説明

静電噴霧装置

【課題】 漏電発生時における回復作業を円滑に行うことができるようにする。
【解決手段】 本発明の静電噴霧装置1は、ノズル8からの液滴の噴出に連動して、該液滴を帯電させる電極14への電力供給を自動制御するように構成されており、前記液滴の非噴出時に電極14への電力供給を強制的に行わせる強制スイッチ23を備えている。また、本装置は、前記強制的な電力供給を、一定時間経過後に自動的に停止させるタイマー手段と、前記強制的な電力供給中に、音によるアラームを出力するアラーム部26とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気を利用して薬液等の液体の液滴を効率よく農作物に付着させる静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、特許文献1記載の静電付与式散布機を例示する。この散布機は、図4に示すように、噴霧ノズル55からの噴霧に静電付与電極69からの電荷を付与して薬液51の散布を行うものであり、噴霧ノズル55からの噴霧を制御する噴霧制御部材56の操作に連動して静電付与電極69への電力供給を自動的に制御する連動スイッチ66を備えてなっている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−159887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬液51には展着剤が含まれているとともに、電荷が付与されているため、噴霧ノズル55に付着し易く、連続噴霧により噴霧ノズル55表面に薬液51の連続膜が形成され、漏電が発生することがある。また、噴霧ノズル55内に葉、埃、虫等の異物が入り込み、漏電が発生することもある。こうして漏電が発生した場合、通常は、噴霧ノズル55に付着した薬液51や異物を除去した後、静電付与の回復(漏電の解消)を確認してから、散布作業を再開する。
【0005】
しかし、従来の散布機は、噴霧に連動して静電付与電極69への電力供給が自動的に制御されるので、実際に噴霧を開始してみないと静電付与の回復がなされているか否かをチェックすることができず、手間が掛かるという課題がある。特に、複数の噴霧ノズル55を備えている場合は、漏電が発生している噴霧ノズル55を特定する作業の必要になり、さらに回復に手間が掛かってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の静電噴霧装置は、
ノズルからの液滴の噴出に連動して、該液滴を帯電させる電極への電力供給を自動制御するように構成された静電噴霧装置であって、
前記液滴の非噴出時に前記電極への電力供給を強制的に行わせる強制スイッチを備えている。
【0007】
この構成によれば、前記噴出を停止させた状態で、前記電極への電力供給を強制的に行わせることにより、漏電発生時における回復作業を円滑に行うことができる。
【0008】
前記静電噴霧装置においては、
前記強制的な電力供給を、一定時間経過後に自動的に停止させるタイマー手段を備えた態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記電力供給の停止し忘れによる感電事故の発生を防止することができる。
【0010】
前記静電噴霧装置においては、
前記強制的な電力供給中に、聴覚的表示、視覚的表示若しくは触覚的表示、又はこれらの組み合わせによるアラームを出力するアラーム部を備えた態様を例示する。
【0011】
前記聴覚的表示としてはアラーム音によるものを例示する。前記視覚的表示としてはアラーム表示によるものを例示する。前記触覚的表示としては、振動によるものを例示する。
【0012】
この構成によれば、作業者に対し、前記強制的な電力供給中であることの注意を促すことができる。
【0013】
前記静電噴霧装置においては、
前記アラーム部は、時間の経過とともに出力態様が変化するように構成された態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、作業者に前記時間の経過を認識させることができる。特に、前記タイマー手段を設けている場合は、作業者に前記一定時間の終了が近づいていることを認識させることができる。
【0015】
前記静電噴霧装置においては、
前記電極がそれぞれ装備された前記ノズルを複数備え、
個々又は複数ごとの前記電極に対して高電圧を供給するように並列分岐した配線に、漏電電流を制限するための保護抵抗がそれぞれ挿入された態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、個々又は複数ごとの電極において漏電が発生しても、保護抵抗により、漏電電流が抑制されるとともに、漏電が発生していない電極への影響を低減することができる。このため、漏電発生時における前記液滴の非噴出時に、前記強制スイッチにより前記電極への電力供給を強制的に行わせると、漏電が発生している電極は、漏電が発生していない電極よりも電位が低くなるので、漏電が発生している電極を容易に特定できる。
【0017】
前記静電噴霧装置においては、
前記分岐前の配線に漏電の発生を検知する漏電センサが接続された態様を例示する。
【0018】
この構成によれば、前記漏電センサを個々の電極に対してそれぞれ設けるのではなく、分岐前の配線に設けるようにしているので、コストを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る静電噴霧装置によれば、漏電発生時における回復作業を円滑に行うことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態の静電噴霧装置1を示している。図1に示すように、この装置は流体系統及び電気系統を備えており、後述するように、ノズル8からの液滴の噴出に連動して、該液滴を帯電させる電極14への電力供給を自動制御するように構成されている。
