説明

電解機能水生成装置における性能維持方法

【課題】電解機能水生成装置を、高性能の電解機能水を安定して生成することが可能な状態に維持することができる電解機能水生成装置における性能維持方法を提供する。
【解決手段】陰極64と陽極62間に設けられた陽イオン交換膜60が、陽極62に接触させて配置してあり、全量を陰極水として取水できる特殊構造の電解槽17を搭載した電解機能水生成装置において、電解室内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解しながら陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させて膜60を再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被電解原水を電気分解することで水に機能性を与えるように構成された電解機能水生成装置に係り、特に、電解機能水生成装置を、高性能の電解機能水を安定して生成することが可能な状態に維持することができる電解機能水生成装置における性能維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解機能水とは、電解質を含む水溶液に電流を流すことで起きる電気化学反応によって再現性のある有用な機能を獲得した水をいう。また、電解機能水生成装置とは、かかる電解機能水の生成を目的として設計された装置をいう。
【0003】
電解機能水生成装置の先行例として、本件出願人の提案による特許文献1には、被電解原水が導入される電解室と、電解室内と電解室外を区画する一つ以上の隔膜と、電解室内外のそれぞれに、隔膜を挟んで設けられた少なくとも一つ以上の電極板対と、を有し、電解室外の電極板が隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている電解槽と、電解槽に対して電解電圧を供給する電源回路と、を備える電解水生成装置が開示され、隔膜として陽イオン交換膜や陰イオン交換膜等の電解質膜を用いて、電源回路によって、電解室内に設けられた電極板を陰極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陽極として両電極間に電圧を印加することで被電解原水の電気分解を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、対向して配置された陰極及び陽極、陰極及び陽極の間で陽極に接触させて配設された電解質膜、並びに陰極が配設される陰極室を備える電解槽と、陰極室に直接連通して陰極室に原水を連続的に流入させる原水経路と、陰極室に直接連通して陰極表面にて生成された水素を溶存する電解水素溶解水を電解槽から流出させる電解水吐出流路とを具備して成る電解水素溶解水生成装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の、陰極と陽極間に設けられた隔膜が、陽極に接触させて配置してあり、全量を陰極水として取水できる特殊構造の電解槽を搭載した電解機能水生成装置にあっては、隔膜として電解質膜、特に陽イオン交換膜を採用し、被電解原水として、例えば水道水やミネラルウォーターなどの硬度成分(例えばカルシウムイオンやマグネシウムイオンなど)を含む水を採用した場合に、隔膜の特性に起因して装置の実用性が阻害されるといった根深い問題があった。
【0006】
これについて述べると、陽イオン交換膜は、硬度成分を含む水に触れさせておくと、陽イオン交換樹脂と同様に、水中の陽イオンを選択的に吸着する性質を有する。かかる性質を有する陽イオン交換膜を、特許文献1、2に記載されているような特殊構造電解槽の隔膜として採用した場合、陽イオン交換膜は、電解槽内に存在する被電解原水に常時触れているから、被電解原水中における硬度成分由来の陽イオンを吸着してしまい、これによって、高性能の電解機能水を安定して生成することができなくなるおそれがあるといった根深い課題があった。ここで、本発明では、電解機能水の性能をはかる指標として、そこに溶存している水素の濃度を採用している。この指標によれば、高性能の電解機能水とは、例えば、水の電解により生じた水素を飽和濃度を超える程度まで溶存した電解水素飽和溶存水(電解水素過飽和溶存水の概念を含む)のように、高濃度の電解水素を溶存している水をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3349710号公報
【特許文献2】特開2003−245669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解機能水生成装置を、高性能の電解機能水を安定して生成することが可能な状態に維持することができる電解機能水生成装置における性能維持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1発明に係わる電解機能水生成装置における性能維持方法は、被電解原水が導入される電解室と、前記電解室における内と外を区画する一つ以上の隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板と、を有し、前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触させて設けられている電解槽と、前記電解槽における電極間に直流電圧を印加する直流電源と、を備え、前記隔膜として、陽イオン交換膜を採用してなる電解機能水生成装置における性能維持方法であって、前記電解室内に被電解原水が導入されている状態で、前記電解室内に設けられた電極板を陰極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陽極とする正極性で前記直流電源からの直流電圧を両電極間に印加する膜再生工程を備え、前記正極性で被電解原水を電解しながら前記陽イオン交換膜に吸着しているカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの陽イオンを脱離させて当該膜を再生させることを特徴とする。
【0010】
第1発明で前提としている電解槽において、陽イオン交換膜に陽イオンが吸着している状態下で電解機能水を生成しようとすると、高性能の電解機能水を安定して生成することができないおそれがあるといった新規な課題を解決するためになされたものであり、電解室内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解しながら陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させて膜を再生させるようにしている。
【0011】
こうした電解による膜再生の原理について述べると、正極性で被電解原水を電解すると、電解室内に設けられた陰極の表面で、
4HO+4e→2H↑+4OH
の反応式で表される電気化学的反応が生じて水素と水酸化物イオンとが発生する。一方、陽イオン交換膜に接触させて設けられている陽極の表面、すなわち陽極と陽イオン交換膜との間においては、
2HO→ O↑+4H+4e
の反応式で表される電気化学的反応が生じて酸素と水素イオンとが発生する。
【0012】
こうして陽極の表面で発生してきた豊富な水素イオンによって、陽イオン交換膜に吸着していたカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの陽イオンが水素イオンと置換されて、陽イオン交換膜から離脱していく結果として、膜の再生が促進されることになる。
【0013】
第1発明によれば、電解室内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解すると、陽イオンを脱離させて陽イオン交換膜を再生させることができ、高性能の電解機能水を安定して生成することを妨げる要因を排除することができる結果として、電解機能水生成装置を、高性能の電解機能水を安定して生成することが可能な状態に維持することが可能になる。
【0014】
第1発明では、電解室内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解しながら陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させて膜を再生させるといった、電解による膜再生技術全般を包括する概念について規定した。しかしながら、正極性で被電解原水を電解しさえすれば、陽イオン交換膜を再生させることが果たしてできるのであろうか。この疑問点について、本件発明者らは鋭意研究を進めたところ、陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させるためには、単に正極性で直流電源からの直流電圧を両電極間に印加するのみでは足りず、所期の目的を達成するためには、ある条件を満足させる必要があることを見出し、下記発明を完成させた。
【0015】
すなわち、第2発明は、前記正極性で前記直流電源からの直流電圧を両電極間に印加するにあたり、前記陽極における電流密度を、前記陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度を超える値に設定することを特徴とする。
【0016】
第2発明によれば、電解による陽イオン交換膜再生のために必要な電解条件として、陽極における電流密度を陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度を超える値に設定するようにしたので、電解による陽イオン交換膜再生を確実に実現することができる。なお、臨界電流密度は、陽イオン交換膜における絶対的な陽イオン吸着量、並びに、吸着している陽イオンの種類及びその比率を含む膜自体の状態と、陽イオン交換膜が浸漬されている被電解原水の硬度、その水に溶けている陰陽両イオンの種類及びその比率、並びに、その水のpHを含む、陽イオン交換膜が置かれている周囲の環境状態と、の間で、密接な関係を有している。つまり、臨界電流密度は、例えば、陽イオン交換膜における絶対的な陽イオン吸着量や、陽イオン交換膜が浸漬されている被電解原水の硬度の高低などが変わると、この変化に追従して変化する。具体的には、臨界電流密度は、例えば図13乃至図16に示すように、陽イオン交換膜が浸漬されている被電解原水が軟水の場合には低い値に、膜浸漬水が硬水の場合には高い値になることが、実験的にもわかっている。
【0017】
第2発明では、電解による陽イオン交換膜再生を確実に実現するために必要な電解条件について規定した。電解による陽イオン交換膜再生のための指針が確立されたところで、ある時点において、陽イオン交換膜にどの程度の陽イオンが吸着しているのか?を把握しておくことは、陽イオンの膜への吸着程度と、そのとき得られた電解機能水の性能とに相関があることに鑑みると、電解機能水の性能保証を行う用途に使用できるなどの理由から、実用上きわめて重要である。
【0018】
