説明

青色光バイオスイッチ

【課題】 LKP1、LKP2、およびそのC82A変異を用いた青色光によるバイオスイッチで、青色光の量により、相互作用のオン/オフ、ならびに、強光による遺伝子導入生物の殺傷が可能である技術の提供。
【解決手段】 青色光による遺伝子の発現制御に、LKP1、LKP2、変異型LKP1および/または変異型LKP2を用いることを特徴とする青色光による遺伝子発現制御方法。植物ウイルス由来のプロモーターの下流に、LKP2のプロモーターを介してLOVドメイン、F-boxおよびケルヒ繰り返しを有するLKP2遺伝子が発現ベクターに連結されている青色光による遺伝子発現制御に用いるための合成遺伝子。 生物の細胞、組織、もしくは器官または生物全体に対し、青色光による遺伝子転写のオン/オフによる遺伝子発現制御のためにする当該合成遺伝子の使用。当該合成遺伝子を含む細胞、組織、器官または生物全体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LKP1、LKP2、およびそのC82A変異を用いた青色光によるバイオスイッチに関する。
本発明において用いる略語は以下のとおりである。
ADO ADAGIO
APRR シロイヌナズナ偽応答調節因子
ASK シロイヌナズナSkp1様タンパク質
CaMV カリフラワーモザイクウイルス
CCA1 概日時計関連因子1
CO CONSTANS
CRY クリプトクローム
FKF1 フラビン結合性ケルヒ繰り返しF-box 1
FKL FKF様
GFP 緑色蛍光タンパク質
GUS β-グルクロニダーゼ
LHY late elongated hypocotyl-1[後期伸長化胚軸因子-1]
LKP2 LOVケルヒタンパク質2
PHOT フォトトロピン
PHY フィトクローム
SCF Skp1ーCullin-F-boxタンパク質
TOC1 timing of cab expression 1[CAB発現タイミング因子1]
YFP 黄色蛍光タンパク質
ZTL ZEITLUPE
【背景技術】
【0002】
根、葉、茎の十分な生育とともに抽台時期ならびに開花時期を制御することができる主要作物や高価な花卉類など園芸植物のトランスジェニック植物の作製方法や、該作製方法により得られるトランスジェニック植物を提供することを目的として、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモータの下流に、LOVドメイン及びケルヒ(kelch)繰返しを有する青色光受容体タンパク質LKP1のプロモータを介して該LKP1遺伝子が連結されている発現ベクターにより植物を形質転換し、青色光受容体タンパク質を過剰発現するトランスジェニック植物を作製する発明が既に出願されている(特許文献1)。
【0003】
これまで、導入遺伝子の発現制御には化学物質受容体を用いる例がほとんどであり、青色光受容体であるLKPファミリータンパク質、あるいは、そのLOVドメインを単体で用いた例はない。化学物質で遺伝子発現を誘導する場合には、その化学物質のコスト、生体、環境に与える影響が問題となる。植物では光で発現誘導が起こるCAB遺伝子等のプロモータを遺伝子発現に利用する例はあるが、この場合は内在の光受容体とシグナル伝達系を用いるため、反応に必要な因子が多く、植物以外の生物には用いることができなかった。また、遺伝子組換え個体や細胞だけを必要に応じて非遺伝子組換え個体や非遺伝子組換え細胞が混在する集団から殺すことは従来技術では困難であった。
【特許文献1】特開2001−352851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、LKP1、LKP2、およびそのC82A変異を用いた青色光によるバイオスイッチで、青色光の量により、相互作用のオン/オフ、ならびに、強光による遺伝子導入生物の殺傷が可能である技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)〜(8)の青色光による遺伝子発現制御方法を要旨とする。
(1)青色光による遺伝子の発現制御に、LKP1、LKP2、変異型LKP1および/または変異型LKP2を用いることを特徴とする青色光による遺伝子発現制御方法。
(2)LKP1、LKP2のLOVドメインと相互作用因子とのタンパク質相互作用が青色光に依存してオン/オフされる青色光スイッチを利用する上記(1)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(3)相互作用因子がTOC1および/またはAPRR5である上記(2)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(4)LKP2のF-box領域と、ASKとの相互作用が青色光に依存してオン/オフされる青色光スイッチを利用する上記(1)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(5)導入されたLKP1遺伝子、LKP2遺伝子、変異型LKP1遺伝子および/または変異型LKP2遺伝子の転写がオン/オフされる上記(1)ないし(4)のいずれかの青色光による遺伝子発現制御方法。
(6)LKP2遺伝子が、植物ウイルス由来のプロモータの下流に、LKP2のプロモータを介してLOVドメイン及びケルヒ繰返しを有するLKP2遺伝子が連結されている発現ベクターにより導入された遺伝子である上記(5)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(7)LKP2のプロモータの下流に、β−グルクロニダーゼ遺伝子を介して、LKP2遺伝子が連結されている遺伝子である上記(6)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(8)LKP2のプロモータのプロモータとして、LKP2の1.6kbの5′非コーディング領域を用いることを特徴とする上記(6)または(7)の青色光による遺伝子発現制御方法。
(9)上記(1)ないし(8)のいずれかの青色光による遺伝子発現制御方法を用いることを特徴とする青色光による植物の生育制御方法。
【0006】
本発明は、以下の(10)〜(12)の合成遺伝子を要旨とする。
(10)植物ウイルス由来のプロモータの下流に、LKP2のプロモータを介してLOVドメイン、F-boxおよびケルヒ繰り返しを有するLKP2遺伝子が発現ベクターに連結されている青色光による遺伝子発現制御に用いるための合成遺伝子。
(11)LKP2のプロモータの下流に、β−グルクロニダーゼ遺伝子を介して、LKP2遺伝子が連結されている上記(10)の合成遺伝子。
(12)LKP2のプロモータのプロモータとして、LKP2の1.6kbの5′非コーディング領域を用いる上記(10)または(11)の合成遺伝子。
【0007】
本発明は、以下の(13)〜(16)の合成遺伝子の使用を要旨とする。
(13)生物の細胞、組織、もしくは器官または生物全体に対し、青色光による遺伝子転写のオン/オフによる遺伝子発現制御のためにする請求項10、11または12の合成遺伝子の使用。
(14)生物が植物であるの上記(13)の使用。
(15)生物が酵母であるの上記(13)の使用。
(16)生物が動物であるの上記(13)の使用。
【0008】
本発明は、以下の(17)の細胞、組織、器官または生物全体を要旨とする。
(17)上記(10)、(11)または(12)の合成遺伝子を含む細胞、組織、器官または生物全体。
【発明の効果】
【0009】
LKP1、LKP2のLOVドメインと相互作用因子とのタンパク質相互作用が青色光に依存してオン/オフされるため、これを光スイッチに利用することができる。例えば、酵母2ハイブリッド系のマーカー遺伝子の代わりに任意の遺伝子を繋げば、青色光に依存してその遺伝子の転写がオン/オフできる。また、この系は他生物にも応用可能である。更に、光量に応じて、相互作用のオン/オフだけでなく、遺伝子導入細胞、個体のみを殺傷することも可能である。制御に薬剤を用いないので、化学物質と比べ、低コストであり、環境に与える影響も考慮しなくてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、植物青色光受容体候補遺伝子LKP2の研究を行い、LKP2プロモータ活性が、幼植物体全体、ロゼット葉、根端、萼、若いさやで認められることを明らかにした。なお、LKP2は本発明者らによってアミノ酸配列が示されている(上記の特許文献1参照)。
【0011】
また、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)とLKP2を用いた解析から、LKP2が核タンパク質である証拠を得た。
【0012】
更に、酵母2ハイブリッド系を用いた解析から、LKP2がF-box領域で、ASK1、2、3、4、5、11、14、20a、20bと相互作用すること、LKP2がLKPファミリータンパク質であるLKP1、LKP2、FKF1と相互作用すること、LKP1およびLKP2が各々LOVドメインでTOC1とAPRR5と相互作用することを見いだした。
【0013】
LOVドメインを介したこれらの相互作用は強い光によって影響を受け、赤色、遠赤色、緑色では影響を受けないものの、青色光によって相互作用の阻害効果が認められた。
【0014】
LKP1及びLKP2のLOVドメインに位置する82番目のシステイン残基をアラニン置換した場合、この青色光による効果はさらに顕著となった。
【0015】
野生型のLKP1、LKP2は50μmol photon/m2/secの青色光では野生型のタンパク質を発現する酵母は生育に影響を受けなかったが、変異型のLKP1或いはLKP2タンパク質を発現する酵母は培地上で生育することができなかった。
【0016】
これは導入された変異型青色光受容体LKPタンパク質によって吸収された光エネルギーが生体内物質に悪影響を与えたためだと考えられる。
【0017】
これらの知見から、発明者は青色光バイオスイッチ、すなわち、LKP1、LKP2、変異型LKP1、LKP2を用いた青色光による遺伝子発現制御、生育制御を行う本発明
を完成するに至った。
本発明に係る研究を要約すると以下の通りである。
