説明

電荷輸送性化合物、無機微粒子、有機感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】本発明の目的は、有機感光体や太陽電池や有機EL素子の開発に有効な電荷輸送性化合物を提供することであり、又、該電荷輸送性化合物で表面処理された無機粒子を提供することであり、該無機微粒子を用いて、有機感光体の摩耗性を、アモルファスシリコン感光体と同等の水準まで、改善すると共に、高温高湿下等で発生しやすい、画像流れや画像ボケを改善し、高耐久で且つ高画質の電子写真画像が得られる有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することである。
【解決手段】連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有することを特徴とする電荷輸送性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機感光体や太陽電池や有機EL素子の開発に有効な電荷輸送性化合物および電荷輸送性化合物で表面処理した無機微粒子に関するものであり、該無機微粒子を用いた有機感光体及び該有機感光体を用いた画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、画像形成装置の小型化から電子写真感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり電子写真感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
【0003】
有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、更に優れたクリーニング性、転写性を付与させるために、良好な表面性を有する有機感光体が必要とされており、これらが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
【0004】
有機感光体の感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3)等が挙げられる。これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び(3)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。更に(3)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
【0005】
これらの問題を改良する他の手法として、硬化性高分子と官能基を有する電荷輸送化合物とを組み合わせることによって、機械的強度と光電特性の両立をはかる手段が考案されている(特許文献4)。特にシロキサン結合を有するケイ素系硬化性高分子と官能基を有するケイ素系電荷輸送化合物とを硬化することによって得られる表面保護層は、初期的な光電特性を何ら低下させることなく、緻密な3次元架橋構造を形成して膜としての硬度を増大させ、接触帯電下での長期繰り返し使用においても、優れた機械的強度を発現し得るものと考えられる。
【0006】
しかしながら、これらのケイ素系保護層を従来の電荷輸送層上に積層して感光体を作製した場合、複写機およびレーザープリンター等の中での長期の繰り返し使用において、初期的には良好であった光電特性が繰り返し使用により悪化して行く傾向がある。特に初期的に良好であった残留電位が徐々に上昇し、画像品位を保つために必要な静電コントラストを得ることが出来なくなってしまう。さらに長期の繰り返し使用においては、その表面保護層と電荷輸送層の間で塗膜の剥離が生じ、表面保護層としての機能を果たすことが出来なくなるという問題がある。
【0007】
又、上記(3)の無機フィラーの代わりに、光電特性サブユニット(F)と連結した無機ガラスネットワークサブグループ(G)、即ち、G−D−Fユニットの硬化性樹脂を保護層に用いた技術も考案されている(特許文献5)。しかしながら、該G−D−Fユニット構造の無機ガラスネットワークサブグループは、アルコキシシリル基等で形成された部分的なネットワーク構造であり、無機微粒子を形成した構造とは言い難く、無機フィラーのような摩耗抵抗性を有していない。
【0008】
さらに、(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させた感光体も知られている(特許文献6)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物質を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、クラックの発生が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。また相溶性向上のためにポリカーボネート樹脂を含有させる記載もあるが、硬化型アクリルモノマー含有量が減少し、結果的には十分な耐摩耗性を達成できていない。また表面層に電荷輸送物質を含まない感光体については、露光部電位低下のために表面層を薄膜とする記載があるが、膜厚が薄いために感光体の寿命が短い。また帯電電位や露光部電位の環境安定性が悪く温湿度環境の影響によりその値は大きく変動し、十分な値を維持するには至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−48637号公報
【特許文献2】特開昭64−1728号公報
【特許文献3】特開平4−281461号公報
【特許文献4】特開平9−190004号公報
【特許文献5】特開2000−89488号公報
【特許文献6】特開平8−262779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記した課題を解決することであり、有機感光体や太陽電池や有機EL素子の開発に有効な電荷輸送性化合物を提供することであり、又、該電荷輸送性化合物で表面処理された無機粒子を提供することであり、該無機微粒子を用いて、有機感光体の摩耗性を、アモルファスシリコン感光体と同等の水準まで、改善すると共に、高温高湿下等で発生しやすい、画像流れや画像ボケを改善し、高耐久で且つ高画質の電子写真画像が得られる有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、有機感光体に適用される保護層について、従来の硬化性樹脂の保護層の問題点を洗い出した結果、保護層の硬化性樹脂中に電荷輸送構造を導入すると共に、硬化性樹脂中で、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する化合物で表面処理した無機微粒子のフィラーが相互に強く結合した構造を有することにより、電位特性の改善、耐摩耗性と、酸素ガスや湿度の感光層への出入りを小さくし、高温高湿条件での画像流れや画像ボケを同時に解決できることを見いだし、本願発明を完成した。即ち、本願発明は、以下のような構成を有することにより達成される。
【0012】
1.連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有することを特徴とする電荷輸送性化合物。
【0013】
2.前記表面処理基が反応性ケイ素含有官能基であることを特徴とする前記1に記載の電荷輸送性化合物。
【0014】
3.前記連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載の電荷輸送性化合物。
【0015】
【化1】

