説明

霧化装置

【課題】長時間あるいは長期に亘る使用においても安定した水の供給が行われ、部材の交換又は保守点検が不要あるいはほとんど不要である霧化装置を提供する。
【解決手段】霧化装置1Aは、圧電振動子10において圧電素子11の振動によって振動部12を振動させ、振動部12の先端面12Fに付着した液体Wを霧化する。液体Wは、液体供給用容器20に溜められて振動部12に向けて流出し、振動部12の先端面12Fを流れることによって、先端面12Fに付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子において圧電素子で振動部を振動させて、液体を霧化する霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子を用いて霧を発生させる超音波加湿器は実用化されている。
図12は振動子を用いて超音波により水から霧を発生させる(霧化する)一例としての方法を図解した図である。
圧電振動子100は、圧電素子101と、振動部102と、固定部(又は基部)103とを有する。圧電素子101と振動部102とは固定部103を介して接続されている。
振動部102は、図解の例示において、断面が湾曲している湾曲部102Aと、断面が平坦な円柱状部102Bとを有する。円柱状部102Bの先端面102FをY方向から見たとき、円柱状部102Bの形状は断面積が一定の円であり、湾曲部102Aの断面形状は固定部103から円柱状部102Bに向かって断面積が減少する円である。
圧電素子101は、例えば、圧電セラミックであり、圧電素子101に励起電圧が印加されると矢印A1で示した方向に振動子の固有振動数で振動部102を伸縮振動させる。
【0003】
振動部102の円柱状部102Bの先端面102Fに霧化のための水を提供するため、先端面102Fの下部には円柱形の水供給用綿150が接触している(特許文献1参照)。水供給用綿150は底部が図示しない貯水部に浸漬しており、綿の毛細管現象により水供給用綿150の頂面まで水Wを吸い上げる。水供給用綿150の頂部に吸い上げられた水Wが、圧電振動子100の励起に伴う振動部102の円柱状部102Bの振動により、円柱状部102Bの先端面102Fの面に沿って上昇し、さらに、円柱状部102Bの先端面102Fの面に付着した水Wは、振動部102の高速な振動に伴う円柱状部102Bの矢印A2で示す方向の高速振動によって霧化され、矢印160方向へ噴射される。
【0004】
上述した霧化方法に従って製造された、超音波霧化装置、超音波攪拌装置、超音波洗浄器などの装置が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2,544,634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
毛細管現象を利用した水供給用綿150によって振動部102の円柱状部102Bの先端面102Fに霧化の対象となる水を導く霧化装置において、長期間連続運転すると、高速に振動する振動部102の円柱状部102Bと接触している水供給用綿150が磨耗及び/又は変形し、円柱状部102Bと水供給用綿150の接触が少なくなり、水供給用綿150による円柱状部102Bの先端面102Fの面への給水性が低下する。その結果、振動部102で発生される霧の量が低下する、すなわち、霧化性能が低下する。
さらに水供給用綿150の磨耗及び/又は変形が進んで円柱状部102Bと水供給用綿150の接触が完全に無くなると水供給用綿150による円柱状部102Bの先端面102Fの面への給水が停止し、霧化による霧の発生が停止する。
【0007】
したがって、振動部の先端面に霧化の対象となる水を導く霧化装置において、長時間、あるいは長期に亘る使用においても安定した水の供給が行われ、さらには、長時間あるいは長期間にわたって連続運転しても、霧化装置に用いる部材の交換又は保守点検が不要あるいはほとんど不要(メンテナンス・フリー)である霧化装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電素子と当該圧電素子に接続された振動部とを有し、前記振動部の先端面に付着した液体を霧化する圧電振動子と、前記振動部の前記先端面に前記液体を流して供給する液体供給手段とを有する霧化装置である。
【0009】
好ましくは、前記液体供給手段は、前記液体を溜めて前記振動部に向けて流出する液体供給用容器である。
【0010】
好ましくは、前記液体供給手段は、前記振動部の下方に設けられた前記液体を溜める液体貯留用容器と、前記液体を吸入して前記振動部に向けて流出するポンプとを有する。
【0011】
好ましくは、前記液体供給手段は、前記振動部の上方に設けられた結露部を有し、前記結露部に結露した前記液体を前記振動部に向けて流出するように構成される。
【0012】
好ましくは、上記霧化装置において、前記圧電振動子には貫通孔が形成され、前記貫通孔の一端は前記振動部の前記先端面に形成され、前記液体供給手段から流出した前記液体を前記貫通孔の他端から前記貫通孔に流すように構成される。
【0013】
好ましくは、上記霧化装置は、前記振動部の上方に設けられて、前記液体供給手段から流出した前記液体を集めて前記振動部の前記先端面に流す液体供給補助部を有する。
【0014】
また、本発明は圧電素子と当該圧電素子に接続された振動部とを有し、前記振動部の先端面に付着した液体を霧化する圧電振動子と、前記振動部を冷却して前記振動部に前記液体を結露させる冷却手段とを有し、前記振動部に結露した前記液体が前記振動部の前記先端面に付着して霧化するように構成される霧化装置である。
【0015】
好ましくは、前記冷却手段は、前記振動部へ送風する送風装置である。
好ましくは、前記冷却手段は、前記振動部から吸熱するようにして設けられたペルチェ素子である。
好ましくは、前記冷却手段は、冷却された媒体を前記振動部に供給する熱交換器である。
【0016】
好ましくは、上記霧化装置において、前記振動部の上面に前記先端面まで達する液体誘導溝が形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の霧化装置においては、上述した水供給用綿などのように磨耗/変形する消耗部材を用いていないため、磨耗/変形に伴う給水機能の停止といった不都合が解消でき、長時間、あるいは長期に亘る使用においても安定した水の供給を行うことができる。
さらに、上述の如く、消耗部材の交換が不要であり、保守もほとんど不要(メンテナンス・フリー)である。
また、本発明の霧化装置は、基本的に保守・交換部材がないので、霧化装置の周囲に部品交換を見込んだスペースを必要とせず、任意の位置に配設することができ、コンパクトに構成することができる。
さらに、本発明の霧化装置は、振動部の先端面に供給された過剰な液体は下方に流れ落ちるため、液体の過剰供給による霧(ミスト)の生成不良が抑制され、安定して適正な霧(ミスト)を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)は本発明の第1実施の形態における霧化装置の側面図であり、図1(B)は図1(A)の霧化装置における圧電振動子と液体供給用容器との配置の一例を示す部分拡大図である。
