説明

静電容量式入力装置

【課題】 検出感度に大きな影響を与えることなく、低コストに構成できる静電容量式入力装置を提供する。
【解決手段】 操作領域に、Y駆動電極11と検出電極12とが平行に形成され、X駆動電極13が、Y駆動電極11と検出電極12に対して絶縁され且つ交差して形成されている。検出電極12が低抵抗である銀を含む導電層で形成され、Y駆動電極11とX駆動電極13がカーボンを含む導電層で形成されている。あるいは、検出電極12の電極本体部12aが銀を含む導電層で形成され、枝電極部12bがカーボンを含む電極層で形成されている。カーボンを含む電極層を使用することでコストダウンができ、しかも、銀を含む導電層を使用することで、検出感度が大幅に影響を受けるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電極と検出電極の間の静電容量の変化によって指の接近を検出する静電容量式入力装置に係り、特に電極層を低コストで形成できる静電容量式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1と特許文献2には、静電容量式の入力装置が開示されている。この入力装置は、互いに平行に配置された複数のX電極と、前記X電極に直交する向きで互いに平行に配置された複数のY電極とが、絶縁層を挟んで対向している。
【0003】
X電極とY電極は、時間分割で交互に駆動電極と検出電極として使用される。X電極とY電極との間に誘電体である絶縁層が介在し両電極間に静電容量が形成されている。駆動電極にパルス状の電圧が間欠的に与えられると、電圧の立ち上がりに同期して検出電極に電流が流れ、その電流量は電極間の静電容量の変動に応じて変化する。
【0004】
ほぼ接地電位に等しい人の指がX電極およびY電極に接近すると、指と電極との間に静電容量が形成されるために、駆動電極と検出電極の間の静電容量が変化し、検出電極に流れる電流量が変化する。この電流の変化を読み取ることで、指が接近している位置をX−Y座標上で知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−54650号公報
【特許文献2】特開2003−271311号公報
【特許文献3】特開平11−204568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の静電容量式入力装置の電極は、特許文献2に記載されている光透過型では、ITOなどの透明な導電層で形成されるが、光を透過しない非透過型では、銀ペーストで形成される。このように、従来は、検出電極に導かれる微弱な電流の変化を検出するために、比抵抗の小さい導電層であって、且つ印刷工程でパターン形成しやすい導電層が選択されて使用される傾向にあった。
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載されているように、最近の静電容量式入力装置は、フィルム基板を使用することで、薄型化を目指すとともに、安価に製造することが要求されている。しかし、ITOや銀ペーストなどの高価な導電層を使用して電極を形成すると、製造コストを低減させるのに限界がある。
【0008】
また特許文献3には、バンプ付電子部品の実装方法に関する発明が開示されているが、静電容量式入力装置等に搭載されるICパッケージ(電子素子)の電極部と接続ランド部または配線部とを簡単に且つ強固に接合する構造が確立していなかった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、電極層の形成コストを低減して安価な静電容量式入力装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は電極層の形成コストを低減し、しかも検出感度が大きく低下するのを防止できる静電容量式入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、指で操作される操作領域に、電圧が印加される駆動電極と、前記駆動電極と距離を開けて対向し前記駆動電極との間の静電容量の変化を検出する検出電極とが設けられた静電容量式入力装置において、
前記駆動電極と前記検出電極の少なくとも一部がカーボンを含む導電層で形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の静電容量式入力装置は、電極の少なくとも一部をカーボンを含む導電層で形成しているため、従来に比べて電極層の形成コストを下げることができる。またカーボンを含む電極層は印刷工程で形成できるため、電極の配列パターンを比較的自由に設定しやすい。
【0013】
本発明は、前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX駆動電極およびY駆動電極と、前記X駆動電極およびY駆動電極に距離を開けて対向する前記検出電極とが設けられており、
前記X駆動電極と前記Y駆動電極および前記検出電極の全てがカーボンを含む導電層で形成されているものである。
【0014】
または、本発明は、前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX電極とY電極とが設けられ、前記X電極と前記Y電極とが、前記駆動電極と前記検出電極として交互に使用され、
前記X電極と前記Y電極の双方がカーボンを含む導電層で形成されているものである。
【0015】
上記のように、X駆動電極とY駆動電極および検出電極が設けられているタイプの入力装置であっても、あるいは、X電極とY電極のみを有し、X電極とY電極が駆動電極と検出電極として交互に使用されるタイプの入力装置であっても、電極層の少なくとも一部をカーボンを含む導電層で形成することで製造コストを低減できる。
【0016】
または、本発明は、前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX駆動電極およびY駆動電極と、前記X駆動電極およびY駆動電極に距離を開けて対向する前記検出電極とが設けられており、
前記X駆動電極と前記Y駆動電極がカーボンを含む導電層で形成され、前記検出電極がカーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されているものが好ましい。
【0017】
上記のように、電圧を印加するX駆動電極とY駆動電極をカーボンを含む導電層で形成し、微弱な電流を誘導する検出電極を比較的比抵抗の小さい導電層で形成することで、全体としてコストダウンでき、且つ検出感度を高く維持できる。
【0018】
または、本発明は、前記駆動電極と前記検出電極の少なくとも一方が、電極本体部と、前記電極本体部から延び出ている複数の枝電極部とを有しており、
前記枝電極部がカーボンを含む導電層で形成され、前記電極本体部がカーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されているものが好ましい。
【0019】