【0016】
(一般式(1)中、Aは正孔輸送性基を示す。Pは連鎖重合性官能基を有する有機基を示す。nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合Pは同一でも異なっても良い。Qは加水分解性基または水酸基を示し、Rは置換もしくは無置換の一価炭化水素基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアリーレン基を示し、mは1〜3の整数を示し、1は正の整数を示す。)。
【0017】
4.前記一般式(1)中、Rが炭素数1〜15の一価炭化水素基またはハロゲン置換一価炭化水素基であり、Rが下記一般式(2)の連結基であることを特徴とする前記3に記載の電荷輸送性化合物。
【0018】
【化2】

【0019】
(一般式(2)中、hは1〜18の整数)で示さる。
【0020】
5.前記一般式(1)中、Aが下記一般式(3)の(l+n)価の連結基であることを特徴とする前記3又は4に記載の電荷輸送性化合物。
【0021】
【化3】

【0022】
(一般式(3)中、R、R及びRは置換又は無置換のフェニル基であり、該フェニル基から水素原子を除いて、(l+n)価の連結基を形成する。又、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)。
【0023】
6.前記連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物が下記一般式(4)の化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の電荷輸送性化合物。
【0024】
【化4】

【0025】
(一般式(4)中、Aは正孔輸送性基を示す。Pは連鎖重合性官能基を有する有機基を示す。nは1又は2の整数を示し、nが2の場合Pは同一でも異なっても良い。Qは加水分解性基または水酸基を示し、Rは置換もしくは無置換の一価炭化水素基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアリーレン基を示し、mは1又は2の整数を示し、lは正の整数を示す。但し、mとnは同時に2の整数とはならない。)。
【0026】
7.前記一般式(4)中、Rが炭素数1〜15の一価炭化水素基またはハロゲン置換一価炭化水素基であり、Rが下記一般式(2)の連結基であることを特徴とする前記6に記載の電荷輸送性化合物。
【0027】
【化5】

【0028】
(一般式(2)中、hは1〜18の整数)で示さる。
【0029】
8.前記一般式(4)中、Aが下記一般式(5)の(l)価の連結基であることを特徴とする前記6又は7に記載の電荷輸送性化合物。
【0030】
【化6】

【0031】
(一般式(5)中、R、R及びRは置換又は無置換のフェニル基であり、該フェニル基からHを除いて、(l)価の連結基を形成する。又、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)。
【0032】
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の電荷輸送性化合物により表面処理されたことを特徴とする無機微粒子。
【0033】
10.前記無機微粒子が金属酸化物粒子であることを特徴とする前記9に記載の無機微粒子。
【0034】
11.導電性支持体上に少なくとも感光層、その上に保護層を有する有機感光体において、該保護層が前記9又は前記10に記載の無機微粒子を含有する硬化膜であることを特徴とする有機感光体。
【0035】
12.有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、該有機感光体が前記11に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【0036】
13.前記12に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも前記11に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0037】
本願発明の電荷輸送性化合物で表面処理された無機微粒子を用いて、表面層を形成した有機感光体を用いることにより、繰り返し画像形成時の電位特性や、感光体表面の摩耗や擦過に対する強度が顕著に改善され、感光体表面の耐表面傷や、減耗量が改善され、高温高湿環境下での画像ボケ等も顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
先ず、本願発明の電荷輸送性化合物について、説明する。
【0040】
本願発明の電荷輸送性化合物は、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有することを特徴とする。
【0041】
ここで、本願発明の電荷輸送性化合物とは、その化合物が電子或いは正孔のドリフト移動度を有する化合物であり、又別の定義としてはTime−Of−Flight法などの電荷輸送性能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物として定義できる。
【0042】
本願発明の連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物とは、該電荷輸送性化合物の化学構造に、連鎖重合性官能基を有すると共に、表面処理基を有し、且つ電荷輸送性を有する化合物を云う。
【0043】
本願発明の電荷輸送性化合物の表面処理基は、無機微粒子の表面に電荷輸送性化合物を定着させる機能を有する。
【0044】
又、本願発明の電荷輸送性化合物が有する、連鎖重合性官能基とは、高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、詳しくは例えば技報堂出版 三羽忠広著の「基礎 合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)24頁に説明されているように、その形態が主にラジカルあるいはイオン等の中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合等のことをいう。
【0045】
本願発明に好ましく用いられる連鎖重合性官能基としては、下記に記す(1)〜(7)の官能基が挙げられる。
【0046】
【化7】

