説明

静電容量型センサ

【課題】誘電層がへたりにくく、広い荷重領域に亘って荷重を検出可能な静電容量型センサを提供することを課題とする。
【解決手段】静電容量型センサ1は、表側編地30と、裏側編地31と、表側編地30と裏側編地31とを表裏方向に連結すると共に可撓性を有する連結糸32と、を有する立体編物製の誘電層3と、表側編地30の表側に配置される表側電極1X〜8Xと、裏側編地31の裏側に配置される裏側電極1Y〜8Yと、表側または裏側から見て表側電極1X〜8Xと裏側電極1Y〜8Yとが重なる部分に配置される検出部A11〜A88と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の座席の着座センサなどに用いられる、シート状の静電容量型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型センサは、誘電層と、一対の電極と、を備えている。一対の電極は、誘電層の表裏両側に配置されている。静電容量をC、真空の誘電率をε0、比誘電率をεr、電極間距離をd、電極面積をsとすると、以下の式(1)が成立する。
C=ε0×εr×s/d・・・・・式(1)
【0003】
静電容量型センサに荷重が加わると、誘電層が圧縮される。このため、電極間距離dが小さくなる。電極間距離dが小さくなると、静電容量Cが大きくなる。静電容量型センサは、当該静電容量Cの変化から、荷重を検出している。特許文献1の段落[0061]には、静電容量型センサの誘電層の材料として、シリコンゴム、スポンジ、布、不織布が列挙されている。ただし、各々の材料を用いた場合の誘電層の特性については、開示されていない。一般的には、スポンジの一種であるウレタンフォームが、誘電層の材料として用いられる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−209384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の座席には、エアバッグ展開の可否やシートベルト着用の有無を判定するために、着座センサが配置されている。例えば、北米のエアバッグシステムにおいては、座席上に着座者が居ない場合は、エアバッグの展開を防止する必要がある。また、座席上の「物体」が人でない場合(例えばチャイルドシートや鞄などの場合)も、同様にエアバッグの展開を防止する必要がある。
【0006】
一方、座席上に着座者が居る場合は、所定の衝撃(加速度、減速度など)が加わった場合、エアバッグを展開する必要がある。この場合、着座者の体格により、エアバッグ展開のタイミングを調整する必要がある。また、日本では、助手席に一定以上の重量物が搭載されている場合に、乗員の存在を予想し、助手席のシートベルトが非着用の際、警告を行っている。このような各種判断のために、着座センサにより検出される、座面の面圧分布、総荷重などの検出信号が、利用されている。
【0007】
仮に、ウレタンフォーム製の誘電層を有する静電容量型センサが、着座センサとして用いられる場合を考えると、ウレタンフォームには「へたり」が発生しやすい。すなわち、ウレタンフォームに繰り返し圧縮荷重を加えると、荷重除去後に永久歪みが残り、厚さの寸法変化が誘起されやすい。
【0008】
このため、静電容量型センサにウレタンフォーム製の誘電層を用いると、無荷重状態における誘電層の表裏方向厚さ、つまり式(1)の電極間距離dが、経時的に小さくなってしまう。したがって、定期的に無荷重状態における静電容量値を補正する必要がある。いわゆる0点補正をする必要がある。
【0009】
また、着座者の体格により、着座者の体重は様々である。このため、着座センサには、広い荷重領域に亘って、荷重を検出可能であることが要求される。特に、広い荷重領域に亘って、荷重の変化に対する検出信号の変化(Δ検出信号/Δ荷重)が線形性を有する方が好ましい。
【0010】
本発明の静電容量型センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、誘電層がへたりにくく、広い荷重領域に亘って荷重を検出可能な静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明の静電容量型センサは、表側編地と、裏側編地と、該表側編地と該裏側編地とを表裏方向に連結すると共に可撓性を有する連結糸と、を有する立体編物製の誘電層と、該表側編地の表側に配置される表側電極と、該裏側編地の裏側に配置される裏側電極と、表側または裏側から見て該表側電極と該裏側電極とが重なる部分に配置される検出部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の静電容量型センサによると、誘電層が立体編物製である。表側編地と裏側編地とは、可撓性を有する連結糸により連結されている。このため、ウレタンフォーム製の誘電層と比較して、立体編物製の誘電層は、へたりにくい。したがって、0点補正の頻度が少なくなる。
【0013】
また、本発明の静電容量型センサは立体編物製の誘電層を備えているため、広い荷重領域に亘って、荷重の変化に対する静電容量の変化(Δ静電容量/Δ荷重)が線形性を有している。このため、広い荷重領域に亘って荷重を検出することができる。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、着座センサとして用いられる構成とする方がよい。本構成によると、着座者の体格によらず、面圧分布を検出することができる。また、誘電層は立体編物製である。このため、通気性が高い。
【0015】
(1−2)好ましくは、上記(1−1)の構成において、前記誘電層は、座席のクッション材を兼ねている構成とする方がよい。本構成によると、着座センサの誘電層と、座席のクッション材と、を別々に配置する場合と比較して、部品点数が少なくなる。このため、座席の厚さを薄くすることができる。
【0016】
一例として、車両の座席に本構成の着座センサを配置する場合、座席の厚さが薄くなるため、その分、頭上空間を広くすることができる。また、車高を低くしながら、従来と同等の車室空間を確保することができる。
【0017】
(1−3)好ましくは、上記(1)の構成において、前記表側編地および前記裏側編地のうち、少なくとも一方は、メッシュ編地である構成とする方がよい。本構成によると、誘電層の伸縮性が高くなる。また、誘電層の通気性が高くなる。
