説明

電荷輸送材料及び有機電界発光素子

【課題】優れた発光効率と耐久性を有する有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料であって、特定のハロゲン含有不純物の含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、該不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下である電荷輸送材料、並びに該電荷輸送材料を有機層に含む有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電荷輸送材料及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから活発に研究開発が行われている。有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を有し、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。また、発光材料をホスト材料中にドープした発光層を用いるドープ型素子が広く採用されている。
また、ホスト材料の開発が盛んに行われており、例えば特許文献1には発光効率が高く、画素欠陥が少なく、耐熱性に優れる素子の作製を目的として、フェニル基が置換した1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(mCP)誘導体、及びこれをホスト材料に用いた有機電界発光素子が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の素子よりも更に高いレベルで発光効率と耐久性が両立された有機電界発光素子が求められている。
【0004】
特許文献2には、有機EL素子における少なくとも1つの有機化合物層を、不純物濃度が1000ppm未満の有機化合物材料で構成することにより、素子の耐久性が改善されることが開示されている。しかしながら、特許文献2では、素子の性能への影響が大きい不純物の種類は特定されていない。
また特許文献3には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した純度が99.3%〜99.9%である種々のN−カルバゾリルベンゼン誘導体をホスト材料として使用した有機EL素子が開示されているが、特許文献3においても、素子の性能への影響が大きい不純物の種類は特定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第04/074399号
【特許文献2】国際公開第00/41443号
【特許文献3】国際公開第05/063920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、ある一つの有機化合物材料は複数種のハロゲン含有不純物を含むが、その全てが該有機化合物材料を用いた有機電界発光素子の耐久性に等しく影響を与えるものでなく、どのような構造のハロゲン含有不純物が素子の耐久性に大きな影響を与えるのかは簡単には分からない。
特許文献2をはじめ、不特定の不純物を減らすことで素子性能が向上する例は既に報告があるが、素子性能に影響を与える不純物は、電荷輸送材料の構造により様々である。有機化合物材料に含有される全ての不純物が、素子の性能に同じ程度の影響を与えるわけではなく、材料構造やその使用目的(例えば、素子のどの層に用いるか)により、素子の性能への影響が大きい不純物の種類は異なるはずである。本発明の電荷輸送材料においては、特定構造の微量ブロモ化合物を減少させることで耐久性が大きく向上すること、更に、他の構造の不純物はブロモ化合物であっても耐久性に影響を与えないことが見出された。
すなわち、本発明の目的は、フェニル基が置換したmCP誘導体を使用した場合において、素子の性能に悪影響を与える不純物種を特定することで、優れた発光効率と耐久性を有する有機電界発光素子を提供することである。
また、本発明の別の目的は、優れた発光効率と耐久性を有する有機電界発光素子に有用な電荷輸送材料を提供することである。更に、本発明の別の目的は、本発明の有機電界発光素子を含む発光装置、表示装置及び照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討によると、フェニル基が置換した1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(mCP)誘導体からなる電荷輸送材料において、特定構造の不純物化合物が素子性能に大きく影響することを見出し、該不純物の含有量を低減することで、有機電界発光素子の発光効率と耐久性を高いレベルで両立できることを見出した。
すなわち、本発明は下記の手段により達成することができる。
【0008】
[1]以下の一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料において、以下の一般式(I−1)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−1)で表される不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下である、電荷輸送材料。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(Cz−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数のR〜複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
はアルキル基、アリール基、又はシリル基を表す。但し、Rがカルバゾリル基又はペルフルオロアルキル基を表すことはない。Rが複数存在する場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のRは、互いに結合してアリール環を形成してもよい。
n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
n5は0〜5の整数を表す。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(I−1)中、R〜Rは、前記一般式(Cz−1)においてR〜Rが表す原子又は基とそれぞれ同一である。
n1〜n4は、前記一般式(Cz−1)においてn1〜n4が表す整数とそれぞれ同一である。
【0013】
[2]254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−1)で表される化合物、前記一般式(I−1)で表される不純物、以下の一般式(II−1)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比が、100%である、上記[1]に記載の電荷輸送材料。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(II−1)中、Rは、前記一般式(Cz−1)においてRが表す基と同一である。
n5は、前記一般式(Cz−1)においてn5が表す整数と同一である。
【0016】
[3]前記一般式(Cz−1)で表される化合物が以下の一般式(Cz−2)で表され、かつ、前記一般式(I−1)で表される不純物が以下の一般式(I−2)で表される、上記[1]又は[2]に記載の電荷輸送材料。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(Cz−2)中、R〜R11はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、シアノ基、又はフッ素原子を表す。R及びRがそれぞれ複数存在する場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のR及び複数のRは、それぞれ互いに結合してアルキル基を有していてもよいアリール環を形成してもよい。
n6及びn7はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
【0019】
【化5】

【0020】
一般式(I−2)中、R〜R11は、前記一般式(Cz−2)においてR〜R11が表す原子又は基とそれぞれ同一である。
【0021】
[4]254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−2)で表される化合物、前記一般式(I−2)で表される不純物、以下の一般式(II−2)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比が、100%である、上記[3]に記載の電荷輸送材料。
【0022】
【化6】

