説明

静脈画像取得装置、認証情報蓄積システムおよび個人認証システム

【課題】立体状の指の表面に現れる静脈パターンを、指の撮影方向に影響されることなく、より忠実に再現可能な静脈画像取得装置を提案すること。
【解決手段】静脈画像取得装置3は、指載置面10と指載置面10上の指2に照明光を当てる照明部11と、照明光によって指2の表面2bに投射された静脈13の影13aを撮像して平面投影画像G1を得る撮像部12を有する。また、静脈画像取得装置3は表面形状設定部16と画像処理部17を有する。表面形状設定部16は平面投影画像G1から指2の表面2bを円筒面S1として設定し、画像処理部17は、平面投影画像G1を画像処理して、平面投影画像G1を円筒面S1に投影した立体表面投影画像G2を生成し、さらに、立体表面投影画像G2を画像処理して、平面投影画像G1を投影した円筒面S1を平面に広げた平面展開投影画像G3を得、この平面展開投影画像G3を静脈画像とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証に利用される指の静脈画像を取得する静脈画像取得装置、個人認証を行うために静脈画像を蓄積して記憶保持する認証情報蓄積システム、および、個人認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
指の静脈パターンによって個人認証を行なう個人認証システムでは、認証対象者の指の静脈パターンを撮影して静脈画像を取得し、これを予め記憶保持されている認証用の静脈画像と照合することにより認証を行っている。照合対象の静脈画像は、立体状の指の表面に現れる静脈パターンを平面画像として撮影したものである。従って、撮影方向が異なると平面画像上の静脈パターンが変化してしまい、認証を精度良く行うことができない。
【0003】
そこで、従来においては、特許文献1において提案されているように、2台のカメラを用いて異なる方向から認証対象者の指の腹を撮影し、2枚の撮影画像を繋げたものを認証用の静脈画像とし、認証時には、同様にして2台のカメラで撮影して得られた静脈画像を認証用の静脈画像と照合するようにしている。このようにすれば、認証時における認証対象者の指の撮影方向が変化した場合でも、一方向のみから撮影した1枚の静脈画像を用いて認証を行う場合に比べれば、認証精度を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−97109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、異なる方向から認証対象者の指の腹を撮影するために、複数台のカメラを用いるのでは、装置の製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、従来の認証方法では、立体状の指の表面に現れる静脈パターンを平面上に投影した静脈画像を用いている。このため、複数台のカメラを用いて撮影したとしても、撮影方向が異なると撮影画面上の静脈パターンが変化してしまうことに変わりは無い。よって、認証時における指の撮影方向が、登録されている認証用静脈パターンの撮影時と異なる場合には、認証精度が低下してしまうという問題が依然として残っている。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、立体状の指の表面に現れる静脈パターンを、撮影方向に影響されることなく、より忠実に再現可能な静脈画像取得装置を提案することにある。また、本発明の課題は、かかる新たな静脈画像取得装置を用いた認証情報蓄積システムおよび個人認証システムを提案することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、この点に鑑みて、1台の撮像装置を用いて、異なる方向から認証対象者の指の腹を撮影することができる静脈画像取得装置を提案することにある。また、このような静脈画像取得装置を用いた認証情報蓄積システムおよび個人認証システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の静脈画像取得装置は、
認証対象者の指の腹を載せる指載置面と、
前記指載置面に載った前記指に照明光を当てる照明部と、
前記照明光が前記指内で拡散して生ずる拡散光によって、前記指の内部から当該指の腹の表面に投影される静脈の影を、前記指載置面に対して所定の第1角度をなす第1方向から撮像して、当該第1方向と直交する平坦な撮像面上に前記静脈の影が投影された第1平面投影画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記指の腹側の表面を所定形状の立体表面に設定する表面形状設定部と、
前記第1平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成する第1画像処理部と、
前記立体表面投影画像を画像処理して、前記第1平面投影画像が投射された前記立体表面を平面となるように広げた場合に得られる平面展開投影画像を、認証用の静脈画像として生成する第2画像処理部とを有していることを特徴とする。
【0010】
本発明では、静脈画像として得られる平面展開投影画像は、立体表面である指の表面を撮像して得た第1平面投影画像を、指の表面として設定された立体表面に投影し、この投影により得られた立体表面投影画像を、再び平面となるように広げたものである。この結果、平面展開投影画像は、静脈の影が投影されている指の表面を、指の軸線回りの所定角度範囲で平面となるように広げることにより得られる画像と同様なものとなり、平面展開投影画像上のいずれの画像部分も、撮像部と正対した状態で撮像されることにより得られる画像と同様のものとなる。すなわち、静脈画像は、静脈パターンを従来よりも忠実に再現したものとなる。従って、指の腹の向きが予め設定した撮像方向から軸線回りにずれていた場合でも、静脈画像として取得される平面展開投影画像上において、静脈パターンは変化しない。
【0011】
