説明

静的混合要素

空洞体(10)に組み込むための静的混合要素は多数のバー要素を含んでおり、少なくとも1つの第1のバー要素(3)を有する第1の構造体(21)が備えられているが、当該第1の構造体(21)は、少なくとも1つの第2のバー要素(4)を含む第2の構造体(31)に対して交差して設けられている。第1の構造体(21)と第2の構造体(31)は、主流方向に対して0度ではない角度を結んでいる。第1の構造体は第2の構造体と、0度より大きな角度を結んでいる。主流方向に対して直交する投射平面に、第1の構造体(21)と第2の構造体(31)とを投射する際、互いに隣接するバー要素の間に、少なくとも部分的な中間室がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の、おいて書きに記載の静的混合要素に関する。本発明はまた、当該混合要素を含む静的ミキサにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術から静的混合装置が知られており、当該装置は管状のハウジングから成り、当該ハウジング内に設けられた少なくとも1つの混合要素を含んでいる。混合要素は、管の軸に対して角度を有する、交差するバーから成る。混合要素のバーは、少なくとも2つのグループに設けられている。それぞれのグループ内のバーは、ほぼ平行に向けられている。1つのグループのバーは、他のグループのバーと交差している。
【0003】
特許文献2には、特許文献1とは異なって、交差する点の領域で互いに重なり合う交差バーを有する、静的混合装置が示されている。特許文献2において鋼板の棒として形成されているバーの局部的な広がりは、強化および/あるいは隣接するバーの形状接続的な連結の形成に役立っている。当該広がりには、隣接する鋼板の棒を受け入れるノッチが切り込まれている。
【0004】
特許文献3には、静的混合装置の一部であるモジュールが示されており、当該静的混合装置は、滞留時間に支配され、可塑的に流動可能な混合されるべき材料のために備えられている。当該装置は管状のハウジングを有し、当該ハウジング内にバーが設けられている。バーは、ハウジングの長手軸に対して傾斜している。当該バーは、長手軸に対して垂直なほぼ直線上で交差する。モジュールは、ハウジングに挿入可能なスリーブを有している。混合されるべき材料を導く、静的混合装置の内壁は、スリーブの内側によって形作られている。バーはトゲ状に形成されており、それぞれその頂部は混合されるべき材料の移動方向とは反対を指し、かつ、基底部はスリーブの内側に固定されている。各先端部は、装置の内壁に対して中間室を形作る。
【0005】
1979年の特許文献1に記載のミキサの開発は、層流する溶媒のための静的混合技術の予期せぬ改善を見せた。それ以来、当該ミキサはその有効性を証明し、大部分は粘性の高い溶媒を用いた応用の非常に広い領域において成功裏に使用されている。その後に続く、ほぼ30年間に、当該ミキサの改良が再三再四試みられた。しかしながら、多大なる浪費にもかかわらず、付随的な改良のみが達成され得ただけであった。特許文献4では、手が加えられた凹型のバー断面を有する、変更されたミキサが保護された。独立した測定(非特許文献1)では、従来技術に対して、変更された当該静的ミキサの圧力損失と混合効率に関して、ほんの僅かな違いしか出なかった。最近発表された文献(非特許文献2)では、様々な技術による混合効率と圧力低下の改善のために、特許文献1に記載の従来技術の多くの修正が検証された。当該文献においてはまた、特許文献4の混合要素も計測された。Liuは、混合効果が同じかあるいはいくらか悪い場合に、15%少ない圧力低下を得た。しかもバー断面をさらに変化させることによりLiuは、特許文献1のミキサに対して圧力損失が7.5%減少した場合、いくらか高い混合効果を達成した。特許文献1のミキサと類似した構造の、静的ミキサの混合動作の改良と検証のための作業の、このような例は、今日に至るまで、層状のミキサの混合効率と圧力低下における本質的な改良がなされ得なかったことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スイス国特許第642564号明細書
【特許文献2】独国特許第4428813号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0856353号明細書
【特許文献4】米国特許第6,467,949号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.Heniche外3名、「American Institute of Chemical Engineers」(米国)、第51巻、第1号、2005年1月