そうした観点から、第3発明は、前記正極性で被電解原水を電解して得られた電解機能水におけるpHの経時変化に基づいて、前記陽イオン交換膜の再生レベルを把握することを特徴とする。
【0019】
第3発明では、正極性で被電解原水を電解して得られた電解機能水におけるpHの経時変化を観察したとき、pHの経時変化がみられなくなる(pHがほぼ一定でぶれなくなる)ときには、陽イオン交換膜の再生レベルが平衡状態(理想状態)に近づいているといった知見をもとに、正極性で被電解原水を電解して得られた電解機能水におけるpHの経時変化に基づいて、陽イオン交換膜の再生レベルを把握することとした。ここで、陽イオン交換膜の再生レベルとは、前述した、陽イオン交換膜自体の状態と、陽イオン交換膜が置かれている周囲の環境状態と、の相互関係が平衡状態に達した時点における、陽イオン交換膜の理想的な再生レベルを基準としたときの、相対的な再生レベルをいう。また、上述の相互関係が平衡状態に達した時点における、陽イオン交換膜の理想的な再生レベルとは、陽イオン交換膜の内部に所定量の陽イオンを蓄えながらも、所定量以上の陽イオンを吸着し続けることはなく、陽極で発生してくる水素イオンを透過させて、電解室内へ水素イオンを供給し続けることが可能な状態をいう。
【0020】
第3発明によれば、正極性で被電解原水を電解して得られた電解機能水におけるpHの経時変化に基づいて、陽イオン交換膜の再生レベルを把握するようにしたので、例えば、電解機能水生成装置にpHセンサを備えるなどして、正極性で被電解原水を電解している間におけるpHの経時変化さえ拾うことができれば、陽イオン交換膜の再生レベルを把握することができるとともに、そのとき得られた電解機能水の性能をも把握することができる。なお、把握した陽イオン交換膜の再生レベルに応じて、再生レベルが予め定められたレベルに到達したときに、膜の再生が完了したとみなして膜再生工程の継続を中止するように構成してもよい。このようにすれば、膜再生工程の継続時間を最適化することができる。
【0021】
第3発明では、陽イオン交換膜の相対的再生レベルを把握するために必要な技術事項について規定した。陽イオン交換膜の相対的再生レベルを把握するための方法が確立されたところで、水電解においては宿命的に生じる陰極へのスケール付着問題(陰極表面に水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどが固化蓄積することで、電解効率の悪化等を招来する問題;図11参照)や、装置内水流路の除菌・洗浄問題をいかにして解決するのかを明らかにしておくことが、本発明の実用的価値を高める上できわめて重要な要素となる。また、本発明で採用している陽イオン交換膜は、後述するように、含水状態においてその機能性をじゅうぶんに発揮する性質を有するところ、乾燥状態にさらされるとその機能性を失い、電解効率の極端な悪化を招来する。こうした事態に陥ったとき、いかにして装置の機能回復を図るのかを明らかにしておくことが、本発明の実用的価値を高める上できわめて重要な要素となる。
【0022】
そうした観点から、第4発明は、前記電解室内に被電解原水が導入されている状態で、前記電解室内に設けられた電極板を陽極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陰極とする逆極性で前記直流電源からの直流電圧を両電極間に印加する逆洗工程を備えることを特徴とする。
【0023】
第4発明によれば、逆洗工程を備えるようにしたので、陰極へのスケール付着問題、装置内水流路の除菌・洗浄問題を一挙に解決することができる。また、陽イオン交換膜が乾燥状態にさらされる事態に陥った場合には、逆洗工程を実行することで速やかなる装置の機能回復を実現することができ、実用上きわめて優れた効果を奏する。
【0024】
第4発明では、陰極へのスケール付着問題、装置内水流路の除菌・洗浄問題、並びに、陽イオン交換膜の乾燥に起因する装置の機能性喪失問題を一挙に解決するために、逆洗工程を備えることを規定した。しかしながら、逆洗工程を実行すると、電解室外に設けられた電極板の極性が陰極となり、電解室内の被電解原水中に存在する陽イオンを、陽イオン交換膜へ引きつけるように作用し、陽イオン交換膜が多量の陽イオンを吸着してしまう(図12参照)結果として、膜再生の要請が生じてくる。
【0025】
そうした観点から、第5発明は、前記逆洗工程を実行後に、前記膜再生工程を実行することを特徴とする。
【0026】
第5発明によれば、逆洗工程を実行することで陽イオン交換膜に多量の陽イオンが吸着しても、逆洗工程を実行後には膜再生工程を実行するようにしたので、逆洗工程を実行することによる弊害を除いて、所期の目的を達成することができる。
【0027】
ところで、膜再生工程を実行することで、陽イオン交換膜からそこに吸着している陽イオンをいったんほとんど脱離させることができたとしても、電解オフの状態で装置をそのまま放置しておくと、図7の電解室内における物質の動きに注目した簡略説明図に示すように、膜再生工程が完了した時点を境として、電解室内の残留水中に存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の陽イオンの膜への吸着が水素イオンの置換放出と同時に、次第に進行してゆく。これは、相互に種類の異なる複数の陽イオン成分を含む水溶液中に、例えば全フッ素系スルホン酸膜などの陽イオン交換膜を浸漬した場合、陽イオン成分は、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、水素イオンの序列で、優先的に膜へ吸着してゆくからであると考えられる。このとき、電解室内の残留水の性状に注目すると、その硬度は低下してゆくとともに、そのpHは酸性側に傾いてゆく。この陽イオンの膜への吸着進行速度は、電解室内の残留水が呈する硬度と、陽イオンの膜への吸着程度と、残留水が呈するpHなどをパラメータとする相互関係が平衡状態に近づくにつれて徐々に緩やかになっていき、平衡状態に到達した時点でその吸着進行を止めるものと考えられる。さて、そうすると、いざ電解機能水を生成しようとしたときには、膜再生工程が必要な程度まで陽イオンの膜への吸着が進行してしまっており、この場合、高性能の電解機能水を得ることが至上命題であるとすれば、必然的に膜再生工程の実行を待って電解機能水の生成工程を実行することになるため、高性能の電解機能水を即時に得ることができないといった事態が生じる。このような事態は、例えば、家庭に配備されるように設計された電解機能水生成装置では、特に頻発することが想定される。
【0028】
こうした課題を解決するために、第6発明は、前記膜再生工程を間欠的に実行することを特徴とする。
【0029】
第6発明によれば、膜再生工程を間欠的に実行するようにしたので、例えば、装置を3日間など比較的長期間使用しないような場合であっても、12時間おきに再生工程を5分間実行する、又は30分おきに再生工程を25秒間実行する等といった膜自動再生運転を実行することにより、電解機能水生成装置の性能を、常時高レベルに維持しておくことが可能になる。したがって、本発明に係る性能維持方法を、例えば、家庭用の電解機能水生成装置に適用した場合、必要なときに高性能の電解機能水を即時に得ることができるため、顧客満足度の高い装置を提供することが可能になる。
【0030】
また、第7発明は、前記正極性で被電解原水を電解しながら前記陽イオン交換膜を再生させるにあたり、前記電解室内に導入されている被電解原水として軟水を使用することを特徴とする。
【0031】
さらに、第8発明は、前記正極性で被電解原水を電解しながら前記陽イオン交換膜を再生させるにあたり、前記電解室内に導入されている被電解原水として純水を使用することを特徴とする。
【0032】
一方、第9発明は、前記正極性で被電解原水を電解しながら前記陽イオン交換膜を再生させるにあたり、前記電解室内に導入されている被電解原水の入れ替えを行うことを特徴とする。
【0033】
そして、第10発明は、前記電解室内に導入されている被電解原水の入れ替えは、被電解原水を循環させることによって行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
第1発明によれば、電解室内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解すると、陽イオンを脱離させて陽イオン交換膜を再生させることができ、高性能の電解機能水を安定して生成することを妨げる要因を排除することができる結果として、電解機能水生成装置を、高性能の電解機能水を安定して生成することが可能な状態に維持することが可能になる。
【0035】
第2発明によれば、電解による陽イオン交換膜再生のために必要な電解条件として、陽極における電流密度を陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度を超える値に設定するようにしたので、電解による陽イオン交換膜再生を確実に実現することができる。
【0036】
第3発明によれば、正極性で被電解原水を電解して得られた電解機能水におけるpHの経時変化に基づいて、陽イオン交換膜の再生レベルを把握するようにしたので、例えば、電解機能水生成装置にpHセンサを備えるなどして、正極性で被電解原水を電解している間におけるpHの経時変化さえ拾うことができれば、陽イオン交換膜の再生レベルを把握することができるとともに、そのとき得られた電解機能水の性能をも把握することができる。
【0037】
第4発明によれば、逆洗工程を備えるようにしたので、陰極へのスケール付着問題、装置内水流路の除菌・洗浄問題を一挙に解決することができる。また、陽イオン交換膜が乾燥状態にさらされる事態に陥った場合には、逆洗工程を実行することで速やかなる装置の機能回復を実現することができ、実用上きわめて優れた効果を奏する。
【0038】
第5発明によれば、逆洗工程を実行することで陽イオン交換膜に多量の陽イオンが吸着しても、逆洗工程を実行後には膜再生工程を実行するようにしたので、逆洗工程を実行することによる弊害を除いて、所期の目的を達成することができる。
【0039】
第6発明によれば、膜再生工程を間欠的に実行するようにしたので、例えば、装置を3日間など比較的長期間使用しないような場合であっても、12時間おきに再生工程を5分間実行する、又は30分おきに再生工程を25秒間実行する等といった膜自動再生運転を実行することにより、電解機能水生成装置の性能を、常時高レベルに維持しておくことが可能になる。したがって、本発明に係る性能維持方法を、例えば、家庭用の電解機能水生成装置に適用した場合、必要なときに高性能の電解機能水を即時に得ることができるため、顧客満足度の高い装置を提供することが可能になる。
【0040】
第7、第8発明によれば、正極性で被電解原水を電解しながら陽イオン交換膜を再生させるにあたり、電解室内に導入されている被電解原水として軟水、好ましくは純水を使用するようにしたので、膜再生効率を向上させることができる。
