説明

青汁用粉末およびその製法

【課題】味,のど越し等において、摂取時の抵抗感が殆どなく、低コストで、栄養価,生理活性等に優れた、全く新規な青汁用粉末およびその製法を提供する。
【解決手段】グリーンアスパラガス粉末とホワイトアスパラガス粉末との混合粉末からなる青汁用粉末であって、プロトディオシンの含有割合が0.65〜1.30mg/gであり、ルチンの含有割合が3.2〜4.3mg/gであり、アスパラギン酸の含有割合が36.0〜39.2mg/gである青汁用粉末とする。そして、グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部とを、凍結乾燥し、これらを粉砕混合することにより、上記青汁用粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青汁用粉末およびその製法に関するものであり、詳しくは、その材料にアスパラガスを用いた青汁用粉末およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代人の食生活において、野菜の摂取不足は深刻である。野菜の摂取が足りないと、食物繊維、ビタミン、ミネラルの補給が不充分となり、人々の健康維持に支障をきたすおそれがある。このような問題を手軽に解決するものとして、近年、「青汁」と呼ばれる飲料品が注目されている。青汁とは、一般に、ケール,大麦若葉等の、食物繊維,ビタミン,ミネラルに富んだ緑色野菜を粉砕して水に溶かしたもののことを言い、青緑色を呈している。一般に市販されている青汁は、保存性,取り扱い性等の観点から、水に溶かす前の粉末状のものが多い。
【0003】
このような青汁用粉末は、上記のように水に溶かして摂取するのが一般的であるが、人によっては、例えば、牛乳等の飲料に溶かして摂取する場合や、あるいは粉末のまま摂取する場合もある。また、青汁用粉末は、通常、一回の摂取分が小袋に分けられていることから、携帯性に優れるとともに、手軽に摂取が可能であり、野菜の摂取不足を手軽に解決するものとして有用である。
【0004】
また、従来の青汁および青汁用粉末は、特有の苦味や渋味を有するものや、固形物由来のバサつき感からなるのど越し等の不快感を有するものが多く、そのため、青汁および青汁用粉末に対し、飲用の際に抵抗感を抱く人が少なくない。このことから、近年、例えば、ビートオリゴ糖の原料である甜菜の乾燥粉末をケール等の青汁粉末に添加し、青臭さや苦味を抑える手法や、また、緑色野菜全草粉末に緑色野菜搾汁の凍結乾燥物を混合し、粉砕した粗材を用いて造粒することにより、のど越しの不快感を抑える手法等が開発されている(特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−204605公報
【特許文献2】特開2008−86311公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、健康維持の観点から、青汁用粉末の需要は拡大傾向にあり、また、上記特許文献に開示の手法により、味,のど越し等の、青汁特有の抵抗感は改良されてきている。
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に開示の手法では、甜菜の使用によりケール等の含量が抑えられるため、その分、目的とする栄養素の含量が少なくなるといった問題がある。また、特許文献1に開示の手法は、甜菜を含め、複数種の原料の処理を要することから、製造プロセスが複雑化し、その結果、製造コストの増大が懸念される。一方、特許文献2に開示の手法は、緑色野菜全草の凍結乾燥粉末とは別に、緑色野菜の搾汁だけを凍結乾燥させて粉末化し、さらに造粒するというように、かなり複雑な製造プロセスをとることから、製造装置がきわめて複雑になり、製造コストの増大が懸念される。
【0008】
また、ケール,大麦若葉等といった従来からの青汁用材料を利用するのではなく、他の植物を利用することにより、従来の青汁にない機能性を発揮し、健康維持に寄与する新たな商品の開発も望まれている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、味,のど越し等において、摂取時の抵抗感が殆どなく、低コストで、栄養価,生理活性等に優れた、全く新規な青汁用粉末およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、グリーンアスパラガス粉末とホワイトアスパラガス粉末との混合粉末からなる青汁用粉末であって、プロトディオシンの含有割合が0.65〜1.30mg/gであり、ルチンの含有割合が3.2〜4.3mg/gであり、アスパラギン酸の含有割合が36.0〜39.2mg/gである青汁用粉末を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記青汁用粉末の製法であって、グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部とを、凍結乾燥し、これらを粉砕混合する青汁用粉末の製法を第2の要旨とする。