【非特許文献2】S.Liu、マクマスター大学博士論文、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
驚くべきことに、上の記述が当てはまらない、それどころか記述とは逆の、静的混合要素を見つけることができる。本発明に係る混合要素によって観察される、類似のあるいは改善された混合効率における明らかな圧力低下の減少は、本発明に係る混合要素によって達成され得るものであり、技術的な突破口である。
【0009】
本発明の課題は、上述の静的ミキサに改良を施し、その改良によって、比較し得るあるいは改善された混合効率において、より少ない圧力損失が達成され得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該課題は、以下に規定される静的混合要素によって解決される。
【0011】
本発明に係る静的混合要素は幅寸法Dbを有し、ほぼ等しい幅寸法Dbを有する空洞体に組み込むのに適している。静的混合要素は、多数のバー要素を含んでおり、少なくとも1つの第2のバー要素を含む第2の構造体に対して交差して設けられている第1の構造体は、少なくとも1つの第1のバー要素を含んでいる。第1の構造体と第2の構造体は、主流方向に対して0度ではない角度を結んでいる。第1の構造体と第2の構造体は、0度より大きな角度を結んでいる。主流方向に対して直交する投射平面に、第1の構造体と第2の構造体とを投射する際、互いに隣接するバー要素の間に、少なくとも部分的な中間室がある。混合要素の幅寸法Dbの方向において測定された、バー要素の幅Hの相対的な総和zは、混合要素の幅寸法Dbの95%よりも小さい。
【0012】
さらなる特徴は、静的混合要素、および本発明に係る静的混合要素を含む静的ミキサの有利な実施形態に関する。
【0013】
主流方向は好ましくは、混合要素が受容されている空洞体の長手軸方向にある。第1の構造体と第2の構造体とによって交差箇所が形成され、当該交差箇所の近傍に間隔要素が形成されていてよい。間隔要素は、少なくとも1つのバー要素を局部的に厚くし、あるいは幅を広くしたものとして形成されていてよい。バー要素の数は、投射平面において4から10となり得る。有利には、1つの構造体につき少なくとも2つのバー要素が備えられている。第1と第3のバー要素は、第1の平面にある、バー要素の第1の構造体の部分である。第2と第4のバー要素は、第2の平面にある、バー要素の第2の構造体の部分である。第1の構造体のバー要素の少なくとも一部は、第1の平面に対して、ずらされて設けられている第3の平面に設けられている。選択的にあるいは補足的して、第2の構造体のバー要素の一部は第4の平面に設けられており、当該第4の平面は第2の平面に対して、ずらされて設けられている。バー要素は幅(H)を有している。空洞体の直径(D)に対する比率における、投射平面のバー要素の幅(H)の総和(ΣHi)は、以下に規定される大きさzによって設定される。大きさzは、特に95%よりも小さく、好適には85%よりも小さく、特に75%よりも小さく、特に好ましくは65%よりも小さい。静的混合装置は静的混合要素を備え、かつ、当該静的混合要素を受容するために空洞体あるいはスリーブを備えている。静的混合要素は空胴体あるいはスリーブに固定されていてもよく、静的混合要素と空胴体あるいはスリーブは、1つの部材から成っていてもよい。
【0014】
静的混合要素は、第1の平面と第2の平面との交線の領域および/あるいはバー要素の端の少なくとも一部の領域において、空洞体あるいはスリーブの内壁に固定され得る。
【0015】
前述の実施例の1つによる静的混合要素は好ましくは、層流する溶媒特にポリマー溶融物あるいはその他の高粘性の流体のために用いられる。
【0016】
次に、本発明を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による静的混合装置の図である。
【図2】第1実施例による、本発明の静的混合要素の図である。
【図3】本発明に係る静的混合要素の第2の実施例の図である。
【図4】本発明に係る静的混合要素の第3の実施例の図である。
【図5】本発明に係る混合要素の圧力低下と混合効率の結果を様々な設計ヴァリエーションで、特許文献1の従来技術と比較したグラフである。
