説明

露地水耕栽培における植物生長保全装置

【課題】 植物の根の乾燥防止、恒温維持を行ないつつ植物を暴風等から保護する植物成長保全装置を提供する。
【解決手段】 断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に暗室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記暗室内に収容して日照時間調整を行う、
暗室つき植物露地水耕栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、露地水耕栽培において、植物を日照時間の超過、暴風、熱暑厳寒から保護してその生長を保全する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、植物を暴風から保護する装置として、前部スプロケットと後部スプロケットに無端チェンを掛け回して、上部走行路と、それから上部走行路の下を逆走循環する下部走行路を形成し、該無端チェンに、植物をパネルに植えつけ、葉茎部をパネル上に、根をパネル下に突出させてなる植物植設パネルの多数枚を互に隣接状態で連結し、上記上部走行路に培養液を満たした栽培槽を、下部走行路に暴風避難室をそれぞれ配設し、上記植物植設パネルが上部走行路にあるとき、上記パネルを栽培槽の培養液面に正姿勢で浮かべて栽培を行い、暴風時に上記植物植設パネルを反転させて下部走行路の暴風避難室に退避させるものが提案された。
【0003】
しかし、上記の従来装置では、植物植設パネルを栽培槽から離脱させた後暴風が静まるまでの長時間にわたって、根を露出したままで経過するばかりでなく、温度変化に弱い根を高温又は低温の外気にさらすことになり、そのままでは根は著しいダメージを受け、多くの場合死滅することとなる。
【0004】
そこで、従来は避難室において、植物の根に乾燥防止のための給水を行い、又栽培時と同様の恒温状態に保つため、外気に応じて冷暖房を行う対策をとっているが、その設備費、維持費に多額の費用が掛るので、これに対する何らかの改善が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2007−321734
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願第1発明は、根の乾燥防止及び恒温維持を行いつつ、植物の受ける日照時間の調整を行うことのできる暗室つき露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【0007】
本願第2発明は、根の乾燥防止及び恒温維持を行いつつ、暴風から植物を保護することのできる暴風避難室つき露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【0008】
本願第3発明は、根の乾燥防止及び恒温維持を行いつつ、夏期の熱暑、冬期の厳寒、降雪等から植物を保護することのできる温度調整室つき露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【0009】
さらに、本願第4発明は、根の乾燥防止及び恒温維持を行いつつ、葉茎部に付着した害虫を駆除する浸漬槽つき露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決の手段として、本願第1発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に暗室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記暗室内に収容して日照時間調整を行う、
暗室つき植物露地水耕栽培装置を提案する。
【0011】
また、本願第2発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に暴風避難室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記暴風避難室内に収容して暴風を避ける、
暴風避難室つき植物露地水耕栽培装置を提案する。
【0012】
本願第3発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に温度調整室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記温度調整室内に収容して熱暑、厳寒、降雪等を避ける、
