説明

霧発生装置

【課題】本発明は、香料、医薬品など生活の中で使用する化学物質を霧に含有して放出するための超音波式霧発生装置であって、特に、小型で、大量の霧を効率よく発生する装置に関する。
【解決手段】
中心軸の周りに複数の振動面を持つ超音波発生体と、各振動面に対向するように設けられた複数の超音波反射板とからなり、反射した超音波は、液体の所定領域に集中するように設定され、飛散液体は、霧搬送筒、又は、霧搬送管に導かれ外部に放出される。超音波反射板には、凹面鏡レンズを用いることができる。超音波は、超音波伝播媒体と超音波通過膜を介して、霧化対象液体の前記所定領域に集中するように設定できる。超音波発生体は、1枚の超音波振動子の両面を振動面として用いることができる。霧搬送筒には、霧に化学物質を含有させる機構を設けてもよい。液面付近に液中管を設け前記中心軸の周りに霧を集中させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、医薬品、殺菌剤など生活の中で使用する化学物質を霧に含有して放出するための超音波式霧発生装置であって、特に、小型で、大量の霧を効率よく発生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下では、化学物質として香料を例に、霧に香料を含有して放出する超音波式霧化装置について、従来の問題点を説明する。
【0003】
板状超音波振動子を液体溜の中に入れ、超音波で当該液体を高速に振動させて霧を発生させる装置は、例えば、特開2003−245580の超音波霧化装置、実登3100873の加湿器などに開示されている。当該振動子は1メガヘルツを超える高周波で振動させることが可能なため霧の粒子径を極めて小さくできる。芳香発生装置への応用を考えると嗅覚特性の良い装置になりえる。
【0004】
しかし、板状超音波振動子を高周波駆動する際、振動面に液体が存在しなくなると、超音波が当該素子の表面で反射し、超音波振動子自体が発熱して高温になる問題がある。
【0005】
圧電素子の場合、素子が所定の温度を超えると、圧電分極特性が劣化する、あるいは、素子そのものが割れて破壊する。材料によっても異なるが、素子温度が80度程度以上で分極が劣化し、150度程度以上で破壊することがある。磁気ひずみ効果を利用する素子でも同様の問題がある。
【0006】
従って、高周波駆動する超音波振動子は、振動面の上に常に十分な液体が存在するようにして使用するのが一般的である。換言すると、少量の液体を高い周波数の超音波で霧化させる霧発生装置は、超音波振動子が破壊するリスクがあるため、従来、家庭用品の分野ではあまり製品化されていない。
【0007】
家庭用として現在製品化されている超音波式霧発生装置は、通常、水または1種類の香料含有液体を霧化するものが多い。また、超音波振動子の上に十分な霧化対象液体を供給した状態で霧化する方式がほとんどである。
【0008】
しかし、超音波振動子を多くの香料含有液体で浸し霧化する装置では、香料が無駄になる、飛散する液体の範囲が広いため、装置内部が汚染されるなどの問題がある。
【0009】
前記超音波振動子が空焚き状態で破壊するリスクを少なくしつつ、少量の液体を霧化させる方法として、例えば、特開平3−65264、特許第3547132号には、振動面を超音波伝播媒体で満たし、当該超音波伝播媒体に接するように超音波通過膜付き液体容器を用いる方法が提案されている。当該液体容器に香料含有液体を入れ霧化でき、また、液体容器を取り替えることによって霧の種類を変更できるなどの特徴がある。
【0010】
しかし、超音波通過膜を使用すると、超音波エネルギーが損失する問題がある。また、前記超音波通過膜付き液体容器を取り外した状態で、超音波伝播媒体は露出し空気に触れるため、当該液体が腐敗する、汚れるなどの問題がある。清掃が面倒である。
【0011】
後者の問題を解決するため、本発明者は、特願2006−220886において、超音波通過膜を2枚使用する装置を発明している。1枚目の超音波通過膜は超音波伝播媒体の表面に、2枚目の超音波通過膜は液体容器の底部に設け、2枚の超音波通過膜が接触するように液体容器を設置して使用する。超音波は2枚の膜を通過し液体を霧化する。
【0012】
この装置では、清掃が容易、メンテナンス性が良い、香料の切り替えが容易などの優れた特徴があるが、超音波通過膜が厚い、2枚の膜の接触性が悪い、膜の中間に空気が介在するなどの場合には、超音波エネルギーの損失が大きくなり、霧の発生量が低下する問題がある。
【0013】
以上のように、超音波通過膜を用いる場合は、その枚数によらずエネルギー損失はあるので、霧発生量を確保することが課題になる。
【0014】
また、超音波通過膜を用いず、単に水を霧化する場合においても、用途によっては、大量の霧を発生させたい場合がある。例えば、霧を舞台の演出などに利用する場合である。このような目的のために、特願2004−320631には、複数の超音波振動子を水中に並べて霧化し、当該霧を一つの筒に集めて、送風装置を用いて筒から放出する装置が開示されている。
【0015】
しかし、単に超音波振動子を並べた装置では、霧化槽を広くする必要があるため、装置が大型化する問題がある。また、霧の放出については、羽車により単に気流を発生させ搬送する装置では、霧の姿を美しく演出することは難しい。また、霧の放出を演出しながら、霧に香りを付ける装置は実現していない。
【0016】
以上整理すると、小型で、大量の霧を美しく発生でき、香料含有液体を霧化できる、または、霧に香料を含有でき、清掃が簡単で、メンテナンス性が良い、超音波式霧発生装置は実現していない。
【0017】
【特許文献1】特開2003−245580
【特許文献2】実登3100873
【特許文献3】特開平3−65264
【特許文献4】特許第3547132号
【特許文献5】特願2006−220886
【特許文献6】特願2004−320631
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、香料、医薬品、殺菌剤など生活の中で使用する化学物質を霧に含有して放出するための霧発生装置において、(1)小型な装置で大量の霧を効率よく発生する、少量の化学物質含有液体を効率よく霧化する、(2)部品点数を減らし製造を容易にし、安価に構成する、(3)霧に化学物質を含有させる機構を取り付けることができる、(4)装置内で化学物質が付着する範囲、汚れる範囲を少なくすると共に、清掃しやすい構造にする、(5)霧を目的の場所に美しく放出する、化学物質を効率よく利用者に提示する、霧の放出に変化を持たせ演出効果を上げる、などである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
