説明

露地水耕栽培装置

【課題】 設備、遮光シートを節減できる露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 露地水耕栽培槽において、
上記露地水耕栽培槽の開口上面に、電撃殺虫ネットを、遮光ネットとして上記植物を覆った状態で、覆蓋し、
上記電撃殺虫ネットは、互に小間隔をあけて対面する少くとも内、外2層の導電性金属線ネットからなり、そのうち内側金属線ネットは害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、
上記内、外金属線ネットの一方をプラス極、他方をマイナス極として高電圧を印加した、
植物の露地水耕栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然の太陽光の下、適宜遮光を行うと共に害虫を駆除しつつ行う植物の露地水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養液を入れた上面開口の大型栽培槽を太陽光の下に設置し、該栽培槽の培養液に、植物を植えたパネル(以下植物植設パネルという)の多数枚を浮かべると共に、植物の根を培養液に浸して養分を吸収させる露地水耕栽培槽において、夏期等に強い日射しから植物を保護する手段として、上記栽培槽の開口上面に支持枠を組み、該支持枠上に寒冷紗等の遮光シートを張設した方式を採り、又、植物を害虫から保護する手段としては、本発明者の発案による、上記植物植設パネルを移送手段により栽培槽から浸漬槽に移送し、該浸漬槽内の濃度を調整された浸漬液中に長時間浸漬して、植物に付着した害虫を窒息死させる方式、あるいは、上記浸漬槽内の水に植物植設パネルを短時間づつ繰り返し浸漬して害虫を植物から離脱させ、離脱した害虫は別途回収して処分する方式を採っていた。
【0003】
しかし、従来の露地水耕栽培装置における植物を害虫から保護する手段は、自然界から飛来する大量の害虫が植物に取りついた後に駆除する方式であるから、その駆除作業に時間がかかるばかりでなく、未処理の害虫が植物に残る欠点があり、しかも植物植設パネルの移送手段、浸漬槽、遮光シート等の設備及び設置スペースが必要となる難点があり、さらに最近では、鳥や野生動物が作物を食い荒すケースが多くなったが、これに対し従来の栽培槽は何ら対策がとられていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、害虫が植物に取りつくのを阻止して直ちに殺虫し、それにより設備及び設置スペースを節減することができ、特に遮光シートを使用せずに遮光を行うことができると共に、鳥や野生動物の被害を十分に防止することができる露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願第1発明は、
培養液を入れた上面開口の槽内に、植物植設パネルを、その植物の根を培養液に浸した状態で、保持した露地水耕栽培槽において、
上記露地水耕栽培槽の開口上面に、電撃殺虫ネットを、遮光ネットとして上記植物を覆った状態で、覆蓋し、
上記電撃殺虫ネットは、互に小間隔をあけて対面する少くとも内、外2層の導電性金属線ネットからなり、そのうち内側金属線ネットは害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、
上記内、外金属線ネットの一方をプラス極、他方をマイナス極として高電圧を印加した、
植物の露地水耕栽培装置を提案する。
【0006】
ところで、一般に、小型の害虫としてハモグリバエ(体長2〜3mm、開いた羽幅5〜6mm)、アブラムシ成虫(体長2〜3mm、開いた羽幅4〜5mm)等があり、大型の害虫としてモンシロチョウ(開いた羽幅50mm)、ヨトウムシ(開いた羽幅30mm)等があるが、そのうち、一般的に、小型の害虫は、栽培槽のほぼ横方向から飛来し、叉大型の害虫は、栽培槽のほぼ上方から飛来する傾向がある。
【0007】
そこで、本願第2発明は、上記第1発明の課題に加えて、上記の小型害虫及び大型害虫に対応することのできる露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【0008】
そこで、本願第2発明は、
培養液を入れた上面開口の槽内に、植物植設パネルを、その植物の根を培養液に浸した状態で、保持した露地水耕栽培槽において、
上記露地水耕栽培槽の開口上面に、電撃殺虫ネットを、遮光ネットとして上記植物を覆った状態で、覆蓋し、
上記電撃殺虫ネットは、四周を囲む四周電撃殺虫ネットと、その上面を覆う上面電撃殺虫ネットからなり、その各電撃殺虫ネットは、互に小間隔をあけて対面する少くとも内、外2層の導電性金属線ネットからなり、そのうち上記四周電撃殺虫ネットにおける内側金属線ネットは小型害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは小型害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、又上記上面電撃殺虫ネットにおける内側金属ネットは大型害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは大型害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、