本発明において、前記表面形状設定部は、前記第1平面投影画像上の指投影画像部分から、前記指の幅寸法および幅方向の中心位置を算出し、前記指の腹側の表面を、前記幅寸法を直径とし、前記中心位置を中心軸とする円筒面に設定することが望ましい。すなわち、指の表面を円筒面と仮定すれば、第1平面投影画像を立体表面に投影して立体表面投影画像を得る画像処理、および、第1平面投影画像が投射された立体表面を広げた平面展開投影画像を生成する画像処理の処理速度を向上させることができる。
【0012】
本発明において、指の表面に対応する正確な立体表面を設定するためには、前記表面形状設定部は、光源とフォトマスクを備え、所定のパターンを前記指に投射するパターン投射部と、前記パターンが投射された前記指を前記撮像部に撮像させてパターン投射画像データを得るパターン投射画像データ取得部と、前記パターン投射画像データに基づいて、前記指の腹側の表面をモアレ法、光切断法、または、空間コード化法によって算出し、算出立体表面として取得する表面形状取得部を備えており、前記指の腹側の表面を、前記算出立体表面に設定することが望ましい。
【0013】
本発明において、第1反射鏡を有し、前記撮像部は、前記第1反射鏡を介して、前記静脈の影を、前記指載置面に載った前記指の軸線回りで前記第1方向とは異なる第2方向から撮像して、前記撮像面上に前記静脈の影が投影された第2平面投影画像を取得し、前記第1画像処理部は、前記第1平面投影画像および前記第2平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記第1平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第2方向から前記第2平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成することが望ましい。このようにすれば、静脈の影を2方向から撮像した第1〜第2平面投影画像に基づいて平面展開投影画像を得ることができるので、平面展開投影画像上に指の軸線回りの180°を超える角度範囲における静脈パターンを取得することが容易となる。また、第1反射鏡を設けることによって静脈の影を異なる2方向から撮像するので、撮像部としてカメラを複数台設けて静脈の影を異なる2方向から撮像する場合と比較して、装置の製造コストの増加を抑制できる。
【0014】
この場合において、第2反射鏡を有し、撮像部は、前記第2反射鏡を介して、前記静脈の影を、前記指載置面に載った前記指の軸線回りで前記第1方向および前記第2方向とは異なる第3方向から撮像して、前記撮像面上に前記静脈の影が投影された第3平面投影画像を取得し、前記第1画像処理部は、前記第1平面投影画像、前記第2平面投影画像および前記第3平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記第1平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第2方向から前記第2平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第3方向から前記第3平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成し、前記第2方向は、前記第1方向を前記指載置面に載せた前記指の軸線回りに一方の側に180°未満の角度で回転させた方向であり、前記第3方向は、前記第1方向を前記指の軸線回りに他方の側に180°未満の角度で回転させた方向であることが望ましい。このようにすれば、静脈の影を3方向から撮像した第1〜第3平面投影画像に基づいて平面展開投影画像を得ることができるので、平面展開投影画像上に指の軸線回りの180°を超える角度範囲における静脈パターンを取得することが、更に、容易となる。
【0015】
本発明において、前記照明光は、波長が700nm〜1000nmの近赤外線であることが望ましい。このような波長の近赤外線は血液中のヘモグロビンに吸収され易いので、静脈の影が鮮明なものとなる。この結果、静脈画像上に鮮明な静脈パターンを得ることができるので、平面展開投影画像を精度よく生成できる。
【0016】
次に、本発明は、上記の静脈画像取得装置と、前記静脈画像取得装置によって前記静脈画像として取得された前記平面展開投影画像を、前記認証対象者の名前などの個人情報と関連付けてデータベースに記憶保持するデータベース生成部を備えている認証情報蓄積システムとすることができる。このように、静脈画像取得装置によって取得された平面展開投影画像をデータベース化しておけば、平面展開投影画像に基づいて個人認証を行なうことが可能となる。
【0017】
また、本発明は、上記の認証情報蓄積システムと、前記静脈画像取得装置によって前記平面展開投影画像が前記静脈画像として取得されると、取得された前記静脈画像と前記認証情報蓄積システムの前記データベースに記憶保持されている前記平面展開投影画像とのパターンマッチングを行い、前記認証対象者を認証する認証部とを有することを特徴とする個人認証システムとすることができる。このようにすれば、個人認証に平面展開投影画像を用いることができるので、静脈画像取得装置の指載置面に置いた指の軸線回りの回転に起因して認証精度が低下することを回避できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、静脈画像取得装置により静脈画像として得られる平面展開投影画像は、静脈の影が投影されている指の表面を、指の軸線回りの所定角度範囲で平面となるように広げることにより得られる画像と同様なものとなる。すなわち、静脈画像は、静脈パターンを従来よりも忠実に再現したものとなる。従って、指の腹の向きが予め設定した撮像方向から軸線回りにずれていた場合でも、静脈画像として取得される平面展開投影画像上において、静脈パターンは変化しない。また、本発明の認証情報蓄積システムは、静脈画像取得装置によって取得された平面展開投影画像をデータベース化し、本発明の認証情報蓄積システムは、データベース化された平面展開投影画像に基づいて個人認証を行なう。この結果、個人認証に平面展開投影画像を用いることができるので、静脈画像取得装置の指載置面に置いた指の軸線回りの回転に起因して認証精度が低下することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図である。
