説明

静電容量式タッチパネル

【課題】動作環境に応じて、検出精度に優れた電圧制御方法を選択可能な静電容量式タッチパネルを提供する。
【解決手段】複数の検出電極の浮遊容量を充放電制御し、検出電極の電位の変化から入力操作体が接近して浮遊容量が増加する検出電極を検出する静電容量式タッチパネルであって、浮遊容量を充電制御若しくは放電制御のいずれでも選択制御可能とし、動作環境に応じて最適な一方の制御方法を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁パネル上に配置される複数の検出電極の浮遊容量を比較し、入力操作体が接近して浮遊容量が増大する検出電極からその検出電極に接近する入力操作を検出する静電容量式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のディスプレーに表示されたアイコンなどを指示入力するポインティングデバイスとして、指などの入力操作体が入力操作面に接近することによる静電容量の変化を利用し、非接触で入力操作位置を検出し、ディスプレーの背面側に配置しても入力操作を検出可能な静電容量式タッチパネルが知られている。
【0003】
従来の静電容量式タッチパネルは、多数のX電極とY電極を絶縁基板の表裏で交差するようにマトリックス状に形成し、指などの入力操作体を接近させた付近で、交差する各X電極とY電極間の静電容量が変化することから、入力操作体による絶縁基板への操作位置を検出していた(特許文献1)。
【0004】
この静電容量式タッチパネル100では、図4に示すように、多数のY電極101に順次、所定のパルス電圧を印加して走査し、各Y電極101にパルス電圧を印加している間に、パルス電圧が印加されたY電極101と交差する各X電極102の電圧を検出する。指などの入力操作体を絶縁基板へ接近させると、入力操作体が接近する位置で交差するX電極102とY電極101間の静電容量が変化することから、制御手段103は、静電容量の変化で電圧が変化したX電極102と、その時にパルス電圧を印加したY電極101の配置位置によって、入力操作体の絶縁基板への操作位置を検出する。
【0005】
特許文献1により開示されている静電容量式タッチパネル100は、指などの入力操作体を静電容量の変化から検出する為に、多数のX電極102とY電極101を絶縁基板上に配置する必要があり、入力操作面が大面積となると、その入力面積の増加に応じて静電容量の変化を検出するX電極とY電極の数が増大し、各電極の交差位置について走査する走査周期が長くなり、短時間で入力操作位置を検出できないという問題がある。
【0006】
更に、パルス電圧を印加する手段を設ける必要があるほか、入力操作面が拡大するにつれて、マトリックス状に配線する多数のX電極102とY電極101を走査する為に、相当する本数に対応するマルチプレクサを用いなければならず、回路構成が複雑、大型化するという問題があった
【0007】
そこで、より簡易な回路構成で検出電極についての浮遊容量の変化を検出する手段として、入力操作位置での未知の静電容量を、静電容量と既知の抵抗値との時定数から検出する容量判別装置が提案されている(特許文献2)。この容量判別装置は、未知の容量である静電容量(浮遊容量)のコンデンサCに対し直列若しくは並列に検出抵抗Rを接続してRC時定数回路を形成し、検出抵抗Rの一側に所定の電圧Vddを加え若しくは一側を接地し、コンデンサCの静電容量cと検出抵抗Rの抵抗値rとで定まる時定数rcに依存して上昇若しくは下降するコンデンサCの電位を、所定の基準電位と比較し、基準電位に達するまでの充電時間若しくは放電時間を比較して静電容量の大きさを判別する。
【0008】
この検出原理を利用すれば、絶縁パネル上に配置した検出電極の浮遊容量(検出電極と接地間の静電容量)は、指などの入力操作体が接近すると増大して充放電時間が長くなるので、検出電極の電位が所定の基準電位となるまでの充放電時間を計時することにより、入力操作を行わない場合の充放電時間と比較して、検出電極に接近する入力操作を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−337773号公報(明細書の項目0017乃至項目0031、図1)
【特許文献2】特開2009−70004号公報(明細書の項目0014乃至項目0020、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献2に示される浮遊容量と既知の抵抗値との時定数から未知の浮遊容量を検出する容量判別装置では、各検出電極毎に基準電位に達するまでの充放電時間が異なるので、充放電時間を計時するカウンター、カウンターメモリ等からなる共通の時間計測回路で同時に全ての検出電極についての浮遊容量を比較することができず、各検出電極毎に時間計測回路を接続するか、共通の時間計測回路を用いる場合には、検出電極毎に充放電時間を異ならせる必要があり、このことが障害となり、浮遊容量との時定数を利用した静電容量式タッチパネルは、普及していなかった。
【0011】
そこで、本願出願人は、複数の検出電極について共通の基準時から基準電位に達した際に二値データが反転する二値信号を、複数の検出電極から同時にパラレルデータとして、複数の検出電極数に相当するビット数のパラレル入力レジスタへ入力し、パラレルデータの各ビットデータが反転するまでの時間から、同時に複数の検出電極の浮遊容量を比較する静電容量式タッチパネルを発明し、特願2009−191948号で特許出願した。
【0012】
しかしながら、この静電容量式タッチパネルであっても、同時に浮遊容量の大きさを検出できる検出電極数は、パラレル入力レジスタの入力ビット数に限られ、これを越える多数の検出電極が配置された静電容量式タッチパネルでは、充電時間若しくは放電時間が重ならないように特定の検出電極群に分けてその浮遊容量を検出する必要があった。