上記四周及び上面電撃殺虫ネットにおける内、外金属線ネットの一方をプラス極、他方をマイナス極として高電圧を印加した、
植物の露地水耕栽培装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本願第1発明の露地水耕栽培装置によれば、栽培槽に植えた植物を電撃殺虫ネットで覆蓋するから、多数の害虫が飛来しても、これが植物に取りつくのを阻止して直ちに高電圧により殺虫することができ、それにより従来のように大量の害虫が植物に取りついた後に駆除する方式に比較して、設備及び設置スペースを大幅に節減することができ、特に電撃殺虫ネットにより遮光を兼ねることができると共に、鳥や野生動物をも電撃により撃退することができるのである。
【0010】
本願第2発明の露地水耕栽培装置によれば、上記第1発明の効果に加え、横方向から飛来する小型害虫はそれに適した四周電撃殺虫ネットにより、上方から飛来する大型害虫はそれに適した上面電撃殺虫ネットによりそれぞれ殺虫することができる。又上面電撃殺虫ネットの網目を大きくすることにより、栽培槽内の風通しを良くする利点もえられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明における上記内、外2層の金属線ネットの各網目の大きさは、害虫の大きさ、遮光作用、風通し等を考慮して適宜選択される。
【0012】
又、内、外金属ネットの小間隔は、印加する高電圧に応じ、内、外金属線ネット間に害虫が入りこんだとき放電が生じ、該放電電流によって害虫を感電死させるに適した間隔に選定する。
【実施例】
【0013】
第1発明の実施例
以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1、2図において、上面を開口した横長の扁平箱形栽培槽(1)を水平に設置し、該栽培槽(1)内に入れた培養液(2)の液面に、植物(P)…を植えた多数枚の発泡スチロール製パネル(3)…を互に隣接状態に浮かべ、この栽培槽(1)の開口上面に、該栽培槽(1)と平面広さの等しい下面開口のネット支持フレーム(4)を長手方向に走行自在に載置し、該支持フレーム(4)上に、遮光ネットを兼ねる電撃殺虫ネット(5)を上記植物全体を覆う状態に支持してある。
【0014】
上記支持フレーム(4)は、柱、梁、桟からなる下面開口のほぼ箱形枠体で、その走行構造は、上記枠体における左右長尺側枠(4a)、(4a)下端に、複数づつの車輪(6)…、(6)…を取りつけると共に、上記栽培槽(1)の左右長尺側壁(1a)、(1a)の上面に、上記車輪(6)…、(6)…が走行すべきレール(7)、(7)を敷設すると共に、栽培槽(1)後端から、上記左右長尺側壁(1a)、(1a)の延長方向に、レール橋(8)、(8)を延設し、該レール橋(8)、(8)上に、上記レール(7)、(7)と連続するレール(9)、(9)を敷設してある。
【0015】
なお、上記支持フレーム(4)の前端面に、該前端面全面を開くドア(10)を設け、該ドア(10)全面に金網を張ってある。
【0016】
上記電撃殺虫ネット(5)は、図3、4に示すように、まず電気絶縁性で、一例として厚さ3〜4mmの合成樹脂桟により荒目の格子状絶縁枠(11)を組立て、この絶縁枠(11)の内側に、鋼線により一例として網目2〜3mmの格子状に編成してなる内側金属線ネット(12)を、外側に、鋼線により一例として網目5〜7mmの格子状に編成してなる外側金属線ネット(13)をそれぞれ張設し、それにより内外2層の金属線ネット(12)、(13)を小間隔(3〜4mm)をあけて対面させている。
【0017】
上記電撃殺虫ネット(5)に交流電源を使用する場合は、一例として昇圧器及び整流器により、又直流電源を使用する場合は、一例としてパルス発振器、昇圧器及び整流器により、それぞれ900V〜5000Vの高電圧に高め、これを上記内側金属線ネット(12)をプラス電極として、上記外側金属線ネット(13)をマイナス電極としてそれぞれ接続する。
【0018】
上例の露地水耕栽培装置の作用及び使用例について説明する。
ネット支持フレーム(4)を栽培槽(1)の開口上面に位置させた図1の状態において、上記支持フレーム(4)を、その前端のドア(10)を開いた後、栽培槽(1)のレール(7)、(7)ついで橋(8)のレール(9)、(9)に沿って後方へ走行させて橋(8)上に後退させ、栽培槽(1)の上面を開放する。
【0019】
そこで、作業員が各パネル(3)…に植物の苗を植えつける。
【0020】