【図2】霧化対象液体を水とした場合の、圧電振動子における振動部の先端の面に付着する水滴の粒子径と、霧化される量の累積体積との関係を示すグラフである。
【図3】図3(A)は本発明の第1実施の形態の第1変形態様における霧化装置の側面図であり、図3(B)は振動部に形成された導水溝の一例を図示した圧電振動子の上面図であり、図3(C)は導水溝の他の一例を図示した圧電振動子の上面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態における霧化装置の側面図である。
【図5】本発明の第2実施の形態の第1変形態様における霧化装置の側面図である。
【図6】図6(A)は本発明の第3実施の形態における霧化装置の側面図であり、図6(B)は図6(A)に示す霧化装置における結露板の正面図である。
【図7】図7(A)は本発明の第4実施の形態における霧化装置の側面図であり、図7(B)は振動部に設けられた貫通孔の他の形態を示す圧電振動子の側面図である。
【図8】図8(A)は本発明の第5実施の形態における霧化装置の側面図であり、図8(B)は図8(A)に示す霧化装置における圧電振動子の正面図である。
【図9】本発明の第6実施の形態における霧化装置の側面図である。
【図10】本発明の第7実施の形態における霧化装置の中心軸を通る面における断面図である。
【図11】本発明の第8実施の形態における霧化装置を模式的に示す図である。
【図12】従来の霧化装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の霧化装置における好適な実施の形態について添付図面を参照して述べる。なお、本発明の一例として霧化の対象とする液体を水として説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
(第1実施の形態)
図1を参照して、本発明の霧化装置における第1実施の形態である霧化装置1Aについて述べる。図1(A)は、霧化装置1Aの側面図である。図1(B)は、図1(A)における圧電振動子10と液体供給用容器20との配置の一例を示す部分拡大図である。
【0021】
霧化装置1Aは、圧電振動子10及び液体供給用容器20を有する。
圧電振動子10は、例えば、図1に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。
圧電素子11は、励起電圧が印加されると変形する圧電体であり、例えば、圧電セラミックである。圧電素子11は、中心軸Xの方向に沿って分極されて図示省略する電極が設けられ、この電極に図示省略する励起回路が接続される。これにより、励起回路によって電極を介して圧電素子11に励起電圧を印加することで、圧電素子11は、中心軸Xと同一方向である矢印A1の方向に振動する。
圧電素子11は、図1の例示では円柱形であり、中心軸Xに直交する方向における断面が円形である。
【0022】
振動部12は、図1の例示では、湾曲部12aの一端に先端面12Fが形成され、他端に固定部(又は基部。以下同じ。)12bが一体に設けられる。固定部12b側の端面12c(先端面12Fと反対側の平面)には、圧電素子11が結合される。
湾曲部12aは、中心軸Xに直交する方向における断面が円形であり、中心軸Xに沿って固定部12bから先端面12F側に離れるにつれて、側面が湾曲するように断面の直径が小さくなる。これにより、振動部12は、先端面12F側が細くなったホーンの形状になっている。
【0023】
先端面12Fの表面は、水Wが可能な限り広がって付着するように、例えば、平坦に形成されている。
固定部12bは、圧電振動子10を固定する部分である。例えば、圧電振動子10は、固定部12bによって、図示省略する緩衝部材やシール部材を介して機械製品の壁体(図示省略)などに固定される。なお、固定部12bは、湾曲部12aと別に製造されて、結合されてもよい。
ここでは、圧電振動子10をその中心軸Xが水平方向となるようにして固定しているが、中心軸を水平方向に対して傾斜させて固定しても良い。また、圧電振動子10を固定した壁体などの角度を調節可能とすることで、圧電振動子10の上下又は左右方向の向きを変えることもできる。
【0024】
液体供給用容器20について説明する。
液体供給用容器20は、貯水部21及び流出部22を有する。
貯水部21は、円錐台の底面側を上側に、上面側を下側にして配置された中空の円錐台である。貯水部21には上部(円錐台の底面に相当する部分)及び下部(円錐台の上面に相当する部分)を開口した空間21aが内部に形成される。
空間21aには、図示しない補水装置により、上部の開口部から補水される。補水装置は、例えば、空間21aに設けられた水位検出センサからの出力に基づき、補水用ポンプにより水Wを供給する構成にすることができる。
【0025】
流出部22は、内部を貫通する流体供給孔22aが形成された管状部材である。流出部22は、長手方向を上下方向にして配置され、流体供給孔22aと貯水部21の空間21aとを連続させて、上端が貯水部21の下端と結合される。これにより、貯水部21に溜められた水Wが、流体供給孔22aを通って下部に流出するようになっている。
霧化装置1Aでは、流体供給孔22aは、断面が一定の円形で形成されている。流体供給孔22aの内径Dは、振動部12の先端面12Fの直径d以下とすることが好ましい。これによれば、振動部12に過剰な水Wが流出して、水Wによる振動部12の振動に対する抵抗が増大することが防止される。
なお、流体供給孔22a及び/又は振動部12の先端面12Fの形状が円形以外の場合には、流出部22の流体供給孔22aの断面積が振動部12の先端面12Fの面積以下となるようにすることで、同様の効果を得ることが可能である。
【0026】
流体供給孔22aには、内径Dの大きさを変更するなど、流量を調節可能にする絞りが設けられていることが好ましい。これによれば、絞りを調節することによって流出部22における水Wの流量が変化して、振動部12の先端面12Fに供給される水量が変わるため、霧化装置1Aにおける霧の発生量を調節することができる。
【0027】
液体供給用容器20は、流体供給孔22aの内径Dの寸法設定又は内径Dの絞りによる調節によって、流出部22から流出する水Wを水滴として滴下させることが好ましい。これによれば、振動部12の振動の伝播が水滴に限定され、液体供給用容器20の水Wに伝播しない。そのため、振動部12の振動に対する水Wによる抵抗を抑制することができる。
【0028】
液体供給用容器20は、流出部22から流出した水Wが圧電振動子10の振動部12の先端面12Fを流れるように配置されて、霧化装置1Aを備える機械製品などに取り付けられる。
液体供給用容器20は、好ましくは圧電振動子10における振動部12の先端面12F近傍上方に配置される。より好ましくは、図1(A)に二点鎖線で示すとおり、液体供給用容器20の流出部22を圧電振動子10の振動部12の先端に合わせて配置する。これによれば、液体供給用容器20から流出した水Wが、先端面12F直近の振動部12で受けられて先端面12Fに多く流れるため、十分な水量を先端面12Fに供給することが可能である。