【0018】
(1−4)好ましくは、上記(1)の構成において、前記誘電層の表裏方向厚さは、1mm以上20mm以下である構成とする方がよい。表裏方向厚さを1mm以上としたのは、1mm未満の場合、厚さのばらつきに基づく静電容量のばらつきへの影響が大きいからである。すなわち、静電容量は厚さに逆比例するので、厚さのばらつきが同程度なら、厚さが薄くなるほど静電容量のばらつき範囲が広がる。例えば、誘電層の厚さが1mm±0.1mmの場合、誘電層1mmにおける静電容量に比較して、誘電層の厚さばらつきに基づき、その静電容量は1.11倍(=1/0.9)〜0.91倍(=1/1.1)の変動幅を有する。一方、誘電層の厚さが4mm±0.1mmの場合には、誘電層4mmにおける静電容量に比較して、誘電層の厚さばらつきに基づき、その静電容量は1.03倍(=4/3.9)〜0.98倍(=4/4.1)の変動幅を有する。すなわち、誘電層厚さが薄くなるほど、厚さのばらつきに基づく無歪みでの静電容量のばらつきが拡大すると共に、圧縮力印加時の静電容量の変化挙動が、本来の検量線から外れやすくなるためである。また、誘電層の厚さが薄くなると、圧縮力が印加された際に誘電層の“つぶれしろ“が少ないために、ストローク感が乏しくなり、圧縮方向の柔軟さを体感しにくくなるためである。
【0019】
表裏方向厚さを20mm以下としたのは、20mm超過の場合、誘電層の厚さばらつきに基づく静電容量のばらつき範囲が小さくなるものの、その静電容量の絶対値が小さくなるために、静電容量の計測誤差の影響を受けやすくなるからである。例えば、誘電層の厚さが1mmにおける静電容量と誘電層の厚さが20mmにおける静電容量比は、1(=1/1)対0.05(=1/20)、すなわち、静電容量が20分の1になり、計測誤差の影響が相対的に大きくなる。さらに、上記の誘電層がそれぞれ、0.5mm圧縮変形をうけた場合、その静電容量は、2(=1/0.5)対0.051(=1/19.5)である。誘電層の厚さが1mmのケースでは静電容量は2倍(=2/1)に増加するが、誘電層の厚さが20mmのケースでは静電容量は1.03倍(=0.051/0.05)の増加にとどまる。すなわち、誘電層の厚さが大きいと、僅かな圧縮歪みに対する静電容量の変化が鈍感になり、S/N比(静電容量変化の大きさと計測誤差ノイズとの比)が小さく、結果として、計測精度が悪くなる。さらに、このS/N比の改善を目的に、静電容量変化の絶対値を大きくするため、電極面積を大きくすることも有効だが、これは静電容量型センサのサイズに対する制約を増やすと共に、微小領域での静電容量変化の計測に対応できない、即ち、静電容量型センサの計測可能な空間分解能を制約することを意味するからである。同様の理由から、より好ましくは、誘電層の表裏方向厚さは、2mm以上5mm以下とする方がよい。
【0020】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記表側電極、前記裏側電極は、各々、帯状を呈すると共に複数配置され、複数の該表側電極と複数の該裏側電極とは、表側または裏側から見て互いに交差する方向に延在する構成とする方がよい。
【0021】
本構成によると、検出部が、表側電極と裏側電極との交差部分を利用して、配置されている。このため、検出部毎に表側電極、裏側電極を配置する場合と比較して、表側電極、裏側電極の配置数が少なくなる。
【0022】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記表側電極、前記裏側電極は、各々、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を有する構成とする方がよい。
【0023】
本構成によると、表側電極、裏側電極が、誘電層と共に伸縮することができる。したがって、誘電層の伸縮を、表側電極、裏側電極が規制するおそれが小さい。また、静電容量型センサ全体の伸縮性がより大きくなる。
【0024】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記連結糸は、モノフィラメントからなる構成とする方がよい。本構成によると、連結糸の剛性が高くなる。このため、荷重が大きい場合であっても、荷重を検出することができる。
【0025】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記連結糸は、ポリアミド66繊維製またはポリトリメチレンテレフタレート繊維製である構成とする方がよい。
【0026】
本構成によると、広い荷重領域に亘って、荷重の変化に対する静電容量の変化(Δ静電容量/Δ荷重)が、線形性を有している。このため、広い荷重領域に亘って荷重を検出することができる。
【0027】
特に、本構成の一部と、上記(4)の構成と、を組み合わせる場合、すなわち、連結糸をポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント製とする場合、誘電層の表裏方向(厚さ方向)、面展開方向(縦方向、横方向)の寸法安定性が良くなる。また、誘電層にシワが発生しにくくなる。また、誘電層がへたりにくくなる。
【0028】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記連結糸の繊度は、15デシテックス以上400デシテックス以下である構成とする方がよい。繊度を15デシテックス以上としたのは、15デシテックス未満の場合、連結糸が座屈しやすくなるからである。また、検出精度が低下するからである。また、耐久性が低下するからである。繊度を400デシテックス以下としたのは、400デシテックス超過の場合、荷重が小さい場合に、荷重を検出しにくくなるからである。
【0029】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記連結糸の繊維密度は、1cmあたり、0.00084cm以上0.10036cm以下である構成とする方がよい。
【0030】
以下に、繊維密度の計算方法を示す。コース方向(横方向)に連続したループの数をN(個/インチ)、ウェール方向(縦方向)に連続したループの数をM(個/インチ)とする。また、一個のループから連結糸は通常二本出ている。また、1インチ=2.54cmである。よって、誘電層1cmあたりの連結糸の本数P(本)は、以下の式(2)から算出される。