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため一連の研究を重ねた。その研究の過程において、ケール,大麦若葉等といった従来からの青汁用材料を利用するのではなく、他の植物の利用を検討した結果、アスパラガスの「切り下」と呼ばれる部位を利用することを想起した。ここで、アスパラガスの「切り下」とは、畑で刈り取られたアスパラガス(その穂先から約25〜30cmのところで刈り取られる)から、食用部分(その穂先から約21〜25cm。「ホール部」とも言う)を切り揃えた際に出る不要部分(畑で刈り取られたアスパラガスの下端から4〜5cmの部分)のことを言う。アスパラガスは、栄養価の高い食材として知られているが、アスパラガスの「切り下」は、硬く繊維質で、色も淡いことから、通常の食用には適さず、これまでは、その殆どが、産業廃棄物として処分されるか、家畜の飼料として利用されるかしかなかった。本発明者らは、上記のような切り下部を青汁用材料として有効利用することにより、コスト面の問題を解消するとともに、上記のような切り下部であっても、粉末状にして青汁の材料にすれば、高い付加価値をつけることが可能となる点に着目した。
【0013】
そして、上記のような着想に基づき、本発明者らが実際に、グリーンアスパラガスの切り下部を粉末状にしたものから青汁を調製してみたところ、味が非常に薄く、色調も薄いものであり、青汁としての印象は良くないことから、飲用には適さないものであった。しかしながら、成分分析により、ルチン,アスパラギン酸といった栄養素を含量することを突き止めた。ルチンは、フラボノイドの一種である抗酸化栄養素であり、心臓病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の予防に役立つといわれており、アスパラガスの特徴的な栄養素である。アスパラギン酸は、体内の老廃物の処理、肝機能の促進、身体の疲労回復などに効果が見込まれており、これもアスパラガスの特徴的な栄養素である。また、ホワイトアスパラガスの切り下部を粉末状にしたものに対しても、上記と同様、実際に試作してみたところ、非常に苦く、飲用には到底適さないものであった。この苦味の原因は、ホワイトアスパラガスの切り下部に特に多く含まれるサポニンの一種であるプロトディオシンという成分であり、上記のように苦みは生じるが、ヒト骨髄性白血病細胞を攻撃する作用を有するとの報告もあり(C.K.Chin et al., Acta Hort)、これによるガン抑制効果なども期待できる。しかも、この成分は、一般に食される他の野菜は勿論、グリーンアスパラガスにもほとんど含まれない成分である。そのため、本発明者らは、上記のような苦みの問題等を解消するとともに、これらの成分を積極的に取り入れることにより、青汁の付加価値を高めることを検討した。そこで、グリーンアスパラガスの切り下部とホワイトアスパラガスの切り下部とを併用し、さらに、味,色彩,のど越し等の改善のため、グリーンアスパラガスのホール部(通常の食用部分)も適量加え、これらを混合し粉末化し、そのプロトディオシン含量,ルチン含量およびアスパラギン酸含量が特定の範囲となるよう設定したところ、味,のど越し等の飲用時の問題も解消され、さらに、栄養素のバランスにも優れるようになり、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の青汁用粉末は、グリーンアスパラガス粉末とホワイトアスパラガス粉末との混合粉末からなり、そのプロトディオシン含量が0.65〜1.30mg/g,ルチン含量が3.2〜4.3mg/g,アスパラギン酸含量が36.0〜39.2mg/gの範囲となるよう設定されている。このように各栄養素の含量が設定されているため、栄養価,生理活性等に優れるとともに、味,のど越し等の抵抗感(青臭さ、苦み等)を抑えることができ、これらのバランスに優れた、全く新規な青汁用粉末を提供することができる。そして、本発明の青汁用粉末は、上記各栄養素の割合から、従来において廃棄処分の対象でしかなかったアスパラガスの切り下を材料として利用することにより得られたものであり、このことから、低コスト化も達成することができる。
