静脈内流体加温システム
【課題】カバーが洗浄のために簡単に取り外すことができ、流体温度を調整して、流体が患者に到達するときに適切な温度とできる静脈内流体加温装置を提供する。
【解決手段】流体加温装置10は、取り外し可能な熱交換体18を、当該熱交換体18を通じて流れる流体を観察できるようにしつつ、ヒータアセンブリとの熱交換伝達状態でハウジング12内に保持する軸方向または長手方向にスライドできるカバー16を含んでいる。他の態様において、流体加温システム10は、ヒータアセンブリへの電力を増大させ或いは減少させて、流体温度を調整し、流体が患者に到達するときに適切な温度となるようにする。
【解決手段】流体加温装置10は、取り外し可能な熱交換体18を、当該熱交換体18を通じて流れる流体を観察できるようにしつつ、ヒータアセンブリとの熱交換伝達状態でハウジング12内に保持する軸方向または長手方向にスライドできるカバー16を含んでいる。他の態様において、流体加温システム10は、ヒータアセンブリへの電力を増大させ或いは減少させて、流体温度を調整し、流体が患者に到達するときに適切な温度となるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その開示内容が参照により本願に組み込まれる2005年3月21日に出願された米国仮出願第60/663,857号の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張している。(連邦政府委託研究または開発に関する記述)
【背景技術】
【0002】
静脈内(IV)流体加温装置は、IV流体を患者の中へ導入する前にIV流体を加熱することで公知である。非常に低い流量で投与される加温されたIV流体は、それらが患者へと向かうIVチューブを下降して流れるにつれて冷える可能性がある。多くの場合、この熱損失は無視される。1つの従来の手法は、流体を41℃まで単に加熱して、全ての流量にわたる損失を克服しようとしてきた。
【0003】
流体加温の他の態様において、殆どのIV流体加温器は、柔軟なプラスチック壁を通じて流体を加熱する。これらの壁は熱を伝えるのにあまり役立たないため、ヒータが使い捨てセットの両側に露出されている。これにより、使い捨てセットをスロットまたはヒンジ付きの貝殻構造中へ挿入する必要がある。これらの構造の両方により、ユーザは、熱交換器を通過する流体を見ることができない。これらのプラスチック壁は柔軟であるため、良好な熱伝達に必要な圧力は、それがIV流体バッグ高さの重力のみによって与えられると保証され得ない。血液流出の場合など、スロットを有する構造の洗浄は、困難であり、一般に特別な器具を必要とし或いは分解を要することさえある。
【0004】
1つのタイプの典型的な医療用流体加温システムがUS2005−0008354に記載されている。この装置において、流体は、取り外し可能/使い捨て可能な熱交換体を通じて、ほぼ曲がりくねった流体流路に沿って流れる。熱交換体は、熱交換体と抵抗膜ヒータとの間に介挿された伝熱層を介して抵抗膜ヒータと熱的に接触する。熱交換体およびヒータの温度を感知する温度センサが設けられている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様において、流体加温システムは、流体加温装置は、取り外し可能な熱交換体をヒータアセンブリとの熱交換伝達状態で所定位置に維持する一対のスライドカバーを含んでいる。熱交換体は、閉位置にあるカバーによって所定位置に押圧され、それにより、良好な熱伝導性が保証される。熱交換体を通過する流体は、ユーザに見えたままである。熱交換体は、カバーを開位置へスライドさせることにより容易に挿入されて取り外される。移動カバーは、電源をON・OFFしてアラームを止めることによりユーザ入力機構を兼ねることができる。カバーは、熱交換体上に存在する任意のインジケータを覆わない。カバーは洗浄のために簡単に取り外すことができ、また、カバーは装着機構として使用できる。
【0006】
本発明の他の態様では、流体温度を調整して、流体が患者に到達するときに適切な温度となるようにするため、ヒータへの電力を増大させ或いは減少させることができる。
【0007】
本発明は、添付図面と併せて解釈される以下の詳細な説明から十分に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】閉位置にあるスライド可能なカバーを示す本発明に係る流体加温装置の斜視図である。
【図2】半閉位置にあるスライド可能なカバーを示す図1の流体加温装置の斜視図である。
【図3】スライド可能なカバーが開位置にあり且つ使い捨てセットが取り外された状態の図1の流体加温装置の分解斜視図である。
【図4】スライド可能なカバーが完全に取り外された状態の図1の装置のハウジングの本体の斜視図である。
