説明

電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法及び処理装置

【課題】造管ライン上での電縫鋼管の走行速度が60m/minより速くても、内面ビード切削屑の処理が円滑に、安定して実施できるばかりでなく、造管ラインに内面ビード切削屑のブロー工程を設けなくても、該切削屑を容易に排出でき、造管ラインのコンパクト化が達成される電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】鋼帯を円筒状に成形し、その両端をスクイズロールで圧接する電縫鋼管の造管ライン上で、走行する電縫鋼管の上部内面の圧接継目に形成された内面ビードを切削し、発生した帯状の切削屑を管外に排出、除去する技術を改良した。内面ビードの切削位置を、電縫鋼管の走行速度に応じて変更し、その変更は該走行速度の増大に伴い、製造ラインに沿って造管方向の下流側に移動させると共に、切削屑を造管方向の上流側に誘導し、半円筒状態にある鋼帯位置より上方へ抜き出し、裁断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法及び処理装置に係わり、詳しくは、電縫鋼管の継目溶接時に形成された内面ビードをバイトで切削して生じた帯状の切削屑を、該電縫鋼管の外部に連続的に抜き出し、処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管は、鋼帯を幅方向へ丸め、突き合わした両周端を溶接することで製造される。具体的には、図6の製造工程(造管ラインともいう)例で示すように、コイル状鋼帯1をペイオフリール(アンコイラともいう)2で巻き戻し、レベラ3で平坦化、エッジミラ4で両端部を整えてから一群の成形ロールで円筒状に成形する。つまり、エッジベンドロール5で幅端部を曲げ、次いで該幅端部をケージロール群6で拘束しながらセンタベンドロール7群で幅中央部を徐々に曲げ、鋼帯1の両周端を突き合わしただけの所謂「オープン管」と称する円筒体にする。該オープン管は、引き続き、フィンパスロール群8により円筒形状及び鋼帯の突き合わせただけの周端部(以下、継目という)形状を整え、該継目をワークコイル(あるいはコンタクトチップ)9で加熱、スクイズロール10で圧接することで接合して、電縫鋼管11(単に管11とも表現する)とする。
【0003】
かかる電縫鋼管11の製造では、上記継目のワークコイル9による加熱で溶融状態あるいは半溶融状態になった部分が、スクイズロール10での圧接により継目から押し出され、内外面側に盛り上がった状態で所謂「ビード」と称される凝固物を形成する。なお、このビードは、図5に示すように、管11の長手方向に沿い連続して形成され、管の外面に形成されるものを外面ビード12、内面に形成されるものを内面ビード13と称している。
【0004】
これらの外面ビード12及び内面ビード13は、電縫鋼管11の内外観を悪化するばかりでなく、接合位置より下流工程での種々の作業に支障があるので、造管ライン内で除去しておく必要がある。従来より、その除去は、前記外面ビード12及び内面ビード13のそれぞれに切削バイト14を押し当て切削した後に、発生した切削屑を排除処理することで行われている。
【0005】
ところで、外面ビード12は、図6に示すように、管11の外側で切削されるので、切削バイト14の配設、切削屑の排除処理等が容易に行える。これに対して、内面ビード13は、管11の内側で切削しなければならないので、切削バイト14の配設、切削屑の排除処理等に工夫が必要である。従来の内面ビード切削バイト(以下、内面切削バイトという)14は、図7に示すように、管11内に挿入され、一定位置で固定される内面バー15と称する棒状体の先端にバイトホルダ16を設け、そこに装着するようになっている。そして、内面ビード13自体が管11の長手方向に沿い連続して形成されているので、切削によって連続した帯状の切削屑17が発生する。
【0006】
この帯状の切削屑17は、従来、図6に点線で示したように、内面切削バイト14の刃の反りで管内の下前方(矢印で示す造管方向の下流側)へ進み、バイトホルダ16の切削屑抜き出し孔(空洞部)18を通って管内に溜まる(例えば、特許文献1及び2参照)。また、該後処理を容易化するために、図示していないが、帯状の切削屑17を前記バイトホルダ16に設けた回転刃あるいはビード切断機で短尺のチップ状に切断することも行われている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0007】
