説明

静電塗装装置

【課題】作業効率を下げることなく且つ塗装むらなく塗装でき、さらに、スプレーガンが被塗装物と離間した状態における作業者やスプレーガンに対する塗料付着を防止する。
【解決手段】静電塗装装置1は、スプレーガン2と、このスプレーガン内に設けられ直流の高電圧を発生するカスケード3と、このカスケード3流れる電流を検出する電流検出回路14と、出力モード変更装置21とを備え、この出力モード変更装置21は、カスケード3が高電圧である直流電圧Vdcを連続出力モードで出力している状態で検出電流が基準値Ik以下となったときにカスケード3の出力電圧を間欠出力モードに変更し、カスケード3が当該間欠出力モード状態で検出電流が基準値Ik以上となったときにカスケード3の出力電圧を前記連続出力モードに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料の微粒子を負又は正の高電圧に帯電させて噴霧する構成の静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装装置では、スプレーガンに供給された塗料(溶剤塗料、水性塗料などの液体塗料や粉体塗料)は、作業者がトリガを引くことで、圧縮空気により霧化され、微粒子として塗装対象である被塗装物に噴霧される。このとき、霧化された塗料の微粒子(以下、塗料粒子と称する)は、スプレーガン内に設けられた直流高電圧発生部(カスケード)により負又は正の高電圧に帯電され、大地に接地(アース)された被塗装物との間に作用する静電気力によって被塗装物の表面に塗着する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した静電塗装装置では、作業者が前記スプレーガンのトリガを引くことで、高電圧を発生させると共に塗料粒子を霧化し噴射し、そして作業者がスプレーガンを被塗装物に向けることで当該被塗装物に対して静電塗装を行う。
【0005】
ところで、被塗装物をむらなくに塗装するには、スプレーガンから帯電させた塗料粒子を噴射させた状態(トリガを引いた状態)で、当該スプレーガンを、被塗装物を外した一方の位置から被塗装物に近づけて適正距離を保ちつつ該被塗装物に噴射しながらほぼ一定速度で移動させ、そして被塗装物の他方側の離れた位置まで移動させることを順次まんべんなく行うようにしている。
【0006】
しかし、スプレーガンが被塗装物から離れてしまうと、噴霧された帯電塗料粒子の付着先である被塗装物が遠く、浮遊した帯電塗料粒子が僅かに作業者やスプレーガン自体に戻って付着することがあり、その付着塗料が蓄積されると作業者やスプレーガンから当該塗料が液垂れし、被塗装物に塊状となって付着するおそれがあった。
【0007】
ここで、その対策として、作業者がスプレーガンのトリガを、被塗装物の一方側の間際まで近づいた位置で引き操作し、そして被塗装物の他方側から離れる間際で当該引き操作を解除することが考えられるが、少しでもトリガの引き操作(吹き始め)のタイミングが遅かったり、又、トリガの解除操作(吹き終わり)が早かったりすると、塗装むらが発生しやすく、塗装がきれいにできない。又、作業者にそのような熟練度を要するトリガ操作を強いるのは、作業効率の低下を招く。従って、被塗装物から余裕をもって離れた一方部位からトリガを引き、スプレーガンを被塗装物対応部位を通過させ、被塗装物から余裕をもって離れた他方部位まで至ったところでトリガを離すといった操作形態は作業効率及び塗装むら防止の点から変更できないものである。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業効率を下げることなく且つ塗装むらなく塗装でき、さらに、作業者やスプレーガンに対する塗料粒子の付着を防止できる静電塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次の点に着目してなされている。静電塗装装置においては、高電圧に帯電した塗料粒子は、上述したようにスプレーガンが被塗装物から遠ざかると、作業者やスプレーガン自身への付着現象がみられるものであるが、スプレーガンの離間時に直流高電圧発生部の出力電圧を通常の高電圧より低い電圧にすれば、作業者やスプレーガンへの塗料粒子付着を少なくできることが判った。この場合、塗料粒子の噴霧は停止しないで済むから、噴霧開始時での塗装むらもないことが判った。ここで、前記直流高電圧発生部は前記被塗装物に対するスプレーガンの離間距離が遠くなると当該直流高電圧発生部自体の電流が減少することが判っており、この現象を利用してスプレーガンと被塗装物との離間距離を検出することが可能である。