【図5】図2の装置の平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図1の流体加温装置の使い捨てセットおよびヒータアセンブリの斜視図である。
【図8】スライド可能なカバーの把持面を示す流体加温装置の更なる実施形態の側面図である。
【図9】流体加温装置のヒータへの電力を調整して、低流量でのIVチューブの熱損失に対応するためのシステムを示すフローチャートである。
【図10】使い捨てセット熱交換体にわたるIVチューブの長さに沿う熱損失およびそれらの複合熱損失を示すグラフである。
【図11】様々な長さのIVチューブおよび様々な流量における温度損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る流体加温装置10が図1〜7に示されている。流体加温装置は、本体14と2つのスライドカバー16とを有するハウジング12を含んでいる。ハウジング内では、取り外し可能な熱交換体18とヒータアセンブリ20とが本体によって支持されている。以下で十分に説明するように、スライドカバーは、それらが取り外し可能な熱交換体を所定位置に保持する閉位置へと独立にスライドできる。スライドカバーは同一であることが好ましい。
【0010】
取り外し可能な熱交換体18およびヒータアセンブリ20が図7に概略的に示されている。使い捨てセットまたは着脱セットとも呼ばれる熱交換体は、注入ポンプを有していてもよいIV流体源からのIVチューブラインに接続可能な入力ポート22を含んでいる。また、使い捨てセットは、患者へIV流体を供給するために更なるIVチューブラインに接続可能な出力ポート24も含んでいる。使い捨てセット内では、流体への熱伝達を最適化するために入力ポートと出力ポートとの間にある曲がりくねった或いは他の適切な形態を有する流路(図示せず)に沿ってIV流体が流れる。これについては、例えば、参照によりその開示内容が本願に組み込まれる米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。使い捨てセットは、これを流れる流体への熱伝達を容易にするため、任意の適切な材料、例えばアルミニウムから形成されている。使い捨てセットは、スライドカバーが閉位置にある状態でハウジング内に挿入されていると、ヒータアセンブリと熱接触した状態で保持され、それにより、ヒータアセンブリから使い捨てセットへの熱伝達が、そこを通じて流れるIV流体の加熱をもたらす。
【0011】
ヒータアセンブリ20は、ハウジング12の本体14内に取り付けられている。ヒータアセンブリは、ヒータ26と、使い捨てセットとヒータとの間に介挿された1つ以上の伝熱層28,30とを含んでいる。ヒータは、給電式の抵抗薄膜ヒータであることが好ましい。適当な電源からヒータへの給電ライン32が設けられている。あるいは、装置は、バッテリ区画室または例えばポータブル動作のためのバッテリパックへの接続部を含んでいてもよい。使い捨てセットおよびヒータの温度を検出する温度センサ34,36が設けられている。これについては、例えば米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。また、伝熱層は、使い捨てセットを抵抗ヒータから電気的に絶縁する。一方の伝熱層28は相転移材料を適切に備えていてもよく、また、他方の伝熱層30は、ヒータと使い捨てセットとの間での熱伝達を最適化するためにグラファイトなどの材料を適切に備えていてもよい。これについては、例えば米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。他の或いは更なる伝熱層が設けられてもよいことは言うまでもない。本体14は、最も上側の伝熱層30の露出面40と接触した状態で使い捨てセット18を受けるための区画室38を一方側に含んでいる。
【0012】
前述したように、熱交換体またはディスポまたは使い捨てセット18はハウジングから取り外すことができる。使い捨てセットは、2つの対向するスライドカバーを外側に反対方向でスライドさせることにより、ハウジングの本体から取り外すことができる。このようにすれば、着脱セットを、IVチューブが入力コネクタおよび出力コネクタに依然として取り付けられた状態で流体経路を遮断することなくハウジングから持ち上げることができる。本体内の使い捨てセットの把持を容易にするために、指掛け用の切り欠き42が設けられていてもよい。
【0013】
カバーを閉位置へと軸方向に移動させることができる任意の適したスライド機構を設けることができる。図示の実施形態において、ハウジングの本体14は、本体の2つの対向する長手方向外壁面に沿って突出する長手方向トラック46を含んでいる(図5参照)。スライドカバーは、トラックと係合してカバーを本体に沿って軸方向にスライドさせることができる相補的な長手方向凹部48を内壁面に沿って含んでいる。スライドカバーは、閉位置にあるときに、本体の凹部内の使い捨てセットの縁部を越えて延在し、それにより、使い捨てセットをその内側に保持する(図1参照)。また、カバーは、ヒータアセンブリの最も外側の伝熱表面40に対して使い捨てセットを押し付ける。この押し付けは、ヒータアセンブリと使い捨てセットとの間の適切な熱伝達のために必要な圧力を与える。カバーは、使い捨てセットとの摩擦係合によって閉位置に保持されることが好ましい。あるいは、任意の適当なラッチ機構または保持機構が設けられてもよい。