【0047】
本願発明に係わる連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物としては、前記一般式(1)又は一般式(4)の化合物が好ましい。
【0048】
前記一般式(1)又は一般式(4)中のAは、正孔輸送性基を示し、正孔輸送性を示すものであればいずれのものでもよく、一般式(1)又は一般式(4)中のPやRとの結合部位を水素原子に置き換えた水素付加化合物(正孔輸送化合物)として示せば、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体及びN−フェニルカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0049】
前記一般式(1)中のAとしては、前記一般式(3)又は一般式(5)のトリフェニルアミン基が好ましい。
【0050】
連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物の表面処理基とは、無機微粒子の表面に存在する水酸基やハロゲン基等と反応して無機微粒子の表面に連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を定着できる官能基を意味する。
【0051】
本願発明に好ましく用いられる表面処理基としては、反応性のシリル基(反応性ケイ素含有官能基)が好ましく、前記一般式(1)、一般式(4)中のような構造でシリル基を含むことが、より好ましい。
【0052】
即ち、前記一般式(1)、一般式(4)中、Qは加水分解性基または水酸基を示し、加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエチル基等が挙げられ、より好ましくは−ORで示される。Rは加水分解性基であるアルコキシ基あるいはアルコキシアルコキシ基を形成する基であり、炭素数が1〜6であることが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、メトキシエチル基等が挙げられる。Qとしては、式−ORであるアルコキシ基が好ましい。mは1又は2が好ましい。
【0053】
前記一般式(2)中、hは1〜18であるが、好ましくは2〜8である。
【0054】
はケイ素原子に直接結合した一価炭化水素基であり、炭素数が1〜15であることが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。この他に、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基が挙げられる。また、Rが有してもよい置換基としてはフッ素等のハロゲン原子が挙げられ、ハロゲン置換一価炭化水素基としては、例えばトリフルオロプロピル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基等で代表されるフロロ炭化水素基等が挙げられる。
【0055】
はアルキレン基またはアリーレン基を示し、炭素数が1〜18であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、更にはこれらが結合した基等が挙げられる。また、Rが有してもよい置換基としてはメチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0056】
また、一般式(1)、一般式(4)中のlは正の整数を示すが1〜5であることが好ましく、1又は2がより好ましい。
【0057】
以下に本発明に係わる、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物の代表例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0058】
一般式(1)の化合物としては、以下のような化合物が例示される。
【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
例示化合物RSCTM−1の合成
合成例1
4−ヒドロキシトリフェニルアミンと5倍モルのDMFを入れ、氷水冷却下、撹拌しながら1.2倍モルのオキシ塩化リンを滴下し、温度を95℃に上げて5時間反応させた。反応液を10倍体積の温水へ注ぎ1時間撹拌した。その後、沈澱物を瀘取し、エタノール/水(1:1)の混合溶液で洗浄し、4−ヒドロキシメチル−4′−ホルミルトリフェニルアミンを得た。(収率76.0%)。
【0063】
4−ヒドロキシメチル−4′−ホルミルトリフェニルアミンと等モルの水素化ナトリウム、5倍体積の1,2−ジメトキシエタンを三つ口フラスコに取り、室温で撹拌しながら等モルのトリメチルホスフォニウムブロマイドを加えた。次に、無水エタノールを一滴加えた後、70℃で4時間反応させた。これに4−ヒドロキシ−4′−ホルミルトリフェニルアミンを加え、70℃に温度を上げ5時間反応させた。反応液を瀘過し、瀘液と沈澱物のエーテル抽出液を水洗した。次いで、エーテル溶液を塩化カルシウムで脱水後、エーテルを除去し、反応混合物を得た。これをエタノール中から再結晶を行い4−ヒドロキシメチル−4′−ビニルトリフェニルアミンを得た(収率84.0%)。
【0064】
次に10倍体積のトルエン、等モルのトリエトキシシラン及び触媒量のトリス(テトラメチルジビニルジシロキサン)二白金(0)のトルエン溶液を三つ口フラスコに取り、室温で撹拌しながら4−ヒドロキシメチル−4′−ビニルトリフェニルアミンのトルエン溶液を滴下した。滴下終了後、70℃で3時間撹拌を行った後、溶媒を減圧下で除き4−ヒドロキシメチル−4′−[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミンを得た。収量(収率68%)。
【0065】
得られた化合物と等モルのアクリル酸を脱水トルエンに溶解し窒素下で攪拌して、4−アクリロイル−4′−[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリフェニルアミン(RSCTM−1)を得た(収率89%)。
【0066】
一般式(4)の化合物としては、以下のような化合物が例示される。
【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
以下、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された無機微粒子の製造方法を酸化チタン粒子を例にして説明する。
【0071】
連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された酸化チタン粒子の製法
本発明に係わる連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子を前記した一般式(1)、一般式(4)等で表される化合物を用いて表面処理することにより、得ることが出来る。
【0072】
以下に、均一でしかもより微細に連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面被覆処理された酸化チタン粒子を製造する表面処理方法を述べる。
【0073】
該表面被覆処理するに際し、酸化チタン粒子100質量部に対し、該化合物を表面処理剤として0.1〜100質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。
【0074】
酸化チタン粒子と連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物の表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、酸化チタン粒子を微細化すると同時に酸化チタン粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一でしかもより微細な連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0075】
本発明において用いられる表面処理装置である湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた攪拌ディスクを高速回転させることにより、無機微粒子の金属酸化物微粒子等の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、金属酸化物粒子に表面処理を行う際に金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等が使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力等により微粉砕、分散が行われる。
【0076】
上記サンドグラインダーミルで用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.3〜1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0077】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0078】
以上のような湿式処理により、一般式(1)、一般式(4)等の連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物による表面処理により、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0079】
以上、酸化チタン粒子で説明したが、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫等の無機微粒子も、酸化チタンと同様に表面に水酸基を有しているので、酸化チタンと同様に一般式(1)、一般式(4)等の連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物による表面処理により、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を得ることができる。
【0080】
次に、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された無機微粒子として、金属酸化物粒子について説明する。
【0081】
(金属酸化物粒子)
本発明で用いられる連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物で表面処理された無機微粒子に用いられる金属酸化物粒子は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫等の粒子が好ましい。
【0082】
さらに上記金属酸化物粒子は、公知の方法、例えば気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法、電解法等の一般的な製造法で作製されたものが好ましい。
【0083】
上記金属酸化物の数平均一次粒径は1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。
【0084】
上記金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した。
【0085】
次に、本願発明の無機微粒子を用いた有機感光体について、記載する。
【0086】
本願発明の有機感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層、その上に保護層を有する有機感光体であり、該保護層が少なくとも、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された無機微粒子を含有する組成物を硬化させて形成されたことを特徴とする。
【0087】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0088】
先ず、本願発明の有機感光体の保護層について記載する。
【0089】
本願発明の有機感光体は、保護層が少なくとも、連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物(以下、第1の連鎖重合性化合物ともいう)により表面処理された無機微粒子を含有する組成物を硬化させて形成されるが、該組成物中には、前記無機微粒子の他に、電荷輸送特性を有しない、連鎖重合性化合物(以下、第2の連鎖重合性化合物ともいう)を含有させて硬化させ、保護層を形成することがより好ましい。
【0090】
ここで、「組成物を硬化させて」の硬化とは、連鎖重合性化合物のモノマーを紫外線や電子線等の活性線照射により、或いは加熱等のエネルギー付加により、重合(硬化)して、保護層のバインダー樹脂を形成し、そのまま、保護層を形成することを意味する。
【0091】
第2の連鎖重合性化合物としては、紫外線や電子線等の活性線照射により、或いは加熱等のエネルギー付加により、重合(硬化)して、ポリスチレン、ポリアクリレート等、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となるモノマー、即ち、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーを用いることができる。
【0092】
中でも、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることからアクリロイル基(CH=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を有する連鎖重合性化合物が特に好ましい。
【0093】
本発明においては、これら第2の連鎖重合性化合物は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0094】
また、カチオン性の連鎖重合性化合物では、特にエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられるが、オキセタン化合物が好ましい。
【0095】
以下に第2の連鎖重合性化合物の例を示す。
【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

