説明

静電容量性アクチュエータの駆動装置

【課題】消費電力を大幅に削減できる静電容量性アクチュエータの駆動装置を提供する。
【解決手段】第1の電圧源1から出力される第1の電圧をアクチュエータZ1に供給する充電動作と、第1の電圧源1から出力される第1の電圧と第2の電圧源2から出力される第2の電圧との合計電圧をアクチュエータZ1に供給する充電動作と、アクチュエータZ1に蓄積された電荷を放出させて第2の電圧源2に導く放電動作と、アクチュエータZ1に蓄積された電荷を第2の電圧源2に導くことなく放出させる放電動作とを切換える。このとき、充電動作によって第2の電圧源2から出力される電荷量と放電動作によって第2の電圧源2に導かれる電荷量とを等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド等に用いられる静電容量性アクチュエータの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、静電容量性アクチュエータである圧電素子を、インク吐出用のアクチュエータとして、多数備える。このため、インクジェットヘッドは、これら静電容量性アクチュエータを高速に駆動するための駆動装置を必要とする。
【0003】
駆動装置は、先ず、直流電源から供給される定電圧を、駆動回路を介してアクチュエータに順方向に印加して、アクチュエータを充電する。このとき、直流電源から取り出されるエネルギーは、直流電源から出力される電圧をE、電荷をQとすると“Q*E”であり、アクチュエータに蓄えられるエネルギーは“(Q*E)/2”となる。これらのエネルギー“Q*E”とエネルギー“(Q*E)/2”との差“(Q*E)/2”は、充電路上の抵抗成分によって消費され、熱となる。
【0004】
次に、駆動装置は、アクチュエータへの通電を一旦停止する。その後、駆動装置は、アクチュエータに蓄えられたエネルギー“(Q*E)/2”を放出させて、アクチュエータを放電する。このとき、アクチュエータから放出されたエネルギー“(Q*E)/2”は、放電路上の抵抗成分によって消費され、熱となる。
【0005】
次に、駆動装置は、直流電源から逆方向の定電圧をアクチュエータに印加して、アクチュエータを充電する。このときも、エネルギー“(Q*E)/2”は、充電路上の抵抗成分によって消費され、熱となる。そして再び、アクチュエータへの通電を一旦停止した後、アクチュエータに蓄えられたエネルギー“(Q*E)/2”を放出させて、アクチュエータを放電する。以上のような充放電シーケンスによって、駆動装置は、アクチュエータを駆動する。
【0006】
このように、駆動装置は、アクチュエータを順方向通電及び逆方向通電によって駆動する構成である。つまり、順方向通電によってアクチュエータが充電された後、逆方向通電によってアクチュエータが充電されることで、アクチュエータの振れ幅として、直流電源の出力電圧“E”の2倍の電圧レベル“2E”に相当する振れ幅を得ることができる。
【0007】
駆動装置は、順方向通電による充電と逆方向通電による充電との間に、アクチュエータの電圧を零[V]付近まで放電させる。順方向通電による充電期間と逆方向通電による充電期間との間に放電期間を入れると、消費電力は、順方向通電による充電から逆方向通電による充電へとすぐに移行した場合、あるいは出力電圧の2倍の値を使ってアクチュエータを一方通電のみで充電した場合に比べて、半分になる(特許文献1)。
【0008】
しかし、放電期間を入れた場合の消費電力の削減量は、放電期間を入れない場合の消費電力の半分までである。放電期間を入れた場合の消費電力をさらに削減するためには、電源の数を増やして複数段の放電を行う必要がある。しかしこの場合は、消費電力は減らせるものの、駆動装置の構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0009】
そこで、駆動電源とともに中間電圧源を用いた新たな消費電力削減方法が、本願発明者によって提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−185400号公報
【特許文献2】特開2010−018028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態は、文献2とは異なる方法によって、文献1よりも消費電力を削減できる静電容量性アクチュエータの駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によれば、静電容量性アクチュエータの駆動装置は、静電容量性アクチュエータを充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源と、上記アクチュエータを充電するための第2の電圧を出力する第2の電圧源と、駆動手段とを備える。駆動手段は、第1の電圧源から出力される第1の電圧を上記アクチュエータに供給する第1の充電とし、第1の電圧源から出力される第1の電圧と第2の電圧源から出力される第2の電圧との合計電圧を上記アクチュエータに供給する第2の充電と、第1及び第2の充電の作用により上記アクチュエータに蓄積された電荷を放出させて第2の電圧源に導く第1の放電と、上記アクチュエータに蓄積された電荷を第2の電圧源に導くことなく放出させる第2の放電とを、一連の充放電シーケンスにしたがって切換える。ここで、第2の充電によって第2の電圧源から出力される電荷量と第1の放電によって第2の電圧源に導かれる電荷量とは等しい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における駆動装置の回路構成図。
【図2】第1の実施形態において、スイッチコントローラが使用するデータテーブルを示す模式図。