【0014】
また、カバー16は、使い捨てセット18の中央の大部分の視界を遮らず、そのため、オペレータは使い捨てセットを通過する流体を見ることができる。また、使い捨てセットは、適当な方法で本体14に対してキー止めされており、それにより、区画室内に正しい方向で嵌合する。例えば、使い捨てセットの一端47が丸み付けられ、それにより、対応して丸み付けられた区画室38の部分49内に嵌合してもよい。使い捨てセットは、使い捨てセットが正しい方向でハウジング内に挿入されるように、流れ方向の表示を与えるための矢印50をその上に含んでいてもよい。カバーはこの矢印を遮らない。また、本体は、LEDなどの表示灯をその上に含んでいることが好ましい。例えば、一方のLED52が出力ポートにおける温度の表示を与えてもよく、また、他方のLED54は、ヒータが電源に接続されているという表示を与えてもよい。カバーは、これらの表示灯のいずれも遮らない。
【0015】
1つの実施形態において、カバー16は、本体上の2つの位置に維持させることができ、あるいは、本体から完全に取り外すことができる。カバーは、本体上にある間、完全閉位置または開位置をとることができる。カバーは、カバーの位置を決定して任意の適切なスイッチの動作を引き起こすために本体内の対応する構成要素とインタフェースをとるマグネットまたはホール効果装置或いは他の近接センサを含むことができる。更なる実施形態において、カバーは、後述するように、本体上で1/3の或いは中間の半閉位置を維持することができる。
【0016】
より具体的には、完全閉位置において(図1参照)、カバー16は、ヒータアセンブリとの良好な熱接触を確保するために使い捨てセット18に対して十分な圧力を加える。この位置において、スライドカバーは、電源をONして加温を開始させ及び/又は任意の可聴アラームまたは可視アラームを作動させるために使用することもできる。半閉位置(図2参照)では、使い捨てセットがカバーによって依然として所定位置に保持されるが、加温が停止されて、可聴アラームが止まり、視覚インジケータがOFFされる。状態LEDは、バッテリ動作時に発光し、加温器がバッテリに接続されて使い果たしていることをユーザに知らせることができる。カバーが開位置にある場合(図3参照)には、使い捨てセット18の挿入および取り外しを行なうことができる。加熱は行なわれず、可聴アラームが止まり、視覚インジケータがOFFされる。状態LEDは、バッテリ動作時に発光して、ヒータがバッテリに接続されて使い果たしていることをユーザに知らせることができる。
【0017】
カバーを本体に対して所望位置に保持するために任意の適したラッチ機構または保持機構を設けることができる。例えば、図5および図6に示されるように、開位置でカバー上の対応するタブ64が引っ掛かる陥凹面62が本体14上に設けられ、それにより、カバーが本体から容易に外れることが防止される。また、タブ64は、表面63と当接して、カバーを閉位置に保持する。カバーを把持してカバーを所望位置へと押す或いは引く際に役立つようにフィンガグリップ68が設けられている。閉(電源ON)位置は、カバー上に印された矢印70および隣接する“ON”によって示すことができる。同様に、開(電源OFF)位置は、カバー上に印された矢印72および隣接する“OFF”によって示すことができる。カバーは、任意の適当な方法で、例えばスクリュードライバや10セント銀貨などの適当な器具を挿入して表面62を乗り越えるようにタブ64を持ち上げることによって、本体から完全に取り外すことができる。あるいは、ラッチ機構または保持機構は、十分な力の使用により簡単に解放するように構成することができる。カバーの取り外しにより、装置を簡単に洗浄することができる。あるいは、カバーおよび水密本体ハウジングの内面の通路は、カバーを完全に除去することなく滅菌流体中に浸すことにより冷滅菌できる。
【0018】
図8を参照すると、スライドカバー14は、把持面を形成するためにその上に把持歯を有する対向面74を含んでいてもよい。把持面は、病院衣服または寝具を把持して加温器を所定位置に保持することによりカバーの閉位置でIVラインの応力を減らすために使用することができる。
【0019】
本発明の他の態様では、流体温度を調整して、流体が患者に到達する際に適した温度となるように、ヒータへの電力を増大または減少させることができる。特に、加温された一部のIV流体は非常に低い流量で投与される。これらの流体は、それらが患者に向かってIVチューブを下降する際に冷える。大気温度と流体温度との間の差が大きければ大きいほど、IVチューブからの放射熱損失も大きくなる。