【0023】
一般式(II−2)中、R及びRは、前記一般式(Cz−2)においてR及びRが表す基又は原子とそれぞれ同一である。
n6及びn7は、前記一般式(Cz−2)においてn6及びn7が表す整数と同一である。
【0024】
[5]前記一般式(Cz−2)及び前記一般式(II−2)において、R及びRがフェニル基を表し、n6及びn7がそれぞれ独立に0又は1を表し、かつ、前記一般式(Cz−2)及び前記一般式(I−2)において、R〜R11がそれぞれ独立に、水素原子、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリフェニルシリル基を表す、上記[3]又は[4]に記載の電荷輸送材料。
【0025】
[6]上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む組成物。
[7]上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む薄膜。
【0026】
[8]基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれかの層に、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む、有機電界発光素子。
[9]前記電荷輸送材料が、前記発光層に含まれる、上記[8]に記載の有機電界発光素子。
[10]前記一対の電極間にある有機層の少なくとも一層が、溶液塗布法により成膜された、上記[8]又は[9]に記載の有機電界発光素子。
【0027】
[11]上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
[12]上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
[13]上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、発光効率が高く、かつ耐久性に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において、置換基群A、置換基群B及び置換基Z’を以下のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0031】
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、シアノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Bから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。
【0032】
(置換基Z’)
置換基Z’は、アルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。置換基Z’は好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は炭素数5〜10の芳香族ヘテロ環基である。
【0033】
下記、一般式(Cz−1)、一般式(Cz−2)、一般式(C−1)〜(C−7)及び一般式(T−1)の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0034】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれかの層に、本発明の電荷輸送材料を含む。そして、本発明の電荷輸送材料は、一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料であって、一般式(I−1)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−1)で表される不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下である。
【0035】
〔電荷輸送材料〕
以下、本発明の一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料について説明する。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式(Cz−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数のR〜複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
はアルキル基、アリール基、又はシリル基を表す。但し、Rがカルバゾリル基又はペルフルオロアルキル基を表すことはない。Rが複数存在する場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のRは、互いに結合してアリール環を形成してもよい。
n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
n5は0〜5の整数を表す。
【0038】
〜Rで表されるアルキル基は、好ましくはフッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、より好ましくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、これらのうち無置換であることが好ましい。例えばメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられ、これらのうち、メチル基、トリフルオロメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、又はネオペンチル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。
【0039】
〜Rで表されるアリール基は、好ましくはアルキル基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基である。例えば、フェニル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、t−ブチルナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、クリセニル基等が挙げられ、これらのうちフェニル基、ジメチルフェニル基、又はターフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0040】
〜Rで表されるシリル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、前述の置換基Z’が挙げられ、置換基Z’としては、アルキル基、アリール基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましく、フェニル基が最も好ましい。
〜Rで表されるシリル基は、好ましくは炭素数0〜18のシリル基であり、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基である。炭素数3〜18のシリル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基若しくはアリール基で置換された炭素数3〜18のシリル基であり、シリル基の3つの水素原子の全てが、炭素数1〜6のアルキル基及びアリール基のいずれかで置換されていることがより好ましく、全てがフェニル基で置換されていることが更に好ましい。例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられ、これらのうち、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基が好ましく、トリフェニルシリル基がより好ましい。
【0041】
〜Rはそれぞれ独立に、電荷輸送能及び電荷に対する安定性の観点から、好ましくはフッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換された炭素数3〜18のシリル基、及びシアノ基のいずれかであり、更に好ましくは、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基で置換された炭素数3〜18のシリル基、及びシアノ基のいずれかである。
なかでも、R〜Rはそれぞれ独立に、好ましくはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フッ素原子、及びシアノ基のいずれかであり、より好ましくはt−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基、及びトリフェニルシリル基のいずれかであり、更に好ましくはt−ブチル基、フェニル基、及びトリフェニルシリル基のいずれかである。
【0042】
n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。カルバゾール骨格に置換基を導入する場合、カルバゾール骨格の3位及び6位が反応活性位であり、合成の容易さ、及び化学的安定性向上の観点から、この位置に置換基を導入することが好ましい。
【0043】
で表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。但し、Rで表されるアルキル基は、ペルフルオロアルキル基となることはない。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられ、これらのうち、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、又はネオペンチル基が好ましく、メチル基又はt−ブチル基がより好ましく、t−ブチル基が更に好ましい。
【0044】
で表される、アリール基は、好ましくは炭素数1〜6のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子又はシアノ基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。例えば、フェニル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、t−ブチルナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、クリセニル基、シアノフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、フッ化フェニル基等が挙げられ、これらのうちフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、又はt−ブチルナフチル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、又はターフェニル基がより好ましい。
【0045】
で表されるシリル基の具体例及び好ましい例は、前記R〜Rで表されるシリル基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0046】
が複数存在する場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のRは、互いに結合してアリール環を形成してもよい。
複数のRが互いに結合して形成するアリール環は、該複数のRが置換する炭素原子を含め、好ましくは炭素数6〜30のアリール環であり、より好ましくは炭素数6〜14のアリール環である。形成する環としてはベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環のいずれかであることが好ましく、ベンゼン環及びフェナントレン環のいずれかであることがより好まく、ベンゼン環であることが更に好ましい。なお、複数のRによって形成される環は複数存在してもよく、例えば、複数のRがそれぞれ互いに結合して2つのベンゼン環を形成し、該複数のRが置換するベンゼン環とともに、フェナントレン環を形成してもよい。
【0047】
は、電荷輸送能及び電荷に対する安定性の観点から、好ましくはアルキル基、アルキル基を有していてもよいアリール基、及びアルキル基若しくはフェニル基で置換されたシリル基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。
なかでも、Rは、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、無置換のフェニル基、シアノ基若しくはフッ素原子若しくはトリフルオロメチル基により置換されたフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、無置換のナフチル基、メチル基若しくはt−ブチル基により置換されたナフチル基、トリフェニルシリル基、複数のアルキル基又はアリール基がそれぞれ互いに結合して形成されたベンゼン環、ナフタレン環又はフェナントレン環であり、より好ましくは無置換のフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、又は複数のアルキル基がそれぞれ互いに結合して形成されたベンゼン環であり、更に好ましくは無置換のフェニル基、ビフェニル基又は複数のアルキル基がそれぞれ互いに結合して形成されたベンゼン環である。
【0048】
n5は、0〜4の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましく、0〜2の整数であることが更に好ましい。
【0049】
一般式(Cz−1)で表される化合物は、一般式(Cz−2)で表されることがより好ましい。
【0050】
【化8】