【0015】
特に、本発明の青汁用粉末は、その平均粒径が150μm以下であると、水に溶けやすく、飲みやすいものとなる。
【0016】
本発明の青汁用粉末は、グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部とを、凍結乾燥し、これらを粉砕混合することにより、上記のような栄養素の割合となるよう効率的に製造することができる。また、従来の青汁において課題であった、青臭さ, 苦味, のど越しの悪さなどを回避させるための複雑な製造プロセスを採る必要がなく、また対象の野菜であるアスパラガスのみで青汁用粉末を調製することが可能となる。
【0017】
特に、上記凍結乾燥後のグリーンアスパラガスのホール部を48〜64重量%、凍結乾燥後のグリーンアスパラガスの切り下部を12〜16重量%、凍結乾燥後のホワイトアスパラガスの切り下部を20〜40重量%の割合で使用すると、上記のような栄養素の割合となるよう効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】
本発明の青汁用粉末は、先に述べたように、グリーンアスパラガス粉末とホワイトアスパラガス粉末との混合粉末からなり、そのプロトディオシン含量が0.65〜1.30mg/g,ルチン含量が3.2〜4.3mg/g,アスパラギン酸含量が36.0〜39.2mg/gの範囲である。このように各栄養素の割合を設定することにより、栄養価,生理活性等に優れるとともに、味,のど越し等の抵抗感を抑えることができ、これらのバランスに優れたものとすることができる。
【0020】
ユリ科の多年生植物であるアスパラガスは、かつては、国内では長野県や北海道などの冷涼な地域が主な生産地とされていたが、最近では栽培設備の改善により、佐賀県など九州地方での生産も盛んに行われてきている。また、近年の食文化の多様化により、需要が拡大している食材の一つでもある。アスパラガスは、苗を植えてから3年目に収穫を開始し、根に養分を蓄えた地下の茎から伸び出した若い茎を毎年収穫し、これを食材としている。また同じ株からの収穫は8〜10年が可能であるとされている。さらに、収穫が最盛期となる初夏には、1日に5cm以上も伸びるとされている。このアスパラガスの収穫の際には、まずは畑にて穂先から約30cmのところで刈り取り、これを屋内の野菜処理場などで穂先から25cmに切り揃え、計量して選別機にて規格ごとに分別して出荷する。なお、北海道では、気温がかなり低いことから、北海道外産よりも生育が遅くなるため、前述の若干基準が異なっており、畑にて穂先から約25cmのところで刈り取り、これを屋内の野菜処理場などで穂先から21cmに切り揃えている。この際に野菜処理場などで切断された4〜5cmの残渣が、切り下と呼ばれるものであり、アスパラガス生産量の15%程度に相当し、例えば北海道では、年間750トンもの切り下が生じると推算されている。この切り下は、通常の食用には適さないため、これまでは、その殆どが産業廃棄物として処分されてきたが、本発明により、高い付加価値を持って有効活用することが可能となる。
【0021】
そして、本発明の青汁用粉末は、上記各栄養素の割合から、アスパラガスの切り下を材料として利用することにより得られたものである。このことから、本発明の青汁用粉末は、低コスト化も達成することができる。このような青汁用粉末は、従来にない全く新規なものである。
【0022】
なお、本発明の青汁用粉末において、そのプロトディオシンの含有割合の測定は、例えば、その水溶液を遠心分離して得られた上清液を、陽イオン交換カラム等を用いて精製し、それを分析試料として、薄層クロマトグラフィーにより展開した後、試料スポットをアニスアルデヒド調製液により染色し、その濃度を、画像分析ツールにより測定し、プロトディオシン標準品を使用した場合の濃度と対比することにより行われる。
【0023】
また、本発明の青汁用粉末におけるルチンの含有割合は、例えば、高速クロマトグラフィーにより分析測定することができる。また、アスパラギン酸の含有割合の測定は、例えば、全自動アミノ酸分析機(日本電子株式会社製、型番:JLC−500/V)を用いて、ニンヒドリン法にて分析することにより、測定することができる。
【0024】