【0101】
【化19】

【0102】
【化20】

【0103】
但し、上記においてR及びR′はそれぞれ下記で示される。
【0104】
【化21】

【0105】
また、好ましいオキセタン化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0106】
【化22】

【0107】
【化23】

【0108】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドを挙げることができる。
【0109】
本発明においては、第2の連鎖重合性化合物は、官能基が3以上の化合物を用いることが好ましい。又、第2の連鎖重合性化合物は、2種以上の化合物を併用してもよいが、この場合でも、第2の連鎖重合性化合物は、官能基が3以上の化合物を50質量%以上用いることが好ましい。
【0110】
保護層を形成する際の組成物、即ち、第1の連鎖重合性化合物(連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された無機微粒子)(A)及び第2の連鎖重合性化合物(B)を含有する組成物中で、(A):(B)の割合は、(A)100質量部に対し、(B)が10〜500質量部が好ましい。
【0111】
上記第1の連鎖重合性化合物(連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された無機微粒子)及び第2の連鎖重合性化合物等を反応させる際には、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤あるいはカチオン重合性開始剤等の重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが用いられる。重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
【0112】
これら重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、或いはフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、或いはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。また、カチオン重合を開始させる化合物としては、例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩などのイオン系重合開始剤やスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物或いは、鉄アレン錯体等の非イオン系重合開始剤を挙げることができる。特に、非イオン系重合開始剤であるスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物が好ましい。
【0113】
下記に好ましく用いられる光重合開始剤を例示する。
α−アミノアセトフェノン系の例
【0114】
【化24】