【0020】
計算を行ない且つヒータと通信して所望の調整を行なうために、適切なコントローラが設けられる。ヒータ電力は、目標温度(一般に、39〜41℃の範囲)と実際の流体温度との間の差によって決定される。
【0021】
図9を参照すると、熱交換器にわたる温度降下が計算される(ステップ102)。この温度降下は、ヒータ電力をヒータアセンブリの熱抵抗で割ったものに等しい。熱抵抗は、ヒータと流体との間の材料の厚さ、熱伝導率、面積から当業者により容易に決定することができ、定数として記憶させることができる。
【0022】
その後、コントローラは、IVチューブの環境への温度損失を計算する(ステップ104)。最初に、流体目標温度と大気温度との間の差が決定される。温度損失は、この温度差に放射損失を掛け合わせてヒータ電力で割ったものに等しい。大気温度は、大気温度に非常に近いハウジングと密に接触する加温装置内に配置された適当なセンサによって測定される。放射損失は、様々な長さのIVチューブおよび様々な流量を用いた実験から得られる定数である(図11参照)。
【0023】
次に、ステップ106において、コントローラは、IVチューブ損失が1℃よりも大きいかどうかを決定する。また、ステップ106では、コントローラは、IVチューブに沿う熱交換器にわたる全体の降下が降下限度よりも大きいかどうかも決定する。降下限度は、熱交換器の許容表面温度を越えないように流体が人為的に上昇され得る最大温度であり、例えば所望の目標温度から3℃を超えない。ステップ106での答がYESの場合には、ステップ108において、測定された流体出力温度−降下限度として、実際の流体温度が計算される。ステップ106での答がNOの場合には、ステップ110において、IVチューブ内の流体出力温度降下−IVチューブ降下(ステップ102からのもの)−熱交換器降下(ステップ104からの)として、実際の流体温度が計算される。実際の温度の計算値を使用して、ヒータ電力が適切に調整される。
【0024】
このようすると、IVチューブに沿う熱損失をより効率的に制御することができる。このシステムによれば、流体加温装置を注入場所からやや遠くに配置することができるとともに、正常温度の流体を依然として供給することができる。
【0025】
本発明は、添付の請求項によって示される以外、特に図示して説明したものによって限定されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
本願は、その開示内容が参照により本願に組み込まれる2005年3月21日に出願された米国仮出願第60/663,857号の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張している。(連邦政府委託研究または開発に関する記述)
【背景技術】
【0002】
静脈内(IV)流体加温装置は、IV流体を患者の中へ導入する前にIV流体を加熱することで公知である。非常に低い流量で投与される加温されたIV流体は、それらが患者へと向かうIVチューブを下降して流れるにつれて冷える可能性がある。多くの場合、この熱損失は無視される。1つの従来の手法は、流体を41℃まで単に加熱して、全ての流量にわたる損失を克服しようとしてきた。
【0003】
流体加温の他の態様において、殆どのIV流体加温器は、柔軟なプラスチック壁を通じて流体を加熱する。これらの壁は熱を伝えるのにあまり役立たないため、ヒータが使い捨てセットの両側に露出されている。これにより、使い捨てセットをスロットまたはヒンジ付きの貝殻構造中へ挿入する必要がある。これらの構造の両方により、ユーザは、熱交換器を通過する流体を見ることができない。これらのプラスチック壁は柔軟であるため、良好な熱伝達に必要な圧力は、それがIV流体バッグ高さの重力のみによって与えられると保証され得ない。血液流出の場合など、スロットを有する構造の洗浄は、困難であり、一般に特別な器具を必要とし或いは分解を要することさえある。
【0004】
1つのタイプの典型的な医療用流体加温システムがUS2005−0008354に記載されている。この装置において、流体は、取り外し可能/使い捨て可能な熱交換体を通じて、ほぼ曲がりくねった流体流路に沿って流れる。熱交換体は、熱交換体と抵抗膜ヒータとの間に介挿された伝熱層を介して抵抗膜ヒータと熱的に接触する。熱交換体およびヒータの温度を感知する温度センサが設けられている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様において、流体加温システムは、流体加温装置は、取り外し可能な熱交換体をヒータアセンブリとの熱交換伝達状態で所定位置に維持する一対のスライドカバーを含んでいる。熱交換体は、閉位置にあるカバーによって所定位置に押圧され、それにより、良好な熱伝導性が保証される。熱交換体を通過する流体は、ユーザに見えたままである。熱交換体は、カバーを開位置へスライドさせることにより容易に挿入されて取り外される。移動カバーは、電源をON・OFFしてアラームを止めることによりユーザ入力機構を兼ねることができる。カバーは、熱交換体上に存在する任意のインジケータを覆わない。カバーは洗浄のために簡単に取り外すことができ、また、カバーは装着機構として使用できる。
