説明

電話交換装置及びその消費電力抑制方法

【課題】 サーバー系ユニットを搭載した電話交換装置において、バッテリーバックアップ動作時に、サーバー系ユニットのシャットダウン処理を確実に行えるようにするために、消費電力を効果的に抑制する。
【解決手段】 CPUボード13は、システム電源部12から停電検出信号が入力されると、各ユニット15,16からの状態通知信号に基づいてアイドル状態にあるユニットを特定する。それからCPUボード13は、アイドル状態にあるユニットへシャットダウン処理を命じ、その完了通知を受けて、アイドル状態であったユニット15,16への通電を停止させるためのDC出力制御信号をDC出力制御回路14へ出力する。DC出力制御部14は、DC出力制御信号に従い、アイドル状態であってユニットへの通電を停止させる。これによりアイドル状態にあったユニットはバッテリーの負荷回路から切り離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話交換装置に関し、特に、無停電電源装置によるバッテリーバックアップ動作中の電話交換装置の消費電力抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話交換装置は、商用電源の停電時にもその動作を継続することができるように、通常、バッテリーを備えた無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)に接続される。
【0003】
従来の電話交換装置は、停電時、無停電電源装置のバッテリー残量に応じて、接続されている電話機の機能を段階的に制限することにより消費電力を低減し、これによって、バッテリーによるシステム運用可能時間の延長を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、電話交換装置ではないが、停電時に、複数の負荷に対して、処理を終了したものから順次電源供給を停止することにより、無停電電源装置のバッテリーの小容量化を図っているコンピューターシステムもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−237318号公報
【特許文献2】特開平7−295688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電話システムとコンピュータシステムとの統合が進み、電話交換装置にもサーバー系ユニットが搭載されるようになってきている。
【0007】
サーバー系ユニットが搭載された電話交換装置では、停電時、即ちバッテリーバックアップ動作時に、バッテリーの残量が無くなる前にサーバー系ユニットのシャットダウン処理を完了する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の電話交換装置では、各電話機の機能を段階的に制限するものであるため、消費電力低減効果が小さい上、電話機の使用(通話)が可能であることから、複数の電話機の使用が開始されることなどにより急激にバッテリーの残量が減少する恐れがある。それゆえ、サーバー系ユニットが搭載された電話交換装置にこの技術を適用した場合には、サーバー系ユニットのシャットダウン処理が終了する前にシステムダウンが生じる恐れがあるという問題点がある。
【0009】
また、従来のコンピューターシステムは、制御部の制御下で動作する負荷への電力供給を、クローズ処理中にその処理を終了したならば停止するというものであって、利用者の意思によって通話が開始されまた終了する電話機の交換制御を行う電話交換装置へそのまま適用することができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、サーバー系ユニットを搭載した電話交換装置において、バッテリーバックアップ動作時に、サーバー系ユニットのシャットダウン処理を確実に行えるようにするために、消費電力を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、電話機または電話回線に夫々接続される複数の接続ユニットを含み、無停電電源装置によるバッテリーバックアップ動作が可能な電話交換装置において、前記複数の接続ユニットの動作状態を監視する状態監視部と、前記複数の接続ユニットへの給電を個別制御するためのDC出力制御回路とを備え、バッテリーバックアップ動作中、前記状態監視部が前記複数の接続ユニットの中からアイドル状態の接続ユニットを検出し、前記DC出力制御回路が前記アイドル状態の接続ユニットへの給電を停止するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、電話機または電話回線に夫々接続される複数の接続ユニットを含み、無停電電源装置によるバッテリーバックアップ動作が可能な電話交換装置の消費電力抑制方法において、前記複数の接続ユニットの動作状態を状態監視部にて監視する動作状態監視ステップと、バッテリーバックアップ動作中に、前記複数の接続ユニットの中からアイドル状態の接続ユニットが前記状態監視部により検出されたならば、当該アイドル状態の接続ユニットへの給電をDC出力制御回路の制御により停止する接続ユニット切り離しステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バッテリーバックアップ動作時に、接続ユニットの動作状態を監視し、アイドル状態にある接続ユニットへの給電を停止するようにしたことで、その後、その接続ユニットを介した通話が発生せず、消費電力を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に本発明の一実施の形態に係る電話交換装置のブロック図を示す。