管内に溜まった内面ビードの切削屑17は、上記した帯状、短尺チップ状のいずれの場合も、従来、下流工程で所定の長さに管11を切断した後、図示していないが、その一端より高圧空気等を吹き込み、他端から噴出させて除去していた。そのため、造管ラインには、この高圧空気等を吹き込むビードブロー工程を配設する必要があった。
【0008】
しかしながら、このビードブロー工程の配設は、造管ラインを複雑にするばかりでなく、コンパクト化の阻害要因になっていた。そこで、本出願人は、先に、「電縫鋼管の継目に形成された内面ビードを切削し、管内に発生した帯状の切削屑を管外に排出、除去するに際して、前記帯状の切削屑の先端を把持手段で把持して、該先端が造管方向の上流側に向くように誘導し、該切削屑を前記継目接合前の管空隙より連続的に管外へ抜き出すことを特徴とする電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法」並びに図2(a)及び(b)に示すように、「管内に挿入して一定位置に固定される内面バー15と、該内面バー15の先端に配設されたバイトホルダ16の上部に取り付けた切削バイト14とを備えた内面ビード切削装置で切削、発生した帯状の電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置であって、前記内面バー15の下方に位置するように管11内に挿入され、内部を帯状の切削屑17が通過するビード排出ダクト20(排出路20ともいう)と、該ビード排出ダクト20内へ降下してきた切削屑17の先端を把持するトング状の把持手段21と、切削屑17の先端を把持したことを検出するセンサ26と、該切削屑17の検出時に閉じた前記把持手段21を支持し、前記ビード排出ダクト20内を移動させる支持手段22と、該支持手段22の前記ビード排出ダクト20内への押し込み及び引上げ手段28とを備えたことを特徴とする電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置」を提案した(特許文献5参照)。そして、これら技術により、電縫鋼管の造管ラインに内面ビード切削屑の前記ブロー工程を配設せずとも、該切削屑17を容易に管外へ排出できるようになると共に、造管ラインのコンパクト化が達成されるばかりでなく、円滑で安定した内面ビード切削屑の処理が可能になるものと期待した。
【0009】
ところが、実際の造管ライン上を走行する電縫鋼管は、生産効率の都合で、鋼種、サイズ等によって走行速度が異なっている。そして、上記技術は、走行速度が60m/minまでの比較的遅い場合には、内面ビードの切削処理が非常に良好に行われるとが確認できたが、走行速度がそれ以上速くなると、切削処理が円滑に安定して行えなくなる傾向があった。
【特許文献1】特開2003−164994号公報
【特許文献2】特開平5−69217号公報
【特許文献3】特開平3−30115号公報
【特許文献4】特開平11−33814号公報
【特許文献5】特願2004−346141号の明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、造管ライン上での電縫鋼管の走行速度が60m/minより速くても内面ビード切削屑の処理が円滑に、安定して実施可能なばかりでなく、電縫鋼管の造管ラインに内面ビード切削屑のブロー工程を設けなくても、該切削屑を容易に排出でき、造管ラインのコンパクト化が達成される電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法及び処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0012】