【0006】
本発明の他の態様では、流体温度を調整して、流体が患者に到達するときに適切な温度となるようにするため、ヒータへの電力を増大させ或いは減少させることができる。
【0007】
本発明は、添付図面と併せて解釈される以下の詳細な説明から十分に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】閉位置にあるスライド可能なカバーを示す本発明に係る流体加温装置の斜視図である。
【図2】半閉位置にあるスライド可能なカバーを示す図1の流体加温装置の斜視図である。
【図3】スライド可能なカバーが開位置にあり且つ使い捨てセットが取り外された状態の図1の流体加温装置の分解斜視図である。
【図4】スライド可能なカバーが完全に取り外された状態の図1の装置のハウジングの本体の斜視図である。
【図5】図2の装置の平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図1の流体加温装置の使い捨てセットおよびヒータアセンブリの斜視図である。
【図8】スライド可能なカバーの把持面を示す流体加温装置の更なる実施形態の側面図である。
【図9】流体加温装置のヒータへの電力を調整して、低流量でのIVチューブの熱損失に対応するためのシステムを示すフローチャートである。
【図10】使い捨てセット熱交換体にわたるIVチューブの長さに沿う熱損失およびそれらの複合熱損失を示すグラフである。
【図11】様々な長さのIVチューブおよび様々な流量における温度損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る流体加温装置10が図1〜7に示されている。流体加温装置は、本体14と2つのスライドカバー16とを有するハウジング12を含んでいる。ハウジング内では、取り外し可能な熱交換体18とヒータアセンブリ20とが本体によって支持されている。以下で十分に説明するように、スライドカバーは、それらが取り外し可能な熱交換体を所定位置に保持する閉位置へと独立にスライドできる。スライドカバーは同一であることが好ましい。
【0010】
取り外し可能な熱交換体18およびヒータアセンブリ20が図7に概略的に示されている。使い捨てセットまたは着脱セットとも呼ばれる熱交換体は、注入ポンプを有していてもよいIV流体源からのIVチューブラインに接続可能な入力ポート22を含んでいる。また、使い捨てセットは、患者へIV流体を供給するために更なるIVチューブラインに接続可能な出力ポート24も含んでいる。使い捨てセット内では、流体への熱伝達を最適化するために入力ポートと出力ポートとの間にある曲がりくねった或いは他の適切な形態を有する流路(図示せず)に沿ってIV流体が流れる。これについては、例えば、参照によりその開示内容が本願に組み込まれる米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。使い捨てセットは、これを流れる流体への熱伝達を容易にするため、任意の適切な材料、例えばアルミニウムから形成されている。使い捨てセットは、スライドカバーが閉位置にある状態でハウジング内に挿入されていると、ヒータアセンブリと熱接触した状態で保持され、それにより、ヒータアセンブリから使い捨てセットへの熱伝達が、そこを通じて流れるIV流体の加熱をもたらす。
【0011】
ヒータアセンブリ20は、ハウジング12の本体14内に取り付けられている。ヒータアセンブリは、ヒータ26と、使い捨てセットとヒータとの間に介挿された1つ以上の伝熱層28,30とを含んでいる。ヒータは、給電式の抵抗薄膜ヒータであることが好ましい。適当な電源からヒータへの給電ライン32が設けられている。あるいは、装置は、バッテリ区画室または例えばポータブル動作のためのバッテリパックへの接続部を含んでいてもよい。使い捨てセットおよびヒータの温度を検出する温度センサ34,36が設けられている。これについては、例えば米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。また、伝熱層は、使い捨てセットを抵抗ヒータから電気的に絶縁する。一方の伝熱層28は相転移材料を適切に備えていてもよく、また、他方の伝熱層30は、ヒータと使い捨てセットとの間での熱伝達を最適化するためにグラファイトなどの材料を適切に備えていてもよい。これについては、例えば米国特許公開公報第2005−0008354号を参照されたい。他の或いは更なる伝熱層が設けられてもよいことは言うまでもない。本体14は、最も上側の伝熱層30の露出面40と接触した状態で使い捨てセット18を受けるための区画室38を一方側に含んでいる。