【0051】
一般式(Cz−2)中、R〜R11はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、シアノ基、又はフッ素原子を表す。R及びRがそれぞれ複数存在する場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のR及び複数のRは、それぞれ互いに結合してアルキル基を有していてもよいアリール環を形成してもよい。
n6及びn7はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
【0052】
〜R11で表される、アルキル基、アリール基及びシリル基の具体例及び好ましい例は、前記一般式(Cz−1)中の、R〜Rで表される、アルキル基、アリール基及びシリル基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0053】
〜R11はそれぞれ独立に、電荷輸送能及び電荷に対する安定性の観点から、好ましくは水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換された炭素数3〜18のシリル基、及びシアノ基のいずれかであり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基で置換された炭素数3〜18のシリル基、及びシアノ基のいずれかである。
なかでも、R〜R11はそれぞれ独立に、好ましくは水素原子、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フッ素原子、及びシアノ基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基、及びトリフェニルシリル基のいずれかであり、更に好ましくは水素原子、t−ブチル基、フェニル基、及びトリフェニルシリル基のいずれかである。
【0054】
及びRで表されるアルキル基の具体例及び好ましい例は、前記一般式(Cz−1)中の、R〜Rで表されるアルキル基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0055】
及びRで表されるアリール基は、アルキル基を有していてもよく、アルキル基を有する場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。該アルキル基の具体例及び好ましい例は、前記一般式(Cz−1)中の、R〜Rで表されるアルキル基の具体例及び好ましい例と同様である。
及びRで表されるアリール基が、アルキル基を有する場合のアリール基は、好ましくは炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基である。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、クリセニル基等が挙げられ、これらのうちフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、又はターフェニル基がより好ましい。
及びRで表されるアリール基は、無置換のアリール基であることが好ましい。
及びRで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ジメチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、t−ブチルナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、クリセニル基等が挙げられ、フェニル基、t−ブチルフェニル基、又はビフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0056】
及びRがそれぞれ複数存在する場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のR及び複数のRは、それぞれ互いに結合してアルキル基を有していてもよいアリール環を形成してもよい。
複数のR及び複数のRが、それぞれ互いに結合して形成するアルキル基を有していてもよいアリール環は、該複数のR及び該複数のRのそれぞれが置換する炭素原子を含め、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール環であり、より好ましく炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール環である。形成する環としては、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環のいずれかであることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいベンゼン環がより好ましく、例えば、ベンゼン環、t−ブチル基で置換されたベンゼン環等が挙げられる。なお、複数のR又は複数のRによって形成される環は複数存在してもよく、例えば、複数のR又は複数のRがそれぞれ互いに結合して2つのベンゼン環を形成し、該複数のR又は該複数のRが置換するベンゼン環とともに、フェナントレン環を形成してもよい。
【0057】
及びRはそれぞれ独立に、電荷輸送能及び電荷に対する安定性の観点から、好ましくはアルキル基、アルキル基を有していてもよいアリール基、シアノ基及びフッ素原子のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、シアノ基及びフッ素原子のいずれかであり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、シアノ基及びフッ素原子のいずれかである。電荷輸送能及び電荷に対する安定性の観点から、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又はアルキル基を有していてもよいアリール基を表すことも好ましい。
なかでも、R及びRはそれぞれ独立に、好ましくは、メチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、無置換のフェニル基、t−ブチル基により置換されたフェニル基、ビフェニル基、シアノ基、フッ素原子、及び複数のアルキル基がそれぞれ互いに結合して形成された無置換のベンゼン環又はt−ブチル基により置換されたベンゼン環のいずれかであり、より好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基、無置換のフェニル基、シアノ基、フッ素原子、及び複数のアルキル基がそれぞれ互いに結合して形成された無置換のベンゼン環又はt−ブチル基により置換されたベンゼン環のいずれかであり、最も好ましくは無置換のフェニル基である。
【0058】
n6及びn7はそれぞれ独立に、0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
【0059】
一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物は、駆動耐久性の観点からは炭素原子、水素原子、窒素原子のみからなる場合が好ましい。
【0060】
一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物の分子量は400以上1000以下であることが好ましく、450以上800以下であることがより好ましく、500以上700以下であることが更に好ましい。分子量が400以上であると良質なアモルファス薄膜形成に有利であり、分子量が1000以下であると溶解性や昇華性が向上し、化合物の純度向上に有利である。
【0061】
一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。
一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物の膜状態でのTエネルギーは、2.69eV(62kcal/mol)以上3.47eV(80kcal/mol)以下であることが好ましく、2.75eV(63.5kcal/mol)以上2.61eV(75kcal/mol)以下であることがより好ましく、2.82eV(65kcal/mol)以上3.04eV(70kcal/mol)以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0062】
エネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0063】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物のガラス転移温度(Tg)は80℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上400℃以下であることがより好ましく、120℃以上400℃以下であることが更に好ましい。
【0064】
以下に、一般式(Cz−1)又は一般式(Cz−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
上記一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物として例示した化合物は、国際公開第2004/074399号パンフレット等を参考に合成できる。例えば、上記例示化合物(1)は、以下に示される合成経路に従い、国際公開第2004/074399号の52項22行〜54項15行に記載の合成例2の方法で合成できる。
【0070】
【化13】

【0071】
本発明において、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物は、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に含有されてもよい。一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物の導入層としては、発光層、発光層と陰極との間の層、発光層と陽極との間の層のいずれか、若しくは複数に含有されるのが好ましく、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有されるのがより好ましい。
本発明では、高温駆動後の色度変化をより抑えるために、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を発光層又は発光層に隣接する層のいずれかに含有されることが好ましく、発光層に含有されることがより好ましい。また、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を発光層及び隣接する層の両層に含有させてもよい。
一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を発光層中含有させる場合、本発明の一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物は発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることがより好ましい。
一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を発光層以外の層に更に含有させる場合は、該層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0072】
次に、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を含む電荷輸送材料中の不純物について説明する。
【0073】
本発明では、一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料中の、一般式(I−1)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−1)で表される不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下とする。
また本発明の電荷輸送材料が、一般式(Cz−2)で表される化合物を含む場合には、一般式(I−2)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−2)で表される不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下とする。
前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物は、素子性能への影響が極めて大きいため、電荷輸送材料における含有量が少ないほど望ましく、前述の方法により算出された値が、0.05%以下であることが好ましく、0.01%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。
一方、0.10%以下の微量の不純物の量を更に減少させることは、技術的に難易度が高く、また材料の損失もあるため、製造コストの観点からは必要以上に高純度化することは好ましくない。また、性能面の観点でも0.10%以下であれば従来の素子に対して十分に優れた効果が既に得られ、かつ、0.10%以下の範囲においては性能面でそれ程大きな差が出ない。従って、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、前述の方法により算出した際の値が、0.000%より大きいことが好ましく、0.001%以上であることがより好ましく、0.005%以上であることが更に好ましく、0.010%以上であることが特に好ましい。
【0074】
なお、高速液体クロマトグラフィーにおける検出限界は、試料濃度が0.05質量%の条件で測定した際には、およそ0.001質量%程度であり、本発明においてある成分の含有量が0%であるとは、その成分が高速液体クロマトグラフィーで検出されないことを意味し、高速液体クロマトグラフィーの検出限界以下の微小量を含有し得るものとする。また、ある成分とある成分の吸収強度面積の合計の比が100%であるとは、それらの成分以外の成分を、高速液体クロマトグラフィーの検出限界以下の微小量含有し得るものとする。
【0075】
一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物は、上述の国際公開第2004/074399号に記載の合成経路における合成中間体(C)に対応する化合物である。すなわち、一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物は、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を合成する際に、合成中間体(C)として使用され、未反応の一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物が生成物中に残留することにより、不純物となる。
【0076】
【化14】

【0077】
一般式(I−1)中、R〜Rは、前記一般式(Cz−1)においてR〜Rが表す原子又は基とそれぞれ同一である。
n1〜n4は、前記一般式(Cz−1)においてn1〜n4が表す整数とそれぞれ同一である。
【0078】
【化15】

【0079】
一般式(I−2)中、R〜R11は、前記一般式(Cz−2)においてR〜R11が表す原子又は基とそれぞれ同一である。
【0080】
本発明者らの検討によれば、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物が、前記一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を含む電荷輸送材料中に、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物の吸収強度面積の比で、0.10%を超えて存在すると、素子性能、特に耐久性に悪影響を及ぼし、発光効率と耐久性を高レベルで両立させることが困難であることが判明した。その理由は明らかではないが、以下のように考えている。所望の電荷輸送材料と分子量が近く、構造が近い不純物は精製の際に分離されにくく、蒸着成膜の際にも昇華温度が近いため膜中に混入しやすい。また、所望の電荷輸送材料と類似構造の不純物はHOMO、LUMOの値が近く、構造上軌道の重なりも大きいため、電荷輸送の際には不純物にも電荷が乗り、電荷輸送のトラップとなる。このような類似構造の不純物がブロモ原子で置換されている場合、素子駆動中に生じるラジカルカチオン状態、ラジカルアニオン状態、励起状態等の反応活性な種と反応する、又は自身がラジカルカチオン状態、ラジカルアニオン状態、励起状態等のより反応活性な種となり分解する等のメカニズムにより、耐久性を大きく悪化させると考えられる。
【0081】
本発明の電荷輸送材料中の一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物やその他の不純物の含有量、及び本発明の電荷輸送材料の純度は、例えば、以下に記載の分析条件において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により求めることができる。
【0082】
(HPLCによる分析条件)
HPLC装置:島津製作所製HPLC(LC−10ADVPポンプ、CTO−10ACVPカラムオーブン、SIL−10ADVPオートサンプラー,RID−10A示差屈折検出器、CLASS−VP解析ソフト)
カラム:東ソーTSKgel ODS−100Z
移動層、流速:60%テトラヒドロフラン(THF)水溶液、1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度:0.05質量%
【0083】
本発明においては、254nmにおける吸収強度の面積比から算出された数値を、不純物の「含有量」及び電荷輸送材料の「純度」として用いる。以下の記載において、特に断りが無ければ、不純物の「含有量」及び電荷輸送材料の「純度」は、前述の方法により算出された数値を意味する。
【0084】
本発明の電荷輸送材料中に不純物として含まれ得る化合物としては、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物以外には、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物を合成する出発原料である1,3,5−トリブロモベンゼン、上述の国際公開第2004/074399号に記載の合成経路における合成中間体(D)に対応する化合物(以下一般式(II−1)又は(II−2)で表される化合物)等が挙げられる。すなわち、一般式(II−1)又は(II−2)で表される化合物は、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を合成する際に、合成中間体(D)として使用され、未反応の一般式(II−1)又は(II−2)で表される化合物が生成物中に残留することにより、不純物となる。
【0085】
【化16】