すなわち、本発明は、鋼帯を幅方向に丸め、円筒状に成形してから、その付き合わせた両端をスクイズロールで圧接する電縫鋼管の造管ライン上で、水平に走行する電縫鋼管の上部内面の圧接継目に形成された内面ビードを切削し、管内に発生した帯状の切削屑を管外に排出、除去するに際して、前記内面ビードの切削位置を、電縫鋼管の走行速度に応じて変更し、その変更が該走行速度の増大に伴い、造管ラインに沿って造管方向の下流側に移動させるものであると共に、生じた帯状の切削屑を造管方向の上流側に誘導し、前記圧接前の半円筒状態にある鋼帯位置より上方へ抜き出し、チップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取ることを特徴とする電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法である。また、本発明は、鋼帯を幅方向に丸め、円筒状に成形してから、その付き合わせた両端をスクイズロールで圧接する電縫鋼管の造管ライン上で、水平に走行している電縫鋼管の上部内面の圧接継目に形成された内面ビードを連続的に切削する切削バイトと、生じた帯状の切削屑を管内で下方に導く空洞部を有するバイトホルダと、該空洞部にある切削屑の先端を把持し、排出路を誘導する切削屑抜出し手段と、該切削屑をチップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取る切削屑処理手段とを備えた電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置において、管内に、進退自在で、且つ一定姿勢を保つ手段を備えた遊動体を配設し、該遊動体の一定位置に前記切削バイト、バイトホルダ及び帯状の切削屑を造管方向の上流側に誘導する切削屑抜出し手段を配設したことを特徴とする電縫鋼管内面ビードの処理装置である。この場合、前記切削屑抜出し手段が、管内部を帯状の切削屑が通過する排出路と、該排出路内へ降下してきた切削屑の先端を把持するトング状の把持手段と、切削屑の先端を把持したことを検出するセンサと、該切削屑の検出時に閉じた前記把持手段を支持し、前記排出路内を移動させる支持手段と、該支持手段の前記排出路内での前後進を行う移動手段とを備えているのが好ましい。また、前記遊動体の下方に、該遊動体を支える姿勢安定用コロを配置するのが良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、造管ライン上での電縫鋼管の走行速度が60m/minより速くても、内面ビード切削屑の処理が円滑に、安定して実施できるばかりでなく、電縫鋼管の造管ラインに内面ビード切削屑のブロー工程を配設せずとも、該切削屑を容易に排出でき、造管ラインのコンパクト化が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
【0015】
まず、発明者は、先に出願した前記未公開技術(以下、先願未公開技術という)では、造管ライン上での電縫鋼管の走行速度が60m/minより速くなると、内面ビードを円滑に安定して切削できなくなる原因を追求した。その結果、内面ビードの切削位置が固定していることに原因があると結論した。つまり、先願未公開技術は、図2(a)及び(b)に示したように、切削バイト14を管内に挿入して一定位置に固定される内面バー15の先端に配設されたバイトホルダ16の上部に取り付け、切削位置は常に一定である。ちなみに、既存の造管ラインでは、継目となる部分を1500℃程度までに加熱するワークコイル(コンタクトチップでも良い)及び圧接を行うスクイズロールの位置より1.1m下流に切削バイト14が固定して配置されていた。したがって、電縫鋼管の走行速度が60m/min(1m/sec)の場合、圧接から1.1秒(1.1m/1m/sec)後に内面ビードの切削が行われることになる。この1.1秒あれば、通常の大気冷却での冷却速度(400℃/sec程度)から判断して、継目部分は十分に冷却され、凝固、収縮した内面ビードが形成されていると考えられる。一方、例えば走行速度が80m/min(1.33m/sec)と速くなった場合には、圧接から0.8秒(1.1m/1.33m/sec)経過で切削が行われることになるが、その時間では継目部分がまだ十分に冷却されずに半溶融状態であり、凝固した一定形状の内面ビード13が形成されているとは限らず、切削対象が不定で円滑で、安定した切削ができないことは当然である。つまり、内面ビード13の切削は、それが凝固して、ある程度に一定形状になっていないと、連続して円滑で安定した切削ができないのである。