【0021】
静電噴霧装置1の流体系統は、作物の病気や虫の防除用薬液2を収容し供給するための薬液供給部としての収容タンク3と、該収容タンク3から供給される薬液2を加圧する薬液圧力発生部としてのポンプ4と、該ポンプ4の吐出口にバルブ5a付きのホース5を介して接続された手持ち式ノズル部6とを備えている。手持ち式ノズル部6は、支持体としての噴管7と、該噴管7の長さ方向に間隔をおいて列設された複数(本例では5個)のノズル8とを備えている。
【0022】
静電噴霧装置1の電気系統は高電圧系統及び制御系統を備えている。
【0023】
高電圧系統は、電源としての蓄電池11と、該電源を入切するための電源リレー12と、該電源電圧を昇圧し高電圧を発生する高電圧発生部13と、各ノズル8に装備されるとともに保護抵抗Ra,Rbを介して高電圧発生部13に接続された電極14とを備えている。保護抵抗Ra,Rbは、漏電電流を制限するためのものであり、高電圧発生部13の出力側の母線と、各電極14に対して高電圧を供給するように並列分岐した各配線とにそれぞれ挿入されている。
【0024】
制御系統は、マイクロコンピュータを備えた制御部21を備え、該制御部21には、手持ち式ノズル部6に供給される薬液2の流量を測定する流量計22と、液滴の非噴出時に電極14への電力供給を強制的に行わせるための強制スイッチ23と、高電圧発生部13の高電圧出力側における漏電を検出する漏電センサ24と、静電噴霧装置1に関する情報を表示する表示部25と、アラーム音を出力するアラーム部26とが接続されている。
【0025】
この制御部21における高電圧系制御処理を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。この高電圧系制御処理は高電圧系統における高電圧の出力を制御するものであり、電源リレー12がOFFの状態(高電圧停止中)の場合(ステップS31)はステップS32〜S39を実行し、電源リレー12がONの状態(高電圧出力中)の場合(ステップS40)はステップS41〜S42を実行するようになっている。
【0026】
高電圧停止中において、薬液2の流量が所定量より多くなっていることを流量計22により検出すると(ステップS32)、図1に二点鎖線で示すように電源リレー12をONにして高電圧発生部13に高電圧を出力させ、高電圧出力中にする(ステップS33)。また、高電圧出力中において、強制スイッチ23がONされると(ステップS34)、アラーム部26にアラームを出力させ(ステップS35)、電源リレー12をONにして高電圧発生部13に高電圧を出力させ(ステップS36)、一定時間(例えば約60秒)の経過を待って(ステップS37)、電源リレー12をOFFにして高電圧発生部13に高電圧の出力を停止させ(ステップS38)、アラーム部26にアラームを停止させる(ステップS39)。
【0027】
高電圧停止中において、薬液2の流量が所定量より多くないことを流量計22により検出すると(ステップS41)、電源リレー12をOFFにして高電圧発生部13に高電圧の出力を停止させ、高電圧停止中にする(ステップS42)。
【0028】
アラーム部26によるアラーム音の出力態様としては、特に限定されないが、経過時間が所定時間に近づくにつれて、アラーム音の出力間隔が短くなるようにしたり、アラーム音の音程を高くしたりすることを例示する。アラームの態様としては、アラーム音に代えて、又はアラーム音とともに、表示部25にアラーム表示を出力するようにしてもよい。このときのアラーム表示としては、特に限定されないが、経過時間が所定時間に近づくにつれて、アラーム表示の点滅間隔が短くなるようにしたり、アラーム表示内容が変化するようにすることを例示する。
【0029】
また、制御部21は、前記高電圧系制御処理のほかに、例えば、適宜次の処理を実行するようになっている。
(1)流量計22から出力される信号を入力し、表示部25に流量計22の作動状態を表示させたり、薬液2の流量や積算量を表示させたりする。
(2)漏電センサ24から出力される信号を入力し、表示部25に漏電発生の有無を表示させる。なお、本例では、コスト低減のため、漏電センサ24を高電圧発生部13の出力側に1台設けるようにしている。従って、本例の構成では、漏電の有無を検出したり、漏電電流の大きさから漏電が発生している電極14の数を検出したりすることはできるが、具体的にどの電極14で漏電が発生しているかを検出することはできない。
【0030】
次に、本静電噴霧装置1の使用方法について説明する。本静電噴霧装置1を使用中に、表示部25に漏電発生を示す表示がなされたことを受けて、作業者が手持ち式ノズル部6への薬液2の供給を停止させると、高電圧系制御処理は、高電圧の出力を停止させる。次いで、図3に示すように、作業者が強制スイッチ23をONすると、高電圧系制御処理は、所定時間、高電圧を出力するので、作業者は、その時間内に、検電器27で、各電極14の電位をチェックする。このとき、漏電が発生していない電極14よりも漏電が発生している電極14の方が相対的に低電位になっているので、漏電が発生している電極14を特定することができる。作業者は、アラーム音が停止したことにより、所定時間の経過による高電圧出力の停止を認識し、漏電発生が特定された電極14をチェックし、漏電の原因を解消することができる。これにより、速やかに散布作業を再開することができる。
【0031】