【図6】局部的に厚くなり幅が広くなった間隔要素との交差領域の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、空洞体10内に互いに連続して設けられている4つの混合要素を示している。連続する混合要素2は、回転軸として機能する空洞体軸8を中心に、90度の角度で互いに回転してずれている。空洞体10を貫流する流体の主流方向は、空洞体軸8の方向にある。各混合要素は、交差する2つの平面(5,6)に設けられているバー要素(3,4)の構造体から成る。バー要素の構造体は、実質的に1つの平面にあるバー要素の数を特徴付ける。第1の平面5はバー要素3の第1の構造体21を含み、第2の平面6はバー要素4の第2の構造体31を含んでいる。第1の平面と第2の平面(5,6)は、互いに対して角度を成して設けられており、その結果、バー要素3の第1の構造体21は、バー要素4の第2の構造体31と交差する。隣接するバー要素は、バー要素の幅(H)の総和が管の直径(D)と等しいように、互いに並列して存在している。この場合、バー要素は、直接互いに隣り合っている。当該実施例に従えば、流動するそれぞれの流体分子は、当該流体分子が主流方向に沿って流動するという理想的な想定の下で、バー要素に衝突する。それによって各バー要素は、流動する流体分子の障害物となり、その結果、当該流体分子がバー要素に衝突する前に、流体分子の方向転換が生じる。このため静的混合要素の内部においては、流体分子が主流方向に流動するという想定はもはや当てはまらない。流体分子が主流方向から方向転換することによって、流体の流れが混ざり合う。結果として、主流方向からの転換が増加することにより、混合作用が増すことになる。しかし、流体分子が主流方向からますます方向転換すれば、一般的には圧力の損失が大きくなる。
【0019】
貫流断面にできるだけ障害物がなければ、圧力損失が減ることは一般的に知られているため、圧力損失を減少させるために流れの中に障害物がないようにすることを想到すると思われる。しかしそうなると、混合する距離が同じだと、よりうまく混ざり合わないことが考えられるであろう。なぜならば、従来の見解によると、流体分子は、ほとんど方向転換されることなく、障害物をなくすことで生じる間隙を貫流するからである。すなわち、他の流体分子と混合することなく、ほぼ主流方向に流れるからである。驚くべきことに、当該記載が当てはまらない、図2に記載のバー要素の構造を見つけることができる。空洞体10に取り付けるための、本発明に係る静的混合要素2は、多くのバー要素を含んでいる。第1のバー要素3と第3のバー要素13は、第2のバー要素4と第4のバー要素14に対して相対的に、交差して設けられている。第1のバー要素3と第3のバー要素13とは、バー要素の第1の構造体21を形成する。第2のバー要素4と第4のバー要素14とは、バー要素の第2の構造体31を形成する。
【0020】
バー要素は、たとえば管として、あるいは板状、円盤状、あるいは横木状の要素として形成されていてもよい。バー要素の断面は角がなくてもよく、たとえば円形あるいは楕円形の断面を有していてもよい。断面は角があってもよく、すなわちたとえば長方形あるいはひし形の断面を有していてもよい。角と角とを結ぶ線は直線でもあるいは曲線でもよく、特に、たとえば欧州特許第1305108号明細書で実現されているような凸型でも凹型でもよい。バー要素は、属する構造体から少なくとも部分的に突き出ていてもよく、たとえば波型をした構成を有していてもよい。この場合、前述の、構造体の平面は、中間平面として理解され得る。
【0021】
さらにバー要素は、構造体の方向において、すなわち対応する平面においてあるいは中間平面と平行に、不規則な構成、たとえば起伏のある表面を有してよい。この場合、バー要素の幅Hは、バーの長さにわたって平均された、バー要素の幅として規定されている。構造体内部においては、個々のバー要素は互いに平行に延びる必要はなく、同じ構造体の他のバー要素に対して角度を有していてもよい。
【0022】
本発明の驚くべき効果は、列挙されたそれぞれのバー要素の断面で、かつ、それぞれのバー要素の形状で見られ、それゆえバー要素の断面や形状とは、ほとんど関係がない。主流方向に対して直交する、すなわち覆っている空洞体10の長手軸8に対して直交する平面に、2つの構造体21および31を投射すると、図1の構造体21および31のバー要素は、投射において同一平面上に互いに隣接して存在する。すなわち上記のように投射されたバー要素の間には、中間室が見えない。それに対して、図2から図4の実施例の1つに同様の投射を行うと、バー要素の間にそのような中間室が存在する。
【0023】