【0041】
第9発明によれば、正極性で被電解原水を電解しながら前記陽イオン交換膜を再生させるにあたり、前記電解室内に導入されている被電解原水の入れ替えを行うようにしたので、陽イオン交換膜から電解室内の水中に陽イオンが脱離してきたとしても、電解室内水の陽イオン濃度が高くなることを抑制できる結果として、膜再生効率を向上させることができる。
【0042】
第10発明によれば、電解室内に導入されている被電解原水の入れ替えを、被電解原水を循環させることによって行うようにしたので、再生用水の使用量を低く抑えながら膜の再生を行うことができる結果として、水資源の有効活用に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電解機能水生成装置の機構部分を示す概略構成図である。
【図2】電解機能水生成装置に搭載される電解槽の正面図である。
【図3】図2に示す電解槽のA−A断面図である。
【図4】電解機能水生成装置の電気系統を示すブロック図である。
【図5】生成工程における水の流れを示す図である。
【図6】再生工程並びに洗浄工程における水の流れを示す図である。
【図7】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図8】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図9】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図10】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図11】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図12】電解室内における物質の挙動に注目した簡略説明図である。
【図13】本発明に係る電解機能水生成装置の外観斜視図である。
【図14】本発明に係る電解機能水生成装置の操作パネルを示す図である。
【図15】本発明に係る電解機能水生成装置に搭載される制御装置のメインルーチンを示すフローチャート図である。
【図16】生成起動処理に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図17】再生起動処理に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図18】洗浄起動処理に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図19】運転処理(生成運転処理を含む)に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図20】再生運転処理に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図21】洗浄運転処理に係るサブルーチンを示すフローチャート図である。
【図22】生成工程のタイムチャート図である。
【図23】再生工程のタイムチャート図である。
【図24】洗浄工程のタイムチャート図である。
【図25】槽電圧の降下特性によって電解機能水の性能表示ができることを説明する図である。
【図26】試験水の硬度変化に応じて臨界電流密度が変わることを説明する図である。
【図27】試験水の硬度変化に応じて臨界電流密度が変わることを説明する図である。
【図28】試験水の硬度変化に応じて臨界電流密度が変わることを説明する図である。
【図29】適切な臨界電流密度の実証例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0045】
(システム構成)
まず、本発明を、家庭用の電解機能水生成装置に適用した場合における装置のシステム構成について、図1乃至図4、並びに図13及び図14の例を参照しつつ説明する。
【0046】
図1は電解機能水生成装置の機構部分を示す概略構成図、図2は電解機能水生成装置に搭載される電解槽の正面図、図3は図2に示す電解槽のA−A断面図、図4は電解機能水生成装置の電気系統を示すブロック図、図13は電解機能水生成装置の外観斜視図、図14は電解機能水生成装置の操作パネルを示す図である。
【0047】
電解機能水生成装置11は、図1及び図13に示すように、被電解原水がそこに貯められる貯水容器13と、貯水容器13又は後述するボトルB内に貯められている被電解原水を送り出すポンプ15と、ポンプ15より送出されてきた被電解原水を電気分解する電解槽17と、その底部に設けられた水受け皿19と、を備えている。なお、電解槽17は、装置11の前面に設けられた矩形状の窓部18を通して外部からその正面部分を正視できるように、装置11における正面部位に設けられている。この窓部18には、例えばアクリル樹脂製の透明板部材16が嵌め込まれている。また、貯水容器13の内側下部には、ボトルBの口部に装着されたアタッチメント20との間で着脱可能に連結されるボトル連結部21が設けられている。また、貯水容器13の側壁部上部には、貯水容器13内部に貯められた水が高水位にあることを検知するための、第1のピン電極23(高水位センサ)が設けられている。
【0048】
貯水容器13とポンプ15との間は、第1の水供給路25を介して接続されており、ボトルB内の被電解原水、又は貯水容器13に貯められている被電解原水が、第1の水供給路25を通じてポンプ15に供給されるように構成されている。第1の水供給路25の中ほどには、貯水容器13内部に貯められた水が低水位にあることを検知するとともに、第1の水供給路25内を流通する水の電気伝導率(EC)を検知するための、第2のピン電極27(低水位センサ及びECセンサ)が設けられている。また、第1の水供給路25の中ほどであって、第2のピン電極27と所定の間隔を離した位置に、貯水容器13内部に貯められた水の水位を検知するとともに、第1の水供給路25内を流通する水の電気伝導率(EC)を検知するための、第3のピン電極29(低水位センサ及びECセンサ)が設けられている。第1のピン電極23、第2のピン電極27、及び第3のピン電極29は、3つのピン電極がセットになって、貯水容器13内部に貯められた水の水位を検知するように動作する。具体的には、第3のピン電極29を共通の基準電極として、これに対する第1のピン電極23又は第2のピン電極27との通電の有無を検出することで、水の水位を検知するように動作する。また、第2のピン電極27、及び第3のピン電極29は、一対のピン電極がペアになって、第1の水供給路25内を流通する水の電気伝導率(EC)を検知するように動作する。具体的には、例えば、この対電極が被測定液中に浸漬している状態で、同対電極間に微弱な交流電圧を印加することで、溶液の電気抵抗を測定して電気伝導率(EC)を求めるように動作する。
【0049】
ポンプ15と電解槽17との間は、第2の水供給路31が、電解槽17における入水側に設けられた入水側液導管32を介して接続されており、ポンプ15より送出されてきた被電解原水が、電解槽17に供給されるように構成されている。第2の水供給路31の中ほどには、水の逆流を防ぐ逆止弁33が設けられている。なお、第2の水供給路31における逆止弁33より電解槽17側には、図示しない分岐路が形成されており、これにより、第2の水供給路31から電解槽17内への被電解原水の導入は、一対の入水側液導管32を介してなされるように構成されている。
【0050】
電解槽17には、電解槽17における出水側に設けられた出水側液導管34を介して、電解槽17から出水してきた水を流す出水路35が接続されており、出水路35の他方の端部には、出水口37が設けられている。出水路35の中ほどには、出水路35内を流通する水の行く先を選択的に二経路に分岐させる電磁三方弁39が設けられている。なお、出水路35における電磁三方弁39より電解槽17側には、図示しない分岐路が形成されており、これにより、電解槽17から出水路35への被電解原水の導出は、一対の出水側液導管34を介してなされるように構成されている。電磁三方弁39には、循環路41が接続されており、循環路41の他方の端部には、貯水容器13内へ向けて水を還流させ得るように、循環水出口43が設けられている。これにより、電解槽17から電磁三方弁39を介して貯水容器13へと水を還流させ得るように構成されている。
【0051】
次に、電解機能水生成装置11の主要部を構成する電解槽17の概略構成について説明する。図2乃至図3に示すように、電解槽17は、第1のケーシング51と第2のケーシング53とを、その周端部に図示しないシールリングを挟んで最中合わせにし、同周端部において図示しない複数のボルトとナットなどの結合手段によって締め付けて構成されている。電解槽17には、第1のケーシング51の下部に一対の入水側液導管32が設けられるとともに、第2のケーシング53の上部に一対の出水側液導管34が設けられている。そして、電解槽17における内部空間には、電解室55が形成されている。
【0052】
電解槽17を構成する第1のケーシング51、及び第2のケーシング53のそれぞれには、図2に示すように、正面からみてほぼ中央部分の全面にわたり、六角形状(その一部は台形状)の窓孔57が、相互に間隔をおいて複数空けられている。これらの窓孔57を通して、次述する電解室外側の電極板を、電解槽17の外側から臨むことができるように構成されている。第1のケーシング51、及び第2のケーシング53における内側壁部のそれぞれには、電解室55の内外を区画する一対の第1、第2陽イオン交換膜59、60が設けられている。これら第1、第2膜59、60に対する電解室外側のそれぞれには、一対の第1、第2電極板61、62が、第1、第2膜59、60の全面にわたり接触(密着)した状態で設けられている。第1、第2膜59、60に対する電解室内側のそれぞれには、第1、第2膜59、60に対して所定間隔を離して、一対の第3、第4電極板63、64が、その主面を第1、第2電極板61、62にそれぞれ対面させるようにして、電解室55内に設けられている。そして、第3、第4電極板63、64の間には、これら電極板63、64を支持するコアフレーム65が、電極板63、64の全面にわたり接触(密着)した状態で設けられている。なお、コアフレーム65は、図示していないが、第1のケーシング51と第2のケーシング53とを最中合わせにして結合する際に、その周端部が挟み込まれることで、電解槽17に対して剛体結合されるように構成されている。また、第1、第2電極板61、62、並びに、第1、第2陽イオン交換膜59、60のそれぞれには、一対の入水側液導管32、又は、一対の出水側液導管34との対応位置に合わせて、図示しない通孔が空けられており、これらの通孔を貫通させた状態で、電解槽17に対して、一対の入水側液導管32、及び一対の出水側液導管34が設けられている。これにより、一対の入水側液導管32を介して電解室55内へと被電解原水が導入されるとともに、一対の出水側液導管34を介して電解室55外へと被電解原水が導出されるように構成されている。