検電器27としては、特に限定されないが、本例では、一端側に接触手段としての金属ピン27aが取り付けられ、他端側に接続手段としての鰐口クリップ27bが取り付けられたテストリードを使用することを例示する。図3に二点差線で示すように、この検電器27の鰐口クリップ27bを高電圧発生部13のアース側に接続し、金属ピン27aの先端を各電極14に近づけると、漏電が発生していない電極14は高電位になっているため、電極14と金属ピン27aとの間に放電が起こり、放電光や放電音が生じ、漏電が発生している電極14では放電光や放電音が生じない。これにより漏電が発生している電極14を特定することができる。
【0032】
以上のように構成された本例の静電噴霧装置1によれば、強制スイッチ23を備えているので、前記噴出を停止させた状態で、電極14への電力供給を強制的に行わせることにより、該電極14における漏電発生の有無を検査することができる。
【0033】
また、前記強制的な電力供給を、一定時間経過後に自動的に停止させるタイマー手段(ステップS36〜S38)を備えているので、該電力供給の停止し忘れによる感電事故の発生を防止することができる。
【0034】
また、前記強制的な電力供給中に、聴覚的表示によるアラームを出力するアラーム部26を備えているので、作業者に対し、前記強制的な電力供給中であることの注意を促すことができる。
【0035】
また、アラーム部26は、時間の経過とともに出力態様が変化するように構成されているので、作業者に前記時間の経過を認識させることができる。特に、本例では、前記タイマー手段を設けているので、出力態様の変化により作業者に前記一定時間の終了が近づいていることを認識させることができる。
【0036】
また、本例の静電噴霧装置1は、電極14がそれぞれ装備されたノズル8を複数備え、個々の電極14に対して高電圧を供給するように並列分岐した配線に、漏電電流を制限するための保護抵抗Rbがそれぞれ挿入されているので、個々の電極14において漏電が発生しても、保護抵抗Rbにより、漏電電流が抑制されるとともに、漏電が発生していない電極14への影響を低減することができる。このため、漏電発生時における前記液滴の非噴出時に、強制スイッチ23により電極14への電力供給を強制的に行わせると、漏電が発生している電極14は、漏電が発生していない電極14よりも電位が低くなるので、漏電が発生している電極14を容易に特定できる。
【0037】
また、漏電センサ24を個々の電極14に対してそれぞれ設けるのではなく、分岐前の配線である母線に設けるようにしているので、コストを低減できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)強制的な高電圧出力を解除する手段を設けること。例えば、強制スイッチ23をONしたことによる強制的な高電圧出力中において、再度強制スイッチ23をONすると、高電圧を停止するように構成すること。
(2)ノズル8及び電極14を複数ごとにグループ化し、該グループごとに対して並列分岐した配線に漏電電流を制限するための保護抵抗Rbを挿入するように構成すること。
(3)高電圧発生部13における保護抵抗Raを省くこと。
(4)静電噴霧装置1を、例えば液肥の散布用に構成すること。
(5)ノズル部6を手持ち式ではなく、機体に支持させるように構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る静電噴霧装置の系統図である。
【図2】同静電噴霧装置の高電圧系制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】同静電噴霧装置において、電極に対し強制的に電力供給を行っている状態を示す系統図である。
【図4】従来の静電付与式散布機を示す系統図である。
【符号の説明】
【0040】
1 静電噴霧装置
2 薬液
3 収容タンク
4 ポンプ
5 ホース
6 ノズル部
7 噴管
8 ノズル
11 蓄電池
12 電源リレー
13 高電圧発生部
14 電極
21 制御部
22 流量計
23 強制スイッチ
23 再度強制スイッチ
24 漏電センサ
25 表示部
26 アラーム部
27 テストリード
27a 金属ピン
27b 鰐口クリップ
Ra,Rb 保護抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからの液滴の噴出に連動して、該液滴を帯電させる電極への電力供給を自動制御するように構成された静電噴霧装置であって、
前記液滴の非噴出時に前記電極への電力供給を強制的に行わせる強制スイッチを備えた静電噴霧装置。
【請求項2】
前記強制的な電力供給を、一定時間経過後に自動的に停止させるタイマー手段を備えた請求項1記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
前記強制的な電力供給中に、聴覚的表示、視覚的表示若しくは触覚的表示、又はこれらの組み合わせによるアラームを出力するアラーム部を備えた請求項1又は2記載の静電噴霧装置。
【請求項4】
前記アラーム部は、時間の経過とともに出力態様が変化するように構成された請求項3記載の静電噴霧装置。
【請求項5】
前記電極がそれぞれ装備された前記ノズルを複数備え、
個々又は複数ごとの前記電極に対して高電圧を供給するように並列分岐した配線に、漏電電流を制限するための保護抵抗がそれぞれ挿入された請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電噴霧装置。
【請求項6】
前記分岐前の配線に漏電の発生を検知する漏電センサが接続された請求項5記載の静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190005(P2009−190005A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36212(P2008−36212)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】