【0013】
浮遊容量との時定数を利用した静電容量式タッチパネルでは、接地電位にある検出電極に抵抗を介して所定の充電電圧Vddを印加する充電制御での検出電極の電位Vcは、検出電極に接続する抵抗の抵抗値をr、検出電極と接地間の浮遊容量をc、充電電圧Vddを印加した基準時からの経過時間をt、自然対数をεとすれば、
Vc=Vdd(1−ε−t/cr)・・・(1)式
で表され、t=5crの過渡期間が経過した際に検出電極の電位Vcは、ほぼ充電電圧Vddに達する(以下、本明細書では、説明の便宜上これを充電電圧Vddに達したという)。
【0014】
また、逆に、充電電圧Vddにある検出電極を抵抗を介して接地電位する放電制御での検出電極の電位Vcは、充電電圧Vddとした基準時からの経過時間をt´とすれば、
Vc=Vddxε−t´/cr・・・(2)式
で表され、t´=5crの過渡期間が経過した際に検出電極の電位Vcは、ほぼ接地電位に達する(以下、本明細書では、説明の便宜上これを接地電位に達したという)。
【0015】
ここで、検出電極の電位Vcと比較する基準電位が充電電圧Vdd近くにあり、基準電位と検出電極の電位Vcを比較する比較回路の分解能が低い場合には、前者の充電制御によれば、過渡期間に近く、経過時間tに対して検出電極の電位Vcの上昇がわずかであるので、基準電位との比較が判別しにくく、経過時間tに対して検出電極の電位Vcの下降が大きい後者の放電制御がより精度よく基準電位と比較できる。逆に、基準電位が接地電位近くであり、基準電位と検出電極の電位Vcを比較する比較回路の分解能が低い場合には、後者の放電制御では、過渡期間に近く、経過時間tに対して検出電極の電位Vcの下降がわずかであるので、基準電位との比較が判別しにくく、充電制御直後の経過時間tに対して検出電極の電位Vcの上昇が大きい前者の充電制御がより精度よく基準電位と比較できる。
【0016】
しかしながら、従来の特許文献2に示される容量判別装置では、いずれか一方の制御のみで検出するので、充電電圧Vddや基準電位をその制御方法に応じて最適に調整しなければならず、また、調整できない固定電位である場合には、浮遊容量の検出精度が低下する問題があった。
【0017】
また、検出電極の浮遊容量は、液晶表示素子などの周囲の回路素子や機器の影響を受けて変動するので、組み立て後の製品評価の段階で、充電制御と放電制御の制御を比較して検出精度に優れた一方の制御とすることが望まれていたが、制御方法を変更することができなかった。
【0018】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、浮遊容量の大きさに依存する充放電時間を同時に計測する時間計測回路を2種類に分けた検出電極群で共用し、より多くの検出電極への入力操作を短時間に比較する静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0019】
また、充電電圧Vddや検出電極の電位Vcと比較する基準電位に応じて、より検出精度が高い電圧制御方法が選択可能な静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0020】
更に、動作環境に応じて、検出精度に優れた電圧制御方法を選択可能な静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、請求項1の静電容量式タッチパネルは、絶縁パネル上に互いに絶縁して配置される複数の検出電極と、各検出電極に同一の回路構成で接続し、各検出電極の浮遊容量の大きさに応じて、所定の基準時から二値データが反転するまでの時間が変化する二値信号を出力する複数の容量−時間変換手段と、二値信号の基準時から二値データが反転するまでの時間から各検出電極の浮遊容量の大きさを比較し、入力操作体が接近する検出電極を検出する入力操作検出手段とを備えた静電容量式タッチパネルであって、各容量−時間変換手段は、検出電極の浮遊容量に直列若しくは並列に接続する抵抗と、前記抵抗の抵抗値と検出電極の浮遊容量とで定まる時定数で、基準時から浮遊容量を充放電し、検出電極の電位を接地電位から所定の充電電位まで引き上げる充電制御と、検出電極の電位を前記充電電位から接地電位まで引き下げる放電制御のいずれかを選択して制御可能な充放電回路と、基準時から検出電極の電位を前記充電電位と接地電位の間に設定した基準電位と比較し、検出電極の電位と基準電位の差が反転した際に二値データが反転する二値信号を出力する比較回路を有し、少なくとも二以上の特定検出電極にそれぞれ接続する特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、同一の充電制御若しくは放電制御で基準時から特定検出電極の電位を引き上げ若しくは引き下げ、入力操作検出手段は、前記特定容量−時間変換の比較回路から出力される二値信号の基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの特定検出電極を検出することを特徴とする。
【0022】
入力操作で入力操作体を接近させた検出電極の浮遊容量は増加し、検出電極に接続する抵抗の抵抗値とで定まる時定数が上昇するので、検出電極の充電制御と放電制御のいずれであっても検出電極の電位が基準電位に達し、二値信号の二値データが反転するまでの時間は、他の検出電極の容量−時間変換手段から出力される二値信号に比較して長くなり、入力操作検出手段は、二値データが反転するまでの時間を比較し、同一の充電制御若しくは放電制御を行った特定検出電極から入力操作体が接近した特定検出電極を検出する。
【0023】
任意数の特定検出電極について、検出電極の充電制御と放電制御のいずれも選択制御可能で、その特定検出電極から入力操作体が接近する特定検出電極を検出できる。
【0024】