【0115】
α−ヒドロキシアセトフェノン系化合物の例
【0116】
【化25】

【0117】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の例
【0118】
【化26】

【0119】
その他のラジカル重合開始剤の例
【0120】
【化27】

【0121】
非イオン系重合開始剤
【0122】
【化28】

【0123】
イオン系重合開始剤
【0124】
【化29】

【0125】
上記の光重合開始剤を用いて、本願発明の有機感光体に係わる保護層を形成するには、保護層の塗布液(前記第1の連鎖重合性化合物(連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された無機微粒子)、第2の連鎖重合性化合物及び光重合開始剤等を含有する組成物)を感光層上に塗布した後、塗膜の流動性が無くなる程度まで1次乾燥した後、紫外線を照射して保護層を硬化し、更に塗膜中の揮発性物質の量を規定量にするため2次乾燥を行って作製する方法が好ましい。
【0126】
光重合開始剤を用いた保護層の硬化反応には、保護層の塗膜に活性線を照射してラジカルを発生させ、重合反応を進行させ、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化し、保護層の硬化樹脂を生成することが好ましい。活性線としては紫外線や電子線が好ましく、使用しやすい紫外線が特に好ましい。
【0127】
紫外線を照射する装置としては、紫外線硬化樹脂を硬化させるのに用いられている公知の装置を用いることができる。
【0128】
樹脂を紫外線硬化させる紫外線の量(mJ/cm)は、紫外線照射強度と照射時間で制御することが好ましい。
【0129】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜100mJ/cmである。ランプの電力は、好ましくは0.1kW〜5kWであり、特に好ましくは、0.5kW〜3kWである。
【0130】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量としては、0.5〜10Mradであることが好ましい。
【0131】
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜10分が好ましく、作業効率の観点から0.1秒〜5分がより好ましい。
【0132】
本発明の感光体は、活性線を照射する前後、及び活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0133】
乾燥の条件は、溶媒の種類、膜厚などのよって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温〜180℃であり、特に好ましくは80℃〜140℃である。乾燥時間は、好ましくは1分〜200分であり、特に好ましくは5分〜100分である。
【0134】
保護層の膜厚は好ましくは0.2〜10μmであり、より好ましくは0.5〜6μmである。
【0135】
一方、熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、パーオキシジカーボネート系化合物、パーオキシエステル系化合物等が用いられ、これらの熱重合開始剤は企業の製品カタログ等で公開されている。
【0136】
本願発明には、これらの熱重合開始剤を用いて本願発明に係わる保護層を形成するには、前記の光重合開始剤と同様に、前記第1の連鎖重合性化合物(連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された無機微粒子)、第2の連鎖重合性化合物及び熱重合開始剤等を混合して、保護層の塗布液を作製し、該塗布液を感光層の上に塗布後、加熱乾燥して、本発明に係わる保護層を形成する。熱重合開始剤としては、前記その他のラジカル重合開始剤等を用いることができる。
【0137】
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、アクリル系化合物の100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0138】
又、本発明の保護層には、さらに各種の電荷輸送物質や酸化防止剤を含有させることも出来るし、各種の滑剤粒子を加えることができる。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。保護層中の滑剤粒子の割合は、アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜60質量%である。滑剤粒子の粒径は、平均一次粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。特に好ましくは、0.05μm〜0.5μmのものである。樹脂の分子量は適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0139】
本発明の保護層の塗布方法は、中間層、感光層と同様の、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などの公知の方法を用いることができる。
【0140】
これら保護層の塗布方法の中で、重合開始剤の下層への拡散を極力少なくし、保護層の下の感光層の膜を極力溶解させないため、量規制型(スライドホッパー型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。前記量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0141】
保護層を形成するための溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
次に、前記保護層以外の有機感光体の構成を記載する。
【0143】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層と前記したような保護層を順次積層したものあるが、具体的には、以下に示すような層構成を例示することができる。
【0144】
1)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷発生層と電荷輸送層、及び保護層を順次積層した層構成、
2)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層、及び保護層を順次積層した層構成。
【0145】
上記1)を中心に、本願発明の有機感光体の層構成を記載する。
【0146】
〔導電性支持体〕
本発明で用いる支持体は導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
【0147】
〔中間層〕
本発明においては、導電層と感光層の中間にバリアー機能と接着機能をもつ中間層を設けることもできる。
【0148】
中間層はカゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン及びゼラチンなどのバインダー樹脂を公知の溶媒に溶解し、浸漬塗布などによって形成できる。中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0149】
また、中間層の抵抗調整の目的で各種の導電性微粒子や金属酸化物を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物。スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることができる。
【0150】
これら金属酸化物を1種類もしくは2種類以上混合して用いてもよい。2種類以上混合した場合には、固溶体または融着の形をとってもよい。このような金属酸化物の平均粒径は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0151】
中間層に使用する溶媒としては、無機粒子を良好に分散し、ポリアミド樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性能に優れ好ましい。また、保存性、粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0152】
バインダー樹脂の濃度は、中間層の膜厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
【0153】
無機粒子などを分散したと時のバインダー樹脂に対する無機粒子の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して無機粒子20〜400質量部が好ましく、さらに好ましくは50〜200部である。
【0154】
無機粒子の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
中間層の乾燥方法は、溶媒の種類、膜厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0156】
中間層の膜厚は、0.1〜15μmが好ましく、0.3〜10μmがより好ましい。
【0157】
〔電荷発生層〕
本発明に用いられる電荷発生層は、電荷発生物質とバインダー樹脂を含有し、電荷発生物質をバインダー樹脂溶液中に分散、塗布して形成したものが好ましい。
【0158】
電荷発生物質は、スーダンレッド及びダイアンブルーなどのアゾ原料、ビレンキノン及びアントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの電荷発生物質は単独、もしくは公知の樹脂中に分散する形態で使用することができる。
【0159】
電荷発生層のバインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)及びポリ−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
電荷発生層の形成は、バインダー樹脂を溶剤で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して塗布液を調製し、塗布液を塗布機で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して作製することが好ましい。
【0161】
電荷発生層に使用するバインダー樹脂を溶解し塗布するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
電荷発生物質の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
バインダー樹脂に対する電荷発生物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質1〜600質量部が好ましく、さらに好ましくは50〜500部である。電荷発生層の膜厚は、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性及び混合割合等により異なるが好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜3μmである。なお、電荷発生層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。前記顔料を真空蒸着することによって形成すこともできる。
【0164】
〔電荷輸送層〕
本発明の感光体に用いられる電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)とバインダー樹脂を含有し、電荷輸送物質をバインダー樹脂溶液中に溶解、塗布して形成される。
【0165】
電荷輸送物質は、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセン、トリフェニルアミン誘導体等を2種以上混合して使用してもよい。
【0166】
電荷輸送層用のバインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂及びスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられるが、ポリカーボネートが好ましい。更にはBPA、BPZ、ジメチルBPA、BPA−ジメチルBPA共重合体等が耐クラック、耐磨耗性、帯電特性の点で好ましい。
