説明

霧化塗装機

【課題】 霧化塗装機において噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を促進する。
【解決手段】 被塗物の側に向けてシェーピングエアAsを噴出するシェーピングエア噴出口5を、塗料噴霧部3に対する正面視で塗料噴霧部3の周囲に環状に配置するとともに、被塗物の側に向けて溶剤蒸発促進用の加熱空気Ah又は除湿空気を噴出するシールドエア噴出口13を、塗料噴霧部3に対する正面視でシェーピングエア噴出口5の環状配置部の周囲に環状に配置する霧化塗装機において、シールドエア噴出口13を、その環状配置部の周方向へ弧状に延びるスリット状開口にして、その環状配置部の全周にわたりほぼ連続させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は霧化塗装機に関し、詳しくは、被塗物の側に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出口を、塗料噴霧部に対する正面視で塗料噴霧部の周囲に環状に配置するとともに、被塗物の側に向けて溶剤蒸発促進用の加熱空気又は除湿空気を噴出するシールドエア噴出口を、前記塗料噴霧部に対する正面視で前記シェーピングエア噴出口の環状配置部の周囲に環状に配置してある霧化塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の霧化塗装機は、塗料噴霧部からの塗料粒子の噴霧パターン(すなわち、噴霧した塗料粒子の飛行域の外郭)をシェーピングエアにより形成するのに対し、上記シールドエア噴出口から溶剤蒸発促進用の加熱空気又は除湿空気を噴出することで、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を促進し、これにより、有機溶剤に比べ蒸発し難い水を溶剤とする水性塗料の使用や塗装室内の温湿度変動などに対して、いわゆるタレやムラなどの塗装不良の発生を防止するようにしたものであるが、従来、この種の霧化塗装機では(図9参照)、シールドエア噴出口13′をシェーピングエア噴出口5の環状配置部の周囲に環状に配置するのに、シールドエア噴出口13′を直径12mm〜16mm程度の円形開口(例えば、円筒状ノズルの先端開口)にして、塗料噴霧部3の正面視で、その円形開口のシールドエア噴出口13′をその開口直径よりも大きなピッチで環状配置部の周方向に等間隔に分散させて配置していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−325860公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の如き従来の霧化塗装機では、シールドエア噴出口13′からの噴出空気流及びシェーピングエア流による誘引により塗装室内の空気が噴霧パターン内に大量に巻き込まれ、この為、シールドエア噴出口13′から加熱空気を噴出する割りに噴霧パターン内の温度が上昇しない、また、シールドエア噴出口13′から除湿空気を噴出する割りに噴霧パターン内の湿度が低下しないといった現象が見られ、溶剤蒸発の促進効果が低いのが実情であった。
【0005】
そして、このように溶剤蒸発の促進効果が低い状況において、タレやムラといった塗装不良を極力防止するのに、上記誘引を助長する方向であるにしても、シールドエア噴出口13′から噴出させる加熱空気や除湿空気の噴出風量、及び、シェーピングエアの噴出風量を大量にする必要があり、その為、被塗物に塗着せずに空気流とともに持ち去られたり空気流とともに被塗物から跳ね返る塗料の量が多くなって、塗着効率が低くなるとともに跳ね返り塗料による塗装機の汚れが増大する問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、シールドエア噴出口に対する合理的な改良により上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕本発明の第1特徴構成は霧化塗装機に係り、その特徴は、
被塗物の側に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出口を、塗料噴霧部に対する正面視で塗料噴霧部の周囲に環状に配置するとともに、
被塗物の側に向けて溶剤蒸発促進用の加熱空気又は除湿空気を噴出するシールドエア噴出口を、前記塗料噴霧部に対する正面視で前記シェーピングエア噴出口の環状配置部の周囲に環状に配置する構成において、
前記シールドエア噴出口を、その環状配置部の周方向へ弧状に延びるスリット状開口にして、その環状配置部の全周にわたりほぼ連続させて配置してある点にある。