図示の電話交換装置10は、ボタン電話装置あるいはPBX(Private Branch eXchange:構内交換機)であって、バッテリー制御回路11、システム電源部12、CPUボード13、DC出力制御回路14、N個のインタフェースユニット15(15−1〜15−N)、少なくとも一つのオプションユニット16、及びハードディスク装置17を有している。
【0016】
バッテリー制御回路11は、バッテリー(図示せず)が接続されるバッテリー接続端子VINBATに接続されている。バッテリー制御回路11は、バッテリーの充放電制御を行う。
【0017】
システム電源部12は、商用電源接続端子VINACに接続されるとともにバッテリー制御回路11に接続されている。また、システム電源部12は、電力供給線及び信号線によりCPUボード13に接続されている。システム電源部12は、商用電源電圧が所定電圧以上のとき、商用電源からの交流電力を所定電圧の直流に変換してCPUボード13及びDC出力制御回路14に供給する。また、システム電源部12は、商用電源が所定電圧を下回ったときには、CPUボード13へ信号線を介して停電検出信号を出力し、バッテリー制御回路11から供給される直流電圧を(必要なら電圧変換した後)電力供給線を介してCPUボード13及びDC出力制御回路14へ出力する。
【0018】
パッテリー制御回路11及びシステム電源部12は、図示しないバッテリーとともにUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)を構成する。パッテリー制御回路11及びシステム電源部12は、電話交換装置10の外部に設けられてもよい。即ち、電話交換装置とは別体のUPSを用いてもよい。
【0019】
CPUボード13は、DC出力制御回路14と、インターフェースユニット15と、オプションユニット16とに接続されている。CPUボード13は、各インターフェースに接続された電話機または回線間の交換動作を行うほか、この電話交換装置10の全体動作を制御する。また、CPUボード13は、各ユニット15,16からの状態通知信号を受けることにより各ユニットの動作状態を監視する状態監視手段として機能する。
【0020】
DC出力制御回路14は、接続ユニットであるインターフェースユニット15及びオプションユニット16に接続され、CPUボード13の制御の下、これらユニット15,16への給電を個別に制御する。DC出力制御回路14は、例えば、機械的スイッチあるいは半導体スイッチを制御することにより、各ユニット15,16への通電を制御する。
【0021】
インタフェースユニット15−1〜15−Nは、電話機(内線)または電話回線(外線)が接続される回線ターミナルT〜Tに接続されている。インタフェースユニット15には、内線側インタフェースユニットと外線側インタフェースユニットとが含まれる。
【0022】
オプションユニット16は、インタフェースユニット15と同様、電話機(内線)または電話回線(外線)が接続される回線ターミナルTN+1に接続されている。ここでは、オプションユニット16として、サーバー系ユニット(サーバーユニット、ルーターユニットなど)を想定しているので、オプションユニット16にはハードディスク装置17が接続されている。
【0023】
以下、図1の電話交換機の動作を、CPUボードの動作を中心に、図2及び図3をも参照して説明する。
【0024】
まず、図1及び図2を参照して停電発生時のユニット切り離し動作について説明する。
【0025】
商用電源の電圧が所定の電圧以上のとき、電話交換装置10のCPUボード13は、通常の動作、即ち、回線ターミナルT〜TN+1に接続された内線電話機同士、あるいは内線電話機と外線との間を回線接続する呼制御を行う(ステップS201)。CPUボード13は、システム電源部12より停電検出信号が入力されない限り(ステップS202でNo)通常動作を継続する。
【0026】
システム電源部12は、常時商用電源電圧を監視しており、その電圧が所定の電圧以上のとき、商用電源電力を直流電力に変換してCPUボード13及びDC出力制御回路14へ供給する。商用電源電圧が所定の電圧を下回ったならば、システム電源部12は、停電が発生したと判断し、停電検出信号をCPUボード13へ出力する。同時に、システム電源部12は、その入力を商用電源からバッテリー制御回路11に切り替え、バッテリー制御回路11からの直流電力をCPUボード13及びDC出力制御回路14へ供給する。
【0027】