P=(N×M×2)/(2.54×2.54)・・・・・式(2)
繊維の繊度をT(デシテックス)、繊維の比重をU(g/cm)とする。また、デシテックスとは、繊維の10000m(=10mm)あたりの質量(g)である。また、1(g/cm)=1×10−3(g/mm)である。よって、連結糸を形成する繊維の面積S(mm)は、以下の式(3)から算出される。
S=T/(10×10−3×U)・・・・・式(3)
よって、1cmあたりの繊維密度ρは、1mm=10−2cmなので、以下の式(4)から算出される。
ρ=P×S×10−2・・・・・式(4)
繊維密度の下限値=0.00084cmは、旭化成商事株式会社製のフュージョン(登録商標)のうち、最も目の粗い生地に最も細い繊維を使用した場合を想定したものである。この場合、N=28(個/インチ)、M=8.9(個/インチ)、T=15(デシテックス)、U=1.38(g/cm)となる。また、繊維密度を0.00084cm以上としたのは、0.00084cm未満の場合、誘電層が圧縮される際に、潰れ方にばらつきが出やすくなるからである。特に、荷重が加わる方向に、ばらつきが出やすくなるからである。ばらつきが出やすいと、検出精度が低下してしまう。
【0031】
繊維密度の上限値=0.10036cmは、旭化成商事株式会社製のフュージョン(登録商標)のうち、最も目の密な生地に最も太い繊維を使用した場合を想定したものである。この場合、N=35(個/インチ)、M=22.2(個/インチ)、T=400(デシテックス)、U=0.96(g/cm)となる。また、繊維密度を0.10036cm以下としたのは、0.10036cm超過の場合、荷重が小さい場合に、荷重を検出しにくくなるからである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、誘電層がへたりにくく、広い荷重領域に亘って荷重を検出可能な静電容量型センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の静電容量型センサの一実施形態である静電容量型センサが配置された車両の座席の透過斜視図である。
【図2】同座席の座面部付近の前後方向断面図である。
【図3】同静電容量型センサの斜視図である。
【図4】同静電容量型センサの透過上面図である。
【図5】図4のV−V方向断面図である。
【図6】同静電容量型センサの誘電層の斜視図である。
【図7】同誘電層の前面図である。
【図8】同誘電層の右側面図である。
【図9】同誘電層の表側編地の開口部の模式図である。
【図10】同静電容量型センサの、荷重印加時における、右側から見た断面図である。
【図11】同静電容量型センサの製造方法の誘電層作製工程の模式図である。
【図12】試験装置の右側面図である。
【図13】実施例1−1、2−1、3−1、比較例1の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係を示すグラフである。
【図14】実施例1−1、1−2、1−3の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係を示すグラフである。
【図15】実施例2−1、2−2、2−3の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本実施形態の静電容量型センサの実施の形態について説明する。
【0035】
[静電容量型センサの配置および構成]
まず、静電容量型センサの配置について説明する。図1に、本実施形態の静電容量型センサが配置された車両の座席の透過斜視図を示す。図2に、同座席の座面部付近の前後方向断面図を示す。図1、図2に示すように、座席9は、座面部90と背もたれ部91とを備えている。座面部90は、クッション材900と表皮901とを備えている。静電容量型センサ1は、正方形シート状を呈している。静電容量型センサ1は、クッション材900と表皮901との間に介装されている。
【0036】
次に、静電容量型センサ1の構成について説明する。図において、上側は本発明の「表側」に、下側は本発明の「裏側」に、それぞれ対応する。図3に、本実施形態の静電容量型センサの斜視図を示す。図4に、同静電容量型センサの透過上面図を示す。図5に、図4のV−V方向断面図を示す。図3においては、表側基材2を透過して示す。図4においては、検出部A11〜A88にハッチングを施して示す。
【0037】
図3〜図5に示すように、静電容量型センサ1は、表側基材2と、誘電層3と、裏側基材4と、表側電極1X〜8Xと、表側配線1x〜8xと、裏側電極1Y〜8Yと、裏側配線1y〜8yと、検出部A11〜A88と、表側コネクタ5と、裏側コネクタ6と、制御部7と、を備えている。
【0038】
なお、検出部A11〜A88の符号「A○△」中、「○」は、表側電極1X〜8Xに対応している。「△」は、裏側電極1Y〜8Yに対応している。静電容量型センサ1の切断時伸びは、300%である。
【0039】
(誘電層3)
誘電層3は、正方形シート状を呈している。図6に、本実施形態の静電容量型センサの誘電層の斜視図を示す。図7に、同誘電層の前面図を示す。図8に、同誘電層の右側面図を示す。図9に、同誘電層の表側編地の開口部の模式図を示す。図6〜図9に示すように、誘電層3は、表側編地30と、裏側編地31と、連結糸32と、を備えている。誘電層3の表裏方向厚さは、2.45mmである。
【0040】
表側編地30は、ポリエチレンテレフタレート繊維製であって、多数の開口部300を有するメッシュ編地である。開口部300は、菱形を呈している。開口部300のコース方向(編地の幅方向)幅L100は、1.4mmである。開口部300のウェール方向(編地の巻取り長手方向)幅L200は、2.7mmである。コース方向に隣り合う開口部300間の間隔L300は、1.3mmである。
【0041】
裏側編地31は、ポリエチレンテレフタレート繊維製であって、多数の開口部を有するメッシュ編地である。裏側編地31は、表側編地30の下側に配置されている。裏側編地31の開口部のコース方向(編地の幅方向)幅、ウェール方向(編地の巻取り長手方向)幅、コース方向に隣り合う開口部間の間隔は、表側編地30同様である。
【0042】