【図3】第1の実施形態において、第1のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図4】第1の実施形態において、第2のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図5】第1の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図6】第1の実施形態において、第4のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図7】第2の実施形態における駆動装置の回路構成図。
【図8】第2の実施形態において、スイッチコントローラが使用するデータテーブルを示す模式図。
【図9】第2の実施形態において、第1のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図10】第2の実施形態において、第2のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図11】第2の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図12】第2の実施形態において、第4のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図13】第3の実施形態における駆動装置の回路構成図。
【図14】第3の実施形態において、スイッチコントローラが使用するデータテーブルを示す模式図。
【図15】第3の実施形態において、第1のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図16】第3の実施形態において、第2のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図17】第3の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図18】第3の実施形態において、第4のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図19】第3の実施形態において、第5のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図20】第3の実施形態において、第6のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図21】第3の実施形態において、第7のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図22】第4及び第5の実施形態における駆動装置の回路構成図。
【図23】第4の実施形態において、スイッチコントローラが使用するデータテーブルを示す模式図。
【図24】第4の実施形態において、第1のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図25】第4の実施形態において、第2のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図26】第4の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図27】第4の実施形態において、第4のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図28】第4の実施形態において、第5のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図29】第4の実施形態において、第6のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図30】第5の実施形態において、スイッチコントローラが使用するデータテーブルを示す模式図。
【図31】第5の実施形態において、第2のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図32】第5の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図33】第5の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【図34】第5の実施形態において、第3のシーケンスモード実行時における駆動装置の状態図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、インク吐出用のアクチュエータとしてインクジェットヘッドに用いられる静電容量性アクチュエータの駆動装置についての実施形態を、図面を用いて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
はじめに、第1の実施形態について、図1〜図6を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態における駆動装置100の回路構成図である。図1に示すように、駆動装置100は、直流電源1と、キャパシタ2と、複数のスイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,…と、各スイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,…のオン、オフ切替を制御するためのスイッチコントローラ13とを備える。
【0016】
具体的には、駆動装置100は、一定レベルの直流電圧E/2[V]を出力する直流電源1の正極に、スイッチング素子S1,S2を直列に介してキャパシタ2の一端を接続し、キャパシタ2の他端を、スイッチング素子S3を介して直流電源1の負極に接続する。また、駆動装置100は、キャパシタ2の一端を、スイッチング素子S4を介して直流電源1の負極に接続する。
【0017】