【0008】
つまり、この第1特徴構成によれば、円形開口のエアーシールド噴出口をその環状配置部の周方向に分散させて配置する先述した従来の霧化塗装機に比べ、シールドエア噴出口の環状配置部の径は同等程度のもの(すなわち、噴霧パターンの径に応じた最適な径)にしながらも、シールドエア噴出口の開口面積を大きく確保することができて、シールドエア噴出口からの空気の噴出速度を効果的に低速化することができ、また、シールドエア噴出口からの噴出空気流をその横断面視(換言すれば、塗料噴霧部に対する正面視)で周方向に連続する環状のもの(略言すれば、周囲の塗装室内の空気に対して閉じたもの)にすることができ、これらのことにより、シールドエア噴出口からの噴出空気流による塗装室内の空気の誘引を効果的に抑止できて、その誘引による噴霧パターン内への塗装室内空気の巻き込み量を効果的に低減することができる。
【0009】
そして、このことにより、従来の霧化塗装機に比べ、シールドエア噴出口から噴出する加熱空気や除湿空気を噴霧パターン内の温度上昇や湿度低下に効果的に寄与させることができて、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を効果的に促進することができ、また、このように塗料溶剤の蒸発を効果的に促進し得ることで、シールドエア噴出口から噴出させる加熱空気や除湿空気の必要噴出風量、及び、シェーピングエアの必要噴出風量も効果的に低減することができて、これら噴出風量の低減により誘引による噴霧パターン内への塗装室内空気の巻き込み量を一層低減できることからも、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発の促進を一層効果的に達成することができる。
【0010】
すなわち、このことにより、温湿度変動などで低温又は高湿となる塗装室において水性塗料による塗装を行う場合にも、塗装直後における塗膜の固形分率を効果的に高めることができて、従来の霧化塗装機に比べタレやムラといった塗装不良の発生を一層効果的に防止することができ、また、ウエットオンウエット方式で塗装する場合には、上記塗装直後における塗膜固形分率の向上により、前後の塗装工程間における被塗物の乾燥処理(いわゆるフラッシュオフ工程)に要する時間も短くすることができ、そのことで塗装品の生産性を高めるとともに塗装設備の軽小化も可能になる。
【0011】
しかも、上記の如くシールドエア噴出口から噴出させる加熱空気や除湿空気の必要噴出風量、及び、シェーピングエアの必要噴出風量を効果的に低減し得ることで、被塗物に塗着せずに空気流とともに持ち去られたり空気流とともに被塗物から跳ね返る塗料の量も効果的に低減することができ、これにより、従来の霧化塗装機に比べ塗着効率も向上させることができて塗装コスト面及び環境保全面でも有利にし得るとともに、跳ね返り塗料による塗装機の汚れも効果的に軽減してメンテナンス面でも有利にすることができる。
【0012】
なお、第1特徴構成の実施において、塗料噴霧部から噴霧する塗料は水を溶剤とする水性塗料に限らず、有機溶剤系の塗料であってもよく、噴霧した塗料における溶剤の蒸発を要する塗料であれば、どのような塗料であってもよい。
【0013】
また、第1特徴構成は、回転霧化式塗装機に対する適用が極めて好適であるが、必ずしも回転霧化式塗装機への適用に限られるものではなく、エアスプレー式の塗装機や低圧霧化塗装機など、その他の形式の霧化塗装機にも適用できる。
【0014】
〔2〕本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口にフィルタを張設してある点にある。
【0015】
つまり、この第2特徴構成によれば、スリット状開口にしたシールドエア噴出口からの空気の噴出速度を、フィルタの通気抵抗によりシールドエア噴出口の環状配置部の周方向で効果的に均一化することができ、そのことにより、前述の如くシールドエア噴出口の開口面積を大きく確保して空気噴出速度を低速化することと相俟って、シールドエア噴出口からの噴出空気流を一層乱れの少ないものにすることができ、これにより、噴霧パターン内への塗装室内の空気の巻き込みを一層効果的に抑止することができて、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発の促進を一層効果的に達成することができる。
【0016】
また、シールドエア噴出口からの噴出空気流が乱れの少ないものとなることで、被塗物に塗着せずに空気流とともに持ち去られたり空気流とともに被塗物から跳ね返る塗料の量も一層効果的に低減できて、塗着効率の向上及び跳ね返り塗料による塗装機の汚れの低減も一層効果的に達成することができる。
【0017】