上記構成では、枝電極部を設けることで電極間の結合容量のばらつきを補正できる。しかも枝電極部は短いため、この枝電極部のみをカーボンを含む導電層で形成しても大幅な感度の低下を招くことがない。
【0020】
あるいは、本発明は、それぞれの前記駆動電極およびそれぞれの前記検出電極に導通して前記操作領域の外に延びる配線層が設けられており、前記駆動電極と前記検出電極のうちのカーボンを含む導電層で形成されているものと導通している前記配線層が、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されている。
【0021】
上記のように、操作領域の駆動電極と検出電極がカーボンを含む導電層で形成され、配線層が抵抗の低い導電層で形成されることで、コストの低減ができ、しかも感度が極端に低下するのを防止できる。
【0022】
この場合に、本発明は、樹脂シートまたは樹脂フィルムの基板の一方の側に前記駆動電極と前記検出電極が絶縁層を介して配置され、他方の側に前記配線層が設けられているとともに、他方の側に前記配線層に接続される電子素子が実装されているものにできる。
【0023】
上記のように、樹脂シートまたは樹脂フィルムを基板とすることで薄型化、軽量化ができ、しかもこの基板に電子素子を実装することで小型化を実現できる。
【0024】
本発明では、前記電子素子の電極部と、前記配線または前記配線と連続する接続ランド部との間が、低融点合金にて電気的に接合されている構成であることが好ましい。
【0025】
低融点合金の融点は300℃以下であって、250℃以下のものが好ましく、200℃以下のものがさらに好ましく、160℃以下のものが特に好ましい。
【0026】
また本発明では、前記電子素子の電極部と、前記配線または前記配線と連続する接続ランドとが、低融点合金と熱硬化性樹脂とを含む導電性接着剤で接合されており、前記低融点合金と前記熱硬化性樹脂とは互いに分離し、前記低融点合金により前記電子素子の電極部と前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部間が電気的に接続されていることがより好ましい。
【0027】
また、前記低融点合金が前記配線または前記配線と連続する前記接合ランドの内部に侵入して接合していることが好ましく、前記低融点合金がフィレット形状で形成されていることがさらに好ましい。
【0028】
また本発明では、前記熱硬化性樹脂が、前記電子素子の電極部から前記低融点合金による前記電子素子の電極部と前記ランド部間の接合部にかけて被覆していることが好ましい。また、前記熱硬化性樹脂はメニスカス形状で形成されていることが好ましい。
【0029】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂で形成されていることが好ましい。
さらに前記熱硬化性樹脂の周囲が紫外線硬化樹脂で封止されていることが特に好ましい。
【0030】
また本発明では、前記熱硬化性樹脂の硬化後硬度はショアD硬度80以上が好ましく、さらにショアD硬度90以上が好ましい。また前記紫外線硬化樹脂の硬化後硬度はショアD硬度50から80の範囲内であることが好ましい。
【0031】
さらに、前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部が、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を分散した導電性樹脂で形成されていることが好ましい。
【0032】
また本発明では、前記基板の少なくとも一方の側に補強板が設けられていることが好ましい。
【0033】
本発明では、例えば、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層が、銀を含む導電層である。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、電極層を印刷工程で安価に製造でき、静電容量式入力装置の全体のコストを低減できる。また、感度の極端な低下を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)は本発明の実施の形態の静電容量式入力装置の平面図、(B)は前記静電容量式入力装置の底面図、
【図2】図1(A)に示す静電容量式入力装置をII−II線で切断した断面拡大図、
【図3】X駆動電極とY駆動電極および検出電極を拡大して示す拡大平面図、
【図4】基板の裏面での電子素子であるICパッケージの実装構造を拡大して示す断面図、
【図5】電子素子の実装構造(構造1〜構造4)を示す断面図、
【図6】図5に示す構造1〜構造4に対して行った接合強度の実験方法の模式図、
【図7】図5(a)に示す構造1の素子電極部付近を示す断面写真、
【図8】図5(b)に示す構造2の素子電極部付近を示す断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図2の断面図に示すように、静電容量式入力装置1は、表側2と裏側3を有している。図1(A)は静電容量式入力装置1を表側2から見た状態を示しており、図1(B)は静電容量式入力装置1を裏側3から見た状態を示している。なお、図1(B)は、静電容量式入力装置1を、図1(A)とは左右逆に裏返して示している。図1(A)に示すように、表側2はそのほぼ全域にX駆動電極13およびY駆動電極11と検出電極12が設けられている。これら電極が形成されている矩形状の領域が操作領域4である。
【0037】
図2に示すように、静電容量式入力装置1は樹脂シートまたは樹脂フィルムで形成された可撓性の薄い基板10を有している。基板10を構成する合成樹脂は、例えばPET(ポリエチレン・テレフタレート)である。
【0038】
基板10の表側2に向く表面10aには、直接にまたは絶縁層を介して、図1(A)と図3に示す複数のY駆動電極11と複数の検出電極12とが形成されている。Y駆動電極11と検出電極12の双方が電極間絶縁層14で覆われている。電極間絶縁層14の表面14aは平滑面であり、この表面14aに、図1(A)と図3に示す複数のX駆動電極13が形成されている。このX駆動電極13の表面が表面絶縁層16で覆われており、表面絶縁層16の表面が平坦な操作面16aとなっている。
【0039】
図3に示すように、それぞれのY駆動電極11はX1−X2方向へ直線的に延びる電極本体部11aを有している。複数のY駆動電極11は、電極本体部11aがY1−Y2方向に一定の間隔を空けて平行に延びるように形成されている。検出電極12は、X1−X2方向へ直線的に延びる電極本体部12aを有しており、複数の検出電極12は、電極本体部12aがY1−Y2方向へ一定の間隔を空けて平行に延びるように形成されている。Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aは、Y1−Y2方向に交互に配列しており、電極本体部11aと電極本体部12aは互いに平行である。
【0040】