<手段1>
本発明に係わる請求項1に記載の霧発生装置は、例えば、図1から図6に対応付けて説明すると、中心軸(CT)の周りに複数の振動面(40F)を持つ超音波発生体(05)と、当該各振動面に対向するように設けられた複数の超音波反射板(25、または、26)とからなり、当該複数の反射板で反射した超音波を用いて液体を霧化することを特徴とする。
【0020】
前記手段1において、中心軸の周りに複数の振動面を持つ超音波発生体(05)は、n角柱、または、n角錐の部材(図2、図4、図5の41など)に超音波振動子(40)を取り付けて構成でき、当該取り付け部材(41)と、前記複数の超音波反射板(25、または、26)とは、樹脂、または、金属素材を用いて、一体成型することができる(TOM)。一体成型には、金型を用いることができる。
【0021】
前記手段1において、前記反射板で反射した超音波は、図3、図4、図5に示すように、液中管(30)の下端に導かれ、管の上端は液外の所定領域内に集中させることができる。この場合、複数の液中管は、上端が下端より内側に傾斜して設けられることが望ましい。
【0022】
<手段2>
本発明に係わる請求項2に記載の霧発生装置は、例えば、図1から図6に対応付けて説明すると、前記手段1において、前記複数の反射板で反射した超音波は、液体の所定領域に集中するように設定され、当該所定領域で飛散する液体は、霧搬送筒内(81)、または、霧搬送管内(27)に導かれ外部に放出されることを特徴とする。
【0023】
前記手段2において、前記反射板は、図1、図2、図6に示すように、霧化対象液体表面付近に焦点を結ぶ超音波凹面鏡レンズ(25)で構成してもよい。
【0024】
前記手段2において、前記霧搬送管には、液体が飛散する際に発生する散乱超音波を進行波に変換する超音波進行波管(27)を用いてもよい。
【0025】
前記手段2において、前記霧搬送筒内、または、霧搬送管内には、下部から空気を送る機構を設けることができる。当該送風機構は、空気砲の原理による瞬間気流発生装置(74)、羽車式気流発生装置(70)などを利用できる。
【0026】
<手段3>
本発明に係わる請求項3に記載の霧発生装置は、例えば、図1、図2、図3、図6に対応付けて説明すると、前記手段1において、超音波は、超音波伝播媒体(Liq1)と、超音波通過膜(23、24)を介して、霧化対象液体(Liq2)の前記所定領域に集中するように設定されることを特徴とする。
【0027】
前記手段3において、超音波通過膜は、図1、図2、図3に示すように、複数の層にすることができる。
【0028】
<手段4>
本発明に係わる請求項4に記載の霧発生装置は、例えば、図1、図3、図6に対応付けて説明すると、前記手段1において、中心軸の周りに複数の振動面を持つ超音波発生体は、1枚の板型超音波振動子(40)の両面を振動面(40F)として用いることを特徴とする
【0029】
<手段5>
本発明に係わる請求項5に記載の霧発生装置は、例えば、図1、図2、図4に対応付けて説明すると、前記手段2において、前記霧搬送筒内、または、霧搬送管内には、霧に化学物質を含有せしめる機構(12)が設けられたことを特徴とする
【0030】
前記手段5において、前記化学物質含有機構(12)は、図2に示すように、筒型の空気穴(AirP)を集積した整流機構と、当該空気筒の近傍に設けられた化学物質蓄積機構とによって構成できる。
【0031】
当該整流機構は、図2に示すように、ハニカム構造とすることができる。当該化学物質蓄積機構は、空気穴を設けた網状構造、または、ハニカム構造の部材に化学物質(Gb)を吸蔵させて構成できる。
【0032】
前記化学物質は、液体、ジェル状物、ゲル状物、固体を用いることができる。
【0033】
前記霧搬送筒内、または、霧搬送管内、または、前記整流機構、または、化学物質蓄積機構は、図4に示すように、加熱することができる(HT1)。
【0034】
<手段6>
本発明に係わる請求項6に記載の霧発生装置は、例えば、図4、図5に対応付けて説明すると、中心軸(CT)の周りに設けた複数の超音波振動子(40)と、当該振動子から発生する超音波を液中から液外に導く液中管(30)と、当該複数の液中管から放出される飛散液体を所定の方向に放出するための霧搬送筒(81)、又は、霧搬送管(27)とからなり、各液中管(30)は前記中心軸(CT)の周りに並べられ、当該各液中管の上端(Up)の配置円(CirU)は、下端(Lw)の配置円(CirL)より小さくなるように、つまり、上端は下端より内側に傾斜して設けられ、かつ、上端は、当該周囲方向に傾斜して設けられ、飛散液体が前記中心軸方向に集中するように設定されることを特徴とする
【発明の効果】
【0035】
<手段1に係る効果>
図1から図6に示すように、本発明では、中心軸(CT)の周りに複数の振動面(40F)を持つ超音波発生体(05)を用い、その周りに超音波反射板(25、または、26)を設けてその角度を調節すると、所定の領域の液体を効率よく霧化することができ、大量の霧を発生させることができる。また、液体飛散範囲が小さいため、装置を小型に構成できる。複数の振動面の動作数を変えることで、発生霧の量を段階的に変化させることができる
【0036】
本発明では、複数の振動面と反射板の位置関係を正確に調整しないと、複数の超音波を液体の所定領域に集中させることは難しいが、前記のように、複数の超音波発生体を取り付ける部材と、複数の超音波反射板とを一体成型(TOM)で製造することによって調整が不要になる。超音波振動子を当該取り付け部材に螺子止めする、または、差込んで固定することによって、前記調整の問題は、解決する。金型を用いた一体成型で製造すると、安価である
【0037】
本発明では、大量の液が動き飛散するため、液柱が発生する付近の液面には波が発生しやすい。液面が安定しないと霧化効率が低下する場合がある。そこで、図2(D)、図3、図4、図5のように、液柱(AK1)を取り囲むように、液中管(30)を取り付けると、波の発生を抑制できる、また、液中での超音波の拡散を防止できる。このため、霧化効率は改善される。各液中管の先端が内側を向くように設定すると、飛散液体、または、霧を霧搬送筒(81)、または、霧搬送管(27)に導くことができる。小さな空間で大量の霧を発生させ、放出できる
【0038】
<手段2に係る効果>