【0012】
前述したように、熱交換体またはディスポまたは使い捨てセット18はハウジングから取り外すことができる。使い捨てセットは、2つの対向するスライドカバーを外側に反対方向でスライドさせることにより、ハウジングの本体から取り外すことができる。このようにすれば、着脱セットを、IVチューブが入力コネクタおよび出力コネクタに依然として取り付けられた状態で流体経路を遮断することなくハウジングから持ち上げることができる。本体内の使い捨てセットの把持を容易にするために、指掛け用の切り欠き42が設けられていてもよい。
【0013】
カバーを閉位置へと軸方向に移動させることができる任意の適したスライド機構を設けることができる。図示の実施形態において、ハウジングの本体14は、本体の2つの対向する長手方向外壁面に沿って突出する長手方向トラック46を含んでいる(図5参照)。スライドカバーは、トラックと係合してカバーを本体に沿って軸方向にスライドさせることができる相補的な長手方向凹部48を内壁面に沿って含んでいる。スライドカバーは、閉位置にあるときに、本体の凹部内の使い捨てセットの縁部を越えて延在し、それにより、使い捨てセットをその内側に保持する(図1参照)。また、カバーは、ヒータアセンブリの最も外側の伝熱表面40に対して使い捨てセットを押し付ける。この押し付けは、ヒータアセンブリと使い捨てセットとの間の適切な熱伝達のために必要な圧力を与える。カバーは、使い捨てセットとの摩擦係合によって閉位置に保持されることが好ましい。あるいは、任意の適当なラッチ機構または保持機構が設けられてもよい。
【0014】
また、カバー16は、使い捨てセット18の中央の大部分の視界を遮らず、そのため、オペレータは使い捨てセットを通過する流体を見ることができる。また、使い捨てセットは、適当な方法で本体14に対してキー止めされており、それにより、区画室内に正しい方向で嵌合する。例えば、使い捨てセットの一端47が丸み付けられ、それにより、対応して丸み付けられた区画室38の部分49内に嵌合してもよい。使い捨てセットは、使い捨てセットが正しい方向でハウジング内に挿入されるように、流れ方向の表示を与えるための矢印50をその上に含んでいてもよい。カバーはこの矢印を遮らない。また、本体は、LEDなどの表示灯をその上に含んでいることが好ましい。例えば、一方のLED52が出力ポートにおける温度の表示を与えてもよく、また、他方のLED54は、ヒータが電源に接続されているという表示を与えてもよい。カバーは、これらの表示灯のいずれも遮らない。
【0015】
1つの実施形態において、カバー16は、本体上の2つの位置に維持させることができ、あるいは、本体から完全に取り外すことができる。カバーは、本体上にある間、完全閉位置または開位置をとることができる。カバーは、カバーの位置を決定して任意の適切なスイッチの動作を引き起こすために本体内の対応する構成要素とインタフェースをとるマグネットまたはホール効果装置或いは他の近接センサを含むことができる。更なる実施形態において、カバーは、後述するように、本体上で1/3の或いは中間の半閉位置を維持することができる。
【0016】
より具体的には、完全閉位置において(図1参照)、カバー16は、ヒータアセンブリとの良好な熱接触を確保するために使い捨てセット18に対して十分な圧力を加える。この位置において、スライドカバーは、電源をONして加温を開始させ及び/又は任意の可聴アラームまたは可視アラームを作動させるために使用することもできる。半閉位置(図2参照)では、使い捨てセットがカバーによって依然として所定位置に保持されるが、加温が停止されて、可聴アラームが止まり、視覚インジケータがOFFされる。状態LEDは、バッテリ動作時に発光し、加温器がバッテリに接続されて使い果たしていることをユーザに知らせることができる。カバーが開位置にある場合(図3参照)には、使い捨てセット18の挿入および取り外しを行なうことができる。加熱は行なわれず、可聴アラームが止まり、視覚インジケータがOFFされる。状態LEDは、バッテリ動作時に発光して、ヒータがバッテリに接続されて使い果たしていることをユーザに知らせることができる。
【0017】
カバーを本体に対して所望位置に保持するために任意の適したラッチ機構または保持機構を設けることができる。例えば、図5および図6に示されるように、開位置でカバー上の対応するタブ64が引っ掛かる陥凹面62が本体14上に設けられ、それにより、カバーが本体から容易に外れることが防止される。また、タブ64は、表面63と当接して、カバーを閉位置に保持する。カバーを把持してカバーを所望位置へと押す或いは引く際に役立つようにフィンガグリップ68が設けられている。閉(電源ON)位置は、カバー上に印された矢印70および隣接する“ON”によって示すことができる。同様に、開(電源OFF)位置は、カバー上に印された矢印72および隣接する“OFF”によって示すことができる。カバーは、任意の適当な方法で、例えばスクリュードライバや10セント銀貨などの適当な器具を挿入して表面62を乗り越えるようにタブ64を持ち上げることによって、本体から完全に取り外すことができる。あるいは、ラッチ機構または保持機構は、十分な力の使用により簡単に解放するように構成することができる。カバーの取り外しにより、装置を簡単に洗浄することができる。あるいは、カバーおよび水密本体ハウジングの内面の通路は、カバーを完全に除去することなく滅菌流体中に浸すことにより冷滅菌できる。