【0053】
第1乃至第4電極板61、62、63、64には、直流電源67が接続されている。これら電極板における電解電圧極性を、電解機能水生成装置11の動作モードごとに整理すると、電解機能水を生成するための生成工程、又は陽イオン交換膜59、60を再生するための膜再生工程では、主として、電解室55内に設けられた電極板63,64を陰極とする一方で電解室55外に設けられた電極板61、62を陽極とする正極性で直流電源67からの直流電圧を両電極間に印加するように構成されている。また、スケール除去を狙った逆洗工程、又は装置内接液部の除菌・洗浄を狙った洗浄工程では、主として、電解室55内に設けられた電極板63、64を陽極とする一方で電解室55外に設けられた電極板61、62を陰極とする逆極性で直流電源67からの直流電圧を両電極間に印加するように構成されている。
【0054】
本実施形態で用いられる第1乃至第4電極板61、62、63、64は、チタン板を素材としてその全面にわたり、白金、イリジウム、パラジウムなどの群から選ばれる1又は2以上の組み合わせに係る貴金属を焼成被覆するなどして構成されている。また、第1乃至第4電極板61、62、63、64には、図2に示すように、正面からみてほぼ中央部分の全面にわたり、六角形状(その一部は台形状)のパンチ小孔69が、相互に間隔をおいて複数空けられている。これにより、パンチ小孔69を通して、電解室55外に設けられた電極板61、62の表面で発生するガス(水素または酸素)を、膜59、60の背面側(電解室外、つまり大気中)へと逃がすように構成されている。なお、電極板の有効面積は1枚あたり1dmである。
【0055】
本実施形態で用いられる陽イオン交換膜59、60としては、イオン伝導性、物理強度、ガスバリア性、化学的安定性、電気化学的安定性、熱的安定性等の諸要因を考慮すると、電解質基としてスルホン酸基を備えた全フッ素系スルホン酸膜を好適に使用できる。このような膜としては、スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜であるナフィオン膜(登録商標、デュ・ポン社製)、フレミオン膜(登録商標、旭硝子社製)、アシプレックス膜(登録商標、旭化成社製)などが挙げられる。
【0056】
この種の全フッ素系スルホン酸膜では、パーフルオロアルキレン鎖の結晶性によりその形状が保たれているが、非架橋構造であるため、側鎖部にある電解質基は架橋された炭化水素系電解質膜と比較して自由度が大きい。そのためイオン化した状態では疎水性の強い主鎖部分と親水性の電解質基が共存し、電解質基はフルオロカーボンマトリックス中で会合してイオンクラスターを形成している。このイオンクラスターの構造としては、数nm程度の球状クラスターが1nm程度の間隔の狭いチャネルによってつながった構造を有している。
【0057】
全フッ素系スルホン酸膜では、この球状クラスターに溜め込まれた水の中をプロトンが移動していくことにより、プロトン伝導性を示すようになる。換言すれば、膜中の含水率が高くなるほど、プロトン伝導性が向上するようになる。逆に、膜中の含水率が低くなると、プロトン伝導性が悪化していく。特に、膜が乾燥状態におかれると、プロトン伝導性の悪化が進み、膜抵抗が大きくなり、ひいては電解処理ができなくなってしまう。このため、膜を乾燥させないように管理しておくことが重要である。
【0058】
さて、陽イオン交換膜59、60を挟むように対向して配置される一対の電極板61、63、または、一対の電極板62、64における板間距離は、0mm〜5.0mmの範囲で適宜選択され、より好ましくは1.2mm〜1.5mm程度である。ここで、板間距離が0mmとは、たとえば陽イオン交換膜59、60の両主面のそれぞれに電極膜を直接形成したゼロギャップ電極を用いた場合を想定したものであり、具体的には、陽イオン交換膜59、60の厚み分の距離を有する態様をいう。ゼロギャップ電極では、膜59、60の一方の主面のみに電極膜を形成しても良い。一方、電解室55内に設けられる電極板63、64の板間距離は、特に限定されないが、0.5mm〜5mmの範囲で適宜選択され、より好ましくは1mm〜1.4mm程度である。
【0059】
次に、本発明に係る性能維持方法を、家庭用の電解機能水生成装置に適用した場合の、電気系統の概略構成について、図4及び図14に基づき説明する。
【0060】
同図に示すように、家庭用の電解機能水生成装置11における制御装置71は、装置の制御機能を統括的に司るマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略す。)73と、高水位入力部(高水位センサ)23と、低水位入力部(低水位センサ)27と、EC入力部(ECセンサ)27、29と、電解オフ時において、電解オフ直前までに陰極、陽極であった両電極間における残留電圧を検知入力する槽電圧入力部75と、電解機能水の生成モードを選択的に操作入力するための生成スイッチ(以下、「スイッチ」を「SW」と略す。)77と、再生モードを選択的に操作入力するための再生SW79と、電極板の逆洗浄や水流路の除菌・洗浄モードを選択的に操作入力するための洗浄SW81と、ポンプ15と、スイッチング電源により構成される直流電源67等の発熱部位を冷却するためのファン85と、電磁三方弁39と、ユーザに対して音声による注意乃至警告を促すブザー87と、各種LEDの点滅駆動を行うLEDドライバ89と、貯水容器13内部に少なくとも低水位レベルを超えるまで水がある時に点灯することで生成スタンバイ状態を表示する一方、電解機能水の生成モード時に点滅することで生成中である旨を表示する生成LED91と、貯水容器13内部に高水位レベルを超えるまで水がある時に点灯することで再生スタンバイ状態を表示する一方、再生モード時に点滅することで再生運転中である旨を表示する再生LED93と、貯水容器13内部に高水位レベルを超えるまで水がある時に点灯することで洗浄スタンバイ状態を表示する一方、洗浄モード時に点滅することで洗浄運転中である旨を表示する洗浄LED95と、複数のLED(例えば5個)群より構成され、その点滅度合いを変えることで被電解原水の硬度を表示する原水硬度LED97と、例えば再生モードや洗浄モード時における運転終了までの残時間をカウントダウン式に7セグメント表示する一方、何らかの異常事態が生じたときにはこれを識別可能に表示する残時間LED99と、たったいま生成したばかりの電解機能水の性能の目安を表示する照明LED101と、マイコン73からの極性切替指令に従って駆動し、極性切替リレー信号を出力する極性切替リレー103と、マイコン73からの電解ON/OFF指令に従って駆動し、電解ON/OFFリレー信号を出力する電解ON/OFFリレー105と、極性切替リレー103から送出されてきた極性切替リレー信号を受けて電解槽17における電極板の電圧極性を反転させる極性反転スイッチ107と、電解ON/OFFリレー105から送出されてきた電解ON/OFFリレー信号を受けて電解ON/OFFを切替える電解ON/OFFスイッチ109と、電解オフ時において、電解オフ直前までに陰極、陽極であった両電極間における残留電圧を放電させるために、電解オフ時に両電極間を短絡させる放電用抵抗111と、を備えて構成されている。なお、生成SW77、再生SW79、洗浄SW81、生成LED91、再生LED93と、洗浄LED95、原水硬度LED97、及び残時間LED99は、図14に示すように、操作パネル76上に設けられている。原水硬度LED97は、例えば、全硬度が30ppmを下回るときには黄色LEDを点灯(被電解原水の硬度が低く適切ではない旨を警告)し、全硬度が30-300ppmの範囲にあるときには緑色LEDを点灯(被電解原水の硬度が適切である旨を報知)し、全硬度が300ppmを越えるときには赤色LEDを点灯(被電解原水の硬度が高く適切ではない旨を警告)するように構成することができ、特に、緑色LEDを3つ使用して、全硬度が30-60ppmの範囲にあるときには1つの緑色LEDを点灯(被電解原水が軟水である旨を報知)し、全硬度が60-120ppmの範囲にあるときには2つの緑色LEDを点灯(被電解原水が中硬水である旨を報知)し、全硬度が120-300ppmの範囲にあるときには3つの緑色LEDを点灯(被電解原水が硬水である旨を報知)するように構成して、被電解原水の硬度を段階的に表示することができる。また、照明LED101は、例えば6個の青色LED群より構成されて、これらは電解槽17の正面をその周囲から照明する位置にそれぞれ配置されている。しかも、照明LED101は、後に詳述するように、電解オフ時以降における槽電圧の降下傾向に基づいて点灯継続時間及び/又は明るさが可変制御される。これによって、電解槽17の状態、換言すれば、たったいま生成した電解機能水の性能の目安を、視覚を通じてユーザに提示し得るように構成されている。
【0061】
(システム動作−メインルーチン)
次に、このように構成された電解機能水生成装置11の動作について、図15に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0062】
本装置11に電源が供給されると、後述する各種のフラグやタイマなどの値が初期化され、本装置11の起動準備が整う(ステップ101、以下、「ステップ」を「S」と略す)。この初期化後に、マイコン73は、例えば生成SW77が操作入力されているかなどの各種SWの操作入力状態、貯水容器13内部における水位レベル、被電解原水の電気伝導度(EC)に関する情報などの入力処理を実行し(S102)、これら各種情報に基づいて、本装置11が運転中であるか否かの状態判定を行う(S103)。
【0063】
S103における運転状態判定の結果、本装置11が運転中ではないと判定されると、マイコン73は、生成SW77、再生SW79、又は洗浄SW81のうちいずれかのスイッチが操作入力されているか否かの状態判定を行う(S104、S105、S106)。
【0064】
S104、S105、S106におけるスイッチ操作入力状態判定の結果、上記いずれかのスイッチが操作入力されていると判定されると、マイコン73は、各種スイッチの操作入力状態に応じて、生成SW77の操作入力受付時には生成起動処理(サブルーチン1、以下、「サブルーチン」を「Sub」と略す)を、再生SW79の操作入力受付時には再生起動処理(Sub2)を、洗浄SW81の操作入力受付時には洗浄起動処理(Sub3)をそれぞれ実行し、各サブルーチンプログラムの実行後に、各モードに応じた運転処理(Sub4)を実行する。
【0065】
S104、S105、S106におけるスイッチ操作入力状態判定の結果、上記いずれのスイッチも操作入力されていないと判定されると、マイコン73は、S102で入力した各種SWの操作入力状態、貯水容器13内部における水位レベル、被電解原水の電気伝導度(EC)に関する情報などに基づいて、各種LEDの点滅に係る表示処理を実行し(S107)、この表示処理を実行後に、処理の流れをS102に戻し、以下、S102乃至S107のメインルーチンを繰り返し実行する。