CPUボード13は、システム電源部12から停電検出信号が入力されると(ステップS202でYes)、システム電源部12から供給される直流電圧を検出する。検出した電圧が所定値以上であれば(ステップS203で有)、CPUボード13は、バッテリーの残量が切り離し処理を行うのに十分であると判断し、各ユニット15,16の状態を確認する(ステップS204)。即ち、各ユニット15,16からの動作状態通知信号を確認する。
【0028】
一方、検出した電圧が所定値を下回っているときは(ステップS203で無)、CPUボード13は、バッテリーの残量が不足しているとして、直ちにシャットダウン処理に移行する(ステップS208)。
【0029】
バッテリーの残量が十分にあると判断した場合であって、各ユニット15,16からの状態監視信号がアイドル状態を示しているとき(ステップS205でYes)、CPUボード13は、それらアイドル状態にあるユニットを、バッテリーの負荷回路から切り離す(ステップS206)。
【0030】
具体的には、CPUボード13は、アイドル状態にあるユニット15,16に対してシャットダウン処理の実行を命じる。そして、各ユニット15,16からのシャットダウン処理の完了通知を受けると、CPUボード13は、それらのユニット15,16への通電を停止するためのDC出力制御信号をDC出力制御回路14へ出力する。
【0031】
なお、アイドル状態とは、インタフェースユニット15の場合は、接続される電話機あるいは電話回線が不使用状態にあることを意味し、オプションユニット16の場合は、ハードディスク17に対し非アクセス状態にあることを意味する。
【0032】
DC出力制御回路14は、CPUボード13からのDC出力制御信号に従って、ユニット15,16への通電を個別制御し、アイドル状態にあるユニット15あるいはシャットダウン処理が完了したユニット16への通電を停止する。これにより、アイドル状態にあるユニットの切り離し処理が終了し、以後、そこに接続された電話機あるいは電話回線は、そのユニットの再接続処理がなされるまで使用できない。
【0033】
通話中の電話機あるいは電話回線に接続されているユニットへの通電は、そのユニットがアイドル状態になるまで継続される。従って、ステップS203においてバッテリー容量の不足が検出された場合を除き、通話は維持され、通話途中で回線が切断されることはない。通話が終了すると対応するユニットのアイドル状態が検出され、そのユニットへの通電が停止される。
【0034】
以降、全てのユニットについて切り離し処理が終了するまで(ステップS207でYes)、上記ステップS203〜ステップS207の動作が繰り返される。
【0035】
全てのユニットの切り離しが終了した場合(ステップS207でYes)、あるいはそれ以前であってもバッテリーの容量が不足していると判断された場合(ステップS203で無)、CPUボード13は、システムシャットダウンの処理を実行する。
【0036】
以上のようにして、本実施の形態では、アイドル状態のユニット15,16を順次切り離していくことにより、消費電力を低減することができ、ハードディスク17が接続されたオプションユニット16のシャットダウン処理が終了する前に、電源断となる事態を回避することができる。つまり、バッテリー容量を大きくすることなく、サーバー系ユニットにおいてアプリケーションを正常に終了させ、OSを正常にシャットダウンさせるために必要な時間を確保することができる。
【0037】
次に、図1及び図3を参照して復電時のユニット再接続動作について説明する。
【0038】
上述したように、システム電源部12は、常時商用電源電圧を監視している。システム電源部12は、停電発生後も商用電源電圧を監視しており、商用電源電圧が所定の電圧以上に戻ったならば、入力側をバッテリー制御回路11から商用電源に切り替え、停電検出信号の出力を停止する。この後、システム電源部12は、商用電源電力を直流電力に変換してCPUボード13及びDC出力制御回路14へ供給するとともに、バッテリー制御回路11へも直流電力を供給する。
【0039】
バッテリー制御回路11は、システム電源部12からの直流電力供給を受け、バッテリーの充電を行う。
【0040】
システム電源部12からの停電検出信号の入力がなくなると(ステップS301)、CPUボード13は、通常動作に復帰すべく、自身の復電処理を行う(ステップS301)。
【0041】
次に、CPUボード13は、各ユニット15,16の復旧確認処理を行う(ステップS303)。即ち、CPUボード13は、各ユニットからの動作状態通知信号を確認する。CPUボード13は、動作状態通知信号を出力しているユニット15,16は切り離し処理が行われておらず(ステップS304でNo)、出力していないユニット15,16は切り離し処理が行われている(ステップS304でYes)と判断する。そして、CPUボード13は、切り離し処理が行われているユニット15,16について再接続処理を行う。即ち、CPUボード13は、DC出力制御回路14に対して対象となるユニット15,16への通電を再開するためのDC出力制御信号を出力する。
【0042】
DC出力制御回路14は、CPUボード13からのDC出力制御信号に従い、全てのユニット15,16への通電を開始する(ステップS305)。
【0043】
その後、CPUボード13は、再接続されたユニット15,16に対して起動処理を実行させる。
【0044】