【0018】
図8を参照すると、スライドカバー14は、把持面を形成するためにその上に把持歯を有する対向面74を含んでいてもよい。把持面は、病院衣服または寝具を把持して加温器を所定位置に保持することによりカバーの閉位置でIVラインの応力を減らすために使用することができる。
【0019】
本発明の他の態様では、流体温度を調整して、流体が患者に到達する際に適した温度となるように、ヒータへの電力を増大または減少させることができる。特に、加温された一部のIV流体は非常に低い流量で投与される。これらの流体は、それらが患者に向かってIVチューブを下降する際に冷える。大気温度と流体温度との間の差が大きければ大きいほど、IVチューブからの放射熱損失も大きくなる。
【0020】
計算を行ない且つヒータと通信して所望の調整を行なうために、適切なコントローラが設けられる。ヒータ電力は、目標温度(一般に、39〜41℃の範囲)と実際の流体温度との間の差によって決定される。
【0021】
図9を参照すると、熱交換器にわたる温度降下が計算される(ステップ102)。この温度降下は、ヒータ電力をヒータアセンブリの熱抵抗で割ったものに等しい。熱抵抗は、ヒータと流体との間の材料の厚さ、熱伝導率、面積から当業者により容易に決定することができ、定数として記憶させることができる。
【0022】
その後、コントローラは、IVチューブの環境への温度損失を計算する(ステップ104)。最初に、流体目標温度と大気温度との間の差が決定される。温度損失は、この温度差に放射損失を掛け合わせてヒータ電力で割ったものに等しい。大気温度は、大気温度に非常に近いハウジングと密に接触する加温装置内に配置された適当なセンサによって測定される。放射損失は、様々な長さのIVチューブおよび様々な流量を用いた実験から得られる定数である(図11参照)。
【0023】
次に、ステップ106において、コントローラは、IVチューブ損失が1℃よりも大きいかどうかを決定する。また、ステップ106では、コントローラは、IVチューブに沿う熱交換器にわたる全体の降下が降下限度よりも大きいかどうかも決定する。降下限度は、熱交換器の許容表面温度を越えないように流体が人為的に上昇され得る最大温度であり、例えば所望の目標温度から3℃を超えない。ステップ106での答がYESの場合には、ステップ108において、測定された流体出力温度−降下限度として、実際の流体温度が計算される。ステップ106での答がNOの場合には、ステップ110において、IVチューブ内の流体出力温度降下−IVチューブ降下(ステップ102からのもの)−熱交換器降下(ステップ104からの)として、実際の流体温度が計算される。実際の温度の計算値を使用して、ヒータ電力が適切に調整される。
【0024】
このようすると、IVチューブに沿う熱損失をより効率的に制御することができる。このシステムによれば、流体加温装置を注入場所からやや遠くに配置することができるとともに、正常温度の流体を依然として供給することができる。
【0025】
本発明は、添付の請求項によって示される以外、特に図示して説明したものによって限定されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者へと向かうIVチューブを通じた熱損失を最小限に抑えるための流体加温システムであって、
a)IV流体加温装置の熱交換体にわたる温度降下を決定するステップと、
b)前記IV流体加温装置から患者へと延びるIVチューブの環境に対する温度降下を決定するステップと、
c)決定された温度限度よりも前記IVチューブに沿う温度降下が大きいかどうかを決定するステップと、
d)前記IVチューブに沿う前記熱交換体にわたる全体の温度降下が決定された降下限度よりも大きいかどうかを決定するステップと、
e)前記ステップc)および前記ステップd)からの決定値がそれらの対応する限度よりも大きい場合に、実際の流体温度を、前記降下限度を引いた流体出力温度として決定するステップと、
f)前記ステップc)および前記ステップd)からの決定値のいずれかがそれらの対応する限度よりも大きくない場合に、実際の流体温度を、前記熱交換体の温度降下を引いた流体出力温度として決定するステップと、
g)熱交換器への電力を調整して、所望の出力温度を得るステップと、
を備える流体加温システム。
【請求項2】
