説明

電解水供給システム

【課題】pH値が中性域であり、かつ、濃度の異なる電解水を選択的に供給し得る電解水供給システムを提供する。
【解決手段】電解槽1で残留塩素濃度を高めた電解水L1を再びタンクTに戻すループ状の流路と、制御手段とを備え、制御手段は、電解槽1に導入した原水LをタンクTに戻すことなく低濃度電解水として所定の第1供給先F1に導出するワンパスモードと、タンクTに貯留した電解水L1を前記電解槽1に供給し、電解槽1で残留塩素濃度を高めた電解水L1を再びタンクTに戻すことを繰り返して低濃度電解水よりも残留塩素濃度の高い高濃度電解水を生成する循環モードと、タンクTから高濃度電解水を第1供給先F1または第2供給先F2に導出する高濃度導出モードとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より原水を電解してアルカリ性や酸性の電解水を生成する装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−229565号(要約)
【特許文献2】特開2009−268997(要約)
【特許文献3】特開2001−70941(要約)
【特許文献4】特開2005−152685(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3の装置は、酸性水や次亜塩素水、アルカリ水を同時に生成するものである。
しかし、前記酸性やアルカリ性の電解水は、そのまま排水しては環境破壊のおそれがある。そのため、特許文献4の装置は、環境に影響を及ぼさないように、pHを中性域に保ちつつ電解水の殺菌力を向上させている。
【0005】
ここで、たとえば歯科医院などでは、歯科用チェアや一般の蛇口から、残留塩素濃度の低い電解水が供給されることで該電解水の殺菌効果により衛生環境が向上する。当該電解水は、人体に悪影響を及ぼさない低濃度の電解水である必要がある。一方、治療器具などを洗浄する場合などでは殺菌性の高い高濃度の電解水が求められる。
しかし、前記各特許文献1〜4の装置では、濃度の異なる電解水を選択的に供給することかできない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、残留塩素濃度の異なる電解水を選択的に供給し得る電解水供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の電解水供給システムは、原水を電解して残留塩素濃度を高める電解槽と、前記電解槽で電解された電解水を貯留するタンクと、前記タンクに貯留した電解水を前記電解槽に供給し、当該電解槽で残留塩素濃度を高めた電解水を再び前記タンクに戻すループ状の流路と、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電解槽に導入した原水を前記タンクに貯留することなく低濃度電解水として所定の第1供給先に導出するワンパスモードと、前記タンクに貯留した電解水を前記電解槽に供給し、当該電解槽で残留塩素濃度を高めた電解水を再び前記タンクに戻すことを繰り返して前記低濃度電解水よりも残留塩素濃度の高い高濃度電解水を生成する循環モードと、前記タンクから前記高濃度電解水を前記第1供給先または第2供給先に導出する高濃度導出モードとを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの電解槽を用いて残留塩素濃度の異なる電解水を生成することができる。
すなわち、ワンパスモードにおいて低濃度電解水を生成して導出する一方、循環モードで濃度を高めた高濃度電解水を生成し、導出モードにおいて導出することができる。
したがって、1つの電解槽を用いた簡素な装置を用いることにより、低コストで、2種類の残留塩素濃度の異なる中性の電解水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aは本発明の実施例1にかかる電解水供給システムの注水モード示す概略構成図、図1Bは同循環モードを示す概略構成図である。
【図2】図2Aは電解水供給システムの導出モードを示す概略構成図、図2Bは同ワンパスモードを示す概略構成図である。
【図3】電解水供給システムの機器構成図である。
【図4】各モードの弁の開閉状態を示す図表である。
【図5】実施例2にかかる電解水供給システムを示す概略構成図である。
【図6】各モードの弁の開閉状態を示す図表である。
【図7】同システムのモード選択を示すフローチャートである。
【図8】同システムの注水モードを示すフローチャートである。
【図9】同システムの循環モードを示すフローチャートである。
【図10】同システムの導出モードを示すフローチャートである。
【図11】同システムのワンパスモードを示すフローチャートである。
【図12】実施例3にかかる電解水供給システムを示す概略構成図である。
【図13】実施例4にかかる電解水供給システムを示す概略構成図である。
