説明

電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極とその基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置

【課題】電気化学測定で使用される基準電極の測定正確度を長期間維持できる、電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極と、その基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置とを提供する。
【解決手段】一端に電解質分離膜が形成され内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体と、電極外部体に設置され電極電解質溶液に浸漬されるよう形成される内部電極と、電極外部体に設置され電極電解質溶液に浸漬されるよう形成され、電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集したりする吸光度測定探針を含んで構成され、電解質溶液に分光活性物質が混合溶解されており、電解質溶液の吸光度から塩素イオンのような電解質の電極反応物質の濃度を算出することにより、長期間試験環境に暴露して内部電解質溶液の濃度が変化しても基準電極の電位変化を適切に補正でき、長期間基準電極の機能を維持して電極安定性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電極及び電気化学的電位自動補正装置に関するものであり、特に電気化学測定で使用される基準電極の測定正確度を長期間維持することができる、電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極と、その基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶液、有機溶液、及び高温溶融塩などの液体状態の媒質で発生する化学及び電気化学的反応を測定して調節するために、19世紀末から今まで電気化学的方法が広く使用されてきた。特に、20世紀末からリチウム二次電池、燃料電池、及び太陽電池の分野の研究開発が広がり、電気化学的方法の需要が急速に高まっている。
【0003】
電気化学的方法において作用電極の電位を正確に測定して調節するためには、基準電極の使用が必須である。一般的に基準電極では、狭い電位領域で酸化還元反応が明確に現われる反応が利用される。
【0004】
今まで、基準電極に利用された代表的な電極反応には、下記のような反応がある(Bard,A.J.&L.R.Faulkner,Electrochemical Methods:Fundamentals and Applications.New York:John Wiley &Sons,2nd Edition,2000年)。
【0005】
【化1】

【0006】
以上の電極反応において、最初の電極反応である水素イオンと水素ガスとの反応は基準になる反応(E°=0.0V)であるが、水素ガスを扱わなければならないので、実際はほとんど使用されていない。
【0007】
図1は、従来から使用されている一般的な基準電極の構造を示す断面図である。図1を参照すると、従来の基準電極では、電解質分離膜11が一端に形成された電極外部体10に、一つの内部電極20が形成され、前記電極外部体の内部には、内部電極20の一部を浸漬させるように電解質(内部電解質)30が充填されている。
【0008】
一般的に研究や産業分野で最も多く使用される基準電極では、内部電極20が銀−塩化銀電極やカロメル電極である。この電極反応では、内部電解質30中の塩素イオンの活量が一定であることを利用するため、測定する間、内部電解質30中の塩素イオン(Cl)の濃度を一定に維持しなければならない。
【0009】
地下水や河川水を含む自然水や熱交換システムの冷却水を電気化学的な測定方法で長期間監視する場合、使用される基準電極の内部電解質では、塩素イオンのような電解質の濃
度は試験溶液との濃度差によって減少し、基準になる電位が徐々に変化し得る。また、長期間使用中に、電極の損傷によって内部電解質が汚染されて誤った基準電位を提供することがある。
【0010】
特許文献1では、形状記憶合金薄膜を使用し、ナノ流量制御用マイクロバルブを電極システムに設置して、KCl(Cl)消耗を最小化した。また、特許文献2と特許文献3などでは、高分子材料を使用し、電極内部の溶液からのKClの漏出を抑制して、電極耐久性を向上させた。特許文献4でも、高分子電解質を構成し、KClの濃度を一定に維持して、高温高圧水溶液環境で使用できるように電極システムを構成した。
【0011】
基準電極の安定性を確保するために一般的に考慮され得る方法として、電極からの内部電解質の流出を最小化したり、電極の内部電解質を自動で交換する装置を基準電極内部に装着させたりすることができる。
【0012】
銀−塩化銀電極(Ag/AgCl電極)の場合には、塩化銀が再生されるように使用中に定期的に酸化電流や電位を印加して、銀−塩化銀電極表面を再生させる方法がある。
特許文献5では、基準電極内部に透過膜を使用してジャンクションを製作することにより電極汚染を防止し、ジャンクションの内部及び外部に電極を設置して両電極の間の相対的な電圧変化を測定することにより、基準電極の内部電解質の汚染を感知する装置を考案した。
【0013】
また、特許文献6乃至10では、基準電極を半導体分野に適用できるように薄膜処理技術を組み合わせた電極小型化に対する技術を開発した。
このように、今まで基準電極分野の技術的向上においては、電極内部溶液の漏出を抑制するために新しい材料を電極製造に応用したり、電極が使用される環境に適合するように改良したり、電極を小型化したりするために、技術開発が進められてきた。しかし、基準電極の電極反応に直接的に影響を及ぼす電解質の有効濃度の変化を感知するために電解質溶液中に吸光物質などの分光学的に活性を有する化学物質(分光活性物質)を添加し、分光測定機を使用して電解質の有効濃度を補正して基準電極の安定性を向上させ、電極の故障の有無を感知する方法に対しては、いかなる試みもされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国登録特許第0477448号公報