【0066】
一方、S103における運転状態判定の結果、本装置11が運転中であると判定されると、マイコン73は、引き続き該当する運転処理(Sub4)を継続して実行し、このサブルーチンプログラムを実行後に、処理の流れをメインルーチンの表示処理(S107)に進行させて、以下、S102乃至S107のメインルーチンを繰り返し実行する。
【0067】
(システム動作−サブルーチン1−生成起動処理)
次に、サブルーチン1の生成起動処理について、図16に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0068】
生成起動処理が開始されると、まず、マイコン73は、貯水容器13内部における水位が低水位レベルを超えているか否かの低水位レベル判定を行う(S111)。低水位レベル判定の趣旨は、少なくとも低水位レベルを超える量の被電解原水が存在しなければ、所期の目的である電解機能水の生成を行うことができないことに鑑みて、この必要条件を満たしているか否かを確かめるためである。
【0069】
S111における低水位レベル判定の結果、水位が低水位レベルを超えていると判定されると、マイコン73は、本装置11の運転モードが生成モードにあることを表す生成モードフラグをセットし(S112)、ブザー87を、鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが生成モードに移行できた旨をユーザに報知し(S113)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0070】
一方、S111における低水位レベル判定の結果、水位が低水位レベルを超えていないと判定されると、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが生成モードに移行できなかった旨をユーザに報知し(S113)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0071】
(システム動作−サブルーチン2−再生起動処理)
次に、サブルーチン2の再生起動処理について、図17に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0072】
再生起動処理が開始されると、まず、マイコン73は、貯水容器13内部における水位が高水位レベルを超えているか否かの高水位レベル判定を行う(S121)。高水位レベル判定の趣旨は、少なくとも高水位レベルを超える量の被電解原水が存在しなければ、所期の目的である、陽イオン交換膜並びに正極性電解時における陰極板の再生を完遂できないことに鑑みて、この必要条件を満たしているか否かを確かめるためである。
【0073】
S121における高水位レベル判定の結果、水位が高水位レベルを超えていると判定されると、マイコン73は、本装置11の運転モードが再生モードにあることを表す再生モードフラグをセットし(S122)、例えばカウントダウンタイマにより構成される再生タイマT1に、陽イオン交換膜の再生所要時間(本実施例では例えば5分間)をセットし(S123)、ブザー87を、鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが再生モードに移行できた旨をユーザに報知し(S124)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0074】
一方、S121における高水位レベル判定の結果、水位が高水位レベルを超えていないと判定されると、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが生成モードに移行できなかった旨をユーザに報知し(S125)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0075】
(システム動作−サブルーチン3−洗浄起動処理)
次に、サブルーチン3の洗浄起動処理について、図18に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0076】
洗浄起動処理が開始されると、まず、マイコン73は、貯水容器13内部における水位が高水位レベルを超えているか否かの高水位レベル判定を行う(S131)。高水位レベル判定の趣旨は、少なくとも高水位レベルを超える量の被電解原水が存在しなければ、所期の目的である本装置11内における接液部の除菌・洗浄を完遂できないことに鑑みて、この必要条件を満たしているか否かを確かめるためである。
【0077】
S131における高水位レベル判定の結果、水位が高水位レベルを超えていると判定されると、マイコン73は、本装置11の運転モードが洗浄モードにあることを表す洗浄モードフラグをセットし(S132)、例えばカウントダウンタイマにより構成される洗浄タイマT2に、本装置11内における接液部分の除菌・洗浄を行うための所要時間(本実施例では例えば10分間)をセットし(S133)、ブザー87を、鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが洗浄モードに移行できた旨をユーザに報知し(S134)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0078】
一方、S131における高水位レベル判定の結果、水位が高水位レベルを超えていないと判定されると、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動させ、これによって運転モードが洗浄モードに移行できなかった旨をユーザに報知し(S135)、処理の流れをサブルーチン4の運転処理へジャンプさせる。
【0079】
(システム動作−サブルーチン4−運転処理−生成運転処理)
次に、サブルーチン4の運転処理について、図19に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0080】
運転処理が開始されると、まず、マイコン73は、各種モードフラグ(生成・再生・洗浄)のセット状態を参照して、生成運転中であるか、再生運転中であるか、又は洗浄運転中であるかに係る運転モード判定を行う(S141、S142、S143)。
【0081】
S141、S142、S143における運転モード判定の結果、上記いずれかの運転モードにあると判定されると、マイコン73は、生成運転中であると判定された時にはS144以降の生成運転処理を、再生運転中であると判定された時には再生運転処理(Sub5)を、洗浄運転中であると判定された時には洗浄運転処理(Sub6)をそれぞれ実行し、各サブルーチンプログラムの実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0082】
一方、S141、S142、S143における運転モード判定の結果、上記いずれの運転モードにも該当しないと判定されると、マイコン73は、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0083】
さて、S141における運転モード判定の結果、生成運転中である旨の判定が下されると、マイコン73は、生成SW77が操作入力されているか否かの状態判定を行う(S144)。
【0084】
S144におけるスイッチ操作入力状態判定の結果、マイコン73は、生成SW77が操作入力されていると判定されると、貯水容器13内部における水位が低水位レベルを超えているか否かの低水位レベル判定を行う(S145)一方、生成SW77が操作入力されていないと判定されると、後述の生成運転停止処理(S148)を実行する。
【0085】
S145における低水位レベル判定の結果、水位が低水位レベルを超えていると判定されると、マイコン73は、本装置11の運転モードとして生成モードでの運転を継続させる処理を実行し(S145)、この生成運転継続処理を実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0086】
一方、S145における低水位レベル判定の結果、水位が低水位レベルを超えていないと判定されると、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって注意喚起状態(被電解原水の量が不足)にある旨をユーザに報知し(S147)、この報知後に、生成運転停止処理を実行し(S148)、生成運転停止後に、性能表示処理を実行し(S149)、この性能表示処理の実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0087】
ここで、S149における性能表示処理とは、電解槽17の正面をその周囲から照明する照明LED101を、電解オフ時における槽電圧の降下傾向に基づいてその点灯継続時間及び/又は明るさを可変制御することによって、電解槽17の状態、換言すれば、たったいま生成した電解機能水の性能の目安を、視覚を通じてユーザに提示するための処理である。この性能表示技術の背景について述べると、本発明者らは、電解オフ時以降における槽電圧の降下傾向と、電解槽17の状態、すなわち、たったいま生成した電解機能水の性能との間に、ある関係が成立することを見出し、この現象を活用することで、たったいま生成した電解機能水の性能の目安を表示できるのではないか?との発想を得るに至った。ここで、ある関係とは、その一例を図25に示すように、電解機能水が正常状態にある(水素濃度が高い)ときには電解オフ時以降における槽電圧の降下が緩やかである(電解オフ直後の槽電圧である1.65Vが1Vに降下するまでの時間が30秒間)一方、電解機能水が性能低下状態にある(水素濃度が低い)ときには電解オフ時以降における槽電圧の降下が前者よりも急である(電解オフ直後の槽電圧である1.65Vが1Vに降下するまでの時間が5秒間)といった関係をいう。なお、図25に示した例では、放電用抵抗111として100オームの負荷を採用している。また、電解機能水の性能評価(水素濃度の定量)を簡易に行うには、上述の性能表示機能に加えて、本件出願人が先に出願し既に公開されている技術のうち、例えば国際公開番号:WO2003/002466に開示されている、酸化還元色素(例えばメチレンブルー)酸化還元滴定による溶存水素濃度定量分析方法を採用すればよい。
【0088】
(システム動作−サブルーチン5−再生運転処理)
次に、サブルーチン5の再生運転処理について、図20に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0089】
再生運転処理が開始されると、まず、マイコン73は、再生SW79が操作入力されているか否かの状態判定を行う(S151)。
【0090】