電極間絶縁層14の上に形成されているX駆動電極13は、Y1−Y2方向に直線的に延びており、X1−X2方向に一定の間隔を空けて互いに平行に形成されている。
【0041】
図3に示すように、Y駆動電極11は、枝電極部11bを有している。枝電極部11bは、X1−X2方向に間隔を空けて複数本形成されており、それぞれが電極本体部11aと導通して電極本体部11aからX1方向とX2方向へ向けて短く突出している。検出電極12も枝電極部12bを有している。枝電極部12bは2本を一組として、X1−X2方向へ間隔を空けて複数組設けられている。それぞれの枝電極部12bは、電極本体部12aと導通し、電極本体部12aからY1方向とY2方向へ向けて短く突出している。
【0042】
図3に示すように、X駆動電極13は、Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aの上方を交差するように通過している。そして、検出電極12に設けられた対を成す枝電極部12bは、X駆動電極13をX1−X2方向から挟むように対向している。前記枝電極部12bが設けられていることで、検出電極12の電極本体部11aとX駆動電極13との交差部分において、検出電極12とX駆動電極13との結合容量を増大でき、しかも操作領域4の全域において、検出電極12とX駆動電極13との結合容量の大きなばらつきが発生しないように調整されている。
【0043】
図3に示す実施の形態では、X駆動電極13に枝電極部が設けられていないが、X駆動電極13に枝電極部が設けられていてもよい。
【0044】
Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aが互いに平行に対向しているとともに、Y駆動電極11の枝電極部11bと検出電極12の一対の枝電極部12bとが、X1−X2方向へ交互に配置され、また枝電極部11bと枝電極部11bとの間で、対を成す枝電極部12bが、Y1−Y2方向へ入り込んでいる。
【0045】
前記枝電極部11bと枝電極部12bが設けられていることで、Y駆動電極11と検出電極12との結合容量を増大でき、しかも操作領域4の全域において、Y駆動電極11と検出電極12との結合容量の大きなばらつきが発生しないように調整されている。
【0046】
図2に示すように、基板10の裏側に向く裏面10bには、導電性材料で形成されたシールド層17が積層されている。シールド層17は、操作領域4の全域を裏側から覆うように形成されている。シールド層17は、隙間を有することなく平面状に連続する連続膜、またはメッシュ状に形成されている。シールド層17の裏面には裏面絶縁層18で形成されている。
【0047】
裏面絶縁層18の裏面18aは平坦面であり、この裏面18aに配線層20が形成されている。図1(B)に示すように、配線層20は、Y配線層21と検出配線層22およびX配線層23を有している。Y配線層21と検出配線層22は、Y1−Y2方向に交互に配列して形成されている。
【0048】
図1(A)(B)に示すように、操作領域4のX1側の縁部に沿って、スルーホール24とスルーホール25が形成されている。スルーホール24とスルーホール25は、Y1−Y2方向に交互に配列している。図2に示すように、スルーホール24は、基板10と電極間絶縁層14および裏面絶縁層18を貫通して形成されており、内部に導電性材料が充填されている。それぞれのスルーホール24の内部の導電性材料によって、Y駆動電極11とY配線層21とが個別に導通されている。同様に、スルーホール25は基板10と電極間絶縁層14および裏面絶縁層18を貫通して形成され、内部に導電性材料が充填されている。それぞれのスルーホール25の内部の導電性材料によって、検出電極12と検出配線層22とが個別に導通している。
【0049】
図1(A)(B)に示すように、操作領域4のY1側の縁部に沿ってスルーホール26が一定の間隔で形成されている。スルーホール26は、基板10と電極間絶縁層14および裏面絶縁層18を貫通して形成され、内部に導電性材料が充電されている。このスルーホール26の内部の導電性材料によって、X駆動電極13とX配線層23とが個別に導通している。
【0050】
図1(B)に示すように、裏面絶縁層18の裏面18aの中央部には、電子素子としてICパッケージ27が実装されており、Y配線層21と検出配線層22およびX配線層23は、前記ICパッケージ27内の回路に導通している。ICパッケージ内には、駆動回路および検出回路が含まれている。
【0051】
図2に示すように、裏面絶縁層18の裏面18aに形成された前記配線層20は、配線絶縁層28で覆われている。
【0052】
前記電極間絶縁層14、表面絶縁層16、裏面絶縁層18および配線絶縁層28などの各絶縁層は、ポリイミド樹脂やポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などの有機材料で形成されている。
【0053】
ICパッケージ27内の駆動回路によって、Y配線層21を介してY駆動電極11にパルス状の電圧が一定の時間間隔で与えられる。このパルス状の電圧は複数のY駆動電極11に順番に与えられる。また、駆動回路によって、X配線層23を介してX駆動電極13にパルス状の電圧が一定の時間間隔で与えられ、このときもパルス状の電圧が複数のX駆動電極13に順番に与えられる。ただし、Y駆動電極11とX駆動電極13には、異なる時間に電圧が与えられる。
【0054】
複数の検出電極12のそれぞれに導通している検出配線層22は、ICパッケージ27の内部で単一の配線として集合させられ、検出回路の共通の入力部に与えられる。
【0055】
それぞれのY駆動電極11と検出電極12との間には静電容量が形成されている。いずれかのY駆動電極11にパルス状の電圧が印加されると、電圧の立ち上がりに同期して、電圧が与えられたY駆動電極11に隣接する検出電極12に瞬間的な電流が流れる。ほぼ接地電位の人の指が表面絶縁層16の表面の操作面16aに触れて、指がいずれかのY駆動電極11に接近すると、指とY駆動電極11との間に静電容量が形成され且つ指と検出電極12との間に静電容量が形成されるために、指が接近しているY駆動電極11と検出電極12との間の静電容量が変化する。検出電極12に流れる電流量は前記静電容量の変動に応じて変化するため、指の近くに位置するY駆動電極11に電圧が与えられたときに検出電極12に流れる電流量と、指が接近していないY駆動電極11に電圧を与えたときに検出電極12に流れる電流量との間に変化が生じる。
【0056】
検出回路では、検出電極12および検出配線層22とから検出される電流値の変化と、どのY駆動電極11に電圧が与えられているかによって、指が接近している箇所のY座標上の位置を推定することができる。同様に、電流値の変化とどのX駆動電極13に電圧が与えられているかによって、指が接近している箇所のX座標上の位置を推定することができる。
【0057】
