説明

静液圧式の駆動装置を制御するための方法

少なくとも1つの第1の液圧式の消費機(5)と第2の液圧式の消費機(10)とを備えた静液圧式の駆動装置を制御するための方法に関する。これらの第1の液圧式の消費機と第2の液圧式の消費機とは、1つの共通の駆動機械によって駆動される。まず、前記第1の液圧式の消費機(5)の第1の出力要求を算出する(20)。この算出された第1の出力要求から、前記共通の駆動機械(2)によって提供可能な有効出力を算出する(21)。共通の作業気化器の、この提供可能な有効出力が、作業液圧システムのための制御センサの調整経路において段階付けされる。第2の液圧式の消費器を制御するために制御センサの位置が算出され(23)、段階付けされた提供可能な有効出力をベースにして出力要求を割り当てる。この第1の出力要求と第2の出力要求とから、共通の作業機械の運転ポイントが決定さる(24)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの共通の駆動機械によって駆動される、少なくとも1つの第1の液圧式の消費機と第2の液圧式の消費機とを備えた静液圧式の駆動装置を制御するための方法に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開第10307190号明細書により、静液圧式の駆動装置が公知である。提案されている可動式作業機械の液圧システムは、走行駆動装置と少なくとも1つの作業液圧システムとを有している。走行駆動装置も作業液圧システムも、共通の1つの駆動機械によって駆動される液圧式の消費機である。共通の駆動機械はディーゼルエンジンとして構成されている。可動式作業機械の運転中、ディーゼルエンジンによって提供される駆動出力は、走行駆動装置と作業液圧システムとに分割される。この場合、作業液圧システムを操作するための相応のアクセルペダル位置若しくは操縦棒(ジョイスティック)位置のために、それぞれディーゼルエンジンに接続された静圧式のポンプによって吸収される出力が算出される。それぞれアクセルペダル位置若しくは操縦棒位置に基づいて吸収しようとする出力から、エンジンによって供給される出力が算出される。
【0003】
このようなシステムによれば、アクセルペダルが完全に踏み込まれた状態でも、また操縦棒が終端位置にある場合においても、ディーゼルエンジンが出力要求を満たす位置にあるように、ディーゼルエンジンの定格出力を設定しなければならない、という欠点がある。しかしながら、このことを度外視しても、ディーゼルエンジンの構造寸法が不必要に大きくならないようにするためには、例えば走行駆動装置に基づく高い要求において作業液圧システムの出力要求を満たすことができない、という問題がある。作業液圧システムに供給される出力成分が小さく、操縦棒が、作業液圧システムのための、より大きい出力の方向に移動する場合、使用者にとって遊びと感じられる。
【0004】
そこで本発明の課題は、特にそれぞれ作業液圧システムに提供可能な出力成分をフィードバックすることができるような、静液圧式の駆動装置のための改善された制御方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部に記載した方法によって解決された。
【0006】
本発明による、1つの共通の駆動機械によって駆動される、少なくとも1つの第1の液圧式の消費機と第2の液圧式の消費機とを備えた静液圧式の駆動装置を制御するための方法によれば、まず、前記第1の液圧式の消費機の第1の出力要求を算出するようにした。この第1の液圧式の消費機は、一般的に、可動式作業機械の走行駆動装置である。共通の駆動機械によって実現する必要がある、この第1の出力要求が認識されると、次に共通の駆動機械の提供可能な有効出力が算出される。この提供可能な有効出力は、駆動機械によって表示可能な出力と算出された第1の出力要求との間の差である。この共通の駆動機械の提供可能な有効出力は、制御センサ例えば操縦棒の可能な調整経路において段階付け(スケーリング)される。これによって、例えば作業液圧システムを操作するために設けられて制御センサの最大ストロークと制御センサの中立位置との間で、実際に提供可能な出力が段階付けされる。これによって、制御センサの運動が第2の液圧式の消費器の出力要求の変化に変えられる。提供可能な有効出力の算出された位置に、第2の出力要求が割り当てられる。この第1の出力要求及び算出された第1の出力要求をベースとして、共通の作業機械の運転ポイントが決定され、この場合、理論的にまだ提供可能な有効出力を段階付けするにも拘わらず、操作員は、制御センサの運動時にシステム反応に基づいて、作業液圧システムのための提供可能な予備出力がどの程度の高さであるかについてのフィードバックを得ることができる。