Arabidopsis thaliana Heynh.[シロイヌナズナ]のADO/FKF/LKP/ZTLファミリータンパク質には、LOVドメイン、F-boxモチーフ、ケルヒ繰り返し領域が一つずつ存在する。LKP2はこのファミリーのメンバーであり、シロイヌナズナの概日オシレータ内部または非常に近傍で機能している[Shultz et al., (2001) Plant Cell 13: 2659-2670]。プロモータ-GUS融合実験により、LKP2遺伝子はロゼット葉において高活性であることが判明した。CaMV35S:LKP2-GFP植物ではGFPに関連する蛍光が核内に検出され、そこからLKP2は核タンパク質であると考えられた。酵母2-ハイブリッド分析によれば、LKP2は一部のシロイヌナズナSkp-1様タンパク質(ASK)と相互作用し、これは他のADO/FKF/LKP/ZTLファミリータンパク質の場合と同様であることが示されているが、そこからLKP2はSCF(Skp1-Cullin-F-boxタンパク質)複合体を形成することが可能であり、これはユビキチンE3リガーゼとして機能すると考えられる。LKP2は自分自身だけでなく、ファミリーの他のメンバーであるLKP1やFKF1とも相互作用する。また2-ハイブリッド分析によれば、LKP2は時計成分であるTOC1と相互作用するが、TOC1遺伝子発現に対する負の調節因子であるCCA1やLHYとは相互作用しないことが示された。LKP2のLOVドメインはTOC1との相互作用について必要かつ十分であることが示された。LKP2とAPRR5(TOC1のパラログ)の相互作用も観察されたが、LKP2は他のTOC1パラログであるAPRR3、APRR7、APRR9と相互作用しなかった。
【0018】
図1に、遺伝子組み換えシロイヌナズナにおけるGUS活性の組織化学的局在化を示す。
LKP2プロモータ-GUS融合遺伝子を含む遺伝子組み換えシロイヌナズナ(T3)植物を、25μg mL-1カナマイシンを含むGM寒天培地上で育成し、続いてバーミキュライトビーズ上で育成した。GUS活性は6日齢の苗木(A)、14日齢のロゼット植物(B)、花(C)、若い長角果(D)、47日齢植物の古い長角果(E)において観察されている。バーはA、C-Eでは1mm、Bでは5mmである。
【0019】
図2に、GFP-LKP2融合タンパク質の細胞内局在を示す。
35S::GFP T3植物(A、B)と35S::GFP-LKP2 T3植物(C-G)の根を、25μg mL-1カナマイシンを含むGM寒天培地上、16時間光照射/8時間暗闇のサイクルで成長させ、これを光学顕微鏡(A、C、E)、蛍光顕微鏡(B、D、G)、共焦点レーザ操作顕微鏡(H)を用いて観察した。35S::GFP-LKP2 T3植物を4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色し、蛍光顕微鏡(F)で観察した。バーはA-Dでは100μm、E-Hでは10μmである。
【0020】
図3に、シロイヌナズナSkp1オーソログ(ASKs)とLKPファミリータンパク質の間の酵母2-ハイブリッド相互作用を示す。
(A)ASKs(ASK1-5、ASK7-14、ASK16-19、ASK20a、ASK20b)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(上)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(下)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。アステリスクは30mM 3-ATを供給してHIS3レポーター遺伝子の基礎活性を抑制したSD-AHLW培地を示し、その結果非特異的バックグラウンド増殖が抑えられている。Clontechより取得した2種類のプラスミドで、GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、アミノ酸72-390(GenBank受入番号#K01700)、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原(GenBank位置SV4CG)をエンコードするものを、陽性対照とした。
(B-D)LKP1、LKP2、FKF1のF-box領域を用いて2-ハイブリッド相互作用試験を行った。試験対象となる全タンパク質の発現は、イムノブロット分析により確認した(データ示さず)。
【0021】
図4に、LKPファミリータンパク質間の2-ハイブリッド相互作用を示す。
(A)LKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体およびGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。アステリスクは30mM 3-ATを供給してHIS3レポーター遺伝子の基礎活性を抑制したSD-AHLW培地を示し、その結果非特異的バックグラウンド増殖が抑えられている。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。
(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。試験対象となる全タンパク質の発現は、イムノブロット分析により確認した(データ示さず)。
【0022】
図5に、LKPファミリータンパク質に対する時計関連因子の相互作用を示す。
(A)時計関連因子(TOC1、CCA1、LHY)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。
(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0023】
図6に、LKP2ドメインに対するTOC1の相互作用を示す。
(A)TOC1のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKP2のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。L:LOVドメイン;F:F-box;K:ケルヒ繰り返し領域;LF:LOVドメイン+F-box;LK:LOVドメイン+ケルヒ繰り返し領域;FK:F-box+ケルヒ繰り返し領域。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0024】
図7に、酵母でのLKPファミリータンパク質に対するAPRR/TOC1ファミリータンパク質の相互作用を示す。
(A)APRR/TOC1ファミリータンパク質(TOC1、APRR3、APRR5、APRR7、APRR9)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。
(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0025】
図8に、LKP2ドメインに対するAPRR5の相互作用を示す。
(A)APRR5のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKP2ドメインまたはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。L:LOVドメイン;F:F-box;K:ケルヒ繰り返し領域;LF:LOVドメイン+F-box;LK:LOVドメイン+ケルヒ繰り返し領域;FK:F-box+ケルヒ繰り返し領域。
(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0026】
図9に、各種光条件下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用を示す。
APRR1/TOC1、APRR5のGAL4
DNA結合ドメイン融合タンパク質またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(−)、ならびにLKP1、LKP2、LKP1 C82A、LKP2
C82AGAL4転写活性化ドメイン融合タンパク質またはGAL4転写活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(−)を含む酵母AH109株をSD-Leu、Trp(SD-LW)(上)、SD-Ade、His、Leu、Trp(SD-AHLW)寒天培地上(右)で生育させた際のシングルコロニー。GAL4
DNA結合ドメインを有するマウスp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40-T抗原をコードする2種類プラスミドを陽性コントロールとした。それぞれ、30℃で4日間、光子量41μmol/m-2/s-1の各種光条件下(暗条件下、白色光下、青色光下、赤色光下)にて酵母を生育させ解析を行った。
【0027】
図10に、各種光強度の青色光下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用を示す。
APRR1/TOC1、APRR5のGAL4
DNA結合ドメイン融合タンパク質またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(−)、ならびにLKP1、LKP2、LKP1 C82A、LKP2
C82AGAL4転写活性化ドメイン融合タンパク質またはGAL4転写活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(−)を含む酵母AH109株をSD-Leu、Trp(SD-LW)(上)、SD-Ade、His、Leu、Trp(SD-AHLW)寒天培地上(右)で生育させた際のシングルコロニー。GAL4
DNA結合ドメインを有するマウスp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40-T抗原をコードする2種類プラスミドを陽性コントロールとした。それぞれ、30℃で4日間、暗条件下及び、光子量50μmol/m-2/s-1、100μmol/m-2/s-1、190μmol/m-2/s-1の青色光下にて酵母を生育させ解析を行った。
【0028】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
(シロイヌナズナにおけるLKP2(LOVケルヒタンパク質2)の分子パートナーとしてのASKと時計関連タンパク質の同定)
概日リズムは生物内部における約24時間のサイクルであり、シアノバクテリアから高等植物まで保存されており、24時間の1日に適応するために、進化の過程で発達したと考えられている。概日リズムは生物時計によりつくり出され、協調されている。この生物時計は概日オシレータとも呼ばれる。高等植物では、多数の遺伝子発現が概日調節されている。これらの遺伝子の中には、光合成、光受容体、光防護、防寒の役目を果たすものがあり、また炭素、窒素、硫黄経路や糖移動酵素のための遺伝子も存在する(Harmer et al., 2000)。