次に、CPUボード13は、全てのユニット15,16の接続を確認し、全てのユニット15,16の接続が完了したならば(ステップS306でYes)、通常動作に移行し(ステップS307)、完了していないならば、ステップS303〜S306を繰り返す。
【0045】
以上のようにして、電話交換装置10は、商用電源が復帰した場合、切り離したユニットの再接続を行って通常動作に移行する。
【0046】
以上、本発明について一実施の形態に即して説明したが、本願発明は上記実施の形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、バッテリーバックアップ動作に移行した後、直ちに、アイドル状態にあるユニット切り離しのための動作を開始しているが、より容量の大きなバッテリーを使用できるのであれば、バッテリーバックアップ動作に移行後、バッテリー残量(電圧)が所定値以下になるまでフルバックアップを行うようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、バッテリーバックアップ動作の場合にアイドル状態のユニットを切り離すものとしたが、通常動作からシステムオフ状態への移行の際にもアイドル状態のユニットを順次切り離すことにより、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電話交換装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の電話交換機における、停電時のユニット切り離し動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1の電話交換機における、復電時のユニットの再接続動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 電話交換装置
11 バッテリー制御回路
12 システム電源部
13 CPUボード
14 DC出力制御回路
15−1〜15−N インタフェースユニット
16 オプションユニット
17 ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機または電話回線に夫々接続される複数の接続ユニットを含み、無停電電源装置によるバッテリーバックアップ動作が可能な電話交換装置において、
前記複数の接続ユニットの動作状態を監視する状態監視部と、
前記複数の接続ユニットへの給電を個別制御するためのDC出力制御回路とを備え、
バッテリーバックアップ動作中、前記状態監視部が前記複数の接続ユニットの中からアイドル状態の接続ユニットを検出し、前記DC出力制御回路が前記アイドル状態の接続ユニットへの給電を停止するようにしたことを特徴とする電話交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電話交換装置において、
前記複数の接続ユニットへの給電が全て停止された後、状態監視部がシステムシャットダウンを実行することを特徴とする電話交換装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電話交換装置において、
バッテリーバックアップ動作の開始後に商用電源が復帰したとき、前記状態監視部が前記複数の接続ユニットの中から給電停止状態の接続ユニットを検出し、前記DC出力制御回路が前記給電停止状態の接続ユニットへの給電を再開するようにしたことを特徴とする電話交換装置。
【請求項4】
電話機または電話回線に夫々接続される複数の接続ユニットを含み、無停電電源装置によるバッテリーバックアップ動作が可能な電話交換装置の消費電力抑制方法において、
前記複数の接続ユニットの動作状態を状態監視部にて監視する動作状態監視ステップと、
バッテリーバックアップ動作中に、前記複数の接続ユニットの中からアイドル状態の接続ユニットが前記状態監視部により検出されたならば、当該アイドル状態の接続ユニットへの給電をDC出力制御回路の制御により停止する接続ユニット切り離しステップと、
を含むことを特徴とする電話交換装置の消費電力抑制方法。
【請求項5】
請求項4に記載された電話交換装置の消費電力抑制方法において、
前記複数の接続ユニットへの給電が全て停止された後に、状態監視部によりシステムシャットダウンを実行するステップを含むことを特徴とする電話交換装置の消費電力抑制方法。
【請求項6】
請求項4に記載された電話交換装置の消費電力抑制方法において、
バッテリーバックアップ動作の開始後に商用電源が復帰したとき、前記状態監視部により前記複数の接続ユニットの中から給電停止状態の接続ユニットを検出する復旧確認ステップと、
前記DC出力制御回路により前記給電停止状態の接続ユニットへの給電を再開する再接続ステップと、
を含むことを特徴とする電話交換装置の消費電力抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−166842(P2007−166842A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362691(P2005−362691)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】