Y駆動電極11に枝電極部11bが形成され、検出電極12に枝電極部12bが形成されているため、Y駆動電極11と検出電極12の間の結合容量を大きくでき、操作領域4内での結合容量のばらつきを少なくできる。これは、X駆動電極13と検出電極12との間も同じである。そのため、操作領域4のいずれかの位置に指を触れたときに、指の位置を検出するための分解能を高く設定できる。
【0058】
次に、図3に示すY駆動電極11と検出電極12およびX駆動電極13を構成する導電層の組み合わせを実施の形態別に説明する。
【0059】
(1)第1の実施の形態
第1の実施の形態は、Y駆動電極11の電極本体部11aと枝電極部11b、検出電極12の電極本体部12aと枝電極部12b、およびX駆動電極13が、全てカーボンを含む導電層で形成される。
【0060】
カーボンを含む導電層はカーボンペーストを印刷することで形成される。カーボンペーストは、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの微小なカーボンフィラーが溶融状態のバインダー樹脂内に混入されている。前記カーボンフィラーは、導電性、印刷性などの必要に応じて単独、または2種類以上混合したり、粒径の異なるものを併せて用いることができる。前記カーボンペーストを電極の形状に応じてスクリーン印刷し、乾燥硬化させまたは加熱硬化させることで、Y駆動電極11、検出電極12およびX駆動電極13が形成される。
【0061】
前記Y駆動電極11とX駆動電極13は、パルス状の電圧が与えられて一定の電位に設定されるが、銀を主体とした導電層に比べて抵抗が比較的高いカーボンを含む絶縁層でY駆動電極11とX駆動電極13を構成しても、わずかな電圧降下を加味することで、Y駆動電極11とX駆動電極13を所望の電位に設定することができる。
【0062】
Y駆動電極11またはX駆動電極13にパルス状の電圧が与えられたときに、検出電極12に流れる電流の変化を検出することで、指の接近位置が推定されるが、検出電極12をカーボンを含む絶縁層で形成しても前記電流の変化を検出することは可能である。ただし、電流の変化の検出感度を低下させないように、検出電極12の電極本体部12aを、Y駆動電極11の電極本体部11aよりもやや幅広くし、または電極本体部12aのカーボンの密度を高くするなどして、電極本体部11aの抵抗値を下げることが好ましい。
【0063】
この場合の、図1(B)に示す配線層20の構成としては、Y配線層21と検出配線層22およびX配線層23の全てを、カーボンを含む導電層で形成することができる。ただし、検出電流の感度を高めるために、検出配線層22が、カーボンよりも比抵抗が低い導電体である銀を含む導電層で形成されることが好ましい。この導電層は、溶融状態のバインダー樹脂に粉状の銀フィラーが含まれた銀ペーストを使用し、スクリーン印刷で電極層のパターンを形成し、乾燥硬化させまたは加熱硬化させる。
【0064】
図1(A)と図3に示す検出電極12の電極本体部12aと枝電極部12bがカーボンを含む導電層で形成され、図1(B)に示す検出配線層22が銀を含む導電層で形成されることで、Y駆動電極11またはX駆動電極13に電圧が印加されたときに検出電極12に流れる電流の変化を比較的良好な感度で検出でき、しかも、検出電極12をカーボンを含む導電層で形成することで全体の材料費を低減できる。
【0065】
同様に、Y駆動電極11の電極本体部11aと枝電極部11bおよびX駆動電極13がカーボンを含む導電層で形成される場合に、Y配線層21とX配線層23が銀を含む導電層で形成されることが好ましい。Y配線層21とX配線層23が抵抗値の小さい銀を含む導電層で形成されることで、Y駆動電極11とX駆動電極13にパルス状の電圧を与えて所望の電位に設定する際の電圧降下を最小に抑えることができる。しかもカーボンを含む導電層を使用することで、材料費を低減できる。
【0066】
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態としては、検出電極12の電極本体部12aと枝電極部12bが銀を含む導電層で形成され、Y駆動電極11の電極本体部11aと枝電極部11bおよびX駆動電極13が、カーボンを含む導電層で形成される。
【0067】
この構成では、Y駆動電極11またはX駆動電極13を比較的安価な材料で形成でき、一方において検出電極12の抵抗値を比較的低くできるため、検出電極12に流れる電流の変化を高感度に検出できる。
【0068】
この場合に、図1(B)に示す検出配線層22も銀を含む導電層で形成されることが好ましい。一方、Y配線層21とX配線層23は、カーボンを含む導電層で形成されていてもよいが、Y駆動電極11とX駆動電極13がカーボンで形成されているため、Y配線層21とX配線層23が銀を含む導電層で形成されることが、電圧降下を低減させるために好ましい。
【0069】
(3)第3の実施の形態
第3の実施の形態は、検出電極12の電極本体部12aが、抵抗の低い銀を含む導電層で形成され、枝電極部12bがカーボンを含む導電層で形成されている。枝電極部12bは、Y駆動電極11と検出電極12との距離を狭め、X駆動電極13と検出電極12との距離を狭めて、電極間の結合容量が最適となるように設定するためのものである。しかも、個々の枝電極部12bは短い。そのため、枝電極部12bをカーボンを含む導電層で形成しても、電極本体部12aが銀を含む導電層で形成されていれば、検出電極12による電流の検出感度を高くできる。
【0070】
また、枝電極部12bは、操作領域4内で多数形成されその長さ寸法の総計が長いため、枝電極部12bをカーボンを含む電極層で形成することで電極層の材料コストを低減できる。
【0071】
この場合、図1(B)に示す検出配線層22も銀を含む導電層で形成されることが好ましい。
【0072】
この実施の形態では、Y駆動電極11の電極本体部11aと枝電極部11bはカーボンを含む導電層で形成されてもよいが、Y駆動電極11においても、電極本体部11aが銀を含む導電層で形成され、枝電極部11bがカーボンを含む導電層で形成されることが好ましい。Y駆動電極11の電極本体部11aを低抵抗の材料で形成することで、パルス状の電圧を与えたときの電圧降下を低減でき、しかも材料費を低減できる。
【0073】
また、X駆動電極13も銀を含む導電層で形成されることが好ましい。なお、X駆動電極13に枝電極部を設け、枝電極部のみがカーボンを含む導電層で形成されていてもよい。
【0074】
いずれの場合も、図1(B)に示すY配線層21とX配線層23は銀を含む導電層で形成されることが好ましい。
【0075】
次に、基板10の裏面10bに形成されたシールド層17は、裏側3に形成された配線層20の信号によって、Y駆動電極11とX駆動電極13および検出電極12に不要な電界が与えられないようにするものである。そのために、シールド層17は、図示しない配線部を介して接地電位に設定される。このシールド層17は、低抵抗の銀を含んだ導電層で形成されることが好ましいが、カーボンを含む導電層で形成することもできる。広い面積に形成されるシールド層17をカーボンを含む導電層で形成することにより、低コストにて形成することが可能になる。