【0030】
近年、概日オシレータは日常生活だけでなく、植物の開花時期制御などといった季節変化の認識にも非常に重要であることが示されている。ある開花時期遺伝子はCONSTANS(CO)と呼ばれ、シロイヌナズナにおける光周期経路を調節する鍵となっている。COの発現は概日時計に調節されている。CO発現は夕方に生じる。光存在下のCOタンパク質レベルが開花に対する鍵らしい(Schultz and Kay, 2003; Yanovsky and Kay, 2003)。
高等植物で十分に特徴が調べられている概日オシレータは、TOC1と、2種類のMyb様DNA結合タンパク質であるCCA1ならびにLHYの間のフィードバックループ系である。TOC1はCCA1とLHY遺伝子の発現に正の影響を与えるが、CCA1とLHYはTOC1の発現に負の制御を行う(Alabadi et al., 2001)。TOC1はシロイヌナズナにおける二成分系の疑似応答調節因子の小規模タンパク質ファミリーに属しており、他の二成分系の応答調節因子に似ているが、不変性のリン酸受容アスパラギン酸部位を持たない(Makino et al., 2000; Strayer et al., 2000)。このタンパク質ファミリーのメンバーではAPRR9、APRR7、APRR5、APRR3、そしてAPRR1またはTOC1の順番で、夜明け後にmRNAの蓄積が2〜3時間間隔で順番に開始する。APRR9遺伝子の発現は赤色光により誘導され、APRR1/TOC1を過剰発現する植物においては下方調節される(Makino et al., 2001, 2002)。APRRファミリーのメンバーは概日リズムを調節して、局地環境に合わせているらしい(Michael et al., 2003)。
【0031】
本発明者らはシロイヌナズナのゲノム分析により新しい青色光受容体を同定しようと試みたところ、LOVドメイン、F-box、ケルヒ繰り返し領域をそれぞれ一つずつ持つユニークなタンパク質をコードする、2種類の遺伝子を発見した(Kiyosue and Wada, 2000; Schultz et al., 2001)。
【0032】
LOVドメインはPHOT1とPHOT2に見られる青色光感受性モチーフであり、光屈性、葉緑体の運動、気孔の開口などに関与している(Briggs et al., 2001; Briggs and Christie 2002)。F-boxはF-boxタンパク質に見られるモチーフであり、アダプタとして特異的基質を核ユビキチンタンパク質リガーゼサブユニットに運び、ユビキチン化とそれに続く分解に導く(Craig and Tyers, 1999; Xiao and Jang, 2000)。酵母と哺乳類では、F-boxタンパク質はCul1、Rbx1、Skp1と共にSCF複合体を形成する。これら3種類のタンパク質は核ユビキチンリガーゼ(E3)を形成し、F-boxタンパク質はユビキチン化する標的を認識する際に機能し、またそれらのF-boxモチーフ領域はSkp1の結合に関連している。ユビキチン化された標的タンパク質はその後、ATP依存性の方法で、26Sプロテアソームにより分解される。ケルヒ繰り返しは1ドメインの超円筒(β-プロペラ)構造の形で編成されていると考えられるが、この構造は、酵母と哺乳類両方のF-boxタンパク質のC末端に見られるモチーフであるWD40の繰り返しにより形成される構造と類似している(Patton et al., 1998; Winston et al., 1999)。これらの繰り返しはタンパク質-タンパク質相互作用に関与していると推定されている(Andrade et al., 2001)。本発明者らはLOVケルヒタンパク質1と2に対するこれらのタンパク質をLKP1とLKP2と名付けた(Kiyosue and Wada, 2000; Schultz et al., 2001)。LKP1遺伝子はZTLと同一であり、この遺伝子を変異させることにより、時計調節性遺伝子発現のリズムと葉の動きが遅延することになる(Somers et al., 2000)。またLKP1/ZTLはADO1と同一であり、この遺伝子をT-DNAノックアウトすることにより、赤色光中における子葉運動のリズム障害が生じる(Jarillo et al., 2001)。ADO1/LKP1/ZTLはPHYBとCRY1のC末端領域と相互作用することが示された(Jarillo et al., 2001)。LKP2の機能は、35S:LKP2植物を用いて分析された(Schutz et al., 2001)。これらの植物は定常光と暗黒の両条件下での概日時計出力に対するリズム障害表現型、胚軸伸長を示し、長日条件下で開花遅延表現型を示したが短日条件下ではそれを示さず、そのためシロイヌナズナにおいてLKP2は概日オシレータの内部または非常に近い場所で機能していると考えられた。LKP2はADO2ならびにFKL2と同一である(Nelson et al., 2000; Somers et al., 2000; Jarillo et al., 2001)。このファミリー中の他のタンパク質はFKF1またはADO3である。ADO3/FKF1遺伝子はfkf1変異体中の変異遺伝子として同定されており、この変異体は長日条件下で開花遅延するが、春化処理またはジベレリン処置により救助できる(Nelson et al., 2000)。
【0033】
本発明者らが本実施例で示すのは、LKP2のプロモータ活性、LKP2の細胞内局在、ならびにシロイヌナズナSkp-1様タンパク質(ASK)に対する、また概日時計成分と可能性のある補助因子に対するLKP2の分子的相互作用である。また本実施例ではこの相互作用の重要性をLKP2の機能に関して考察する。
【0034】
[材料と方法]
植物材料と生育条件
Arabidopsis thaliana(Columbia生態型)の種子を、0.8%寒天を含む発芽培地(GM)(Valvekens et al., 1988)に無菌的に播種し、暗黒下3日間にわたり4℃でインキュベートして休眠を破り、その後、22℃における16時間光照射(約100μmol s-1 m-2)と8時間暗による長日条件下で成長させた。
【0035】
DNAシーケンス分析
シーケンス用のプラスミドDNAテンプレートは自動プラスミド単離機(PI-200とPI-50alpha、Kurabo、Osaka、Japan)で調製した。DNAシーケンスの決定は、BigDye Terminator Cycle Sequence法により、DNAシーケンサ(ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer;Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)上で実施した。GENETYX(Software Development, Tokyo, Japan)ならびにSequencher(Gene Codes Corporation、Ann Arbor、MI、USA)ソフトウェアシステムを用いてDNAシーケンス解析を行った。
【0036】
遺伝子組み換え植物
ATG開始コドンからLKP2コーディングシーケンスに20bpオーバーラップする1.6kbの5'非コーディング領域を、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、CA、USA)を用いて、シロイヌナズナのゲノムDNAよりPCR増幅した。使用プライマは5'-GAGAGCTAGCTCTCCGGCAAAGTCTCGACC-3'ならびに5'-TCTCCCCGGGCACTCCATTTGATTTTGCAT-3'であり、これらはそれぞれ各末端でNheI部位ならびにSmaI部位として導入された。PCR断片をpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)中にサブクローンし、全体をシーケンス分析してシーケンスを確認し、その後プロモータを持たないβ-グルクロニダーゼ(GUS)発現ベクターであるpBI101(Clontech、Palo Alto、CA、USA)中へ結合させた。結果として得られたコンストラクトをシーケンス解析し、LKP2の最初の6アミノ酸がGUSタンパク質領域にインフレーム融合していることを確認した。
GFPのS65T修正版(smRS-GFP)(Davis and Vierstra, 1996)を用いてGFP-LKP2コンストラクトを作成した。GFPコーディング領域のPCR増幅は、Arabidopsis Biological Resource Center(Columbus、OH、USA)より入手したpsmRS-GFPをもとに、5'-GAGATCTAGACAATGAGTAAAGGAGAAGAA-3'ならびに5'-TCTCAGGCCTTTGTATAGTTCATCCATGCC-3'のプライマを用いて実施したが、これらのプライマにより、それぞれ各末端でXbaI部位とStuI部位が導入された。LKP2コーディング領域のPCR増幅も同様に、cDNAをもとに5'-GAGAAGGCCTTATGCAAAATCAAATGGAGT-3'と5'-TCTCGGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGT-3'のプライマを用いて実施したが、これらのプライマにより、それぞれ各末端でStuI部位とBamHI部位が導入された。両PCR断片をサブクローンし、全体をシーケンス分析してシーケンスを確認し、StuI部位に結合させ、再度シーケンス分析を行った。次にGFP-LKP2断片を、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモータを含む発現ベクターであるpBE2113内に導入した(Mitsuhara et al., 1996)。
シロイヌナズナ植物のアグロバクテリウム媒介性形質転換は、簡易in planta浸潤法により実施した(Clough and Bent, 1998)。形質転換株の選択は、50μg/mLカナマイシンを含むGM寒天上で行った。
【0037】
GUS染色、GFP、DAPI観察
形質転換植物中のGUS活性の組織化学的定位は、既発表論文(Nakashima et al., 1977)に従って実施した。GFP活性ならびに4',6'-diamidino-2-phenylindole(DAPI)染色の光学像は、Olympus BX51顕微鏡(Olympus、Tokyo、Japan)により、蛍光ユニットと適切なフィルタユニットを用いて取得した。またGFP蛍光の可視化は、Leica TCS-E共焦点レーザースキャニング顕微鏡(Leica Microsystems GmbH、Mannheim、Germany)により、空冷式アルゴンイオンレーザー系を用いて行った。