【0167】
電荷輸送層の形成は、バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解して塗布液を調製し、塗布液を塗布機で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して作製することが好ましい。
【0168】
上記バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質10〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは20〜100質量部である。
【0170】
電荷輸送層の膜厚は、電荷輸送物質の特性、バインダー樹脂の特性及び混合割合等により異なるが好ましくは5〜40μmで、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0171】
電荷輸送層中には酸化防止剤、電子導電剤、安定剤等を添加してもよい。酸化防止剤については特願平11−200135号、電子導電剤は特開昭50−137543号、同58−76483号等に記載のものがよい。
【0172】
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0173】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写材搬送手段としての転写材搬送部Dから構成されている。
【0174】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0175】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0176】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0177】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光除電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0178】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0179】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0180】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0181】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0182】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0183】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0184】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0185】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0186】
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0187】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0188】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0189】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0190】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0191】
転写材搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写材Pが収納された転写材収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写材Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写材Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写材Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25、爪分離手段250等によって、転写材P上に転写され、該転写材Pも感光体から分離され、その後、転写材Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送され、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0192】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写材Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写材Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0193】
以上は転写材の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写材案内部177が開放され、転写材Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0194】
更に、搬送機構178により転写材Pは下方に搬送され、転写材反転部179によりスイッチバックさせられ、転写材Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0195】
転写材Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写材Pを再給紙し、転写材Pを搬送路40に案内する。
【0196】
再び、上述したように感光体21方向に転写材Pを搬送し、転写材Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0197】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0198】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0199】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0200】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0201】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0202】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0203】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0204】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0205】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0206】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0207】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0208】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0209】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0210】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0211】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0212】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0213】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0214】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0215】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0216】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0217】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0218】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0219】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0220】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0221】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0222】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0223】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0224】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0225】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0226】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写材ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0227】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0228】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0229】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0230】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0231】
〈中間層〉
下記組成の中間層塗布液を作製した。
ポリアミド樹脂X1010(ダイセルデグサ株式会社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 1.1部
エタノール 20部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0232】
上記塗布液を用いて前記支持体上に、110℃で20分乾燥後の膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布した。
【0233】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)
20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0234】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質:CTM(下記化合物A) 150部
バインダー:ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法を用いて、110℃で60分乾燥後膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0235】
【化30】