【0029】
なお、圧電振動子10が水平方向に対して傾けられている場合には、液体供給用容器20は、振動部12の上方に、振動部12の先端となる先端面12Fの上端又は下端に流出部22(滴下位置)を合わせて配置される。また、圧電振動子10の傾きが上下方向に調節可能な場合には、液体供給用容器20の位置は、圧電振動子10の傾きに連動して、流出部22が振動部12の先端に配置されるようにして調節されることが好ましい。
【0030】
霧化装置1Aの寸法の一例を示す。
図1(B)に示す液体供給用容器20の流出部22の下端と振動部12の先端面12Fの上端との距離Lは、振動部12の先端面12Fの直径dが3mmである圧電振動子10では、10mm程度とすることが好ましい。これによれば、液体供給用容器20から水Wを水滴にして滴下させる場合に、流出部22から滴下する前の水滴が圧電振動子10の振動部12に接触しないため、水滴の生成が可能である。また、この高さであれば、水滴又は流出した水が振動部12で飛散することが抑制される。そのため、振動部12の先端面12Fに水Wを良好に供給することができる。
【0031】
霧化装置1Aの作動について説明する。
霧化装置1Aでは、液体供給用容器20の貯水部21に図示しない補水装置から補水することで、貯水部21に水Wが溜められる。貯水部21の水量は、補水装置の制御により所定量に保たれる。
貯水部21に溜められた水Wは、流出部22の流体供給孔22aを通って振動部12に流出して先端面12Fを流れ、先端面12Fに付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0032】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11が矢印A1方向に振動して、振動部12を圧電振動子10の中心軸Xと同一方向である矢印A2方向に、圧電振動子10の固有振動数で高速に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、圧電振動子10の中心軸Xと同一方向である矢印A3を中心にして、先端面12Fから前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0033】
この霧化は、振動部12の先端面12Fに水Wが付着している限り連続して行われる。そのため、貯水部21の貯水を維持することで、液体供給用容器20から絶えず水Wが振動部12の先端面12Fに供給されて付着し、長時間あるいは長期に亘る霧化発生が連続かつ安定して行える。
【0034】
本実施の形態においては、例えば、図12に例示した水供給用綿150のような振動部12に水Wを提供する手段として、振動部12と接触し、振動部12の高速振動による磨耗及び/又は劣化する部材を用いていないので、そのような部材の交換作業が不要となり、基本的に保守作業の要らないメンテナンス・フリーの霧化装置を提供できる。
また、上述した霧化装置1Aにおいては、例えば、水供給用綿150の交換作業のためのスペースあるいは構成が不要であり、霧化装置1Aを小型かつ簡易な構成にできる。さらに、例えば、霧化装置1Aの周囲に水供給用綿150の交換作業のためのスペースを確保する必要がなく、このことは、霧化装置1Aを設置する設置場所において制約を受けることが少ないという利点を有する。
さらに、霧化装置1Aでは、振動部12の先端面12Fに過剰な水Wが流れた場合であっても、先端面12Fに付着可能な水量以上の水Wは落下するため、霧(ミスト)の生成不良が抑制され、安定して適正な霧(ミスト)を発生させることができる。
【0035】
図2は、霧化装置1Aにおいて霧化対象液体を水Wとした場合の、振動部12における先端面12Fの表面から霧化される霧の粒子径と累積体積及び体積頻度との関係を示すグラフである。
圧電振動子10の振動条件、能力、性能及び周辺の湿度などにも依存するが、圧電振動子10の振動周波数を約200KHzとした場合、通常10〜20μm程度の粒子径(直径)の水の粒(ミスト)が一番多く生成されることが確認できた。そのような霧は指向性が強く、図1において矢印A3で示す如く振動部12の中心軸Xに沿うようにしながら前方に多く進む。換言すると、最適な粒子径の霧は、到達距離が長く、加えて振動部12を若干上方(略5°程度)に傾斜させることによってその到達距離をさらに長くすることができる。
【0036】
(第1実施の形態の第1変形態様)
図3(A)〜(C)を参照して本発明の第1実施の形態の第1変形態様である霧化装置1Bについて、図1に示した第1実施の形態の霧化装置1Aとの相違を中心に述べる。
図3(A)は、霧化装置1Bの側面図である。図3(B)は、振動部12に形成された導水溝12dの一例を図示した圧電振動子10の上面図である。図3(C)は、導水溝12dの他の一例を図示した圧電振動子10の上面図である。
【0037】
霧化装置1Bは、圧電振動子10及び液体供給用容器20を有する。
圧電振動子10は、例えば、図3(A)に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。圧電素子11については、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0038】
振動部12は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成に加えて、上面に導水溝12dが形成されている。ここで、導水溝12dは、本発明における液体誘導溝の一例であり、液体供給用容器20から振動部12に流出した水Wを振動部12の先端面12Fに導く部分である。
導水溝12dとしては、所定の幅及び深さで一つ又は複数の溝が、振動部12の表面に沿って固定部12b又は固定部12bと先端面12Fとの間から先端面12Fまで形成される。
【0039】
例えば、図3(B)に示すように、導水溝12dとして一つの溝を固定部12bから先端面12Fまで形成する。この場合、導水溝12dに滞留している空気の抵抗、導水溝12dの底面との摩擦抵抗などにより、導水溝12dにおける水Wの流量が低減される。そのため、導水溝12dは、必要な水量が流れる大きさに設定される。例えば、実験によれば、振動部12の先端面12Fの直径dが3mmである圧電振動子10では、幅2mm以上の導水溝12dを形成することで、導水溝12dを通って十分な水Wを先端面12Fに導くことができる。必要に応じて、導水溝12dの表面に加工を施し、水Wの流れがより円滑となるようにすることもできる。
【0040】
又は、図3(C)に示すように、導水溝12dとして細い溝(以下「毛細管」という。)を先端面12Fまで形成し、毛細管現象を利用して水Wを先端面12Fに導く。図3(C)の例示では、導水溝12dは、液体供給用容器20から水Wが流出する部分に形成された水Wを受ける凹部と、凹部から先端面12Fまで形成された3本の毛細管からなる。水Wは、一部が凹部から毛細管現象により毛細管を通って、先端面12Fに到達する。残りの水Wは、毛細管を通った水Wに導かれて、振動部12の表面を凹部から先端面12Fに流れる。
