説明

電話装置

【課題】ユーザが特に意識することなく、また簡単な構成によって安否確認を行うことができる電話装置を提供することを目的としている。
【解決手段】IPテレビ電話装置100に備わっているマイク113を用いて、周辺の音声データを集め、その音声データに基づいてユーザの安否確認を行っている。したがって、電話装置に備わっているマイクを利用しているだけなので、安否確認のために改めて別の構成を追加する必要もなく、また周辺の環境情報に基づいて安否の通知の要否を判断しているので、ユーザが特に意識する必要なく安否確認を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の連絡先へ安否情報の通知を行う機能を有する電話装置に関し、特に、電話装置が有する周辺環境情報入手手段を用いて、安否情報の通知の要否を判断して通知を行う電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一人暮らしの高齢者の増加に伴い、一人で暮らす高齢者の安否確認が必要になっている。安否確認の方法として例えば特許文献1のようなものが知られている。これは家庭内にある電化製品の操作情報をもとにした安否確認の方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−307260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている安否確認は、電化製品の操作情報を基にしている。具体的には特許文献1の段落「0009」などに記載されているが、電源コードを電源に接続する操作や、電化製品に配設されたスイッチのプッシュ操作の情報を用いた安否確認となっている。しかしながら、ユーザが必ず電化製品を操作する保証はない。またユーザの安否に問題がなくても、電化製品の操作を行わなければならないため、ユーザにとって煩わしさが残る。
【0005】
また特許文献1の安否確認によると、電化製品の他に、外部との通信手段を備えた集中管理部が必要になる。このような安否確認は非常に大掛かりなものになってしまうことが考えられる。
【0006】
本発明の発明者は上記の問題点を解消すべく種々の検討を重ねた結果、通信手段をもともと備えた電話装置を利用し、この電話装置に備わったマイク等、電話装置の周辺環境に関する情報を入手できる周辺環境情報入手手段から入手した情報を基にして安否情報の通知の要否判断をすることで、複雑な構成とすることなく、またユーザが電化製品を意識的に操作する必要なく安否確認を行うことができることに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、ユーザが特に意識することなく、また簡単な構成によって安否確認を行うことができる電話装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、所定の連絡先へ安否情報の通知を行う機能を有する電話装置であって、前記電話装置が備える周辺環境情報入手手段により入手した周辺の環境情報に基づいて、前記所定の連絡先へ通知することを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる電話装置であって、前記周辺環境情報入手手段は、前記電話装置が備えるマイクであり、前記周辺環境情報は、該マイクにより入手した音声データであることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる電話装置であって、前記マイクにより入手した音声データから音圧レベルを求めるとともに、該音圧レベルの基準値を設定し、該基準値と前記音圧レベルに基づき変化量を算出し、該変化量から前記安否情報の通知の要否を判定し、前記安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、前記回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、前記回数が所定回数に達したと判定された場合に、前記安否情報の通知を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項3にかかる電話装置であって、前記安否情報の通知の要否判定は、閾値と前記変化量との比較により行うことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項3または4にかかる電話装置であって、前記安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、前記所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定であることを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項6にかかる発明は、請求項1にかかる電話装置であって、前記周辺環境情報入手手段は、前記電話装置が備えるカメラであり、前記周辺環境情報は、該カメラにより入手した画像データであることを