S151におけるスイッチ操作入力状態判定の結果、マイコン73は、再生SW79が操作入力されていないと判定されると、貯水容器13内部における水位が高水位レベルを超えているか否かの高水位レベル判定を行う(S152)一方、再生SW79が操作入力されていると判定(再生運転中に再生SW79が操作入力された状態;このような操作入力は、ユーザが再生運転を手動停止させたいときに起こる)されると、ブザー鳴動:PT1処理(S155)を実行する。すなわち、S155において、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって再生運転の手動停止を受付けた旨をユーザに報知し(S155)、この報知後に、再生運転停止処理を実行し(S157)、この再生運転停止処理の実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0091】
S152における高水位レベル判定の結果、マイコン73は、水位が高水位レベルを超えていないと判定されると、水漏れなどの予期せぬ事態が生じたものとみなして、前述の再生運転停止処理(S157)を実行する一方、水位が高水位レベルを超えていると判定されると、再生タイマT1に設定されていた陽イオン交換膜の再生を完遂するための所要時間(本実施例では例えば5分間)がタイムアップしたか否かに係る再生所要時間経過判定を行う(S153)。
【0092】
S153における再生所要時間経過判定の結果、マイコン73は、再生所要時間が経過したと判定されると、ブザー鳴動:PT3処理(S156)を実行する一方、再生所要時間が経過していないと判定されると、本装置11の運転モードとして再生モードでの運転を継続させる処理を実行し(S154)、この再生運転継続処理を実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。なお、S156において、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって注意喚起状態(再生モードの自動終了)にある旨をユーザに報知し(S156)、この報知後に、前述の再生運転停止処理を実行する(S157)。
【0093】
(システム動作−サブルーチン6−洗浄運転処理)
次に、サブルーチン6の洗浄運転処理について、図21に示す動作フローチャートに沿って説明する。
【0094】
洗浄運転処理が開始されると、まず、マイコン73は、洗浄SW81が操作入力されているか否かの状態判定を行う(S161)。
【0095】
S161におけるスイッチ操作入力状態判定の結果、マイコン73は、洗浄SW81が操作入力されていないと判定されると、貯水容器13内部における水位が高水位レベルを超えているか否かの高水位レベル判定を行う(S162)一方、洗浄SW81が操作入力されていると判定(洗浄運転中に洗浄SW81が操作入力された状態;このような操作入力は、ユーザが洗浄運転を手動停止させたいときに起こる)されると、ブザー鳴動:PT1処理(S165)を実行する。すなわち、S165において、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって洗浄運転の手動停止を受付けた旨をユーザに報知し(S165)、この報知後に、洗浄運転停止処理を実行し(S167)、この洗浄運転停止処理の実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。
【0096】
S162における高水位レベル判定の結果、マイコン73は、水位が高水位レベルを超えていないと判定されると、水漏れなどの予期せぬ事態が生じたものとみなして、前述の洗浄運転停止処理(S167)を実行する一方、水位が高水位レベルを超えていると判定されると、洗浄タイマT2に設定されていた、本装置11内における接液部分の除菌・洗浄を完遂するための所要時間(本実施例では例えば10分間)がタイムアップしたか否かに係る洗浄所要時間経過判定を行う(S163)。
【0097】
S163における洗浄所要時間経過判定の結果、マイコン73は、洗浄所要時間が経過したと判定されると、ブザー鳴動:PT3処理(S166)を実行する一方、洗浄所要時間が経過していないと判定されると、本装置11の運転モードとして洗浄モードでの運転を継続させる処理を実行し(S164)、この洗浄運転継続処理を実行後に、処理の流れを図15メインルーチンの表示処理(S107)に戻す。なお、S166において、マイコン73は、ブザー87を、鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動させ、これによって注意喚起状態(洗浄モードの自動終了)にある旨をユーザに報知し(S166)、この報知後に、前述の再生運転停止処理を実行する(S167)。
【0098】
このように構成された電解機能水生成装置11における使用の態様、並びに動作について、電解機能水の生成工程、陽イオン交換膜59、60の再生工程、電極板(陰極板)の洗浄工程にわけて、図面を参照してそれぞれ説明する。図22には生成工程におけるタイムチャートが、図23には再生工程におけるタイムチャートが、図24には洗浄工程におけるタイムチャートが、それぞれ示してある。
【0099】
(生成工程)
電解機能水生成装置11を用いて電解機能水を生成するには、図5に生成工程における水の流れを示すように、まず、例えば市販のミネラルウォーターなどのペットボトル水のキャップを開封した後、その口部にアタッチメント20を装着する。その後、ボトルBを逆さにし、アタッチメント20を、貯水容器13の下側に位置するボトル連結部21に向けて挿し込むと、アタッチメント20とボトル連結部21とが連結されて、生成工程を実行するための準備が整う。このとき、ユーザが生成SW77を操作入力すると、生成モードでの運転がはじまり、ポンプ15が駆動することでボトルB内の被電解原水が電解槽17へと送り込まれて、電解槽17において被電解原水の電解処理が行われる。
【0100】
こうした生成工程において、各種スイッチ類、各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類がどのように関連して動作するのかについて、図22を参照して詳細に説明する。
【0101】
まず、水位が低水位レベルを超えていない場合(このとき生成LED91は非点灯)において、ユーザが生成SW77を操作入力しても、生成運転ははじまらない。このとき、ブザー87が鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが生成モードに移行できなかった旨をユーザに警告報知する。
【0102】
一方、水位が低水位レベルを超えている場合(このとき生成LED91は点灯)において、ユーザが生成SW77を操作入力すると、生成運転がはじまる。このとき、ブザー87が鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが生成モードに移行できた旨をユーザに報知する。生成運転は、水位が低水位レベルを超えていることを条件に、ユーザが生成SW77を押し続けているあいだだけ継続する。ユーザが生成SW77を押し続けている状態で、水位が低水位レベルを下回るに至ったときには、ブザー87が鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって注意喚起状態(被電解原水の量が不足)にある旨をユーザに報知するとともに、生成運転を停止する。
【0103】
ここで、生成運転中における各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類の動作をそれぞれ述べる。生成LED91は、点滅することで生成モードで運転中である旨をユーザに報知する。ファン85は送風動作を、生成運転中及び生成運転終了後30秒が経過するまで継続する。電磁三方弁39は出水側に切替えられる。ポンプ15は、駆動することで被電解原水の送出を行う。電解ON/OFFリレー105は、正極性電解側に付勢される。照明LED101は、生成運転中では規定電力が印加された状態(通常モード)で点灯状態を継続する一方、生成運転終了後では、電解オフ時以降における槽電圧の降下傾向に基づいて点灯継続時間及び明るさが可変制御された状態(性能表示モード)で点灯する。そして、原水硬度LED97は、その点滅度合いを変えることで、EC入力部(ECセンサ)27、29により検出された被電解原水のEC値に基づいてマイコン73が算出した硬度を表示する。
【0104】
次に、電解機能水の性状・用途について、生成工程における電極反応に着目して説明する。電解室55内に被電解原水が導入されている状態で、正極性で被電解原水を電解すると、電解室55内に設けられた陰極63、64の表面で、
4HO+4e→2H↑+4OH
の反応式で表される電気化学的反応が生じて水素と水酸化物イオンとが発生し、発生した水素が水中に溶存していく結果、電解水素溶存水が生成される。一方、陽イオン交換膜59、60に接触させて設けられている陽極61、62の表面、すなわち陽極61、62と陽イオン交換膜59、60との間においては、
2HO→ O↑+4H+4e
の反応式で表される電気化学的反応が生じて酸素と水素イオンとが発生する。
【0105】
こうして生じた豊富な水素イオンは、膜の再生レベルが理想状態にあるときには、その全量が陽イオン交換膜59、60を透過して、陰極63、64の表面で生じた水酸化物イオンとのあいだで、ちょうど当量反応して水分子に戻るため、電解室55において生成される電解機能水のpHは、原水のpHがほとんどそのまま維持されることになる。つまり、原水のpHをほとんど維持したままで、電解により生じた微小気泡状態の水素を豊富に溶存した電解水素飽和溶存水(電解機能水)が得られることになる。このようにして生成された電解機能水は、出水口37から取り出されて、例えば飲用の用途に供される。
【0106】
(再生工程)
電解槽17の電解性能、又は電解機能水の性能が劣化してくると、正極性電解時に陰極として使用される第3、第4電極板63、64のスケール除去、並びに、陽イオン交換膜59、60の再生を目的として、再生工程を実行する。なお、本発明において、陽イオン交換膜59、60の再生を目的として行う工程を特に膜再生工程(請求項に記載の膜再生工程と同義)と呼び、電極板並びに陽イオン交換膜の再生を兼ねる上記の再生工程とは区別して取り扱うものとする。
【0107】
再生工程を実行するには、図6に示すように、まず、例えば水道水、好ましくは軟水、さらに好ましくは純水を、貯水容器13に高水位レベルを超えるまで注ぎいれると、再生工程を実行するための準備が整う。このとき、ユーザが再生SW79を操作入力すると、再生モードでの運転がはじまり、ポンプ15があらかじめ定められたシーケンスで駆動することで貯水容器13内の被電解原水が電解槽17へと送り込まれて、電解槽17において被電解原水の電解処理が行われる。ここで、膜再生工程において、陽イオン交換膜59、60に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度(例えば2A/dm2 )を超える電解条件下で電解処理を行うことが重要である。