温度調整室つき植物露地水耕栽培装置を提案する。
【0013】
本願第4発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に、浸漬液入り害虫駆除浸漬槽を設置し、
上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、上下反転した状態で、上記害虫駆除浸漬槽の上に移送して植物の葉茎部を浸漬液中に浸漬して植物に付着した害虫を駆除する、
害虫駆除浸漬槽つき露地水耕栽培装置を提案する。
【0014】
本願第5発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に、下位に害虫駆除液を上向きに噴射するノズルを配管した害虫駆除液噴射室を設置し、
上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、上下反転した状態で、上記害虫駆除液噴射室内に移送して、下向きの植物葉茎部に対し上記噴射ノズルから害虫駆除液を噴射して葉茎部に付着した害虫を駆除する、
害虫駆除液噴射室つき露地水耕栽培装置を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本願第1発明によれば、植物栽培区帯で栽培している栽培ボックスの植物が、特定の積算日照時間(毎日の日照時間を合計した時間)に至ると、生殖生長を促して花芽分化を行ってしまい、その後小時間の日照で抽苔(とうだち)し、しかし必要な栄養生長は停滞してしまう品種である場合に、栽培区帯での日照栽培中に植物栽培ボックスを避難区帯の暗室内に移送収容して、その日の日照時間を短縮し、以下これを適宜繰り返して積算日照時間及び抽苔日照時間を超えないように調整し、それにより栄養生長を導いて所望の生長植物を収穫できるのである。しかも上記暗室内に長時間収容している間、根収納室内にストックされている培養液を根に供給することによって根の乾燥防止と共に養分を供給し、特に温度変化に弱い根を断熱材で囲ってほぼ恒温状態に保持することができ、それらが相まって植物を収穫の大きい健全な生長に導くことができるのである。
【0016】
本願第2発明によれば、暴風の来る短時間前に、栽培区帯で栽培を行っていた植物栽培ボックスを避難区帯の暴風避難室内に移送収容させて、暴風から植物を守ることができ、しかも上記暴風避難室内に植物を長時間避難させている間、根収納室内にストックされている培養液を根に供給すると共に、根を断熱材で囲ってほぼ恒温状態に保つことができるのである。
【0017】
本願第3発明によれば、植物栽培区帯で栽培している植物栽培ボックスの植物に、夏期の熱暑、冬期の厳寒、降雪等が予想されるときは、植物栽培ボックスを避難区帯の温度調整室内に移送収容して良好な温度環境に置いて、植物の受けるダメージを避けることができ、しかも温度調整室内に長時間植物を収容している間、根収納室内にストックしてある培養液を植物の根に供給すると共に、断熱性の栽培ボックスによって根を囲ってほぼ恒温状態に置くことができ、それにより植物の受けるダメージを未然に防止するのみならず、健全な生長を確保することができるのである。
【0018】
本願第4及び第5発明によれば、栽培中の植物の葉茎部に害虫が付着したとき、植物栽培ボックス群を避難区帯に上下反転して移送すれば、反転した下向きの葉茎部を害虫駆除浸漬槽の浸漬液中に直ちに浸漬し、又は害虫駆除液噴射室の液噴射を受けさせることができ、それにより葉茎部の害虫を駆除することができ、しかも害虫駆除の間、植物の根にストックしてある培養液を供給すると共に、根を恒温状態に置くことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(イ)本願第1発明による暗室つき露地水耕栽培装置の縦断側面図である。 (ロ)同上装置の駆動プーリー部分の拡大平面図である。
【図2】図1(イ)のA−A線一部省略拡大断面図である。
【図3】(イ)本願第3発明による温度調整室つき露地水耕栽培装置の縦断側面図である。 (ロ)同上装置における栽培ボックス群押しバーの拡大斜面図である。