【0076】
また、スルーホール24,25,26に充填される導電性材料は、銀を含む導電材料で形成されてもよいしカーボンを含む導電材料で形成されてもよい。前記第2および図3の実施の形態のように、検出電極12の電極本体部12aが銀を含む導電層で形成されている場合は、検出電極12と検出配線層22とを結ぶスルーホール25に銀を含む導電材料が充填されることが好ましい。
【0077】
すなわち、Y駆動電極11と検出電極12とX駆動電極13のうち、銀を含んだ導電層で形成されている電極が接続されるスルーホールには、銀を含む導電材料が充填され、カーボンを含む導電層で形成されている電極が接続されるスルーホールにはカーボンを含む導電材料が充填されていることが好ましい。
【0078】
また、カーボンよりも比抵抗が低い導電体を含む導電層または導電材料としては、銀を含むものに限られず他の導電性金属をフィラーとして含むものであってもよい。
【0079】
なお、前記実施の形態は、Y駆動電極11とX駆動電極13が常に駆動電極として使用され、検出電極12の電流の変化によって静電容量の変化を検出できるようにしている。しかし、本発明は、検出電極12が設けられておらず、互いに絶縁されて直交するY電極とX電極とが設けられ、複数のY電極に順番にパルス状の電圧が印加されているときに、X電極の電流の変化を検出して、指が接近している位置をY方向の座標位置で求め、複数のX電極に順番にパルス状の電圧が印加されているときに、Y電極の電流の変化を検出して、指が接近している位置をX方向の座標位置で求めるものであってもよい。
【0080】
この場合に、X電極とY電極の双方がカーボンを含む導電層で形成され、基板の裏側に延びて前記X電極と導通するX配線層、および前記Y電極と導通するY配線層が銀を含む導電層で形成される。
【0081】
または、X電極とY電極の双方が電極本体部と枝電極部を有しており、電極本体部が銀を含む導電層で形成され、枝電極部がカーボンを含む導電層で形成されていてもよい。
【0082】
次に、図4は、ICパッケージ27の好ましい実装例を示している。
樹脂シートまたは樹脂フィルムで形成された基板10の裏面10b側では、前記裏面絶縁層18の裏面18aに、銀を含む導電層によって前記配線層20が形成されているが、さらに配線層20と一体の複数の接続ランド部29が形成されている。接続ランド部29を前記配線層20と同じ材質を用いて同時または別々に印刷形成することができるし、あるいは前記接続ランド部29を形成する導電層を、前記配線層20の材質とは別に接続ランド用の導電性ペーストで形成することも出来る。この導電性ペーストは、銀や銅、ニッケル単体、それらの合金、またはそれらを銀や金、パラジウムなどの貴金属類でメッキ処理した金属または樹脂粒子などの導電性フィラーが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂などを単独または2種類以上用いたものに混合、分散されたものであることが好ましく、ポリエステル樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加したものが特に好ましい。また前記導電性フィラーは鱗片状や樹枝状、球状や不定形を単独で用いたり、必要な印刷性を得るために2種類以上混合したり粒径の異なるものを混ぜて用いることもできる。例えば、前記ランド用の導電性ペーストは、印刷工程によって、前記配線層20に重ねられて塗工される。
【0083】
前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部29とICパッケージ27の端子電極との間が、加熱溶融された低融点合金にて電気的に接合されている。
【0084】
低融点合金にはSnBi、SnBiAg、SnZn、SnZnBi、SnZ nIn、SnAgBiIn、SnAgCu、SnAgCuBi、SnIn、SnBiInなどがある。またこれらに合金の金属組織や濡れ性改良や溶融時の表面酸化防止のために少量のAl、Ag、Cu、Ge、Niなどの異種金属を添加した合金で形成されることが好ましい。
【0085】
本発明において単独または2種類以上の前記低融点合金を、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、メラミン樹脂などの単独または2種類以上の熱硬化型樹脂に混合、分散したものが好ましく、前記熱硬化型樹脂がエポキシ樹脂であることが特に好ましい。
【0086】
ICパッケージ27の電極部27aと前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部29とは電極用の導電性接着剤30で接合される。この導電性接着剤30は、前記低融点合金31が前記熱硬化性樹脂32に含まれているものであり、印刷やディスペンサー塗布などの工程によって前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド29の上に塗工される。
【0087】
前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部29に塗工された導電性接着剤にICパッケージ27を設置した後に、300℃以下好ましくは250℃以下の比較的低い温度で加熱処理する。
【0088】
この低温の加熱工程によって、前記導電性接着剤30に含まれる低融点合金31が溶融するとともに前記導電性接着剤30に含まれる熱硬化性樹脂32が硬化する。導電性接着剤30は溶融した低融点合金31が、電子素子の電極部27aにはんだ接合するとともに前記配線または前記配線と連続する前記接合ランド部29の内部に侵入して接合されて、電子素子の電極部27aと前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部29とが導通させられるとともに、導電性接着剤30に含まれる熱硬化性樹脂32が硬化して、ICパッケージ27が裏面絶縁層18に強固に固定される。
【0089】
また、前記導電性接着剤30は低融点合金31を用いているので低温処理で接合できるため、静電容量式入力装置1を構成する金属部のダメージを最少にでき、ICパッケージ27のダメージも防ぐことができる。
【0090】
図5(a)から図5(d)の各縦断面図には、IC等の電子素子40の実装構造が示されている。
【0091】
図5の各図では、樹脂シートあるいは樹脂フィルム等から成る可撓性の基板41の表面41aに接続ランド部42が印刷形成されている。基板41を構成する樹脂はPET(ポリエチレンテレフタレート)等であり、特に限定されるものではない。前記接続ランド部42は、例えばAg塗膜であるが材質は特に限定されない。
【0092】
前記接続ランド部42は、前記基板41の表面41aに直接印刷形成されたものであってもよいし、あるいは基板41の表面41aに印刷形成された配線単独で形成された構成でもよいし、基板41の表面41aに印刷形成された配線層の表面に重ねて形成された構成でも良い。このように、接続ランド部42を配線層の表面に重ねて形成する場合、上記したランド用の導電性ペーストにより前記接続ランド部42を形成することが好ましい。