【0086】
一般式(II−1)中、Rは、前記一般式(Cz−1)においてRが表す基と同一である。
n5は、前記一般式(Cz−1)においてn5が表す整数と同一である。
【0087】
一般式(II−2)中、R及びRは、前記一般式(Cz−2)においてR及びRが表す基又は原子とそれぞれ同一である。
n6及びn7は、前記一般式(Cz−2)においてn6及びn7が表す整数と同一である。
【0088】
本発明者らの検討によれば、前記一般式(II−1)又は(II−2)で表される不純物及び1,3,5−トリブロモベンゼンは、前記一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を含む電荷輸送材料中に含まれていても、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物とは異なり、外部量子効率や耐久性等の素子性能への悪影響が無いことが判明した。特に、1,3,5−トリブロモベンゼンを含有していても、外部量子効率や耐久性等の素子性能への悪影響が無いことから、全てのブロモ化合物が素子性能に悪影響を及ぼすわけではなく、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される特定の不純物が、素子性能に特異的に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0089】
本発明の電荷輸送材料中に残留しうる、前記一般式(II−1)又は(II−2)で表される不純物の電荷輸送材料中の含有量は、通常0.000%以上1.0%以下であり、0.000%以上0.5%以下であることが好ましい。
本発明の電荷輸送材料中に残留しうる、1,3,5−トリブロモベンゼンの電荷輸送材料中の含有量は、通常0.000%以上1.0%以下であり、0.000%以上0.5%以下であることが好ましい。
【0090】
また、本発明の電荷輸送材料の純度は、99.0%以上100%以下であることが好ましく、99.5%以上100%以下であることがより好ましく、99.9%以上100%以下であることが更に好ましい。
【0091】
本発明の電荷輸送材料において、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物、前記一般式(II−1)又は(II−2)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼン以外の不純物は、前述の高速液体クロマトグラフィーによる分析において検出されないことが好ましい。
すなわち、前記一般式(Cz−1)で表される化合物を含有する本発明の電荷輸送材料において、前述の254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−1)で表される化合物、前記一般式(I−1)で表される不純物、前記一般式(II−1)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比は、100%であることが好ましい。
同様に、前記一般式(Cz−2)で表される化合物を含有する本発明の電荷輸送材料において、前述の254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−2)で表される化合物、前記一般式(I−2)で表される不純物、前記一般式(II−2)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比は、100%であることが好ましい。
【0092】
前述のように、前記一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物は、例えば、国際公開第2004/074399号の52頁22行〜54頁15行に記載の合成例2の方法で合成及び精製されるが、この方法による生成物中には、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物が0.10%より多い含有量で含まれるため、更なる精製が必要である。更なる精製としては、電荷輸送材料中の、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される不純物の含有量が0.10%以下となるように、従来公知の精製工程を適用することができ、特に限定されないが、カラムクロマトグラフィー、及び/又は再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。また、再結晶、昇華精製による精製を複数回行うことも好ましい。
【0093】
〔本発明の電荷輸送材料の用途〕
本発明の電荷輸送材料は、電子写真、有機トランジスタ、有機光電変換素子(エネルギー変換用途、センサー用途等)、有機電界発光素子等の有機エレクトロニクス素子に好ましく用いることができ、有機電界発光素子に用いるのが特に好ましい。
【0094】
有機電界発光素子において、本発明の電荷輸送材料は有機層のいずれの層に含有されてもよい。好ましくはホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層のいずれかに用いる場合であり、より好ましくは発光層、電子輸送層、電子注入層に用いる場合であり、更に好ましくは発光層、電子輸送層に用いる場合であり、更により好ましくは発光層に用いる場合である。
【0095】
〔本発明の電荷輸送材料を含有する組成物〕
本発明は前記電荷輸送材料を含む組成物にも関する。本発明の組成物において、一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物の含有量は、組成物中の全固形分に対して30〜99質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましい。本発明の組成物における他に含有しても良い成分としては、有機物でも無機物でもよく、有機物としては、後述するホスト材料、蛍光発光材料、燐光発光材料、炭化水素材料として挙げた材料が適用でき、好ましくはホスト材料、燐光発光材料、炭化水素材料である。
本発明の組成物は蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法等により有機電界発光素子の有機層を形成することができる。
【0096】
〔本発明の電荷輸送材料を含有する薄膜〕
本発明は一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を含む電荷輸送材料を含有する薄膜にも関する。本発明の薄膜は、本発明の組成物を用いて蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法等により形成することができる。薄膜の膜厚は用途によっていかなる厚みでもよいが、好ましくは0.1nm〜1mmであり、より好ましくは0.5nm〜1μmであり、更に好ましくは1nm〜200nmであり、特に好ましくは1nm〜100nmである。
【0097】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれかの層に、本発明の電荷輸送材料を含む。発光素子の性質上、一対の電極である陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
有機層としては、発光層以外に、正孔注入層、正孔輸送層、ブロック層(正孔ブロック層、励起子ブロック層など)、電子輸送層などが挙げられる。これらの有機層は、それぞれ複数層設けてもよく、複数層設ける場合には同一の材料で形成してもよいし、層毎に異なる材料で形成してもよい。
図1に、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示す。図1の有機電界発光素子10は、基板2上に、一対の電極(陽極3と陰極9)の間に発光層6を含む有機層を有する。有機層としては、陽極3側から正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0098】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記半透明電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記半透明電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0099】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0100】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0101】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0102】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布法のいずれによっても好適に形成することができる。有機層の少なくとも1層が溶液塗布法により形成されたことが好ましい。
【0103】
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0104】
<発光材料>
本発明では、発光材料として、蛍光発光材料や燐光発光材料を用いることができ、両者を併用してもよい。
これら蛍光発光材料や燐光発光材料については、例えば、特開2008−270736号公報の段落番号[0100]〜[0164]、特開2007−266458号公報の段落番号[0088]〜[0090]に詳述されており、これら公報の記載の事項を本発明に適用することができる。
【0105】
発光効率等の観点からは、燐光発光材料が好ましい。本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、Ir錯体、Pt錯体が特に好ましく、Ir錯体が最も好ましい。
【0106】
白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される白金錯体である。
【0107】
【化17】