【0010】
上述のことを考慮し、本発明者は、参考図として示す図6のように、前記直流高電圧発生部の出力電圧が静電塗装に適した通常の高電圧(特性線A)とした状態では、当該直流高電圧発生部に流れる電流(出力電流)が第1の基準値以下となったことでスプレーガンが被塗装物から離れた(例えば300mm以上離れた)ことを検出し、直流高電圧発生部の出力電圧を低電圧とする(特性線B参照)。そして、スプレーガンが被塗装物に再接近することを検出するために、第2の基準値と特性線Bで示す検出電流とを比較し、この検出電流が第2の基準値以上となることでスプレーガンが被塗装物に再接近したことを検知して、直流高電圧発生部の出力電圧を高電圧に戻す制御を考えている。
【0011】
ところが、上述した制御の場合、図6から分かるように、直流高電圧発生部の出力電圧が低電圧である場合には、当該直流高電圧発生部に流れる電流そのものが小さく、そして電流自体の変化率も小さい。このため、前記第2の基準値をどのような値に設定するか決め難い。
【0012】
この点も考慮した請求項1の発明は、塗料を微粒子化してノズルから噴霧するスプレーガンと、このスプレーガン内に設けられ直流の高電圧を発生する直流電圧発生部とを備え、前記スプレーガンにより噴霧される塗料粒子を、前記直流高電圧発生部により負又は正の高電圧に帯電させ、被塗装物に対して吸着させて静電塗装を行う静電塗装装置において、前記直流高電圧発生部に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記スプレーガンと前記被塗装物との間の離間距離が所定距離以上離れたことを前記高電圧下で判定するための基準値を有し、前記直流電圧発生部の電圧出力モードを、前記高電圧を連続して出力する連続出力モードと、前記高電圧を所定時間幅で所定時間ごとに出力する間欠出力モードとに切替え可能で、前記直流高電圧発生部が前記連続出力モード状態であるときに前記電流検出手段による検出電流が前記基準値未満となったときに前記間欠出力モードに切り替え、当該間欠出力モード状態であるときに前記検出電流が前記基準値以上となったときに前記連続出力モードとする出力モード変更手段と、を備えたところに特徴を有する。
【0013】
この請求項1の発明においては、前記直流高電圧発生部が前記連続出力モード状態であるときに前記電流検出手段による検出電流が前記基準値未満となったときに間欠出力モードに切り替える。つまり、被塗装物に対するスプレーガンの離間距離が遠くなったことを、検出電流が基準値未満となったことで検出し、これに基づいて直流高電圧発生部の出力電圧を間欠出力モードに切り替える。この場合、高電圧の出力が停止されている時間帯では塗料粒子が帯電していないから作業者やスプレーガンへの塗料粒子の戻り付着は起きない。そして、高電圧が出力されている時間帯では、塗料粒子が帯電しているが、その時間を短くしておくことで塗料粒子の作業者やスプレーガンへの戻り付着を極力防止できる。そして、短い時間ではあるが高電圧を出力することで、この高電圧下で当該直流高電圧発生部に流れる電流を検出できるから、電流が大きい検出電流を取得できる。従って、スプレーガンの被塗装物への再接近を判断するための基準値も前記高電圧の連続出力モードの場合と同じ基準値を用いることができ、基準値の設定が容易であり、しかもスプレーガンと被塗装物との距離検出精度も安定する。
【0014】
さらに、自動的に直流高電圧発生部の出力モードの切替えを行なうので、作業者がスプレーガンと被塗装物との距離が離れたタイミングで逐一電圧切替操作を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。
【0015】