請求項2の静電容量式タッチパネルは、絶縁パネルに配線される複数の検出電極を、第1特定検出電極と第2特定検出電極に分け、第1特定検出電極にそれぞれ接続する第1特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、充電制御で第1基準時に接地電位である第1特定検出電極の電位を引き上げるとともに、第2特定検出電極にそれぞれ接続する第2特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、放電制御で第2基準時に充電電位である第2特定検出電極の電位を引き下げ、入力操作検出手段は、二値信号の第1基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの第1特定検出電極を検出し、二値信号の第2基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの第2特定検出電極を検出することを特徴とする。
【0025】
第1特定検出電極は充電制御で、第2特定検出電極は放電制御で、それぞれの特定検出電極から入力操作体が接近した特定検出電極を検出するので、全ての複数の検出電極を充放電制御する1周期内に、二通りの特定検出電極について入力操作体が接近する特定検出電極を検出できる。
【0026】
請求項3の静電容量式タッチパネルは、第1特定検出電極が、絶縁パネルの一方向に沿って配線される複数の検出電極であり、第2特定検出電極が、絶縁パネルの前記一方向と直交する方向に沿って配線される複数の検出電極であることを特徴とする。
【0027】
絶縁パネルの直交する2方向についてそれぞれ入力操作体が接近する検出電極を、充放電制御する1周期内に検出できる。
【0028】
請求項4の静電容量式タッチパネルは、入力操作検出手段のコモン入力を、第1特定容量−時間変換手段の各出力と、第2特定容量−時間変換手段の各出力のいずれかに選択的に接続する切り替えスイッチを備え、切り替えスイッチは、入力操作検出手段のコモン入力を、第1特定容量−時間変換手段の各充放電回路が充電制御を行っている間は、第1特定容量−時間変換手段の各出力に、第2特定容量−時間変換手段の各充放電回路が放電制御を行っている間は、第2特定容量−時間変換手段の各出力に、それぞれ切り替えて接続することを特徴とする。
【0029】
入力操作体が接近する第1特定検出電極と第2特定検出電極を検出する為の二値信号は、互いに充放電制御の異なる期間中に特定容量−時間変換手段から出力されるので、切り替えスイッチで、入力操作手段のコモン入力を、特定検出電極を検出する為の二値信号が出力される特定容量−時間変換手段側に切り替えて接続することにより、二種類の第1特定検出電極と第2特定検出電極の検出に入力操作手段のコモン入力を共用できる。
【0030】
請求項5の静電容量式タッチパネルは、入力操作検出手段が、特定検出電極のうち浮遊容量が最大の特定検出電極の配置位置を、入力操作を行った入力操作位置とする。
【0031】
入力操作を行う入力操作体が最も接近する検出電極の浮遊容量が、他の検出電極の浮遊容量に比べて増大するので、浮遊容量が最大となる検出電極の配置位置を入力操作位置とすることができる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明によれば、充電電圧Vddや検出電極の電位Vcと比較する基準電位や、動作環境に応じて、より検出精度が高い電圧制御方法が選択できる。
【0033】
請求項2の発明によれば、検出電極の電位を充放電制御する1周期内に、二通りの特定検出電極について入力操作体が接近する特定検出電極を検出できる。
【0034】
請求項3の発明よれば、充放電制御する一周期内に、絶縁パネル上の直交する2方向で、入力操作体が接近する特定検出電極を検出でき、短期間に二次元の入力操作位置を検出できる。
【0035】
請求項4の発明によれば、限られた入力ビット数の入力操作検出手段で短時間に多数の検出電極から入力操作体が接近する検出電極を検出できる。
【0036】
請求項5の発明によれば、検出電極に指などの入力操作体を接触させなくても、絶縁パネルへ接近させるだけで、入力操作体が最も接近する検出電極の浮遊容量が他に比べて最大となるので、絶縁パネル上に表示素子を積層させ表示素子の表示を見ながら、非接触で入力操作位置を入力できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1の複数の検出電極3と容量−時間変換回路2を示す回路図である。
【図2】静電容量式タッチパネル1の入力操作位置検出回路(入力操作検出手段)のブロック図である。
【図3】図1のa、b、cの各波形を示す波形図である。
【図4】従来の静電容量式タッチパネル100を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル(以下、タッチパネルという)1を、図1乃至図3を用いて説明する。このタッチパネル1は、図示しない絶縁パネル上に、例えばX方向に数mmの間隔で互いに絶縁して複数のX検出電極3x、3x、3x、3xが、X方向と直交するY方向に同一の数mmの間隔で互いに絶縁して複数のY検出電極3y、3y、3y、3yがそれぞれ配置されている。絶縁パネルに配線されるX検出電極3xとY検出電極3yの数は、後述する同一の充放電制御で入力操作体が接近する検出電極を検出可能な数、すなわち後述の第1レジスタ6の入力ビット数を上限とするが、異なる充放電周期でその出力を分ける場合には、前記入力ビット数の整数倍を上限とすることができる。ここでは、説明の便宜上、第1レジスタ6の入力ビット数を4として、X検出電極3xとY検出電極3yの数をそれぞれ4本とする。
【0039】