【0007】
本発明の方法の別の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0008】
特に有利には、第1の出力要求のための最大値が決定される。このような最大値を決定することによって、共通の駆動機械の完全な駆動出力が走行駆動のために使用されないことが証明される。それに応じて、別の接続された液圧式の消費機、特に可動式の作業機械における作業液圧システムのために、常に最小出力が提供可能である。
【0009】
さらに、共通の作業機械の絶対的な最大出力(定格出力)と、算出された第1の出力要求との間の差から、提供可能な有効出力が算出される。
【0010】
選択的に、それぞれ調節された運転ポイントにおいても、共通の駆動機械の提供可能な有効出力が算出される。さらに、有利な形式で、走行指令プリセット装置の位置から静圧走行駆動装置の伝達比が算出される。これによって、可動式の作業機械の可動走行が可能であり、特に操作員による操作が著しく簡略化される。この場合、本発明の方法は、特に、一般的に、作業液圧システムと走行駆動装置との間の出力成分をフレキシブルに調整し、勿論、使用者の処理を要求する、いわゆる「インチペダル(Inchipedalr)」を省くことができる。
【0011】
本発明の有利な実施例が図面に示されていて、以下に詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】可動式作業機械の静液圧式の駆動装置の概略図である。
【図2】作業液圧システムと走行駆動装置との間の出力分割を示す概略図である。
【図3】静液圧式の駆動装置を制御するための方法手順を示すフローチャートである。
【0013】
図1には、可動式作業機械の静液圧式の駆動装置1、例えば浚渫機の概略図が示されている。静液圧式の駆動装置1は、ディーゼルエンジン2を有しており、該ディーゼルエンジン2は、共通の駆動機械として設けられている。ディーゼルエンジン2は、トランスファギヤボックス3に接続されており、このトランスファギヤボックス3を介して、ディーゼルエンジン2によって生ぜしめられたトルクが複数の消費機に分配されるようになっている。
【0014】
トランスファギヤボックス3に、第1の消費機として可動式の作業機器の走行駆動装置の静圧式流体変速機4が接続されている。静圧式流体変速機4は、調整ポンプ5と調整モータ6とを有している。調整モータ6は被駆動軸を介して、可動式作業機械の駆動軸に接続されている。1つの駆動軸とだけ接続されているのは1例である。勿論その他の駆動形式、例えば全輪駆動も可能である。
【0015】
トランスファギヤボックス3は、第1の駆動軸8を介して調整ポンプ5に接続されていて、第2の駆動軸9を介して別の調整ポンプ10に接続されている。別の調整ポンプ10は、フィードライン11を介して作業液圧システム、例えば行程シリンダに接続されていて、第2の液圧式の消費機を形成している。
【0016】
これによって、ディーゼルエンジン2は、作業液圧システムの第1の調整ポンプ5として構成された第1の液圧式の消費機及び、作業液圧システムの別の調整ポンプ10として構成された第2の液圧式の消費機を駆動する。
【0017】
静圧式流体変速機4の調整ポンプ5と調整モータ6とは、それぞれその行程容積を調整可能であって、有利な形式で斜板機械又は斜軸機械として構成されている。行程容積を調整するために電子制御ユニット(以下では走行駆動制御装置12と称呼されている)が設けられている。走行駆動制御装置12は、調整ポンプ5の吐出量を調整するための第1の制御信号及び、油圧モータ6の吸込み量を調整するための第2の制御信号を生ぜしめる。第1の制御信号は第1の調整装置13に伝達され、第2の制御信号は第2の調整装置14に伝達される。第1及び第2の調整装置13,14は、それぞれ調整ポンプ5の調整機構若しくは油圧モータ6の調整機構と相互作用し合っており、それによってこの第1及び第2の調整装置13,14は、制御信号に応じて静圧式流体変速機4の所望の変速比を調整する。
【0018】
別の電子制御ユニットは以下に作業液圧システム制御装置15として記載されている。作業液圧システム制御装置15は、信号ラインを介して第3の調整装置16に接続されている。第3の調整装置16は、別の調整ポンプ10の吐出量を調整し、それによって別の調整ポンプ10の入力装置を調整する。
【0019】
ディーゼルエンジン2の運転ポイントを調整するために、別の制御装置としてディーゼル制御装置17が設けられている。ディーゼル制御装置17は、運転ポイントを提供し、それによってディーゼルエンジの目標回転数を制御する。このために、制御信号が、ディーゼルエンジン2の噴射装置18に伝達される。ディーゼル制御装置17は、作業液圧システム制御装置15及び走行駆動制御装置12に接続されている。