【特許文献2】韓国登録特許第0329393号公報
【特許文献3】韓国登録特許第0483628号公報
【特許文献4】韓国登録特許第0612270号公報
【特許文献5】米国特許第4,822,456号明細書
【特許文献6】国際公開第89/07758号
【特許文献7】国際特許出願PCT/US89/00628号明細書
【特許文献8】韓国登録特許第0152426号公報
【特許文献9】韓国登録特許第0411715号公報
【特許文献10】韓国登録特許第0439645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、電気化学的に活性がないが分光学的に活性を有する化学物質を電解質に添加して、電極の内部電解質が測定環境で希釈される場合にも、希釈された程度を吸光度測定によって算出して、基準電極を長期間使用しても基準電位を正確に決定できる、電解質溶液中に分光活性物
質を含有した基準電極と、その基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明による電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極は、一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体と、電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極と、前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成され、前記電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集したりする吸光度測定探針とを含む。
【0017】
ここで、前記分光活性物質は、赤外線、紫外線、及び可視光線のうちのいずれか一つ以上の光を吸収する化学成分を含む物質である。
また、前記吸光度測定探針が出力する分析光の波長は、140〜5,000nmである。
【0018】
また、前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度は、10wt%以下である。
ここで、前記吸光度測定探針は、光ファイバー、光キャピラリチューブ、分光反射鏡(optical reflector)、及び光が電解質溶液を透過することができるようにする分光セル(optical cell)のうちの一つ以上を含む。
【0019】
前記内部電極は、金属、導電性非金属、金属塩化物、金属酸化物及び金属硫化物のうちの一つ以上を含む材料で形成されている。
前記金属及び導電性非金属材料は、銀(Ag)、水銀(Hg)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ガラス質炭素、及び黒鉛のうちの一つ以上を含む。
【0020】
また、上述した課題を解決するため、本発明の第1特徴による電気化学的電位自動補正装置は、一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体、電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極、及び前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成されて、前記電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集したりする吸光度測定探針を含む基準電極と、前記吸光度測定探針で収集された反射光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機と、前記分光測定機で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器とを含む。
【0021】
また、上述した課題を解決するため、本発明の第2特徴による電気化学的電位自動補正装置は、一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体と、電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極を含む基準電極と、前記基準電極に分析光を照射する光源と、前記光源から出て前記基準電極の内部電極電解質を通過した通過光を収集する光検出器と、前記光検出器で収集された通過光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機と、前記分光測定機で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器とを含む。
【0022】
前記分光活性物質は、赤外線、紫外線、及び可視光線のうちのいずれか一つ以上の光を吸収する化学成分を含む物質である。
ここで、前記基準電位校正器は、前記分光測定機で測定された吸光度を使用して前記電解質溶液中の前記電極電解質の濃度変化を計算して、前記濃度変化による基準電位の変化
を計算する。
【0023】
ここで、前記基準電位校正器は、前記分光測定機で測定された吸光度に関連した値と基準電位との間の線形関係を使用して、前記基準電極の基準電位変化を計算する。
また、前記光源が出力する分析光の波長は、140〜5,000nmである。
【0024】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度は、10wt%以下である。
また、前記分光測定機の測定波長領域は、150〜2,400nmの範囲である。
【発明の効果】
【0025】