【0108】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0109】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
【0110】
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
【0111】
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
【0112】
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
【0113】
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0114】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0115】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。ここで、R及びR’としては各々独立してアルキル基、アリール基等が挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基である。
は特に好ましくはジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基であり、最も好ましくはジメチルメチレン基である。
及びLとして最も好ましくは単結合である。
【0116】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0117】
【化18】

【0118】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。)
【0119】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0120】
21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A21、A22の内、少なくとも一方は炭素原子であることが好ましく、A21、A22が共に炭素原子であることが、錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点から好ましい。
【0121】
21、Z22は、それぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、更に好ましくはピリジン環、ピラゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。
【0122】
前記Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0123】
23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0124】
前記Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素原子、シアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0125】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0126】
【化19】

【0127】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0128】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。
Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
401〜A406として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A401〜A406がC−Rである場合に、A402、A405のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子である。A401、A403、A404、A406のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましく水素原子である。
41は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0129】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、N(窒素原子)の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408及びA412のいずれかが窒素原子であることが好ましく、A408とA412が共に窒素原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、ペルフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素原子である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素原子であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0130】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0131】
【化20】

【0132】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0133】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0134】
507、A508及びA509とA510、A511及びA512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A507、A508及びA509とA510、A511及びA512がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、フッ素原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A507、A508及びA509とA510、A511及びA512のうち少なくとも一つは窒素原子であることが好ましく、特にA510又はA507が窒素原子であることが好ましい。
【0135】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0136】
【化21】

【0137】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z61、Z62はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0138】
一般式(C−6)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0139】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0140】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0141】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。
炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0142】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0143】
一般式(C−6)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0144】
【化22】

【0145】
(式中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0146】
一般式(C−7)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−4)におけるA401〜A410と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるYと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0147】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の〔0143〕〜〔0152〕、〔0157〕〜〔0158〕、〔0162〕〜〔0168〕に記載の化合物、特開2006−256999号公報の〔0065〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−73891号公報の〔0063〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2007−324309号公報の〔0079〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−96255号公報の〔0055〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2006−313796号公報の〔0043〕〜〔0046〕が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。
【0148】
【化23】

【0149】
【化24】

【0150】
【化25】

【0151】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0152】
本発明の発光層における一般式(C−1)で表される化合物の含有量は発光層中1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0153】
イリジウム錯体として好ましくは、下記一般式(T−1)で表されるイリジウム錯体である。〔一般式(T−1)で表される化合物〕
一般式(T−1)で表される化合物について説明する。
【0154】
【化26】

【0155】
(一般式(T−1)中、R’、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO、−C(O)R、−N(R、−NO、−OR、フッ素原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
Qは窒素を1つ以上含む5員又は6員の芳香族複素環又は縮合芳香族複素環である。
、R、R及びRは隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
’とRは、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、フッ素原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又は−SOR’を表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。)
【0156】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。R’、R、R、R、Rで表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。R’、R、R、R、Rで表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
’、R、R、R、Rで表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
’、R、R、R、Rで表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0157】
’、R、R、R、Rで表されるペルフルオロアルキル基は、前述のアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられる。
’、R、R、R、Rで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0158】
’、R、R、R、Rで表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0159】
’、R、R、R及びRとして好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0160】
、R、R及びRは隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はR’、R、R、R、Rで定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0161】
環Qが表す芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、等が挙げられる。好ましくはピリジン環、ピラジン環であり、より好ましくはピリジン環である。
【0162】
環Qが表す縮合芳香族複素環としては、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。好ましくはキノリン環、イソキノリン環であり、より好ましくはキノリン環である。
【0163】
mは1〜3であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。すなわち、nは0又は1であることが好ましい。錯体中の配位子の種類は1又は2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0164】
一般式(T−1)で表される金属錯体は、一般式(T−1)における下記一般式(T−1−A)で表される配位子若しくはその互変異性体と、(X−Y)で表される配位子若しくはその互変異性体との組み合わせを含んで構成されるか、該金属錯体の配位子の全てが下記一般式(T−1−A)で表される配位子又はその互変異性体のみで構成されていてもよい。
【0165】
【化27】

【0166】
(一般式(T−1−A)中、R’、R、R、R、R及びQは、一般式(T−1)における、R’、R、R、R、R及びQと同義である。*はイリジウムへの配位位置を表す。)
【0167】
更に従来公知の金属錯体形成に用いられる、所謂配位子として当該業者が周知の配位子
(配位化合物ともいう)を必要に応じて(X−Y)で表される配位子として有していてもよい。
【0168】
従来公知の金属錯体に用いられる配位子としては、種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。(X−Y)で表される配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体であり、錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から以下に示されるアセチルアセトネート(acac)であることが最も好ましい。
【0169】
【化28】

【0170】
*はイリジウムへの配位位置を表す。
以下に、(X−Y)で表される配位子の例を具体的に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0171】
【化29】

【0172】
上記(X−Y)で表される配位子の例において、*は一般式(T−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。
錯体合成方法が容易であるため好ましくは(I−1)、(I−4)、又は(I−5)であり、最も好ましくは(I−1)である。
【0173】
本発明においては錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から、(X−Y)で表される配位子は前掲のアセチルアセトネート(acac)であることが最も好ましい。
【0174】
*はイリジウムへの配位位置を表す。
これらの配位子を有する錯体は、対応する配位子前駆体を用いることで公知の合成例と同様に合成できる。例えば国際公開2009−073245号の46ページに記載の方法と同様に、市販のジフルオロアセチルアセトンを用いて以下に示す方法で合成する事ができる。
【0175】
【化30】

【0176】
また、配位子として一般式(I−15)に示すモノアニオン性配位子を用いる事もできる。
【0177】
【化31】

【0178】
一般式(I−15)におけるR〜R10は、一般式(T−1)におけるR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。R’〜R10’は、R’と同義であり、好ましい範囲もR’と同様である。*は一般式(T−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。
【0179】
前記一般式(T−1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(T−2)で表される化合物である。
【0180】
【化32】

【0181】
(一般式(T−2)中、R’〜R’及びR〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO、−C(O)R、−N(R、−NO、−OR、フッ素原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
、R、R及びRは隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
’とRは、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよい。
はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、フッ素原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又は−SOR’を表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。)
一般式(T−2)におけるR’、R〜R、(X−Y)、m及びnの好ましい範囲は、一般式(T−1)におけるR’、R〜R、(X−Y)、m及びnの好ましい範囲と同様である。
’は水素原子、アルキル基、アリール基、フッ素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
’及びR’は水素原子を表すか、又は互いに結合して縮合4〜7員環式基を形成することが好ましく、該縮合4〜7員環式基は、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであることがより好ましく、アリールであることが更に好ましい。
’〜R’における置換基Zとしてはアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0182】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、一般式(T−2)においてR’、R’、R’、R’、R、R、R及びRのうち、隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合環を形成しない場合である。
【0183】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(T−3)で表される場合である。
【0184】
【化33】