【0236】
〈保護層〉
連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された酸化チタン粒子(酸化チタン粒子100部に対し(RSCTM−1)100部で表面処理された数平均一次粒径6nmの酸化チタン粒子)
200部
第2の連鎖重合性化合物(例示化合物31) 100部
イソプロピルアルコール 500部
上記成分をサンドミルを用いて10時間分散した後、
重合開始剤1−6 30部
を加え、遮光下で混合攪拌して溶解し保護層塗布液を作製した(保存中は遮光)。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、保護層を塗布した。塗布後、室温で20分乾燥後(溶媒乾燥工程)、メタルハライドランプ(500W)を用いて100mmの位置で感光体を回転させながら1分間照射して(紫外線硬化工程)、膜厚3μmの保護層を得た。
【0237】
感光体2〜27の作製
感光体1の保護層に使用する材料、硬化条件を表1の一覧表のように変更した以外は、同様にして感光体2〜27を作製した。
硬化条件(光):メタルハライドランプ(500W)より100mmの位置で感光体を回転させながら1分間照射して膜厚3μmの保護層を得た。
硬化条件(熱):140℃で30分間加熱し膜厚3μmの保護層を得た。
【0238】
感光体28(保護層の連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物により表面処理された酸化チタン粒子なし)
感光体1の作製において、保護層の組成から表面処理基を有する電荷輸送性化合物及び表面処理基を有する連鎖重合性化合物により表面処理された酸化チタン粒子を除いた以外は、感光体1と同様にして感光体28を作製した。
【0239】
感光体29(保護層のバインダーにポリアリレートを用いた)
感光体1の作製において、保護層を下記のようにして形成した以外は、感光体1と同様にして感光体29を作製した。
【0240】
〈保護層〉
バインダー(ポリアリレート) 100部
イソプロピルアルコール 500部
上記成分をサンドミルを用いて10時間分散して保護層塗布液を作製した。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、保護層を塗布した。塗布後、100℃で50分乾燥し、膜厚3μmの保護層を得た。
【0241】
感光体30(保護層の酸化チタン粒子の表面処理を連鎖重合性官能基、表面処理基を有するが電荷輸送性基を持たない化合物で表面処理された酸化チタン粒子とした)
感光体1の作製において、保護層の組成中の酸化チタン粒子の表面処理を、下記S−1の化合物(電荷輸送性基を持たない化合物)で表面処理された酸化チタン粒子とした以外は、感光体1と同様にして感光体30を作製した。
【0242】
S−1 CH=CHSi(CH)(OCH
【0243】
【表1】

【0244】
〔感光体の評価〕
以上のようにして得た感光体を基本的に、図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製;600dpi、780nmの半導体レーザの露光光を使用)を用いて評価した。尚、上記フルカラー複合機は画像形成ユニットを4組有しているので、それぞれの画像形成ユニットの感光体を同一種類の感光体(例えば、感光体1の場合は、4本の感光体1を用意して)で統一して、評価を行った。各評価は、30℃80%RHの条件で、YMCBk各色印字率2.5%のA4画像を中性紙のA4紙に50万枚の画出し耐刷試験を行い、その後、下記の個別の環境条件下で評価した。
【0245】
カブリ(白黒画像で評価)
前記環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に評価した。カブリ濃度はべた白画像をマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。該反射濃度は相対濃度(印刷していないA4紙の濃度を0.000とする)で評価した。
【0246】
◎:濃度が0.010未満(良好)
○:濃度が0.010以上、0.020以下(実用上問題ないレベル)
×:濃度が0.020より高い(実用上問題となるレベル)。
【0247】
(画像ボケ)
環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に、直ぐに実機の主電源を停止した。停止12時間後に電源を入れ画出し可能状態になった後、直ちにA3中性紙全面にハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)とA3全面の6dot格子画像を印字した。印字画像の状態を観察し以下の評価を行った。
【0248】
◎:ハーフトーン、格子画像とも画像ボケ発生なし(良好)
○:ハーフトーン画像のみに感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下が認められる(実用上問題なし)
×:画像ボケによる格子画像の欠損もしくは線幅の細りが発生(実用上問題有り)。
【0249】
(カラー画像の評価)
環境条件を30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に、20℃、50%RHの環境条件下に1時間放置し、前記フルカラー複合機bizhub PRO C6500の4組の画像形成ユニットを作動させ、人物顔写真を含むハーフトーン画像をA4紙に印刷し、下記の基準で評価した。
【0250】
◎:ハーフトーンのカラー画像がなめらかに再現され、目立つ画像ボケや画像ムラの発生が見あたらない(良好)
○:ハーフトーンのカラー画像に部分的に濃度が薄い画像ボケ或いは画像ムラが発生しているが、目立たず、全体として、なめらかに再現されている(実用上問題なし)
×:ハーフトーンのカラー画像に、はっきりした画像ボケあるいは画像ムラが発生ししている(実用上問題有り)。
【0251】
(表面傷)
前記環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験の前後に評価した。以下のように、感光体の表面状態を観察し傷の状態を評価した。評価した感光体はシアン位置に設置された感光体である。
【0252】
◎:50万枚印字後に表面傷なし(良好)
○:50万枚印字後に表面傷1〜5箇所発生(実用上問題なし)
×:50万枚印字後に表面傷6箇所以上発生(実用上問題有り)。
【0253】
(感光体の減耗量)
前記環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験の前後の膜厚差で評価した。感光層の膜厚は均一膜厚部分(感光体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとの両端3cmは除く)をランダムに10箇所測定し、その平均値を感光層の膜厚とする。膜厚測定器は渦電流方式の膜厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて行い、耐刷試験前後の感光層膜厚の差を膜厚減耗量とする。
【0254】
◎:減耗量が 0.7μm以下(良好)
○:減耗量が 0.8μm〜2μm(実用上問題なし)
×:減耗量が 2μmより大きい(実用上問題有り)
評価結果を下記表2にまとめた。
【0255】
【表2】