【図14】実施例5にかかる電解水供給システムを示す概略構成図である。
【図15】電解槽の一例を示す概略分解斜視図である。
【図16】同電解槽の縦断面図である。
【図17】電極ユニットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい態様において、電解水供給システムは、前記制御手段は前記ループ状の流路に設けられた第1弁と、前記第1弁の開閉およびポンプの運転を制御する制御回路とを包含し、前記第1弁は前記ループ状の流路における前記電解水が前記電解槽から前記タンクに向かう第1部に設けられ、前記第1部における前記電解槽から前記第1弁までの間において前記ループ状の流路から分岐し前記電解水が導出される第1導出路を備え、前記ワンパスモードにおいて前記第1弁を閉じて前記電解槽で電解された電解水が前記タンクに貯留されることなく前記第1導出路から導出され、前記循環モードにおいて前記第1弁を開いて前記電解水の電解槽への供給と前記タンクへの戻しとが実行される。
【0011】
本態様によれば、第1弁を設けることにより、ワンパスモードにおける低濃度電解水の導出と、電解槽で電解された電解水のタンクへの貯留との選択を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい態様において、電解水供給システムは、前記ループ状の流路における前記電解水が前記タンクから前記電解槽に向かう第2部に、前記電解槽から前記タンクに向う方向に水が逆流するのを防止する第2弁を更に備えている。
本態様によれば、第2弁を設けることにより、原水がタンクに向かって第2部を逆流するのを防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様において、電解水供給システムは、前記第2部における前記第2弁から前記電解槽に向かう部位において、原水を前記電解槽に導入する導入路が前記ループ状の流路に合流している。
本態様によれば、導入路を介して原水を前記電解槽に導入することができる。
【0014】
本発明の好ましい態様において、電解水供給システムは、前記ループ状の流路と並列に設けられたバイパス路が前記導入路の分岐部から分岐しており、前記分岐部から前記ループ状の流路までの間の部位に前記バイパス路または前記ループ状の流路への原水の流れを選択するための第3弁が配置されている。
本態様によれば、第3弁を設けることにより、原水をバイパス路またはループ状の流路に切り換えることで、原水または電解水の導出の選択が可能となる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1〜図4は実施例1を示す。
システム構成:
図1Aに示すように、本電解水供給システムは電解槽1、タンクT、複数の管路、電磁弁A〜F、流量センサ41,42および液面センサ43を備えている。
【0016】
前記電解槽1は、後述するように、原水L(水道水)や電解水L1を電解して残留塩素濃度を高めるものである。前記タンクTは、電解槽1で電解された電解水L1を貯留する。
流量センサ41,42は流路内を流れる電解水L1の流量を検出するものである。
前記液面センサ43はタンクT内に設けられている。前記液面センサ43がタンクT内の電解水L1の液面を検出するものである。
【0017】
本システムで生成された残留塩素濃度の低い低濃度の電解水L1は第1供給先F1に導出される。一方、残留塩素濃度の高い高濃度の電解水L1は第2供給先F2に導出される。
なお、前記原水Lは、本システムの停止時、または低濃度の電解水L1が導出されないモードにおいて第1供給先F1に導出される。
【0018】
電解槽1:
本システムの構成についての説明に先立ち、まず、前記電解槽1の構造の一例を説明する。
図15〜図17において、耐圧性を有する電解槽1は、収容空間Sを形成する。前記収容空間S内には電極ユニットUが収容される。該電極ユニットUは前記電解槽1内に概ね鉛直面に沿って、かつ、互いに平行に近接して配置された、たとえば5枚の電極板21 〜25 を含む。
【0019】
前記電解槽1は第1および第2の耐圧板1a,1bと、該一対の耐圧板1a,1bの間に挟持された環状の第3耐圧板1cとを備え、前期環状の第3耐圧板1cの下端部に導入孔14が上方に向かって吐出するように設けられている。前記導入孔14は前記電解槽1の下部に設けられ、液体Lを前記電解槽1内に圧送する。
【0020】
一方、前記耐圧板1cの上端部には導出孔15が形成されている。前記導出孔15は、前記液体Lを電解層1内で電気分解することにより生成された電解水L1を、前記電解槽1の上部から導出する。
【0021】
図17の各電極板21 〜25 の少なくとも四隅には絶縁部材26が配置されている。前記絶縁部材26は各電極板2i同士を絶縁すると共に各電極板2iの間の距離を保持する。
【0022】