そして、本発明の青汁用粉末は、その平均粒径が150μm以下であると、水に溶けやすく、飲みやすいものとなるため、このような粒径になるまで粉砕することが好ましい。なお、このような青汁用粉末の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(型番:SALD−3000、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
【0025】
本発明の青汁用粉末は、グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部とを、凍結乾燥し、これらを粉砕混合することにより、上記のような栄養素の割合となるよう効率的に製造することができる。特に、上記凍結乾燥後のグリーンアスパラガスのホール部を48〜64重量%、凍結乾燥後のグリーンアスパラガスの切り下部を12〜16重量%、凍結乾燥後のホワイトアスパラガスの切り下部を20〜40重量%の割合で使用し、粉砕混合すると、上記のような栄養素の割合となるよう効率的に製造することができるため、好ましい。また、上記のように、粉砕前の材料を定量し、これらを同時に粉砕することにより、目的とする青汁用粉末を、簡易かつ効率的に製造することができる。
【0026】
ルチンは、グリーンアスパラガスに多く含まれ、特にグリーンアスパラガスの穂先に多く含まれる。また、アスパラギン酸は、グリーンアスパラガス全体に、略均一に含まれる。プロトディオシンは、ホワイトアスパラガスの切り下部に集中して多く含まれる。コスト面だけを検討すると、本発明の青汁用粉末は、切り下部のみを材料としたほうがよいことは明らかであるが、味,色彩,のど越し等を改善するとともに、目的とする栄養素のバランスを達成するため、上記のように、グリーンアスパラガスのホール部が所定量使用される。
【0027】
そして、本発明の青汁用粉末は、その材料のすべてがアスパラガスであるため、目的とする種類の野菜を100%利用したものといえる。また、製造プロセスも複雑ではなく、製造装置も、従来のものがそのまま利用でき、その運転エネルギーも抑えることができる。
【0028】
なお、上記凍結乾燥は、例えば、凍結させた上記各材料を、真空凍結乾燥装置に投入し、含水量が5.0%以下となるまで乾燥させることにより行われる。また、上記粉砕には、例えばホソカワミクロン社製のビクトリミルのように、試料粉末の平均粒径が150μm以下になるまで粉砕可能な粉砕機が、好適に用いられる。
【0029】
このようにして得られた青汁用粉末は、水に溶かすことにより、青汁とすることができる。また、このように微粉末化されているため、あらゆる飲食品に対し容易に添加等することができる。具体的には、スープ,インスタント食品,パン,菓子,ふりかけ,食肉水産加工品,乳飲料,清涼飲料水等の一般的な飲食品をはじめ、健康食品や、スパイス,ドレッシング等の調味食品等があげられる。
【0030】
つぎに、実施例について説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
まず、収穫し水洗したアスパラガスの各部位(グリーンアスパラガスのホール部、グリーンアスパラガスの切り下部、ホワイトアスパラガスの切り下部)を、ステンレスメッシュのトレーに入れ、そのまま95℃の熱湯に2分間入れることにより、ブランチングを行った。つぎに、冷水にて20℃以下になるまで冷却し、水切りしてトレーに入れ、−20℃にて24時間保持し、凍結させた。ついで、10℃の冷蔵庫に移し、6時間保持することで半解凍した。これを常温に取り出して、約2mmの厚さでスライスした。これをトレーに移して、−30℃にて12時間保持し、凍結させた。そして、これを真空凍結乾燥用のアルミニウム製のトレーに移し、真空凍結乾燥装置に投入した。真空凍結乾燥は、2時間かけて減圧し、0.15mmHg(20Pa)とした。この時のアスパラガスの各部位の温度は−30℃以下であった。その後、乾燥棚の温度を9時間かけて60℃まで上昇させ、さらに棚温度60℃のままで、10時間維持した。その後、6時間かけて棚温度を45℃まで低下させ、その後、15時間維持して、これをもって真空乾燥を終了とした。
【0032】
ここで赤外線水分計(型番:FD−610、ケット科学研究所社製)により、上記凍結乾燥後のアスパラガスの各部位の水分測定を行い、その含水率が5.0%以下であることを確認した。
【0033】