【0256】
表2から明らかなように、本願発明内の感光体1〜27は、各評価項目において、実用性あり以上の結果が得られているが、比較例の感光体28、29、30では何れかの評価項目において、実用性に問題がある結果となっている。
【符号の説明】
【0257】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有することを特徴とする電荷輸送性化合物。
【請求項2】
前記表面処理基が反応性ケイ素含有官能基であることを特徴とする請求項1に記載の電荷輸送性化合物。
【請求項3】
前記連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電荷輸送性化合物。
【化1】

(一般式(1)中、Aは正孔輸送性基を示す。Pは連鎖重合性官能基を有する有機基を示す。nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合Pは同一でも異なっても良い。Qは加水分解性基または水酸基を示し、Rは置換もしくは無置換の一価炭化水素基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアリーレン基を示し、mは1〜3の整数を示し、1は正の整数を示す。)。
【請求項4】
前記一般式(1)中、Rが炭素数1〜15の一価炭化水素基またはハロゲン置換一価炭化水素基であり、Rが下記一般式(2)の連結基であることを特徴とする請求項3に記載の電荷輸送性化合物。
【化2】

(一般式(2)中、hは1〜18の整数)で示さる。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Aが下記一般式(3)の(l+n)価の連結基であることを特徴とする請求項3又は4に記載の電荷輸送性化合物。
【化3】

(一般式(3)中、R、R及びRは置換又は無置換のフェニル基であり、該フェニル基から水素原子を除いて、(l+n)価の連結基を形成する。又、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)。
【請求項6】
前記連鎖重合性官能基を有し、表面処理基を有する電荷輸送性化合物が下記一般式(4)の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電荷輸送性化合物。
【化4】

(一般式(4)中、Aは正孔輸送性基を示す。Pは連鎖重合性官能基を有する有機基を示す。nは1又は2の整数を示し、nが2の場合Pは同一でも異なっても良い。Qは加水分解性基または水酸基を示し、Rは置換もしくは無置換の一価炭化水素基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアリーレン基を示し、mは1又は2の整数を示し、lは正の整数を示す。但し、mとnは同時に2の整数とはならない。)。
【請求項7】
前記一般式(4)中、Rが炭素数1〜15の一価炭化水素基またはハロゲン置換一価炭化水素基であり、Rが下記一般式(2)の連結基であることを特徴とする請求項6に記載の電荷輸送性化合物。
【化5】

(一般式(2)中、hは1〜18の整数)で示さる。
【請求項8】
前記一般式(4)中、Aが下記一般式(5)の(l)価の連結基であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電荷輸送性化合物。
【化6】

(一般式(5)中、R、R及びRは置換又は無置換のフェニル基であり、該フェニル基からHを除いて、(l)価の連結基を形成する。又、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電荷輸送性化合物により表面処理されたことを特徴とする無機微粒子。
【請求項10】
前記無機微粒子が金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項9に記載の無機微粒子。
【請求項11】
導電性支持体上に少なくとも感光層、その上に保護層を有する有機感光体において、該保護層が請求項9又は請求項10に記載の無機微粒子を含有する硬化膜であることを特徴とする有機感光体。
【請求項12】
有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、該有機感光体が請求項11に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも請求項11に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37745(P2011−37745A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185593(P2009−185593)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】