各検出電極3x、3yについての浮遊容量Csx、Csyは、その周囲の導電パターン、機器を遮蔽するシールドケース、大地との間に形成される容量の総和で表されるが、他の容量が略一定であるの対して、操作者による入力操作で指等の入力操作体が接近すると増大する。そこで、各検出電極3の浮遊容量Csx、Csyを比較し、他の検出電極3x、3yと比較し、浮遊容量Csx、Csyが最大となる検出電極3x、3yに対して入力操作の入力操作体が接近したものと推定し、入力操作体が接近した検出電極3x、3yを検出する。
【0040】
各検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyを比較するため、図1に示すように、各検出電極3x、3yには、それぞれ浮遊容量Csx、Csyを二値信号の時間幅で表し出力する容量−時間変換回路2が接続されている。
【0041】
各容量−時間変換回路2は、コモン端子を基準充電電圧Vddと接地電位GNDとの間で切り換える充放電スイッチ4と、充放電スイッチ4のコモン端子と検出電極3間に直列に接続され、検出電極3x、3yについての浮遊容量Csx、Csyのコンデンサ(説明上、浮遊容量Csx、Csyのコンデンサを浮遊容量Csx、Csyという)と時定数回路を形成する検出抵抗R1及び検出電極3x、3yの抵抗R2と、非反転入力を検出電極3x、3yに接続し、反転入力を基準電位VSHとしたコンパレータ5とを備えている。基準電位VSHは、基準充電電圧Vddと接地電位GNDの間の所定の電位で、ここではVddの50%の電位に設定され、これにより、充放電スイッチ4が接地電位GNDから基準充電電圧Vdd側に切り換えられると、検出抵抗R1、R2の抵抗値と浮遊容量Csx、Csyから定まる時定数で浮遊容量Csx、Csyが充電され、接地電位GNDから上昇する検出電極3x、3yの電位が基準電位VSHを越えると、コンパレータ5の出力Cx、Cyが反転する。
【0042】
容量−時間変換回路2の検出抵抗R1、R2の抵抗値、コンパレータ5等の回路定数、基準電位VSHの電位は、各容量−時間変換回路2について同一であり、又、各充放電スイッチ4は、コモン端子に同一の第1基準時t0に基準充電電圧Vddが印加され、同一の第2基準時tgに接地電位GNDとなるように、図2に示すマイコン20からの切り換え制御信号aによって同時に切り換え制御される。従って、上述の浮遊容量Csx、Csyが接地電位GNDから基準充電電圧Vddで充電される充電制御中の検出電極3の電位の上昇速度は、検出抵抗R1、R2の抵抗値に浮遊容量Csx、Csyを乗じた時定数で決定されるが、専ら浮遊容量Csx、Csyに依存し、浮遊容量Csx、Csyが大きくなるほど、電圧の上昇が緩やかになり、第1基準時t0からコンパレータ5の出力cが反転するまでの時間も長くなる。同様に、浮遊容量Csx、Csyが基準充電電圧Vddから接地電位GNDまで放電される放電制御中の検出電極3の電位の下降速度も、検出抵抗R1、専ら浮遊容量Csx、Csyに依存し、浮遊容量Csx、Csyが大きくなるほど、電圧の下降が緩やかになり、第2基準時tgからコンパレータ5の出力cが反転するまでの時間も長くなる。一般に、検出電極3についての浮遊容量Csx、Csyは、約10pFであり、指などの入力操作体の接近により変化する浮遊容量Csx、Csyの変化量は、1乃至3pF程度であるので、その変化を出力cが反転するまでの時間から判別するため、各検出抵抗R1、R2の抵抗値を、10MΩとしている。
【0043】
図2に示すように、各容量−時間変換回路2のコンパレータ5の出力Cx1、Cx2、・・、Cy1、Cy2・・は、一対の対応する検出電極3x、3yの出力Cx1とCy1、Cx2とCy2毎に切り替えスイッチ12の切り替え端子に接続している。各切り替えスイッチ12も、マイコン20からの切り換え制御信号aによって同時に切り換え制御され、充電制御中は、検出電極3x側の出力Cxに、放電制御中は、検出電極3y側の出力Cyがコモン端子12cに接続される。
【0044】
各切り替えスイッチ12のコモン端子12cは、4ビットのPIPO(並列入力並列出力形)レジスタである第1レジスタ(T)6の各入力に接続し、各切り替えスイッチ12で選択接続される一方の出力がc1、c2・・として、第1レジスタ(T)6に4ビットのパラレルデータとして並列入力される。
【0045】
パラレルデータの各ビットデータは、各出力c1、c2、c3、c4の2値信号の値に対応し、出力が「H」であるときに「1」、「L」であるときに「0」として記憶される。また、第1レジスタ(T)6の並列出力は、同様に、4ビットのPIPOレジスタである第2レジスタ(T−1)7の並列入力に接続している。第1レジスタ(T)6と第2レジスタ(T−1)7は、マイコン20の共通するシフトクロック端子(SFT)とリセット出力端子(RESET)に接続し、クロック端子(SFT)からシフトクロックが入力される毎に記憶する4ビットのレジスタ値の入出力を行うとともに、リセット出力端子(RESET)からリセット信号が入力されると、記憶している4ビットのレジスタ値をリセットする。すなわち、第1レジスタ(T)6は、シフトクロックが入力された際に4ビットのレジスタ値として記憶した各出力c1、c2、c3、c4の二値データを次にシフトクロックが入力されるまで記憶し、同様に第2レジスタ(T−1)7は、第1レジスタ(T)6から出力される4ビットのレジスタ値を次にシフトクロックが入力されるまで記憶する。また、第1レジスタ(T)6は、後述するレジスタ値比較回路8からトリガー信号が入力されると、そのときに記憶しているレジスタ値をRAM10へ記憶する。
【0046】