図2は空洞体10の半径方向の断面図を示しており、当該図においてまさに、バー要素3,13もしくはバー要素4,14の投射図が示されている。この図ではバー要素は幅(H)を有し、互いに間隔(a)をあけており、特に好ましい当該実施例では、隣り合うバー要素の幅(H)と間隔(a)は等しい。本発明の驚くべき効果はまた、間隔(a)および/あるいは幅(H)が互いに異なる場合にも現れる。
【0024】
図3は、本発明に係る混合要素の第2の実施例を示している。図3で表されているように、構造体の全てのバー要素が実質的に同一の平面にある場合、あるいは図4で表されているように、全てのバー要素が、実質的に平行で、長手軸の方向にややずれている平面にある場合に、多数のバー要素はバー要素の1つの構造体を形作る。バー要素の1つの構造体は、図3の実施例によれば、2つもしくは3つのバー要素から成っている。この場合、平面5にある、バー要素の第1の構造体21は、2つのバー要素3および13とから成っている。平面6にある、バー要素の第2の構造体31は、バー要素4,14,24から成っている。第1の構造体と第2の構造体とによって、交差する2つの平面5および6が張られている。第1の平面5と第2の平面6とは、互いに角度を成して設けられており、その結果、第1の平面5にあるバー要素は、第2の平面6のバー要素と交差し、かつ、交線7を形成する。
【0025】
空洞体の直径に関する相対的な、バー要素の幅(H)の総和zには、図2に従えば、次の数式が適用される。
【0026】
【数1】

【0027】
バー要素の幅がすべて等しければ、zには次の数式が適用される。
【0028】
【数2】

【0029】
このときNは、第1の構造体21のバー要素と、第2の構造体31のバー要素との総和である。好適には構造体の最も外側のバー要素は空洞体の内壁に接するか、あるいは内壁に対して場合によっては、ほんの僅かな距離を有する。
【0030】
空洞体の直径は、ここでは特に、円形の断面をもつ空洞体として記載されている。空洞体は、楕円形、多角形、特に長方形、あるいは正方形の断面を有していてもよい。直径の代わりに、zに幅寸法Dbが用いられ、幅寸法Dbには次の関係が適用される。
【0031】
【数3】

【0032】
あるいは、バー要素の幅と間隔がそれぞれ等しければ、次の関係が適用される。
【0033】
【数4】

【0034】
上記と同じ意味で、zには次の数式が適用される。
【0035】
【数5】

【0036】
空洞体の幅寸法Dbは、製造公差と取り付け公差を無視して、ほぼ混合要素の幅寸法Dbに相当する。本発明に従えば、いずれの場合にも、z<95%、好適にはz<85%、特にz<75%、特に好ましくはz<65%である。本発明に従えば同時に、主流方向に対して垂直に平面に投射される、交差する2つの構造体のバー要素の面積の総和は、いずれの場合にも平面の全断面の95%より小さく、好適には全平面の85%より小さく、特に全平面の75%より小さく、特に好ましくは全平面の65%よりも小さくなっている。好適には、バー要素の数Nは、最小で4、最大で10となっている。当該公式においては通例の製造公差あるいは取り付け公差は考慮されていない。バー要素が空洞体の内壁に接しないならば、あらかじめ完成された多数の混合要素を簡単に取り付け、取り外しすることができる。場合によっては、混合要素が熱で伸長するが、これは稼動中はほとんど回避できない。バー要素が空洞体の内壁に直接接合されている場合、流動する溶媒や、混合要素の構造上の形態によっては、周辺領域でデッドゾーンが形成されかねない。この理由からも、既に特許文献3で説明されているように、空洞体の内壁とバー要素の少なくとも一部との間に僅かな間隔を備えておくことが好ましいかもしれない。
【0037】
さらなる実施例は、図4で示されている。図3とは異なり、第1の構造体21の全てのバー要素(3,13,23)が1つの平面5に存在するわけではなく、バー要素の一部は、ほぼ平行で長手軸方向に少なくとも少しずらされている平面5’に存在する。
【0038】
コストのかかった研究において、静的混合要素を説明する幾何学パラメータが体系的に変化させられ、結果として生じた、圧力損失と混合効率に関するミキサの特性が、評価された。
【0039】
様々な長さの静的ミキサが、圧力損失に関して互いに比較され得るように、最適化された場合にミキサの長さ毎の圧力損失が計算された。
【0040】
平面Aでの混合の質は、変動係数CoVによって説明される。当該変動係数CoVは、Aにおける濃度の平均値cバーによって規定された、Aにおける濃度分布の標準偏差として定義される(次式参照)。
【0041】
【数6】

【0042】