【0038】
RNAゲルブロット分析
総RNAは既発表論文(Kiyosue et al., 1992)に従って植物全体から単離し、ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル中で分画し、ナイロンフィルタ上にブロットした。DIG標識化RNAプローブはLKP2 cDNAまたはGFPのコーディング領域より調製したものを用いて、メーカー(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)の指示に従ってハイブリダイゼーションを行った。科学蛍光シグナルの検出は、Light Captureシステム(AE-6962;Atto、Tokyo、Japan)を用いて行った。
【0039】
酵母2-ハイブリッドクローンと分析
LKP1、LKP2、FKF1、ASK、TOC1、CCA1、LHY、APRR3、APRR5、APRR7、APRR9の全長cDNAのコロンビア版の入手源は、cDNAライブラリスクリーニング(Kiyosue and Wada, 2000; Schultz et al., 2001)、ReverTra Dash(Toyobo、Osaka、Japan)を用いたRT-PCR、またはRIKEN Bio Resource Center(Tsukuba、Japan)であった。クローンをPCR増幅して適当な制限酵素部位を生成し、pCR-TOPO(Invitrogen)内にサブクローニングし、全体のシーケンス分析を行ってシーケンスを確認した。PCRに用いたプライマは以下の通りである。LKP1には5'-AGGATCCGTATGGAGTGGGACAGTGGTTCC-3'ならびに5'-AGGATCCTTACGTGAGATAGCTCGCTAGTG-3';LKP2には5'-AGGATCCGTATGCAAATCAAATGGAGTGGG-3'ならびに
5'- TCTCGGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGT-3';FKF1には
5'-AGGATCCGTATGGCGAGAGAACATGCGATC-3'ならびに
5'-AGGATCCCTTTACAGATCCGAGTCTTGCCG-3';ASK1には
5'-AGGATCCGTATGTCTGCGAAGAAGATTGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTGGTTCT-3';ASK2には
5'-AGGATCCGTATGTCGACGGTGAGAAAAATC-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAACGCCCACTGATTCT-3';ASK3には
5'-AGGATCCGTATGGCAGAAACGAAGAAGATG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCACTCGAACGCCCACCTGTTCT-3';ASK4には
5'-AGGATCCGTATGGCAGAAACGAAGAAGATG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCACTCGAACGCCCACTTGTTCT-3';ASK5には
5'-AGGATCCGTATGTCGACGAAGATCATGTGG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTGAAAAGCCCATTGATTCT-3';ASK7には
5'-AGGATCCGTATGTCGACAAAAAAGATCATG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTTATTGT-3';ASK8には
5'-AGGATCCGTATGTCGACGAAAAAGATCATG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTTATTCT-3';ASK9には
5'-AGGATCCGTATGTCGACGAAGAAGATCATA-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTTATTCT-3';ASK10には
5'-AGGATCCGTATGTCGACGAAGAAGATCATA-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAACCCCATTGATTCT-3';ASK11には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCGAAGATGATCGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTGATTCT-3';ASK12には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCGAAGATGATCGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTGATTCT-3';ASK13には
5'-AGGATCCGTATGTCGAAGATGGTTATGTTG-3'ならびに
5'-AGGATCCTCATTCAAAAGCCCATTGATTCT-3';ASK14には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCCAACAAGATTGTT-3'ならびに
5'-AGGATCCCTATTCAAAAGCCCATGCGTTTT-3';ASK15には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCTAACAAGATTGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCCTAGGGCTTTGGATCTTCGTGTT-3';ASK17には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCGAAGAAGATTGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCTTAATTGAAAGCCCATTCGTTCT-3';ASK18には
5'-AGGATCCGTATGGCTTCTTCTTCCGAAGAG-3'ならびに
5'-AGGATCCTTACTCATTAAAAGTCCAAGCAT-3';ASK19には
5'-AGGATCCGTATGTCTTCGAAAAAGATTGTG-3'ならびに
5'-AGGATCCCTAGGGTTTTGGAACTTGTTGTT-3';ASK20Aには
5'-AAGATCTGTATGTCAGAAGGTGATTTGGCC-3'ならびに
5'-TAGATCTCAGCCTTGTGATCTGTGAAACAG -3';ASK20Bには
5'-AAGATCTGTATGTCAGAAGGTGATTTGGCC -3'ならびに
5'-TAGATCTTGGAGATTGACCTGTATGCCGTC-3';TOC1には
5'-AGAGCTCGTATGGATTTGAACGGTGAGTGT-3'ならびに
5'-AGAGCTCTCAAGTTCCCAAAGCATCATCCT-3';CCA1には
5'-AGGATCCGTATGGAGACAAATTCGTCTGGA-3'ならびに
5'-ACGGATCCCTCATGTGGAAGCTTGAGTTTC -3';LHYには
5'-AGGATCCGTATGGATACTAATACATCTGGA-3'ならびに
5'-ACGGATCCTCATGTAGAAGCTTCTCCTTCC -3';APRR3には
5'-AGGATCCGTATGTGTTTTAATAACATTGAA-3'ならびに
5'-AGGATCCTCAATTGTCTTCACTTCCTGATT-3';APRR5には
5'-AGGATCCGTATGTGGCAAACGTGGCCACGT-3'ならびに
5'-TGGATCCTATGGAGCTTGTGTGGATTGGAC-3';APRR7には
5'-ACCCGGGTATGAATGCTAATGAGGAGGGGG-3'ならびに
5'-ACCCGGGTTAGCTATCCTCAATGTTTTTTA-3';APRR9には
5'-AGGATCCGTATGGGGGAGATTGTGGTTTTA -3'ならびに
5'-TGGATCCTCATGATTTTGTAGACGCGTCTG-3'。
これらのPCRプライマはRT-PCRにも用いた。
LKP2の各ドメインコンストラクトもやはりPCRにより構築し、pCR4-TOPO(Invitrogen)内にサブクローニングし、全体のシーケンス分析を行ってシーケンスを確認した。PCRに用いたプライマは以下の通りである。LKP2のLOVドメイン(L)には5'-AGGATCCGTATGCAAATCAAATGGAGTGGG-3'ならびに
5'-TGGATCCTTAGG-GCCCAGGCCTTCTAGGAATTTCTTTTGC-3';LKP2のF-box領域(F)には5'-AGGATCCGTATATCTCGCTCATTTACTTCT-3'ならびに
5'-TGGATCCTTACCTTTTTGCACCGGGAACAC-3';LKP2のケルヒ繰り返し領域(K)には5'-AGGATCCGTATTGGTTGGGTGCGACTGGCC-3'ならびに
5'- TCTCGGATCCGA-TCAAGTACTTGCAGTGGT-3';LKP2のLFには
5'-AGGATCCGTATGCAAATCAAATGGAGTGGG-3'ならびに
5'-TGGATCCTTACCTTTTTGCACCGGGAACAC-3';LKP2のFKには
5'-AGGATCCGTATATCTCGCTCATTTACTTCT-3'ならびに
5'-TCTCGGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGT-3'。
LKP2のLK(L+K)コンストラクトのためには、Lには
5'-AGGATCCGTATGCAAATCAAATGGAGTGGG-3'と
5'-AGATCTAGGCCTTCTAGGAATTTCTTTTGC-3'、Kには
5'-AAGATCTATTGGTTGGGTGCGACTGGCCCG-3'と
5'-TCTCGGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGT-3'のプライマセットを用いて、2種類のPCR断片を生成し、pCR-TOPO内にサブクローニングし、全体のシーケンス分析を行ってシーケンスを確認した。