【0185】
一般式(T−3)におけるR’〜R’、及びR〜Rは、一般式(T−2)におけるR’〜R’、及びR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。
〜R10は、R〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。R’〜R10’は、R’〜R’と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0186】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−4)で表される化合物である。
【0187】
【化34】

【0188】
一般式(T−4)におけるR’〜R’、R〜R、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるR’〜R’、R〜R、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。R’〜R’及びR〜Rのうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、R’〜R’及びR〜Rのうち、1つ又は2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0189】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−5)で表される化合物である。
【0190】
【化35】

【0191】
一般式(T−5)におけるR’〜R’、R〜R、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるR’〜R’、R〜R、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましいものも同様である。
【0192】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−6)で表される場合である。
【0193】
【化36】

【0194】
一般式(T−6)中、R1a〜R1iの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるR〜Rにおけるものと同様である。またR1a〜R1iのうち、0〜2つがアルキル基又はアリール基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましい。(X−Y)、m、及びnの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)における(X−Y)、m、及びnと同様である。
【0195】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0196】
【化37】

【0197】
【化38】

【0198】
上記一般式(T−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0199】
一般式(T−1)で表される化合物は、発光層に含有されるが、その用途が限定されることはなく、更に有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0200】
イリジウム錯体として、一般式(T−1)で表される化合物以外に、下記一般式(T−7)で表される化合物や、カルベンを配位子として有するものも好ましく用いることができる。
【0201】
【化39】

【0202】
一般式(T−7)中、R11〜R17は、一般式(T−2)におけるR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、(X−Y)、n及びmは一般式(T−2)における(X−Y)、n及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0203】
これらの好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0204】
【化40】

【0205】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0206】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0207】
本発明の素子における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。発光材料の種類は一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよく、それぞれの層に同じ発光材料やホスト材料を含んでもよいし、層毎に異なる材料を含んでもよい。発光層が複数の場合、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0208】
<ホスト材料>
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。ここで「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることを言う。
ホスト材料としては、本発明の一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を用いることができる。
【0209】
その他の本発明に用いることのできるホスト材料としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0210】
本発明において、併用することができるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を用いることができる。
本発明において、前記発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。前記ホスト材料は下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
本発明においては、発光層に一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物の少なくとも1つ以上を含むことがより好ましい。
【0211】
本発明において、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物が発光層に含有される場合、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は発光層中に30〜100質量%含まれることが好ましく、40〜100質量%含まれることが好ましく、50〜100質量%含まれることが特に好ましい。また、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0212】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0213】
【化41】

【0214】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜4の整数を表す。R’はそれぞれ独立に置換基を表し、d、e、fが2以上である場合R’は互いに異なっていても同じでも良い。また、R’の少なくとも1つは下記一般式(5)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0215】
【化42】

【0216】
(一般式(5)中、R’はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0217】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又は一般式(5)で表される置換基である。R’が一般式(5)を表さない場合、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
【0218】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、窒素原子に対し、対称になるように置換基を持つものが好ましい。
【0219】
一般式(4−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上であることが好ましい。また、他方のベンゼン環に対しR’がメタで置換することが好ましい。その理由として、オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。以下に示す構造中のR’及びgは、前記一般式
(5)におけるR’及びgと同義である。
【0220】
【化43】

【0221】
一般式(4−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上であることが好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からR’が互いにメタで置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。以下に示す構造中のR’及びgは、前記一般式(5)におけるR’及びgと同義である。
【0222】
【化44】

【0223】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるR’が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0224】
【化45】

【0225】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0226】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いることができる。
【0227】
本発明において、一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0228】
一般式(4−1)及び(4−2)は、以下に示す構造若しくはその水素原子が1つ以上重水素原子で置換された化合物であることが好ましい。以下に示す構造中のR’は、前記一般式(4−1)及び(4−2)におけるR’と同義であり、R’は、前記一般式(5)におけるR’と同義である。
【0229】
【化46】