連結糸32は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント製である。連結糸32の繊維径(直径)は0.076mm、繊度は60デシテックスである。誘電層3の1cmあたりの連結糸32の繊維密度は、0.0069cmである。連結糸32は、表側編地30と裏側編地31とを連結している。連結糸32は、多数の壁部320を形成している。壁部320は、左側または右側から見て柱状を呈している。また、壁部320は、前側または後側から見て、「X字」が左右方向に連なるクロス構造を呈している。
【0043】
(表側基材2、表側電極1X〜8X、表側配線1x〜8x)
図3〜図5に戻って、表側基材2は、誘電層3の上側に配置されている。表側基材2(品番:SW950D クレハエラストマー株式会社製)は、シリコーン製であって正方形シート状を呈している。表側基材2の左縁には耳部が形成されている。表側電極1X〜8Xは、表側基材2の下面に、合計8本配置されている。表側電極1X〜8Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。表側電極1X〜8Xは、各々、帯状を呈している。表側電極1X〜8Xは、各々、左右方向に延在している。表側電極1X〜8Xは、前後方向に、所定間隔毎に離間して、互いに平行になるように、配置されている。
【0044】
表側配線1x〜8xは、表側基材2の左縁の耳部の下面に、合計8本配置されている。表側配線1x〜8xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。表側配線1x〜8xは、各々、線状を呈している。表側コネクタ5は、表側基材2の左縁の耳部の後端に、配置されている。表側配線1x〜8xは、各々、表側電極1X〜8Xの左端と、表側コネクタ5と、を接続している。
【0045】
(裏側基材4、裏側電極1Y〜8Y、裏側配線1y〜8y)
裏側基材4は、誘電層3の下側に配置されている。裏側基材4(品番:SW950D クレハエラストマー株式会社製)は、シリコーン製であって正方形シート状を呈している。裏側基材4の前縁には耳部が形成されている。裏側電極1Y〜8Yは、裏側基材4の上面に、合計8本配置されている。裏側電極1Y〜8Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。裏側電極1Y〜8Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極1Y〜8Yは、各々、前後方向に延在している。裏側電極1Y〜8Yは、左右方向に、所定間隔毎に離間して、互いに平行になるように、配置されている。
【0046】
裏側配線1y〜8yは、裏側基材4の前縁の耳部の上面に、合計8本配置されている。裏側配線1y〜8yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。裏側配線1y〜8yは、各々、線状を呈している。裏側コネクタ6は、裏側基材4の前縁の耳部の左端に、配置されている。裏側配線1y〜8yは、各々、裏側電極1Y〜8Yの前端と、裏側コネクタ6と、を接続している。
【0047】
(検出部A11〜A88)
検出部A11〜A88は、図4にハッチングで示すように、表側電極1X〜8Xと、裏側電極1Y〜8Yと、が上側または下側から見て、交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A11〜A88は、各々、表側電極1X〜8Xの一部と、裏側電極1Y〜8Yの一部と、誘電層3の一部と、を備えている。検出部A11〜A88は、合計64個(=8個×8個)配置されている。検出部A11〜A88は、静電容量型センサ1の略全面に亘って配置されている。
【0048】
(制御部7)
制御部7は、電源回路71と、CPU(Central Processing Unit)72と、RAM(Random Access Memory)73と、ROM(Read Only Memory)74と、駆動回路75と、を備えている。
【0049】
電源回路71は、検出部A11〜A88に、正弦波状の交流電圧を印加する。交流電圧は、検出部A11〜A88に、走査的に順番に印加される。ROM74には、予め、検出部A11〜A88における静電容量と荷重(面圧)との対応を示すマップなどが、格納されている。RAM73には、表側コネクタ5、裏側コネクタ6から入力されるインピーダンス、位相などが、一時的に格納される。
【0050】
CPU72は、RAM73に格納されたインピーダンス、位相を基に、検出部A11〜A88の静電容量を抽出する。そして、静電容量から、静電容量型センサ1における面圧分布を算出する。
【0051】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサの動きについて簡単に説明する。図10に、本実施形態の静電容量型センサの、荷重印加時における、右側から見た断面図を示す。なお、図10は、図5に対応している。
【0052】
図10に示すように、荷重Fが加わると、表側基材2、表側電極6Xが下側に没入するように湾曲する。このため、誘電層3の表側編地30も、下側に没入するように湾曲する。表側編地30が湾曲すると、連結糸32により形成されている壁部320は、後側あるいは前側(荷重印加方向に対して交差する方向)に、突出するように変形する。したがって、表側電極6Xと、裏側電極8Yと、の電極間距離が小さくなる。よって、前出の式(1)に示すように、検出部A68の静電容量Cが大きくなる。当該静電容量Cから、検出部A68の面圧が算出される。また、複数の検出部A11〜A88の面圧から、面圧分布が算出される。
【0053】
[静電容量型センサの製造方法]
次に、本実施形態の静電容量型センサの製造方法について説明する。静電容量型センサの製造方法は、誘電層作製工程と、塗料調製工程と、塗料印刷工程と、組立工程と、を有している。
【0054】
(誘電層作製工程)
図11に、本実施形態の静電容量型センサの製造方法の誘電層作製工程の模式図を示す。本工程においては、まず、ダブルラッセル編機を用いて、立体編物33を作製する。立体編物33の作製には、6枚筬(L1〜L6)を装備した22ゲージ、釜間3.4mmのダブルラッセル編機を用いる。
【0055】