そして、上記凍結乾燥後のアスパラガスの各部位を、下記の表1に示す割合(重量%)で、ビクトリミル(型番:VP・1、ホソカワミクロン社製)に投入し、攪拌速度12000rpmで25分間粉砕かつ混合して、150μm以下に分級することにより、青汁用粉末サンプルA〜Eを調製した。
【0034】
【表1】

【0035】
つぎに、上記のようにして得られた青汁用粉末サンプルA〜E中の、プロトディオシン, ルチン, アスパラギン酸について分析し、その含有割合を測定した。ここで、プロトディオシンの分析・測定は、以下に示す方法に従い行った。ルチンの分析・測定については、高速クロマトグラフ法により行った。アスパラギン酸の分析・測定については、全自動アミノ酸分析機(日本電子株式会社製、型番:JLC−500/V)を用い、ニンヒドリン法により行った。これらの結果を、後記の表2に示す。なお、ここではサンプル1g中の各測定成分の量をmgで表記している。
【0036】
〔プロトディオシンの分析方法〕
エタノール(和光純薬工業社製、純度99.5%)を純水にて、70重量%に調製した。これにより得られた70重量%エタノール500μlに、青汁用粉末サンプル50mgを添加し、試験管内で共振周波数38kHzにて2時間超音波分散に供した。ついで、15000rpmで10分間遠心分離して、その上清液を採取した。この上清液を純水で4倍に希釈し、陽イオン交換カラム(ボンドエリュートC18固相カートリッジ、Varian社製)に通し、プロトディオシンを保持させた。そして、純水で糖などの不純物を除去した後、99.5重量%エタノール4mlにプロトディオシンを溶出させ、遠心エバポレータにて、40℃, 10時間で濃縮乾固した。これを500μlの70重量%エタノールに定溶したものを分析試料として、薄層クロマトグラフィーにより展開した後、試料スポットをアニスアルデヒド調製液により染色し、その濃度を、画像分析ツールにより測定し、プロトディオシン標準品を使用した場合の濃度と対比することにより、プロトディオシンの含有割合を測定した。
【0037】
なお、上記薄層クロマトグラフィーには、HPTLCプレート・シリカゲル60(MERCK社製)を用い、これにメタノール(和光純薬工業社製、純度99.7%以上)を展開した後に、80℃の恒温機に30分間以上放置して、プレートを活性化させ、その後、マイクロピペットを用いて、プレート上に、試料溶液およびプロトディオシン標準品溶液(Chromadex社製)をそれぞれ1μlスポットし、、エタノール(和光純薬工業社製、純度99.5%):アセトニトリル(関東化学社製、純度99.8%以上):クロロホルム(和光純薬工業社製、純度99%以上):水=:4:2:4:0.5の重量比率で調製した展開溶媒により、分析試料の展開を行った。また、上記アニスアルデヒド調製液による試料スポットの染色は、エタノール(和光純薬工業社製、純度99.5%)を204ml、硫酸(和光純薬工業社製、純度96%以上)を7.5m1、酢酸(和光純薬工業社製、純度99.7%以上)を3.6ml、p−アニスアルデヒド(和光純薬工業社製、純度97%以上)を5.7g採取、秤量し、混合して調製したアニスアルデヒド調製液に、試料スポット展開後のプレートを1秒間浸漬し、その後、100℃の恒温機内に5分間静置することにより行った。このとき、プロトディオシンのスポットは緑色を呈し、他のスポットと区別できる。また、上記染色後のスポット濃度の測定は、詳しくは、その撮影画像を、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所・開発)のゲル解析ツールにて、面積とピクセル値を計算し、電気泳動ゲル写真のバンドの濃度測定を行う方法にてスポット濃度を画像解析することにより行った。そして、プロトディオシン標準品を使用した場合にも同様に、同様の手法でスポット濃度を測定し、試料スポットの濃度と対比することにより、プロトディオシンの含有割合を測定した。
【0038】
【表2】

【0039】
このように、青汁用粉末サンプルA〜Eには、プロトディオシン, ルチン, アスパラギン酸が、上記表2に示す割合で含有することが確認された。
【0040】
つぎに、上記青汁用粉末サンプルA〜Eに対し、以下の基準に従い、官能評価を行った。なお、評価試験者の構成は、性別および年齢層から試験者群I〜IVを構成し、各人数は、下記の表3の通りとした。
【0041】
【表3】

【0042】
すなわち、まず、青汁用粉末サンプル2gを秤量し、これを、液温7℃のミネラルウォータ−(AW・ウォーター、エア・ウォーター・ハローサポート社製)100mlに投入した後、よく攪拌し、青汁を調製した。
【0043】