【0108】
こうした再生工程において、各種スイッチ類、各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類がどのように関連して動作するのかについて、図23を参照して詳細に説明する。
【0109】
まず、水位が高水位レベルを超えていない場合(このとき再生LED93は非点灯)において、ユーザが再生SW79を操作入力しても、再生運転ははじまらない。このとき、ブザー87が鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが再生モードに移行できなかった旨をユーザに警告報知する。
【0110】
一方、水位が高水位レベルを超えている場合(このとき再生LED93は点灯)において、ユーザが再生SW79を操作入力すると、自動再生運転がはじまる。このとき、ブザー87が鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが再生モードに移行できた旨をユーザに報知する。再生運転は、水位が高水位レベルを超えていることを条件に、予め設定された再生所要時間(本実施例では例えば5分間)が経過するか、又は、ユーザが再生SW79を操作入力(手動による再生運転停止)するまで継続する。再生運転中に、例えば水漏れなどの予期せぬ事態が発生して水位が高水位レベルを下回るに至ったとき、再生所要時間が経過したとき、又は、再生SW79の入力受付があったときには、ブザー87が鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって注意喚起状態(再生運転の停止)にある旨をユーザに報知するとともに、再生運転を停止する。
【0111】
ここで、再生運転中における各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類の動作をそれぞれ述べる。再生LED93は、点滅することで再生モードで運転中である旨をユーザに報知する。ファン85は送風動作を、再生運転中並びに再生運転終了後60秒が経過するまで継続する。電磁三方弁39は循環側に切替えられる。ポンプ15は、再生運転開始直後から20秒が経過するに至るまで停止する一方、20秒経過後(残時間は280秒)では、間欠駆動(30秒駆動し3秒休む)を繰り返すことで被電解原水を間欠的に送出する。電解ON/OFFリレー105は、再生運転開始直後から20秒が経過するに至るまで逆極性電解側に付勢(正極性電解時における陰極板63、64のスケール除去)され、この逆極性電解側付勢後に、10秒間の非電解区間を挟んで、270秒間だけ正極性電解側に付勢(陽イオン交換膜59、60の再生)される。極性切替リレー103は、再生運転開始直後から20秒が経過するに至るまでのあいだ逆極性電解側に付勢される。ここで、ポンプ15、電解ON/OFFリレー105、及び極性切替リレー103のタイムチャートに注目すると、再生運転開始直後から20秒が経過するに至る区間において、ポンプ15の駆動を停止した状態で、逆極性電解が行われていることがわかる。これは、陽イオン交換膜59、60への硬度成分の吸着量を抑制する趣旨である。なぜならば、再生用水として例えば水道水などの硬度成分含有水を用いた場合には、ポンプ15を駆動させながら逆洗工程を行うと、陽イオン交換膜59、60が次々に補給される陽イオンに暴露され続ける結果として、陽イオン交換膜59、60への硬度成分の吸着が促進されてしまうからである。そして、残時間LED99は、自動再生工程を完遂するまでの残時間をカウントダウン式に表示する。
【0112】
次に、膜再生工程(生成工程でも同様)における作用機序について、電解室55内における物質の挙動に注目して、電解の有無、電解有りでは電解処理水のpHは酸性か、アルカリ性か、または中性か、に分類して、図7乃至図10を参照して説明する。
【0113】
図7乃至図10は、電解室内における物質の挙動に注目して、電解室55の左半分のみを切り取った簡略説明図である。
【0114】
まず、電解無しの場合を、図7を参照して説明する。電解オフの状態で装置11をそのまま放置しておくと、電解室55内の残留水中に存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の陽イオンの膜60への吸着が、陽イオンとの置換による水素イオンの放出と同時に、次第に進行してゆく。このとき、電解室55内の残留水の性状に注目すると、その硬度は低下してゆくとともに、そのpHは酸性側に傾いてゆく。この陽イオンの膜60への吸着進行速度は、電解室55内の残留水が呈する硬度と、陽イオンの膜60への吸着程度と、残留水が呈するpHなどをパラメータとする相互関係が平衡状態に近づくにつれて徐々に緩やかになっていき、平衡状態に達した時点でその吸着進行が止まるものと考えられる。
【0115】
次に、正極性電解、電解処理水のpHが酸性となる場合を、図8を参照して説明する。この場合、陽イオンの膜60への吸着進行速度が増加傾向(溜め込む傾向)にあるため、電解室55内の水中に存在する陽イオンの膜60への吸着が、陽イオンとの置換による水素イオンの放出と同時に進行し、これに加えて、陽極で生じた水素イオンの膜を透過しての電解室55内水への供給が、次第に進行してゆく。このとき、電解室55内水の性状に注目すると、図7の例と同様に、その硬度は低下してゆくとともに、そのpHは酸性側に傾いてゆく。これにあてはまる事例としては、陽イオンの膜60への吸着があまり進行していない状態で、臨界電流密度に満たない電解条件で電解処理が実行されているケースが考えられる。
【0116】
次に、正極性電解、電解処理水のpHはアルカリ性の場合を、図9を参照して説明する。この場合、陽イオンの膜60への吸着進行速度が減少傾向(吐き出す傾向)にあるため、陽極で生じてくる水素イオンに押し出されるようにして、水素イオンとの置換による膜60に蓄えられていた陽イオンの放出が、次第に進行してゆく。このとき、電解室55内水の性状に注目すると、その硬度は上昇してゆくとともに、そのpHはアルカリ性側に傾いてゆく。これにあてはまる事例として、陽イオンの膜60への吸着が過剰に進行している状態で、臨界電流密度を超える電解条件で電解処理が実行されているケースが考えられる。
【0117】
次に、正極性電解、電解処理水のpHは中性の場合を、図10を参照して説明する。この場合、陽イオンの膜60への吸着進行速度が平衡状態(中立傾向)にあるため、陽極で生じてくる水素イオンは、その全量が膜60を透過して、陰極64の表面で生じた水酸化物イオンとのあいだで、ちょうど当量反応して水分子に戻るため、電解室55において生成される電解機能水のpHは、被電解原水のpHがほとんどそのまま維持されることになる。これにあてはまる事例として、膜の再生レベルが理想状態で、臨界電流密度を超える電解条件で電解処理が実行されているケースが考えられる。
【0118】
(洗浄工程)
例えば一週間などの比較的長いあいだ本装置11を使用しなかった場合には、本装置11内における接液部の除菌・洗浄、陽イオン交換膜59、60の再生、並びに、正極性電解時における陰極板63、64のスケール除去を目的として、洗浄工程を実行する。なお、本発明において、正極性電解時における陰極板63、64のスケール除去を目的として行う工程を特に逆洗工程(請求項に記載の逆洗工程と同義)と呼び、本装置11内における接液部、陽イオン交換膜の再生、並びに電極板の洗浄の三者を兼ねる上記の洗浄工程とは区別して取り扱うものとする。
【0119】
洗浄工程を実行するには、図6(洗浄工程の水の流れは再生工程と同様のため、再生工程における水の流れを示す図と共用する。)に示すように、まず、例えば水道水、好ましくは軟水、さらに好ましくは純水を、貯水容器13に高水位レベルを超えるまで注ぎいれると、洗浄工程を実行するための準備が整う。このとき、ユーザが洗浄SW81を操作入力すると、洗浄モードでの運転がはじまり、ポンプ15があらかじめ定められたシーケンスで駆動することで貯水容器13内の被電解原水が電解槽17へと送り込まれて、電解槽17において被電解原水の電解処理が行われる。
【0120】
こうした洗浄工程において、各種スイッチ類、各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類がどのように関連して動作するのかについて、図24を参照して詳細に説明する。
【0121】
まず、水位が高水位レベルを超えていない場合(このとき洗浄LED95は非点灯)において、ユーザが洗浄SW81を操作入力しても、洗浄運転ははじまらない。このとき、ブザー87が鳴動パターン2(PT2:例えば「ピ・ピ・ピ」(短音3回を連続的に間欠鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが洗浄モードに移行できなかった旨をユーザに警告報知する。
【0122】
一方、水位が高水位レベルを超えている場合(このとき洗浄LED95は点灯)において、ユーザが洗浄SW81を操作入力すると、自動洗浄運転がはじまる。このとき、ブザー87が鳴動パターン1(PT1:例えば「ピ」(短音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって運転モードが洗浄モードに移行できた旨をユーザに報知する。洗浄運転は、水位が高水位レベルを超えていることを条件に、予め設定された洗浄所要時間(本実施例では例えば10分間)が経過するか、又は、ユーザが洗浄SW81を操作入力(手動による洗浄運転停止)するまで継続する。洗浄運転中に、例えば水漏れなどの予期せぬ事態が発生して水位が高水位レベルを下回るに至ったとき、洗浄所要時間が経過したとき、又は、洗浄SW81の入力受付があったときには、ブザー87が鳴動パターン3(PT3:例えば「ピー」(長音1回を単発的に鳴動))で鳴動し、これによって注意喚起状態(洗浄運転の停止)にある旨をユーザに報知するとともに、洗浄運転を停止する。
【0123】
ここで、洗浄運転中における各種LED類、並びに、ポンプ15、ファン85、電磁三方弁39、ブザー87、リレー103、105などの各種アクチュエータ類の動作をそれぞれ述べる。洗浄LED95は、点滅することで洗浄モードで運転中である旨をユーザに報知する。ファン85は送風動作を、洗浄運転中並びに洗浄運転終了後60秒が経過するまで継続する。電磁三方弁39は循環側に切替えられる。ポンプ15は、洗浄運転開始直後から590秒が経過するに至る区間(残時間は10秒)では、間欠駆動(30秒駆動し3秒休む)を繰り返すことで被電解原水を間欠的に送出する一方、残時間の10秒間では停止する。電解ON/OFFリレー105は、洗浄運転開始後15秒が経過した時点から20秒が経過するに至るまで逆極性電解側に付勢され、この逆極性電解側付勢後に、265秒間の非電解区間を挟んで、280秒間だけ正極性電解側に付勢(陽イオン交換膜59、60の再生)され、この正極性電解側付勢後に、10秒間の非電解区間を挟んで、10秒間だけ逆極性電解側に付勢される。なお、洗浄運転の開始直後において、電解ON/OFFリレー105を電解ONに切り替えるにあたり15秒の遅延時間を設けたのは、洗浄運転時における被電解原水として例えば塩化ナトリウム水溶液を採用することを想定したとき、この水溶液を撹拌することで被電解原水の塩化ナトリウム濃度を均一にする趣旨である。極性切替リレー103は、洗浄運転開始後15秒が経過した時点から20秒が経過するに至るまで、並びに、洗浄運転開始後590秒が経過した時点から10秒間だけ逆極性電解側に付勢される。ここで、上述した二度の逆極性電解のうち、前者は主として洗浄用水のpHが次亜塩素酸の殺菌力を増幅させる範囲(pH4〜6)に収束することを狙って行われる一方、後者は主として正極性電解時に陰極として使用される第3、第4電極板63、64のスケール除去を狙って行われる。そして、残時間LED99は、自動洗浄工程を完遂するまでの残時間をカウントダウン式に表示する。