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項7にかかる発明は、請求項6にかかる電話装置であって、前記電話装置は時計部を備え、該時計部のデータから夜間時刻か否かを判定し、該夜間時刻において、前記カメラにより入手した画像データから照度を求め、該照度と閾値との比較により前記安否情報の通知の要否を判定し、前記安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、前記回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、前記回数が所定回数に達したと判定された場合に、前記安否情報の通知を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項8にかかる発明は、請求項7にかかる電話装置であって、前記安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、前記所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定であることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項9にかかる発明は、請求項7または8にかかる電話装置であって、 前記夜間時刻は、日付データを基に変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項10にかかる発明は、請求項7または8にかかる電話装置であって、 前記電話装置は、該電話装置が設置されている場所に関するデータを有しており、前記設置場所に関するデータと、日付データを基に、前記夜間時刻は変更可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる発明においては、所定の連絡先へ安否情報の通知を行う機能を有する電話装置であって、電話装置が備える周辺環境情報入手手段により入手した周辺の環境情報に基づいて、所定の連絡先へ通知する。したがって、もともと備えた電話装置を通信手段として利用し、この電話装置が備えている構成から、電話装置の周辺環境情報を入手して安否情報の通知の要否を判断するので、非常に簡単な構成にすることができる。また特に高齢者は電話装置を自分の近くに置いておくことが多いので、電話装置の周辺環境情報を利用して安否情報の通知の要否を判断すれば、ユーザが特に意識的な操作をする必要なく安否確認を行うことができる
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる電話装置であって、周辺環境情報入手手段は、電話装置が備えるマイクであり、周辺環境情報は、該マイクにより入手した音声データである。したがって、電話装置が必ず備えているマイクを用いるだけなので、非常に簡単な構成により安否確認を行うことができる。
【0019】
請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかる電話装置であって、マイクにより入手した音声データから音圧レベルを求めるとともに、該音圧レベルの基準値を設定し、該基準値と音圧レベルに基づき変化量を算出し、該変化量から安否情報の通知の要否を判定し、安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、回数が所定回数に達したと判定された場合に、安否情報の通知を行う構成である。したがって、一度、変化量に異常があったとしても、その異常がユーザに何か問題が発生したことによる場合もあれば、単にユーザが休息していた等による場合もある。そこで、安否情報の通知が必要と判定されても、その判定が所定の回数に達したことにより、通知が行われるので、通知される通知者にとっても不要な通知の回数が減るので、より実用的に安否確認を行うことができる。
【0020】
請求項4にかかる発明においては、請求項3にかかる電話装置であって、安否情報の通知の要否判定は、閾値と変化量との比較により行うので、単に変化量だけで判定する場合に比べ、雑音等による変化量への影響を低減することが可能となる。
【0021】
請求項5にかかる発明においては、請求項3または4にかかる電話装置であって、安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定である構成としている。したがって、日々の生活パターンに基づいて判定を行うことが可能となる。
【0022】
請求項6にかかる発明においては、請求項1にかかる電話装置であって、周辺環境情報入手手段は、電話装置が備えるカメラであり、周辺環境情報は、該カメラにより入手した画像データである。したがって、IPテレビ電話装置など最近の電話装置に多用されているカメラを用いるだけなので、非常に簡単な構成により安否確認を行うことができる。
【0023】
請求項7にかかる発明においては、請求項6にかかる電話装置であって、電話装置は時計部を備え、該時計部のデータから夜間時刻か否かを判定し、該夜間時刻において、カメラにより入手した画像データから照度を求め、該照度と閾値との比較により前記安否情報の通知の要否を判定し、安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、回数が所定回数に達したと判定された場合に、安否情報の通知を行う。