さらに、駆動装置100は、直列に接続されたスイッチング素子S1,S2の接続点と、キャパシタ2の他端とスイッチング素子S3との接続点との間に、スイッチング素子S5,S6の直列回路、スイッチング素子S7,S8の直列回路、スイッチング素子S9,S10の直列回路、…、を順に並列に接続する。そして、スイッチング素子S5,S6の接続点と、このスイッチング素子S5,S6に隣接するスイッチング素子S7,S8との接続点との間、同じくスイッチング素子S7,S8の接続点と、このスイッチング素子S7,S8に隣接するスイッチング素子S9,S10との接続点との間、同じくスイッチング素子S9,S10の接続点と、このスイッチング素子S9,S10に隣接するスイッチング素子S11,S12(不図示)との接続点との間に、それぞれ静電容量性のアクチュエータZ1,Z2,Z3,…を1つずつ接続する。したがって、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…の電極は、順次、直列に接続される。
【0018】
ここで、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…の静電容量はほぼ等しい。また、キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定しておく。
【0019】
直流電源1は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…を充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源として機能する。キャパシタ2は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…を充電するための第2の電圧を出力するための第2の電圧源として機能する。スイッチング素子S1,S2,S3,S4を含む回路11は、アクチュエータZ1,Z2,Z3,…に対する充放電用の共通の通電路を形成する。他のスイッチング素子S5,S6,S7,S8,S9,S10,…を含む回路12は、アクチュエータZ1の図1左端の電極、及びアクチュエータZ1,Z2,Z3,…の電極の接続点を夫々直接駆動し、アクチュエータZ1,Z2,Z3,…に対する充放電用の個別の通電路を形成する。図示しない右端の電極の駆動はアクチュエータZ1の左端と同様である。
【0020】
回路11において、スイッチング素子S1、S2及びS3をオンし、スイチッング素子S4をオフすると、直流電源1とキャパシタ2とが並列に接続されて、キャパシタ2が充電される。また、スイッチング素子S1とS4をオンし、スイッチング素子S2とS3をオフすると、直流電源1とキャパシタ2とが直列に接続されて、直流電源1から出力される電圧E/2[2]の2倍の電圧Eが回路12に供給される。すなわち、回路11とキャパシタ2は、チャージポンプ動作を行うチャージポンプ回路として機能する。
【0021】
本実施形態のインクジェットヘッドは、互いに隣接する2つのチャネルが、1つのアクチュエータを共用するシェア(せん断)モード・シェアド(共用)ウォールタイプのものである。このようなタイプのインクジェットヘッドの場合、1つのチャネルには1つのインク室と1つのノズルが対応し、このノズルからインクを吐出する際には、2つの隣接するアクチュエータを使用する。すなわち、1つのアクチュエータは、互いに隣り合う2つのノズルの吐出用として共用(シェア)される。
【0022】
アクチュエータの駆動電極又はその接続点と、これを直接に駆動する個別の通電路は、各々のチャネルと対応している。1つのノズルからインクを吐出する際には、2つの隣接するアクチュエータを使用するので、3つの隣接する駆動電極又はその接続点を駆動することになる。これらに対応する各チャネルのうち吐出しようとするノズルに対応するチャネルを、以下では便宜的に当該チャネルと呼び、他の2つを隣接チャネルと呼ぶことにする。
【0023】
吐出に関係しない他のチャネルは、隣接チャネルと等しい駆動条件で駆動しておけば、関係の無いアクチュエータが駆動されることは無い。或いは吐出に関係しない他のチャネルの駆動をハイインピーダンス状態にしておいても良い。
【0024】
あるチャネルに対応するノズルからインクを吐出する場合に、当該チャネルと2つの隣接チャネルを駆動する駆動方法は、吐出しようとするノズルが何処にあっても同様である。そこで、以下では、1つのノズルからインクを吐出するのに必要な2つの隣接するアクチュエータZ1,Z2の充放電作用についてのみを説明する。
【0025】
一般にアクチュエータには当該チャネルに正、隣接チャネルに負の電圧を印加したときにインク室が拡張する方向に動き、逆に印加したときにはインク室が収縮する方向に動くタイプと、その逆の動作をするタイプの2種類が存在する。以下では前者のタイプに関して説明を続ける。後者のタイプの場合には前者の場合に対してアクチュエータZ1,Z2の充電方向を逆転させれば良いので、当該チャネルと隣接チャネルの駆動方法を入れ替えればよい。
【0026】
アクチュエータZ1,Z2を吐出用として共有する1つのノズルからインクを吐出させるために、スイッチコントローラ13は、図2に示すデータテーブル10に従い、各スイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,…のオン、オフ切替を制御する。このようなスイッチコントローラ13は、論理回路によって構成される。スイッチコントローラ13はマクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0027】
各スイッチング素子のオン、オフ切替制御により、駆動装置100は、2つの隣接するアクチュエータZ1,Z2に対して一連の充放電シーケンスを実行する。
【0028】
先ず、アクチュエータZ1,Z2を充電する第1のシーケンスモードM1として、スイッチコントローラ13は、スイッチング素子S1,S2,S3,S6,S7,S10をオンし、スイッチング素子S4,S5,S8,S9をオフする。