混合の質がよりよい場合、CoVはより小さくなる。様々なミキサを比較すると、ミキサに対する分布が同じ場合、すなわちCoVが同じ場合の所与のミキサの長さに関して変動係数CoVの減少が決定付けられた。所与の長さに応じて、より小さなCoVを有するミキサが、よりしっかりとあるいはよりよく混合する。
【0043】
当該研究の結果は、交差するバー要素の間に間隔(a)を有する混合要素が、非常に有利な特性を持つことを示している。間隔(a)は好ましくは、バー要素の幅(H)とおよそ同じ大きさである。それによって、所与の長さに応じて、混合の質が同様および/あるいはよりよい場合に、装入量と流入断面が同じであれば、圧力損失は従来技術に対して、はるかに減少され得る。混合の質が同じ場合、圧力損失は2分の3あるいはそれ以上の減少が可能である。
【0044】
図5は、様々な実施ヴァリエーションにおける、ミキサの長さ毎の圧力損失、および本発明に係る混合要素の所与のミキサの長さに応じた混合の質に関して、特許文献1に記載の従来技術と比較した当該研究の結果を表している。この図において、横座標では相対的に従来技術の圧力損失に対する圧力損失が記され、縦座標では相対的に所与のミキサの長さに応じた従来技術の混合の質に対する、同じミキサの長さに応じた混合の質が記されている。単独の点19は、従来技術の相対的圧力損失と混合の質の変数ペアに相当する。図ではその変数ペアが座標(1,1)に規定され、これに従えば、本発明に係る相対的圧力損失は、従来技術の圧力損失の20%から80%の間になっている。所与のミキサの長さに応じたCoVは、従来技術の値の75%から125%の間となっている。グラフ20の線は、圧力損失がはるかに減少し、しかも混合の質の著しい改善が達成可能、特にCoVが75%から100%の間で到達可能であることを明確に示している。これに関して、上記の定義に従えば、CoVがより小さければ混合の質がよりよいものとなることを、再度記しておく。適した設計によって、相対的圧力損失は、従来技術の圧力損失の2/3以上減少可能である。別のヴァリエーションでは、所与のミキサの長さに応じた混合の質は、特許文献1に記載の従来技術に対して20%まで改善可能であり、同時に圧力損失の削減は、特許文献1に記載のミキサによる削減に対して50%以上にまで達成可能である。図3に記載された混合要素は、グラフにおいては、従来技術より圧力損失がおよそ60%少ない点に相当し、同時に、同じミキサの長さでは混合の質が20%改善された点に相当する。
【0045】
図3と図4の実施例に従えば、少なくとも部分的な間隔要素(15,16)が、隣接するバー要素の間に設けられている。間隔要素によって、バー要素の取り付けが可能となり、あるいは容易となり得る。さらに間隔要素は、静的混合要素の安定性を高めるのにも役立っている。このとき間隔要素は、バー要素とたとえば溶接によって接合され得る、あるいは局部的に厚くなったあるいは幅が広くなった形状で実施され得る、分離した部材であってよい。バー要素の壁近傍の領域でそのように幅が広くなっている例は、図6で表されている。
【0046】
図6は、局部的に厚くなり幅が広くなった形状の間隔要素15,16と、2つのバー要素3,4との交差領域の詳細図を示している。当該厚み部は、2つのバー要素を互いに接合するのに役立っている。厚み部は、実質的に、交差領域に限定されている。厚み16は単にバー要素との局部的な接合を表しているため、場合によっては流れに対してあまり影響がない。
【符号の説明】
【0047】
1 静的混合装置
2 混合要素
3 バー要素
4 バー要素
5 第1の平面
6 第2の平面
7 交線
8 空洞体軸
10 空洞体
13 バー要素
14 バー要素
15 間隔要素
16 間隔要素
21 第1の構造体
23 バー要素
24 バー要素
31 第2の構造体
D 空洞体の直径
H バー要素の幅
a 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅寸法Dbを有し、ほぼ等しい幅寸法Dbを有する空洞体(10)に組み込むのに適しており、かつ、多数のバー要素を含む静的混合要素であって、
少なくとも1つの第1のバー要素(3)を有する第1の構造体(21)が備えられているが、該第1の構造体(21)は、少なくとも1つの第2のバー要素(4)を含む第2の構造体(31)に対して交差して設けられており、
前記第1の構造体(21)と前記第2の構造体(31)は、主流方向に対して0度ではない角度を結び、前記第1の構造体は前記第2の構造体と、0度より大きな角度を結んでおり、かつ、主流方向に対して直交する投射平面に、前記第1の構造体(21)と前記第2の構造体(31)とを投射する際、互いに隣接するバー要素の間に、少なくとも部分的な中間室がある静的混合要素において、