前記電極板21 〜25 の概ね中央の領域には、図16の前記各電極板21 〜25 のうちの同一極性となる電極板21 〜25 を水平方向に貫通すると共に当該電極板21 〜25 同士を互いに通電させる第1および第2の電極棒21,22が設けられている。これらの電極棒21,22には、前記電極板の間に直流電圧を印加する直流電源53(図示3)が接続されている。
なお、図16の電極板22 ,24 が第1の電極棒21を介して第1の極性に設定され、電極板21 ,23 ,25 が第2の電極棒22を介して第2の極性に設定される。
【0023】
つぎに、水道水からなる原水Lから電解水L1つまり殺菌力のある液体が生成される過程ないし原理について説明する。
【0024】
図15および図16の導入孔14から開口14aおよび下端開口11aを経て、液体Lが図17の第1流路11に導入される。液体Lは第1流路11内を下方から上方に流れる間に第1流路11において電気分解される。この際、水道水中の塩素イオンCl- と水H2 O等が所定の化学反応を呈し、水素ガスや酸素ガスが生成されると共に、殺菌力のある次亜塩素酸HClOや次亜塩素酸イオンClO- が生成され、pH値が中性域の電解水L1が生成される。
なお、電解水L1の生成方法については、特開2007−195539に記載の生成方法を採用することができる。
【0025】
つぎに、本システムの流路の構成について説明する。
図1Aに示すように、本システムは、ループ状の流路10,20、導入路60、第1導出路61、第2導出路62およびバイパス路30を備えている。
【0026】
ループ状の流路:
図1Bの網点で示す前記ループ状の流路10,20は、前記タンクTに貯留した原水Lまたは電解水L1を電解槽1に供給し、当該電解槽1で残留塩素濃度を高めた電解水L1を再びタンクTに戻すものである。
前記ループ状の流路は、原水Lや電解水L1が電解槽1からタンクTに向かう第1部10と、原水L電解水L1がタンクTから電解槽1に向かう第2部20とで構成されている。
前記第1部10における電解槽1の下流には第1流量センサ41が設けられている。
前記第2部20にはポンプPが設けられている。
【0027】
第1弁C:
前記ループ状の流路において、電解水L1等が前記電解槽1からタンクTに向かう第1部10には、第1弁Cが配置されている。前記第1弁Cは第1流量センサ41の下流に設けられており、タンクTへの電解水L1の供給と停止を選択する。
【0028】
第2弁F:
前記ループ状の流路において、電解水L1等がタンクTから電解槽1に向かう第2部20には、電解槽1からタンクTに向かう方向に水が逆流するのを防止するための第2弁Fが配置されている。前記第2弁Fは前記ポンプPと電解槽1との間の後述する第3分岐部D3の下流に配置されている。
なお、第2弁Fは、電解槽1からタンクTに向かう方向に水が逆流するのを防止する逆止弁で構成されてもよい。
【0029】
導入路60:
図1Aおよび図2Aに示すように、前記導入路60は第2部20に合流している。前記導入路60と第2部20との合流部分(点)100は第2部20の電解槽1と第2弁Fとの間に設定されている。
【0030】
第3弁A:
前記導入路60には第3弁Aが配置されている。図1Aおよび図2Bの網点で示すように、前記第2弁Fを閉じた状態で第3弁Aを開くと、原水Lが導入路60から第2部20の一部を通り電解槽1に導入される。
【0031】
第1導出路61:
図2Bの網点で示すように、第1部10には第1供給先F1に導通する第1導出路61が分岐して設けられている。前記第1導出路61は前記第1部10において電解槽1と第1弁Cの間の第1分岐部D1から分岐している。
【0032】
第4弁B:
前記第1導出路61には第4弁Bが配置されている。図2Bの網点で示すように、第1弁Cを閉じた状態で第4弁Bを開くと、電解水L1が第1部10から第1導出路61を通り第1供給先F1に導出される。
【0033】
第2導出路62:
図2Aの網点で示すように、第2部20には第2供給先F2に導通する第2導出路62が分岐して設けられている。前記第2導出路62は、第2部20において、ポンプPと第2弁Fとの間の第3分岐部D3から分岐している。前記第2導出路62には第2流量センサ42が設けられている。
【0034】
第5弁D:
前記第2導出路62において第2流量センサ42の下流には第5弁Dが配置されている。図2Aの網点で示すように、第2弁Fを閉じて第5弁Dを開いた状態でポンプPが作動すると、タンクT内の電解水L1が第2部20から第2導出路62を通り第2供給先F2に導出される。
【0035】
バイパス路30:
前記バイパス路30は、導入路60の第2分岐部D2において分岐している。
バイパス路30は、導入路60において、第3弁Aの上流の第2分岐部D2から分岐し、前記ループ状の流路10,20と並列に設けられ、第1導出路61の第4弁Bの下流において該第1導出路61に合流している。
【0036】
第6弁E:
前記バイパス路30には第6弁Eが設けられている。第3弁Aおよび第4弁Bを閉じて第6弁Eを開くと、原水Lが導入路60からバイパス路30を介して第1導出路61を通り第1供給先F1に導出される。