図1から図6に示すように、複数の反射板(25、または、26)で反射した超音波(US)は、液体の所定領域に集中するように設定され、当該所定領域で飛散する液体は、霧搬送筒(81)、または、霧搬送管(27)に導かれ外部に放出されるため、従来のように液体が広く飛散することはない。液体が飛散する範囲が限定的なので、装置を小型にできる
【0039】
特に、反射板に凹面鏡レンズを使用した場合は、液体が飛散する範囲は、図1、図2、図5のAK1Cで示すように、極めて限定的であるため、装置を一層小型にできる
【0040】
また、当該液体飛散の際には指向性の強い散乱超音波が空中に放出されるため、当該超音波を硬い材質で所定の太さの管に導くと、超音波進行波となる。
【0041】
超音波は管内を反射しながら先端に向かって進行するが、この際、発生した霧は、管の先端まで押し上げられ(搬送され)放出される。また、当該超音波によって管内の滴状液体の一部は霧化される。
【0042】
図5、図6に示すように、超音波進行波管(27)を用いると、気流発生機構を用いなくても霧を外部に放出でき、霧の量を増やすことができ、液体飛散範囲が狭いので、装置の小型化に効果的である
【0043】
前記霧搬送筒(81)、または、霧搬送管(27)の下部から空気を送ると、霧を離れたところに搬送できる。本発明では、大量の霧が発生するため、送風の量を制御することで、霧の演出が可能である
【0044】
特に、図1に示すように、空気砲(74)を用いると、環状霧(Lm)を遠方まで飛行させることができる。空中に大きな霧の輪を作ると人の目を引くため、演出効果は高い。また、霧に香りを付ければ香り玉になる。離れた利用者にピンポイントで匂いを提示できる
【0045】
<手段3に係る効果>
図1、図2、図3、図6に示すように、超音波(US)は、超音波伝播媒体(Liq1)と超音波通過膜(24、23)を介して、霧化対象液体(Liq2)の所定領域(AK1Cなど)に集中される構成であるため、少量の特殊液体を霧化できる。液体には、高級香料、医薬品、殺菌剤、消臭剤、殺虫剤などを入れることができる。
【0046】
超音波通過膜を2枚以上にすることによって、霧化対象液体(Liq2)を超音波伝播媒体(Liq1)から、分離しやすくなる。霧化する際(使用中)は、超音波が超音波伝播媒体から霧化対象液体に通過しやすく、使用しない際は、霧化対象液体が入った容器(20)を切り離し、別なところに保管することができる。霧化対象液体の取り扱いが極めて容易である
【0047】
また、図1、図2、図3に示すように、超音波伝播媒体(Liq1)は外気に触れないため、劣化しにくい。従って、超音波振動子(40)、超音波伝播媒体(Liq1)、第1の超音波通過膜(24)をユニット化できる。従来は、超音波振動子の振動面の清掃は面倒な作業であったが、ユニット化によって、当該振動面の清掃は殆ど不要になる。また、第1の超音波通過膜(24)は、ユニットの上部に露出されるので、清掃しやすい。即ち、メンテナンスは極めて容易である
【0048】
一般に、超音波通過膜を複数にすると、超音波エネルギーの損失が懸念されるが、本発明では、複数の振動面(40F)を持つ超音波発生体(05)から発生する超音波を所定領域に集中する、即ち、強い超音波エネルギーを利用するため、複数の超音波通過膜が存在しても、液体を十分に霧化できる。香料、医薬品などの化学薬品を含有する霧を大量に発生させることができる
【0049】
<手段4に係る効果>
従来1枚の超音波振動子の片面のみを液体に接触させ使用していたため、効率が悪いが、本発明では、図1、図3、図6に示すように、超音波振動子(40)の両面を液体に接触させ、両面から出る超音波を2枚の反射板(25−1、25−2、または、26−1、26−2)で同一方向に反射させて液体を霧化することができるため、霧化効率が向上する。また、小型に構成することができる
【0050】
<手段5に係る効果>
図1、図2、図4に示すように、本霧発生装置は、大量の霧を発生させることができるため、この霧を化学物質が蓄積された機構(12)の近傍を通過させることによって、気化した化学物質は、霧に溶け込み化学物質含有霧となって放出される。化学物質が飛散する範囲が極めて限定的なので、清掃が容易でメンテナンス性がよい。また、構造が簡単なので、装置を小型に構成できる
【0051】
特に、前記化学物質含有機構(12)に整流機構を用いると、霧の流れは一定するため、霧を所定の方向に放出しやすい。化学物質含有霧を放出する場合、目的とする方向に化学物質が放出されるので、無駄が少なく、効率がよい。また、霧が筒、または、管から真っ直ぐに放出されるため、美しく、癒し効果がある
【0052】
つまり、霧が乱れて放出される場合は、化学物質が無駄に放出され効率が悪い、美的でないなどの問題があるが、本発明の整流機構、化学物質蓄積機構を用いることにより、そのような問題が解決される。
【0053】
図4に示すように、加熱手段(HT1)を用いることによって、化学物質の気化は促進するため、霧に含有する化学物質の濃度を上げることができる。また、温度を制御することによって(Con2)、化学物質の濃度を制御することができる
【0054】
<手段6に係る効果>
本発明では、複数の振動面を使用するため、液柱が発生する付近の液面に波が発生しやすい。液面が安定しないと霧化効率が低下する場合がある。そこで、図4、図5のように、液柱(AK1)を取り囲むように液中管(30)を取り付けると、波の発生を抑制できる、また、液中での超音波の拡散を防止できる。このため、霧化効率は改善される
【0055】
更に、各液中管(30)は中心軸(CT)の周りに並べられ、各液中管の上端は下端より内側に傾斜して設けられ、かつ、上端は、当該周囲方向に傾斜して設けられるため(図4(C)、図5(B))、飛散液体は中心軸方向に集中する。従って、飛散液体、または、霧を霧搬送筒(81)、または、霧搬送管(27)に効率よく導くことができる。小さな空間で大量の霧を発生させ、放出できる
【0056】
特に、図5のように、凹面鏡レンズ(25)を用いて超音波を集束し、液体を局所的に霧化させる場合、霧搬送管(27)の中には超音波進行波が発生するため、気流発生手段を用いることなく、霧を放出できる
【実施例1】
【0057】
図1は、本発明の第1の実施例で、振動面を複数持つ超音波発生体05と凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、空気砲74を用いて霧を放出する霧発生装置である。(A)は本装置の縦断面図である。
【0058】