【0040】
次にL断片をBamHIとBglIIの二重消化により切り出し、pCR4サブクローン化K断片内部のBglII部位に結合させた。接合領域はシーケンス分析してフレーム内接合を確認した。サブクローン化断片は適切な制限酵素で切り出し、GAL4活性化ドメインを含むpGADT7、あるいはGAL4 DNA結合ドメインを含むpGBKT7のマルチクローニング部位内に導入した(Clontech)。接合領域はシーケンス分析してフレーム内接合を確認した。コンストラクトの適当な対をAH109酵母細胞内に導入した。
形質転換株の増殖は、ロイシンとトリプトファンが欠如した合成完全(SD)培地上で行い、アデニン(Ade)、ヒスチジン(His)、ロイシン(Leu)、トリプトファン(Trp)の欠如したSD培地上で、3-amino-1,2,4-triazole(3-AT)添加または非添加条件下にて、分析した。
【0041】
相互作用試験は、Matchmaker GAL4 Two-Hybrid System 3のユーザマニュアルと、Clontechから得たYeast Protocols Handbookの記述に従って、少なくとも3種類の独立した形質転換株を用いて実施した。この系においてレポーター遺伝子のADE2、HIS3、MEL1/LacZは、完全に異なる3種類のGAL4上流活性化シーケンスとTATAボックスエレメントの調節下にある。HIS3栄養マーカーを用いて弱陽性相互作用を同定することが可能である一方、ADE2マーカーは非常に厳密であり擬陽性の発生率を減少させる(James et al., 1996)。lacZレポーターの発現により2-ハイブリッド相互作用がさらに確認され、擬陽性が減少する。
【0042】
スポット分析では、LeuとTrpの存在しないSD培地中での一晩の液体培養(OD600=1.5)を、Ade、His、Leu、Trpの存在しないSD寒天培地上に、3-ATの存在下または非存在下にてスポットした(5μL)。酵母コロニーの培養は30℃で、赤、遠赤外、青、緑、白色光(フォトン束密度40μmol s-1 m-2)(LED系:Sanyo、Osaka、Japan)または暗黒条件下で行った。β-ガラクトシダーゼ活性分析のために、それぞれの一晩培養から得た酵母細胞を遠心沈殿させ、凍結-融解を3回繰り返して透過化処理を行った。粗抽出物はO-nitrophenyl-β-D-galactopyranoside存在下、30℃でインキュベートし、OD420を記録した。活性はMiller単位で示した。
【0043】
免疫ブロット分析
免疫ブロット分析のために、酵母細胞を50ml YPD(酵母抽出物/ペプトン/ブドウ糖)培地中で4-8時間にわたり増殖させ(OD600=0.6)、遠心により沈殿させ、液体窒素中で凍結した。沈殿には400μlの抽出緩衝液(40mM Tris-HCl[pH6.8]、8M尿素、5% SDS、0.1mM EDTA、0.4mg/mlブロモフェノールブルー、0.8% 2-メルカプトエタノール、6.2μg/mlペプスタチンA、1.86μMロイペプチン、9.0mMベンズアミド、23.0μg/mlアプロチニン、0.77mg/mlフェニルメチルスルホニルフルオライド)を添加し、ホモジナイズした。細胞の粗抽出物(12μl)を各レーンに載せ、SDS-PAGEによりタンパク質の分離を行い、ニトロセルロース上に電気的に転写した。ここでは抗mycまたは抗HA抗体を用いて、試験対象のタンパク質を検出した。
【0044】
[結果]
LKP2遺伝子のプロモータ活性
組織特異的なLKP2 mRNAレベルはこれまでに調査されており、それによるとLKP2のmRNAがロゼット葉、花、長角果に蓄積し、少量のmRNAが根、茎、茎葉、種子に検出されている(Shultz et al., 2001)。LKP2のプロモータ活性をモニターするため、本発明者らはLKP2プロモータであるGUSコンストラクトを含む、遺伝子組み換えシロイヌナズナ植物を作成した(図1)。GUSシグナルは、苗木では全部分に検出されたが、2週齢のロゼット植物ではロゼット葉と根端に限定されていた。花ではGUS活性はがく片に検出された。GUSシグナルは若い長角果に検出されたが、古い長角果には検出されなかった。これらの結果は、RT-PCRにより検出されたLKP2のmRNAレベルに一致しており(Schultz et al., 2001)、そのことから1.6kbのプロモータ領域がLKP2発現を調節するために十分な要素を有していると考えられる。
【0045】
GFP-LKP2の細胞内局在
LKP2の細胞内局在を可視化するため、本発明者らはCaMV 35Sプロモータに由来するGFP-LKP2融合コンストラクトをシロイヌナズナに導入し、RNAゲルブロット分析により高発現株を選択した(データ示さず)。この遺伝子組み換え植物は、35S:LKP2植物に見られるのと同様の胚軸伸長と開花遅延の表現型を示しており(Schultz et al., 2001)、この遺伝子組み換え植物において導入されたLKP2-GFPタンパク質が機能していると考えられる(データ示さず)。これらの株ではGFP関連蛍光は核内に分布していたが核小体には見られず(図2H)、35S:GFP植物の細胞全体にわたり、非常に強いGFPシグナルが検出された(図2B)。これらのデータからLKP2は核タンパク質であると考えられる。
【0046】
F-boxタンパク質としてのLKP2
シロイヌナズナでは、これまでに700種類を超えるF-boxタンパク質がゲノム分析により同定されている(Gagne et al., 2002; Kuroda et al., 2002; Risseuw et al., 2003)。しかし、これらの公表データは主にコンピュータプログラム分析に基づいているため、F-box活性のないタンパク質や、進化途上で活性を消失したタンパク質もその数に含まれているだろう。LKP2がF-boxタンパク質として機能することを確認するため、ここでは酵母2-ハイブリッド系で、シロイヌナズナSKP1様(ASK)タンパク質を用いた相互作用試験を行った(図3A)。試験対象となった19種類のASKタンパク質(ASK1-5、ASK7-14、ASK16-19、ASK20A、ASK20B)のうち、LKP2が相互作用したのは9種類(ASK1-5、ASK11、ASK14、ASK20A、ASK20B)であった。LKP2のASKタンパク質との相互作用は、ASK3-5、ASK20A、ASK20B以外の2種類によるASKタンパク質との相互作用と類似していた。LKP1、LKP2、FKF1のF-box領域のアミノ酸シーケンスは相互に類似しているため(LKP1とLKP2、68.1%;LKP2とLKP3、63.8%;LKP1とLKP3、66.0%の相同性)、これらのタンパク質のASK選択性(ASK1、ASK2、ASK11、ASK14)は意外ではない。さらにASK1、ASK2、ASK11は、シロイヌナズナ内の広範囲のF-boxタンパク質と相互作用する(Gagne et al., 2002; Risseeuw et al., 2003)。LKP1、LKP2、FKF1のF-box領域はASKタンパク質の結合のためには十分である(図3B-D)。
【0047】
ADO/FKF/LKP/ZTLファミリータンパク質との相互作用
分裂酵母と哺乳類では、F-boxタンパク質はホモならびにヘテロダイマーとして機能すると報告されている(Kominami et al., 1998; Suzuki et al., 2000)。さらに、WC-1タンパク質は、アカパンカビの青色光センシングに関連するZnフィンガー転写因子を含むLOVドメインの一つであるが、このタンパク質について自己二量体化が報告されている(Ballario et al., 1998)。そのため本実施例では酵母2-ハイブリッド系を用いて、ADO/FKF/LKP/ZTLファミリータンパク質に対するLKP2の相互作用を調べた。制限培地上での酵母増殖試験によれば、LKP2とLKP1、LKP2とLKP2、LKP2とFKF1の間には相互作用が観察されたが、LKP1とLKP1や、LKP1とFKF1の間には何も検出されなかった(図4A)。この相互作用はβ-ガラクトシダーゼ活性によっても確認された(図4B)。これらの結果から、LKP2はLKPファミリータンパク質と協同して機能するらしいと考えられる。本発明では異なる光条件下(赤、遠赤外、青、緑、白色)で、光の性質が制限培地上の酵母増殖に及ぼす影響を調べたが、増殖に違いは見られなかった(データ示さず)。
【0048】
LKP2の概日時計成分に対する相互作用
35S:LKP2植物を用いた分析から、LKP2は概日オシレータの内部もしくはその非常に近くで機能していると考えられた(Schultz et al., 2001)。LKP2は核タンパク質であるため(図2)、本発明では核局在化時計関連因子に対するLKP2の相互作用分析を実施した。Ade、His、Leu、Trpを含まないSD培地上での増殖試験においては、LKP1とTOC1については強い相互作用が検出され、LKP1とTOC1については弱い相互作用が検出された(図5A)。これらの相互作用はベイト/プレイの配置を逆転させた場合にも観察された(データ示さず)。FKF1とTOC1の間には相互作用は見られなかった。CCA1またはLHYに対するLKP2の相互作用は検出されなかった。LKP1とFKF1も同じくCCA1やLHYとは相互作用しなかった。β-ガラクトシダーゼ活性を調べてこれらの相互作用を確認した。LKP2とTOC1コンストラクトを保有する酵母においては強いガラクトシダーゼ活性が検出され、LKP1とTOC1コンストラクトを保有する酵母では弱い活性が検出された(図5B)。分析対象となったその他のコンストラクトの組み合わせを保有する酵母においては、有意なガラクトシダーゼ活性は全く検出されなかった。これらの結果からも、TOC1はLKP1とLKP2の両方に対して相互作用可能であるが、FKF1とは相互作用できないと考えられる。いずれの相互作用も、本発明者らが実施した光品質処理による影響を一切受けなかった(データ示さず)。
TOC1に結合するLKP2ポリペプチドの一部についても、同様に酵母2-ハイブリッド系により局在化を調べた。LKP2のドメイン1個または2個を発現するコンストラクト6種類を調査対象とした(図6)。この2-ハイブリッド系では、LOVドメインを含むペプチドとTOC1の間に相互作用が検出されたが、TOC1とLOVドメインを含まないLKP2ペプチドの間には相互作用は検出されなかった。これらの結果から、LKP2のLOVドメインはTOC1を結合するために必要十分であることが示される。