【0024】
したがって、安否情報の通知が必要と判定されても、直ぐに通知が行われるのではなく、その判定が所定の回数に達したことにより、通知が行われるので、通知される通知者にとっても不要な通知の回数が減るので、より実用的に安否確認を行うことができる。
【0025】
請求項8にかかる発明においては、請求項7にかかる電話装置であって、安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定である構成としている。したがって、日々の生活パターンに基づいて判定を行うことが可能となる。
【0026】
請求項9にかかる発明においては、請求項7または8にかかる電話装置であって、夜間時刻は、日付データを基に変更可能に構成されている。また請求項10にかかる発明においては、請求項7または8にかかる電話装置であって、電話装置は、該電話装置が設置されている場所に関するデータを有しており、設置場所に関するデータと、日付データを基に、夜間時刻は変更可能に構成されている。したがって、季節や地域の実情にあわせて安否確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した実施例である安否確認システムの全体図である。
【図2】本発明を適用した実施例であるIPテレビ電話装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施例におけるIPテレビ電話装置を用いて安否確認を行う際のフロー図である。
【図4】本発明の実施例におけるIPテレビ電話装置を用いて他の方法で安否確認を行う際のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための電話装置を例示するものであって、本発明をこの電話装置に特定することを意図するものではなく、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって定められるものである。
【実施例】
【0029】
図1は、本発明のIP電話装置を含む安否確認システム全体の構成を示すブロック図である。本実施例において、この安否確認システム10はIPテレビ電話装置100、有線LAN101、IP電話ルータ102、ブロードバンドルータ103、ゲートウェイ104、IP電話網105、インターネット106、PSTN網107(=Public Switched Telephone Network:公衆電話交換網)、及び加入者電話装置108を含むように構成されている。
【0030】
本発明のIPテレビ電話装置100は有線LAN101に接続され、有線LAN101は、IP電話ルータ102を介してIP電話網105に、ブロードバンドルータ103を介してインターネット106に、ゲートウェイ104を介してPSTN網107にそれぞれ接続されることにより、通信が可能である。なお、IPテレビ電話装置100の内部構造の詳細については後述する。
【0031】
有線LAN101を構成する物理的な手段としては、例えばツイストペアケーブルを用いた10BASE−T(IEEE802.3iとして標準化)や100BASE−TX(IEEE802.3uとして標準化)等があげられる。
【0032】
IP電話ルータ102、及びブロードバンドルータ103は、複数のIPネットワークを相互接続するためのネットワーク中継装置である。具体的には、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルでいうネットワーク層(第3層)やトランスポート層(第4層)の一部のプロトコルを解析して転送を行う。
【0033】
本実例では、IP電話ルータ102は有線LAN101とIP電話網105との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。またブロードバンドルータ103は、有線LAN101とインターネット106との二つのIPネットワークを相互に接続する役割を持つ。
【0034】
ゲートウェイ104は、プロトコル体系が異なるネットワーク間を相互接続するためのプロトコル変換器である。ゲートウェイ104は、例えば、有線LAN101とPSTN網107とを接続し、SIP等のシグナリングプロトコルを用いてシグナル変換を行うことにより、両ネットワーク間での通信を可能とする。
【0035】
IP電話網105は、電話網の一部もしくは全てにVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用した通信網であり、用いる通信回線としてはFTTH(Fiber To The Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の、いわゆるブロードバンド回線が利用される。なお、IP電話網105にはIPテレビ電話装置100’が複数接続されているが、図1では簡単のため1台のみしか描写されていない。