【0020】
第1の出力要求を検出することができるようにするために、走行駆動制御装置12はアクセルペダル19の信号を伝達する。アクセルペダル19は1例として示しただけである。アクセルレバー又はその他の走行指令プリセット装置を設けることができる。図示の実施例では、移動式走行駆動装置を実現するために、アクセルペダル29は、中立位置を基点として逆向きの2つの方向に旋回させることができる。アクセルペダル29の位置を特徴付ける、それぞれ調節された角度αは、位置検出器30によって検出され、位置信号が走行駆動制御装置12に伝達される。この位置信号に基づいて走行駆動制御装置12が第1の出力要求を算出し、この算出された出力要求をディーゼル制御装置17に伝達する。このディーゼル制御装置17から、前記算出された第1の出力要求に基づいて、ディーゼルエンジン2の提供可能な有効出力(freie Leistung)を算出する。この提供可能な有効出力は大きくとも、ディーゼルエンジンの絶対的な最大出力(ディーゼルエンジンの定格回転数において生ぜしめられる)と算出された第1の出力要求との間の差と同じである。提供可能な有効出力に関する情報は、ディーゼル制御装置17から作業液圧システム制御装置15に伝達される。
【0021】
別の調整ポンプ10の入力装置を制御するために制御センサが設けられており、該制御センサは図示の実施例では操作レバー31として構成されている。操作レバー31は、図1に示した中立位置から2つの方向でそれぞれ一方の終端位置まで調節可能である。この場合、第1の終端位置までの調節経路と、この第1の終端位置に対向する第2の終端位置までの調整経路とは、異なっていてよく、図1では角度β及びβ′によって表されている。操作レバー21の各位置は、別のポジションセンサ32によって検出され、この位置信号は作業液圧システム制御装置15に供給される。作業液圧システム制御装置15は、操作レバー21の中立位置と各終端位置との間の調整経路β上でディーゼルエンジン2の提供可能な有効出力を段階付け(skalieren;スケーリング、基準化)する。これによって、作業液圧システムのレスポンス若しくは、この作業液圧システムに供給する別の調整ポンプ10のレスポンスを可能にするために、別のポジションセンサ32のそれぞれ算出された位置で操作レバー21の最大偏位方向にディーゼルエンジン2の予備出力をさらに提供することが保証される。
【0022】
また、作業液圧システム制御装置15と走行駆動制御装置12とを直に接続したことによって、作業液圧システム制御装置15によって、走行駆動装置の出力要求のための最大値を確認することができる。このような、走行駆動装置のために可能な最大出力要求はパラメータ化される。このために、相応の限界値が作業液圧システム制御装置15を介して調節され、例えば内蔵されたメモリーに記憶される。これによって、走行駆動制御装置12のための最大値が、ディーゼルエンジン2の、走行駆動装置によって要求される出力のための上限値を決定するので、常に作業液圧システムのためのディーゼルエンジン2の最小出力が提供される。
【0023】
以上について、図2を用いてさらに詳しく説明する。図2には、ディーゼルエンジン2の定格出力PNennが示されている。また最大値Pmaxが記入されている。走行駆動装置は、ゼロとPmaxとの間の範囲内でだけ調節される。しかしながら実際に、走行駆動装置の算出された第1の出力要求がPmax例えばPFAよりも小さければ、PNennとPFAとの間の差によって生じる提供可能な有効出力が得られる。これは図2に符号19で示されている。この提供可能な有効出力19は、操作レバー31の調節経路の角度βをスケーリングする。最も簡単な場合、リニア(線)状のスケーリングが行われる。
【0024】
図3は、本発明による方法手順の簡単に示したフローチャートである。まずステップ20で第1の出力要求20が検出される。第1の出力要求は、第1の液圧式の消費機が静圧式流体変速機4である図示の実施例では、走行駆動装置の出力要求である。この出力要求は走行ペダル位置αをベースにして算出される。第1の出力要求を考慮しながら、提供可能な有効出力がステップ21で算出される。このために、第1の出力要求が走行駆動制御装置によってディーゼル制御装置17に伝達される。ディーゼル制御装置17は、第1の出力要求とディーゼルエンジン2の最大出力とから提供可能な有効出力を算出して、この提供可能な有効出力を作業液圧システム制御装置15に伝達する。ステップ21において、作業液圧システム制御装置15は、提供可能な有効出力を操作レバー21の可能な調節経路β上でスケーリングする。次いでステップ23において、操作レバー21の位置が別のポジションセンサ22によって算出される。この算出された位置に、スケーリングされた提供可能な有効出力をベースにして、作業液圧システムの第2の出力要求が割り当てられる。第1の出力要求及び算出された第2の出力要求をベースにして、ディーゼルエンジン2のための運転ポイントが決定される。運転ポイントを決定するために有利な形式で、ディーゼル制御装置17にメモリーされた、デジーセルエンジン2の特性マップ若しくは特性曲線(Kennfeld)が使用される。この場合、最適燃費の観点で、算出された全出力要求を実現するために十分な運転ポイントが選択される。