本発明による電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極とその基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置とは、基準電極の内部電解質溶液に分光活性物質が混合溶解されており、電解質溶液の吸光度から塩素イオンのような電解質の電極反応物質の濃度を算出する特徴を有しているので、長期間にわたって試験環境に暴露して基準電極の内部電解質溶液の濃度が変化しても、基準電極の電位変化を適切に補正することができる。これを通じて長期間基準電極の機能を維持し、電極損傷などによる非正常状態を速やかに感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来から使用されている一般的な基準電極の構造を示した断面図。
【図2】本発明による自動校正機能を有する基準電極の一例を示した図。
【図3】本発明による電気化学的電位自動補正装置を使用した装置構成の第1実施例を示した図。
【図4】本発明による電気化学的電位自動補正装置を使用した装置構成の第2実施例を示した図。
【図5】Ag/AgCl基準電極における内部電解質溶液(0.1M、0.01M)に多様な濃度の分光活性物質を添加した時の基準電位変化(vs.SCE)を測定したグラフ。
【図6】多様な濃度のKCl(電極電解質)媒質で、分光活性物質濃度による吸光強度変化を測定したグラフ。
【図7】Ag/AgCl基準電極の内部電解質(KCl)が、0.1Mから0.04Mに希釈された時の内部電解質の吸光度と基準電位変化(vs.SCE)を測定したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の具体的な内容及び実施例を説明する。
図2は、本発明による自動校正機能を有する基準電極の一例を示した図である。
図2を参照すると、本発明による電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極は、電極外部体100、前記電極外部体100に設置される内部電極200と吸光度測定探針300、及び前記電極外部体100内に充填される分光活性物質を含有した電極電解質溶液400を含む。
【0028】
前記電極外部体100の一方の末端には、電解質分離膜110が形成されていて、電解質分離膜110は、前記電極電解質溶液400と基準電極外部の溶液とが混ざることを防止する。
【0029】
前記電極外部体100の反対側の末端には、内部電極を挿入して固定する固定部120が形成されている。前記固定部120は、内部電極200と吸光度測定探針300とを、それらが互いに所定間隔で離隔されるように固定する。
【0030】
前記内部電極200は、金属、導電性非金属、金属塩化物、金属酸化物及び金属硫化物のうちの一つ以上を含む材料で形成される。
ここで、金属及び導電性非金属材料は、銀(Ag)、水銀(Hg)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ガラス質炭素、及び黒鉛のうちの一つ以上を含む。
【0031】
前記内部電極は、銀(Ag)、水銀(Hg)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びガラス質炭素のうちの一つ以上を含む材料で構成することが好ましく、銀(Ag)、水銀(Hg)、及び白金(Pt)のうちの一つ以上を含む金属材料で構成することが、さらに好ましい。
【0032】
前記内部電極は、棒、線、管、網、板、薄膜、及び繊維のうちの一つ以上の形態を含む構造を有する。前記内部電極は、棒、線、管、及び薄膜のうちの一つ以上の形態を含む構造に形成することが好ましい。
【0033】
前記電極電解質は、塩化物、硫化物、及び臭化物のうちの一つ以上を含む。前記電極電解質は、塩化カリウムと塩化ナトリウムとのうちの一つ以上を含むことが好ましい。
前記分光活性物質は、赤外線、紫外線、及び可視光線のうちのいずれか一つ以上の光を吸収する化学成分を含む物質である。
【0034】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度は、10wt%以下であり、好ましくは初期濃度は1.0wt%以下であり、より好ましくは0.1wt%以下である。
分光測定機は、測定可能な濃度範囲を有しており、電解質溶液中の分光活性物質の濃度が低すぎても高すぎても、正確な測定は困難となる。詳細には、分光活性物質の濃度が低すぎると分光測定機が吸光度を測定するのに必要な感度が上がるため好ましくなく、分光活性物質の濃度が高すぎると分光測定機の測定限度を越えてしまって(様々な吸光ピークの間に埋もれてしまって)測定正確度が下がる。すなわち、電解質溶液中の分光活性物質の濃度が高すぎると、溶液による吸光が非常に大きくなって所望する波長における正確な吸光度測定が難しくなる。また、分光活性物質を必要以上に多量に添加すると基準電極の性能に異常を与える。
【0035】
前記吸光度測定探針300は、光ファイバー、光キャピラリチューブ、分光反射鏡、及び光が電解質溶液を透過することができるようにする分光セルのうちの一つ以上を含む。
前記吸光度測定探針300から電極電解質溶液に出力される分析光の波長は、一例として140〜5,000nmである。すなわち、分析光には、赤外線、可視光線、及び紫外線のうちの一つ以上が使用できる。
【0036】
具体的な一実施例において、前記吸光度測定探針300は、分析光が案内される光ファイバー310(または光キャピラリチューブ)と前記光ファイバー(または光キャピラリチューブ)の末端から所定距離離隔した位置に設置される分光反射鏡320で構成することができる。図2では、前記光ファイバー310と分光反射鏡320とが連結されたように見えるが、実質的には、光ファイバー310と分光反射鏡320は所定間隔離隔して形成されていて、その間には分光活性物質を含む電極電解質溶液400が存在する。
【0037】
この場合、前記吸光度測定探針は、前記光ファイバー(または光キャピラリチューブ)の末端から出力された分析光が、基準電極内に充填された、分光活性物質を含有した電極電解質溶液を通過した後、前記分光反射鏡によって反射されるとともに、この反射された反射光が再び前記光ファイバー(または光キャピラリチューブ)に入って行くように構成される。