【0041】
液体供給用容器20は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の形状であり、貯水部21及び流出部22を有するが、霧化装置1Aと異なり、振動部12の先端面12Fから離れて、振動部12に形成された導水溝12dの上方に配置される。
【0042】
霧化装置1Bの作動について説明する。
液体供給用容器20は、図示しない補水装置から貯水部21に補水され、溜められた水Wが流出部22の流体供給孔22aから振動部12に向けて流出する。流出した水Wは、振動部12に形成された導水溝12dに到達し、導水溝12dを通って先端面12Fに流れて、先端面12Fに付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0043】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0044】
このように、振動部12に導水溝12dを形成することによって、水Wが導水溝12dによって先端面12Fに導かれるため、水Wが先端面12Fを通らずに振動部12の側面(先端面12Fに隣接する面)から下方に流出することが抑制される。したがって、振動部12の先端面12Fに水Wを効率良く供給することができる。
また、導水溝12dの上方であれば、液体供給用容器20を振動部12の先端面12Fから離して配置することができる。そのため、霧化装置1Bの配置に関して設計の自由度が向上する。
【0045】
(第2実施の形態)
図4を参照して本発明の第2実施の形態である霧化装置1Cについて、図1に示した第1実施の形態の霧化装置1Aとの相違を中心に述べる。
図4は、霧化装置1Cの側面図である。
霧化装置1Cは、圧電振動子10、容器31及びポンプ32を有する。ここで、容器31は、本発明における液体貯留用容器の一例である。
圧電振動子10は、例えば、図4に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。これらについては、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0046】
容器31は、底面31a及び側面31bにより上部が開口された空間31cが内部に形成される。容器31は、図示しない補水装置により上部の開口部から空間31cに補水されて、水Wが溜められる。補水装置は、例えば、空間31cに設けられた水位検出センサからの出力に基づき、補水用ポンプにより水Wを供給する構成にすることができる。
容器31は、圧電振動子10の振動部12の下方に配置される。
【0047】
ポンプ32は、吸入口(図示省略)を容器31に溜められた水Wに浸漬し、吐出口32aを上方に向けて容器31に設けられる。ポンプ32は、水Wを圧電振動子10の振動部12に流出し、この水Wが振動部12の先端面12Fを流れるようにして配置される。
【0048】
霧化装置1Cの作動について説明する。
容器31は、図示しない補水装置から空間31cに補水されて、所定量の水Wが溜められる。ポンプ32は、作動して容器31に溜められた水Wを吸水し、吐出口32aから振動部12に水Wを流出する。流出された水Wは、先端面12Fに直接到達し、又は振動部12を流れて先端面12Fに到達して先端面12Fを流れ、先端面12Fに付着する。これにより振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは下方に落下し、再び容器31に溜められる。
【0049】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0050】
このように、霧化装置1Cは、圧電振動子10の振動部12の下方に容器31を有することによって、霧化されなかった水Wが容器31で回収され、ポンプ32により再度振動部12に流出されるため、水Wを効率良く用いることができる。
【0051】
霧化装置1Cは、振動部12の先端面12Fに供給する水量の調節手段を有することが好ましい。この調節手段としては、例えば、ポンプ32の吐出量を調節可能にする。これによれば、振動部12の先端面12Fに供給する水量を調節することで、霧化装置1Cにおける霧(ミスト)の発生量を調節することができる。
さらに、水量調節の一つとして、ポンプ32を断続運転することも好ましい。かかる場合は、連続給水状態と異なって先端面12Fに水Wが付着した状態が得られ、霧(ミスト)を遠くに噴出させることができる。つまり、連続給水状態では、常に先端面12Fおよびその周囲に必要以上の水Wが存在することになり、その結果、振動部12に必要以上の負荷がかかり、霧(ミスト)の噴出作用を阻害してしまうことがあるが、断続運転であれば、かかる弊害も抑制できる。
また、断続運転とする制御回路は、タイマー機能を具備する回路などによって容易に実施することができる。
さらに、ポンプ32の動作と振動部12の動作を連動させ、ポンプ32の停止時に振動部12が振動するように制御することにより、動作効率が向上し、消費電力の抑制に供することができる。
【0052】
(第2実施の形態の第1変形態様)
図5を参照して本発明の第2実施の形態の第1変形態様である霧化装置1Dについて、図4に示した第2実施の形態の霧化装置1Cとの相違を中心に述べる。
図5は、霧化装置1Dの側面図である。
霧化装置1Dは、圧電振動子10、容器31及びポンプ33を有する。
圧電振動子10は、例えば、図5に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。これらについては、上述した第2実施の形態の霧化装置1Cと同一の構成であるため、説明を省略する。なお、振動部12には、第1実施の形態の第1変形態様である霧化装置1Bにおける振動部12と同様に、導水溝12dが形成されている。
また、容器31は、上述した第2実施の形態の霧化装置1Cと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0053】
ポンプ33は、吸入口(図示省略)を容器31に溜められた水Wに浸漬し、配管33aを取り回して、吐出口33bを圧電振動子10の振動部12の上方において下方に向けて配置して容器31に設けられる。
なお、ポンプ33は、例えば吸入口にホースを接続し、ホース先端を容器31に溜められた水Wを吸入するようにして容器31に配置することで、容器31の外部に設けることも可能である。
【0054】
霧化装置1Dの作動について説明する。
容器31は、図示しない補水装置から空間31cに補水されて、所定量の水Wが溜められる。ポンプ33は、作動して容器31に溜められた水Wを吸水し、吐出口33bから下方に水Wを流出する。流出された水Wは、振動部12の導水溝12dによって先端面12Fに導かれて先端面12Fを流れて、先端面12Fに付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは下方に落下し、再び容器31に溜められる。