【0036】
なおVoIPとは、音声を各種符号化方式で圧縮した後にパケットに分割し、IPネットワークでリアルタイム伝送する技術である。これによりIP電話網105は音声通話サービスの他、画像の送受信を行うテレビ電話サービス等が提供可能となる。
【0037】
インターネット106は、通信プロトコルによるネットワークを相互接続して構築された広域通信網である。大小様々なコンピュータネットワークを相互に連結させて、国際的な通信ネットワークが構築されている。通信プロトコルとしては主に、TCP/IPが標準的なプロトコルとして採用されている。
【0038】
PSTN網107は、一般の加入者電話回線ネットワークである。末端に加入者電話装置108を接続し、回線交換方式で通信相手に接続して音声通話を行うのに用いられる。加入者電話装置108は、電話加入者がPSTN網107を用いてPSTN網に接続された他の加入者電話装置や有線LAN101やIP電話網105に接続されたテレビ電話装置と音声通話を行うための電話装置である。
【0039】
次に、図2を参照して本実施例のIPテレビ電話装置100について説明する。なお、図2は本実施例に係るIPテレビ電話装置100の構成を示す内部ブロック図である。IPテレビ電話装置100は制御部111、音声処理部112、マイク113、スピーカ114、映像処理部115、カメラ116、表示部117、時計部118、カレンダー部119、記録部120、操作部121、設置場所取得部122、LANインターフェース123を備えて構成されている。
【0040】
制御部111は、CPU、RAM、ROMを備えて構成されるマイクロプロセッサであり、RAMやROMに記憶された制御プログラムをCPUにおいて実行することにより各種の動作を制御・統括する。そして後述する安否確認プログラムが制御部111のROMに格納されており、安否確認プログラムを実行することにより、安否確認プログラムの各種処理が行われる。
【0041】
音声処理部112は、音声コーデックを備えており、マイク113から入力された音声をA/D変換し、次いで音声コーデックによって圧縮処理し、圧縮されたデータを制御部111に出力するとともに、制御部111において組み立てられた音声データを音声コーデックによって伸張処理し、次いでD/A変換してスピーカ114から出力する。このマイク113とスピーカ114は、IPテレビ電話装置100に固定的に設けられていてもよいが、ヘッドセットであってもよい。
【0042】
またマイク113は、通常であれば第3者との通話の際の集音器として、或いはTV会議の際の集音器として用いられるものであるが、本実施例においては制御部111からの指示により、IPテレビ電話装置100の周辺環境の音声データを入手する手段を構成するものとしても機能する。またIPテレビ電話装置100は、マイク113とスピーカ114が一体となっている受話器の他に、マイク113とスピーカ114がそれぞれ別々に取り付けられている。
【0043】
映像処理部115は、映像コーデックを備えており、カメラ116において撮影された映像を圧縮処理し、圧縮されたデータを制御部111に出力するとともに、制御部111において組み立てられた映像データを伸張処理し、表示部117に出力する。この表示部115は液晶ディスプレイユニットなどの表示体からなり、一般的な電話装置に用いられる表示部に比べると比較的大きなサイズで、7インチ程度のものが用いられる。そして映像データの他に相手方の電話番号や文字情報等の表示が行われる。
【0044】
またカメラ116は、通常であればTV会議の際の映像を撮影するものとして用いられるが、本実施例においては制御部111からの指示により、IPテレビ電話装置100の周辺環境の映像データを入手する手段を構成するものとしても機能する。
【0045】
時計部118は、IPテレビ電話装置100に内蔵された時計であり、表示部117へ日付を表示するためデータや、通話開始時刻及び通話終了時刻のデータを提供する。また後述する安否確認プログラムにおいて所定の時間を計測するためのタイマーとしても機能する。
【0046】
カレンダー部119は、年月日や曜日などの日付情報を提供する。日付情報は表示部117に表示され、また後述の操作部121からユーザの入力操作によって予定等を追加できるよう構成されている。また図2に示すカレンダー部119については、IPテレビ電話装置100に内蔵されたものを示しているが、外部からネットワークを介してIPテレビ電話装置100に保存される構成であってもよい。
【0047】
記録部120は、フラッシュメモリ等で構成され、制御部111を介して提供される画像データを保存したり、相手先の電話番号等を保存したりする。
【0048】
操作部121は、IPテレビ電話装置100を構成する筐体の一部分に形成されたキーやボタンからなるとともに、表示部117の表示体に一体形成されたタッチパネルでも構成されている。ユーザは筐体に形成されたテンキーを直接押して入力操作を行ったり、表示部117に表示された入力用のアイコンの部位に接触することで入力操作を行ったりすることになる。
【0049】