【図4】(イ)本願第4発明による害虫駆除浸漬槽つき露地水耕栽培装置の縦断側面図である。 (ロ)本願第5発明による害虫駆除液噴射室つき露地水耕栽培装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明において、栽培ボックスを栽培区帯から避難区帯へ移送する手段としては、無端ローラチェンとスプロケット、無端チェンとプーリー、無端ワイヤロープとプーリー等のような無端駆帯と駆帯車があり、又栽培ボックスを無端駆帯に連結して吊支し、駆帯の走行に牽引されて移送するもの、駆帯に取りつけた押し棒により栽培ボックス群を後から押して移送するもの等がある。
【0021】
栽培区帯で栽培ボックスを正姿勢で栽培するが、避難区帯へは上下反転して移送するもの、栽培区帯で栽培ボックスを正姿勢で栽培し、避難区帯へも正姿勢のままで移動するものもある。なお、場合によっては一部手作業を組み入れて移送を行ってもよい。
【0022】
根収納室内に培養液をストックする手段としては、根収納室内に液溜を付加する方法、根収納室内にスポンジ等の保水材を入れる方法、栽培区帯において根収納室内に栽培液を注入する口及び排出する口の両方又は一方を避難区帯に移送する際に適宜の栓により閉じておく方法もある。
【実施例1】
【0023】
図1(イ)、(ロ)及び図2は本願第1発明の実施例で、クレーム(F)の前後端部左右に軸受(1)(1)、(2)(2)を突設し、これら軸受(1)(1)、(2)(2)に支持された軸(3)、(4)に、左右一対づつの駆動プーリー(5)、(5)及び従動プーリー(6)、(6)を固着し、これら前後のプーリー(5)(6)、(5)(6)に無端ワイヤロープ(7)、(7)をそれぞれ掛け回して、上部に直線状に延長する上部栽培区帯(A)と、下部に直線状に逆走する下部避難区帯(B)を形成してある。
【0024】
上部栽培区帯(A)においては、左右ワイヤロープ(7)、(7)に、多数の栽培ボックス(8)…を、互に前後隣接状態で、各ボックス(8)…の左右両側端部において一対づづの連結金具(9)(9)、…によりそれぞれ連結支持してあり、さらに上記左右ワイヤロープ(7)、(7)の下位に、両プーリー(5)、(6)近くまで延長するL形材からなる左右案内レール(10)、(10)を敷設し、該案内レール(10)、(10)上に各栽培ボックス(8)…を摺動自在にのせてある。
【0025】
上記栽培ボックス(8)は、図2に示すように発泡スチロール製の軽量、断熱性の長方形扁平箱形上板(11)と、同材質の長方形扁平箱形下板(12)を重ね合わせ、その端部に横断面コ字状の合成樹脂枠材(13)、(13)を外側から着脱自在に嵌めつけて接合したもので、そのボックス内には根収納室(14)を凹設し、上板(11)には、多数の丸孔(15)…を設け、該丸孔(15)…に、植えつけ孔(17)を有する植えこみチップ(16)…を着脱自在に嵌めこんで、上記植えつけ孔(17)…を上記根収納室(14)内にそれぞれ開通させている。植物(P)の苗は上記植えつけ孔(17)…に植えつけ、葉茎部は上板(11)上に、根は根収納室(14)内にそれぞれ延長している。
【0026】
根収納室(14)への培養液給排手段として、上記上板(11)に、上面外部から根収納室(14)内に開通する培養液注入管(18)を垂直に貫通し、下板(12)には、根収納室内から下面外部に開通する排出管(19)を垂直に貫通してあり、このようにした各栽培ボックス(8)…の注入管(18)…の上位に培養液給送管(20)を配置し、該給送管(20)から培養液を各栽培ボックスの注入管(18)…に注入し、又各栽培ボックス(8)…の排出管(19)…の下に排送樋(21)を配置してある。
【0027】
上記避難区帯(B)には、遮光性材料からなる上下側壁(22)、(22)、左右側壁(23)、(23)及び後側壁(24)からなる前端開口の四角筒状の暗室本体を設置し、前端開口にドア(25)を下端辺においてヒンジにて開閉自在に取りつけてなる暗室(26)を形成し、この暗室(26)内に、左右ワイヤロープ(7)、(7)の避難区帯走行部を前端開口から暗室(26)内へ導き、ついで後側壁(24)を貫通して従動プーリー(6)に延長させると共に、該ワイヤロープ(7)、(7)の下位にL形材の左右案内レール(27)、(27)を敷設してある。
【0028】
上記案内レール(27)、(27)の前端部分は、暗室(26)の前端開口から前方の駆動プーリー(5)、(5)の下位まで延長し、後端は暗室(26)内の後端壁(24)まで延長している。
【0029】
上記ドア(25)には、ドア開閉時に上記ワイヤロープ(7)、(7)及び案内レール(27)、(27)の通過を許す溝を設けると共に、各溝口に遮光モヘアを取りつけてある。