【0055】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0056】
このように、霧化装置1Dは、圧電振動子10の下方に容器31を有し、ポンプ33で上方から振動部12の先端面12Fに水Wを供給することによって、霧化されなかった水Wが容器31で回収されるため水Wを効率良く用いることができるとともに、水Wの供給が少量であっても重力により先端面12Fに水Wを供給することが可能である。
【0057】
また、圧電振動子10の振動部12に導水溝12dを設けることで、本発明の第1実施の形態の第1変形態様における霧化装置1Bと同様に、先端面12Fに効率良く水Wが供給される。
なお、霧化装置1Dにおいても、上述した第2実施の形態の霧化装置1Cと同様に、例えば、ポンプ33の吐出量を調節可能にして、振動部12の先端面12Fに供給する水Wの量を調節することによって、霧化装置1Dにおける霧(ミスト)の発生量を調節することができる。
また、ポンプ33は、吐出量を調節することによって、吐出口33bから流出する水Wを水滴として滴下させることが好ましい。これによれば、振動部12の振動の伝播が水滴に限定されるため、振動部12の振動に対する水Wによる抵抗を抑制することができる。
【0058】
(第3実施の形態)
図6を参照して本発明の第3実施の形態である霧化装置1Eについて述べる。
図6(A)は、霧化装置1Eの側面図である。図6(B)は、霧化装置1Eにおける結露板41の正面図である。なお、図6(B)では、結露板41に結露した水Wを省略して示す。
【0059】
霧化装置1Eは、圧電振動子10及び結露板41を有する。ここで、結露板41は、本発明における結露部の一例である。
圧電振動子10は、例えば、図6に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。圧電振動子10については、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0060】
結露板41は、平板形状であり、霧化装置1Eでは平面41aを正面側に向けて配置される。平面41aは、図6(B)に示すように、下端において中央部が下方に突出した突出部41bを有する。結露板41は、表面積によって結露する水量が変化する。そのため、表面積、特に平面41aの面積によって、振動部12の先端面12Fへ供給される水量を調節することができる。
【0061】
結露板41は、表面に結露した水Wが下方に流出して、圧電振動子10の振動部12の先端面12Fを流れる位置で、霧化装置1Eを備える機械製品などに取り付けられる。
結露板41は、好ましくは、図6(A)に二点鎖線で示すとおり、平面41aを圧電振動子10の振動部12の先端に合わせて配置する。これによれば、結露板41から流出した水Wが、先端面12F直近の振動部12で受けられて先端面12Fに多く流れるため、十分な水量を先端面12Fに供給することが可能である。
結露板41の材料は、例えば表面が滑らかに加工され、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属あるいは熱伝導性が高く、表面が滑らかな樹脂材料が好ましい。また、必要に応じて、結露板41に表面処理を施すこともできる。例えば、結露板41の表面に撥水処理を施すことで、結露板41に結露した水Wの流出をより円滑にすることができる。また、結露板41の表面に防錆及び/又は防食処理を施すことで、結露板41の耐久性を向上させるとともに、水Wへ錆等による不純物が混入して霧(ミスト)の質が低下することを抑制することができる。
【0062】
霧化装置1Eの作動について説明する。
結露板41は、霧化装置1Eにおける空気の温度及び湿度によって、表面に水Wが結露する。結露した水Wは、重力により結露板41から振動部12に流出して先端面12Fを流れて、先端面12Fに付着する。これにより振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0063】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0064】
このように、霧化装置1Eでは、液体供給手段として結露板41を用いることで、水Wの補給装置が不要となる。そのため、霧化装置1Eの部品点数が削減されて、生産価格を低減することができる。
また、結露した水Wを用いることで、水Wに不純物が含まれないため、良質な霧(ミスト)を発生させることができる。
【0065】
特に、結露板41に突出部41bを設けることで、結露した水Wが突出部41bの下端に集まって流出する。したがって、水Wを振動部12の所望の位置に供給することができるため、振動部12の先端面12Fに効率的に水Wが供給される。
【0066】
なお、霧化装置1Eに結露板41の冷却手段を設けることで、結露板41へ水Wを効率的に結露させることができる。冷却手段としては、例えば、送風装置や冷風装置などによる冷却、ペルチェ素子による電気的な冷却、熱交換機で冷却された媒体を供給することによる冷却などである。これらの例示については、後述する実施の形態と同様にして行うことができる。
また、これらの冷却手段では、冷却の調節手段を有することで、結露板41に結露する水量が調節されて、振動部12の先端面12Fに供給される水量が調節されるため、霧化装置1Eにおいて霧(ミスト)を所望の量で発生させることができる。
霧化装置1Eでは、温度、湿度又は冷却手段を調節することによって、結露板41から流出する水Wを水滴として滴下させることが好ましい。これによれば、振動部12の振動の伝播が水滴に限定されるため、振動部12の振動に対する水Wによる抵抗を抑制することができる。
【0067】
(第4実施の形態)
図7を参照して本発明の第4実施の形態である霧化装置1Fについて述べる。
図7(A)は、霧化装置1Fの側面図である。図7(B)は、振動部12に設けられた貫通孔12eの他の形態を示す圧電振動子10の側面図である。
【0068】
図7(A)に示す霧化装置1Fの構成について説明する。
霧化装置1Fは、圧電振動子10、液体供給用容器20及び配管42を有する。
圧電振動子10は、例えば、圧電素子11及び振動部12を有する。
振動部12は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成に加えて、貫通孔12eが形成されている。貫通孔12eは、一端が先端面12Fに、他端が固定部12bの端面12cに開口されて、振動部12の振動方向A2に沿って振動部12の中心に直線的に形成される。
【0069】
圧電素子11は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成に加えて、振動部12の貫通孔12eと連続する貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aは、例えば図7(A)に示すように、圧電素子11に形成された貫通孔に、貫通孔11aが形成された管状部材43が挿入されることで形成される。管状部材43は、圧電素子11から振動部12が配置される側と反対側に突出する突出部43aを有する。