表側編地30を形成する筬(L1、L2)からは、56デシテックス/18フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、供給する。連結糸32用の筬(L3、L4)からは、60デシテックスのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを、供給する。裏側編地31を形成する筬(L5、L6)からは、56デシテックス/18フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、供給する。これらの糸は、L1、L3、L5の筬に1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6の筬に1アウト1インの配列で、それぞれ供給する。
【0056】
ダブルラッセル編機により、下記編組織で、機上コース23.3コース/2.54cmの密度で生機を編成する。得られた生機を70℃で精練後、機上幅に対して1.21倍の幅出し率(=L20(=215cm)/L10(=177.5cm))で160℃×2分の乾熱ヒートセットを行う。このようにして、立体編物33を作製する。作製された立体編物33を正方形状に切り取ることにより、誘電層3が作製される。
【0057】
{編組織}
L1:2022/2444/4644/4222/
L2:4644/4222/2022/2444/
L3:2020/6464/810810/4646/
L4:810810/4646/2020/6464/
L5:2220/2224/4446/4442/
L6:4446/4442/2220/2224/
【0058】
(塗料調製工程)
本工程においては、電極塗料を以下の手順で調製する。まず、アクリルゴムポリマー(商品名:ニポール(登録商標)AR51 日本ゼオン株式会社製)100質量部、加硫助剤であるステアリン酸(商品名:ルナック(登録商標)S30 花王株式会社製)1質量部、加硫促進剤であるジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名:ノクセラー(登録商標)PZ 大内新興化学工業株式会社製)2.5質量部、加硫促進剤であるジメチルジチオカルバミン酸第二鉄(商品名:ノクセラー(登録商標)TTFE 大内新興化学工業株式会社製)0.5質量部を、ロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製する。
【0059】
次に、調製したエラストマー組成物を、メチルエチルケトン(MEK)1500質量部に溶解させる。それから、この溶液に、導電性フィラーとして、ケッチェンブラック(平均粒子径約40nm 品番:EC600JD ライオン株式会社製)22.86質量部を添加する。そして、固形分濃度約7.8質量%のMEK溶液を得る。
【0060】
続いて、ケッチェンブラックの分散性を向上させるために、得られたMEK溶液にミル処理を施す。それから、ミル処理後のMEK溶液に、印刷用溶剤であるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート686.7質量部を、添加する。その後、印刷用溶剤を添加したMEK溶液を、大気と接しやすい広口容器に入れ、時々攪拌しながら室温にて一日静置する。そして、低沸点のMEKを蒸発させる。このようにして、電極塗料を得る。なお、印刷用溶剤の沸点は200℃以上である。このため、印刷用溶剤の揮発は無視できる。
【0061】
また、配線塗料を以下の手順で調製する。まず、アクリルゴムポリマー(商品名:ニポール(登録商標)AR51 日本ゼオン株式会社製)100質量部、フレーク状の銀粒子(平均粒径11μm 品番:FA−D−4 DOWAエレクトロニクス株式会社製)150質量部、フレーク状の銀粒子(平均粒径1.1μm 品番:FA−STG−11 DOWAエレクトロニクス株式会社製)100質量部、フレーク状の銀粒子(平均粒径5μm 商品名:ナノメルトAg 福田金属箔粉工業株式会社製)300質量部、加硫剤である安息香酸アンモニウム(商品名:バルノック(登録商標)AB−S 大内新興化学工業株式会社製)0.8質量部を、それぞれ秤量する。
【0062】
次に、これらの原料を、三本ロールを用いて、印刷用溶剤であるエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)280質量部中に、均一に分散、溶解させる。このようにして、固形分濃度約70質量%の高粘度の配線塗料を得る。
【0063】
(塗料印刷工程)
本工程においては、まず、スクリーン印刷機を用いて、配線塗料を、所定のパターンで表側基材2の下面に印刷する。次に、塗料印刷後の表側基材2を、約150℃の乾燥炉内に約20分間静置して、塗膜を硬化させる。続いて、電極塗料を、所定のパターンで表側基材2の下面に印刷する。それから、塗料印刷後の表側基材2を、約150℃の乾燥炉内に約20分間静置して、塗膜を硬化させる。このようにして、表側基材2の下面に、表側配線1x〜8x、表側電極1X〜8Xを配置する。また、同様の手法により、裏側基材4の上面に、裏側配線1y〜8y、裏側電極1Y〜8Yを配置する。表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yの印刷厚さ(上下方向厚さ)は、約15μmである。表側配線1x〜8x、裏側配線1y〜8yの印刷厚さは、約15μmである。
【0064】
(組立工程)
本工程においては、表側配線1x〜8x、表側電極1X〜8X配置済みの表側基材2と、裏側配線1y〜8y、裏側電極1Y〜8Y配置済みの裏側基材4と、で上下方向から誘電層3を挟み込む。そして、表側基材2の外縁部と、誘電層3の外縁部と、を接着する。並びに、裏側基材4の外縁部と、誘電層3の外縁部と、を接着する。このようにして、本実施形態の静電容量型センサ1が作製される。
【0065】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサの作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層3が立体編物33製である。表側編地30と裏側編地31とは、可撓性を有する連結糸32により連結されている。このため、ウレタンフォーム製の誘電層と比較して、立体編物33製の誘電層3は、へたりにくい。したがって、0点補正の頻度が少なくなる。
【0066】
また、本実施形態の静電容量型センサ1は、着座センサとして用いられている。このため、着座者の体格によらず、面圧分布を検出することができる。また、誘電層3は立体編物33製である。このため、通気性が高い。また、表側編地30および裏側編地31は、共にメッシュ編地である。このため、誘電層3の伸縮性が高くなる。また、誘電層3の通気性が高くなる。