【0030】
上記駆動プーリー(5)、(5)を回転させるため、一側に正逆回転モータ(28)を設置し、その出力軸に固定されたプーリー(29)から上記軸(3)に固定されたプーリー(30)にベルト(31)を介して回転が伝達される。
【0031】
上例の装置を使用した「ほうれん草」の日照時間の調整例について次に説明する。
長日性植物である「ほうれん草」は花芽分化が積算日照時間約500時間で行われ、その後12時間の日照で抽苔する。従って積算日照時間及び抽苔日照時間を経過する前に葉茎部を大きく生長させなければならない。葉茎部が小さい段階で花芽をつけたほうれん草は、もはや商品価値はない。
【0032】
そこで、1日の日照時間9時間で、50日間栽培で収穫する計画の下、栽培区帯(A)において、植物栽培ボックス(8)…により日照時間9時間の栽培を経過したとき、まず培養液給送管(20)から各栽培ボックス(8)…の根収納室(14)…内に培養液を供給し、各ボックス(8)…が満杯となったら、注入管(18)…及び排出管(19)…に適宜の栓を差しこんで閉止し、培養液をストック状態におく。
【0033】
次に、モータ(28)の始動により駆動プーリー(5)を正回転させ、ワイヤロープ(7)、(7)を反時計方向に走行させ、それにより栽培ボックス(8)…を前方へ移動させる。各栽培ボックス(8)…は栽培区帯(A)から駆動プーリー(5)をめぐって上下反転しつつ避難区帯(B)に逆走し、そして暗室(26)内に走行する。
【0034】
全栽培ボックス(8)…が暗室(26)内に入ったらモータ(28)を停止し、ドア(25)を閉じて全栽培ボックス(8)…を日光から完全遮へいし、それにより「ほうれん草」の日照を遮断する。
【0035】
翌日、ドア(25)を開き、モータ(28)を逆回転させ、ワイヤロープ(7)、(7)を時計方向へ逆走させ、それにより栽培ボックス(8)…を暗室(26)内から離脱し、駆動プーリー(5)をめぐって正姿勢に戻しながら元の栽培位置に戻す。以下上記と同様に日照9時間の栽培を50日間繰り返す。
【0036】
このように、1日の日照時間を9時間に制限することにより、「ほうれん草」の生殖生長を停滞させつつ、栄養生長を継続させて、豊かな葉茎部に生長させることとなる。上記暗室(26)内での長時間の収容の間、ストックされた培養液が根に供給され、乾燥を生じることは全くなく、しかも根は断熱ボックスに囲われてほぼ恒温状態に維持される。
【実施例2】
【0037】
避難区帯(B)に設置される暴風避難室は、軽量鉄骨からなる上、下側壁、左右側壁及び後側壁からなる四角筒状骨組及びドア枠のうち、上側壁に防水板を張り、他の側壁及びドア枠に目の細い金網を張ったもので、他の構造は図1(イ)、(ロ)、図2と実質的に同一である。
【0038】
暴風の予報に従い、その到来小時間前に、実施例1と同じく栽培区帯にある栽培ボックスの各根収納室(14)…内に培養液を注入して各注入管及び排出管に栓を差しこんで閉止し、ついで駆動プーリーの回転により各栽培ボックスを走行させて反転させつつ避難区帯の暴風避難室内に収容する。
【0039】
暴風がおさまったら、暴風避難室から各栽培ボックスを離脱させて元の栽培区帯に戻す。
【実施例3】
【0040】
栽培ボックス(8a)…の移送装置は、図3(イ)、(ロ)に示すように、栽培区帯(Aa)においては、L形材の左右スライドレール(10a)、(10a)上に栽培ボックス(8a)…を前後隣接状態で摺動自在にのせ、この栽培ボックス群(8a)…の最後尾のボックス(8a)後側において、図3(イ)、(ロ)に示すように、左右ワイヤロープ(7a)、(7a)に押し棒(32a)の両端部を固着した状態で、押し棒(32a)中間部を上記最後尾栽培ボックス(8a)の後側面に当接可能に位置させている。
【0041】
調温室又は温度調整室(26a)は、断熱材からなる上、下側壁(22a)、(22a)、左右側壁(23a)、(23a)で構成される前後両端開口の四角筒状本体の前後端開口に断熱材からなるドア(25a)、(24a)を開閉自在に取りつけたもので、この調温室(26a)内に、左右ワイヤロープ(7a)、(7a)の避難区帯走行部を走行可能に延長して従動プーリー(6a)に循環させ、該左右ワイヤロープ(7a)、(7a)の下位に左右スライドレール(27a)、(27a)を延長敷設し、該スライドレール(27a)、(27a)の前端部及び後端部をやや上向き傾斜レール部(33a)、(33a)として駆動プーリー(5a)の前側へ、及び従動プーリー(6a)の後側へそれぞれ延長敷設してある。