請求項2の発明は、前記出力モード変更手段が、直流電圧をスイッチング素子によりスイッチングすることにより交流電圧を発生して前記直流高電圧発生部に入力する交流電源装置を備え、この交流電源装置を連続稼動させることにより前記直流高電圧発生部を前記連続出力モードとし、該交流電源装置を所定時間幅で所定時間ごとに稼動(断続稼動)することにより前記直流高電圧発生部を前記間欠出力モードとするところに特徴を有する。
【0016】
これによれば、当該交流電源装置の連続稼動、及び断続稼動により出力交流電圧を連続出力、及び断続出力することで、直流高電圧発生部の出力モードを連続出力モード、間欠出力モードに容易に変更できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業効率を下げることなく且つ塗装むらなく塗装でき、さらに、スプレーガンが被塗装物と離間した状態における作業者やスプレーガンに対する塗料粒子の付着を防止でき、しかも、スプレーガンと被塗装物との距離の検出精度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態による静電塗装装置の機能的ブロック図
【図2】制御部の制御内容を示すフローチャート
【図3】スプレーガンと被塗装物の離間距離とカスケードに流れる電流との関係を示す図
【図4】カスケードの出力モードの変化の一例を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図6】参考例を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る静電塗装装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。静電塗装装置1は、スプレーガン2、このスプレーガン2に内蔵されたカスケード(本発明でいう、直流高電圧発生部に相当)3、このカスケード3に接続ケーブル4を介して接続された交流電源装置5を有する制御装置6を備えて構成されている。接続ケーブル4は、交流電圧Vacを供給するための電源ケーブル4a、4bと、電流検出回路(本発明でいう、電流検出手段)14のための電流検出ケーブル4cを備えて構成されている。
【0020】
スプレーガン2は、例えば電気的絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂により本体が形成されている。このスプレーガン2は、一般的な静電塗装に用いられる構成を備えており、ノズル2a、及びこのズル2aの近傍に設けられた霧化エア孔及びパターン形成エア孔など(いずれも図示せず)を備えている。
【0021】
さらにスプレーガン2は、内部に塗料バルブ15及びエアバルブ16を備えており、これら塗料バルブ15及びエアバルブ16は、このスプレーガン2が備えたトリガ2b(図1に概略的に示す)が引き操作されることにより開放される。前記塗料バルブ15は前記塗料ポンプ17を介して塗料タンク18に接続されている。又前記エアバルブ16は、コンプレッサ19に接続されており、該コンプレッサ19とエアバルブ16との間のエア配管経路にはエアフローチャートスイッチ20が介在されている。
【0022】
このエアフローチャートスイッチ20は、制御装置6に設けられており、前記エア配管経路にエアが流れることにより動作し、エア流通検出信号つまりトリガ操作検出信号を後述の制御部13へ与えるようになっている。
【0023】
そして前記コンプレッサ19から供給された圧縮空気を霧化エア孔及びパターン形成エア孔から吐出することにより、塗料タンク18から供給された塗料を霧化するとともに、霧化した塗料粒子を塗装に適した形状(塗装パターン)に形成して噴霧する。
【0024】
前記カスケード3は、昇圧トランス3a、倍電圧整流回路3b、出力抵抗3cを備えており、前記交流電源装置5から供給される交流電圧Vacに比例した大きさの直流電圧Vdcを発生させる。すなわち、昇圧トランス3aに入力された交流電圧Vacは、昇圧された後に例えばコッククロフト−ウォルトン型の倍電圧整流回路3bにより昇圧及び整流され、60kV〜100kV程度の高電圧に変換される。この倍電圧整流回路3bは、回路内のダイオード(図示せず)の向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正(プラス)、又は負(マイナス)のいずれかにすることができる。本実施形態の場合、倍電圧整流回路3bの出力電圧の極性は接地電位に対して負になるように構成されており、スプレーガン2のズル2aの近傍に設けられているピン状の電極7には、出力抵抗3cを介して負極性の直流電圧Vdc(通常の静電塗装に適した高電圧)が供給される。