前記ステップa)での熱交換体にわたる温度降下は、前記熱交換体を加熱するヒータアセンブリのヒータ電力をヒータアセンブリの熱抵抗で割ることにより決定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項3】
前記ステップb)でのIVチューブの温度降下は、流体目標温度と大気温度との間の差を決定し、この差に放射損失定数を掛け合わして結果を得るとともに、その結果を前記熱交換体を加熱するヒータアセンブリのヒータ電力で割ることにより決定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項4】
前記ステップc)の決定された温度限度が1℃である、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項5】
前記ステップd)の決定された降下限度は、IV流体が加熱され得る最大温度である、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項6】
前記最大温度が所望温度よりも3度高い、請求項5に記載の流体加温システム。
【請求項7】
前記流体出力温度が前記IV流体加温装置上の温度センサによって測定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項1】
患者へと向かうIVチューブを通じた熱損失を最小限に抑えるための流体加温システムであって、
a)IV流体加温装置の熱交換体にわたる温度降下を決定するステップと、
b)前記IV流体加温装置から患者へと延びるIVチューブの環境に対する温度降下を決定するステップと、
c)決定された温度限度よりも前記IVチューブに沿う温度降下が大きいかどうかを決定するステップと、
d)前記IVチューブに沿う前記熱交換体にわたる全体の温度降下が決定された降下限度よりも大きいかどうかを決定するステップと、
e)前記ステップc)および前記ステップd)からの決定値がそれらの対応する限度よりも大きい場合に、実際の流体温度を、前記降下限度を引いた流体出力温度として決定するステップと、
f)前記ステップc)および前記ステップd)からの決定値のいずれかがそれらの対応する限度よりも大きくない場合に、実際の流体温度を、前記熱交換体の温度降下を引いた流体出力温度として決定するステップと、
g)熱交換器への電力を調整して、所望の出力温度を得るステップと、
を備える流体加温システム。
【請求項2】
前記ステップa)での熱交換体にわたる温度降下は、前記熱交換体を加熱するヒータアセンブリのヒータ電力をヒータアセンブリの熱抵抗で割ることにより決定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項3】
前記ステップb)でのIVチューブの温度降下は、流体目標温度と大気温度との間の差を決定し、この差に放射損失定数を掛け合わして結果を得るとともに、その結果を前記熱交換体を加熱するヒータアセンブリのヒータ電力で割ることにより決定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項4】
前記ステップc)の決定された温度限度が1℃である、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項5】
前記ステップd)の決定された降下限度は、IV流体が加熱され得る最大温度である、請求項1に記載の流体加温システム。
【請求項6】
前記最大温度が所望温度よりも3度高い、請求項5に記載の流体加温システム。
【請求項7】
前記流体出力温度が前記IV流体加温装置上の温度センサによって測定される、請求項1に記載の流体加温システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−91011(P2012−91011A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288194(P2011−288194)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2008−503073(P2008−503073)の分割
【原出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【出願人】(507317111)エンジニヴィティー, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2008−503073(P2008−503073)の分割
【原出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【出願人】(507317111)エンジニヴィティー, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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