【0042】
(34a)は、調温室(26a)の下に設置されたヒートポンプ型冷暖房機で、冷気又は暖気を調温室(26a)内に送りこむダクト(35a)を延長している。他の構造は図1(イ)、(ロ)及び図2と実質的に同一である。
【0043】
夏期、熱暑のきびしい日に、そのまま栽培区帯(Aa)において栽培を継続すると、植物がダメージを受けると予想される場合に、駆動プーリー(5a)の回転により左右ワイヤロープ(7a)、(7a)を反時計方向へ走行させると、後端がわの押し棒(32a)により栽培ブロック群(8a)…の最後尾のブロック(8a)の背面を前方へ押して栽培ブロック群全体をスライドレール(10a)、(10a)上に滑らせて徐々に前方へ移送させる。作業員は駆動プーリー(5a)近くに待機し、前方へ移送されてくる最前位の栽培ブロック(8a)を1つづつ持ち上げて、下の左右スライドレール(27a)、(27a)の下り傾斜レール部(33a)、(33a)上に下ろし、その下り傾斜を利用して各栽培ブロック(8a)…を順次スライドレール(27a)、(27a)に沿って調温室(26a)内に滑走させていく。
【0044】
全栽培ブロック群(8a)…が調温室(26a)内に収容されたら、ドア(24a)、(25a)を閉じ、冷暖房機(34a)を始動して、必要な冷気を調温室(26a)内に送りこんで植物を熱暑から保護する。
【0045】
熱暑がおさまったら、ドア(24a)、(25a)を開き、駆動プーリー(5a)を回転してワイヤロープ(7a)、(7a)を反時計方向へ走行させ、それにより押し棒(32a)により、調温室(26a)内の栽培ボックス群(8a)…のうち最後尾のボックス(8a)の背面を押して、栽培ボックス全体(8a)…をスライドレール(7a)、(7a)上に滑らせて逆走させ、そして上り傾斜の傾斜レール部(33a)、(33a)を経て従動プーリー(6a)に戻す。
【0046】
上記調温室(26a)内での長時間の調温の間、各植物の根に、ストックされた培養液が供給されると共に、根はほぼ恒温状態に保たれる。
【実施例4】
【0047】
避難区帯(Bb)に、図4(イ)に示すように、浸漬液(37b)を入れた上面全開放の害虫駆除浸漬槽(26b)を水平に設置し、栽培区帯(Ab)において多数栽培ボックス(8b)…を連結された左右ワイヤロープ(7b)、(7b)を、駆動プーリー(5b)、(5b)をめぐった後前部ガイドプーリー(38b)、(39b)及び後部ガイドプーリー(40b)、(41b)を介して、上記浸漬槽(26b)の浸漬液(37b)液面近くに沿って水平に走行させ、それにより上下反転した各栽培ボックス(8b)…の葉茎部を浸漬槽(37b)中に浸漬する位置関係においている。他の構造は、図1(イ)、(ロ)及び図2と実質的に同一である。
【0048】
栽培区帯(Ab)で栽培を行っているときに、植物の葉茎部に害虫が付着した場合は、駆動プーリー(5b)の回転により左右ワイヤロープ(7b)、(7b)を反時計方向へ走行させると、各栽培ブロック(8b)…が前方へ走行し、駆動プーリー(5b)をめぐって上下反転しつつ避難区帯(Bb)へ逆走し、そこで下向きの葉茎部を浸漬液(37b)中に浸漬する。
【0049】
浸漬は、長時間浸漬により害虫を窒息死させ、短時間浸漬により害虫を植物から離脱させ、又高温水に浸漬して死滅させ、あるいは外気と温度差のある温度ショック水に浸漬して害虫を植物から離脱させる等の方法を採ることができる。
【0050】
処理後、左右ワイヤロープ(7b)、(7b)を反時計方向へ走行させ、それにより栽培ボックス(8b)…を従動プーリー(6b)を経て元の栽培区帯(Ab)に戻す。
【0051】
上記害虫駆除処理の間、植物の根にストックされている培養液が供給され、又根は恒温状態に保たれ、支障を生じることはない。
【実施例5】
【0052】
避難区帯(Bc)に、図4(ロ)に示すように、上下側壁(22c)、(22c)左右側壁(23c)、(23c)からなる前後端開口の四角筒状の害虫駆除液噴射室(26c)を設置し、該噴射室(26c)には底部に噴射液受け槽(42c)を配置すると共に、そのやや上位に駆除液を上向きに噴射すべきノズル(43c)…を配管してある。
【0053】