バー要素のそれぞれが幅Hを有し、前記バー要素の幅Hの相対的な総和zは、前記混合要素の幅寸法Dbの方向で計測して、前記混合要素の幅寸法Dbの95%よりも小さいことを特徴とする静的混合要素。
【請求項2】
主流方向は、前記混合要素が受容されている空洞体の長手軸方向にあることを特徴とする請求項1に記載の静的混合要素。
【請求項3】
前記第1の構造体(21)と前記第2の構造体(31)とによって交線(7)が形成され、該交線(7)の近傍に間隔要素(15,16)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の静的混合要素。
【請求項4】
前記間隔要素(15,16)は、少なくとも1つのバー要素を局部的に厚くしあるいは幅を広くするものとして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の静的混合要素。
【請求項5】
投射平面における前記バー要素の数が、4から10となることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静的混合要素。
【請求項6】
構造体1つにつき、少なくとも2つのバー要素が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の静的混合要素。
【請求項7】
前記第1および第3のバー要素(3,13)は、第1の平面(5)にある、バー要素の前記第1の構造体(21)の部分であり、前記第2および第4のバー要素(4,14)は、第2の平面(6)にある、バー要素(4,14,24)の前記第2の構造体(31)の部分であることを特徴とする請求項6に記載の静的混合要素。
【請求項8】
前記第1の構造体(21)のバー要素の少なくとも一部は、前記第1の平面(5)に対してずらされて設けられている第3の平面(5’)に設けられており、かつ/または前記第2の構造体(31)のバー要素の少なくとも一部は第4の平面に設けられており、該第4の平面は前記第2の平面(6)に対してずらされて設けられていることを特徴とする請求項6に記載の静的混合要素。
【請求項9】
zは、85%よりも小さく、特に75%よりも小さく、特に好ましくは65%よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の静的混合要素。
【請求項10】
静的混合装置(1)であって、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静的混合要素を備え、かつ、該静的混合要素を受容するために、空洞体(10)あるいはスリーブを備えている静的混合装置。
【請求項11】
前記静的混合要素が、前記空洞体(10)あるいは前記スリーブに固定されていることを特徴とする請求項12に記載の静的混合装置。
【請求項12】
前記静的混合要素と、前記空洞体(10)あるいは前記スリーブが、1つの部材から成っていることを特徴とする請求項13に記載の静的混合装置。
【請求項13】
前記静的混合要素は、前記第1の平面(5)と前記第2の平面(6)との交点の領域および/あるいはバー要素の端の少なくとも一部の領域において、前記空洞体あるいは前記スリーブの内壁に固定されていることを特徴とする請求項13あるいは請求項14に記載の静的混合装置であって、請求項13あるいは請求項14が請求項7あるいは請求項8に従属している場合の静的混合装置。
【請求項14】
溶媒を混合するためのあるいは溶媒を接触させるための、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の静的混合要素の使用法であって、溶媒の少なくとも1つは、層流する溶媒、特にポリマー溶融物あるいはその他の高粘性の流体であることを特徴とする使用法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−530819(P2010−530819A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512638(P2010−512638)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057226
【国際公開番号】WO2009/000642
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509055149)ズルツァー・ケムテック・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】