【0070】
液体供給用容器20は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の形状であり、貯水部21及び流出部22を有する。しかし、霧化装置1Aと異なり、配管42によって流出部22の下端と管状部材43の突出部43aとが結合されている。これにより、液体供給用容器20の流体供給孔22aは、配管42及び圧電素子11の貫通孔11aを介して、振動部12の貫通孔12eの他端と連結されている。
【0071】
配管42は、可撓性の材料で製造される。これにより、配管42が撓むことで、液体供給用容器20に対する圧電振動子10の振動による変位が吸収され、液体供給用容器20及び圧電振動子10に、圧電振動子10の振動によって負荷が生じないようになっている。
【0072】
霧化装置1Fの作動について説明する。
霧化装置1Fは、液体供給用容器20の貯水部21に図示しない補水装置から補水することで、貯水部21に水Wが溜められる。貯水部21に溜められた水Wは、流出部22の流体供給孔22a、配管42、圧電素子11の貫通孔11a及び振動部12の貫通孔12eを通って振動部12の先端面12Fから流出し、先端面12Fを流れて先端面12Fに付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0073】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0074】
なお、霧化装置1Fにおける液体供給用容器20に代えて、上述した第2実施の形態におけるポンプ32、又は第2実施の形態の第1変形態様におけるポンプ33を用いることも可能である。
【0075】
また、図7(B)に示すように、貫通孔12eを振動部12の内部で曲げることなどにより、貫通孔12eの他端12gを振動部12の上面に開口することもできる。これによれば、例えば、上述した実施の形態の液体供給手段における液体供給用容器20、ポンプ32、33及び結露板41によって、貫通孔12eの他端12gから水Wを流すことで、水Wは貫通孔12eを通って振動部12の先端面12Fから流出し、先端面12Fを流れて先端面12Fに付着する。
この場合には、液体供給用容器20などと振動部12の貫通孔12eとを、配管42で結合しなくても良く、また圧電素子11を加工する必要がないため、霧化装置1Fの生産価格を低減することができる。
好ましくは、図7(B)に示すように、水Wが貫通孔12eに流れ易くするために、貫通孔12eの他端12gを広く形成する。
【0076】
このように、液体供給手段から振動部12に形成された貫通孔12eの他端に水Wを流すことで、振動部12の先端面12Fに水Wが確実に供給されるため、先端面12Fに効率的に水Wを供給することが可能である。
【0077】
(第5実施の形態)
図8を参照して本発明の第5実施の形態である霧化装置1Gについて述べる。
図8(A)は、霧化装置1Gの側面図である。図8(B)は、霧化装置1Gにおける圧電振動子10の正面図である。なお、図8(B)には、液体供給用容器20の一部を図示する。
霧化装置1Gは、圧電振動子10及び液体供給用容器20を有する。
圧電振動子10は、例えば、図8に示すように、圧電素子11及び振動部12を有する。圧電素子11は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成と同一であるため、説明を省略する。
振動部12は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成に加えて、液体供給補助部44を有する。液体供給補助部44は、振動部12の上側において、先端面12Fから振動部12の所定の範囲に設けられて、液体供給用容器20の流出部22から流出した水Wを集めて、振動部12の先端面12Fに流す部分である。
したがって、液体供給補助部44は、振動部12に流出した水Wが液体供給補助部44によって集められるように、先端面12Fから少なくとも液体供給用容器20の下方まで設けられる。
【0078】
液体供給補助部44は、底部44a及び側部44bを有する。
底部44aは、振動部12の上面に設けられる板状部材である。底部44aは、振動部12の振動方向A2において、水平又は先端面12Fに向かって下方に傾斜して設けられ、幅方向(図8(B)における紙面左右方向。以下同じ。)において、略水平に設けられる。底部44aの幅方向の大きさは、振動部12の先端において先端面12Fの直径と略同一である。なお、底部44aの幅は、振動部12の先端から離れるにつれて、水Wが集まり易いように大きくしても良い。
【0079】
側部44bは、底部44aの幅方向における両側面に設けられる。側部44b同士の間隔は、図8(B)に示すように、上方になるにつれて広くすることが好ましい。これによれば、液体供給補助部44によって、水Wを集めることができる範囲を広くすることができる。
【0080】
液体供給用容器20は、貯水部21及び流出部22を有する。これらについては、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0081】
霧化装置1Gの作動について説明する。
霧化装置1Gは、図示しない補水装置から液体供給用容器20の貯水部21に補水され、溜められた水Wが流出部22から振動部12に向けて流出する。流出した水Wは、液体供給補助部44で集められ、液体供給補助部44を流れて、振動部12の先端において液体供給補助部44から流出することで、振動部の先端面12Fを流れて、先端面12Fに付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0082】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0083】
このように、霧化装置1Gでは、液体供給補助部44で液体供給用容器20から流出した水Wを集めて振動部12の先端面12Fに流すため、振動部12の先端面12Fに効率的に水Wを供給することが可能である。
【0084】
なお、霧化装置1Gにおける液体供給用容器20に代えて、上述した実施の形態におけるポンプ32、33又は結露板41を用いることも可能である。
【0085】
(第6実施の形態)
図9を参照して本発明の第6実施の形態である霧化装置1Hについて述べる。
図9は、霧化装置1Hの側面図である。
霧化装置1Hは、圧電振動子10及び送風装置51を有する。
圧電振動子10は、例えば、図9に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。圧電振動子10については、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aと同一の構成であるため、説明を省略する。
【0086】