【0025】
交流電源装置5は、発振回路8、直流電源9、2個のスイッチング素子10、11、出力トランス12を備えており、この交流電源装置5と制御部13とで出力モード変更手段たる出力モード変更装置21を構成している。
【0026】
前記直流電源9の出力は、出力トランス12の1次側において、スイッチング素子10、11を介して電源グランドに接続されている。具体的には、直流電源9の出力端子は、出力トランス12とスイッチング素子10とにより接地電位に対して正側に、出力トランス12とスイッチング素子11とにより接地電位に対して負側になるように接続されている。
【0027】
スイッチング素子10、11は、例えばMOSFETなどの半導体スイッチにより構成されており、通電により導通状態が制御可能である。スイッチング素子10、11は、通電されると導通状態(オン)になり、通電が停止されると非導通状態(オフ)になり、発振回路8及び制御部13によりオン/オフが制御されている。制御部13は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備えたマイクロコンピュータにより構成されており、スイッチング素子10、11の通電時間(オン時間)に応じた指令信号を発振回路8に対して出力する。発振回路8は、この指令信号に基づいてパルス状の駆動信号を生成し、それぞれのスイッチング素子10、11へ出力する。
【0028】
スイッチング素子10、11は、発振回路8から出力される駆動信号に連動してその通電状態が変化し、直流電源9の出力を正側或いは負側に切替える。駆動信号は、スイッチング素子10、11のオン状態が互いに重なることがないタイミングで出力され、この駆動信号のパルス幅に応じてスイッチング素子10、11が例えば数十kHzで交互にオン/オフを繰り返すことにより、出力トランス12の2次側に、直流電源9の出力電圧に応じた低電圧の交流電圧Vacが発生する。
【0029】
この交流電圧Vacは、接続ケーブル4を介してカスケード3に供給される。
カスケード3は、交流電圧Vacの大きさに応じた高電圧である直流電圧Vdc(例えば60kV)を発生させる。この直流電圧Vdcは、出力抵抗を介して、電極7に供給される。
【0030】
前記交流電源装置5は制御部13からの駆動指令信号を受けて駆動(稼動)されるものであり、その駆動パターンには連続駆動モードと間欠駆動モードとがあり、当該交流電源装置5の連続駆動モードでカスケード3は前記直流電圧Vdcを連続出力し(連続出力モード、図4に符号Mrで示す)し、交流電源装置5の間欠駆動モードでカスケード3は前記直流電圧Vdcを間欠的に出力する(間欠出力モード、図4に符号Mpで示す)。この間欠出力モードは、所定時間幅b(例えば3〜5m秒)で直流電圧Vdc出力、所定時間a(例えば100m秒)ごとに出力停止を繰り返すモードである。なお、図4には、便宜上、間欠出力モードにおける所定時間幅bの所定時間aに対する比率をスケールアップして示している。
【0031】
電流検出回路14は、接続ケーブル4(電流検出ケーブル4c)を介してカスケード3に流れる電流(出力電流)の大きさを検出して前記制御部13に与えており、この制御部13は、検出電流が、予め設定した過剰電流判定基準値を超えたときに、異常有りと判断し、例えば発振回路8の動作を停止させて交流電源装置5の出力を停止するなどの処理を実行する。
【0032】
さらに、この制御部13は、前記過剰電流判定基準値の他に、基準値Ik(図3参照)を設定している。前記基準値Ikは、前記スプレーガン2と前記被塗装物22との間の離間距離が所定距離(例えば300mm)以上離れたことを前記高電圧である直流電圧Vdc下で判定するための電流判定用基準値である。
【0033】