同図において、06は下部筐体である。内部の構成を説明する。40は超音波振動子で、左右の面が振動面40Fである。超音波は両側に放出される。CTは2つの振動面の中心軸である。超音波は太い実線USで示す。41は振動子40を保持する機構で、内部に駆動回路を設けることができる。Con1は、超音波振動子40の動作出力、動作間隔、タイミングなどを制御する装置である。
【0059】
40は、円形板で、1MHz以上の高周波で駆動され、10ミクロン径以下の霧を発生することができる。具体的には、2.4MHzで駆動すると、3ミクロン径程度の霧を大量に発生することができる。この程度の微粒子になると、さらさらしており、皮膚に触れてもべたつき感はない。振動子を薄く製造できれば、更に、高周波で駆動することができる。
【0060】
超音波反射板である凹面鏡レンズ25−1、25−2は、40Fに対向するように設けられる。超音波は、当該反射板で反射し、上方の局所領域AK1Cに向かって進行する。
【0061】
41と、25−1、25−2は、プラスチック、金属などによって、一体成型することができる。斜線塗り潰し部分TOMは、金型を用いて一体成型した様子を示している。本発明では、超音波を所定の領域に導くために、超音波振動子と反射板の位置、および、角度の調整が難しいが、一体成型することによって、調整は不要である。超音波振動子40は、螺子止め、または、差込などの手段によって、41に装着できる。
【0062】
19は、振動面40Fを満たすように液体を入れる容器であり、容器の一部が前記のように、凹面鏡レンズ25を構成している。19には、超音波伝播媒体Liq1として、水Wが入っている。Liq1としては、水以外に、アルコール、油、液状樹脂、シリコン樹脂などが適用できる。熱伝導率の高いものが望ましい。
【0063】
19の上部で、Liq1の界面には、超音波通過膜24が設けられている。24は反射した超音波が通過する第1の膜である。24には、超音波の減衰を避けるため、Lig1と音響インピーダンスが近い物質が望ましい。シリコンゴム、塩化ビニール、軟質アクリル、その他の軟質素材薄膜が利用できる。超音波通過膜は、超音波の集束によって高温になる場合があるため、熱伝導率の高いものが望ましい。
【0064】
霧化対象液体Liq2を入れる小型容器20の底部には、第2の超音波通過膜23が設けられている。膜は液体と音響インピーダンスが近いものが望ましいが、薄い膜であれば、素材の音響インピーダンスが合わなくて使用することができる。例えば、ステンレス、チタン合金、ガラス、貴金属合金、樹脂などの硬質素材薄膜を利用できる。
【0065】
超音波通過膜には、実験の結果、硬度の高いガラスや金属の場合0.2mm以下の厚さ、硬度が低い樹脂やゴムの場合0.5mm以下の厚さが適している。
【0066】
また、23の底部は、同図のように、アーチ型を成し、24に密着できるものが望ましい。23をアーチ型にすることによって、24に押し付けた場合、応力は膜面方向に分散するため、変形を生じにくい。薄い膜を用いても強く押し付けることができる。
【0067】
203は、20を脱着可能に保持する機構の一部である。20は持ち上げることによって、下部筺体06から分離することができる。
【0068】
なお、23を24に強く押し付けることができない場合、両者の間に空気が入ることがある。空気が入ると、音響伝播インピーダンスが異なるため、超音波エネルギーの損失が大きくなる。そこで、23と24の間に、超音波伝播媒体Liq3を設けてもよい。同図では、Liq3に水Wを用いているが、水以外に、油、液体樹脂などを用いることができる。23と24の密着性が良い場合、Liq3は省略できるのは当然である。
【0069】
前記、超音波通過膜として、24が軟質、23が硬質の場合を示したが、両者が軟質の平面膜を用いることもできる。また、24を省略し、23のみにしてもよい。
【0070】
20に入れる霧化対象液体Liq2としては、水W、香料含有水Wa、液体医薬品、酒類、アルコール、殺菌作用のある液体、消臭作用のある液体、液体殺虫剤、その他の化学物質含有液体が適用できる。
【0071】
例えば、Liq2としてミネラルウォータ、抗菌剤含有水、純水など、美容や健康に効果がある液体を用い、後に説明する香料含有機構12を用いて、森林系香料を霧に含有させると、森林欲と似た効果が得られる。
【0072】
超音波USは、Liq2の液面付近で集束し、液体を局所的に飛散させる。AK1は液面から盛り上がった液柱、AK1Cは液体飛散部分を示す。液体が飛散する際に大量の霧が発生する。また、超音波は、液体界面で激しく反射を繰り返し周囲に散乱する。散乱する超音波の指向性が強く、主に上部に散乱する。
【0073】
次に、上部に設けられた霧放出機構04について説明する。当該実施例では、04は、霧搬送管27、気圧発生容器28、霧放出筒80から構成される。27の下部は、飛散液体AK1を取り込むため広げてある。27は28に取り付けられており、28の下部は、筺体06に被せるように取り付けられる。
【0074】
動作を説明する。AK1Cで発生した霧ma、滴状液体AK2、および、前記散乱超音波は、27の下端に放出される。当該超音波は指向性が強いので、同図のように、27内を反射しながら上方に進行する。つまり、管内に超音波進行波が発生する。管の太さは、20mm以下が望ましいが、20mm以上でも進行波を作る形状のものであればよい。
【0075】
霧maは当該進行波によって押し上げられ、管先端から放出される。また、管内の滴状飛散液体AK2の一部は当該超音波進行波によって霧化が継続される。従って、大量の霧が発生する。図1(A)では、気流発生手段74を併用する例を示しているが、気流発生手段を用いなくても霧を放出できる。
【0076】
12は、香料を蓄積するとともに、気体の流れを整える機構で、小さな径の空気筒AirPの集合で構成される。当該AirPの一部には、香料が蓄積される。同図では、ゲル状香料Gaを蓄積した状態を示している。霧は、AirPを通過する際に流れが整えられると共に、気化した香料を取り込む。なお、AirPに大量の霧を通過させると、過飽和状態になって目詰まりすることがあるため、周囲を加熱することができる。後に、図4で詳細に説明する。
【0077】
図1(A)では、香料aを含有する水Waを霧化し、当該香料含有霧maを12に通過させる例を示しているため、12の上部からは、香料aとbを含有する霧mabが放出される。また、20の中に純水、または、天然水を入れ、12で香料bを含有することもできる。この場合は、香料含有霧mbが放出される。つまり、本実施例では、1種類の香料を混入させることも、複数の香料を組み合わせて混入させることもできる。
【0078】