設置場所取得部112は、IPテレビ電話装置100が設置されている場所を特定する情報を得るために備えられている。この設置場所に関する情報は後述の安否確認の際に用いられる。設置場所については、大まかな場所(例えば市町村単位)がわかればよいので、例えばIPテレビ電話装置100の電話番号における市外局番から設置場所を取得してもよい。またGPSの受信機を用いたり、表示部117に地図表示を行いユーザが操作部121を介して設置場所を入力したりすることで位置情報を取得する構成であってもよい。
【0050】
LANインターフェース123は、IPテレビ電話装置100を有線LAN(図示せず)へ接続するものである。IPテレビ電話装置100は有線LANに接続されることで、ルータを介してIPネットワークに接続され、ゲートウェイを介してPSTN網107(=Public Switched Telephone Network:公衆電話交換網)に接続される。
【0051】
次に本発明の電話装置を用い安否確認を行う際の処理フローについてフローチャートを用いて説明を行う。図3は電話装置の周辺環境の情報を入手する手段として、IPテレビ電話装置100のマイク113を用いた場合の処理フローを示している。この処理フローは、制御部111に格納された安否確認プログラムを実行することにより開始される。具体的にはユーザがIPテレビ電話装置100の表示部117に表示された各種のメニュー画面から、操作部121を介して安否確認メニューを選択、実行することにより処理が開始される。
【0052】
まず、制御部111は通知者の設定を行う(ステップ301)。この処理は後で説明するようにユーザの異常事態が疑われると判定した場合に、その情報が通知される者を設定するためのものである。具体的には、一人暮らしの高齢者であるユーザと別居する家族が考えられる。また通知者の設定とは、携帯の電話番号やメールアドレス、通知者の自宅の電話番号等の情報を設定することが考えられる。そして通知者の設定は、ユーザが操作部121を介してこれら電話番号等を入力し、入力された情報を記録部120等へ記録しておくことで完了する。
【0053】
次に制御部111は、カウンタの初期化を行う(ステップ302)。このカウンタは、後ほど説明するタイマーにより1時間を計測し、1時間を経過する毎に1カウントするものである。このカウント数を数えることにより何時間が経過したのかを知ることができる。
【0054】
次に制御部111は、IPテレビ電話装置100の周辺環境に関する音声データの取得を行う(ステップ303)。具体的には、マイク113から室内の音声を集め、制御部111、音声処理部112によりこの室内の音声の音圧レベル(デシベルdB)を算出する。そしてこの算出された音圧レベルは記録部120等へ記録しておく。なお音圧レベルについては、例えば30秒程度マイク113により集音を行い、その中から平均の音圧レベルを求めたり、その中で最大の音圧レベルを求めたりする構成が考えられる。
【0055】
次に制御部111は音声データの基準値の設定を行う(ステップ304)。具体的には、先ほどのステップ303で取得した音圧レベルを基準値として設定しておく。
【0056】
次に制御部111は、タイマーを用い時間の計測を開始する(ステップ305)。具体的には時計部118を用いて時間の計測を行う。本実施例においては、このタイマーを用いて1時間を計測することとして説明を行う。
【0057】
そして1時間が経ったか否かの判断を行う(ステップ306)。そして1時間がまだ経っていないのであれば引き続き1時間の計測を行い、1時間が経ったのであればステップ307に進む。そして制御部111は1カウントを行う(ステップ307)。
【0058】
次に制御部111は、再度IPテレビ電話装置100の周囲の音声データを取得する(ステップ308)。つまり1時間後の音声データを取得する。具体的にはステップ303と同様にマイク113から室内の音声を集め、制御部111、音声処理部112によりこの室内の音声の音圧レベルを算出する。なお音声データの取得は1時間毎に行っているが、より短い時間の間隔で行っても構わない。より短い時間の間隔で行えば、それだけ頻繁にユーザの安否を確認することができる。
【0059】
次に制御部111は、ステップ308で得た音圧レベルをもとにステップ304で設定した基準値である1時間前の音圧レベルとの変化量を算出する(ステップ309)。この処理により1時間前と現在とで音圧レベルに、どの程度の変化があったか否かを知ることできる。そして変化があればユーザが何らかの活動を行ったことが推測できる。つまり、来客者との会話を行ったことにより室内の音圧レベルが上がっていることや、テレビをつけたことにより室内の音圧レベルが上がっていることが考えられる。また反対にテレビを消したことにより室内の音圧レベルが下がっているということも考えられる。
【0060】
次に制御部111は、ステップ304で設定した基準値の更新を行う(ステップ310)。具体的にはステップ308で取得した音圧レベルを新たな基準値として、基準値のデータを記録部110へ記録しておく。基準値を1時間毎に変動させる構成にしているので、1時間前からの変化量を常に知ることができる。
【0061】