【0038】
前記基準電極は、前記電極電解質溶液400の温度を測定する温度センサーをさらに含むことができる。前記電極電解質溶液の温度は、基準電極が置かれる溶液の温度と実質的に同一なので、温度センサーは基準電極外部に別個に具備することもできる。
【0039】
図3は、本発明による電気化学的電位自動補正装置を使用した装置構成の第1実施例を示した図である。
基準電極は、電気化学測定のために電圧を測定したり印加したりする時に基準になる電極をいい、指示電極は、センサー機能を有する電極を通称して指示電極という。例えば、センサー機能がPHの測定であれば、PH電極が指示電極であり、センサー機能がイオンの感知であれば、イオン感知電極が指示電極である。
【0040】
一般的に、指示電極600での電圧が1Vであると測定される場合、これは、基準電極(0V)に対して1Vという意味である。したがって、測定対象によって指示電極600は変わるが、基準電極は変わらない。
【0041】
まず、基本理論を詳しくみると、一般研究及び産業分野における基準電極は、通常、銀−塩化銀電極やカロメル電極である。このような基準電極は、内部電解質であるKClの濃度によって基準電位が変化する。銀−塩化銀電極反応を例とすると、下記の反応式とネルンスト(Nernst)の式から確認できるように、銀−塩化銀基準電極は、電極内部電解質の塩素イオンの有効濃度である化学活量(aCl)によって決定される。
【0042】
【化2】

【0043】
ここで、Eは塩素イオンの影響を考慮した基準電極の基準電位であり、E°は基準電極の標準電位である。
基準電極が冷却水や自然水に長期間暴露される場合、電極の内部電解質溶液中の電解質の濃度が低くなって基準電位が変わり得る。分光学的に活性を有する物質を使用して分光学的な方法で電解質の濃度変化を測定できるなら、基準電極の電極反応(例えば、上式の銀/塩化銀の反応)に影響を与えることなく電解質希釈による基準電位変化を算出することができる。
【0044】
この場合、分光活性物質自体は、基準電極の電位に影響を与えてはならない。分光活性物質を電極電解質に混合した基準電極を使用して、分光活性物質が基準電極の電位変化に影響を与えないことを図5を通じて確認した。図5は、Ag/AgCl基準電極における内部電解質溶液(0.1M、0.01M)に多様な濃度の分光活性物質を添加した時の基準電位変化(vs.SCE)を示したグラフである。
【0045】
また、電極電解質溶液の吸光度は、電解質であるKClの濃度には影響を受けないで、分光活性物質の濃度にのみ影響を受けていることを図6で示している。図6は、多様な濃度のKCl(電極電解質)媒質について、分光活性物質濃度による吸光強度変化を測定したグラフである。
【0046】
これを通じて、電解質溶液が希釈される時、添加した分光活性物質の希釈による溶液の吸光度の変化から基準電極の基準電位の変化を算出できることを確認することができた。
ここで使用した分光活性物質は、628nmに吸光特性を有する緑色の食用色素(緑色素)である。
【0047】
本発明による電気化学的電位自動補正装置の第1実施例は、図3に点線で表示されたEC部分であり、基準電極500、前記基準電極500で収集された反射光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機700及び前記分光測定機700で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器800を含む。
【0048】
前記基準電極は、分光活性物質を含んでいて、前述した図2の構成を有する。
具体的に説明すると基準電極500は、一端に電解質分離膜110が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液400が充填される電極外部体100と、前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極200と、前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成されて、前記電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集したりする吸光度測定探針300とを含む。
【0049】
前記分光測定機700は、赤外線、可視光線、及び紫外線領域の光のうちで特定波長の分析光を前記吸光度測定探針300に出力する。
前記吸光度測定探針が出力する分析光の波長は、一例として140〜5,000nmである。
【0050】
出力された分析光は、前記吸光度測定探針300の光ファイバー310を経てその末端から出力され、分光活性物質を含有した電極電解質溶液400を経て、分光反射鏡320によって反射され、この反射光は再び前記光ファイバー310に入って行く。
【0051】
前記分光測定機700は、この反射光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する。
ここで、前記分光測定機700で測定しようとする波長領域は、基準電極内の分光活性物質の種類によって異なって設定することができる。
【0052】
その一例として、前記分光測定機700の測定波長範囲は、150〜2,400nmの範囲や、200〜1,600nmの範囲で設計することができる。
前記基準電位校正器800は、前記分光測定機で測定された吸光度を使用して前記電解質溶液中の前記電極電解質の濃度変化(電極反応物質の濃度変化、例えば電極電解質がKClの場合はClの濃度変化)を計算して、前記濃度変化による基準電位の変化を計算し、その変化を補正することができる補正信号を出力する。
【0053】
一般的に時間が経つほど電解質の濃度が下がって、それに伴って分光活性物質による電解質溶液の吸光度も小さくなる。
したがって、前記基準電位校正器800は、電解質溶液が希釈されるのに伴い減少する溶液の吸光度の対数値(ログ値)とその時に測定した基準電位との間に線形関係が存在しているので、この関係を使用して前記基準電極の基準電位変化を計算する。