第1レジスタ(T)6に出力c1、c2、c3、c4の新たな4ビットのレジスタ値が記憶される毎に、レジスタ値比較回路8において、そのレジスタ値と第2レジスタ(T−1)7に記憶されるレジスタ値とが比較され、少なくとも4ビットのいずれかのビットデータが異なる場合にレジスタ値比較回路8から第1レジスタ(T)6と後述するカンウター11にトリガー信号が出力される。第2レジスタ(T−1)7に記憶されるレジスタ値は、最新のシフトクロックが入力される直前に第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値であるので、トリガー信号は、出力c1、c2、c3、c4の少なくともいずれかの二値データが変化した場合に出力される。
【0047】
マイコン20は、クロック発信回路9からクロック信号を入力し、ここでは50MHzのクロック信号の周波数を分周した周波数の上記シフトクロックによりレジスタ6、7の動作を制御すると共に、後述するタイミングで切り換え制御信号aを各充放電スイッチ4と各切り替えスイッチ12へ出力し、それぞれ切り換え制御する。ここで、入力操作によって出力cの二値データが反転するまでの時間差は、10乃至30μsec程度であるので、シフトクロックの周波数は、その時間差を確実に検出するために、少なくとも1MHz以上の周波数としている。
【0048】
また、マイコン20は、図3の検出周期Tp毎にRAM10に関連づけて記憶されたカウント値とレジスタ値との組合せから、入力操作体が接近する検出電極3を直交するXY方向の検出電極3x、3yについてそれぞれ検出し、その検出電極3x、3yのXY方向の配置位置から2次元で表す入力操作位置を出力する検出処理を実行する。
【0049】
カウンタ11は、クロック発振回路9から出力されるクロック信号の周波数を分周した周波数でカウント値をカウントアップする。カウンター11のカウント値は、第1基準時t0のタイミングでマイコン20から出力されるリセット信号でリセットされ、レジスタ値比較回路8からトリガー信号が入力されると、図2に示すように、その時のカウント値がRAM10に出力される。
【0050】
一時記憶装置であるRAM10は、図2に示すように、レジスタ値比較回路8からトリガー信号が出力される毎に、その時のカンウタ11のカウント値と第1レジスタ(T)6に記憶されているレジスタ値とを関連付けて記憶し、全てのビットデータが「0」となるレジスタ値が入力されるまで、カウント値と関連づけた各組合せを記憶する。RAM10に記憶されたこれらの各組合せのデータは、検出周期Tp毎に次の周期の基準時t0が到来する前にマイコン20からの制御によりクリアされる。
【0051】
以下、このように構成されたタッチパネル1により、入力操作を検出する動作を説明する。マイコン20は、入力操作を検出する動作モードで、図3に示すように、各検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyを充電する充電時間Tcと放電する放電時間Tdに休止時間Trを加えた検出周期Tpで、入力操作の検出を繰り返す。充電時間Tcは、充放電スイッチ4を充電電圧Vdd側へ切り換える第1基準時t0から接地電位GNDへ切り換える第2基準時tgまでの時間であり、入力操作の有無に関わらず、全ての検出電極3の接地電位GNDである電位が充電電圧Vddに達するに充分な経過時間に設定される。浮遊容量Csの最大値は、10pF程度であり、本実施の形態では、10MΩの直列に接続した検出抵抗R1、R2を介して浮遊容量Csx、Csyが充電されるので、検出電極3の電位がほぼ充電電圧Vddに達するまでの過渡期間は、500μsecであり、第2基準時tgまでの充電時間Tcを500μsecとしている。
【0052】
また、放電時間Tdについても、入力操作の有無に関わらず、充電電圧Vddとなっいる全ての検出電極3の電位が、接地電位GNDまで低下するに充分な経過時間に設定され、充電時間Tcと同一の500μsecに設定される。より入力操作の検出時間を短縮するためには、放電時間Tdが経過した時を次の周期の第1基準時t0として、必ずしも検出周期Tpに休止時間Trを設けなくてもよいが、本実施の形態では、1msecの休止時間Trを設けて、検出周期Tpを2msecとしている。マイコン20は、この放電時間Tdから休止時間Trにかけて、RAM10に記憶されたデータから入力操作位置を算出する検出処理を行う。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、多数の容量−時間変換回路2の浮遊容量Csに対して同時に充放電を行うので、容量−時間変換回路2毎に異なる期間に充放電制御を行う必要がなく、充分に長い休止時間Trを設けても、短い検出周期Tpで入力操作を検出できる。従って、マイコン20が入力操作を検出する動作モードであっても、電力消費量が少なく、リモートコントロール送信機や携帯電話機などの外部から電源が得られない携帯機器の入力装置に用いた場合に、長時間バッテリーを交換するとなく使用できる。
【0054】
マイコン20は、第1基準時t0に、リセット出力端子(RESET)からリセット信号を出力し、第1レジスタ(T)6と第2レジスタ(T−1)7のレジスタ値とカウンター11のカウント値をリセットするとともに、RAM10に記憶されているデータをクリアする。ここでは、第1基準時t0での第1レジスタ(T)6のレジスタ値を、RAM10へ記憶させるため、第1レジスタ(T)6と第2レジスタ(T−1)7のリセットしたレジスタ値を全て「0」とするが、検出周期Tpが経過した時点で第1レジスタ(T)6と第2レジスタ(T−1)7の各レジスタ値は、「0」となっているので、必ずしもリセットする必要はない。
【0055】