さて、上記した構成の静電塗装装置1において、制御部13は、静電塗装のための制御プログラムを保有しており、その制御プログラムに従う制御内容について図2を参照して説明する。塗料ポンプ17及びコンプレッサ19をオンした上で、作業者がトリガ2bを引き操作すると、エアフロースイッチ20がオンする。
【0034】
制御部13は、ステップS1でエアフロースイッチ20のオンを判断すると、ステップS2で交流電源装置5に対する駆動モードを間欠駆動モードとすることにより、カスケード3の直流電圧Vdcの初期出力モードを間欠出力モードとする。
【0035】
ここで、トリガ2bの引き操作で、カスケード3の初期出力モードを、上述したように間欠出力モードとする理由は、作業者は最初はスプレーガン2を被塗装物22から離れた部位に位置させてトリガ2bを引く(塗料の噴霧を開始するが、未だ被塗装物22への噴霧には至らない)から、カスケード3は出力停止でも良いが、トリガ2bの被塗装物22に対する距離が所定距離になったことを検出することは必要であるから、電流検出回路14から検出電流を取得するに必要な時間である所定時間幅(3〜5m秒)は直流電圧Vdcを所定時間ごと出力する、ところにある。この場合、カスケード3は直流電圧Vdcを時間幅3〜5m秒で100m秒ごとに出力する程度であるから、塗料粒子が作業者やスプレーガン2に付着することを極力防止できる。なお、上記所定時間幅3〜5m秒は、カスケード3が直流電圧Vdcを立ち上げて出力するのに十分な時間である。
【0036】
そして、ステップS3では、電流検出回路14からの検出電流が前記基準値Ik以上となったか(作業者がスプレーガン2を被塗装物22に対して離間距離が300mm以下に近づけたか)否かを判断し、基準値Ik以上となったと判断されれば、ステップS4に移行して、交流電源装置5の出力電圧を連続駆動モードとすることによりカスケード3を直流電圧Vdc連続出力モードとする。
【0037】
この連続出力モードにより、電極7において塗装に十分なコロナ放電が発生し、スプレーガン2から噴霧された塗料粒子が帯電される。被塗装物22は、接地(アース)されて陽極となり、交流電源装置5などと同電位(アース電位)になっている。静電塗装装置1は、通常は、このような塗料粒子を帯電させることによりアースされた被塗装物22に電気的な吸着力により塗着させる静電塗装を実行する。
【0038】
そして、前記ステップS4に続くステップS5では、電流検出回路14による検出電流が基準値Ik未満か(作業者がスプレーガン2を被塗装物22に対して300mm超離したか)否かを判断する。検出電流が基準値Ik未満であれば、ステップS6に移行して間欠出力モードとする。この場合、前述したようにカスケード3の出力電圧は極めて短い時間幅での出力となるから、塗料粒子が作業者やスプレーガン2に付着することを極力防止できる。
【0039】
なお、トリガ2bの引き操作を解除すると、上述の制御動作は中止され、エアフロースイッチ20オン待機状態となる。
上述した実施形態においては、カスケード3が連続出力モード状態であるときに電流検出回路14による検出電流が基準値Ik未満となったときに間欠出力モードに切り替える。つまり、被塗装物22に対するスプレーガン2の離間距離が遠くなったことを、検出電流が基準値Ik以下となったことで検出し、これに基づいてカスケード3の出力電圧を間欠出力モードに切り替える。この場合、高電圧である直流電圧Vdcの出力が停止されている時間帯では塗料粒子が帯電していないから作業者やスプレーガン2への塗料粒子の戻り付着は起きない。そして、直流電圧Vdcが出力されている時間帯では、塗料粒子が帯電しているが、その時間を短くしているから塗料粒子の作業者やスプレーガン2への戻り付着を極力防止できる。そして、短い時間ではあるが直流電圧Vdcを出力することで、この直流電圧Vdc下で当該カスケード3に流れる電流を検出できるから、電流が大きい検出電流を取得できる。従って、スプレーガン2の被塗装物22への再接近を判断するための基準値Ikも前記直流電圧Vdcの連続出力モードの場合と同じ基準値Ikを用いることができ、基準値の設定が容易であり、しかもスプレーガン2と被塗装物22との距離検出精度も安定する。
【0040】