【0025】
走行駆動装置によって又は作業液圧システムによって出力要求が変化すると、それに応じて新たな運転ポイントが決定される。出力要求が高くなると、一般的にディーゼルエンジン2の回転数も高くなる。決定された運転ポイントをベースにして、ディーゼルエンジン2のための目標回転数はディーゼル制御装置17によって算出され、これに対応する制御信号がディーゼルエンジン2の噴射装置18に供給される。噴射装置18は、ディーゼルエンジンをこの目標回転数に調節する。
【0026】
さらに、走行駆動制御装置12によって静圧式伝動装置の変速比が算出され、調節装置13及び14によってそれぞれ、調整ポンプ5の吐出量若しくは調整モータ6の吸込み量が調節される。また、作業液圧システム制御装置15によって、調整ポンプ10の吐出量が算出され、調整装置16を用いて調整される。
【0027】
調整装置13,14による調整ポンプ5,10若しくは調整モータ6の調整は、公知の形式で例えば電子比例式の調整装置を介して行われる。
【0028】
図示の実施例は、第1の液圧式の消費機としての走行駆動装置と第2の液圧式の消費器としての別の調整ポンプ10とを備えた静液圧式の駆動装置1のための本発明の方法を、概略的に示している。トランスファギヤボックス3に別の出力装置を配置することも可能である。この別の出力装置は、主に作業液圧システム制御装置15に適合する別の制御装置を介して相応に考慮される。この追加的な出力要求は、それぞれ個別に算出され、ディーゼル制御装置17に供給される。ディーゼル制御装置17は同様に別の出力要求を考慮する。
【0029】
本発明は図示の実施例のみに限定されるものではない。特に図示の実施例の個別の特徴は互いに組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの共通の駆動機械(2)によって駆動される、少なくとも1つの第1の液圧式の消費機(5)と第2の液圧式の消費機(10)とを備えた静液圧式の駆動装置を制御するための方法において、
前記第1の液圧式の消費機(5)の第1の出力要求を算出し(20)、
前記共通の駆動機械(2)によって提供可能な有効出力を算出し(21)、
前記共通の駆動機械(2)の提供可能な有効出力を制御センサ(31)の可能な調整経路(β)上で段階付けし(22)、
第2の液圧式の消費機(10)を制御するために前記制御センサ(31)の位置を算出し(23)、
前記制御センサ(31)の算出された位置に第2の出力要求を割り当て(23)、
前記第1及び第2の出力要求を考慮して、前記共通の駆動機械(2)の運転ポイントを決定する(24)、
方法段階を有していることを特徴とする、静液圧式の駆動装置を制御するための方法。
【請求項2】
第1の出力要求(PFA)のための最大値(Pmax)を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
共通の駆動機械(2)の絶対的な最大出力と、算出された第1の出力要求との間の差から成る提供可能な有効出力(19)を算出する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第1の出力要求(PFA)を算出するために、走行指令プリセット装置(29)の位置(α)を算出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記走行指令プリセット装置(29)の位置(α)から走行駆動装置の静圧式流体変速機(4)の変速比を算出する、請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−508142(P2011−508142A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540065(P2010−540065)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/011027
【国際公開番号】WO2009/083222
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】