【0016】
発明者は、この知見に基づき、内面ビード13の切削を円滑に、且つ安定して行うには、その切削位置を、電縫鋼管1の走行速度に応じて変更する必要があると考えた。そして、「その位置変更は、走行速度が速くなるほど、造管ラインに沿って造管方向の下流側に移動させる」ことを重要要件にかかげ、さらに、この要件に「生じた帯状の切削屑を造管方向の上流側に誘導し、前記圧接前の半円筒状態にある鋼帯位置より上方へ抜き出し、チップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取る」ことを加えて、切削屑処理方法としての本発明を完成させたのである。後者の要件を加えたのは、本発明の第二の目的である「電縫鋼管の造管ラインに内面ビード切削屑のブロー工程を配設せずとも、該切削屑を容易に排出でき、造管ラインのコンパクト化が達成される」ことを同時に図るためである。
【0017】
なお、本発明では、電縫鋼管の走行速度と内面ビード切削位置(スクイズロールから造管方向下流側の距離)との関係を特に限定するものではない。その関係は、電縫鋼管の鋼種、サイズ(外径、肉厚等)、ワークコイルでの加熱温度等によって変化するので、過去の操業データ、あるいは試験操業等に基づき定められることになるからである。
【0018】
次に、発明者は、上記した切削屑処理方法としての本発明を実際に実施するための手段についても検討した。それは、図7に示した既存の「鋼帯1を幅方向に丸め、円筒状に成形してから、その付き合わせた両端をスクイズロール10で圧接する電縫鋼管1の造管ライン上で、水平に走行している電縫鋼管1の上部内面の圧接継目に形成された内面ビード13を連続的に切削する切削バイト14と、生じた帯状の切削屑17を管1内で下方に導く空洞部18を有するバイトホルダ16と、該空洞部18にある切削屑17の先端を把持し、排出路20を誘導する切削屑抜出し手段と、該切削屑17をチップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取る切削屑処理手段(切断機31,巻取り装置32等であり、図2(a)参照)とを備えた電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置」を改造したものである。
【0019】
まず、従来通りの造管ラインにおいて、継目を圧接した管11内に、図1に示すように、進退自在で、且つ一定姿勢を保つ手段を備えた遊動体36を配設する。その遊動体36は、大きさ及び形状は特に定めないが、例えば、従来の固定バー15と同様に、ある程度の長さがあり、横断面が円形状で棒状のもが好ましい。ここで、進退自在としたのは、内面ビード13の切削位置を可変とするためであり、一定姿勢を保つ手段を備えるようにしたのは、内面ビード13は造管ラインを水平に走行する電縫鋼管11の内面上方に軸方向に沿って形成されので、該遊動体36の一定位置に固定して取り付けた切削バイト14に内面ビード13が常に接触している必要があるからである。この進退自在とする手段としては、特別な駆動機構を設ける必要はなく、管11の移動に伴う摩擦で移動するように、単に管11内に挿入するだけで良い。また、一定姿勢を保つ手段37としては、例えば、該遊動体36の下方に姿勢安定用コロ、車輪等を配設すれば良い。なお、これら姿勢安定用コロ、車輪等があれば、遊動体36の進退に有効でもある。また、切削位置が定まった際には遊動体36を停止させる必要があるので、該遊動体36は、その後端に管11外に水平に伸びる停止用ワイヤ38及び該ワイヤの巻取り手段39等を取り付け、遊動体36が停止できるように構成してある。停止しなければ、切削バイト14に接触した内面ビード13に反力が作用せず、切削ができないからである。さらに、遊動体36の一定位置に切削バイト14を固定して取り付けるため、図1に示すように、内部に空洞部(切削屑抜き出し孔)18を有するバイトホルダ16を該遊動体36に設けている。
【0020】