80は、霧を放出するための筒で、27に回転自由に勘合されている。80の先端を回転させることにより、霧の放出方向を変えることができる。
【0079】
次に、霧を遠くまで美しく飛行させる気流発生手段について説明する。74は空気砲式気流発生手段で、75は空気圧縮膜、77は75を押し出す駆動装置である。Moveは75が動作する様子を示している。Con3は74の制御装置である。74の下には、空気穴Airと、空気穴開閉機構AirSTが設けられている。
【0080】
動作を説明する。74の駆動によって、28、27、80内の空気圧が高まると、27内の霧maは、80先端から放出されるが、圧力が瞬間的に高い場合には、先端において環状霧Lmになる。特に、80の先端が腹部に比べて細くなっている場合には、美しい環状霧を生成する。同図のαは、先端角度で20度から80度の範囲に設定することが望ましい。Lmは進行方向に渦を作りながら進むため形を崩さすに数m飛行させることができる。装置内での気流を一点鎖線Fgで示す。
【0081】
空気砲74の制御に関して、空気圧縮用膜75を瞬間的に移動し、筒内(27、または、80)を加圧し、空気が当該筒を離れるまで当該膜をその位置に保持し、その後、ゆっくりと戻すように制御してもよい。この場合の空気圧縮膜を駆動する装置としては、サーボモータ、カム機構、リンク機構などで構成できる。この制御によって、美しい環状霧を作り、砲筒80から真っ直ぐに飛行させることができる。
【0082】
80に大きなものを用いると、10mを超える距離を飛行させることもできる。香りを含有する大きな霧の輪が飛行する様子は、不思議で興味を引く。映画館やイベント会場で使用すると演出効果が高い。
【0083】
美しい香り玉を作るためには、27、または、80に霧が十分に溜まった後に、空気砲74を作動することが望ましい。27の上部の霧の量を計測する方法について説明する。47はLED、48はフォトトランジスタで、両者でフォトカプラを構成している。霧の量が増えると、47から48への光量が少なくなるため、フォトトランジスタの電流も少なくなる。48の電流値から霧の量を推定することができる。
【0084】
AirSTの機能について説明する。AirSTを閉じた状態では、28、27内に気流を発生させる経路がないため、超音波振動子40が動作中であっても、霧は放出されない。霧は筒の下部に留まる。AirSTを開くと空気の通り道ができるため、振動子40を動作すると、Fgの経路で気流が発生する。霧は27、80を満たし、先端から静かに放出される。空気砲を動作すると、前記のように遠くに放出される。このように、AirSTの開閉と空気砲の動作によって、多様な霧放出を行うことができる。
【0085】
Con3は、空気砲74の動作出力、動作間隔、タイミングなどを制御してもよい。また、AirSTには同図には示していない駆動制御装置Con4を設けることができる。
【0086】
これら制御装置を連携させると、更に美しい環状霧を作ることができる。例えば、AirSTを開いた状態にして、超音波振動子40を動作させ、霧を27、80の中に導き、筒内に十分な霧が溜まった状態で、40を停止し、AirSTを閉じ、空気砲74を動作させると、筒に溜まった霧を確実に放出できる。
【0087】
次に、1枚の超音波振動子の両側を使用する利点を説明する。図1(A)のように、2つの振動面40Fの間隔は極めて小さい。従って、超音波反射板25−1、25−2の間隔は小さくできる。25で反射した超音波は、AK1Cに向って鋭角で進行する。このため、液体がAK1Cで飛散する際、上方に強い指向性を持つ散乱超音波が発生する。当該散乱超音波を霧搬送管27に導くと強い進行波が発生する。霧は、気流発生手段を省略しても効率よく放出できる。つまり、装置の小型化、経済化、霧発生および放出の効率化が達成できる。
【0088】
また、同図には示していないが、2枚の超音波振動子を重ね合わせ、各々片側の振動面のみを使用してもよい。この場合、超音波伝播媒体Liq1を入れる容器は、図1(A)より、少し大きくなる。
【0089】
図1(B)は、(A)の超音波発生体05の代替として、超音波振動子40を4枚用い、四角柱形状の振動子保持機構41に取り付けた構成を示している。四角柱の側面が振動面40Fとなる。41の中には、駆動回路が内蔵されている。05の周囲には、振動面に対向して4枚の凹面鏡レンズ25が設けられている。図1(C)は、(B)の上面図である。
【0090】
図1(B)(C)において、4つの振動面から出た超音波USは、凹面鏡レンズ25で集束反射され4つの振動面の中心軸CTの上方に向かって進行する。4枚の超音波振動子を用いると、大量の霧を発生させることができる。霧をCTの周りに集束させて、霧搬送管27に導くので、装置は小型に構成できる。
【実施例2】
【0091】
図2は、本発明の第2の実施例で、振動面を8個持つ超音波発生体05と8枚の凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、羽車式気流発生手段70を用いて大量の霧を放出する霧発生装置である。同図(A)は、装置の縦断面図、(B)は、05と25の上面図、(C)は、香料蓄積兼気体整流機構12の上面図の半分を示す図である。
【0092】
図1と比較して異なる点を中心に説明する。図2(B)において、振動子保持機構41は8角形を成す。中心軸CTの周りに超音波振動子40が取り付けられている。図1(A)において、40から出た超音波USは、25で反射し、20の液面Suf付近に集束し、液体Liq2を飛散させ、大量の霧が発生させる。この飛散液体と霧は、27に導かれる。霧は上方へ搬送され、大きな滴状液体は落下する。AK3は27の壁面を垂れる飛散液体である。
【0093】
霧を放出するための気流発生機構70は、羽根71とモータ72で構成される。Fgで示すような気流が発生すると、霧は搬送管27の先端から放出される。
【0094】
12はハニカム構造を成し、一部の穴にゲル化香料Gbが蓄積されている。気体は筒型空気穴AirPによって整流されるため、霧は真っ直ぐ静かに上昇する。この様子は、美的である。
【0095】
本実施例では、多くの超音波振動子を使用するため、20の霧化対象液体Liq2の液面Sufには大きな液柱AK1が発生する。また、27の壁面から落下する液体などもあり、Sufには波が発生する。この波の影響が大きいと、霧化が安定しないことがある。図2(D)の液中管30は、この波を消去し、超音波の集束を高め、霧化効率を上げるためのものである。必要に応じて取り付けることができる。
【実施例3】
【0096】