【図2】平面投影画像から平面展開投影画像を得る画像処理動作の説明図である。
【図3】平面展開投影画像の生成方法の説明図である。
【図4】指が軸線回りに回転した場合の静脈画像と平面展開投影画像の説明図である。
【図5】静脈の影の指の表面上の位置と静脈画像上の位置との関係を説明するための説明図、画像データおよびグラフである。
【図6】変形例1の個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図である。
【図7】変形例1の撮像装置によって取得された第1〜第3平面投影画像である。
【図8】変形例2の個人認証システムの説明図である。
【図9】参考例の個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した静脈画像取得装置の個人認証システムの実施の形態を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は本発明を適用した個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図である。個人認証システム1は、認証対象者の指2の静脈パターンを取得するための静脈画像取得装置3と、静脈画像取得装置3に接続されているデータベース装置4を有している。静脈画像取得装置3は、認証対象者の指2を当該指2の腹2aの側から撮像して平面投影画像G1(図2、図4参照)を取得する撮像装置5と、平面投影画像G1を画像処理して静脈画像を得る演算処理部6を有している。データベース装置4は、静脈画像をデータベース化するデータベース生成部7と、静脈画像に基づいて個人認証を行う認証部8を備えている。
【0022】
(静脈画像取得装置)
図2は静脈画像取得装置が平面投影画像G1から静脈画像として取得される平面展開投影画像を得る画像処理動作の説明図である。図3は画像処理部による静脈画像の生成方法の説明図である。静脈画像取得装置3の撮像装置5は、静脈画像によって個人認証を行う認証対象者の指2の腹2aを載せる指載置面10と、この指載置面10に載せた指2に照明光を照射する照明部11と、指2を透過した照明光による像を指載置面10と直交(所定の角度)する垂直方向(第1方向)の下方から撮像して平面投影画像G1を取得する撮像部12を備えている。ここで、指2を透過した照明光による像とは、照明光が指2の内部で拡散して生ずる拡散光によって、指2の内部から指2の表面2bに投射された静脈13の影13aである。また、照明部11からの照明光は指2の内部で乱反射して拡散しているので、この静脈13の影13aは、照明光の光源の位置に拘わらず、静脈13に対して指2の半径方向の外側に形成されている。
【0023】
照明部11と撮像部12は垂直方向X1で指載置面10を挟んで上下に配置されている。照明部11の光源は波長が700nm〜1000nmの近赤外線を放射するLEDである。撮像部12は撮像素子としてCCDイメージセンサ14を搭載している。また、撮像部12は指2を透過した照明光による像をCCDイメージセンサ14のセンサ面14a(図3参照)に結像させるための結像レンズ15を備えている。撮像部12は、図2(a)に示すように、垂直方向X1と直交する平坦なセンサ面14a上に静脈13の影13aが投影された平面投影画像G1を取得する。
【0024】
演算処理部6は、撮像部12によって撮像された指2の腹2a側の表面2bを所定形状の立体表面に設定する表面形状設定部16と、撮像部12によって取得された平面投影画像G1を画像処理して生成した平面展開投影画像G3を静脈画像として取得する画像処理部17を備えている。
【0025】
表面形状設定部16は、撮像部12が取得した平面投影画像G1の指投影画像部分から、指2の幅寸法および幅方向の中心位置を算出し、指2の腹側の表面を、幅寸法を直径とし、中心位置を中心軸線O1とする円筒面S1に設定する。
【0026】
画像処理部17は、第1画像処理部18と、第2画像処理部19を備えている。第1画像処理部18は、図2(b)に示すように、撮像部12が取得した平面投影画像G1を画像処理することによって、垂直方向X1から平面投影画像G1を円筒面S1に投影した場合に得られる立体表面投影画像G2を生成する。
【0027】
第2画像処理部19は、図2(c)に示すように、立体表面投影画像G2を画像処理して、平面投影画像G1が投射された円筒面S1を平面となるように広げた場合に得られる平面展開投影画像G3を、認証用の静脈画像として生成する。
【0028】
ここで、図3を参照して画像処理部17における平面展開投影画像G3の生成方法の例を詳細に説明する。まず、表面形状設定部16は、指2の表面2bを円筒面S1に設定している。設定された円筒面S1は、曲率半径Rを備えている。また、CCDイメージセンサ14のセンサ面14aの中心から垂直方向X1に延びて円筒面S1の中心軸線O1を通過する面を基準面S2としたときに、画像処理部17は、CCDイメージセンサ14のセンサ面14aから円筒面S1までの基準面S2上の距離Lを予め把握している。さらに、画像処理部17は、撮像部12が取得した平面投影画像G1上の静脈13の影13a(G1)の位置をセンサ面14aの座標として取得することができるので、この座標に基づいて、平面投影画像G1を仮想的に基準面S2と直交させて円筒面S1に当接させた状態における、基準面S2に対する静脈13の影13a(G1)の高さH1を把握することができる。
【0029】
次に、センサ面14aの中心を通って中心軸線O1と平行に延びる軸線O2に仮想的な拡散光源を設置して、平面投影画像G1を垂直方向X1から円筒面S1に投影する。ここで、平面投影画像G1上で基準面S2からH1の高さにある静脈13の影13a(G1)を円筒面S1に投影すると、投影により得られる立体表面投影画像G2上の静脈13の影13a(G2)は、基準面S2上でCCDイメージセンサ14のセンサ面14aから距離Mだけ離れた位置に投影される。
【0030】
ここで、距離Mは下式(1)で表される。φは、円筒面S1上の静脈13の影13a(S1)の、中心軸線O1回りの基準面S2からの角度である。