さらに、発明者は、切削屑17を従来とは逆にして造管方向の上流側へ移動できれば、前記継目を溶接する前の所謂「オープン管」の上方に形成されている空隙より抜き出せると考えた。そして、切削屑17の先端を造管方向の上流側へ向ける手段を具体的に検討した。その結果、切削された直後に切削屑17がバイトホルダ16内を降下する際に、その先端を把持手段で把持し、該先端を造管方向の上流側に向く,図2(a)及び(b)で説明した構造にすることにした。これにより、該切削屑17を前記継目接合前の空隙まで誘導し、連続的に管外へ抜き出すことが可能になるからである。つまり、空隙まで誘導できれば、その後は、図1に示すように、前記管11外へ抜き出された切削屑17の先端を前記把持手段21とは別の切削屑処理手段(例えば、切削屑巻き取り装置31のリール)に把持させて、抜き出すようにする。その後は、該切削屑17は、コイル状に巻き取っても良いし、また先端から順次チップ状に裁断しても良い。
【0021】
このような本発明に係る処理装置の詳細をもっと具体的に説明すると、図1及び図2(b)より明らかなように、まず、内部を帯状の切削屑17が通過する排出路20を前記遊動体36の下方に位置する管11内に挿入し、その先端をバイトホルダ16の空洞部18に取り付ける。これにより、切削バイト14で切削された内面ビード13の切削屑17は、図8の詳細図に示すように、バイトホルダ16の空洞部18を経て前記排出路20内へ降下するようにした。そして、本発明では、この排出路20内には、該切削屑17の先端を把持するトング状の把持手段21と、切削屑17の先端を把持したことを検出するセンサ26とを挿入するようにした(図2(b)参照)。
【0022】
その切削屑17の先端を把持するトング状の把持手段21としては、種々の方式があるが、図2(b)に示すように、二本の鋸歯状部材24とバネ25とを組み合わせたものが利用できる。つまり、切削屑17の先端を把持していない場合には、ストッパ27で該二本の鋸歯状部材24を開放しておき(図2(b)に実線で示す)、把持する場合には、該ストッパ27が外れ、バネ力で二本の鋸歯状部材24を閉じ、切削屑17の先端を挟んで押さえるようになっている(図2(b)に破線で示す)。なお、ストッパ27を外すには、種々の方法があるが、ストッパ27を熱溶融性の材料(例えば、錫合金等)で形成し、切削屑17の熱で溶解させるのが良い。
【0023】
また、前記センサ26は、前記排出路20内を前後進する把持手段21の支持手段(例えば、ワイヤ)22に別のワイヤ23を取り付け、該別のワイヤ23の先端に配置されており、例えば、レーザー式検知器等が利用できる。前記鋸歯状部材の後端を支えるバネ25には、近接スイッチ34が取り付けられており、二本の鋸歯状部材がまだ切削屑17を把持していない場合には、バネ25に取り付けた近接スイッチ34の頭部35はセンサ(レーザー光)の視野内に位置しているが、ストッパ27が外れ、切削屑17を把持した場合には、バネ25の変形で該近接スイッチ34の頭部35が前記視野から外れるように形成してあるので、この視野外に外れた状況を感知すれば、切削屑17の先端が把持されたことになる。
【0024】
さらに、前記把持手段21は、支持手段22で前記排出路20内を移動させる必要があるので、図1に示すように、該支持ワイヤ22には押し込み及び引上げ手段28が備えられるようにした。その押し込み及び引き上げ手段28としては、一対のロール29が利用される。該ロール29で前記支持手段22を挟み、該ロール29を回転させることで、支持手段22の排出路20内への押し込み、あるいは抜き出しが容易に実施できるからである。
【0025】
かかる装置構成の本発明によれば、切削屑の連続的な管外への排出が円滑に行えるようになる。また、万一、切削屑17が途中で切れても、切れた後の先端を前記センサ26で捜し、再度把持手段21で把持することができるので、安定した排出作業が行える。
【0026】
加えて、本発明では、切削屑の先端の把持を一層容易にするため、図3に示すように、前記切削屑17が降下してくる前記排出路20内の位置に、該切削屑17の先端を造管方向の上流側へ曲げるコロ30を備えるようにしても良い。該コロ30は、専用の駆動手段を備える必要がなく、移動中の管の底面に接触することで回転し、切削屑17の先端を造管方向の上流側へ曲げる作用をするからである。
【0027】