図3は、本発明の第3の実施例で、1つの超音波振動子40の両側の振動面40Fと2枚の平面反射板26を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、羽根式気流発生手段70を用いて霧を放出する霧発生装置である。同図(A)は、装置の縦断面図、同図(B)は、超音波発生体05と反射板26の上面図である。図1、図2との違いを中心に説明する。
【0097】
図3(A)において、振動子保持機構41と平面反射板26−1、26−2は、一体成型された構成物TOMである。当該構成物は、下部筺体06に空気穴Airを持つ機構を介して保持されている。28は、霧放出筒81の下部に空気を送るための気圧発生容器である。06の底部には、羽根式気流発生手段70が設けられている。
【0098】
超音波通過膜24の上には、超音波通過膜23を底部に備えた小型液体容器20が設けられ、20の内部には、2本の液中管30が設けられている。31は、30を20に固定する保持機構である。20の上には霧搬送筒81が取り付けられている。81の下部壁には、空気通過穴Airが設けられている。20、30、31、81は一体化され霧放出機構04を構成している。04は、下部筺体06に脱着可能に保持される。203は、脱着機構の一部である。04は、持ち上げると筺体06から外れる。
【0099】
動作を説明する。2つの振動面40Fを持つ超音波発生体05から出た超音波USは、26−1、26−2に反射し、上方に進行する。
【0100】
ここで、26−1、26−2は、図3(A)に示すように、2つの超音波が互いに内側に進行するように、かつ、図3(B)に示すように、2つの超音波が上部で衝突しないように、すれ違うように角度が調整されている。(B)の回転矢印Keは反射板の回転方向を示す。つまり、反射板26−1は、右側が紙面垂直方向に回転し、上側が紙面垂直方向に回転している。26−2は対称に回転している。
【0101】
図3(A)において、USは、超音波通過膜24と23を通過し、霧化対象液体Liq2の液面に向けて進行する。液面は押し上げられ、長い液柱AK1が2箇所で発生する。各液柱の先端では、超音波が激しく反射を繰り返し、液体が飛散し大量の霧を発生する。
【0102】
図3(B)に太い実線矢印で示すように、26−1、26−2で反射したUSは、方向がすれ違っているため、2つの液柱から出る飛散液体AK2、霧maは衝突しない。狭い空間を有効に利用して大量の霧を発生させることができる。
【0103】
図3(A)において、液中管30は、下端がLiq2の中にあり、上端が空中にある。30は、Liq2の波の影響を受けないようにするため、および、液中の超音波を集束するためのものであり、これにより霧化は促進される。
【0104】
本実施例では、狭い空間で発生した大量の霧が、霧搬送筒81に導かれる。70によって81に上昇気流を作ると、当該霧は外部に放出される。装置は小型に構成できる。
【実施例4】
【0105】
図4は、本発明の第4の実施例で、中心軸CTの周りに振動面40Fを4個持つ超音波発生体05と平面反射板26と液中管30を用いて霧を発生させ、香料蓄積機構12を通過させて霧に香料を含有せしめ、羽根式気流発生装置70を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。同図(A)は、装置の縦断面図、同図(B)は、超音波発生体05と反射板26と液中管30の上面図である。図3との違いを中心に説明する。
【0106】
図4(A)において、4枚の超音波振動子40は、四角柱状の保持機構41に取り付けられている。液体容器19の中には、霧化対象液体である水Wが蓄えられている。超音波通過膜はなく、霧搬送筒81の下部には、空気通過穴Airと液中管30が設けられている。30の下端Lwは液中に、上端Upは空気中にある。
【0107】
液中管30は4本あり、互いに内向きに(先端がCTの方向に)傾斜している。従って、図4(B)に示すように、4つの30の上端Upが作る配置円CirUは、下端Lwが作る配置円CirLより小さい。また、上端Upは配置円周方向に傾いている。これにより、同図のように、30の上端Upから飛散する液体および霧は、狭い領域であっても、お互いに衝突することが少ない。4つの振動面40Fの中心軸CTの周りに、大量の霧mが発生するため、この霧を適当な径の霧搬送筒81に導くことが可能である。
【0108】
気流発生装置70によって、81の下端に空気が送り込まれるため、霧mは81の上方へ搬送される。81の上部には、香料蓄積兼気体整流機構12が設けられている。12の下には、筒型空気穴AirPを多数持つ加熱手段HT1が設けられている。NCは、空気穴の一部に設けられたニクロム線などの発熱体である。当該HT1によって、筒81の内部、および、ゲル状香料Gbは、温められる。香料は気化し、AirP内を満たす。なお、Gbの代わりに、液体香料、ジェル香料を用いることができる。
【0109】
81内を上昇する霧mは、HT1のAirPを通過する際に温められ、12のAirPを通過する際に香料bを取り込み、香料含有霧mbとなって、Fgの経路で放出される。加熱手段は、制御装置Con2で制御される。
【0110】
このように、霧を局所的に発生させ、筒に導くことができるため、当該霧を温める、香料を含有する、放出するなどの対応が容易である。また、装置は小型に構成できる。前記振動面と反射板と液中管の特殊構成による効果である。
【0111】
本実施例において、超音波振動子保持機構41は、正四角柱でなくてもよい。図4(C)に示す保持機構は、四角錐形を成す。振動面40Fはやや上方を向いている。このようにすることで、振動面に対向する4枚の反射板同士の間隔を狭くできる。また、反射板に進入する超音波の入射角を鈍角にすることができる。小型で霧化効率を上げることができる。また、清掃が容易である。
【0112】
本実施例は、複数の液柱AK1が衝突しないように、超音波振動子40、反射板26、液中管30を配置することが一つの特徴であるが、この考え方は、反射板を用いない場合にも拡張することができる。即ち、複数の超音波振動子を液槽下部に円形に配置し、各振動子の設置角度を調整することで、図4(B)に示すような液柱を発生させることができる。
【0113】
即ち、振動子から放出される超音波の方向を、配置円の中心軸の方向に傾け、更に、配置円の円周方向に傾けることで実現できる。この場合、液中管は、超音波の方向に設置すればよい。このように、平面反射板の場合には、省略することもできるが、反射板を用いた方が装置の小型化には効果的である。
【実施例5】
【0114】