M=L+R−R×cosφ・・・(1)
【0031】
また、立体表面投影画像G2上の基準面S2からの静脈13の影13a(G2)の高さH1は、以下の式(2)で表される。θは、平面投影画像G1上の静脈13の影13a(G1)の、軸線O2回りの、基準面S2からの角度である。
H1=tanθn×L・・・(2)
【0032】
さらに、立体表面投影画像G2上の静脈13の影13a(G2)の基準面S2からの高さH2は、以下の式(3)、(4)で表される。
H=M×tanθ・・・(3)
H=R×sinφ・・・(4)
【0033】
以上の式(1)〜(4)から、平面投影画像G1上の静脈13の影13a(G1)を、円筒面S1上に投影して得られる立体表面投影画像G2上の静脈13の影13a(G2)の位置、すなわち、角度φを求めることができる。また、このような処理を、撮像部12が取得した平面投影画像G1の各画素について行うことにより、平面投影画像G1を円筒面S1上に投影して得られる立体表面投影画像G2を得ることができる。
【0034】
次に、角度φが算出されると、角度φに基づいて、立体表面投影画像G2上における基準面S2から静脈13の影13a(G2)までの距離Nが算出できる。従って、この距離Nに基づいて、平面投影画像G1が投射された円筒面S1を平面となるように広げた場合に得られる平面展開投影画像G3を、立体表面投影画像G2を画像処理することによって得ることができる。すなわち、立体表面投影画像G2上の静脈13の影13a(G2)を、基準面S2と直交させて円筒面S1に当接させた仮想平面上で基準面S2から距離Nだけ離れた位置に展開すれば、平面展開投影画像G3上における静脈13の影13a(G3)となる。このような処理を、立体表面投影画像G2の全面で行うことにより、平面展開投影画像G3が得られる(図2(c)参照)。
【0035】
上記の方法で生成された平面展開投影画像G3は、静脈13の影13aが投影されている指2の表面2bを、指の軸線回りの所定角度範囲で平面となるように広げることにより得られる画像と同様なものとなっている。従って、平面展開投影画像G3上のいずれの画像部分も、撮像部12と正対した状態で撮像されることにより得られる画像と同様のものとなる。すなわち、平面展開投影画像G3は、静脈パターンをより忠実に再現したものとなる。従って、指載置面10上で指2の腹2aの向きが予め設定した撮像方向(垂直方向X1)から指2の軸線L1回りにずれていた場合でも、静脈画像として取得される平面展開投影画像G3上において、静脈パターンは変化しない。
【0036】
図4は、撮像部12によって取得された平面投影画像G1と画像処理部17によって得られた平面展開投影画像G3との比較である。図4(a)は指2の腹2aが垂直方向X1を向いている状態で指載置面10に載置されていたときに得られた平面投影画像G1および平面展開投影画像G3であり、図4(b)は指2の腹2aが軸線L1方向で垂直方向X1とは異なる方向に向いている状態で指載置面10に載置されていたときに得られた平面投影画像G1および平面展開投影画像G3である。図4(a)、(b)において、左側が平面投影画像G1であり、右側が平面展開投影画像G3である。図4(b)では、指2は図4(a)に示す状態から軸線L1を中心として矢印の方向に回転している。
【0037】
指2が垂直方向X1から軸線L1回りに回転した場合には、撮像部12からは、回転によってCCDイメージセンサ14のセンサ面14aと正対しなくなり、垂直方向X1から離れた指2の部位で静脈13の影13aの間隔D1が狭くなって見える。従って、図4(b)に示す平面投影画像G1では、図4(a)に示す平面投影画像G1と比較して、当該部位の静脈13の影13aの間隔D1が狭くなっている。また、指2が垂直方向X1から軸線L1回りに回転した場合には、撮像部12からは、回転によって垂直方向X1に近づき、CCDイメージセンサ14のセンサ面14aと正対するようになった部位で静脈13の影13aの間隔D2が広くなって見える。従って、図4(b)に示す平面投影画像G1では、図4(a)に示す平面投影画像G1と比較して、当該部位の静脈13の影13aの間隔D2が広くなっている。
【0038】
これに対して、平面展開投影画像G3上では、図4(a)と図4(b)を比較した場合に、指2の回転に拘わらず、静脈13の影13aの間隔D1、D2は変化していない。また、図4(a)の平面展開投影画像G3と図4(b)の平面展開投影画像G3とで、指2の撮像範囲は軸線L1回りの角度範囲でずれているが、平面展開投影画像G3上の静脈パターンは一致している。
【0039】
ここで、本発明者らは、図5に示すように、指2を円筒25に見立て、円筒25の内側に、指2の静脈13と対応する位置に棒状部材26、27を配置し、円筒25の中心軸線O3から半径方向を外側に向ってレーザー照明光を照射して、棒状部材26、27の影26a、27aを円筒25の表面25aに映し出すシミュレーションを行った。図5(a)は、左端の図に示す基準状態から、円筒25および棒状部材26、27を中心軸線O3回りに10°毎に一体に回転させている様子を中心軸線O3の方向から見た平面図である。図5(a)の各図は、左側から順番に、基準状態、円筒25および棒状部材26、27を基準状態から中心軸線O3回りに10°回転させた状態、円筒25および棒状部材26、27を基準状態から中心軸線O3回りに20°回転させた状態、円筒25および棒状部材26、27を基準状態から中心軸線O3回りに30°回転させた状態を示している。図5(b)は図5(a)に示す各状態を所定方向X0からCCDイメージセンサ28により撮像した平面投影画像である。図5(c)に示すグラフは、図5(a)に示す各状態において、円筒25の表面25aに形成されている棒状部材26の影26aの基準面S3からの高さH0、および、円筒25の表面25a上における基準面S3から棒状部材26の影26aまでの距離N0を測定し、測定した高さH0と距離N0との関係(測定値)をプロットしたものである。基準面S3は円筒25の中心軸線O3から所定方向X0に延びている仮想面である。
【0040】