【0049】
TOC1パラログに対するLKP2の相互作用
TOC1はシロイヌナズナの中央オシレータの一成分であり、myb様のDNA結合タンパク質であるCCA1とLHYと共に、フィードバックループを形成する。一方ではシロイヌナズナには4種類のTOC1パラログ、すなわちAPRR3、APRR5、APRR7、APRR9が存在している。LKP2結合の特異性を分析するため、本発明ではAPRRファミリータンパク質を用いて2-ハイブリッド分析を行った(図7A、B)。TOC1の場合と同じく、LKP2とAPRR5の間には強い相互作用が検出され、LKP1とAPRR5の間には弱い相互作用が検出された。これらの相互作用はベイト/プレイの配置を逆転させた場合にも観察された(データ示さず)。LKPファミリータンパク質とその他のAPRRファミリータンパク質の間にその他の相互作用は検出されなかった。APRR5に結合するLKP2ポリペプチドの一部についても、同様に酵母2-ハイブリッド系により調査を行った。TOC1の場合と同じく、LKP2のLOVドメインはAPRR5を結合するために必要十分である(図8)。
【0050】
[考察]
本実施例で本発明者らは、1.6-kbのプロモータ領域とGUSレポーター遺伝子を融合させることによる、LKP2遺伝子のプロモータ活性を示している。LKP2プロモータ-GUS融合体の高発現は、子葉とロゼット植物に観察されたが(図1A、B)、そこでは比較的高レベルのプロモータ活性、あるいはLKP1とFKF1のmRNA蓄積が報告されている(Kiyosue and Wada, 2000; Nelson et al., 2000)。またLKP2プロモータ-GUS活性が検出された部位は、LKP1とFKF1プロモータの活性が報告された(Nelson et al., 2000)部位であるがく片(図1C)、FKF1プロモータ-GUS活性が報告された(Nelson et al., 2000)部位である根端(図1B)、LKP1プロモータ-GUS植物においてGUS活性が検出されている(Kiyosue and Wada, 2000)若い長角果(図1D)等である。LKP2はLKP1とFKF1に相互作用しうるため(図4)、LKP1および/あるいはFKF1が共通して発現する場所で、LKP2はそれらに対して作用する可能性がある。また、本発明者らはLKP2がTOC1とAPRR5に相互作用しうることを示した(図5,7)。APRR5の器官特異的な発現についてはまだ調査が行われていないが、TOC1とAPRR5の発現がロゼット葉に検出されており(Makino et al., 2000; Sato et al., 2002)、これはLKP2プロモータ活性とLKP2発現がロゼット葉に存在する点と一致している(図1)(Schultz et al., 2001)。
35S:GFP-LKP2植物において、GFP関連シグナルは核内に分布しているが、核小体には分布していなかった(図2H)。この分布パターンは35S:GFP-LKP1植物のGFPシグナルの場合や(Kiyosue and Wada, 2000)、異なるシロイヌナズナ組織中のASK1に対するシグナルの免疫局在の場合と同一であるが(Farras et al., 2001)、これはLKP2がLKP1とASK1にタンパク質-タンパク質相互作用する点に一致している(図3、4)。TOC1はLKP2と相互作用可能であり(図7)、また核内に位置している(Makino et al., 2000)。一時的に形質移入されたタバコ細胞中のYFP-TOC1シグナルは、核内で小斑点状のパターンを示し、そこからTOC1はおそらくトランスクリプトーム、スプライセオソーム、プロテアソームで機能する可能性が考えられる。これはLKP2がおそらく標的タンパク質をユビキチン化するSCF複合体として機能している点に一致しており、この場合のユビキチン化は、標的タンパク質を分解のためにプロテアソームまで輸送する引き金になっている(Strayer et al., 2000)。APRR5の細胞内局在に関する報告はまだ存在しないが、APRR5はC末端領域にCCTドメインが存在することから核タンパク質であると思われる。CCTドメインはCONSTANS、CONSTANS様、ならびにAPRR/TOC1ファミリータンパク質に見られる共通モチーフであり、これらのタンパク質の核局在に重要であると考えられている(Makino et al., 2000; Robson et al., 2001)。
シロイヌナズナでは21種類のSkp1様ASK遺伝子が存在するが、ASK6とASK15はフレームシフトを有するため偽遺伝子であると考えられている(Risseeuw et al., 2003)。ASK20からは選択的スプライシングにより、同一遺伝子から2種類のタンパク質ASK20AとASK20Bが生成される(Risseeuw et al., 2003)。本発明での結果から、LKP2はLKP1やFKF1と同様に、ASK1、ASK2、ASK11、ASK14と相互作用することが示された(図3)。ASK1、ASK2、ASK11に対するLKP1の酵母2-ハイブリッド相互作用や、ASK1に対するFKF1の同じ相互作用についてもこれまでに報告されている(Kuroda et al., 2002; Risseeuw et al., 2003)。またRisseeuw et al.の報告によれば、ASK3、ASK4、ASK7、ASK8、ASK9、ASK12、ASK19に対してLKP1が相互作用するというが、本発明で本発明者らが行った2-ハイブリッド分析においては、ASK4を除きこれらは検出されなかった。これらの違いはおそらく培養条件やベクター系が原因だろう。本実施例では2-ハイブリッドアッセイを30℃の厳密な選択条件で実施したが、彼らのアッセイは20℃で実施された。本発明で使用した酵母2-ハイブリッドベクターのほうが信頼性が高いが、その理由は3種類のレポーター遺伝子(ADE2、HIS3、MEL1/lacZ)が、完全に異種である3種類のプロモータの調節下にあるためである。動物と酵母のSkp1タンパク質は、Cul1やRbx1に結合するのと同様に、F-boxタンパク質のF-box領域に結合してSCF複合体を形成し、この複合体はF-boxタンパク質により認識される標的タンパク質に対するE3ユビキチンリガーゼとして働くことが知られている(Skowyra et al., 1999; Kamura et al., 1999)。ADO/FKF/LKP/ZTLファミリータンパク質のF-box領域が、シロイヌナズナSkp1様タンパク質と相互作用することから(図3B-D)、これらのタンパク質はSCF複合体の成分であり、E3ユビキチンリガーゼとして働くと考えられる。
図4には、LKP2がLKPファミリータンパク質と相互作用することが示されている。LKP2はLKP1、LKP2、またはFKF1と協働して異なる各種基質を認識する可能性もあり、またLKP2はこれらのファミリータンパク質が分解する場合に機能する可能性もある。Kim et al. (2003)の報告によれば、ZTL(LKP1)タンパク質レベルは、異なる概日フェーズに特異的なプロテアソーム依存性分解により調節されている。LKP2はZTL(LKP1)と相互作用しうるため、LKP2によりZTL(LKP1)がユビキチン化される可能性がある。
LKP2 LOVドメインコンストラクトは、APRR1/TOC1ならびにAPRR5と十分に相互作用した(図6、8)。LOVドメインを含む領域がタンパク質-タンパク質相互作用に関連していることは、PHOT1(NPH1)とNPH3の比較においても示されている(Motchoulski and Liscum, 1999)。アカパンカビの青色光センシング転写因子であるWC-1では、LOVドメインが自己二量体化に関与していることが示されている(Ballario et al., 1998)。LOVドメインはいずれの青色受容体にも見られるため、LKP2のLOVドメインの相互作用活性は光により調節されている可能性がある。しかし本実施例で実験した範囲では、LKP2 LOVドメイン含有領域を介して光の品質がタンパク質-タンパク質相互作用に影響することはなかった。だがLKP2 LOVドメインのN末端につながったGAL4活性化ドメインやDNA結合ドメインが光感受性に影響しているか、あるいは酵母に欠落しているある種の因子が光センシングに必要であるという可能性を除外することは出来ない。
酵母2-ハイブリッド系においてLKP1とLKP2はTOC1とAPRR5の両者に対して相互作用したが、FKF1とAPRR/TOC1ファミリータンパク質の間の相互作用は検出されなかった(図7)。LKP1、LKP2、FKF1のアミノ酸シーケンスは全体的に類似しており(LKP1とLKP2、74.1%;LKP2とFKF1、61.9%;LKP1とFKF1、66.1%)、全てにLOVドメイン、F-box、ケルヒ繰り返し領域があるにもかかわらず、FKF1の遺伝子発現プロファイルは、LKP1やLKP2の場合と異なっていた。1日を通して見るとFKF1のmRNAレベルは律動的であるが、これに対してLKP1とLKP2では一定にである(Kiyosue and Wada, 2000; Nelson et al., 2000; Schultz et al., 2001)。FKF1とLKP1やLKP2を隔てるこれらの違いが、FKF1と他のLKPファミリータンパク質の間の機能的区別を意味することになる。
LKP1とLKP2はいずれもTOC1とAPRR5に相互作用するという事実は、LKP1とLKP2に機能的重複性が見られる可能性を反映しているようだ。35S:LKP1と35S:LKP2植物に見られる、胚軸の伸長や長日条件下での開花遅延などといった発現型は類似しており、それらのアミノ酸シーケンスは類似している(73.0%同一性)ことから、それらの機能が重複していると考えるのはきわめて自然な成り行きである。しかし、ADO1/ZTL/LKP1中にT-DNAインサートを持ち、ADO1/ZTL/LKP1の発現をノックアウトした植物株では、CCR2発現のリズムが遅延し、子葉先端運動が見られることから(Jarillo et al., 2001)、LKP1とLKP2の重複性はごく一部であると考えられる。
