説明

電荷検出装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電荷転送装置に関し、特に電荷転送装置の出力部として用いられるソースフォロワ回路のドライブMOSトランジスタの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電荷転送装置を用いる例えばCCD固体撮像装置には、その出力部としてフローティング・ディフュージョン型電荷検出部を用いたものがある。このフローティング・ディフュージョン型電荷検出部には、図5に示すように、例えばCCD固体撮像装置の水平シフトレジスタ(電荷転送部)4からフローティング・ディフュージョンFDに供給された信号電荷を信号電圧に変換するソースフォロワ段51が設けられている。
【0003】ところで、年々、CCD固体撮像装置の高感度化の要求が強くなっており、高感度化を実現するには、電荷検出部での変換効率を向上することが重要である。電荷検出部の変換効率を向上するには、ソースフォロワ段51のドライブMOSトランジスタQ1 のゲート面積を小さくすること、すなわちドライブMOSトランジスタQ1 の縮小化が重要になってくる。
【0004】一般に、MOSトランジスタは、図6に示すように、シリコン基板11上にフィールド酸化膜(SiO2)12を数100nm成長させた後、ソース、ゲート及びドレインの各部をエッチングしてから、ポリシリコンによってゲート電極14を形成し、ソース、ドレイン用に高濃度の不純物イオンを注入することによって形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このMOSトランジスタでは、そのチャネル長Lはポリシリコンからなるゲート電極14の幅で決定されるが、チャネル幅Wはフィールド酸化膜12の底部の幅で決定されるため、出来上がり値のバラツキがチャネル幅Wの方が大きくなってしまう。したがって、電荷検出部の変換効率の向上を目的としてソースフォロワ段51のドライブMOSトランジスタQ1のゲート面積を小さくした場合、このバラツキ範囲がMOSトランジスタの動作(ID −VD カーブ)に影響を与えることになるため、ソースフォロワ段51の出力電圧のDCバイアスが変動し、変換効率のバラツキも大きなものとなってしまう。
【0006】本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、ゲート面積を小さくしたときの出来上がり精度を高くすることにより、ソースフォロワ段の出力電圧のDCバイアス変動と変換効率のバラツキ低減に寄与し得るMOSトランジスタを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明では、ドライブMOSトランジスタ及び負荷MOSトランジスタからなるソースフォロワ回路を具備し、電荷転送部から転送されてきた信号電荷を信号電圧に変換する電荷検出装置において、基板上に所定の間隔を有して形成されたフィールド酸化膜と、基板上に設けられた1層目のポリシリコンによって形成されて前記所定の間隔よりも狭いチャネル幅に対応する空隙をし、かつフィールド酸化膜上に配線されたチャネルストッパと、前記空隙及び前記チャネルストッパ上に跨って2層目のポリシリコンによって形成されたゲート電極とを有するMOSトランジスタをドライブMOSトランジスタとして用い、チャネルストッパはソース領域側ではソース領域上に位置する部分が欠落して前記フィールド酸化膜上にのみ配線されてなり、ドライブMOSトランジスタのソース出力電圧をチャネルストッパにバイアス電圧としてフィードバックした構成となっている。
【0008】
【作用】電荷転送装置のフローティング・ディフュージョン型電荷検出部において、上記構成のMOSトランジスタをソースフォロワ回路のドライブMOSトランジスタとして用いることにより、ゲート面積を小さくした場合のチャネル幅Wを精度良く作成できるので、ソースフォロワ回路の出力電圧のDCバイアス変動及び変換効率のバラツキを小さくできる。しかも、ソース領域側では、チャネルストッパのソース領域上に位置する部分を欠落させ、当該チャネルストッパをフィールド酸化膜上にのみ配線することで、チャネルストッパと基板間の容量を低減できるため、周波数特性を向上できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明によるMOSトランジスタの一実施例の構造図である。図において、シリコン基板11上には二酸化シリコン(SiO2)によってフィールド酸化膜12が形成されている。このフィールド酸化膜12の底部には、1層目のポリシリコン(1st poly)によってチャネルストッパ13a,13bが形成されている。このチャネルストッパ13a,13bは、図1から明らかなように、各内側エッジ間に幅Wの空隙をもって配置されている。チャネルストッパ13a,13bは、例えば接地レベルがバイアス電圧として印加されることで、その機能を十全に果たす。