ついで、支持フレーム(4)をレール(9)(9)、(7)(7)に沿って栽培槽(1)の上面に移動させ、ドア(10)を閉じると、電撃殺虫ネット(5)により植物全体を覆い、その2層の金属線ネット(12)、(13)により太陽光を適度に遮光した状態で栽培を開始すると共に、電撃殺虫ネット(5)の内側金属線(12)をプラス極、外側金属線(13)をマイナスを極として高圧電流を流し、害虫の飛来に備える。
【0021】
飛来した害虫は、まず網目の広い外側金属線ネット(13)に至り、ついで外側ネット(13)の網目をくぐって、網目の細い内側ネット(12)に至ると、高電圧の電撃ショックを受けて死滅する。このように多数の害虫が飛来しても、これらを植物に取りつく前に、ことごとく殺虫する。
【0022】
なお、上記電撃殺虫ネット(4)による遮光は、春、夏、秋に特に必要である。
【0023】
第2発明の実施例
図5において、電撃殺虫ネット(25)は、四周を囲む四周電撃殺虫ネット(25a)と、その上面を覆う上面電撃殺虫ネット(25b)とからなり、そのうち上記四周電撃殺虫ネット(25a)における内側金属線ネットは、小型害虫の通過しにくい2〜3mmの網目に、外側金属線ネットは、小型害虫の通過を許す5〜7mmの網目のものにし、又上面電撃殺虫ネット(25b)における内側金属線ネットは、大型害虫の通過しにくい10〜15mmの網目に、外側金属線ネットは、大型害虫の通過を許す30〜50mmの網目のものにし、又内、外金属線ネットの間隔は、上記四周電撃殺虫ネット(25a)では、3〜4mm、上記上面電撃殺虫ネット(25b)では、10〜15mmとした。
【0024】
四周電撃殺虫ネット(25a)には、電圧1500Vを、四面電撃殺虫ネット(25b)には、電圧2500Vをそれぞれ印加した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1発明による露地水耕栽培装置の一部省略縦断側面図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】図2のIII−III線拡大断面図である。
【図4】(イ)内側金属線ネットの一部の拡大平面図である。 (ロ)絶縁枠の一部の拡大平面図である。 (ハ)外側金属線ネットの一部の拡大平面図である。
【図5】第2発明による露地水耕栽培装置の拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、21 栽培槽
2、22 培養液
3、23 パネル
P、P20 植物
5、25 電撃殺虫ネット
12 内側金属線ネット
13 外側金属線ネット
25a 四周電撃殺虫ネット
25b 上面電撃殺虫ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を入れた上面開口の槽内に、植物植設パネルを、その植物の根を培養液に浸した状態で、保持した露地水耕栽培槽において、
上記露地水耕栽培槽の開口上面に、電撃殺虫ネットを、遮光ネットとして上記植物を覆った状態で、覆蓋し、
上記電撃殺虫ネットは、互に小間隔をあけて対面する少くとも内、外2層の導電性金属線ネットからなり、そのうち内側金属線ネットは害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、
上記内、外金属線ネットの一方をプラス極、他方をマイナス極として高電圧を印加した、
植物の露地水耕栽培装置。
【請求項2】
培養液を入れた上面開口の槽内に、植物植設パネルを、その植物の根を培養液に浸した状態で、保持した露地水耕栽培槽において、
上記露地水耕栽培槽の開口上面に、電撃殺虫ネットを、遮光ネットとして上記植物を覆った状態で、覆蓋し、
上記電撃殺虫ネットは、四周を囲む四周電撃殺虫ネットと、その上面を覆う上面電撃殺虫ネットからなり、その各電撃殺虫ネットは、互に小間隔をあけて対面する少くとも内、外2層の導電性金属線ネットからなり、そのうち上記四周電撃殺虫ネットにおける内側金属線ネットは小型害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは小型害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、又上記上面電撃殺虫ネットにおける内側金属ネットは大型害虫の通過しにくい網目に、外側金属線ネットは大型害虫の通過を許す網目にそれぞれ形成し、
上記四周及び上面電撃殺虫ネットにおける内、外金属線ネットの一方をプラス極、他方をマイナス極として高電圧を印加した、
植物の露地水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35506(P2010−35506A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203711(P2008−203711)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】