一方、栽培区帯(Ac)において、各植物栽培ボックス(8c)…を連結された左右ワイヤロープ(7c)、(7c)は、駆動プーリー(5c)、(5c)をめぐった後、避難区帯走行部を前端開口から噴射室(26c)内上部へ導き、ついで後端開口から従動プーリー(6c)へ延長しており、その下位にL形材の左右案内レール(27c)、(27c)を敷設してある。他の構造は、図1(イ)、(ロ)、図2と実質的に同一である。
【0054】
栽培区帯(Ac)での栽培時に、植物葉茎部に害虫が付着したとき、左右ワイヤロープ(7c)、(7c)を反時計方向へ走行させて各植物栽培ボックス(8c)…を上下反転させて噴射室(26c)内へ導き、そこで下向きの植物葉茎部にノズル(43c)…から液を噴射して害虫駆除を行う。
【0055】
液噴射は、常温水を噴射して害虫を植物から離脱落下させ、又高温水を噴射して害虫を死滅させ、あるいは外気と温度差のある温度ショック水を噴射して害虫を植物から離脱落下させる等の方法を採る。離脱落下した害虫は下の受け槽(42c)に受け、適宜処分する。
【0056】
害虫処理の間、根収納室内の培養液がボックスの断熱性と相まって、植物の根の保護に役立つ。
【符号の説明】
【0057】
8、8a、8b、8c 植物栽培ボックス
11 ボックス上板
12 ボックス下板
14 根収納室
17 植えつけ孔
26 暴風避難室
26a 調温室
26b 浸漬槽
26c 液噴射室
A、Aa、Ab、Ac 上部栽培区帯
B、Ba、Bb、Bc 下部避難区帯
P、Pa、Pb、Pc 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に暗室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記暗室内に収容して日照時間調整を行う、
暗室つき植物露地水耕栽培装置。
【請求項2】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に暴風避難室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記暴風避難室内に収容して暴風を避ける、
暴風避難室つき植物露地水耕栽培装置。
【請求項3】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に温度調整室を設置し、上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、その各根収納室内に培養液をストックした状態で、上記温度調整室内に収容して熱暑、厳寒、降雪等を避ける、
温度調整室つき植物露地水耕栽培装置。
【請求項4】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に、浸漬液入り害虫駆除浸漬槽を設置し、
上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、上下反転した状態で、上記害虫駆除浸漬槽の上に移送して植物の葉茎部を浸漬液中に浸漬して植物に付着した害虫を駆除する、
害虫駆除浸漬槽つき露地水耕栽培装置。
【請求項5】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を、ボックス上板に上記根収納室内に開通する植えつけ孔をそれぞれ設け、上記植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に延ばした状態で、根を上記根収納室内に断熱恒温状態に保持し、上記根収納室内に培養液をストックする手段を設けた植物栽培ボックスについて、
植物栽培区帯において、上記植物を植えた栽培ボックス多数個を支持して、培養液を各根収納内に給排して栽培を行い、
上記植物栽培区帯の下位に設けた避難区帯に、下位に害虫駆除液を上向きに噴射するノズルを配管した害虫駆除液噴射室を設置し、
上記栽培区帯にある多数の植物栽培ボックスを、上下反転した状態で、上記害虫駆除液噴射室内に移送して、下向きの植物葉茎部に対し上記噴射ノズルから害虫駆除液を噴射して葉茎部に付着した害虫を駆除する、
害虫駆除液噴射室つき露地水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−30547(P2011−30547A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183126(P2009−183126)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】