【0037】
システム構成:
図3に示すように、本システムは、たとえばマイクロコンピュータからなる制御回路(制御手段の一例)50を備えている。前記制御回路50は図示しないCPUおよびメモリを備えている。
前記制御回路50には、第1および第2流量センサ41,42、液面センサ43、ポンプ制御部51、電磁弁制御部52、電解用直流電源53、電極切換リレー54、表示部57および入力部58などが接続されている。
【0038】
前記ポンプ制御部51は制御回路50の指令に従ってポンプPの駆動制御を行うものである。
電磁弁制御部52は制御回路50の指令に従って電磁弁からなる各弁A〜Fを開閉駆動するものである。
前記電極切換リレー54には前記電極板2i が接続されている。電極切換リレー54がON/OFFすることで、電解槽1内の前記電極板2i に印加される直流電圧の極性が切り換わる。
前記表示部57はたとえば液晶表示器からなり、後述する各モードやタンクT内の電解水L1の残量などを表示する。
前記入力部58は各モードの切換スイッチおよび電解槽1の電解を開始するか否かの電解スイッチからなる。なお、切換スイッチおよび電解スイッチは1つのスイッチで兼用されてもよい。
【0039】
動作モード:
図4に示すように、本システムは、低濃度電解水を供給するワンパスモード、高濃度電解水を生成するための注水モード・循環モード、ならびに、高濃度電解水を供給する導出モードを備えている。図4は各モードにおける各弁A〜Fの開閉状態を表すものであり、○印は開弁を示し、×印は閉弁を示す。
作業者が入力部58に所定の操作を行うと、前記制御回路50は以下に述べる各モードに設定される。
【0040】
まず、高濃度電解水を生成するための図1Aの注水モードおよび図1Bの循環モードについて説明する。
注水モード:
注水モードはタンクTに原水Lまたは電解槽1で電解された電解水L1を貯留するためのモードである。
図4に示すように、前記制御回路50(図3)が注水モードに設定されると、第1弁C、第3弁Aおよび第6弁Eが開弁され、他の弁は閉弁される。
【0041】
注水モードがスタートすると、図1Aの網点で示すように、導入路60に導入された原水Lは、第2部20の一部を通り電解槽1に導入される。前記原水Lは電解槽1により電解されて低濃度の電解水L1が生成され、該電解水L1は第1流量センサ41を通り第1部10を介してタンクT内に注水される。
図3に示す制御回路50は、液面センサ43からの信号に基づき、電解水L1でタンクTが満杯まで貯留されたと判別した場合、注水モードを停止させる。
なお、第6弁Eが開弁されることで、原水Lが導入路60からバイパス路30を介して第1導出路61に導入され第1供給先F1から導出される。
【0042】
循環モード:
循環モードはタンクTに貯留された電解水L1から残留塩素濃度の高い電解水を生成するモードであり、前記注水モードの後に実行される。
図4に示すように、循環モードでは、第1弁C、第2弁Fおよび第6弁Eが開弁され、他の弁は閉弁される。
【0043】
循環モードがスタートすると、図1BのポンプPが作動し、図1Bの網点で示すように、タンクTに貯留した電解水L1が第2部20を介して電解槽1に供給され、該電解槽1で残留塩素濃度を高めた電解水L1を第1部10を介して再びタンクTに戻すことを繰り返し、残留塩素濃度の高い高濃度の電解水L1が生成される。
【0044】
制御回路50(図3)は循環モードが所定時間運転されると循環モードを停止させる。これにより、電解水L1は所定の濃度に達する。
【0045】
なお、前記注水モードおよび循環モードは、主として電解水L1を使用しない夜間に行うのが好ましい。
【0046】
高濃度導出モード:
高濃度導出モードは、タンクTに貯留された高濃度電解水L1を第2供給先F2に導出するモードである。
図4に示すように、導出モードでは、第3弁A、第4弁Bおよび第5弁Dが開弁され、他の弁は閉弁される。
【0047】
高濃度導出モードがスタートすると、図2AのポンプPが作動し、図2Aの網点で示すように、タンクTに貯留された高濃度電解水L1が第2導出路62を介して第2流量センサ42に導入され、第2供給先F2に導出される。
制御回路50(図3)は、液面センサ43からの信号に基づき、タンクT内の電解水L1が所定量以下になった(タンクTが空か空の状態に近くなった)と判別した場合には、高濃度導出モードを停止させる。
高濃度導出モードにおいて、図3に示す制御回路50が第2流量センサ42からの信号に基づき、タンクTの電解水L1の残量を算出して当該残量を表示部57に表示したり、高濃度導出モード停止の判断基準としてもよい。
【0048】
ワンパスモード:
ワンパスモードは、電解槽1に導入した原水LをタンクTに貯留することなく低濃度電解水として第1供給先F1に導出するモードである。
図4に示すように、ワンパスモードでは、第3弁Aおよび第4弁Bが開弁され、他の弁は閉弁される。