TOC1とAPRR5に対するLKP2の相互作用について、少なくとも2種類の説明が可能である。一つはTOC1とAPRR5はSCFLKP2複合体のユビキチン化に対する標的であるというもの、あるいはLKP2はTOC1とAPRR5の安定性に関与しているというものである。TOC1は特徴がよく知られており、概日オシレータの成分である可能性がある(Schultz and Kay, 2003)。APRR5は時計に対する概日シグナルの増幅に影響し、概日出力を調節していることが報告されている。APRR5のT-DNA挿入個体では、時計媒介性の葉の運動期間が短縮され(Michael et al., 2003)、青色光条件下ではCCA1とCCR2の発現期間が短縮される(Eriksson et al., 2003)。APRR5を過剰発現する植物では、時計調節型遺伝子に対するmRNAレベルの規模は減少するが、そのリズム性は不変であるらしい(Sato et al., 2002)。そのため、35S:LKP2植物では大量のLKP2が、TOC1とAPRR5の両タンパク質レベルを減少させ、その結果リズム障害の表現型が生じる可能性がある。
もう一つの説明は、TOC1とAPRR5がLKP2へのシグナル伝達において作用し、標的タンパク質のユビキチン化を行っているというものである。ZTL(LKP1)のケルヒ繰り返し領域に点変異のある植物では、その変異の結果アミノ酸がAspからAsnに置換されており、概日リズム遅延の表現型が見られる(Somers et al., 2000)。ケルヒ繰り返しはベータプロペラ構造を形成すると予想され、概日時計関連のユビキチン化基質におけるタンパク質-タンパク質相互作用において機能すると考えられる。Steve Kayのグループは、DOF(ワンフィンガーによるDNA結合)転写因子を単離しており、これはLKP2のケルヒ繰り返し領域と相互作用するが、その変異体(AspをAsnに置換)とは相互作用しない。因子の一つが過剰発現する結果、リズム障害を有する表現型が生じる(Kay, 2002)。そのためTOC1および/あるいはAPRR5が、そのようなケルヒ繰り返し相互作用因子とLKP2の間の相互作用を調節し、LKP2の機能を調節する可能性がある。
本発明では酵母2-ハイブリッド分析により、TOC1とAPRR5に対するLKP1とLKP2の相互作用を示した。これらの相互作用を確認するためには、たとえば免疫共沈降、プルダウン分析、in vivo相互作用などから支持データを得る必要がある。本発明では予備的な免疫共沈降分析を実施したが、それにもかかわらずこれらのタンパク質の間には強い相互作用は観察されなかった(データ示さず)。ここでは、何らかの光受容性発色団が存在することによって相互作用が影響されうると考えたが、これはNPH3に対するPHOT1(NPH1)の相互作用において、フラビンモノヌクレオチド(FMN)がPHOT1のLOVドメインに結合しなければならないためである(Motchoulski and Liscum, 1999)。最近の報告によれば、FKF1のLOVドメインはFMNに結合し、またLKP1(ZTL1)とLKP2のLOVドメインはFKF1に類似した分光特性を有するという(Imaizumi et al., 2003)。そのため、LOVドメインを介したTOC1とAPRR5に対するLKP1とLKP2の相互作用のためには、適切なフラビン類がLOVドメインに結合しなければならない可能性がある。
本発明に係る草稿がレビューされている途中に、シロイヌナズナではZTLによるTOC1の標的化分解により概日機能が調節されることをMas et al.(2003)が示したが、彼らはZTL(LKP1)に対してTOC1が物理的相互作用し、それがztl変異により無効化され、その結果構成レベルのTOC1タンパク質発現が生じることを示している。また彼らは、暗黒に依存するTOC1タンパク質の分解には機能的ZTL(LKP1)が必要であり、プロテアソーム経路を阻害することによりこの分解が阻害されることを示した。2-ハイブリッド分析において、LKP2はZTL(LKP1)とTOC1を認識できるため(図4)、TOC1分解に際してLKP2はLKP1と協働している可能性がある。この可能性を調べるためにはさらに研究が必要である。Mas et al.によれば、ZTLとTOC1の間には比較的強い2-ハイブリッド相互作用が、またLKP2とTOC1の間には比較的弱い相互作用が示されたが、本稿ではLKP2とTOC1の間に比較的強い相互作用が見られた(図5)。これはおそらく、本稿ではGAL4系を使用し、彼らはLexA系を使用していることによる違いが原因であろう。ある種のタンパク質間相互作用はGAL4ベースの2-ハイブリッド系では検出されないがLexAベースの系では検出可能となり、その逆の場合もあるということはよく知られている(Gyuris et al., 1993; Golemis et al., 1996; Mendelsohn and Brent, 1994)。
【実施例2】
【0051】
(各種光条件下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用)
APRR1/TOC1、APRR5のGAL4
DNA結合ドメイン融合タンパク質またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(−)、ならびにLKP1、LKP2、LKP1 C82A、LKP2
C82AGAL4転写活性化ドメイン融合タンパク質またはGAL4転写活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(−)を含む酵母AH109株をSD-Leu、Trp(SD-LW)(上)、SD-Ade、His、Leu、Trp(SD-AHLW)寒天培地上(右)で生育させた際のシングルコロニー。GAL4
DNA結合ドメインを有するマウスp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40-T抗原をコードする2種類プラスミドを陽性コントロールとした。それぞれ、30℃で4日間、光子量41μmol/m-2/s-1の各種光条件下(暗条件下、白色光下、青色光下、赤色光下)にて酵母を生育させ解析を行った。
(各種光強度の青色光下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用)
APRR1/TOC1、APRR5のGAL4
DNA結合ドメイン融合タンパク質またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(−)、ならびにLKP1、LKP2、LKP1 C82A、LKP2
C82AGAL4転写活性化ドメイン融合タンパク質またはGAL4転写活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(−)を含む酵母AH109株をSD-Leu、Trp(SD-LW)(上)、SD-Ade、His、Leu、Trp(SD-AHLW)寒天培地上(右)で生育させた際のシングルコロニー。GAL4
DNA結合ドメインを有するマウスp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40-T抗原をコードする2種類プラスミドを陽性コントロールとした。それぞれ、30℃で4日間、暗条件下及び、光子量50μmol/m-2/s-1、100μmol/m-2/s-1、190μmol/m-2/s-1の青色光下にて酵母を生育させ解析を行った。
【0052】
[結果]
シロイヌナズナphot1、phot2ではLOV
domainが青色光に応答し、システイン残基を介してFMN(Flabin mononucleotide)と結合、遊離することが報告されている。このシステイン残基に変異を入れることによりFMNとの結合能力が失われ、また、自己リン酸化反応の消失や、光屈性の消失など様々な現象に変化が認められる。LKP1、LKP2のLOV
domainにもこのシステイン残基は保存されており、FKF1のLOV domainについては実際にFMNと結合することが示されている(imaizumi et
al.2003)。本発明では、LKP1、LKP2のシステイン(C)をアラニン(A)に置換したコンストラクト(LKP1 C82A、LKP2 C82A)を作製し、APRR1/TOC1、APRR5との相互作用に与える影響を解析した。これらのLKP変異体との相互作用は暗条件下、赤色光下において変化は認められないものの、白色光下ではやや相互作用が弱くなり、青色光下においては完全に相互作用が消失した(図9)。
次に、青色光下で光強度を50、100、190に振り分け光強度による相互作用に与える影響を解析した。光子量50の時点でLKP1
C82A、LKP2 C82AとAPRR1/TOC1、APRR5との相互作用が完全に消失した。光子量190では変異体LKP1、LKP2のみでなく野生型LKP1とAPRR1/TOC1、APRR5との相互作用との相互作用も消失していた。また、光強度を上昇させるにつれて変異体LKP1、LKP2を含むAH109株はSD-Leu、Trp培地(SD-LW)でも生育が阻害されていた(図10)。
【0053】
[考察]
LKP1、LKP2のシステイン(C)をアラニン(A)に置換したコンストラクトを用いて、青色光下でAPRR1/TOC1、APRR5との相互作用を解析した際には野生型LKP1、LKP2との間で認められていた相互作用が消失していた。
酵母2-Hybrid用のベクターにはHA-tagや転写活性化領域等が含まれており、これらとLKP1、LKP2との融合タンパク質として発現させているためにLKP1、LKP2のタンパク質構造が変化し、青色光に対する反応が起こりにくくなっているが、変異体を用いることにより青色光に対する反応が認めらにくくなっているという可能性が考えられる。実際に、LKP1(ZTL)によるTOC1のプロテアソーム系に依存した分解は暗下で促進され、明下ではTOC1タンパク質が蓄積することが報告されている(Mas
et al.2003)。この結果は、暗下でのみLKP1とTOC1が相互作用し、明下ではTOC1との相互作用が認められなくなるという仮説を支持するものであると考えられる。
強光下で、変異型LKP1、LKP2を含むAH109株がSD-Leu、Trp培地(SD-LW)でも生育が阻害されるという現象は酵母内で発現している変異型LKP1、LKP2のタンパク質が不安定になるために起こるという可能性が考えられる。強光下において変異型LKP1、LKP2のタンパク質が不安定になる原因と機構については、現時点では定かではないが、ウエスタンブロット等を実施し、タンパク質の安定性を評価する必要があるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の主要なデータである光による相互作用のオン/オフ(遺伝子発現のオン/オフ)には光の質と強さが影響を与えているので、分子生物学実験キット、酵母内での遺伝子発現制御などの分野で実用化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】遺伝子組み換えシロイヌナズナにおけるGUS活性の組織化学的局在化。(A)GUS活性は6日齢の苗木、(B)14日齢のロゼット植物、(C)花、(D)若い長角果、(E)47日齢植物の古い長角果。バーはA、C-Eでは1mm、Bでは5mmである。