【0093】
配線層と接続ランド部42とは同じ材料で形成されてもよいし異なる材質で形成されてもよい。このとき、配線層又は配線層と連続する接続ランド部42は、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を分散した導電性樹脂で形成されることが好適である。
【0094】
なお図5において、図示していないが、基板41の表面41aに前記接続ランド部42と重ねてあるいは平面的に接続される配線層がパターン形成されている。また接続ランド部42を形成せずに図5に示す符号42の層が配線層であり、配線層とICパッケージ40の電極部40aとの間が後述する低融点合金43にて電気的に接続された構成であってもよい。
【0095】
また基板41の表面41aに実装される電子素子40の電極部40aは電子素子40の側部から外方に向けて延びるとともに図示下方向に屈曲しており、更に電極部40aの先端部40bは基板41表面と略平行な方向に延びている。ただし本実施形態において、電極部40aの形状は限定されるものでない。
【0096】
図5(a)に示す実装構造1では、電子素子40の側部から外方に延びる各電極部40aの先端部40bと、接続ランド部42との間が、SnBi、SnBi Ag、SnZn、SnZnBi、SnZnIn、SnAgBiIn、SnAgCu、SnAgCuBi、SnIn、SnBiInなどの低融点合金43にて電気的に接合されている。またこれらの合金は、金属組織や濡れ性改良や溶融時の表面酸化防止のために少量のAl、Ag、Cu、Ge、Niなどの異種金属を添加して形成されることが好適である。前記低融点合金43は、SnBi,SnBiAg等の低融点合金で形成されることが特に好ましい。
【0097】
低融点合金43の融点は300℃以下であって、250℃以下のものが好ましく、200℃以下のものがさらに好ましく、160℃以下のものが特に好ましい。
また低融点金属43はフィレット形状であることが好ましい。
【0098】
図5(a)の実装構造1では、電子素子40と接続ランド部42の間は低融点合金43で電気的に接合されているとともに、前記電極部40aを封止する紫外線硬化樹脂44が設けられている。低融点合金43は、電極部40aとともに紫外線硬化樹脂44の内部に位置する。紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)44は、紫外線の光エネルギーに反応して硬化する。前記紫外線硬化樹脂44は、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型シリコーン樹脂等であり、材質は特に限定されない。紫外線硬化樹脂44は電子素子40の周辺部のみならず表面全体を覆うように形成されていてもよい。また、紫外線硬化樹脂の他に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、光熱硬化性樹脂などから単独または2種類以上用いた樹脂で封止されていてもよい。
【0099】
前記紫外線硬化樹脂44は、電子素子40の電極部40aと接続ランド部42間を低融点合金43にて接合した後、電子素子40の周辺部に紫外線硬化樹脂44を塗工し、紫外線の照射により、前記紫外線硬化樹脂44を硬化させる。
【0100】
次に、図5(b)の実装構造2では、図5(a)と異なって、低融点合金43による電極部40aの先端部40bと接続ランド部42との間の低融点合金による接合部46の周辺部が熱硬化性樹脂45で覆われている。熱硬化性樹脂45はエポキシ樹脂等であり、材質は特に限定されない。また、熱硬化性樹脂45の硬化後硬度は、ショアD硬度80以上であることが好ましい。
【0101】
熱硬化性樹脂45及び低融点合金43は、図4で説明したものと同様の導電性接着剤30により構成される。すなわち、低融点合金43と熱硬化性樹脂45とを含む導電性接着剤30を接続ランド部42上に塗工し、さらに電子素子40を基板41上に設置して、前記電子素子40の電極部40aの先端部40bを、前記導電性接着剤30を介して接続ランド部42に対向させた状態で、300℃以下好ましくは250℃以下の比較的低い温度で加熱処理する。
【0102】
これにより導電性接着剤30に含まれる低融点合金43は、電極部40aの先端部40bと接続ランド部42間に凝集して、前記先端部40bと接続ランド部42間を電気的に繋ぐ接合部46を形成する。一方、熱硬化性樹脂45は、低融点合金43と分離、流動して接合部46の外周に位置する。熱硬化性樹脂45は、導電性接着剤30に含まれる熱硬化性樹脂の含有量や加熱処理条件等を調整して、図5(b)に示す実装構造2のように、接合部46の露出表面全体を覆うことが好適である。また、熱硬化性樹脂45は後述の図8の断面写真に示すように、接合部46から電極部30aにかけてメニスカス形状を保持したまま接続ランド部42と電子素子の電極部を封止するように形成されることが好適である。特に、熱硬化性樹脂45は電極部30aに濡れ上がり、凹状のメニスカス形状であることが特に好ましい。
【0103】
そして図5(b)に示す実装構造2でも、図5(a)の実装構造1と同様に電極部40aが紫外線硬化樹脂44により封止されている。熱硬化性樹脂45及び低融点合金43は電極部40aと同様に紫外線硬化樹脂44の内部に位置している。
【0104】
次に図5(c)に示す実装構造3では、図5(b)の構成に対し更に、基板41の表面41a側に補強板47を設けている。また図5(d)に示す実装構造4では、図5(b)の構成に対し更に、基板41の裏面41b側に補強板48を設けている。
【0105】
補強板47,48の材質は問わない。例えば液晶ポリマーやPET、PEN、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ガラスクロスエポキシ樹脂積層板、ガラスクロスアラミド樹脂積層板等を単独または2種類以上用いることが出来る。また補強板47,48を電気的に絶縁性の材料で形成することが好ましいが、短絡等の問題がない箇所では、前記補強板47,48を金属板等で形成することも可能である。かかる場合、図5(d)のように、基板41の電子素子40を設置した側と反対側に設けた補強板48にシールド機能を持たせることができる。
【0106】
図5(c)に示す実装構造3では、補強板47を接続ランド部42の表面に設けているが、前記補強板47を、接続ランド部42以外の箇所に設けることも出来る。補強板47の設置箇所は任意に決定できる。
【0107】
また図5(d)に示す実装構造4では、補強板48を基板41の裏面41bの全体に設けているが、全体でなく一部であってもよい。
【0108】
図5に示す電子素子40の実装構造に外力が加わったとき(例えば各図の図示上方から電子素子40方向にむけて力が加わったとき)の電子素子40と基板41間の接合強度は、実装構造1よりも実装構造2,3,4のほうが高い。また実装構造3,4のように補強板47,48を設けた構成では、実装構造2よりも外力が加わったときに、可撓性の基板41の変形を抑制でき、外力に対して破壊されにくい構造に出来る。