また、マイコン20は、同一の第1基準時t0に各切り替えスイッチ12と各容量−時間変換回路2の充放電スイッチ4とへ切り換え制御信号aを出力し、切り替え制御する。第1基準時t0に「L」から「H」となる切り換え制御信号aを出力することにより、各容量−時間変換回路2は充電制御モードとなり、各切り替えスイッチ12は、検出電極3x側の出力Cxを、出力c1、c2・・として、第1レジスタ6へパラレル出力する。また、各検出電極3x、3yは、接地電位GNDから充電電圧Vdd側に切り換えられ、検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyを充電電圧Vddで充電する。第1基準時t0まで充放電スイッチ4が接地電位GNDに切り換えられていた各検出電極3x、3yの電位は、基準電位VSH以下の接地電位GNDであるので、基準時t0の各コンパレータ5の出力cx1、cx2、cx3、cx4は、いずれも「L」であり、第1レジスタ(T)6に4ビットの「0000」のパラレルデータが記憶される。
【0056】
レジスタ値比較回路8は、リセット時である第1基準時t0にカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力するものとし、図2に示すように、RAM10は、第1基準時t0を表すカウント値C(t0)と、第1基準時t0に第1レジスタ(T)6に記憶されるレジスタ値「0000」を関連づけて記憶する。
【0057】
直列に接続された抵抗R1と検出電極3x、3yの抵抗R2の抵抗値の和をr、検出電極と接地間の浮遊容量をc、充電電圧Vddを印加した基準時からの経過時間をt、自然対数をεとすれば、この充電制御により、接地電位GNDにある各検出電極3x、3yの電位Vcは、
Vc=Vdd(1−ε−t/cr)・・・(1)式
で上昇し、浮遊容量cが小さいほど急速に上昇する。
【0058】
ここで、入力操作による指などの入力操作体がX方向で検出電極3x2の配置位置に接近したとすると、入力操作体から離れ、入力操作体による影響を受けない検出電極3x4の浮遊容量Csx4が最小であるので、図3に示すように、各検出電極3xについて同一の抵抗値との時定数で上昇する検出電極3x4の電位bx4が最も早い時刻t1で基準電位VSHを越える。その結果、コンパレータ5の出力c4が「L」から「H」に反転し、第1レジスタ(T)6に、最下位ビットが「1」となったパラレルデータ「0001」が記憶される。レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「0000」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、RAM10に、時刻t1を表すカウント値C(t1)と、新たに第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「0001」を関連づけて記憶される。
【0059】
続いて検出電極3x2の両側に配置され、検出電極3x2に接近する入力操作体に対してほぼ等距離に配置された検出電極3x1と検出電極3x3の浮遊容量Csx1、Csx3が浮遊容量Csx4より大きく、検出電極3x1、3x3の電位bx1、bx3が時刻t2で基準電位VSHを越え、コンパレータ5の出力c1、c3が「L」から「H」に反転し、第1レジスタ(T)6にパラレルデータ「1011」が記憶される。レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値の1ビット目と3ビット目が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「0001」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、RAM10に、時刻t2を表すカウント値C(t2)と関連づけて新たに第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「1011」が記憶される。
【0060】
入力操作位置に最も近い検出電極3x2の浮遊容量Csx2は他と比較して最大となるので、図3に示すように、その検出電極3x2の電位bx2は、時刻t3の最後に基準電位VSHを越え、コンパレータ5の出力c2が「L」から「H」に反転する。その結果、第1レジスタ(T)6には、時刻tにパラレルデータ「1111」が記憶され、レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「1011」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、図2に示すように、RAM10に、時刻t3を表すカウント値C(t3)と、第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「1111」が関連づけて記憶される。
【0061】
マイコン20は、この第1基準時t0から充電時間Tcが経過した第2基準時tgに、切り換え制御信号aの出力を「H」から「L」として、各充放電スイッチ4を充電電圧Vdd側から接地電位GNDへ切り換え、放電時間Td中に各浮遊容量Csに蓄積された電荷を放電し、各容量−時間変換回路2を全ての検出電極3の電位を接地電位GNDとする放電制御モードへ移行させる。また、各切り替えスイッチ12は、「H」から「L」の切り換え制御信号aを受けて、検出電極3y側の出力Cyを、出力c1、c2・・として、第1レジスタ6へパラレル出力する。
【0062】
第1基準時t0から過渡期間以上の500μsecが経過した第2基準時tgには、全ての検出電極3x、3yの電位が基準電位VSHを越えているので、検出電極3y側の出力Cyが第1レジスタ(T)6へ出力されても、第1レジスタ(T)6に記憶されるレジスタ値「1111」は、変化しないが、レジスタ値比較回路8は、第2基準時tgにおいてもカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力するものとし、図2に示すように、RAM10は、第2基準時tgを表すカウント値C(tg)と、第2基準時tgに第1レジスタ(T)6に記憶されるレジスタ値「1111」を関連づけて記憶する。
【0063】