なお、第2特徴構成によれば、シールドエア噴出口に張設したフィルタの除塵機能により、被塗物の塗膜に対する塵埃等の付着も一層効果的に防止することができて、その点で塗装品質も向上し得ることは言うまでもない。
【0018】
〔3〕本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口からの空気噴出速度を1.5m/s〜8.0m/sにしてある点にある。
【0019】
つまり、この第3特徴構成によれば、前述した第1特徴構成による効果(塗装直後における塗膜固形分率の向上、塗着効率の向上、塗装機の汚れの軽減等)を特に顕著に得ることができる。
【0020】
すなわち、実験の結果、スリット状開口にしたシールドエア噴出口からの空気の噴出速度を1.5m/sよりも小さくすると、誘引による噴霧パターン内への塗装室内の空気の巻き込みは効果的に抑止されるものの、噴出風速が過小であることで、シールドエア噴出口から噴出した加熱空気や除湿空気そのものの噴霧パターン内への混入が非効率的となり、そのことで、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を促進する効果の向上が低く制限されてしまうことが判明した。
【0021】
また、スリット状開口にしたシールドエア噴出口からの空気の噴出速度を8.0m/sよりも大きくすると、シールドエア噴出口からの噴出空気流による誘引で塗装室内の空気が噴霧パターン内に巻き込まれる傾向が強くなり、そのことで、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を促進する効果の向上が低く制限されるとともに、被塗物に塗着せずに空気流とともに持ち去られたり空気流とともに被塗物から跳ね返る塗料の量も多くなって、塗着効率を高める効果及び塗装機の汚れを防止する効果も低いものになることが判明した。
【0022】
これらの点で、スリット状開口にしたシールドエア噴出口からの空気噴出速度を1.5m/s〜8.0m/sにすれば、また更に好ましくは、2.0m/s〜6.0m/sにすれば、前述した第1特徴構成による効果を特に顕著に得ることができる。
【0023】
〔4〕本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口の開口幅寸法を10.0mm〜20.0mmにしてある点にある。
【0024】
つまり、この第4特徴構成によれば、第3特徴構成と同様、前述した第1特徴構成による効果(塗装直後における塗膜固形分率の向上、塗着効率の向上、塗装機の汚れの軽減等)を特に顕著に得ることができる。
【0025】
すなわち、実験の結果、スリット状開口にしたシールドエア噴出口の開口幅寸法を10.0mmよりも小さくすると、シールドエア噴出口からの空気噴出速度を誘引による噴霧パターン内への塗装室内の空気の巻き込みが十分に抑止される速度範囲にした場合に、シールドエア噴出口からの加熱空気や除湿空気の噴出風量そのものが不足傾向になり、そのことで、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発を促進する効果の向上が低く制限されることが判明した。
【0026】
また、スリット状開口にしたシールドエア噴出口の開口幅寸法を20.0mmよりも大きくすると、シールドエア噴出口からの空気噴出速度を、シールドエア噴出口から噴出した加熱空気や除湿空気の噴霧パターン内への混入が効率的に行われ、かつ、誘引による噴霧パターン内への塗装室内の空気の巻き込みも効果的に抑止される速度にした場合、噴霧パターン内での塗料溶剤の蒸発は効果的に促進されるものの、シールドエア噴出口からの空気の噴出風量(換言すれば、シールドエア噴出口への空気の必要供給風量)がかなり大きくなり、この為、シールドエア噴出口に対する空気供給路の大径化で塗装の際の塗装機の移動動作が難しくなったり、空気の供給装置が大型になって装置コスト面や装置の設置スペース面で不利になるなどの不都合が生じることが判明した。
【0027】
これらの点で、スリット状開口にしたシールドエア噴出口の開口幅寸法を10.0mm〜20.0mmにすれば、また更に好ましくは、12.0mm〜18.0mmにすれば、塗装機の移動動作面や装置コスト面あるいは設置スペース面での不都合を招くことなく、前述した第1特徴構成による効果を特に顕著に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1,図2は塗装作業アーム1(本例では塗装ロボットの作業アーム)に装着した回転霧化式のベル型静電塗装機を示し、2は塗装作業アーム1の先端に取り付けた砲弾形状の塗装機本体、3は塗装機本体2が先端に備える塗料噴霧部としての回転ベル3であり、この回転ベル3の正面視中央には塗料吐出口4を形成してある。また、塗装機本体2の内部には、塗料に対する電圧印加により回転ベル3からの塗料噴霧において塗料粒子を帯電状態で放出させる静電塗装用の電極を設けてある。