このシミュレーションによって、指2を実際に軸線L1回りに回転させながら静脈13の影13aを撮像した場合と同様の撮像結果が得られたので、撮像部12によって、静脈パターンとして取得される平面投影画像G1は、指2内で拡散する照明光によって指2の表面2bに投射された静脈13の影13aであること、および、この静脈13の影13aが静脈13に対して指2の半径方向の外側に形成されていることが検証された。従って、撮像部12が取得した平面投影画像G1を円筒面S1に投影した立体表面投影画像G2を平面上に展開した平面展開投影画像G3上では、静脈パターンをより忠実に再現可能であることが裏付けられた。
【0041】
なお、図5(c)のグラフに、図5(b)の平面投影画像に基づいて式(2)によって算出される平面投影画像上の棒状部材26の影26aの高さH0と、図5(b)の平面投影画像および式(1)〜(4)に基づいて算出される基準面S3から棒状部材26の影26aまでの円筒25の表面25a上の距離N0との関係(計算値)を記入すると、測定した高さH0と距離N0との関係は、計算により導き出された高さH0と距離N0との関係と一致するものとなっている。
【0042】
(データベース装置)
次に、図1に戻り、データベース装置4のデータベース生成部7は、静脈画像取得装置3において平面展開投影画像G3が静脈画像として取得されると、平面展開投影画像G3を認証対象者の名前などの個人情報と関連付けてデータベース30に記憶保持する。また、データベース装置4の認証部8は、静脈画像として取得された平面展開投影画像G3と、データベース30に静脈画像として記憶保持されている平面展開投影画像G3のパターンマッチングを行い、認証対象者を認証する。認証部8は、データベース30に記憶保持されている平面展開投影画像G3と、静脈画像取得装置3によって生成された平面展開投影画像G3のパターン一致の割合によって、個人を認証するか否かを判断する。
【0043】
(作用効果)
本例によれば、静脈画像取得装置3によって、静脈画像として得られる平面展開投影画像G3は、立体表面である指2の表面2bを撮像して得た平面投影画像G1を、指2の表面2bとして設定された円筒面S1に投影し、この投影により得られた立体表面投影画像G2を、再び平面となるように広げたものである。この結果、平面展開投影画像G3は、静脈13の影13aが投影されている指2の表面2bを、指2の軸線L1回りの所定角度範囲で平面となるように広げることにより得られる画像と同様なものとなり、平面展開投影画像G3上のいずれの画像部分も、撮像部12と正対した状態で撮像されることにより得られる画像と同様のものとなる。すなわち、静脈画像は、静脈パターンをより忠実に再現したものとなる。従って、指載置面10上で指2の腹2aの向きが予め設定した方向から軸線L1回りにずれた場合でも、すなわち、指の撮像方向に拘わらず、静脈画像として取得される平面展開投影画像G3上において、静脈パターンは変化しない。
【0044】
また、本例の個人認証システム1では、個人認証に用いる静脈画像として、静脈画像取得装置3の指載置面10上の指2の腹2aの軸線L1回りの向きに拘わらず静脈13パターンが変化しない平面展開投影画像G3を用いているので、指2の軸線L1回りの回転に起因して認証精度が低下することを回避できる。
【0045】
さらに、本例では、表面形状設定部16は、指2の表面の立体形状を円筒面S1として設定しているので、平面投影画像G1から平面展開投影画像G3を生成する処理速度が速い。すなわち、指2の立体平面を円筒面S1として近似しているので、平面投影画像G1を円筒面S1に投影して立体表面投影画像G2を得る画像処理、および、平面投影画像G1が投射された円筒面S1を広げた平面展開投影画像G3を生成する画像処理の処理速度を向上させることができる。
【0046】
また、本例では、波長が700nm〜1000nmの近赤外線を指2に照射している。このような波長の近赤外線は血液中のヘモグロビンに吸収され易いので、静脈13の影13aが鮮明なものとなり、平面投影画像G1上に鮮明な静脈13パターンを得ることができる。従って、平面展開投影画像G3を精度よく生成できる。
【0047】
(変形例1)
図6は変形例1の個人認証システム40の要部構成を模式的に示す説明図である。なお、変形例1の個人認証システム40は上記の個人認証システム1と同様の構成を備えているので、対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
本例では、撮像装置5が第1反射鏡41および第2反射鏡42を備えている。第1反射鏡41と第2反射鏡42とは、指載置面10の両側に配置されている。また、第1反射鏡41および第2反射鏡42のそれぞれは、内側を向いて撮像部12に向って傾けられている。第1反射鏡41と第2反射鏡は反対側に同一の角度で傾いて指載置面10と交差している。これにより、撮像部12からは、第1反射鏡41を介して垂直方向X1とは指2の軸線L1回りで異なる第2方向X2からの指2の鏡像が見え、第2反射鏡42を介して垂直方向X1および第2方向X2とは指2の軸線L1回りで異なる第3方向X3からの指2の鏡像が見える。第2方向X2は、基準となっている撮影方向(垂直方向X1)を指載置面10に載せた指2の軸線L1回りに一方の側に180°未満の角度で回転した方向であり、第3方向X3は、基準となっている撮影方向(垂直方向X1)を指2の軸線L1回りに他方の側に180°未満の角度で回転した方向である。
【0049】
撮像部12は、垂直方向X1と直交するセンサ面14a上に静脈13の影13aが投影された第1平面投影画像G11を取得する。また、撮像部12は、第1反射鏡41を介して、静脈13の影13aを第2方向X2から撮像して、センサ面14a上に静脈13の影13aが投影された第2平面投影画像G12を取得する。さらに、撮像部12は、第2反射鏡42を介して、静脈13の影13aを第3方向X3から撮像して、センサ面14a上に静脈13の影13aが投影された第3平面投影画像G13を取得する。これら第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13の取得は1回の撮像によって行われる。図7は変形例1の個人認証システム40の撮像装置5によって取得された第1〜第3平面投影画像G11〜G13の例である。