【0010】また、チャネルストッパ13a,13bと直交する方向には、2層目のポリシリコン(2nd poly)によってゲート電極14が、図1から明らかなように、チャネルストッパ13a,13b上及びこれらチャネルストッパ13a,13b間の空隙上に跨って形成されている。このゲート電極14の幅によってチャネル長Lが決定され、そのチャネル幅Wがチャネルストッパ13a,13b間の空隙の幅Wに対応している。なお、フィールド酸化膜12及びチャネルストッパ13a,13bとゲート電極14との間には層間絶縁膜15が介在している。図2は、かかる構成のMOSトランジスタのパターン図である。
【0011】このように、MOSトランジスタのチャネルストッパ13a,13bをポリシリコン(1st poly)によって形成したことにより、チャネル幅Wを加工精度の高いポリシリコンで決定できるため、ゲート面積を小さくした場合のチャネル幅Wの値のバラツキを小さくできることになる。すなわち、ゲート面積を小さくしたときに心配されるチャネル幅Wを精度良く作成することが可能となる。
【0012】次に、本発明によるMOSトランジスタが適用されるFD(フローティング・ディフュージョン)型電荷検出部を出力部として具備する例えばインターライン転送方式のCCD固体撮像装置の構成の一例を図3に示す。図において、画素単位で2次元配列されて入射光に応じた信号電荷を蓄積する複数個のフォトセンサ31と、これらフォトセンサ31の垂直列毎に配されかつ垂直ブランキング期間の一部にて瞬時にフォトセンサ31から読み出された信号電荷を垂直転送する垂直シフトレジスタ32とによって撮像領域33が構成されている。
【0013】垂直シフトレジスタ32に移された信号電荷は、水平ブランキング期間の一部にて1走査線に相当する部分ずつ順に水平シフトレジスタ34へ転送される。1走査線分の信号電荷は、水平シフトレジスタ34によってテレビジョン信号の水平走査期間に合わせて順次信号検出用フローティング・ディフュージョンFDへ出力ゲートOGを介して転送される。フローティング・ディフュージョンFDには、信号電荷を信号電圧に変換するためのソースフォロワ回路35が接続されている。
【0014】このソースフォロワ回路35は例えば2段構成となっており、1段目のドライブMOSトランジスタQ1 及び負荷MOSトランジスタQ2 と、2段目のドライブMOSトランジスタQ3 及び負荷MOSトランジスタQ4 とからなり、各段の負荷MOSトランジスタQ2 ,Q4 のゲートにはバイアス電圧Vg が印加されている。ソースフォロワ回路35の出力は、バッファ36を介してビデオ信号出力として導出されることになる。このフローティング・ディフュージョンFD及びソースフォロワ回路35によってFD型電荷検出部37が構成されている。
【0015】このFD型電荷検出部37において、ソースフォロワ回路35の初段のドライブMOSトランジスタQ1 として本発明によるMOSトランジスタが用いられるのである。本発明によるMOSトランジスタでは、図1から明らかなように、フィールド酸化膜12がMOSトランジスタ領域の外側に位置することから、チャネルストッパ(1st poly)13a,13bとシリコン基板11間、チャネルストッパ13a,13bとゲート電極(2ndpoly)14間の酸化膜厚は通常のMOSトランジスタに比べて薄くなっており、チャネルストッパ13a,13bをDCバイアスに固定した場合は、それらの容量が大きくなって変換効率の低下を来すことになる。
【0016】そこで、図4に示すように、ドライブMOSトランジスタQ1のソースとチャネルストッパ13a,13bとをアルミ(Al)配線38を介して結線し、ドライブMOSトランジスタQ1 のソース出力電圧をチャネルストッパ13a,13bにバイアス電圧としてフィードバックしてゲート電極14と同相で駆動する構成とする。これによれば、図4中の斜線部■の容量を低減できるため、容量に起因する変換効率の低下を防止できることになる。
【0017】また、チャネルストッパ13a,13bとシリコン基板11間の容量は、チャネルストッパ13a,13bがドライブMOSトランジスタQ1のソースに結線されているので、負荷としてデバイスの周波数特性にも効いてくる。このため、チャネルストッパ13a,13bを図4中の斜線部■のように切断し、ドライブMOSトランジスタQ1 上にあるチャネルストッパ13a,13bをフィールド酸化膜12上へ配線することにより、容量を低減でき、周波数特性を向上できることになる。