【0029】
塗装機本体2の先端部には、被塗物の側(すなわち、回転ベル3が臨む前方側)に向けてシェーピングエアAsを噴出する小孔のシェーピングエア噴出口5を、回転ベル3の正面視で回転ベル3の周囲に環状に配置して多数形成してあり、塗料吐出口4から吐出されて回転ベル3の高速回転により回転ベル3の外縁から霧化状態で放出された塗料の粒子(帯電粒子)は、図3に模式的に示す如く、シェーピングエアAsの噴出流により外郭が形成される噴霧パターンP内を静電気力により対極の被塗物に向かい飛行して被塗物に塗着する。
【0030】
6は塗装機本体2とともに塗装作業アーム1の先端部に装備したエアシールド装置であり、このエアシールド装置6は、図1〜図5に示す如く、回転ベル3よりも若干後方(すなわち、反被塗物の側)において塗装機本体2からは離した状態で塗装機本体2を囲う状態に配置した円環状のノズル部7を備え、このノズル部7はノズル支持部材8を介して塗装作業アーム1の先端近傍部に対し連結固定してある。
【0031】
エアシールド装置6のノズル部7は、ノズル支持部材8にボルト連結するとともに後面側から空気供給ホース9を接続するノズル部本体10と、そのノズル部本体10の前面部に取り付ける蓋状体11とからなり、ノズル部本体10に形成した前向き開口の環状凹部を蓋する状態でノズル部本体10の前面部に蓋状体11を取り付けることにより、内部に環状の空気室12を備える円環状のノズル部7を形成し、この環状の空気室12に対し空気供給ホース9を通じて溶剤蒸発促進用の加熱空気Ah(例えば、外気を60℃程度に加熱した空気)を供給する構造にしてある。
【0032】
そして、ノズル部7の蓋状体11には、環状の空気室12に供給される溶剤蒸発促進用の加熱空気Ahを被塗物の側(回転ベル3が臨む前方側)に向けて噴出するシールドエア噴出口13を、回転ベル3に対する正面視でシェーピングエア噴出口5の環状配置部の周囲に環状に位置させる配置で形成してある。
【0033】
このシールドエア噴出口13は、その環状配置部(すなわち、円環状ノズル部7の前面部)の周方向へ一定の開口幅で弧状に延びるスリット状開口にして、その環状配置部の全周にわたりほぼ連続させる状態に形成してあり、本例の塗装機の場合、具体的には中心角が90°に近い弧状のスリット状開口とした4つのシールドエア噴出口13を同芯の同半径位置で周方向に並べて形成することで、シールドエア噴出口13を円環状ノズル部7の前面部の全周にわたりほぼ連続させる状態(略言すれば、隣り合うシールドエア噴出口13どうしの間の閉塞部が極狭くなる状態)にしてある。
【0034】
また、このシールドエア噴出口13には、蓋状体11の後面側からシールドエア噴出口13の口縁部に当て付ける形態でポリアミド製のフィルタ14を張設してある。
【0035】
つまり、このシールドエア噴出口13から溶剤蒸発促進用の加熱空気Ahを噴出することで、図3に模式的に示す如く、回転ベル3からの塗料噴霧においてシェーピングエアAsにより形成される噴霧パターンPを加熱空気Ahの噴出流をもって囲う状態(換言すれば、加熱空気流により噴霧パターンPを塗装室の室内空気からシールドする状態)にするとともに、その加熱空気Ahを流れ過程で噴霧パターンP内に混入させる状態にし、これにより、噴霧パターンPの内部温度を塗装室の室内空気よりも高温に保つようにして、噴霧パターンPの内部での噴霧塗料中の塗料溶剤の蒸発を促進し、そのことで、塗装直後における塗膜の固形分率を高くしてタレやムラなどの塗装不良の発生を防止する。
【0036】
そして、この塗装機では、上記の如くシールドエア噴出口13を弧状に延びるスリット状開口にして、その環状配置部(円環状ノズル部7の前面部)の全周にわたりほぼ連続させる状態に配置することで、シールドエア噴出口13の開口面積を大きく確保して、シールドエア噴出口13からの加熱空気Ahの噴出速度を低速化し、これにより、シールドエア噴出口13からの加熱空気Ahの噴出流による誘引で塗装室の室内空気が噴霧パターンPの内部に大量に巻き込まれることを抑止して、噴霧パターンPの内部温度を噴出加熱空気Ahにより高温に保つ機能(すなわち、溶剤蒸発の促進機能)を高く安定的に得られるようにしてある。
【0037】
なお、上記構造を採るシールドエア噴出口13の好適寸法例の一つとしては、シールドエア噴出口13の環状配置列の内径D=174mm、シールドエア噴出口13の開口幅W=16mmを挙げることができ、また、この寸法例の4つのシールドエア噴出口13から噴出する加熱空気Ahの噴出風量Qの好適例の一つとしては、噴出風量Q=1.2〜1.6Nm3/minを挙げることができる。