【0230】
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0231】
【化47】

【0232】
【化48】

【0233】
【化49】

【0234】
【化50】

【0235】
【化51】

【0236】
【化52】

【0237】
本発明における発光層において、前記各ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、前記燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0238】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0239】
本発明の有機電界発光素子は前記電極が陽極を含み、前記発光層と該陽極の間に電荷輸送層を有し、該電荷輸送層がカルバゾール化合物を含むことが好ましい。
(電荷輸送層)
電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層である。塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。また、電荷輸送層として、より好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層又は電子ブロック層である。
【0240】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0241】
正孔注入層には電子受容性ドーパントを含有することが好ましい。正孔注入層に電子受容性ドーパントを含有することにより、正孔注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子受容性ドーパントとは、ドープされる材料から電子を引き抜き、ラジカルカチオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)、酸化モリブデンなどが挙げられる。
【0242】
正孔注入層中の電子受容性ドーパントは、正孔注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01質量%〜50質量%含有されることが好ましく、0.1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、0.5質量%〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0243】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子輸送材料としては、本発明の一般式(Cz−1)又は(Cz−2)で表される化合物を用いることができる。その他の材料としては、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0244】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0245】
電子注入層には電子供与性ドーパントを含有することが好ましい。電子注入層に電子供与性ドーパントを含有させることにより、電子注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子供与性ドーパントとは、ドープされる材料に電子を与え、ラジカルアニオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラチアナフタセン(TTT)、リチウム、セシウムなどが挙げられる。
【0246】
電子注入層中の電子供与性ドーパントは、電子注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01質量%〜50質量%含有されることが好ましく、0.1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、0.5質量%〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0247】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum (III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0248】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0249】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0250】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0251】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0252】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、7%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上が更に好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの300〜400cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0253】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0254】
(本発明の素子の用途)
本発明の素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0255】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。図2の発光装置20は、基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0256】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0257】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0258】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の照明装置について説明する。
図3は、本発明の照明装置の一例を概略的に示した断面図である。本発明の照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0259】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0260】
<実施例1>[合成例]
(実施例1−1)例示化合物(1)の合成
前述の国際公開第2004/074399の合成例2に記載の方法で合成・精製し、例示化合物(1)の粗結晶(以下、「粗1」と表記)を得た。この粗結晶を先の文献に記載の方法で昇華精製し、例示化合物(1)の精製結晶(以下、「昇1」と表記)を得た。
また、粗1をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/1(体積比))により精製することにより、粗結晶(以下、「粗2」と表記)を得た。粗2をトルエン/ヘキサン(1/1(体積比))で再結晶することにより、粗結晶(以下「粗3」と表記)を得た。粗3を更にトルエン/ヘキサン(1/1(体積比))で再結晶することにより、粗結晶(「粗4」と表記)を得た。粗2を昇華精製した精製結晶を「昇2」、粗3を昇華精製した精製結晶を「昇3」、粗4を昇華精製した精製結晶を「昇4」、昇4を更にもう1回昇華精製した精製結晶を「昇5」と表記した。また、比較のため、昇5で得られたサンプルに合成中間体である3,5−(ジフェニル)フェニルボロン酸の粉末を微量添加し、乳鉢ですり潰して組成が均一な粉末を得た(以下「比1」と表記)。同様に、昇5で得られたサンプルに出発原料である1,3,5−トリブロモベンゼンの粉末を微量添加し、乳鉢ですり潰して組成が均一な粉末を得た(以下「比2」と表記)。
【0261】
(実施例1−2)例示化合物(2)の合成
前述の国際公開第2004/074399の合成例2の合成中間体(D)を3,5−ビス(3’−ビフェニル)フェニルボロン酸に代える以外は同様の方法で例示化合物(2)を合成し、上記実施例1−1における例示化合物(1)と同様の精製操作を行い、同様の名前(「粗1」、「昇1」等)をつけた。
【0262】
(実施例1−3)例示化合物(9)の合成
前述の国際公開第2004/074399の合成例2のカルバゾールを3−t−ブチルカルバゾールに代える以外は同様の方法で例示化合物(9)を合成し、上記実施例1−1における例示化合物(1)と同様の精製操作を行い、同様の名前(「粗1」、「昇1」等)をつけた。
【0263】
(実施例1−4)例示化合物(11)の合成
前述の国際公開第2004/074399の合成例2のカルバゾールを3,6−ジフェニルカルバゾールに代える以外は同様の方法で例示化合物(11)を合成し、上記実施例1−1における例示化合物(1)と同様の精製操作を行い、同様の名前(「粗1」、「昇1」等)をつけた。
【0264】
(実施例1−5)例示化合物(13)の合成
前述の国際公開第2004/074399の合成例2のカルバゾールを3−トリフェニルシリルカルバゾールに代える以外は同様の方法で例示化合物(13)を合成し、上記実施例1−1における例示化合物(1)と同様の精製操作を行い、同様の名前(「粗1」、「昇1」等)をつけた。
【0265】
(実施例1−6)例示化合物(20)の合成
国際公開第2004/074399の合成例5に記載の方法で合成・精製し、例示化合物(20)の白色粉末(以下、「粗1」と表記)を得た。粗1をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/1(体積比))により精製することで、粗結晶(以下、「粗2」と表記)を得た。粗2をトルエン/ヘキサン(1/1(体積比))で再結晶することにより粗結晶(以下、「粗3」と表記)を得た。粗1を昇華精製することにより、精製結晶(以下、「昇1」と表記)を得た。粗2を昇華精製することにより、精製結晶(以下、「昇2」と表記)を得た。粗3を昇華精製することにより、精製結晶(以下、「昇3」と表記)を得た。昇3を昇華精製することにより、精製結晶(以下、「昇4」と表記)を得た。
【0266】
(実施例1−7)例示化合物(25)の合成
国際公開第2004/074399の合成例9に記載の方法で合成・精製し、例示化合物(25)の白色粉末(以下、「粗1」と表記)を得た。その後の精製法、ロット名は例示化合物(20)の場合と同様にして、精製方法の異なる複数の純度のサンプルを作製した。
【0267】
上記実施例1−1〜1−7で得られた生成物の純度及び不純物含有量を高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により分析し、254nmの吸収強度面積比を純度(%)、不純物含有量(%)とした。以下に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析の分析条件を記載する。
【0268】
(HPLCによる分析条件)
HPLC装置:島津製作所製HPLC(LC−10ADVPポンプ、CTO−10ACVPカラムオーブン、SIL−10ADVPオートサンプラー,RID−10A示差屈折検出器、CLASS−VP解析ソフト)
カラム:東ソーTSKgel ODS−100Z
移動層、流速:60%テトラヒドロフラン(THF)水溶液、1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度:0.05質量%
なおHPLCによる分析に供する試料の濃度が0.05質量%であることは、通常のHPLCによる分析における試料濃度よりも濃く、これにより0.001%までの不純物が有効に検出可能となった。
【0269】
<実施例2>
(実施例2−1)[素子の作製]
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:CuPc :膜厚10nm
第2層:NPD :膜厚30nm
第3層:化合物(1)及びGD−1(質量比95:5):膜厚40nm
第4層:BAlq:膜厚10nm
第5層:Alq :膜厚20nm
この上に、フッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の有機電界発光素子1−1を得た。同様に、第3層のホスト材料として化合物(1)の代わりに下記表1中に示す材料を用いることにより、素子1−2〜1−6、及び比較素子1−1〜1−5を得た。
【0270】
(有機電界発光素子の性能評価)
得られた各素子を以下の方法で効率及び耐久性の観点で評価した。結果を表1に示す。
(a)効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出し、「昇5」の材料を使用した素子の外部量子効率を10とした際の相対値で記載した。効率は数字が大きいほど優れており好ましい。
(b)耐久性
各素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が500cd/mになるまでに要した時間を耐久性の指標とし、「昇5」の材料を使用した素子の耐久性を10とした際の相対値で記載した。耐久性は数字が大きいほど優れており好ましい。なお、耐久性の評価における記号「<」は不等号を意味し、例えば「<1」は耐久性の相対値が1未満であったことを意味する。
【0271】
表1に、用いた化合物(1)の結晶、化合物(1)の純度(%)、各不純物量(%)、効率及び耐久性を示した。なお、表中に示した不純物(1−1)、(1−2)及び(1−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(1−1)、(1−2)及び
(1−3)の構造は、以下に示すものである。
【0272】
【表1】

【0273】
【化53】

【0274】
表1から分かるように、効率及び耐久性、特に耐久性は、必ずしも化合物(1)の純度の序列とは一致しておらず、一般式(I−1)で表される特定不純物と非常に大きな相関があることが分かる。また、同じブロモ化合物であっても、1,3,5−トリブロモベンゼンが含有された素子1−6は効率及び耐久性に影響がないことから、ブロモ化合物が全て素子性能に悪影響を及ぼすわけではなく、一般式(I−1)で表される不純物が特異的に悪影響を及ぼすことが分かる。
【0275】
(実施例2−2)
次に、実施例2−1において、発光材料のGD−1をGD−2に変更した以外は素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を表2に示す。
【0276】
【表2】

【0277】
(実施例2−3)
また、実施例2−1において、発光材料のGD−1をBD−1に変更した以外は素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を表3に示す。
【0278】
【表3】

【0279】
(実施例2−4)
また、実施例2−1において、発光材料のGD−1をRD−1に変更した以外は素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を表4に示す。
【0280】
【表4】

【0281】
以上より、組み合わせる発光材料の骨格や発光色が変わっても同様に一般式(I−1)で表される特定不純物のみが耐久性に大きな悪影響を与えることが分かる。
【0282】
<実施例3>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(2)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(2)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表5に示した。なお、表中に記載した不純物(2−1)、(2−2)及び(2−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(2−1)、(2−2)及び(2−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0283】
【表5】

【0284】
【化54】

【0285】
<実施例4>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(9)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(9)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表6に示した。なお、表中に記載した不純物(9−1)、(9−2)及び(9−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(9−1)、(9−2)及び(9−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0286】
【表6】