ワンパスモードがスタートすると、図2Bの網点で示すように、導入路60から導入された原水Lが第2部20の一部を介して電解槽1に供給される。電解槽1で生成された残留塩素濃度の低い電解水L1が第1部10の一部および第1導出路61を介して第1供給先F1に導出される。
【0049】
なお、図2Aの前記高濃度導出モードにおいて第5弁Dを開き、第2供給先F2に高濃度の電解水L1を導出すると共に、ワンパスモードにおいて第3弁Aおよび第4弁Bを開弁することにより、第1供給先F1に低濃度の電解水L1を導出してもよい。つまり、この実施例では高濃度導出モードとワンパスモードが同時に実行され、濃度の互いに異なる電解水L1を同時に別々の供給先F1,F2において使用することができる。
【0050】
停止時:
本システムの停止時には、図4に示すように、第6弁E以外の全ての弁A〜D,Fが閉弁される。したがって、図1Aに示す原水Lは、導入路60からバイパス路30を通り、第1導出路61を介して第1供給先F1に導出される。
【実施例2】
【0051】
図5〜図11は実施例2を示す。
図5に示すように、第1導出路61において、第1分岐部D1と第4弁Bとの間には、第4分岐部D4を介して第2供給先F2に導通する第3導出路63が接続されている。前記第3導出路63には第5弁Dが設けられている。
第2部20には第2弁F(図1A)の代わりに逆止弁VFが設けられている。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
つぎに、本システムの各モードについて、図6の弁の開閉表を参考に、図7〜図11のフローチャートに基づいて説明する。なお、図6において○印は開弁を表し、×印は閉弁を表している。
【0053】
モード選択:
図7に示すように、ステップS1において、初期設定が完了した後ステップS2に進む。
【0054】
ステップS2において、ワンパスモードが選択された場合にはステップS5に進む。ステップS5において、図示しない電解スイッチがONに設定されている場合にはステップS10のワンパスモードに進む。
一方、ワンパスモードが選択されていない場合にはステップS3に進む。
【0055】
ステップS3において、高濃度電解水生成モードが選択された場合には、ステップS6に進む。ステップS6において電解スイッチがONに設定されている場合にはステップS30の注水モードに進む。
一方、高濃度電解水生成モードが選択されていない場合にはステップS4に進む。
【0056】
ステップS4において、導出モードが選択された場合にはステップS7に進む。ステップS7において電解スイッチがONに設定されている場合にはステップS70の導出モードに進む。
一方、前記導出モードが選択されていない場合にはステップS2に戻る。
【0057】
注水モード:
図8に示すように、ステップS30の注水モードがスタートするとステップS31に進む。
ステップS31では、図6の注水モードの項目に示すように、図5の第1弁C、第3弁Aおよび第6弁Eが開弁されてステップS32に進む。
【0058】
第3弁Aおよび第1弁Cが開弁されることにより、原水Lが導入路60を介して電解槽1に導入されると共に、前記逆止弁VFにより原水LがタンクT内に流れ込むのが阻止される。
一方、第6弁Eが開弁されることで、第1供給先F1に原水Lが適宜導出される。
【0059】
ステップS32では、電解スイッチがON状態であるか否かの判別が行われる。電解スイッチがON状態(電解指示有り)の場合にはステップS33に進む。一方、電解スイッチがOFF状態の場合にはステップS39に進む。
【0060】
ステップS33では、図5に示す流量センサ41の信号に基づき原水Lの流れが判別される。電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS34に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS32に戻る。
なお、所定時間、たとえば、1分間、水の流れが無い場合には、第3弁Aおよび第1弁Cが閉弁されてシステムが停止される。かかる場合には、アラームを鳴らして使用者に注意を喚起してもよい。
【0061】
ステップS34では、電解槽1内の電極板2i (図3)に直流電流が印加され、電解槽1を通る原水Lが電解されて低濃度の電解水L1が生成されてステップS35に進む。前記電解水L1は、図5に示す第1部10を通りタンクT内に注水される。
【0062】
ステップS35では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがONの場合には、ステップS36に進む。一方、電解スイッチがOFFの場合にはステップS41に進む。
【0063】
ステップS36では、図5のタンクTが電解水L1によって満タンになったか否かの判別が行われる。すなわち、液面センサ43からの信号に基づきタンクTが満タンになった場合にはステップS50の循環モードに進む。一方、タンクTが満タンになっていない場合にはステップS37に進む。