さらに加えて、本発明では、該支持手段22の前記排出路20内への押し込み及び引上げ手段28の近傍に、図4(a)及び(b)に示すように、前記管外へ抜き出された帯状の切削屑17の巻取り手段31又はチップ状に裁断する切断機32を併設してあるのが好ましい。これらによって、切削屑17の後処理が一層簡単、且つ迅速に行えるようになるからである。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
JIS STPL380に相当する鋼組成の鋼帯を、電縫鋼管製造ラインでオープン管に成形し、その継目を電縫溶接して、外径457.2mm×肉厚19.0mmの電縫鋼管を製造した。溶接機の電流条件は300kHz×700kWととし、継目を加熱する給電手段にはコンタクトチップ9を用いた。そして、電縫鋼管の走行速度は80m/minとした。
【0029】
この操業に対して遊動体36を利用する本発明を適用し、切削屑の後処理を行った。つまり、図1で説明した遊動体36を配設し、切削位置を従来より0.4mだけ造管方向の下流側にして停止させ、切削バイト14で内面ビード13を切削し、生じた帯状の切削屑17を処理したのである。その切削屑17は、図4(a)の巻取り手段31(2kWのモータを用いて回転駆動制御をするワインダー方式のもの)で巻き取るようにした。
【0030】
その結果、連続して発生した帯状の内面ビード切削屑を、円滑且つ安定して切削すると共に、従来のようにブロー工程にかけずに、上流側のオープン管の隙間まで移送し、管外へ排出、コイル状に巻き取ることができた。
(実施例2)
JIS STKM13に相当する鋼組成の鋼帯を、電縫鋼管製造ラインでオープン管に成形し、その継目を電縫溶接して、外径89.1mm×肉厚6.0mmの電縫鋼管を製造した。溶接機の電流条件は350kHz×450kWととし、継目を加熱する給電手段にはワークコイル9を用いた。そして、電縫鋼管の走行速度は70m/minとした。
【0031】
この操業に対して遊動体36を利用する本発明を適用し、切削屑17の処理を行った。つまり、図1で説明した遊動体36を配設し、切削位置を従来より0.2mだけ造管方向の下流側にして切削バイト14で内面ビード13を切削し、生じた帯状の切削屑17を処理したのである。この場合、図3に示したコロも配設し、切削屑17の先端を造管方向と反対方向へ曲げるようにした。なお、排出した切削屑17は、図4(b)の切断機32でチップ状に裁断するようにした。
【0032】
その結果、連続して発生した帯状の内面ビード切削屑を、実施例1の場合よりも一層容易に、上流側のオープン管の隙間まで円滑に移送し、管外へ排出できると共に、チップ状に裁断できた。
(比較例1)
JIS STPL380に相当する鋼組成の鋼帯を、電縫鋼管製造ラインでオープン管に成形し、その継目を電縫溶接して、外径457.2mm×肉厚19.0mmの電縫鋼管を製造した。溶接機の電流条件は300kHz×700kWととし、継目を加熱する給電手段にはコンタクトチップ9を用いた。なお、電縫鋼管の走行速度は80m/minとした。
【0033】
この操業に対して、切削位置を従来通りに、固定バー15を用いてスクイズロール10より1.1mだけ造管方向の下流側で固定した切削バイト14で内面ビード13を切削し、生じた帯状の切削屑17を処理した。その切削屑17は、図4(a)の巻取り手段31(2kWのモータを用いて回転駆動制御をするワインダー方式のもの)で巻き取るようにした。
【0034】
その結果、内面ビード切削屑の安定した切削ができず、従来のように切削屑17を上流側のオープン管の隙間まで移送し、管外へ円滑に排出、コイル状に巻き取ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置を示す模式図である。
【図2】特開2004−346141号に記載した電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置の重要構成部分を示す図であり、(a)は全体の横断面を、(b)は(a)で丸囲い部分のA−A矢視であり、把持手段近傍の平面を示す図である。
【図3】本発明に係る電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置にコロを採用した状況を示す横断面図である。
【図4】管外へ抜き出した帯状切削屑の処理手段を示す図であり、(a)は巻取り手段を、(b)はチップ状に裁断する切断機である。