【0054】
前記基準電位校正器800は、最終的に基準電位の変化を考慮した補正信号を電気化学測定装置900に送る。
電気化学測定装置900は、前記補正信号を考慮して指示電極600と基準電極500とで測定した電位差を補正して正確な電位差を計測することができる。
【0055】
この場合、より正確な計算のために電極電解質の温度を測定できる温度センサーをさらに具備して温度による影響も考慮することができる。
図4は、本発明による電気化学的電位自動補正装置を使用した装置構成の第2実施例を示した図である。図4は、基準電極と光源及び光検出器部分のみを示した図である。
【0056】
本発明による電気化学的電位自動補正装置の第2実施例は、基準電極と、前記基準電極に分析光を照射する光源340と、前記光源から出て前記基準電極の内部電極電解質を通過した通過光を収集する光検出器350と、前記光検出器に収集された通過光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機と、前記分光測定機で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器とを含む。
【0057】
この場合、基準電極は、一端に電解質分離膜110が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体100と、前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極200とを含んで構成される。
【0058】
本発明の第2実施例による電気化学的電位自動補正装置は、前記基準電極内部に吸光度測定用の探針がない代わりに、基準電極の外部から分析光を照射する光源340と基準電極内部の電極電解質溶液を通過した通過光を収集する光検出器350とを具備する。
【0059】
この場合、前記光源が出力する分析光の波長は、一例として140〜5,000nmであり、光検出器350で収集された通過光は、分光測定機に送出される。
特に、基準電極の外部から基準電極内部の電極電解質溶液に所定の波長を有した分析光を照射しなければならないので、基準電極の電極外部体100は少なくとも該所定の波長を有する光を吸収しない、すなわち、透明な材質の材料からなり、一般的には石英などの材質からなり得る。
【0060】
以下、本発明を好ましい実施例を図7によってさらに詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明の理解を助けるために提示されるものであって、本発明が下記の実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0061】
図7は、Ag/AgCl基準電極の内部電解質(KCl)が0.1Mから0.04Mに希釈される時の内部電解質の吸光度と基準電位変化(vs.SCE)とを測定したグラフである。
【0062】
0.1M KClに緑色の食用色素0.1wt%を混合した溶液を内部電解質に使用するAg/AgCl基準電極を長期間蒸留水に暴露して内部電解質溶液が希釈される過程において、電解質溶液の吸光度(628nmにて測定)と基準電極である飽和カロメル電極(SCE)との電位差とをそれぞれ測定した。電解質溶液が希釈されるのに伴い減少する溶液の吸光度(ABS)の対数値(ログ値)とその時に測定された電位差(vs.SCE)との間に線形関係が存在していることを図7に示している。この結果は、基準電極の内部電解質に分光活性物質が添加された基準電極において、内部電解質の希釈などによって変化した電位値を、吸光度測定を通じて補正できることを示している。
【0063】
以上のように、本発明による電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極とその基準電極を使用した電気化学的電位自動補正装置とを、例示した図を参照して説明してきたが、本明細書に開示された実施例と図面によって本発明は限定されず、技術思想を保護する範囲内で応用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100:電極外部体
110:電解質分離膜
200:内部電極
300:吸光度測定探針
400:電極電解質溶液
500:基準電極
600:指示電極
700:分光測定機
800:基準電位校正器
900:電気化学測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質溶液中に分光活性物質を含有した基準電極であって、
一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体と、
該電極外部体に設置され、前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極と、
前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成され、前記電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集したりする吸光度測定探針とを含むことを特徴とする、基準電極。
【請求項2】
前記分光活性物質が、赤外線、紫外線、及び可視光線のうちのいずれか一つ以上の光を吸収する化学成分を含む物質であることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項3】
前記吸光度測定探針が出力する分析光の波長が、140〜5,000nmであることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項4】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、10wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項5】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、1.0wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項6】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項7】