【0064】
ステップS37では、図5の流量センサ41からの信号に基づき電解水L1の流れが判別される。電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS38に進む。ステップS38では、電解槽1による電解が停止されステップS32に戻る。一方、電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS35に戻る。
【0065】
一方、ステップS39では、図1Aに示す第3弁Aおよび第1弁Cが閉弁されてステップS40に進む。ステップS40では、図7に示すモード選択に戻る。
【0066】
ステップS41では、電解槽1による電解が停止されてステップS42に進む。
ステップS42では、第3弁Aおよび第1弁Cが閉弁されてステップS43に進む。
ステップS43では、図7に示すモード選択に戻る。
【0067】
循環モード:
図9に示すように、ステップS50の循環モードがスタートするとステップS51に進む。
ステップS51では、図6の循環モードの項目に示すように、図5の第1弁Cおよび第6弁Eが開弁される。
【0068】
ステップS52では、図5に示すポンプPが駆動されてステップS53に進む。
ステップS53では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがON状態の場合には、ステップS54に進む。一方、電解スイッチがOFF状態の場合にはステップS62に進む。
【0069】
ステップS54では、図5に示す流量センサ41からの信号に基づき電解水L1の流れが判別される。電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS55に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS53に戻る。
【0070】
ステップS55では、電解槽1を通る電解水L1の電解が開始されてステップS56に進む。
【0071】
ステップS56では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがONの場合には、ステップS57に進む。一方、電解スイッチがOFF状態になった場合にはステップS64に進む。
【0072】
ステップS57では、第1流量センサ41からの信号に基づき電解水L1の流れが判別される。電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS58に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS67に進む。
【0073】
ステップS58では、ステップS55の電解開始から経過した時間を制御回路50(図3)が計時し、前記経過時間が所定時間以上の場合にはステップS59に進む。前記経過時間が所定時間よりも少ない場合にはステップS56に戻る。
ステップS56〜ステップS58のループ処理により、タンクTに貯留された電解水L1が電解槽1に供給され、電解槽1で残留塩素濃度を高めた電解水L1を再びタンクTに戻すことが繰り返され、高濃度の電解水L1がタンクTに貯留される。
【0074】
ステップS59では、図5のポンプPを停止すると共に、電解槽1での電解が停止されてステップS60に進む。
【0075】
ステップS60では、第1弁Cが閉弁されてステップS61に進む。
ステップS61では、図7に示すモード選択に戻る。
【0076】
一方、ステップS62では、第1弁Cが閉弁されてステップS63に進む。
ステップS63では、図7に示すモード選択に戻る。
【0077】
ステップS64では、図5に示すポンプPが停止されると共に、電解槽1での電解が停止されてステップS65に進む。
ステップS65では、第1弁Cが閉弁されてステップS66に進む。
ステップS66では、図7に示すモード選択に戻る。
【0078】
ステップS67では、図1Bの電解槽1での電解を停止しステップS53に戻る。
【0079】
導出モード:
図10に示すように、ステップS70の導出モードがスタートするとステップS71に進む。
ステップS71では、図6の導出モードの項目に示すように、第5弁Dおよび第6弁Eが開弁されてステップS72に進む。
【0080】
ステップS72では、図5に示すポンプPが駆動されてステップS73に進む。
ステップS73では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがONの場合には、ステップS74に進む。一方、電解スイッチがOFFの場合にはステップS84に進む。
【0081】