【0018】このように、本発明によるMOSトランジスタをソースフォロワ回路35の初段のドライブMOSトランジスタQ1 として用い、しかもドライブMOSトランジスタQ1 のソース出力電圧をチャネルストッパ13a,13bにバイアス電圧としてフィードバックすることにより、電荷検出部37の変換効率の向上を目的としてドライブMOSトランジスタQ1 のゲート面積を小さくした場合に、先述したように、出来上がり精度を高くすることができるため、ソースフォロワ回路35の出力電圧のDCバイアス変動及び変換効率のバラツキを小さくすることができる。
【0019】さらには、バッファ36等を含む出力回路の設計時のダイナミックレンジが狭くても、製造上のバラツキが小さいので、ソースフォロワ回路35の初段のドライブMOSトランジスタQ1 のチャネル幅Wを小さくしてのデバイスの高感度化が容易に図れることになる。
【0020】なお、上記実施例では、CCD固体撮像装置の出力部に用いられるFD型電荷検出部(装置)に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、CCDライン(リニア)センサやCCD遅延素子等の電荷転送装置の出力部に用いられる電荷検出装置全般に適用し得るものである。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、MOSトランジスタのチャネルストッパをポリシリコンによって形成したことにより、チャネル幅Wを加工精度の高いポリシリコンで決定できるため、ゲート面積を小さくした場合のチャネル幅Wの値のバラツキを小さくできる効果がある。
【0022】また、フローティング・ディフュージョン型電荷検出部において、かかるMOSトランジスタをソースフォロワ回路のドライブMOSトランジスタとして用いたことにより、ゲート面積を小さくした場合のチャネル幅Wを精度良く作成できるため、ソースフォロワ回路の出力電圧のDCバイアス変動及び変換効率のバラツキを小さくできる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるMOSトランジスタの一実施例を示す構造図である。
【図2】本発明によるMOSトランジスタのパターン図である。
【図3】FD型電荷検出部を出力部として具備したCCD固体撮像装置の一例を示す構成図である。
【図4】本発明による他の実施例を示すパターン図である。
【図5】FD型電荷検出部の構成図である。
【図6】従来のMOSトランジスタの構造図である。
【符号の説明】
12 フィールド酸化膜
13a,13b チャネルストッパ(1st poly)
14 ゲート電極(2nd poly)
31 フォトセンサ
32 垂直シフトレジスタ
34 水平シフトレジスタ
35 ソースフォロワ回路
37 FD型電荷検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドライブMOSトランジスタ及び負荷MOSトランジスタからなるソースフォロワ回路を具備し、電荷転送部から転送されてきた信号電荷を信号電圧に変換する電荷検出装置において、基板上に所定の間隔を有して形成されたフィールド酸化膜と、基板上に設けられた1層目のポリシリコンによって形成されて前記所定の間隔よりも狭いチャネル幅に対応する空隙を有し、かつ前記フィールド酸化膜上に延在して配線されたチャネルストッパと、前記空隙及び前記チャネルストッパ上に跨って2層目のポリシリコンによって形成されたゲート電極とを有するMOSトランジスタを前記ドライブMOSトランジスタとして用い、前記チャネルストッパはソース領域側ではソース領域上に位置する部分が欠落して前記フィールド酸化膜上にのみ配線されてなり、前記ドライブMOSトランジスタのソース出力電圧を前記チャネルストッパにバイアス電圧としてフィードバックしたことを特徴とする電荷検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3189327号(P3189327)
【登録日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【発行日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−290844
【出願日】平成3年10月8日(1991.10.8)
【公開番号】特開平5−102458
【公開日】平成5年4月23日(1993.4.23)
【審査請求日】平成10年10月7日(1998.10.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 昭55−102251(JP,A)
【文献】実開 昭60−163761(JP,U)