【0050】
撮像部12によって、第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13が取得されると、画像処理部17の第1画像処理部18は、第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13を画像処理して、第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13を円筒面S1投影した場合に得られる立体表面投影画像G2を生成する。また、画像処理部17の第2画像処理部19は、立体表面投影画像G2を画像処理して、平面展開投影画像G3を得る。なお、第1画像処理部18において立体表面投影画像G2を生成する画像処理は、第1平面投影画像G11から立体表面投影画像G2を生成する画像処理と同様に、演算によって行うことができる。
【0051】
本例では、第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13によって、静脈13の影13aを2方向から撮像した平面投影画像が得られる。また、これらの3枚の平面投影画像は、垂直方向X1を中心として指2の軸線L1回りの両方向に90°を超える角度範囲を撮像したものである。従って、画像処理部17は、指2の軸線L1回りの180°以上の角度範囲の平面展開投影画像G3を得ることができる。
【0052】
(変形例2)
図8(a)は変形例2の個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図であり、図8(b)は表面形状設定部16が撮像部12に取得させるパターン投射平面投影画像の例である。なお、変形例2の個人認証システム50は上記の個人認証システム1と同様の構成を備えているので、対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
本例では、表面形状設定部16が、パターン投射部51、パターン投射画像取得部52、および、表面形状取得部53を備えている。
【0054】
パターン投射部51は、光源54とフォトマスク55と投射用レンズ56を備え、所定のパターンを指2に投射する。光源54およびフォトマスクは指載置面10の下方であって、指載置面10よりも、この指載置面10に載せられる指2の前方に配置されている。パターンを投射する光源54からの投射光の光軸L2と指載置面10に載せられた指の軸線L1とは45°で交差している。
【0055】
パターン投射画像取得部52は、パターンを照射した状態の指2の表面2bを、撮像部12に撮像させてパターン投射平面投影画像を得る。これにより、図8(b)に例示するパターン投射平面投影画像が得られる。
【0056】
表面形状取得部53は、得られたパターン投射平面投影画像に基づいて、モアレ法、光切断法、または、空間コード化法によって指2の立体表面を算出し、算出立体表面として取得する。ここで、モアレ法、光切断法、または、空間コード化法によって物体の立体表面を算出する技術は周知の技術なので、それらの方法の説明を省略する。
【0057】
表面形状取得部53が算出立体表面を取得すると、画像処理部17の第1画像処理部18は、撮像部12が取得した平面投影画像G1を画像処理して、垂直方向X1から平面投影画像G1を算出立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像G2を生成する。また画像処理部17の第2画像処理部19は、立体表面投影画像G2を画像処理して、平面投影画像G1が投射された算出立体表面を平面となるように広げた場合に得られる平面展開投影画像G3を認証用の静脈画像として生成する。本例によれば、指2の表面2bに対応する算出立体表面が実際の指2の表面形状に近いものとなるので、静脈画像として取得される平面展開投影画像G3上の静脈パターンがより正確なものとなる。
【0058】
(参考例)
上記の個人認証システム1、40、50の例では、平面投影画像を画像処理して得られる平面展開投影画像を静脈画像として取得して、この静脈画像を認証用として用いているが、認証対象者の指2を当該指2の腹2aの側の異なる方向から撮像して得られた複数枚の平面投影画像を静脈画像として用いた場合でも、一方向のみから撮影した1枚の平面投影画像を静脈画像として用いて認証を行う場合と比較すれば、認証精度を高めることできる。また、従来の静脈画像取得装置では、認証対象者の指2を当該指2の腹2aの側の異なる方向から撮像する際には複数台のカメラ(撮像部)を用いているが、1台のカメラ(撮像部)によって異なる方向から認証対象者の指の腹を撮影することができれば、従来の静脈画像取得装置と比較して、装置の製造コストを抑制することができる。以下に、参考例として、このような作用効果を得ることができる静脈画像取得装置を説明する。
【0059】
図9は参考例の個人認証システムの要部構成を模式的に示す説明図である。なお、参考例の個人認証システム60は、演算処理部を除いて、変形例1の個人認証システム40と同様の構成を備えている。
【0060】
個人認証システム60は、認証対象者の指2の静脈パターンを取得するための静脈画像取得装置61と、静脈画像取得装置61に接続されているデータベース装置62を有している。静脈画像取得装置61は、認証対象者の指2を当該指2の腹2aの側の異なる3方向から撮像して静脈画像を取得する撮像装置63を備えている。データベース装置62は、静脈画像をデータベース化するデータベース生成部64と、静脈画像に基づいて個人認証を行う認証部65を備えている。
【0061】
撮像装置63は、静脈画像によって個人認証を行う認証対象者の指2を腹2aを載せる指載置面70と、この指載置面70に載せた指2に照明光を照射する照明部71と、指2を透過した照明光による像を指載置面70と直交(所定の角度)する垂直方向(第1方向)の下方から撮像する撮像部72を備えている。照明部71と撮像部72は垂直方向X1で指載置面70を挟んで上下に配置されている。照明部71の光源は波長が700nm〜1000nmの近赤外線を放射するLEDである。撮像部72は撮像素子としてCCDイメージセンサ74を搭載している。また、撮像部72は指2を透過した照明光による像をCCDイメージセンサ74のセンサ面74aに結像させるための結像レンズ75を備えている。