【0109】
また後述する実験結果に示すように、紫外線硬化樹脂44の硬化後硬度をショアD硬度50から80の範囲内とすることで、接合強度をより効果的に向上させることができる。
なお図5に示す電子素子の実装構造は、静電容量式入力装置以外にも適用可能である。
【実施例】
【0110】
(実装構造1及び実装構造2の実験)
図5(a)に示す実装構造1及び図5(b)に示す実装構造2を備える各サンプル品を用意した。
【0111】
実装構造1及び実装構造2の各サンプル品にはともに、基板としてPET基材を用い、また紫外線硬化樹脂には硬化後硬度がショアD硬度45のものを用いた。また実装構造1では、低融点合金としてSnBiAg(Sn:42%、Bi:57%、Ag:1%)を用い、実装構造2では、低融点合金としてSnBi(Sn:42%、Bi:58%)を用い、更に実装構造2では、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた。なお、後述する表2〜表4の実験についても、実装構造2と同様の材料を用いた。
【0112】
図7は、実装構造1の断面写真、図8は、実装構造2の断面写真を示している。図7,図8に示すように、電子素子の電極部と接続ランド部間は低融点合金にて接合され、また電極部が紫外線硬化樹脂で封止されている。また図8に示すように、エポキシ樹脂で形成された樹脂層はメニスカス形状となっていることがわかる。
【0113】
実験では、実装構造1及び実装構造2の各サンプル品を夫々3つずつ用意し、各サンプル品を図6に示すように両端50,51を50mmの間隔で支持し、さらにサンプル品の中央52を下方向に向けて押圧した。そして、押し込み量T1、押し込んだときに図6の点線に示すように変形した基板表面をその曲率に沿って延長して形成される仮想円の基板直径φ(mm)及び、電子素子と接続ランド部間の電気的な導通を基板が曲がったままの状態を3分間保持しながら計測して接合構造が破壊したときの前記基板直径φを求めた。ここで「破壊」とは電気的な破壊を意味する。
以下の表1に実験結果を示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1には、押し込み量T1、変形した基板の曲率から推定される仮想円の直径φ(以下、基板直径φという)が記載されているとともに、実装構造1及び実装構造2の各欄には、押し込み量T1及び基板直径φに対する破壊サンプルの合計数が示されている。すなわち、実装構造1及び実装構造2の各欄における「0」の表記は破壊サンプル数が0であることを示しており、実装構造1及び実装構造2の各欄における「1」「2」「3」の表記は、破壊サンプル数(合計数)が夫々、1、2,3であることを示している。
【0116】
すなわち表1に示すように、実装構造2の1つのサンプル品は押し込み量T1を18mmとした時点(基板直径φが52.8mm)で破壊したが、残り2つのサンプル品は押し込み量T1を20mmとしても破壊しなかった。一方、実装構造1の場合、押し込み量T1を8mmとした時点(基板直径φが86mm)で1つのサンプル品が破壊し、押し込み量を10mmとした時点(基板直径φが72mm)で残り2つのサンプル品が破壊し、よって、押し込み量を10mmとすると3つのサンプル全てが破壊した。したがって、実装構造2のほうが実装構造1に比べて接合強度が高いことがわかった。実装構造1では、押し込み量T1を10mmより大きくできず、表1に示す薄く色が付されている欄は不良品となる押し込み量T1(基板直径φ)の領域を示している。以下、表2、表3においても同様である。
【0117】
(紫外線硬化樹脂の硬化後硬度ショアD硬度の実験)
次に図5(b)に示す実装構造2で紫外線硬化樹脂の硬化後硬度としてショアD硬度を45,50,60,70,80,90と変えた各サンプル品を3つずつ用意し、上記と同様の接合強度の実験を行った。その実験結果が以下の表2に示されている。
【0118】
【表2】

【0119】
表2に示す各ショアD硬度欄には、基板直径φに対する破壊サンプルの合計数が示されている。すなわち、各ショアD硬度欄における「0」の表記は破壊サンプル数が0であることを示しており、「1」「2」「3」の表記は、破壊サンプル数(合計数)が夫々、1、2,3であることを示している。表3、表4においても同様である。
【0120】
表2に示す実験結果により、紫外線硬化樹脂の硬化後硬度をショアD硬度50〜80の範囲内とすることで、より効果的に接合強度を向上させることができるとわかった。
【0121】
(実装構造3の実験)
次に実装構造3のサンプル品を用いて上記と同様の接合強度の実験を行った。実装構造3では、電子素子が設置される側の基板表面に補強板を設けた。補強板には、厚さ225μmの液晶ポリマーシートをアクリル系粘着剤で貼り合わせて用いた。
【0122】
そして、図5(c)に示す実装構造3で紫外線硬化樹脂の硬化後硬度をショアD硬度45,50,60,70,80,90と変えた各サンプル品を3つずつ用意し、上記と同様の接合強度の実験を行った。その実験結果が以下の表3に示されている。
【0123】
【表3】

【0124】
(実装構造4の実験)
次に実装構造4のサンプル品を用いて上記と同様の接合強度の実験を行った。実装構造4では、電子素子が設置される側と反対側に補強板を設けた。補強板には、厚さ250μm厚のPETを両面テープで貼り合わせて用いた。
【0125】
そして、図5(d)に示す実装構造4で紫外線硬化樹脂の硬化後硬度をショアD硬度50,60,70,80と変えた各サンプル品を3つずつ用意し、上記と同様の接合強度の実験を行った。その実験結果が以下の表4に示されている。
【0126】
【表4】

【0127】
表3,表4に示す実験結果は、表2に示す実験結果と見かけ上同じであるが、実際には、補強板を用いた実装構造3,4と、補強板を用いていない実装構造2とでは、変形したサンプル品の基板直径φが同じであっても、サンプル品に加わる荷重が違っている。すなわち、補強板を用いた実装構造3,4と補強板を用いていない実装構造2に同じ大きさの荷重を加えても、実装構造3,4におけるサンプル品の基板直径φは、実装構造2におけるサンプル品の基板直径φよりも大きくなる。よって、実装構造3,4のほうが実装構造2よりも外力に対して変形を小さくでき破壊されにくい構造に出来る。
【0128】
表3及び表4に示す実験結果においても、紫外線硬化樹脂の硬化後硬度をショアD硬度50〜80とすることで、効果的に接合強度を向上させることができるとわかった。
【符号の説明】
【0129】
1 静電容量式入力装置
2 表側
3 裏側
4 操作領域
10,41 基板
10a 表面
10b 裏面
11 Y駆動電極
11a 電極本体部
11b 枝電極部
12 検出電極
12a 電極本体部
12b 枝電極部
13 X駆動電極
17 シールド層
20 配線層