次に制御部111は、ステップ309で得た変化量が閾値以下か否かの判断を行う(ステップ311)。閾値は事前に設定、記憶しておき、この閾値を基準にして変化量の大小を判断する。閾値を設定し、閾値と変化量との比較によりユーザの安否を判定するのは、必ずしも音圧レベルに変化があったからといって、その変化の全てがユーザの活動によるものではないからである。例えばステップ304で基準値が50dBに設定されたとする。そして一時間後にステップ308で音圧レベル60dBが測定されたとする。この場合、変化量は10dBであるが、この程度の変化は遠くで何かの音が鳴った等の理由で生じ得るものなので、この程度の変化ではユーザが活動したことによる変化ではないとして判断する。
【0062】
したがって、このような状況を考慮して閾値は設定されるべきであり、本実施例においては30dBに設定しておく。したがって、ステップ308で音圧レベル90dBが測定されたとすると、変化量は40dBであり、ユーザがIPテレビ電話装置100の周辺において例えばテレビの電源を入れた等の理由で、音圧レベルが大きく変化したと考えることができる。
【0063】
変化量が閾値以上であれば、ユーザは何かしらIPテレビ電話装置100の周辺で音を発生、或いは音を停止するような活動を行ったということなので、ユーザに異常は発生していないと判断できる。そこでステップ302に戻って、カウンタの値をゼロにリセットして、改めて計測を開始していく。
【0064】
変化量が閾値以下であれば、ステップ312に進んで、制御部111は次の処理を行う。ステップ312は、所定時間が経過したか否かについての判断を行う(ステップ312)。所定時間については、事前に設定、記憶しておく。経過時間については、タイマーを用いて1時間を計測し、1時間毎にカウントしているので、カウンタの回数値から簡単に知ることができる。経過時間が所定時間を経過したか否かの判断を行うことで、変化量が閾値以下、つまりユーザが活動していない状況がどのくらい継続しているのかを知ることができる。
【0065】
ステップ311で、変化量が閾値以下、つまりユーザが活動していないと判断することはできるが、その理由についてはユーザに異常が発生したことによるものなのか、ユーザに異常は発生していないが単に休息していた等の理由によるものなのか判断が難しい。
【0066】
つまりユーザに異常が発生し、倒れている等の理由で音圧レベルが変化していないということが考えられる一方で、ユーザに異常はないが、休息中のため動いていないため音圧レベルが変化していないということも考えられる。
【0067】
そこでステップ312により、変化量が閾値以下の状態が所定時間続いているのかどうかの判断を行うことで、音圧レベルの変化が少ない理由が、ユーザの異状によるものなのか、そうでないのかを判断する。
【0068】
具体的には所定時間を12時間、つまり半日に設定しておく。そしてカウンタ値を確認し12時間が経過していないのであれば、音圧レベルの変化が少ない理由に、ユーザの異常事態は関係ないと判断し、ステップ305に戻ってこれらの処理を引き続き行う。
【0069】
一方、12時間が経過しているのであれば、音圧レベルの変化が少ない理由として、ユーザの異常事態が考えられるのでステップ313に進んで次の処理を行う。
【0070】
ステップ312で所定時間が経過していると判断すると、ユーザの異常事態が疑われると判定し、ステップ301で設定した通知者に通知を行う(ステップ313)。本実施例におけるIPテレビ電話装置100では、通知者に対してメールを発信することにより通知が行われる。そしてメールを受信した通知者は、ユーザに何かしらの異常事態が発生している可能性があることを知ることができる。
【0071】
このように、本実施例においては、IPテレビ電話装置100に備わっているマイク113を用いて、IPテレビ電話装置100の周辺の音声データを集め、その音声データに基づいてユーザの安否確認を行っている。したがって、電話装置に必ず備わっているマイクを利用しているだけなので、安否確認のために改めて別の構成を追加する必要がない。また通常電話装置は、自宅内の中でも頻繁に利用される室内に配置されているものなので、IPテレビ電話装置100周辺の環境情報に基づいて安否の通知の要否を判断することで、ユーザが特に意識する必要なく安否確認を行うことができる。
【0072】
なお、本実施例においてはマイク113から入手した音声データについて、音圧レベルを求めて安否情報の通知の要否を判定しているが、音声データから音圧レベルを求める他に、例えば事前にユーザの音声の特徴点を抽出しておき、この特徴点を基に入手した音声データの中からユーザの音声抽出を行い、抽出の有無により安否情報の通知の要否を判定する構成であってもよい。
【0073】
次に本発明の電話装置を用い安否確認を行う際の、他の実施例について図4のフローチャートを用いて説明を行う。図4は電話装置の周辺の環境情報を入手する手段としてIPテレビ電話装置100のカメラ116を用いた場合の処理フローを示している。この処理フローについても図3の場合と同様に、制御部111に格納された安否確認プログラムを実行することにより開始される。
【0074】