【0067】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、検出部A11〜A88が、表側電極1X〜8Xと裏側電極1Y〜8Yとの交差部分を利用して、配置されている。このため、検出部A11〜A88毎に表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yを配置する場合と比較して、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yの配置数が少なくなる。
【0068】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yは、誘電層3と共に伸縮することができる。したがって、誘電層3の伸縮を、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yが規制するおそれが小さい。また、静電容量型センサ1全体の伸縮性がより大きくなる。
【0069】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側配線1x〜8x、裏側配線1y〜8yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。このため、表側配線1x〜8x、裏側配線1y〜8yは、誘電層3と共に伸縮することができる。したがって、誘電層3の伸縮を、表側配線1x〜8x、裏側配線1y〜8yが規制するおそれが小さい。また、静電容量型センサ1全体の伸縮性がより大きくなる。
【0070】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層3の連結糸32が、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント製である。このため、連結糸32の剛性が高い。したがって、荷重が大きい場合であっても、荷重を検出することができる。また、広い荷重領域に亘って、荷重の変化に対する静電容量の変化(Δ静電容量/Δ荷重)が、線形性を有している。したがって、広い荷重領域に亘って荷重を検出することができる。また、誘電層3の表裏方向(上下方向)、水平方向(前後方向、左右方向)の寸法安定性が良くなる。また、誘電層3にシワが発生しにくくなる。また、誘電層3がへたりにくくなる。
【0071】
また、立体編物製の誘電層3は、着座者の体重により弾性的に変形可能である。このため、本実施形態の静電容量型センサ1は、柔軟であり、伸縮性を有している。したがって、静電容量型センサ1が、着座者の体に沿って変形しやすい。よって、静電容量型センサ1が、表皮901の直下に配置されているにもかかわらず、着座者は、硬さ、ごわつきなどの違和感を感じにくい。また、静電容量型センサ1は、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。このため、面圧分布の検出精度が高い。
【0072】
[その他]
以上、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0073】
上記実施形態においては、立体編物の作製にダブルラッセル編機を用いたが、ダブル丸編機など、二列の針列を有する他の編機を用いてもよい。
【0074】
上記実施形態においては、表側編地30、裏側編地31を共にメッシュ編地としたが、マーギゼット編地などとしてもよい。表側編地30の編組織と、裏側編地31の編組織と、は同じでも異なっていてもよい。
【0075】
上記実施形態においては、表側編地30の開口部300、裏側編地31の開口部を、各々、菱形としたが、開口部300の形状は特に限定しない。例えば、六角形、四角形、円形としてもよい。
【0076】
開口部300の大きさも特に限定しない。例えば、コース方向幅L100を、1.1mm、1.5mmとしてもよい。ウェール方向幅L200を、2.5mm、2.9mmとしてもよい。コース方向に隣り合う開口部間の間隔L300も特に限定しない。
【0077】
コース方向幅L100、ウェール方向幅L200、コース方向に隣り合う開口部間の間隔L300は、幅出し率により調整することができる。幅出し率も特に限定しない。0.901倍(=L20(=160cm)/L10(=177.5cm))、1.054倍(=L20(=187cm)/L10(=177.5cm))としてもよい。ヒートセットの温度、時間も特に限定しない。
【0078】
誘電層3の表裏方向厚さは特に限定しない。好ましくは、1mm以上20mm以下とする方がよい。より好ましくは、2mm以上5mm以下とする方がよい。
【0079】
連結糸32により形成される壁部320の構造は特に限定しない。壁部320は、前側または後側から見て、「三角形」が左右方向に連なるトラス構造を呈していてもよい。クロス構造の、左右方向に隣り合う「X字」間に仕切壁部を有する、筋交構造を呈していてもよい。
【0080】
連結糸32を形成する繊維は特に限定しない。例えば、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維など、任意の合成繊維を用いることができる。
【0081】
表側編地30、裏側編地31を形成する繊維は特に限定しない。例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維など、任意の繊維を用いることができる。
【0082】
連結糸32を形成する繊維、表側編地30、裏側編地31を形成する繊維の断面形状は、特に限定しない。真円形、楕円形、三角形、四角形などの多角形、L型、T型、Y型、W型、四つ葉型、八つ葉型などであってもよい。また、中空繊維を用いてもよい。また、誘電層3として、旭化成商事株式会社製の、市販のフュージョン(登録商標)を用いてもよい。
【0083】
上記実施形態においては、座席9のクッション材900と、誘電層3と、を別々に配置したが、両部材を共用化してもよい。こうすると、部品点数が少なくなる。このため、座席9の座面部90の厚さを薄くすることができる。したがって、車室の頭上空間を広くすることができる。また、車高を低くしながら、従来と同等の車室空間を確保することができる。
【0084】