【0038】
図6は上記寸法例の4つのスリット状シールドエア噴出口13から加熱空気Ahを噴出させた場合(実験例1)と、図9に示す如く環状配置部の周方向に等間隔に並べて形成した直径12mmの16個の円形シールドエア噴出口13′から同温度の加熱空気Ahを噴出させた場合(実験例2)と、同じく環状配置部の周方向に等間隔に並べて形成した直径16mmの16個の円形シールドエア噴出口13′から同温度の加熱空気Ahを噴出させた場合(実験例3)と、加熱空気Ahの噴出を行わなかった場合(実験例4)とについて、シェーピングエアAsの噴出風量を900Nl(ノルマルリットル)/minにした場合と300Nl(ノルマルリットル)/minにした場合との夫々における噴霧パターン内部温度の測定結果を示すが、この測定結果からも本例構造のエアシールド装置6を採用すれば、噴霧パターンP内での塗料溶剤の蒸発を他構造に比べ効果的に促進し得ることが判る。
【0039】
15はノズル部7に対する空気供給ホース9の接続部に装備したサイレンサ(消音器)であり、16はノズル部7よりも若干大径のリング部16aとそのリング部16aを塗装機本体2に対し連結固定する放射状配置のスポーク部16bとからなる構造にしてノズル部7の前方近傍箇所に配置した金属製の塗料付着防止具であり、この塗料付着防止具16を浮遊状態にある帯電塗料粒子に対して電気的に反発作用させることにより、空気流の影響や静電気的な影響でノズル部7の側に戻る浮遊塗料粒子がノズル部7に付着するのを防止する。
【0040】
ノズル支持部材8は、塗装作業アーム1の先端近傍部に装備した金属製のフランジ部材17に対して塗装作業アーム1の先端近傍部に外嵌させた状態でボルト18により連結する支持フランジ部19と、この支持フランジ部19に対し基端部をボルト20により連結固定することで塗装機本体2に沿わせた姿勢に保持するブラケット部21とからなり、円環状のノズル部7は、ブラケット部21の先端部に対しボルト22により連結固定することで塗装機本体2を囲う離間同芯状態に保持するようにしてある。
【0041】
円環状のノズル部7、並びに、ノズル支持部材8を構成する支持フランジ部19及びブラケット部21の夫々は、浮遊状態の帯電塗料粒子が付着し難い素材であるポリテトラフルオロエチレン(又はその化合物)で全体を形成してあり、これにより、塗料付着防止具16との協働でエアシールド装置6の各部(特にノズル部7)に対する浮遊塗料粒子の付着を極力防止して、付着塗料を除去する清掃作業の負担を軽減するとともに、付着塗料が剥離飛散して被塗物に付着することによる塗装不良の発生をより確実に防止するようにしてある。
【0042】
また、金属製の塗料付着防止具16にはポリテトラフルオロエチレン(又はその化合物)の表面被覆を施してあり、これにより、塗料付着防止具16そのものに対する浮遊塗料粒子の付着も併せ防止するようにしてある。
【0043】
ノズル部7及びノズル支持部材8におけるボルト連結部のうち、支持フランジ部19の金属製フランジ部材17に対するボルト連結部については、図7に示す如く、ボルト孔23aに装着したボルト18のボルト頭18aを収容するボルト頭収容穴23bを、その内周面と収容したボルト頭18aの外周面との間に空隙が形成される穴径で支持フランジ部19におけるボルト孔23aの入口部に形成し、そして、ボルト頭18aよりも大径のワッシャ24をボルト頭収容穴23bの穴底とボルト頭18aとの間に介在させた状態で、ボルト18をボルト孔23aに装着する構造にしてある。
【0044】
また、ブラケット部21の支持フランジ部19に対するボルト連結部については、図8に示す如く、隣り合う2つのボルト孔25aに装着した2本のボルト20のボルト頭20aを1つの穴内に収容するボルト頭収容穴25bを、2つのボルト孔25aの入口部に跨らせた状態でブラケット部21の基端部に形成し、そして、2つのボルト挿通孔26aを形成したワッシャ26をそれらボルト挿通孔26aに挿通した2本のボルト20夫々のボルト頭20aとボルト頭収容穴25bの穴底との間に介在させた状態で、2本のボルト20を隣り合う2つのボルト孔25aに装着する構造にしてある。
【0045】
つまり、これらのボルト連結部では、ボルト頭18aよりも大径のワッシャ24や2つのボルト挿通孔26aを形成した大型なワッシャ26をボルト頭18a,20aとボルト頭収容穴23b,25bとの間に介在させることで、それらワッシャ24,26によりボルト18,20の締め付け力をボルト頭収容穴23b,25bの穴底に対し面積的に広く分散させた状態で作用させるようにし、これにより、ノズル部7の重量が塗装作業アーム2の動作により交番荷重となって掛かる支持フランジ部19及びブラケット部21を軟質のポリテトラフルオロエチレン(又はその化合物)で形成する構成を採りながらも、ボルト18,20の締め付け力を大きくして、それらボルト連結部の連結強度を大きく確保できるようにしてある。