【図5】電縫鋼管に発生するビードを説明する管断面図である。
【図6】電縫鋼管の製造工程(ライン)を示す模式図である。
【図7】従来の切削屑の処理方法を示す斜視図である。
【図8】図1(a)の丸で囲んだ部分の詳細を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 コイル状鋼帯(鋼帯)
2 ペイオフリール(アンコイラ)
3 レベラ
4 エッジミラ
5 エッジベンドロール
6 ケージロール群
7 センタベンドロール群
8 フィンパスロール群
9 ワ−クコイル(コンタクトチップ)
10 スクイズロール
11 電縫鋼管(管)
12 外面ビード
13 内面ビード
14 内面又は外面ビードの切削バイト
15 内面バー
16 バイトホルダ
17 切削屑
18 切削屑抜き出し孔(空洞部)
20 ビード排出ダクト(排出路)
21 把持手段(例えば、マジックハンド等)
22 支持手段(例えば、ワイヤ等)
23 別のワイヤ
24 鋸歯状部材
25 バネ
26 センサ
27 ストッパ
28 押し込み及び引き上げ手段
29 一対のロール
30 コロ
31 巻取り手段
32 切断機
34 近接スイッチ
35 頭部
36 遊動体
37 一定姿勢を保つ手段(姿勢安定用コロ、車輪等)
38 停止用ワイヤ
39 停止用ワイヤの巻取り手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を幅方向に丸め、円筒状に成形してから、その付き合わせた両端をスクイズロールで圧接する電縫鋼管の造管ライン上で、水平に走行する電縫鋼管の上部内面の圧接継目に形成された内面ビードを切削し、管内に発生した帯状の切削屑を管外に排出、除去するに際して、
前記内面ビードの切削位置を、電縫鋼管の走行速度に応じて変更し、その変更が該走行速度の増大に伴い、造管ラインに沿って造管方向の下流側に移動させるものであると共に、生じた帯状の切削屑を造管方向の上流側に誘導し、前記圧接前の半円筒状態にある鋼帯位置より上方へ抜き出し、チップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取ることを特徴とする電縫鋼管内面ビード切削屑の処理方法。
【請求項2】
鋼帯を幅方向に丸め、円筒状に成形してから、その付き合わせた両端をスクイズロールで圧接する電縫鋼管の造管ライン上で、水平に走行している電縫鋼管の上部内面の圧接継目に形成された内面ビードを連続的に切削する切削バイトと、生じた帯状の切削屑を管内で下方に導く空洞部を有するバイトホルダと、該空洞部にある切削屑の先端を把持し、排出路を誘導する切削屑抜出し手段と、該切削屑をチップ状に裁断するか又はコイル状に巻き取る切削屑処理手段とを備えた電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置において、
管内に、進退自在で、且つ一定姿勢を保つ手段を備えた遊動体を配設し、該遊動体の一定位置に前記切削バイト、バイトホルダ及び帯状の切削屑を造管方向の上流側に誘導する切削屑抜出し手段を配設したことを特徴とする電縫鋼管内面ビードの処理装置。
【請求項3】
前記切削屑抜出し手段が、管内部を帯状の切削屑が通過する排出路と、該排出路内へ降下してきた切削屑の先端を把持するトング状の把持手段と、切削屑の先端を把持したことを検出するセンサと、該切削屑の検出時に閉じた前記把持手段を支持し、前記排出路内を移動させる支持手段と、該支持手段の前記排出路内での前後進を行う移動手段とを備えたことを特徴とする請求項2記載の電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置。
【請求項4】
前記遊動体の下方に、該遊動体を支える姿勢安定用コロを配置したことを特徴とする請求項2又は3記載の電縫鋼管内面ビード切削屑の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−205312(P2006−205312A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21820(P2005−21820)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】