そして、このようにして青汁用粉末サンプルA〜Eを用いて調製した青汁を、先に述べた評価試験者全員に飲ませ、飲用時の「青臭さ」, 「苦味」, 「のど越し」について、「飲用に全く問題ない(気にならない)」場合を最高点の5点、「飲用に非常に問題がある(気になる)」場合を最低点の1点として、5段階評価で採点させた。
【0044】
そして、各サンプルに対し、各試験者群別に、上記採点評価の平均値を算出し、さらに、これら試験者群別の平均値をもとに、総合的な平均をとったものを、平均評価とし、各サンプル毎に、「青臭さ」, 「苦味」, 「のど越し」についての平均評価を算出した。そして、これらの値を、下記の表4〜表8に併せて示した。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
上記表4〜8の結果より、サンプルAでは、「のど越し」の平均評価が3以下を示す(2.8)ため、非常に飲みにくいものであった。また、相対的に、サンプルB<サンプルC<サンプルD<サンプルEの順で、評価が上がる傾向が見受けられた。このことから、ホワイトアスパラガスの切り下部の割合が比較的多い方が、「青臭さ」, 「苦味」, 「のど越し」の点に関しては飲用において問題が少なくなると考えられる。なお、サンプルEにおいて、ホワイトアスパラガスの切り下部の割合が多いにもかかわらず、苦みが抑えられたのは、グリーンアスパラガス内の糖分およびその他の成分や、ブレンドの兼ね合いにより、官能的には苦みが抑えられる結果になったと考えられる。
【0051】
なお、表2より、サンプルA<サンプルB<サンプルC<サンプルD<サンプルEの順で、プロトディオシンの含有量が増えていた。これは、プロトディオシンがホワイトアスパラガスの方に極めて多く存在する成分であるためである。また、ルチンとアスパラギン酸は、サンプルE<サンプルD<サンプルC<サンプルB<サンプルAの順となった。これは、ルチンとアスパラギン酸が、グリーンアスパラガスには多く、ホワイトアスパラガスには少なく含まれることに起因していると考えられる。
【0052】
従って、飲用試験の評価結果と、3つの含有成分から勘案した結果、飲用時の不快感、抵抗感なく飲用できる上に、プロトディオシン, ルチン, アスパラギン酸というアスパラガスを代表とする3つの栄養素を摂取できる組み合わせはサンプルB, C, Dと結論付けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の青汁用粉末は、水に溶かすことにより、青汁とすることができるが、それ以外にも、あらゆる飲食品に対し容易に添加等することができ、例えば、スープ,インスタント食品,パン,菓子,ふりかけ,食肉水産加工品,乳飲料,清涼飲料水等の一般的な飲食品をはじめ、健康食品や、スパイス,ドレッシング等の調味食品等に対して適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンアスパラガス粉末とホワイトアスパラガス粉末との混合粉末からなる青汁用粉末であって、プロトディオシンの含有割合が0.65〜1.30mg/gであり、ルチンの含有割合が3.2〜4.3mg/gであり、アスパラギン酸の含有割合が36.0〜39.2mg/gであることを特徴とする青汁用粉末。
【請求項2】
平均粒径が150μm以下である請求項1記載の青汁用粉末。
【請求項3】
グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部との凍結乾燥粉末からなる請求項1または2記載の青汁用粉末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の青汁用粉末の製法であって、グリーンアスパラガスのホール部および切り下部と、ホワイトアスパラガスの切り下部とを、凍結乾燥し、これらを粉砕混合することを特徴とする青汁用粉末の製法。
【請求項5】
上記凍結乾燥後のグリーンアスパラガスのホール部を48〜64重量%、凍結乾燥後のグリーンアスパラガスの切り下部を12〜16重量%、凍結乾燥後のホワイトアスパラガスの切り下部を20〜40重量%の割合で使用する請求項4記載の青汁用粉末の製法。

【公開番号】特開2010−273575(P2010−273575A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127602(P2009−127602)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】