【0046】
なお、これらボルト連結部においては金属製のボルト18,20を使用している。また、ブラケット部21の支持フランジ部19に対するボルト連結部については、大きなボルト頭収容穴25bが斜め前方向きに開口することとなることから、ボルト頭20bを収容した状態のボルト頭収容穴25bを閉塞するキャップ27を設け、このキャップ27もポリテトラフルオロエチレン(又はその化合物)で形成することで塗料粒子の付着をより確実に防止するようにしてある。
【0047】
また同様に、ノズル部7における蓋状体11のノズル部本体10に対するボルト連結部についても、ボルト頭収容穴28aが前方向きに開口することとなることから、ポリテトラフルオロエチレン(又はその化合物)で形成したキャップ29によりボルト頭収容穴28aを閉塞するようにしてある。
【0048】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
前述の実施形態では、シールドエア噴出口13から溶剤蒸発促進用の空気Ahとして加熱空気を噴出する例を示したが、これに代え、除湿空気や除湿加熱空気を溶剤蒸発促進用の空気Ahとしてシールド噴出口13から噴出させるようにしてもよい。
【0049】
シールドエア噴出口13を形成したノズル部7の支持構造は前述の実施形態で示した如き構造に限られるものではなく、種々の構成変更が可能である。
【0050】
前述の実施形態では、塗装ロボットの作業アームに塗装機本体2を装着する例を示したが、塗装機本体2を装着する塗装作業アームは、自動塗装装置における上下動アームや横移動アームなどであってもい。
【0051】
本発明の塗装機により塗装する被塗物は、自動車ボディ、家電製品のケーシング、列車のボディなど、どのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】塗装機の一部破断側面図
【図2】塗装機の正面図
【図3】塗料噴霧状態を模式的に示す側面図
【図4】エアシールド装置の下面図
【図5】エアシールド装置の後面図
【図6】測定結果を示す表
【図7】ボルト連結部の構造を示す断面図
【図8】ボルト連結部の構造を示す断面図
【図9】従来のシールドエア噴出口を示す正面図
【符号の説明】
【0053】
As シェーピングエア
5 シェーピングエア噴出口
3 塗料噴霧部
Ah 溶剤蒸発促進用の加熱空気又は除湿空気
13 シールドエア噴出口
14 フィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物の側に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出口を、塗料噴霧部に対する正面視で塗料噴霧部の周囲に環状に配置するとともに、
被塗物の側に向けて溶剤蒸発促進用の加熱空気又は除湿空気を噴出するシールドエア噴出口を、前記塗料噴霧部に対する正面視で前記シェーピングエア噴出口の環状配置部の周囲に環状に配置してある霧化塗装機であって、
前記シールドエア噴出口を、その環状配置部の周方向へ弧状に延びるスリット状開口にして、その環状配置部の全周にわたりほぼ連続させて配置してある霧化塗装機。
【請求項2】
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口にフィルタを張設してある請求項1記載の霧化塗装機。
【請求項3】
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口からの空気噴出速度を1.5m/s〜8.0m/sにしてある請求項1又は2記載の霧化塗装機。
【請求項4】
スリット状開口にした前記シールドエア噴出口の開口幅寸法を10.0mm〜20.0mmにしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の霧化塗装機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−272220(P2006−272220A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97336(P2005−97336)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】