送風装置51は、例えば、送風ファンであり、圧電振動子10の振動部12に向けて送風するようにして配置される。好ましくは、送風装置51は冷風装置である。これによれば、送風ファンで霧化装置1Hの空気を送風する場合に比べ、冷風を用いることで振動部12を早く冷却することができる。
【0087】
また、送風装置51は、好ましくは、振動部12の固定部12bに向けて送風するようにして配置される。これによれば、送風装置51からの送風によって、先端面12Fに付着した水Wが飛ばされたり、先端面12Fに向かう水Wの流れを阻害したりすることが防止される。
【0088】
霧化装置1Hの作動について説明する。
霧化装置1Hは、送風装置51から圧電振動子10の振動部12に向けて送風すると、振動部12が送風による熱伝達によって冷却される。ここで、上述したように、送風装置51が振動部12の固定部12bに向けて送風するようにして配置された場合には、振動部12の固定部12b周辺が送風によって冷却され、先端面12Fなどのその他の部分は、熱伝導により送風によって冷却された部分に熱が移動することで冷却される。
これにより、振動部12は、周囲の温度より低温となって、空気中の水蒸気が振動部12に結露する。そして、先端面12Fに水Wが結露し、又は先端面12F以外に結露した水Wが振動部12から先端面12Fに流れることによって、先端面12Fに水Wが付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0089】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
【0090】
このように、霧化装置1Hは、送風装置51のような冷却手段によって冷却されることで、振動部12に水Wが結露するため、上述した実施の形態のように、液体供給手段による振動部12への水Wの供給が不要となる。これにより、霧化装置1Hでは部品点数が削減されるため、生産価格を低減することができる。
【0091】
特に、冷却手段に送風装置51を用いることで冷却手段の構造が簡単となるため、霧化装置1Hでは生産価格をより低減することができる。また、送風装置51からの送風量を調節することで振動部12の温度制御が可能であるため、霧(ミスト)の生成量の調節が容易である。
【0092】
(第7実施の形態)
図10を参照して本発明の第7実施の形態の霧化装置1Jについて述べる。
図10は、霧化装置1Jの中心軸Xを通る面における断面図である。
霧化装置1Jは、圧電振動子10及びペルチェ素子52を有する。
圧電振動子10は、例えば、図10に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。
圧電素子11は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aにおける構成に加えて、圧電素子11の振動方向A1に沿って、貫通孔11bが圧電素子11の中心に形成される。
振動部12は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aでの構成に加えて、挿入穴12hが形成されている。挿入穴12hは、振動部12の振動方向A2に沿って、固定部12bの端面12cの中心から振動部12の内部に形成される。
振動部12の固定部12bの端面12cには、挿入穴12hに貫通孔11bを連続させて圧電素子11が結合される。
【0093】
ペルチェ素子52は、接合された2種類の金属に電流を流すことで一方の金属から他方の金属に熱が移動するペルチェ効果を利用して対象物を冷却する素子である。金属としては、N型半導体及びP型半導体が多く用いられる。
霧化装置1Jでは、ペルチェ素子52は、圧電素子11の振動部12側と反対側の端面と対向して配置される。ペルチェ素子52は、図示しない電気回路が接続され、通電されることで圧電素子11側から反対側に熱が移動する。
【0094】
ペルチェ素子52には、熱の移動元(圧電素子11側)に熱伝導体の冷却部53が熱的に接触して設けられる。冷却部53は、圧電素子11の貫通孔11bを通って振動部12の挿入穴12hに挿入され、振動部12と熱的に接触して結合される。
【0095】
ペルチェ素子52及び冷却部53と圧電素子11との間には、断熱材54が設けられる。圧電素子11は、振動のために励起電圧が印加されることで発熱するため、断熱材54を設けて圧電素子11とペルチェ素子52とを断熱することで、ペルチェ素子52が振動部12を効率的に冷却できるようになっている。
また、断熱材54によって、圧電素子11の振動によるペルチェ素子52への衝撃が緩和されている。
【0096】
霧化装置1Jの作動について説明する。
霧化装置1Jにおいて、ペルチェ素子52を図示省略する電気回路によって通電すると、ペルチェ素子52において圧電素子11側から反対側に熱が移動する。そのため、熱伝導によって、振動部12の熱が冷却部53を通ってペルチェ素子52に移動して、振動部12が冷却される。すなわち、ペルチェ素子52は、冷却部53を介して振動部12から吸熱する。
これにより、振動部12は、周囲の温度より低温となって、空気中の水蒸気が振動部12に結露する。そして、先端面12Fに水Wが結露し、又は先端面12F以外に結露した水Wが振動部12から先端面12Fに流れることによって、先端面12Fに水Wが付着する。これにより、振動部12の先端面12Fに、霧化の対象となる水Wが供給される。なお、先端面12Fに付着しない水Wは、下方に落下する。
【0097】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
なお、ペルチェ素子52は、冷却部53を介して振動部12と結合されているため、振動部12と一緒に振動する。
【0098】
このように、冷却手段としてペルチェ素子52を用いることによって、ペルチェ素子52は電流によって冷却能力が調節されるため、電気的に振動部12の温度を制御することができる。したがって、霧化装置1Jでの霧(ミスト)の生成量を精度良く調節することが可能である。
【0099】
なお、上記では振動部12と冷却部53とを接触させたが、これらを接触させずに、輻射熱によりペルチェ素子52が冷却部53を介して振動部12から吸熱することで、振動部12を冷却するようにしても良い。
【0100】
(第8実施の形態)
図11を参照して本発明の第8実施の形態の霧化装置1Kについて述べる。
図11は、霧化装置1Kを模式的に示す図である。
霧化装置1Kは、圧電振動子10及び熱交換器55を有する。
圧電振動子10は、例えば、図11に示すように、圧電素子11と振動部12とを有する。圧電振動子10は、上述した第1実施の形態の霧化装置1Aにおける構成に加えて、振動部12に熱交換器55の媒体が循環する媒体循環配管56が通されている。
【0101】
熱交換器55は、媒体循環配管56によって振動部12に冷却された冷媒やブラインなどの媒体を供給することで、振動部12を冷却する部分である。