また、静電容量型センサ1の構成、形状、大きさなどは、特に限定しない。また、静電容量型センサ1から出力される電気量についても、電圧、電気抵抗、静電容量などのいずれであってもよい。検出部A11〜A88に印加される電圧は、交流であっても直流であってもよい。また、電圧の波形は、正弦波状であっても、矩形波状であってもよい。
【0085】
また、表側基材2の下面に、表側電極1X〜8X、表側配線1x〜8xを下側から覆う、表側電極保護層を配置してもよい。同様に、裏側基材4の上面に、裏側電極1Y〜8Y、裏側配線1y〜8yを上側から覆う、裏側電極保護層を配置してもよい。また、表側基材2と誘電層3、裏側基材4と誘電層3は、各々、接着しても、接着しなくてもよい。また、接着する場合、全面を接着しても、一部を接着してもよい。
【0086】
表側基材2、裏側基材4の材質は、特に限定しない。絶縁性を有する樹脂、エラストマーを用いればよい。例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴム、ブチルゴムを用いてもよい。
【0087】
電極(表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Y)、配線(表側配線1x〜8x、裏側配線1y〜8y)に用いられるポリマーの材質は、特に限定しない。ポリマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどのエラストマーであってもよい。また、ポリマーは、ポリエステル、エポキシなどの樹脂であってもよい。こうすると、電極、配線の伸縮性が高くなる。このため、電極、配線と誘電層3とが一体的に屈曲、伸縮しやすい。
【0088】
電極および配線に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、静電容量型センサ1延いては座席9の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、静電容量型センサ1延いては座席9の製造コストを削減することができる。また、電極、配線を、金属材料や、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料などで形成してもよい。
【0089】
また、電極の数、配置場所については、特に限定しない。すなわち、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yの数、幅、長さについては、適宜決定すればよい。例えば、幅が大きいものと小さいものとを混合して、配置してもよい。また、表側電極1X〜8X、裏側電極1Y〜8Yの配置形態を変えることにより、検出部A11〜A88の数、配置を調整すればよい。上記実施形態では、一層の静電容量型センサ1により、面圧分布を検出した。しかし、二層以上の静電容量型センサ1を使用して、面圧分布を検出してもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の静電容量型センサに対して行った、面圧測定試験について説明する。
【0091】
<サンプルの構成>
以下、試験に用いた静電容量型センサ1のサンプルについて説明する。
【0092】
[実施例1−1]
実施例1−1のサンプルは、上記実施形態の静電容量型センサ1である。なお、64個の検出部A11〜A88のうち試験に使用したのは、図4に一点鎖線で囲む、中央の16個の検出部である。
【0093】
[実施例1−2]
実施例1−2のサンプルと実施例1−1のサンプルとの相違点は、幅出し率が1.054倍(=L20(=187cm)/L10(=177.5cm))である点である。また、連結糸32の繊維密度(誘電層3の1cmあたり)が、0.0093cmである点である。
【0094】
[実施例1−3]
実施例1−3のサンプルと実施例1−1のサンプルとの相違点は、幅出し率が0.901倍(=L20(=160cm)/L10(=177.5cm))である点である。また、連結糸32の繊維密度が、0.0097cmである点である。
【0095】
[実施例2−1]
実施例2−1のサンプルと実施例1−1のサンプルとの相違点は、誘電層3の連結糸32が、ポリトリメチレンテレフタレート繊維製ではなく、ポリアミド66繊維製である点である。また、連結糸32の繊維径(直径)が、0.079mmである点である。また、連結糸32の繊維密度が、0.0075cmである点である。また、連結糸32の繊度が、56デシテックスである点である。
【0096】
[実施例2−2]
実施例2−2のサンプルと実施例2−1のサンプルとの相違点は、幅出し率が1.054倍(=L20(=187cm)/L10(=177.5cm))である点である。また、連結糸32の繊維密度が、0.0094cmである点である。
【0097】
[実施例2−3]
実施例2−3のサンプルと実施例2−1のサンプルとの相違点は、幅出し率が0.901倍(=L20(=160cm)/L10(=177.5cm))である点である。また、連結糸32の繊維密度が、0.0101cmである点である。
【0098】
[実施例3−1]
実施例3−1のサンプルと実施例1−1のサンプルとの相違点は、誘電層3の連結糸32が、ポリトリメチレンテレフタレート繊維製ではなく、ポリアミド6繊維製である点である。また、連結糸32の繊維径(直径)が、0.106mmである点である。また、連結糸32の繊維密度が、0.0130cmである点である。また、連結糸32の繊度が、100デシテックスである点である。
【0099】
[比較例1]
比較例1のサンプル(品番:カームフレックス(登録商標)F−9L 株式会社イノアックコーポレーション製)と実施例1−1のサンプルとの相違点は、誘電層3が立体編物製ではなく、ウレタンフォーム製である点である。
【0100】
実施例のサンプルのデータをまとめて表1に示す。
【表1】

【0101】
<試験装置および試験方法>
図12に、試験装置の右側面図を示す。図12に示すように、試験装置8は、上側から下側に向かって、ウエイト80と、荷重伝達片81と、表皮82と、クッション材83と、を備えている。
【0102】
クッション材83(品番:L−4000 サンペルカ(登録商標) 三和化工株式会社製)は、ポリエチレンフォーム製である。クッション材83の上下方向厚さは、20mmである。静電容量型センサ1(実施例1〜3、比較例1)は、クッション材83の上面に配置されている。
【0103】