【0287】
【化55】

【0288】
<実施例5>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(11)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(11)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表7に示した。なお、表中に記載した不純物(11−1)、(11−2)及び(11−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(11−1)、(11−2)及び(11−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0289】
【表7】

【0290】
【化56】

【0291】
<実施例6>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(13)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(13)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表8に示した。なお、表中に記載した不純物(13−1)、(13−2)及び(13−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(13−1)、(13−2)及び(13−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0292】
【表8】

【0293】
【化57】

【0294】
<実施例7>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(20)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(20)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表9に示した。なお、表中に記載した不純物(20−1)、(20−2)及び(20−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(20−1)、(20−2)及び(20−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇4」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0295】
【表9】

【0296】
【化58】

【0297】
<実施例8>
ホスト材料として、実施例2−1における化合物(1)の代わりに化合物(25)を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を、化合物(25)の各精製方法による純度(%)、含有不純物量(%)とともに表10に示した。なお、表中に記載した不純物(25−1)、(25−2)及び(25−3)以外の不純物はHPLCでは検出されなかった。不純物(25−1)、(25−2)及び(25−3)の構造は、以下に示すものである。また、効率及び耐久性の結果は、「昇4」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0298】
【表10】

【0299】
【化59】

【0300】
表5〜10から分かるように、化合物(1)を各例示化合物に変更した場合においても、表1と同様の結果が得られたことが分かる。
【0301】
<実施例9>
(実施例9−1)
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品))をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、ホール輸送層(厚さ150nm)を形成させた。
次いで、化合物(1)を1質量%及びGD−1を0.05質量%含有するトルエン溶液を先のホール輸送層上にスピンコート(2000rpm、60秒間)し、発光層(厚さ50nm)を形成させた。
この発光層の上に、BAlqを真空蒸着法により50nm蒸着して電子輸送層とし、更にフッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
これを、大気に触れさせること無く、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機電界発光素子11−1及び11−2並びに比較素子11−1及び11−2を得た。得られた各素子に対して素子1−1と同様の効率及び耐久性の評価を行った結果を表11に示す。なお、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0302】
【表11】

【0303】
(実施例9−2)
次に、実施例9−1において、化合物(1)を用いる代わりに化合物(9)を用いた以外は素子11−1と同様の方法で素子を作製し、同様に評価した結果を表12に示す。なお、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0304】
【表12】

【0305】
(実施例9−3)
次に、実施例9−1において、化合物(1)を用いる代わりに化合物(11)を用いた以外は素子11−1と同様の方法で素子を作製し、同様に評価した結果を表13に示す。なお、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0306】
【表13】

【0307】
(実施例9−4)
次に、実施例9−1において、化合物(1)を用いる代わりに化合物(13)を用いた以外は素子11−1と同様の方法で素子を作製し、同様に評価した結果を表14に示す。なお、効率及び耐久性の結果は、「昇5」の材料を使用した素子の結果を10とした際の相対値で記載した。
【0308】
【表14】

【0309】
表11〜14から分かるように、発光層を溶液塗布法により形成した場合においても、本発明の素子は良好に作製可能である。
【0310】
発光装置、表示装置、照明装置の場合、各画素部で高い電流密度を通じて瞬間的に高輝度発光させる必要があり、本発明の発光素子はそのような場合に発光効率が高くなるように設計されているため、有利に利用することができる。
また、本発明の素子は車載用途などの高温環境で使用する際においても発光効率や耐久性にも優れ、発光装置、表示装置、照明装置に好適である。
【0311】
以下に実施例2−1〜9−4で用いた化合物の構造を示す。
【0312】
【化60】

【0313】
【化61】

【符号の説明】
【0314】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
31・・・透明基板
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(Cz−1)で表される化合物を含む電荷輸送材料において、以下の一般式(I−1)で表される不純物の前記電荷輸送材料における含有量を、254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(I−1)で表される不純物の吸収強度面積の比で算出した際に、0.000%以上0.10%以下である、電荷輸送材料。
【化1】

一般式(Cz−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数のR〜複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
はアルキル基、アリール基、又はシリル基を表す。但し、Rがカルバゾリル基又はペルフルオロアルキル基を表すことはない。Rが複数存在する場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のRは、互いに結合してアリール環を形成してもよい。
n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
n5は0〜5の整数を表す。
【化2】

一般式(I−1)中、R〜Rは、前記一般式(Cz−1)においてR〜Rが表す原子又は基とそれぞれ同一である。
n1〜n4は、前記一般式(Cz−1)においてn1〜n4が表す整数とそれぞれ同一である。
【請求項2】
254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−1)で表される化合物、前記一般式(I−1)で表される不純物、以下の一般式(II−1)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比が、100%である、請求項1に記載の電荷輸送材料。
【化3】

一般式(II−1)中、Rは、前記一般式(Cz−1)においてRが表す基と同一である。
n5は、前記一般式(Cz−1)においてn5が表す整数と同一である。
【請求項3】
前記一般式(Cz−1)で表される化合物が以下の一般式(Cz−2)で表され、かつ、前記一般式(I−1)で表される不純物が以下の一般式(I−2)で表される、請求項1又は2に記載の電荷輸送材料。
【化4】

一般式(Cz−2)中、R〜R11はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基を表す。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、シアノ基、又はフッ素原子を表す。R及びRがそれぞれ複数存在する場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また複数のR及び複数のRは、それぞれ互いに結合してアルキル基を有していてもよいアリール環を形成してもよい。
n6及びn7はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
【化5】

一般式(I−2)中、R〜R11は、前記一般式(Cz−2)においてR〜R11が表す原子又は基とそれぞれ同一である。
【請求項4】
254nmを測定波長とする高速液体クロマトグラフィーにより測定した、前記電荷輸送材料の全吸収強度面積に対する、前記一般式(Cz−2)で表される化合物、前記一般式(I−2)で表される不純物、以下の一般式(II−2)で表される不純物、及び1,3,5−トリブロモベンゼンの各吸収強度面積の合計の比が、100%である、請求項3に記載の電荷輸送材料。
【化6】

一般式(II−2)中、R及びRは、前記一般式(Cz−2)においてR及びRが表す基又は原子とそれぞれ同一である。
n6及びn7は、前記一般式(Cz−2)においてn6及びn7が表す整数と同一である。
【請求項5】
前記一般式(Cz−2)及び前記一般式(II−2)において、R及びRがフェニル基を表し、n6及びn7がそれぞれ独立に0又は1を表し、かつ、前記一般式(Cz−2)及び前記一般式(I−2)において、R〜R11がそれぞれ独立に、水素原子、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリフェニルシリル基を表す、請求項3又は4に記載の電荷輸送材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む薄膜。
【請求項8】
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれかの層に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電荷輸送材料を含む、有機電界発光素子。
【請求項9】
前記電荷輸送材料が、前記発光層に含まれる、請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記一対の電極間にある有機層の少なくとも一層が、溶液塗布法により成膜された、請求項8又は9に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項13】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1708(P2012−1708A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247908(P2010−247908)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】