まず、制御部111は通知者の設定を行う(ステップ401)。この処理はステップ301と同様なものである。
【0075】
次に制御部111は、カウンタの初期化を行う(ステップ402)。このカウンタは、タイマーにより1時間を計測し、1時間を経過する毎に1カウントするものである。このカウント数を数えることにより何時間が経過したのかを知ることができる。
【0076】
次に制御部111は、タイマーを用い時間の計測を開始する(ステップ403)。具体的には時計部118を用いて時間の計測を行う。本実施例においてはこのタイマーを用いて1時間を計測することとして説明を行う。
【0077】
そして1時間が経ったか否かの判断を行う(ステップ404)。そして1時間がまだ経っていないのであれば引き続き1時間の計測を行い、1時間が経ったのであればステップ405に進む。そして制御部111は1カウントを行う(ステップ405)。
【0078】
次に制御部111は、夜間時刻か否かの判定を行う(ステップ406)。具体的には、例えば20時から翌日の3時までを夜間時刻として設定しておき、時計部118から取得した現在の時間のデータが夜間時刻に該当するか否かの比較を行う。この夜間時刻とは、室内で活動するのであれば必ず室内の電灯をつける必要がある時刻のことである。つまりユーザは室内においてテレビを見たり、トイレに行こうとすれば、室内の明かりをつけなければ暗くて動くことができない時刻である。
【0079】
夜間時刻でなければステップ403に戻って、処理を繰り返す。夜間時刻であれば、次に制御部111はIPテレビ電話装置100の周辺環境に関する画像データを取得する。これは具体的には、カメラ116を起動させて、室内の映像を撮影することにより取得する。
【0080】
次に制御部111は、ステップ403で撮影した映像から照度(ルクスlx)を算出し、この照度が閾値以下かどうかの判定を行う。これは閾値を事前に設定、記憶しておき、閾値を基準にして照度の大小を判断することである。
【0081】
算出された室内の照度が閾値より高ければ、ユーザが夜間時刻に室内の明かりを点けた、つまり異常事態は発生していない、ということである。また算出された室内の照度が閾値より低ければ、ユーザは夜間時刻に室内の明かりを点けていない、つまり異常事態が発生している可能性が考えられる。
【0082】
照度が閾値以上であれば、特にユーザに異常事態は発生していないと判断し、ステップ402に戻って処理を繰り返す。
【0083】
照度が閾値以下であれば、ステップ409に進んで、制御部111は次の処理を行う。ステップ409は、所定時間が経過したか否かについての判断を行う(ステップ409)。所定時間については、事前に設定、記憶しておく。経過時間については、タイマーを用いて1時間を計測し、1時間毎にカウントしているので、カウンタの回数値から簡単に知ることができる。経過時間が所定時間を経過したか否かの判断を行うことで、変化量が閾値以下、つまりユーザが活動していない状況がどのくらい継続しているのかを知ることができる。
【0084】
ステップ408で、照度が閾値以下、つまりユーザが活動していないと判断することはできるが、その理由についてはユーザに異常が発生したことによるものなのか、ユーザに異常はなく、単に休息していた等の理由によるものなのか判断が難しい。そこでステップ409により、照度が閾値以下の状態が所定時間続いているのかどうかの判断を行うことで、音圧レベルの変化が少ない理由が、ユーザの異状によるものなのか、そうでないのかを判断する。
【0085】
具体的には所定時間を24時間、つまり1日に設定しておき、カウンタ値を確認し24時間が経過していないのであれば、音圧レベルの変化が少ない理由に、ユーザの異常事態は関係ないと判断し、ステップ403に戻ってこれらの処理を引き続き行う。
【0086】
一方、24時間が経過しているのであれば、音圧レベルの変化が少ない理由として、ユーザの異常事態が疑われるのでステップ410に進んで次の処理を行う。
【0087】
ステップ409で所定時間が経過していると判断すると、ユーザの異常事態が疑われるので、ステップ401で設定した通知者に通知を行う(ステップ410)。具体的にはステップ313と同様の処理を行う。
【0088】
このように、本実施例においては、IPテレビ電話装置100に備わっているカメラ116を用いて、IPテレビ電話装置100の周辺の映像を撮影し、その撮影した映像に基づいてユーザの安否確認を行っている。したがって、安否確認のために改めて特別な構成を追加する必要がない。また周辺の環境情報に基づいて安否の通知の要否を判断しているので、ユーザが特に意識する必要なく安否確認を行うことができる。
【0089】
なお、上述の実施例においてステップ406で夜間時刻を20時から翌日の3時までとしているが、例えば時計部118や、カレンダー部119の日付データを利用して、夜間時刻を変更するように構成してもよい。具体的には、夏場は夜間時刻を21時から翌日の3時までとし、冬場は夜間時刻を19時から翌日の3時までと変更するよう構成してもよい。
【0090】