さらに、自動的にカスケード3の出力モードの切替えを行なうので、作業者がスプレーガン2と被塗装物22との距離が離れたタイミングで逐一電圧切替操作を行う必要がなく、作業効率が低下することがない。
【0041】
又、本実施形態によれば、出力モード変更装置21が、直流電圧Vdcをスイッチング素子10、11によりスイッチングすることにより交流電圧Vacを発生してカスケード3に入力する交流電源装置5を備え、この交流電源装置5を連続稼動させることによりカスケード3を連続出力モードとし、該交流電源装置5を所定時間幅で所定時間ごとに稼動(断続稼動)することによりカスケード3を間欠出力モードとするから、当該交流電源装置5の連続稼動、及び断続稼動により出力交流電圧Vacを連続出力、及び断続出力することで、カスケード3の電圧出力モードを連続出力モード、間欠出力モードに容易に変更できる。
【0042】
このように本実施形態によれば、作業効率を下げることなく且つ塗装むらなく塗装でき、さらに、スプレーガン2が被塗装物22と離間した状態における作業者やスプレーガン2に対する塗料粒子の付着を防止でき、しかも、スプレーガン2と被塗装物22との距離の検出精度が低下することがない。
【0043】
図5は本発明の第2の実施形態を示しており、この第2の実施形態では、カスケード3の初期の出力モードを連続出力モードとした点(ステップT1)が第1の実施形態と異なる。この第2の実施形態では、塗装開始前で帯電立ち上がりを試すことができ、その後第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、塗料粒子は正に帯電させても良く、この場合被塗装物22は陰極とすると良い。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は静電塗装装置、2はスプレーガン、2bはトリガ、3はカスケード(直流高電圧発生部)、5は交流電源装置、9は直流電源、10、11はスイッチング素子、14は電流検出回路(電流検出手段)、21は出力モード変更装置(出力モード変更手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を微粒子化してノズルから噴霧するスプレーガンと、このスプレーガン内に設けられ直流の高電圧を発生する直流電圧発生部とを備え、前記スプレーガンにより噴霧される塗料を、前記直流高電圧発生部により負又は正の高電圧に帯電させ、被塗装物に対して吸着させて静電塗装を行う静電塗装装置において、
前記直流高電圧発生部に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記スプレーガンと前記被塗装物との間の離間距離が所定距離以上離れたことを前記高電圧下で判定するための基準値を有し、前記直流電圧発生部の電圧出力モードを、前記高電圧を連続して出力する連続出力モードと、前記高電圧を所定時間幅で所定時間ごとに出力する間欠出力モードとに切替え可能で、前記直流高電圧発生部が前記連続出力モード状態であるときに前記電流検出手段による検出電流が前記基準値未満となったときに前記間欠出力モードに切り替え、当該間欠出力モード状態であるときに前記検出電流が前記基準値以上となったときに前記連続出力モードとする出力モード変更手段と、
を備えたことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
前記出力モード変更手段は、直流電圧をスイッチング素子によりスイッチングすることにより交流電圧を発生して前記直流高電圧発生部に入力する交流電源装置を備え、この交流電源装置を連続稼動させることにより前記直流高電圧発生部を前記連続出力モードとし、該交流電源装置を所定時間幅で所定時間ごとに稼動することにより前記直流高電圧発生部を前記間欠出力モードとすることを特徴とする請求項1に記載の静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161755(P2012−161755A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24887(P2011−24887)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】