【0062】
また、撮像装置63は、第1反射鏡76および第2反射鏡77を備えている。第1反射鏡76と第2反射鏡77とは、指載置面70の両側に配置されている。また、第1反射鏡76および第2反射鏡77のそれぞれは、内側を向いて撮像部72に向って傾けられている。第1反射鏡76と第2反射鏡は反対側に同一の角度で傾いて指載置面70と交差している。これにより、撮像部72からは、第1反射鏡76を介して垂直方向X1とは指2の軸線L1回りで異なる第2方向X2からの指2の鏡像が見え、第2反射鏡77を介して垂直方向X1および第2方向X2とは指2の軸線L1回りで異なる第3方向X3からの指2の鏡像が見える。第2方向X2は、基準となっている撮影方向(垂直方向X1)を指載置面70に載せた指2の軸線L1回りに一方の側に180°未満の角度で回転した方向であり、第3方向X3は、基準となっている撮影方向(垂直方向X1)を指2の軸線L1回りに他方の側に180°未満の角度で回転した方向である。
【0063】
撮像部72は、垂直方向X1と直交するセンサ面74a上に静脈13の影13aが投影された第1平面投影画像G11を取得する。また、撮像部72は、第1反射鏡76を介して、静脈13の影13aを第2方向X2から撮像して、センサ面74a上に静脈13の影13aが投影された第2平面投影画像G12を取得する。さらに、撮像部72は、第2反射鏡77を介して、静脈13の影13aを第3方向X3から撮像して、センサ面74a上に静脈13の影13aが投影された第3平面投影画像G13を取得する。これら第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13の取得は1回の撮像によって行われる。これにより取得される第1〜第3平面投影画像G11〜G13は、図7に示す変形例1の個人認証システム60の撮像装置63によって取得される第1〜第3平面投影画像G11〜G13と同一である。
【0064】
本例では、静脈画像取得装置61は、撮像装置63によって取得された第1〜第3平面投影画像G11〜G13を、そのまま、認証用の静脈画像として取得する。
【0065】
データベース装置62のデータベース生成部64は、静脈画像取得装置61において取得された認証用の静脈画像(第1〜第3平面投影画像G11〜G13)を認証対象者の名前などの個人情報と関連付けてデータベース80に記憶保持する。また、データベース装置62の認証部65は、静脈画像として取得された第1〜第3平面投影画像G11〜G13と、データベース80に静脈画像として記憶保持されている第1〜第3平面投影画像G11〜G13のパターンマッチングを行い、認証対象者を認証する。認証部65は、データベース80に記憶保持されている第1〜第3平面投影画像G11〜G13と、静脈画像取得装置61によって取得された第1〜第3平面投影画像G11〜G13のパターン一致の割合によって、個人を認証するか否かを判断する。
【0066】
本例では、反射鏡を備えることによって、認証対象者の指2を当該指2の腹2aの側の異なる3方向から撮像した第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13を1つの撮像部72によって取得することが可能となっている。従って、複数の撮像部72を用いて異なる方向から認証対象者の指2の腹2aを撮影する従来の静脈画像取得装置と比較して、装置の製造コストを抑えることができる。
【0067】
また、これらの3枚の第1〜第3平面投影画像G11〜G13は、垂直方向X1を中心として指2の軸線L1回りの両方向に90°を超える角度範囲を撮像したものである。従って、これら第1平面投影画像G11、第2平面投影画像G12および第3平面投影画像G13を静脈画像として認証を行えば、一方向のみから撮影した1枚の平面投影画像を用いて認証を行う場合と比較して、認証精度を高めることできる。すなわち、指2の腹2aの向きが予め設定した撮像方向(垂直方向)を向いておらず指2の軸線L1の回りに回動している場合であっても、指2の腹2aの側の異なる方向から撮像して得られた複数枚の平面投影画像を基いて認証を行うことができるので、認証精度を高めることができる。
【0068】
なお、参考例では、反射鏡として第1反射鏡76および第2反射鏡77の2枚を備えているが、第1反射鏡および第2反射鏡のいずれか一方のみを備えるものとして、静脈画像取得装置61が第1平面投影画像G11と第2平面投影画像G12、或いは、第1平面投影画像G11と第3平面投影画像G13を取得するように構成してもよい。また、3枚以上の反射鏡を配置することによって、静脈画像取得装置61が3枚以上の平面投影画像を取得するように構成してもよい。さらに、撮像部72によって取得された第1〜第3平面投影画像G11〜G13を画像処理して繋げたものを認証用の静脈画像とすることもできる。この場合には、例えば、第1〜第3平面投影画像G11〜G13において重複している部分を重ね合わせた状態で各第1〜第3平面投影画像G11〜G13を連結する画像処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1・40・50・個人認証システム、2・指、2a・腹、2b・表面、3・静脈画像取得装置、4・データベース装置、5・撮像装置、6・演算処理部、7・データベース生成部、8・認証部、10・指載置面、11・照明部、12・撮像部、13・静脈、13a・影、14・CCDイメージセンサ、14a・センサ面、15・結像レンズ、16・表面形状設定部、17・画像処理部、18・第1画像処理部、19・第2画像処理部、25・円筒、25a・表面、26・棒状部材、26a・影、28・CCDイメージセンサ、30・データベース、40・個人認証システム、41・第1反射鏡、42・第2反射鏡、50・個人認証システム、51・パターン投射部、52・パターン投射画像取得部、53・表面形状取得部、54・光源、55・フォトマスク、56・投射用レンズ、D1・D2・間隔、G1・平面投影画像、G11・第1平面投影画像、G12・第2平面投影画像、G13・第3平面投影画像、G2・立体表面投影画像、G3・平面展開投影画像、L・距離、L1・指の軸線、L2・光軸、O1・円筒面の中心軸線、O2・軸線、O3・円筒の中心軸線、R・円筒面の曲率半径、S1・円筒面、S2・基準面、S3・基準面、X0・所定方向、X1・垂直方向(第1方向)、X2・第2方向、X3・第3方向、60・個人認証システム、61・静脈画像取得装置、62・データベース装置、63・撮像装置、64・データベース生成部、65・認証部、70・指載置面、71・照明部、72・撮像部、74・CCDイメージセンサ、74a・センサ面、75・結像レンズ、76・第1反射鏡、77・第2反射鏡、80・データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証対象者の指の腹を載せる指載置面と、