【0124】
次に、スケール付着問題の発生機序、並びに、かかる課題を解決するための逆洗工程における作用機序について、電解室55内における物質の挙動に注目して、図11及び図12を参照して説明する。
【0125】
図11及び図12は、電解室内における物質の挙動に注目して、電解室55の左半分のみを切り取った簡略説明図である。
【0126】
まず、スケール付着問題の発生機序を、図11を参照して説明する。例えば生成工程での運転を長時間持続させた場合、図10の例と同様に、原水のpHをほとんど維持したままで、電解により生じた微小気泡状態の水素を豊富に溶存した電解水素飽和溶存水(電解機能水)が得られる。しかしながら、電解室55内の水中に存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオンが、陰極64の表面で水酸化物イオンと反応することで、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムが陰極64の表面に析出してくる。こうした陰極64表面へのスケールの付着が、電解効率の悪化を招来する。
【0127】
そこで、こうしたスケール付着問題を解決するために、本発明では、電解室55内に被電解原水が導入されている状態で、電解室55内に設けられた電極板64を陽極とする一方で電解室外に設けられた電極板62を陰極とする逆極性で直流電源67からの直流電圧を両電極間に印加する逆洗工程を採用している。
【0128】
図12に示すように、逆洗工程を実行すると、陽イオン交換膜60に接触させて設けられた電極板62が陰極であるため、陽イオンの膜60への吸着進行速度が加速され、陽イオンとの置換による水素イオンの放出が進行する。これに加えて、電解室55内の電極板64が陽極であるため、この陽極64の表面で生じた水素イオンの電解室55内水への供給が、次第に進行してゆく。このとき、電解室55内水の性状に注目すると、その硬度は低下してゆくとともに、そのpHは酸性側に傾いてゆく。なお、陰極62と膜60の間で生じた水酸化物イオンは、陽イオン交換膜60を透過することはできずに、陰極62の近傍にとどまることになる。また、逆洗工程において、塩素イオンを含む水を被電解原水として採用するか、又は被電解原水に例えば塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩化物を溶かし込むことで塩素イオンを積極的に供給すれば、陽極64の表面では、塩素イオンが還元されて塩素ガスとなり、これが電解室55内の弱酸性(例えばpHが4〜6程度)の水に溶け込むことで、殺菌力の強い次亜塩素酸水を生成することができる。こうして生成した次亜塩素酸水を、装置内の水流路における各部すべてに流通させることによって、装置内の水流路における除菌・洗浄を完遂することができる。
【0129】
次に、膜再生工程において、被電解原水の硬度を変えていったときに、適切な臨界電流密度はどのように変わっていくのか?を調べることを目的として、次述の実験を行った。
【0130】
基準水として、カルピス伊藤忠ミネラルウォーター(株)より日本国内に供給されている「evian」(S.A.des Eaux Minrales d' Evianの登録商標)を用いて、これをイオン交換水により適宜希釈することにより、相互に硬度の異なる下記3種類の試験水を用意した。なお、試験水の硬度調整は、電気伝導率を測定することで簡易的に行った。また、下記の全硬度、Ca硬度は、測定キットを用いた実測値である。
【0131】
(1)試験水1:電気伝導率;15mS/m:全硬度;80ppm:Ca硬度;55ppm
(2)試験水2:電気伝導率;36mS/m:全硬度;195ppm:Ca硬度;130ppm
(3)試験水3:電気伝導率;53mS/m:全硬度;295ppm:Ca硬度;200ppm
実験の準備として、電解槽17を初期化(過去の電解機能水生成履歴を消して電解槽を初期状態に戻す)するために、イオン交換水を用いて、1セットの再生工程を実施した。すなわち、まず、ポンプ15をオフ(循環せず)した状態で、逆極性電解を20秒間行った後、電解をオフして10秒間循環運転を行い、その後に、ポンプ15をオンした状態で循環しながら正極性電解を4分30秒間行った。こうした再生工程の実行後に、イオン交換水800ccで貯水容器13まわりのすすぎを1回行い、実験をはじめる直前には、試験水300ccによる貯水容器13まわりの共洗いを1回行った。
【0132】
実験手順は、各試験水800ccを貯水容器13に注ぎいれ、電解オフにて循環運転を1分間行った後、6種類だけ電流密度を変えた正極性電解(電流密度:0/0.5/1/1.5/2/2.5A/dm2 )にて循環運転を7分間行った。電解オフでの循環運転終了時を起点として、その後1分間が経過する毎に、循環している電解機能水のpHを測定、記録した。なお、ひとつの試験水での実験が終了する毎に、電解槽17を初期化するために、イオン交換水を用いて、1セットの再生工程、すすぎ、次の試験水による共洗いをそれぞれ実施した。
【0133】
こうして実験を行った結果を、図26乃至図29に示す。図26乃至図29には、試験水の硬度変化に応じて臨界電流密度が変わることを説明するために、試験水の硬度を3種類変えたときの、pH変化率の経時変化特性に係るグラフが示してある。
【0134】
図26乃至図29の実験結果から、臨界電流密度は、陽イオン交換膜が浸漬されている被電解原水が軟水の場合には低い値になる一方、膜浸漬水が硬水の場合には高い値になる傾向があることがわかった。そして、本実施形態に係る電解槽17を使用した場合、陽イオン交換膜59、60に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度として例えば2A/dm2 を採用すれば、試験水3(全硬度;295ppm/Ca硬度;200ppm)でも膜の再生が可能であり、すなわち、全硬度が300ppm程度までの被電解原水であれば、臨界電流密度として例えば2A/dm2 を採用すれば足りることが実証できた。
【符号の説明】
【0135】
11…電解機能水生成装置、13…貯水容器、15…ポンプ、16…透明板部材、17…電解槽、18…窓部、19…水受け皿、20…アタッチメント、21…ボトル連結部、23…第1のピン電極(高水位センサ)、25…第1の水供給路、27…第2のピン電極(低水位センサ、ECセンサ)、29…第3のピン電極(水位センサ、ECセンサ)、31…第2の水供給路、32…入水側液導管、33…逆止弁、34…出水側液導管、35…出水路、37…出水口、39…電磁三方弁、41…循環路、43…循環出口、51…第1のケーシング、53…第2のケーシング、55…電解室、57…窓孔、59…第1陽イオン交換膜、60…第2陽イオン交換膜、61…第1電極板、62…第2電極板、63…第3電極板、64…第4電極板、65…コアフレーム、67…直流電源、69…パンチ小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被電解原水が導入される電解室と、前記電解室における内と外を区画する一つ以上の隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一対の電極板と、を有し、前記電解室外の電極板が陽極として前記隔膜に接触させて設けられているとともに、前記電解室内の電極板は陰極として前記隔膜と接触しないように離れて設けられている電解槽と、
前記電解槽における電極間に直流電圧を印加する直流電源と、を備え、
前記隔膜として、陽イオン交換膜を採用してなる電解水素溶存水生成装置における性能維持方法であって、
前記電解室内に被電解原水が導入されている状態で、前記電解室内に設けられた電極板を陽極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陰極とする逆極性で前記直流電源からの直流電圧を両電極間に印加する逆洗工程を実行し前記電解室内に設けられた電極板に付着している水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどのスケールを除去した後に、
前記電解室内に被電解原水が導入されている状態で、前記電解室内に設けられた電極板を陰極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陽極とする正極性で前記直流電源からの直流電圧を両電極間に印加し電解水素溶存水を生成するにあたり、前記陽極における電流密度を、前記陽イオン交換膜に吸着している陽イオンを脱離させるための下限値たる臨界電流密度を超える値に設定することを特徴とする電解水素溶存水生成装置における性能維持方法。
【請求項2】
前記臨界電流密度は、被電解原水の電気伝導率が15mS/mであるとき1A/dmであることを基準値とし、被電解原水の電気伝導率に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の電解水素溶存水生成装置における性能維持方法。
【請求項3】
前記電解水素溶存水生成装置は、飲用電解水素溶存水生成装置であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の電解水素溶存水生成装置における性能維持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−162544(P2010−162544A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65495(P2010−65495)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2006−531631(P2006−531631)の分割
【原出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(394021270)ミズ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】