また、日付データとともに、設置場所取得部112の設置場所に関する情報を利用して、地域によっても夜間時刻を変更するように構成してもよい。具体的には、日本列島であれば、同じ夏場であっても東の地域が西の地域よりも夜間時刻の開始を少し早めに設定できるよう構成してもよい。
【0091】
また、カレンダー部119において、ユーザが操作部121を介して入力した予定情報を用いて、ユーザが不在にしている日には、安否情報の通知を行わないよう設定できるよう構成してもよい。このようにしておけばユーザが不在の日に安否情報の通知が行われることがないので、より実用的な安否確認を行うことが可能となる。
【0092】
また、本実施例においてはカメラ116から入手した映像データについて、照度を求めて安否情報の通知の要否を判定しているが、映像データから照度を求める他に、例えばカメラ116を用いて撮影した画像を基に、ユーザの画像抽出を行い、ユーザの画像が抽出できたか否かによって安否情報の通知の要否を判定してもよい。
【0093】
また、図3に示した安否確認のフローのように、照度の基準値を設定し、基準値と測定した照度との変化量を算出する構成としてもよい。
【0094】
また、本実施例において電話装置の周辺環境の情報を入手する手段として、IPテレビ電話装置100に備えるマイク113やカメラ116を用いたが、この他に例えば人の動きを感知するための赤外線センサが搭載されているような電話装置であれば、周辺環境の情報を入手する手段として赤外線センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 安否確認システム
100 IPテレビ電話装置
111 制御部
112 音声処理部
113 マイク
114 スピーカ
115 映像処理部
116 カメラ
117 表示部
118 時計部
119 カレンダー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の連絡先へ安否情報の通知を行う機能を有する電話装置であって、
前記電話装置が備える周辺環境情報入手手段により入手した周辺の環境情報に基づいて、前記所定の連絡先へ通知することを特徴とする電話装置。
【請求項2】
前記周辺環境情報入手手段は、前記電話装置が備えるマイクであり、
前記周辺環境情報は、該マイクにより入手した音声データであることを特徴とする請求項1に記載の電話装置。
【請求項3】
前記マイクにより入手した音声データから音圧レベルを求めるとともに、該音圧レベルの基準値を設定し、
該基準値と前記音圧レベルに基づき変化量を算出し、該変化量から前記安否情報の通知の要否を判定し、
前記安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、前記回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、
前記回数が所定回数に達したと判定された場合に、前記安否情報の通知を行うことを特徴とする請求項2に記載の電話装置。
【請求項4】
前記安否情報の通知の要否判定は、閾値と前記変化量との比較により行うことを特徴とする請求項3に記載の電話装置。
【請求項5】
前記安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、
前記所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定であることを特徴とする請求項3または4に記載の電話装置。
【請求項6】
前記周辺環境情報入手手段は、前記電話装置が備えるカメラであり、
前記周辺環境情報は、該カメラにより入手した画像データであることを特徴とする請求項1に記載の電話装置。
【請求項7】
前記電話装置は時計部を備え、
該時計部のデータから夜間時刻か否かを判定し、
該夜間時刻において、前記カメラにより入手した画像データから照度を求め、
該照度と閾値との比較により前記安否情報の通知の要否を判定し、
前記安否情報の通知が必要と判定された回数を計測するとともに、前記回数が所定回数に達したか否かの判定を行い、
前記回数が所定回数に達したと判定された場合に、前記安否情報の通知を行うことを特徴とする請求項6に記載の電話装置。
【請求項8】
前記安否情報の通知の要否判定を一定の時間の間隔で行い、
前記所定回数に達したか否かの判定とは、所定時間に達したか否かの判定であることを特徴とする請求項7に記載の電話装置。
【請求項9】
前記夜間時刻は、日付データを基に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の電話装置。
【請求項10】
前記電話装置は、該電話装置が設置されている場所に関するデータを有しており、
前記設置場所に関するデータと、日付データを基に、前記夜間時刻は変更可能に構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50833(P2013−50833A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188068(P2011−188068)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】