ステップS74では、図5に示す流量センサ41からの信号に基づき原水Lの流れが判別され、電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS75に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS73に戻る。
【0082】
ステップS75では、図5のポンプPによって汲み上げられた高濃度の電解水L1が電解槽1に導入されて電解されてステップS76に進む。
前記電解槽1で電解された電解水L1は、第1流量センサ41を通り、第1部10および第3導出路63を介して第2供給先F2に導出される。
なお、この工程は電解水を導出する際、長時間の放置により濃度が低下してしまった電解水を再度電解し、濃度を高めるためのもので、生成した高濃度電解水を直ちに導出する場合は特に必要ない。
【0083】
ステップS76では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがONの場合には、ステップS77に進む。一方、電解スイッチがOFF状態の場合にはステップS86に進む。
【0084】
ステップS77では、第1流量センサ41からの信号に基づき電解水L1の流れが判別され、電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS78に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS89に進む。
【0085】
ステップS78では、図5の前記液面センサ43からの信号に基づき、タンクT内の電解水L1が所定量以下の場合(タンクTが空か空の状態に近くなった場合)ステップS79に進む。一方、タンクT内の電解水L1が所定量よりも多い場合にはステップS76に戻る。
なお、液面センサ43の代わりに、第1流量センサ41からの信号に基づき、電解水L1が所定量であるか否かを判定してもよい。
【0086】
ステップS79では、図5のポンプPを停止すると共に、電解槽1での電解が停止されてステップS80に進む。
ステップS80では、第5弁Dが閉弁されてステップS81に進む。
ステップS81では、表示部57(図3)にタンクTが空である表示が行なわれてステップS83に進む。
【0087】
ステップS83では、図7に示すモード選択に戻る。
【0088】
ワンパスモード:
図11に示すように、ステップS10のワンパスモードがスタートするとステップS11に進む。
ステップS11では、図6のワンパスモードの項目に示すように、図5の第3弁Aおよび第4弁Bが開弁されてステップS12に進む。
【0089】
ステップS12では、電解スイッチがON状態であるか否かの判別が行われる。電解スイッチがON状態(電解指示有り)の場合にはステップS13に進む。一方、電解スイッチがOFF状態の場合にはステップS18に進む。
【0090】
ここで、図5に示す第3弁Aが開弁されることにより、原水Lが電解槽1に導入される。一方、前記逆止弁VFにより原水LがタンクT内に流れ込むのが阻止される。
【0091】
ステップS13では、図5に示す流量センサ41の信号に基づき原水Lの流れが判別される。電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS14に進む。一方、電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS12に戻る。
【0092】
ステップS14では、図5の電解槽1内の電極板2i (図3)に直流電流が流れ、電解槽1を通る原水Lが電解されて低濃度の電解水L1が生成されてステップS15に進む。
すなわち、原水Lは導入路60を通り電解槽1に導入され、低濃度の電解水L1が生成される。前記電解水L1は第1流量センサ41を通り、第1部10および第1導出路61を介して第1供給先F1に導出される。
【0093】
ステップS15では、電解スイッチがON状態か否かの判別が行われる。前記電解スイッチがONの場合には、ステップS16に進む。一方、電解スイッチがOFFの場合にはステップS20に進む。
【0094】
ステップS16では、図5の流量センサ41からの信号に基づき電解水L1の流れが判別される。電解水L1の流れ無しと判別された場合にはステップS17に進む。一方、電解水L1の流れ有りと判別された場合にはステップS15に戻る。
ステップS17では、電解槽1による電解が停止されステップS12に戻る。
【0095】
一方、ステップS18では、図1Aに示す第3弁Aおよび第4弁Bが閉弁されると共に、第6弁Eが開弁されてステップS19に進む。
ステップS19では、図7に示すモード選択に戻る。
【0096】
ステップS20では、電解槽1による電解が停止されてステップS21に進む。
ステップS21では、第3弁Aおよび第4弁Bが閉弁されると共に、第6弁Eが開弁されてステップS22に進む。
ステップS22では、図7に示すモード選択に戻る。
なお、実施例1および実施例2の循環モードにおいて所定時間の経過を判断し、循環モードを停止させているが、タンクT内の電解水L1の残留塩素濃度、塩素イオン濃度または導電率を測定し、その値を循環モード停止の判断パラメータとしてもよい。