【図2】GFP-LKP2融合タンパク質の細胞内局在。35S::GFP T3植物(A、B)と35S::GFP-LKP2 T3植物(C-G)の根を、25μg mL-1カナマイシンを含むGM寒天培地上、16時間光照射/8時間暗闇のサイクルで成長させ、これを光学顕微鏡(A、C、E)、蛍光顕微鏡(B、D、G)、共焦点レーザ操作顕微鏡(H)を用いて観察した。35S::GFP-LKP2 T3植物を4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)で染色し、蛍光顕微鏡(F)で観察した。バーはA-Dでは100μm、E-Hでは10μmである。
【図3】シロイヌナズナSkp1オーソログ(ASKs)とLKPファミリータンパク質の間の酵母2-ハイブリッド相互作用。(A)ASKs(ASK1-5、ASK7-14、ASK16-19、ASK20a、ASK20b)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(上)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(下)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。アステリスクは30mM 3-ATを供給してHIS3レポーター遺伝子の基礎活性を抑制したSD-AHLW培地を示し、その結果非特異的バックグラウンド増殖が抑えられている。Clontechより取得した2種類のプラスミドで、GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、アミノ酸72-390(GenBank受入番号#K01700)、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原(GenBank位置SV4CG)をエンコードするものを、陽性対照とした。(B-D)LKP1、LKP2、FKF1のF-box領域を用いて2-ハイブリッド相互作用試験を行った。試験対象となる全タンパク質の発現は、イムノブロット分析により確認した(データ示さず)。
【図4】LKPファミリータンパク質間の2-ハイブリッド相互作用。 (A)LKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体およびGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。アステリスクは30mM 3-ATを供給してHIS3レポーター遺伝子の基礎活性を抑制したSD-AHLW培地を示し、その結果非特異的バックグラウンド増殖が抑えられている。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。 (B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。試験対象となる全タンパク質の発現は、イムノブロット分析により確認した(データ示さず)。
【図5】LKPファミリータンパク質に対する時計関連因子の相互作用。 (A)時計関連因子(TOC1、CCA1、LHY)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。 (B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【図6】LKP2ドメインに対するTOC1の相互作用。(A)TOC1のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKP2のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。L:LOVドメイン;F:F-box;K:ケルヒ繰り返し領域;LF:LOVドメイン+F-box;LK:LOVドメイン+ケルヒ繰り返し領域;FK:F-box+ケルヒ繰り返し領域。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【図7】酵母でのLKPファミリータンパク質に対するAPRR/TOC1ファミリータンパク質の相互作用。(A)APRR/TOC1ファミリータンパク質(TOC1、APRR3、APRR5、APRR7、APRR9)のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKPファミリータンパク質(LKP1、LKP2、FKF1)のGAL4活性化ドメイン融合体またはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、酵母AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【図8】LKP2ドメインに対するAPRR5の相互作用。(A)APRR5のGAL4 DNA結合ドメイン融合体またはGAL4 DNA結合ドメイン発現ベクターpGBKT7(「Vector」)、ならびにLKP2ドメインまたはGAL4活性化ドメイン発現ベクターpGADT7(「Vector」)を含み、SD-Leu, Trp(SD-LW)(左)またはSD-Ade, His, Leu, Trp(SD-AHLW)寒天培地(右)上で生育した、AH109の単一コロニー。GAL4 DNA結合ドメインを有するネズミp53タンパク質、ならびにGAL4活性化ドメインを有するSV40ラージT抗原をエンコードする2種類のプラスミドを、陽性対照とした。L:LOVドメイン;F:F-box;K:ケルヒ繰り返し領域;LF:LOVドメイン+F-box;LK:LOVドメイン+ケルヒ繰り返し領域;FK:F-box+ケルヒ繰り返し領域。(B)Miller単位で測定した液体培地中のβ-ガラクトシダーゼ活性。イムノブロット分析により試験された全てのタンパク質において、発現レベルに有意差は見られなかった(データ示さず)。
【図9】各種光条件下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用。
【図10】各種光強度の青色光下におけるLKP1、LKP2変異体とTOC1/APRR1、APRR5との相互作用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光による遺伝子の発現制御に、LKP1、LKP2、変異型LKP1および/または変異型LKP2を用いることを特徴とする青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項2】
LKP1、LKP2のLOVドメインと相互作用因子とのタンパク質相互作用が青色光に依存してオン/オフされる青色光スイッチを利用する請求項1の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項3】
相互作用因子がTOC1および/またはAPRR5である請求項2の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項4】
LKP2のF-box領域と、ASKとの相互作用が青色光に依存してオン/オフされる青色光スイッチを利用する請求項1の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項5】
導入されたLKP1遺伝子、LKP2遺伝子、変異型LKP1遺伝子および/または変異型LKP2遺伝子の転写がオン/オフされる請求項1ないし4のいずれかの青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項6】
LKP2遺伝子が、植物ウイルス由来のプロモータの下流に、LKP2のプロモータを介してLOVドメイン及びケルヒ繰返しを有するLKP2遺伝子が連結されている発現ベクターにより導入された遺伝子である請求項5の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項7】
LKP2のプロモータの下流に、β−グルクロニダーゼ遺伝子を介して、LKP2遺伝子が連結されている遺伝子である請求項6の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項8】
LKP2のプロモータのプロモータとして、LKP2の1.6kbの5′非コーディング領域を用いることを特徴とする請求項6または7の青色光による遺伝子発現制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの青色光による遺伝子発現制御方法を用いることを特徴とする青色光による植物の生育制御方法。
【請求項10】
植物ウイルス由来のプロモータの下流に、LKP2のプロモータを介してLOVドメイン、F-boxおよびケルヒ繰り返しを有するLKP2遺伝子が発現ベクターに連結されている青色光による遺伝子発現制御に用いるための合成遺伝子。
【請求項11】
LKP2のプロモータの下流に、β−グルクロニダーゼ遺伝子を介して、LKP2遺伝子が連結されている請求項10の合成遺伝子。
【請求項12】
LKP2のプロモータのプロモータとして、LKP2の1.6kbの5′非コーディング領域を用いる請求項10または11の合成遺伝子。
【請求項13】
生物の細胞、組織、もしくは器官または生物全体に対し、青色光による遺伝子転写のオン/オフによる遺伝子発現制御のためにする請求項10、11または12の合成遺伝子の使用。
【請求項14】
生物が植物であるの請求項13の使用。
【請求項15】
生物が酵母であるの請求項13の使用。
【請求項16】
生物が動物であるの請求項13の使用。
【請求項17】
請求項10、11または12の合成遺伝子を含む細胞、組織、器官または生物全体。







































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−94704(P2006−94704A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270182(P2004−270182)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】