熱交換器55は、例えば、冷媒が循環するヒートポンプである。ヒートポンプでは、図示省略する圧縮機で冷媒を圧縮して高温高圧とした後に、冷媒を放熱及び膨張させることで冷却する。この冷却した冷媒を媒体循環配管56によって振動部12に供給することで、冷媒は振動部12から吸熱して振動部12を冷却する。そして、再び圧縮機で冷媒を圧縮することによって、冷媒は高温高圧になって吸熱した熱を周囲に放熱する。このようにして、ヒートポンプは、熱を低温部から高温部に移動させることで振動部12を冷却することができる。
又は、熱交換器55は、上記ヒートポンプにおいて、冷却された冷媒によってブラインを冷却し、冷却したブラインを媒体循環配管56によって振動部12に供給する。これにより、ブラインは振動部12から吸熱して、振動部12を冷却する。
【0102】
霧化装置1Kの作動について説明する。
霧化装置1Kでは、熱交換器55から媒体循環配管56によって冷却した冷媒又はブラインを振動部12に供給することによって、熱伝導によって熱が振動部12から冷媒又はブラインに移動して、振動部12が冷却される。
これにより、振動部12は、周囲の温度より低温となって、空気中の水蒸気が振動部12に結露する。そして、先端面12Fに水Wが結露し、又は先端面12F以外に結露した水Wが振動部12から先端面12Fに流れることによって、先端面12Fに水Wが供給される。
【0103】
この状態で図示しない励起回路によって圧電素子11に励起電圧を印加すると、圧電素子11は矢印A1方向に振動して、振動部12を矢印A2方向に振動させる。これにより、振動部12の先端面12Fに付着した水Wは、先端面12Fから矢印A3を中心にして前方に飛ばされて霧化し、霧(ミスト)となる。
このように、冷却手段として熱交換器55を用いることによって、振動部12を冷却することが可能である。
特に、かかる構成の場合は、熱交換器55を圧電素子11から離れた箇所に配置し、媒体循環配管56を介して冷却熱を圧電素子11に伝達することができるため、圧電素子11の取り付け箇所が特定されることも少なくなり、設計の自由度を向上させることができる。
また、一般的に熱交換器を用いると冷却効率が良いので、省電力での温度調整が可能になる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、上述した霧化装置1C、1E、1H、1J及び1Kについても、霧化装置1Bと同様に、圧電振動子10の振動部12に導水溝12dを設けることが可能である。これによれば、導水溝12dによって効率良く先端面12Fに水Wを供給することができるとともに、機械製品などへの霧化装置の配置に関して設計の自由度を向上させることができる。
【0105】
また、上記実施の形態では、振動部12が湾曲部12aを有するホーン形状の場合について説明したが、本発明の振動部12の形状はこれに限定されず、例えば、円柱形、直方体、角錐台及びその他特殊な形状であっても、本発明の適用が可能である。
【0106】
本発明の霧化装置の用途例を例示する。
本発明の霧化装置では、霧化される対象の液体は上述した水Wに限らない。本実施の形態において霧を発生させる対象の液体としては、振動部12の先端面12Fの表面に付着し、振動部12の振動によって霧になる各種の液体、例えば、水、香料が含まれる水、化粧水などの液体、液体薬品、液体肥料、液体塗料の他に、油、ガソリンなどの燃焼系液体など、比較的粘度が低い液体が対象となる。
【0107】
例えば、水から霧を発生させた場合、本発明の霧化装置を加湿器などに使用できる。加湿器としては、住宅の居室内の加湿、あるいは、冷蔵庫内の野菜など生鮮食品の保湿などに使用することもできる。
また、本実施の形態の霧化装置を、超音波振動を利用する種々の装置、例えば、超音波霧化装置、超音波攪拌装置、超音波洗浄器などとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0108】
W…水
1A〜1H、1J、1K…霧化装置
10…圧電振動子、11…圧電素子、12…振動部、12d…導水溝、12e…貫通孔
12F…先端面
20…液体供給用容器
31…容器、32、33…ポンプ、
41…結露板、44…液体供給補助部
51…送風装置、52…ペルチェ素子、55…熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と当該圧電素子に接続された振動部とを有し、前記振動部の先端面に付着した液体を霧化する圧電振動子と、
前記振動部の前記先端面に前記液体を流して供給する液体供給手段と
を有する霧化装置。
【請求項2】
前記液体供給手段は、前記液体を溜めて前記振動部に向けて流出する液体供給用容器である
請求項1に記載の霧化装置。
【請求項3】
前記液体供給手段は、
前記振動部の下方に設けられた前記液体を溜める液体貯留用容器と、
前記液体を吸入して前記振動部に向けて流出するポンプと
を有する
請求項1に記載の霧化装置。
【請求項4】
前記液体供給手段は、前記振動部の上方に設けられた結露部を有し、
前記結露部に結露した前記液体を前記振動部に向けて流出するように構成される
請求項1に記載の霧化装置。
【請求項5】
前記圧電振動子には貫通孔が形成され、前記貫通孔の一端は前記振動部の前記先端面に形成され、前記液体供給手段から流出した前記液体を前記貫通孔の他端から前記貫通孔に流すように構成される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項6】
前記振動部の上方に設けられて、前記液体供給手段から流出した前記液体を集めて前記振動部の前記先端面に流す液体供給補助部を有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項7】
圧電素子と当該圧電素子に接続された振動部とを有し、前記振動部の先端面に付着した液体を霧化する圧電振動子と、
前記振動部を冷却して前記振動部に前記液体を結露させる冷却手段と
を有し、
前記振動部に結露した前記液体が前記振動部の前記先端面に付着して霧化するように構成される
霧化装置。
【請求項8】
前記冷却手段は、前記振動部へ送風する送風装置である
請求項7に記載の霧化装置。
【請求項9】
前記冷却手段は、前記振動部から吸熱するようにして設けられたペルチェ素子である
請求項7に記載の霧化装置。
【請求項10】
前記冷却手段は、冷却された媒体を前記振動部に供給する熱交換器である
請求項7に記載の霧化装置。
【請求項11】
前記振動部の上面に前記先端面まで達する液体誘導溝が形成された
請求項1〜4及び7〜10のいずれか一項に記載の霧化装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−23038(P2010−23038A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251278(P2009−251278)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2007−165456(P2007−165456)の分割
【原出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】