前記指載置面に載った前記指に照明光を当てる照明部と、
前記照明光が前記指内で拡散して生ずる拡散光によって、前記指の内部から当該指の腹の表面に投影される静脈の影を、前記指載置面に対して所定の第1角度をなす第1方向から撮像して、当該第1方向と直交する平坦な撮像面上に前記静脈の影が投影された第1平面投影画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記指の腹側の表面を所定形状の立体表面に設定する表面形状設定部と、
前記第1平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成する第1画像処理部と、
前記立体表面投影画像を画像処理して、前記第1平面投影画像が投射された前記立体表面を平面となるように広げた場合に得られる平面展開投影画像を、認証用の静脈画像として生成する第2画像処理部とを有していることを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記表面形状設定部は、
前記第1平面投影画像上の指投影画像部分から、前記指の幅寸法および幅方向の中心位置を算出し、前記指の腹側の表面を、前記幅寸法を直径とし、前記中心位置を中心軸とする円筒面に設定することを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記表面形状設定部は、
光源とフォトマスクを備え、所定のパターンを前記指に投射するパターン投射部と、前記パターンが投射された前記指を前記撮像部に撮像させてパターン投射画像データを得るパターン投射画像データ取得部と、
前記パターン投射画像データに基づいて、前記指の腹側の表面をモアレ法、光切断法、または、空間コード化法によって算出し、算出立体表面として取得する表面形状取得部を備えており、
前記指の腹側の表面を、前記算出立体表面に設定することを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
第1反射鏡を有し、
前記撮像部は、前記第1反射鏡を介して、前記静脈の影を、前記指載置面に載った前記指の軸線回りで前記第1方向とは異なる第2方向から撮像して、前記撮像面上に前記静脈の影が投影された第2平面投影画像を取得し、
前記第1画像処理部は、前記第1平面投影画像および前記第2平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記第1平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第2方向から前記第2平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成することを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項5】
請求項4において、
第2反射鏡を有し、
前記撮像部は、前記第2反射鏡を介して、前記静脈の影を、前記指載置面に載った前記指の軸線回りで前記第1方向および前記第2方向とは異なる第3方向から撮像して、前記撮像面上に前記静脈の影が投影された第3平面投影画像を取得し、
前記第1画像処理部は、前記第1平面投影画像、前記第2平面投影画像および前記第3平面投影画像を画像処理して、前記第1方向から前記第1平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第2方向から前記第2平面投影画像を前記立体表面に投影し、且つ、前記第3方向から前記第3平面投影画像を前記立体表面に投影した場合に得られる立体表面投影画像を生成し、
前記第2方向は、前記第1方向を前記指載置面に載せた前記指の軸線回りに一方の側に180°未満の角度で回転させた方向であり、前記第3方向は、前記第1方向を前記指の軸線回りに他方の側に180°未満の角度で回転させた方向であることを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記照明光は、波長が700nm〜1000nmの近赤外線であることを特徴とする静脈画像取得装置。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の静脈画像取得装置と、
前記静脈画像取得装置によって前記静脈画像として取得された前記平面展開投影画像を、前記認証対象者の名前などの個人情報と関連付けてデータベースに記憶保持するデータベース生成部を備えている認証情報蓄積システム。
【請求項8】
請求項7に記載の認証情報蓄積システムと、
前記静脈画像取得装置によって前記平面展開投影画像が前記静脈画像として取得されると、取得された前記静脈画像と前記認証情報蓄積システムの前記データベースに記憶保持されている前記平面展開投影画像とのパターンマッチングを行い、前記認証対象者を認証する認証部とを有することを特徴とする個人認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138023(P2012−138023A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291191(P2010−291191)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】