、切刃を有する少なくとも一方の本体部に、対となる本体部側に突出して設けられ、且つ、切刃が被覆材を切断するのに伴い、被覆材における剥ぎ取られる部位に貫入する尖形部を備える請求項2に記載の電線皮剥ぎ器。
【請求項4】
各本体部間に配置され、電線を内部に案内する筒状の案内部材を備え、案内部材は、各本体部と接離可能に構成され、さらに、案内部材が電線を案内するのに各本体部の一端側同士が離間された状態において、切刃を有する本体部から離間するように案内部材を位置決めさせる位置決め手段が設けられる請求項1〜3の何れか1項に記載の電線皮剥ぎ器。
【請求項5】
各本体部間に配置され、電線を内部に案内する筒状の案内部材を備え、切刃は、一方の本体部に設けられ、案内部材は、他方の本体部に固定される請求項1〜3の何れか1項に記載の電線皮剥ぎ器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−201241(P2009−201241A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39660(P2008−39660)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】