21 Y配線層
22 検出配線層
23 X配線層
24,25,26 スルーホール
29、42 接続ランド部
30 導電性接着剤
40 電子素子
40a 電極部
43 低融点合金
44 紫外線硬化樹脂
45 熱硬化性樹脂
46 接合部
47、48 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指で操作される操作領域に、電圧が印加される駆動電極と、前記駆動電極と距離を開けて対向し前記駆動電極との間の静電容量の変化を検出する検出電極とが設けられた静電容量式入力装置において、
前記駆動電極と前記検出電極の少なくとも一部がカーボンを含む導電層で形成されていることを特徴とする静電容量式入力装置。
【請求項2】
前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX駆動電極およびY駆動電極と、前記X駆動電極およびY駆動電極に距離を開けて対向する前記検出電極とが設けられており、
前記X駆動電極と前記Y駆動電極および前記検出電極の全てがカーボンを含む導電層で形成されている請求項1記載の静電容量式入力装置。
【請求項3】
前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX電極とY電極とが設けられ、前記X電極と前記Y電極とが、前記駆動電極と前記検出電極として交互に使用され、
前記X電極と前記Y電極の双方がカーボンを含む導電層で形成されている請求項1記載の静電容量式入力装置。
【請求項4】
前記操作領域に、互いに絶縁されて直交する向きに形成されたX駆動電極およびY駆動電極と、前記X駆動電極およびY駆動電極に距離を開けて対向する前記検出電極とが設けられており、
前記X駆動電極と前記Y駆動電極がカーボンを含む導電層で形成され、前記検出電極がカーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されている請求項1記載の静電容量式入力装置。
【請求項5】
前記駆動電極と前記検出電極の少なくとも一方が、電極本体部と、前記電極本体部から延び出ている複数の枝電極部とを有しており、
前記枝電極部がカーボンを含む導電層で形成され、前記電極本体部がカーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されている請求項1記載の静電容量式入力装置。
【請求項6】
それぞれの前記駆動電極およびそれぞれの前記検出電極に導通して前記操作領域の外に延びる配線層が設けられており、前記駆動電極と前記検出電極のうちのカーボンを含む導電層で形成されているものと導通している前記配線層が、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層で形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項7】
樹脂シートまたは樹脂フィルムの基板の一方の側に前記駆動電極と前記検出電極が絶縁層を介して配置され、他方の側に前記配線層が設けられているとともに、他方の側に前記配線層に接続される電子素子が実装されている請求項6記載の静電容量式入力装置。
【請求項8】
前記電子素子の電極部と、前記配線または前記配線と連続する接続ランド部との間が、低融点合金にて電気的に接合されている請求項7記載の静電容量式入力装置。
【請求項9】
前記電子素子の電極部と、前記配線または前記配線と連続する接続ランド部とが、低融点合金と熱硬化性樹脂とを含む導電性接着剤で接合されており、前記低融点合金と前記熱硬化性樹脂とは互いに分離し、前記低融点合金により前記電子素子の電極部と前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部間が電気的に接合されている請求項7記載の静電容量式入力装置。
【請求項10】
前記低融点合金が融点160℃以下である請求項9記載の静電容量式入力装置。
【請求項11】
前記低融点合金が前記配線または前記配線と連続する前記接合ランドの内部に侵入して接合している請求項9または10のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項12】
前記低融点合金がフィレット形状で形成されている請求項9ないし11のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂は、前記電子素子の電極部から前記低融点合金による前記電子素子の電極部と前記接続ランド部間の接合部にかけて被覆している請求項9ないし12のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂はメニスカス形状で形成されている請求項9ないし13のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項15】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂で形成されている請求項9ないし14のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項16】
前記熱硬化性樹脂の周囲が紫外線硬化樹脂で封止されている請求項9ないし15のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項17】
前記熱硬化性樹脂の硬化後硬度はショアD硬度80以上である請求項9ないし16のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項18】
前記紫外線硬化樹脂の硬化後硬度は、ショアD硬度50から80の範囲内である請求項9ないし17のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項19】
前記配線または前記配線と連続する前記接続ランド部が、カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を分散した導電性樹脂で形成されている請求項8ないし18のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項20】
前記基板の少なくとも一方の側に補強板が設けられている請求項7ないし19のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項21】
カーボンよりも比抵抗が小さい導電体を含む導電層は、銀を含む導電層である請求項4ないし20のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218535(P2010−218535A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262015(P2009−262015)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】