図5は、本発明の第5の実施例で、図4において、平面反射板の代わりに凹面鏡レンズ25を用い、霧mを霧搬送管27に導いて放出する霧発生装置である。同図(A)は、装置の縦断面図、同図(B)は、超音波発生体05と反射板25と液中管30の上面図である。香料含有機構12は省略している。
【0115】
振動面40Fと凹面鏡レンズ25を4組使用し、液面4箇所で霧を発生させる。超音波で押し上げられる液柱AK1は、図4に比べて小さい。また、液柱AK1の方向は、図4と同様に先端が中心軸CTの方へ傾き、液中管の上端配置円CirUの円周方向に傾いている。AK1Cは液体が主に飛散する範囲を示す。
【0116】
このように、液体の飛散範囲を狭く、かつ、飛散液体同士が衝突しないように工夫している。また、液体が飛散する際に散乱する超音波は上方向に指向性を持つため、霧搬送管27内で進行波を作ることができる。気流発生手段を用いなくても霧を放出できる。図4に比べて更に、小型に構成できる。また、霧化効率を上げることができる。
【実施例6】
【0117】
図6は、本発明の第6の実施例で、1つの超音波振動子40の両側の振動面と凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2(Wa)を霧化し、超音波進行波管27と加熱手段HT2を用いて霧を放出する霧発生装置である。
【0118】
霧化対象液体Liq2を入れる小型液体容器20と、霧搬送管27は勘合機構、または、螺子機構などによって接続されている。通常は、一体化して使用する。20と27との間には、香料含有液体Waを20に供給するための穴が設けられている。01は、Waを蓄積する容器である。
【0119】
27の外側には、加熱手段HT2が設けられ、筒を温めている。筒内には上昇気流が発生する。AK1C付近で発生した霧は、27内に発生する超音波進行波と前記熱上昇気流によって放出される。霧は、霧放出筒80から静かに上昇する。その様子は、線香の煙を連想させ美しい。
【0120】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階において、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することが可能である。また、上記実施形態は、種々の段階の発明が含まれており、適宜な組み合わせにより実施してもよい。更に、上記各実施例の構成要素は、その目的を踏まえて適宜省略する、または、周知慣用技術で補うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
(1)霧演出装置;大量の霧を美しく放出できる、また、香りを混入することができるため、雰囲気を演習する装置として利用できる。多くの人が集まる場所、結婚式場、音楽会、各種ショー、遊園地などで、感動を演出、雰囲気を盛り上げるアイテムとして使用できる。音楽や映像に合わせて、大量の霧に香りを付けて放出すると面白さが増す。霧の発生に合わせて水滴音、水流音を発生させてもよい。大きな電子看板の前を通過するお客の関心を引くツールとして使用することもできる。また、学校の教室などで、香りに関連する教育を行う場合も遠隔から香りをピンポイントで提示できるため有効である。
【0122】
(2)冷房装置;夏場に霧ゲートを作り、その下を通ると、体が濡れることはなく、気化熱で冷やされる。雲の中を歩くような感覚が演出できる。霧に森林香料を含有すると森の中を歩く感じ(臨場感)を作ることができる。
【0123】
(3)高機能芳香発生装置;少量の香料で大きな嗅覚刺激が得られるので高級自然香料(天然香料)を使用できる。複数種類の香りを切り替えて提示することで高い癒し効果が得られる。また、香料含有霧を空中に美しく放出できるので、視覚的な癒し効果が得られる。霧の放出にあわせて音響や音楽を発生させる、あるいは、映像を提示すると、癒し効果は更に高い。
【0124】
当該芳香発生装置は、ストレス解消や苦痛緩和の要求が高い病院の待合室、ホテルの客室、集中力を高めたい子供の勉強部屋、汗臭さを解消したいスポーツ練習場、安らかな眠りを誘発させたい寝室、特別な顧客にサービスする航空会社、銀行などのロビー、会議室などに最適である。また、パチンコ店など空気の汚れた場所で爽快感を演出する際にも効果的である。
【0125】
(4)感染症予防空気清浄装置;天然香料には免疫力を高め、ウイルスを撃退する作用のあるものがある。これらを霧として放出することにより、感染症予防として利用できる。例えば、風邪の予防には、ヒノキ、レモン、ハーブ系の香りが効果的である。花粉症にはユーカリ、ペパーミントなどが効果的である。次亜塩素酸ナトリウムは殺菌作用あるので、水に溶かし噴霧することで感染症予防になる。病院や老人ホームなど身体的弱者の生活空間に適している。また、霧化の際に大量のマイナスイオンが発生するので森林浴と同様なリフレッシュ効果がある。エアコンやファンヒータに連動させることも可能である。
【0126】
(5)分留装置;エタノール水溶液を超音波で霧化すると、霧のエタノール濃度が高くなる。これによって、エタノールと水を分離することができる。超音波を利用すると常温で霧化できるため、品質の劣化を防止しつつ効率の良い分留が可能である。
【0127】
(6)香り発生時計;複数の香りを時刻に対応させ、時報として利用できる。例えば、朝は、ベルガモット、レモン、ペパーミント、コーヒーなど爽やかな目覚めの良い香り、昼間は、グレープフルーツ、シダーウッドなど集中力を高めるリフレッシュな香り、夜は、ラベンダー、ローズウッド、スイートオレンジなどのリラックスな香りを霧と共に放出する。
【0128】
(7)防災警報装置;地震、津波、テロなどによって大きな災害が予想される場合、危険を知らせる警報として、霧発生装置、または、香り付き霧発生装置を使用できる。テレビやラジオ放送で危険を知らせる特殊信号を送信する。受信端末は当該信号を受信すると、霧を放出し視聴者に注意を喚起する。異変を確実に知らせる手段として効果的である。また、危険な場所への立ち入りを制限するために、人が当該場所に近づいたことをセンサで検知し、当該場所に所定の香り付き霧を放出できる。
【0129】
(8)殺虫剤噴霧装置;大量の霧に殺虫剤を混入して放出すると、効率よく殺虫できる。霧は目視できるため、薬剤が噴霧された場所を確認できる。利用者は、薬剤を避けながら作業できる。
【0130】