充電電圧Vddにある検出電極3x、3yを抵抗R1、R2を介して接地電位する放電制御での検出電極の電位Vcは、電電圧Vddとした第2基準時tgからの経過時間をt´とすれば、
Vc=Vddxε−t´/cr・・・(2)式
で下降し、浮遊容量cが小さいほど急速に下降する。
【0064】
入力操作による指などの入力操作体がY方向で検出電極3y3の配置位置に接近したとすると、入力操作体から離れ、入力操作体による影響を受けない検出電極3y1の浮遊容量Csy1が最小であるので、図3に示すように、各検出電極3yについて同一の抵抗値との時定数で下降する検出電極3y1の電位by1が最も早い時刻t4で基準電位VSHを越えて下回る。その結果、コンパレータ5の出力c1が「H」から「L」に反転し、第1レジスタ(T)6に、最上位ビットが「0」となったパラレルデータ「0111」が記憶される。レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「1111」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、RAM10に、時刻t4を表すカウント値C(t4)と、新たに第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「0111」を関連づけて記憶される。
【0065】
続いて検出電極3y3の両側に配置され、検出電極3y3に接近する入力操作体に対してほぼ等距離に配置された検出電極3y2と検出電極3y4の浮遊容量Csy2、Csy4が浮遊容量Csy1より大きく、検出電極3y2、3y4の電位by2、by4が時刻t5で基準電位VSH未満となり、コンパレータ5の出力c2、c4が「H」から「L」に反転し、第1レジスタ(T)6にパラレルデータ「0010」が記憶される。レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値の2ビット目と4ビット目が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「0111」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、RAM10に、時刻t5を表すカウント値C(t5)と関連づけて新たに第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「0010」が記憶される。
【0066】
入力操作位置に最も近い検出電極3y3の浮遊容量Csy3は他と比較して最大となるので、図3に示すように、その検出電極3y3の電位by3、時刻t6の最後に基準電位VSH未満となり、コンパレータ5の出力c3が「L」から「H」に反転する。その結果、第1レジスタ(T)6には、時刻t6にパラレルデータ「0000」が記憶され、レジスタ値比較回路8は、このレジスタ値が、第2レジスタ(T−1)7に記憶されたレジスタ値「0010」と異なることからカンウター11と第1レジスタ(T)6へトリガー信号を出力し、図2に示すように、RAM10に、時刻t6を表すカウント値C(t6)と、第1レジスタ(T)6に記憶されたレジスタ値「0000」が関連づけて記憶される。
【0067】
第2基準時tgから更に過渡期間以上の500μsecが経過した時点で、全ての検出電極3x、3yの電位は基準電位VSH未満となり、第1レジスタ(T)6に記憶されるレジスタ値「0000」は、次の周期Tpの第1基準時t0が到来する休止時間Trの間、変化しない。マイコン20は、この休止時間Tr中に、RAM10に記憶されている各カウント値C(t)とレジスタ値との組合せを読み出す。カウント値C(t)は、充電を開始した基準時t0からの経過時間を表し、レジスタ値は、その直前の組合せのレジスタ値と比較してビットデータが変化したビットを示している。また、各レジスタ値のビットは、各検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyに対応し浮遊容量Csx、Csyの大きさによって第1基準時t0若しくは第2基準時tgからの経過時間が長くなるので、マイコン20は、RAM10に記憶された各組合せのデータから、検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyの大きさをX側の検出電極3xとY側の検出電極3yに分けてそれぞれ比較できる。
【0068】
図2に示すように、X側の検出電極3xでは、第4ビット(LSB)、第1ビット(MSB)と第3ビット、第2ビットの順に4ビットのビットデータが変化するので、浮遊容量Csxは、Csx4、Csx1とCsx3、Csx2の順に大きくなることが検出される。これにより、マイコン20は、X方向について、浮遊容量Csxが最大の検出電極3x2に入力操作体が接近したものと判定でき、その検出電極3x2の配置位置をX方向では入力操作位置とする。
【0069】
また、Y側の検出電極3yでは、第1ビット(MSB)、第2ビットと第4ビット(LSB)、第3ビットの順に4ビットのビットデータが変化するので、浮遊容量Csyは、Csy1、Csy2とCsy4、Csy3の順に大きくなることが検出される。これにより、マイコン20は、Y方向について、浮遊容量Csyが最大の検出電極3y3に入力操作体が接近したものと判定でき、その検出電極3y3の配置位置をY方向での入力操作位置とする。これにより、マイコン20は、図示しない表示画面上のカーソル移動制御や電子機器の動作を制御する外部制御回路へ検出電極3x2と検出電極3y3の配置位置を、二次元の入力操作位置として出力し、入力操作位置に応じた所定の処理を実行させる。
【0070】
マイコン20は、休止時間Trの間に、入力操作位置を検出した後、次の周期Tpの第1基準時t0前に、RAM10に記憶されているデータをクリアする。
【0071】