前記吸光度測定探針が、光ファイバー、光キャピラリチューブ、分光反射鏡、及び光が電解質溶液を透過できるようにする分光セルのうちの一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項8】
前記内部電極が、金属、導電性非金属、金属塩化物、金属酸化物及び金属硫化物のうちの一つ以上を含む材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項9】
前記金属及び導電性非金属材料が、銀(Ag)、水銀(Hg)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ガラス質炭素、及び黒鉛のうちの一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の基準電極。
【請求項10】
一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体、該電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成される内部電極及び前記電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるように形成され、前記電極電解質溶液に分析光を出力したり、分析光の反射光を収集する吸光度測定探針を含む基準電極と、
前記吸光度測定探針に収集された反射光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機と、
前記分光測定機で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器とを含む電気化学的電位自動補正装置。
【請求項11】
一端に電解質分離膜が形成され、内部に分光活性物質を含有した電極電解質溶液が充填される電極外部体、及び該電極外部体に設置されて前記電極電解質溶液に浸漬されるよう
に形成される内部電極を含む基準電極と、
前記基準電極に分析光を照射する光源と、
該光源から出て前記基準電極の内部電極電解質を通過した通過光を収集する光検出器と、
該光検出器に収集された通過光のスペクトル波長を分析して吸光度を測定する分光測定機と、
前記分光測定機で測定された吸光度によって前記基準電極の基準電位変化に関する補正信号を出力する基準電位校正器とを含む電気化学的電位自動補正装置。
【請求項12】
前記分光活性物質が、赤外線、紫外線、及び可視光線のうちのいずれか一つ以上の光を吸収する化学成分を含む物質であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項13】
前記吸光度測定探針が出力する分析光の波長が、140〜5,000nmであることを特徴とする請求項10に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項14】
前記光源が出力する分析光の波長が、140〜5,000nmであることを特徴とする請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項15】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、10wt%以下であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項16】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、1.0wt%以下であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項17】
前記電解質溶液中の前記分光活性物質の初期濃度が、0.1wt%以下であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項18】
前記分光測定機の測定波長領域が、150〜2,400nmの範囲であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項19】
前記分光測定機の測定波長領域が、200〜1,600nmの範囲であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項20】
前記基準電位校正器が、前記分光測定機で測定された吸光度を使用して前記電解質溶液中の前記電極電解質の濃度変化を計算して、前記濃度変化による基準電位の変化を計算することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項21】
前記基準電位校正器が、前記分光測定機で測定された吸光度の対数値と基準電位との間の線形関係を使用して、前記基準電極の基準電位変化を計算することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。
【請求項22】
前記電極外部体が、透明な材質の材料で形成されることを特徴とする請求項11に記載の電気化学的電位自動補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−288240(P2009−288240A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124594(P2009−124594)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(597060645)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート (22)
【出願人】(506094677)コリア ハイドロ アンド ヌクリア パワー カンパニー リミテッド (11)
【Fターム(参考)】