(9)霧スクリーン;本発明は、大量の霧をコンパクトに発生できる、また、霧放出筒の先端に霧の流れを整流する機構を設けることができる。このため、霧発生装置を天井に取り付け、下方に向けて大量の霧を流すと霧のスクリーンを生成できる。当該スクリーンに映像を投影し、スクリーン背面から前面に向けて音を発生させると、面白い演出装置となる。スクリーンは音の通過の障害にならないため、音像の定位にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1の実施例で、振動面を複数持つ超音波発生体05と凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、空気砲74を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。
【図2】本発明の第2の実施例で、振動面を8個持つ超音波発生体と凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、ファン70を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。
【図3】本発明の第3の実施例で、1つの超音波振動子の両側の振動面と平面反射板26を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、ファン70を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。
【図4】本発明の第4の実施例で、振動面を4個持つ超音波発生体05と平面反射板26と液中管30を用いて霧を発生させ、香料蓄積機構12を通過させて霧に香料を含有せしめ、ファン70を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。
【図5】本発明の第5の実施例で、図4において、反射板に凹面鏡レンズ25を用い、霧を霧搬送管27に導いて放出する霧発生装置である。
【図6】本発明の第6の実施例で、1つの超音波振動子の両側の振動面と凹面鏡レンズ25を用いて、小型液体容器20の香料含有液体Liq2を霧化し、超音波進行波管27と加熱手段HT2を用いて当該霧を放出する霧発生装置である。
【符号の説明】
【0132】
01・・・・・液体容器
04・・・・・霧放出機構
05・・・・・振動面を複数持つ超音波発生体
06・・・・・下部筐体
12・・・・・香料蓄積兼気体整流機構
19・・・・・超音波振動子の振動面を満たすように液体を入れる容器
20・・・・・超音波通過膜付き小型液体容器
203・・・・脱着機構の一部
23、24・・超音波通過膜
25・・・・・超音波集束反射板(超音波凹面鏡レンズ)
26・・・・・平面反射板
27・・・・・霧搬送管(超音波進行波管)
28・・・・・気圧発生容器
30・・・・・液中管
31・・・・・液中管保持機構
40・・・・・超音波振動子
40F・・・・振動面
41・・・・・超音波振動子取り付け部(保持機構)および駆動回路
47・・・・・LED
48・・・・・フォトトランジスタ
70・・・・・羽車式気流発生手段
71・・・・・羽根
72・・・・・モータ
74・・・・・空気砲式気流発生手段
75・・・・・空気圧縮用膜
77・・・・・駆動装置
80・・・・・霧放出筒
81・・・・・霧搬送筒
a、b・・・・化学物質(香料)
Air・・・・空気穴
AirP・・・整流作用のある筒型の空気穴
AirST・・空気穴開閉機構
AK1・・・・液柱
AK1C・・・液体飛散部分
AK2・・・・滴状飛散液体
AK3・・・・壁面を垂れる液体
CirU・・・液中管の上端配置円
CirL・・・液中管の下端配置円
Con1・・・液体霧化手段の制御装置(超音波振動子駆動制御装置)
Con2・・・加熱手段の制御装置
Con3・・・気流発生手段の制御装置
CT・・・・・中心軸
Fg・・・・・霧の放出経路
Gb・・・・・ゲル状の香料b
HT1・・・・加熱手段(筒内部加熱式)
HT2・・・・加熱手段(筒外側加熱式)
Liq1・・・超音波伝播媒体、または、霧化対象液体
Liq2・・・霧化対象液体
Liq3・・・超音波伝播媒体
Lm・・・・・霧の固まり、または、環状霧
Lw・・・・・液中管の下端
m・・・・・・水の霧
ma・・・・・化学物質(香料)aを含有する霧
mab・・・・化学物質(香料)aとbを含有する霧
NC・・・・・ニクロム線
Suf・・・・液体表面
TOM・・・・一体成型物
Up・・・・・液中管の上端
US・・・・・超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りに複数の振動面を持つ超音波発生体と、
当該各振動面に対向するように設けられた複数の超音波反射板とからなり、当該複数の反射板で反射した超音波を用いて液体を霧化することを特徴とする霧発生装置
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の反射板で反射した超音波は、液体の所定領域に集中するように設定され、当該所定領域で飛散する液体は、霧搬送筒内、または、霧搬送管内に導かれ外部に放出されることを特徴とする霧発生装置
【請求項3】
請求項1において、
超音波は、超音波伝播媒体と超音波通過膜を介して、霧化対象液体の前記所定領域に集中するように設定されることを特徴とする霧発生装置
【請求項4】
請求項1において、
中心軸の周りに複数の振動面を持つ超音波発生体は、1枚の板型超音波振動子の両面を振動面として用いることを特徴とする霧発生装置
【請求項5】
請求項2において、
前記霧搬送筒内、または、霧搬送管内には、霧に化学物質を含有せしめる機構が設けられたことを特徴とする霧発生装置
【請求項6】
中心軸の周りに設けた複数の超音波振動子と、当該振動子から発生する超音波を液中から液外に導く液中管と、当該複数の液中管から放出される飛散液体を所定の方向に放出するための霧搬送筒、又は、霧搬送管とからなり、
各液中管は前記中心軸の周りに並べられ、当該各液中管の上端の配置円は、下端の配置円より小さくなるように、つまり、上端は下端より内側に傾斜して設けられ、かつ、上端は、当該周囲方向に傾斜して設けられ、飛散液体が前記中心軸方向に集中するように設定されることを特徴とする霧発生装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100204(P2008−100204A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288319(P2006−288319)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(301006231)
【Fターム(参考)】