尚、入力操作位置の検出は、複数の検出電極3x、3yの浮遊容量Csx、Csyの大きさを比較し、XYの各方向について、複数の浮遊容量Csx、Csyを按分した比から得る検出電極3x、3yの配置位置間の位置を、入力操作位置としてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、絶縁パネルに配置される複数の検出電極を、X側の検出電極3xとY側の検出電極3yに分けて、一方を充電制御、他方を放電制御し、入力操作体が接近する検出電極を検出したが、全ての検出電極について、同一の充電制御若しくは放電制御で制御可能とし、動作環境や基準電圧Vdd、基準電位VSH等の関係で、検出に最適な一方の制御を選択してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、入力操作面上にディスプレーが配置され、非接触の入力操作を検出する静電容量式タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0074】
1 本実施の形態に係る静電容量式タッチパネル
2 容量−時間変換回路(容量−時間変換手段)
3 検出電極
4 充放電スイッチ
12 切り替えスイッチ
20 マイコン(入力操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁パネル上に互いに絶縁して配置される複数の検出電極と、
各検出電極に同一の回路構成で接続し、各検出電極の浮遊容量の大きさに応じて、所定の基準時から二値データが反転するまでの時間が変化する二値信号を出力する複数の容量−時間変換手段と、
二値信号の基準時から二値データが反転するまでの時間から各検出電極の浮遊容量の大きさを比較し、入力操作体が接近する検出電極を検出する入力操作検出手段とを備えた静電容量式タッチパネルであって、
各容量−時間変換手段は、
検出電極の浮遊容量に直列若しくは並列に接続する抵抗と、
前記抵抗の抵抗値と検出電極の浮遊容量とで定まる時定数で、基準時から浮遊容量を充放電し、検出電極の電位を接地電位から所定の充電電位まで引き上げる充電制御と、検出電極の電位を前記充電電位から接地電位まで引き下げる放電制御のいずれかを選択して制御可能な充放電回路と、
基準時から検出電極の電位を前記充電電位と接地電位の間に設定した基準電位と比較し、検出電極の電位と基準電位の差が反転した際に二値データが反転する二値信号を出力する比較回路を有し、
少なくとも二以上の特定検出電極にそれぞれ接続する特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、同一の充電制御若しくは放電制御で基準時から特定検出電極の電位を引き上げ若しくは引き下げ、
入力操作検出手段は、前記特定容量−時間変換の比較回路から出力される二値信号の基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの特定検出電極を検出することを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項2】
絶縁パネルに配線される複数の検出電極を、第1特定検出電極と第2特定検出電極に分け、
第1特定検出電極にそれぞれ接続する第1特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、充電制御で第1基準時に接地電位である第1特定検出電極の電位を引き上げるとともに、第2特定検出電極にそれぞれ接続する第2特定容量−時間変換手段の各充放電回路は、放電制御で第2基準時に充電電位である第2特定検出電極の電位を引き下げ、
入力操作検出手段は、二値信号の第1基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの第1特定検出電極を検出し、二値信号の第2基準時から二値データが反転するまでの時間から、入力操作体が接近するいずれかの第2特定検出電極を検出することを特徴とする請求項1に記載の静電容量式タッチパネル。
【請求項3】
第1特定検出電極が、絶縁パネルの一方向に沿って配線される複数の検出電極であり、第2特定検出電極が、絶縁パネルの前記一方向と直交する方向に沿って配線される複数の検出電極であることを特徴とする請求項2に記載の静電容量式タッチパネル。
【請求項4】
入力操作検出手段のコモン入力を、第1特定容量−時間変換手段の各出力と、第2特定容量−時間変換手段の各出力のいずれかに選択的に接続する切り替えスイッチを備え、
切り替えスイッチは、入力操作検出手段のコモン入力を、第1特定容量−時間変換手段の各充放電回路が充電制御を行っている間は、第1特定容量−時間変換手段の各出力に、第2特定容量−時間変換手段の各充放電回路が放電制御を行っている間は、第2特定容量−時間変換手段の各出力に、それぞれ切り替えて接続することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の静電容量式タッチパネル。
【請求項5】
入力操作検出手段は、特定検出電極のうち浮遊容量が最大の特定検出電極の配置位置を、入力操作を行った入力操作位置とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の静電容量式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−186508(P2011−186508A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47641(P2010−47641)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【特許番号】特許第4727753号(P4727753)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】