表皮82は、旭化成商事株式会社製のASMR−3製である。表皮82は、クッション材83、静電容量型センサ1を、上側から覆っている。荷重伝達片81は、木製であって、直方体ブロック状を呈している。荷重伝達片81は、表皮82の上側に配置されている。荷重伝達片81の寸法は、縦100mm×横100mm×上下方向厚さ30mmである。ウエイト80は、金属製であって、直方体ブロック状を呈している。ウエイト80は、荷重伝達片81の上側に配置されている。
【0104】
試験は、ウエイト80の積層数を増やしながら、検出部の静電容量を測定することにより行った。
【0105】
<試験結果>
車両の座席9の着座センサとして用いられる場合、静電容量型センサ1には、面圧2.1kPa〜60.0kPaという、広い面圧領域(以下、「要求領域」と称す。)に亘って、荷重を検出可能であることが要求される。言い換えると、要求領域に亘って、面圧の変化に対する静電容量の変化(Δ静電容量/Δ面圧)が線形性を有することが要求される。なお、汎用される面圧領域(以下、「汎用領域」と称す。)は、面圧2.1kPa〜29kPaである。
【0106】
図13に、実施例1−1、2−1、3−1、比較例1の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係をグラフで示す。図13に示すように、面圧(ウエイト80により加えられる荷重)が大きくなるのに従って、静電容量は徐々に大きくなる。また、要求領域R1に亘って、面圧の変化に対する静電容量の変化(傾き=Δ静電容量/Δ面圧)は略線形性を有している。特に、汎用領域R2においては、線形性の程度が良好になる。実施例1−1、2−1、3−1、比較例1の傾きを比較すると、比較例1が最も大きく、実施例1−1と実施例2−1とが同等であり、実施例3−1が若干小さくなっている。
【0107】
図14に、実施例1−1、1−2、1−3の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係をグラフで示す。図14に示すように、面圧が大きくなるのに従って、静電容量は徐々に大きくなる。また、要求領域R1に亘って、面圧の変化に対する静電容量の変化(傾き=Δ静電容量/Δ面圧)は略線形性を有している。特に、汎用領域R2においては、線形性の程度が良好になる。実施例1−1、1−2、1−3の傾きを比較すると、大きい順に、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3となっている。
【0108】
図15に、実施例2−1、2−2、2−3の、面圧と、単位検出部あたりの静電容量と、の関係をグラフで示す。図15に示すように、面圧が大きくなるのに従って、静電容量は徐々に大きくなる。また、要求領域R1に亘って、面圧の変化に対する静電容量の変化(傾き=Δ静電容量/Δ面圧)は略線形性を有している。特に、汎用領域R2においては、線形性の程度が良好になる。実施例2−1、2−2、2−3の傾きを比較すると、大きい順に、実施例2−1、実施例2−3、実施例2−2となっている。
【符号の説明】
【0109】
1:静電容量型センサ、1X〜8X:表側電極、1Y〜8Y:裏側電極、1x〜8x:表側配線、1y〜8y:裏側配線、2:表側基材、3:誘電層、4:裏側基材、5:表側コネクタ、6:裏側コネクタ、7:制御部、8:試験装置、9:座席。
30:表側編地、31:裏側編地、32:連結糸、33:立体編物、71:電源回路、72:CPU、73:RAM、74:ROM、75:駆動回路、80:ウエイト、81:荷重伝達片、82:表皮、83:クッション材、90:座面部、91:背もたれ部。
300:開口部、320:壁部、900:クッション材、901:表皮。
A11〜A88:検出部、F:荷重、L100:コース方向幅、L200:ウェール方向幅、L300:コース方向に隣り合う開口部間の間隔、R1:要求領域、R2:汎用領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側編地と、裏側編地と、該表側編地と該裏側編地とを表裏方向に連結すると共に可撓性を有する連結糸と、を有する立体編物製の誘電層と、
該表側編地の表側に配置される表側電極と、
該裏側編地の裏側に配置される裏側電極と、
表側または裏側から見て該表側電極と該裏側電極とが重なる部分に配置される検出部と、を備えるシート状の静電容量型センサ。
【請求項2】
前記表側電極、前記裏側電極は、各々、帯状を呈すると共に複数配置され、
複数の該表側電極と複数の該裏側電極とは、表側または裏側から見て互いに交差する方向に延在する請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項3】
前記表側電極、前記裏側電極は、各々、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を有する請求項1または請求項2に記載の静電容量型センサ。
【請求項4】
前記連結糸は、モノフィラメントからなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の静電容量型センサ。
【請求項5】
前記連結糸は、ポリアミド66繊維製またはポリトリメチレンテレフタレート繊維製である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の静電容量型センサ。
【請求項6】
前記連結糸の繊度は、15デシテックス以上400デシテックス以下である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の静電容量型センサ。
【請求項7】
前記連結糸の繊維密度は、1cmあたり、0.00084cm以上0.10036cm以下である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の静電容量型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−73150(P2012−73150A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218920(P2010−218920)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(508250235)旭化成商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】