【実施例3】
【0097】
図12は実施例3を示す。
図12に示すように、本実施例3では第4導出路64の端部がタンクT内に挿入されている。第4導出路64には、別のポンプPが設けられており、タンクT内の高濃度電解水L1が第2供給先F2に導出される。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【実施例4】
【0098】
図13は実施例4を示す。
図13に示すように、本実施例4では、導入路60が第2部20とは別に電解槽1に直接接続されている。
その他の構成は、実施例3と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【実施例5】
【0099】
図14は実施例5を示す。
図14に示すように、本実施例5では、原水Lが第6弁Eを介して第3供給先F3に導出されている。また、導入路60が第2部20とは別に電解槽1に直接接続されている。なお、第4弁B,第5弁Dおよび第6弁Eは電磁弁の代わりに蛇口を設けてもよい。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明および図示を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は電解水供給システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:電解槽
10:第1部(ループ状の流路の一部)
20:第2部(ループ状の流路の一部)
30:バイパス路
50:制御回路(制御手段)
61:第1導出路
A:第3弁
C:第1弁
F:第2弁
F1:第1供給先
F2:第2供給先
F3:第3供給先
L:原水
L1:電解水
T:タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を電解して残留塩素濃度を高める電解槽と、
前記電解槽で電解された電解水を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留した電解水を前記電解槽に供給し、当該電解槽で残留塩素濃度を高めた電解水を再び前記タンクに戻すループ状の流路と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電解槽に導入した原水を前記タンクに貯留することなく低濃度電解水として所定の第1供給先に導出するワンパスモードと、
前記タンクに貯留した電解水を前記電解槽に供給し、当該電解槽で残留塩素濃度を高めた電解水を再び前記タンクに戻すことを繰り返して前記低濃度電解水よりも残留塩素濃度の高い高濃度電解水を生成する循環モードと、
前記タンクから前記高濃度電解水を前記第1供給先または第2供給先に導出する高濃度導出モードとを備えている電解水供給システム。
【請求項2】
請求項1において、前記制御手段は前記ループ状の流路に設けられた第1弁と、前記第1弁の開閉およびポンプの運転を制御する制御回路とを包含し、
前記第1弁は前記ループ状の流路における前記電解水が前記電解槽から前記タンクに向かう第1部に設けられ、
前記第1部における前記電解槽から前記第1弁までの間において前記ループ状の流路から分岐し前記電解水が導出される第1導出路を備え、
前記ワンパスモードにおいて前記第1弁を閉じて前記電解槽で電解された電解水が前記タンクに貯留されることなく前記第1導出路から導出され、
前記循環モードにおいて前記第1弁を開いて前記電解水の電解槽への供給と前記タンクへの戻しとが実行される電解水供給システム。
【請求項3】
請求項2において、前記ループ状の流路における前記電解水が前記タンクから前記電解槽に向かう第2部に、前記電解槽から前記タンクに向う方向に水が逆流するのを防止する第2弁を更に備えた電解水供給システム。
【請求項4】
請求項3において、前記第2部における前記第2弁から前記電解槽に向かう部位において、原水を前記電解槽に導入する導入路が前記ループ状の流路に合流している電解水供給システム。
【請求項5】
請求項4において、前記ループ状の流路と並列に設けられたバイパス路が前記導入路の分岐部から分岐しており、前記分岐部から前記ループ状の流路までの間の部位に前記バイパス路または前記ループ状の流路への原水の流れを選択するための第3弁が配置された電解水供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−200746(P2011−200746A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67632(P2010−67632)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000154152)株式会社富永製作所 (44)
【Fターム(参考)】