【0029】
そうすると、図3に示すように、直流電源1の正極→スイッチング素子S1→スイッチング素子S2→キャパシタ2→スイッチング素子S3→直流電源の負極の閉回路(以下、第1の閉回路と称する)と、直流電源1の正極→スイッチング素子S1→スイッチング素子S7→アクチュエータZ1→スイッチング素子S6→スイッチング素子S3→直流電源の負極の閉回路(以下、第2の閉回路と称する)と、直流電源1の正極→スイッチング素子S1→スイッチング素子S7→アクチュエータZ2→スイッチング素子S10→スイッチング素子S3→直流電源の負極の閉回路(以下、第3の閉回路と称する)とが形成される。
【0030】
したがって、直流電源1から出力される電荷Q+Qsはのうち、電荷Qsが第1の閉回路によってキャパシタ2に供給されるとともに、第2及び第3の閉回路によって各々Q/2がアクチュエータZ1,Z2に供給される。このとき、キャパシタ2は、直流電圧E/2[V]で充電される。同様に、アクチュエータZ1,Z2は、直流電圧E/2[V]で充電される。
【0031】
次に、アクチュエータZ1,Z2をさらに充電する第2のシーケンスモードM2として、スイッチコントローラ13は、スイッチング素子S1,S4,S6,S7,S10をオンし、スイッチング素子S2,S3,S5,S8,S9をオフする。
【0032】
そうすると、図4に示すように、直流電源1の正極→スイッチング素子S1→スイッチング素子S7→アクチュエータZ1→スイッチング素子S6→キャパシタ2→スイッチング素子S4→直流電源の負極の閉回路(以下、第4の閉回路と称する)と、直流電源1の正極→スイッチング素子S1→スイッチング素子S7→アクチュエータZ2→スイッチング素子S10→キャパシタ2→スイッチング素子S4→直流電源の負極の閉回路(以下、第5の閉回路と称する)とが形成される。
【0033】
したがって、直流電源1から出力される電荷Qcが第4及び第5の閉回路によってアクチュエータZ1,Z2に各々Qc/2づつ供給されるとともに、直流電圧E/2[V]で充電されたキャパシタ2からは電荷Qcが放出される。なお、キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、このときキャパシタ2から電荷Qcが放出されてもキャパシタ2の充電電圧は直流電圧E/2[V]のまま殆ど変化しない。したがって、アクチュエータZ1,Z2は、直流電源1から出力される直流電圧E/2[V]の2倍の電圧E[V]で充電される。
【0034】
このように、2つの隣接するアクチュエータZ1,Z2が電圧E[V]まで充電されることによって、これらのアクチュエータZ1,Z2を共用するチャネルのインク室が定常状態から拡張し、このインク室にインクが入り込む。その後は電圧が維持されるので、インク室の拡張状態が維持される。
【0035】
インク室が拡張状態になるとインク室の圧力は一旦減少するが、その後インクが補給され、これとともにインク室の圧力は増大して行く。インク室の圧力が所望の大きさになるまで(一般には最大値になるまで)は上記インク室の拡張状態を維持し、その後次のシーケンスに移る。
【0036】
次に、アクチュエータZ1,Z2を放電させる第3のシーケンスモードM3として、スイッチコントローラ13は、スイッチング素子S2,S6,S7,S10をオンし、スイッチング素子S1,S3,S4,S5,S8,S9をオフする。
【0037】
そうすると、図5に示すように、アクチュエータZ1の正極→スイッチング素子S7→スイッチング素子S2→キャパシタ2→スイッチング素子S6→アクチュエータZ1の負極の閉回路(以下、第6の閉回路と称する)と、アクチュエータZ2の正極→スイッチング素子S7→スイッチング素子S2→キャパシタ2→スイッチング素子S10→アクチュエータZ2の負極の閉回路(以下、第7の閉回路と称する)とが形成される。
【0038】
このとき、直流電圧E[V]で充電されたアクチュエータZ1及びアクチュエータZ2からそれぞれ電荷Qz/2が放電され、その合計である電荷Qzがキャパシタ2に充電される。なお、キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、キャパシタ2に電荷Qzが充電されてもキャパシタ2の充電電圧は電圧E/2[V]のまま殆ど変化しない。したがって、アクチュエータZ1及びアクチュエータZ2はほぼ電圧E/2[V]まで放電される。
【0039】
このとき、キャパシタ2を充電する電荷Qzの量は、直前の第2のシーケンスモードM2において、キャパシタ2から放出される電荷Qcの量と等しくなる。
【0040】
次に、アクチュエータZ1,Z2をさらに放電させる第4のシーケンスモードM4として、スイッチコントローラ13は、スイッチング素子S1,S2,S3,S6,S8,S10をオンし、スイッチング素子S4,S5,S7,S9をオフする。
【0041】
そうすると、図6に示すように、アクチュエータZ1の正極→スイッチング素子S8→スイッチング素子S6→アクチュエータZ1の負極の閉回路(以下、第8の閉回路と称する)と、アクチュエータZ2の正極→スイッチング素子S8→スイッチング素子S10→→アクチュエータZ2の負極の閉回路(以下、第9の閉回路と称する)と、前記第1の閉回路とが形成される。
【0042】
このとき、E/2[V]の充電電圧が残っているアクチュエータZ1及びアクチュエータZ2の各々から残りの電荷(Q+Qc−Qz)/2が放電され、アクチュエータZ1及びアクチュエータZ2は0[V]まで放電される。その結果、これらのアクチュエータZ1,Z2を共用するノズルのインク室が拡張状態から定常状態に復元され、インク室のインクが対応するノズルから吐出される。
【0043】
これと同時に、第一の閉回路によってキャパシタ2の充電電圧がE/2[V]に調整される。このシーケンスモードM4は、吐出動作の最後のシーケンスであるとともに、駆動回路の定常状態である。すなわち、インクの吐出を行わないときは、通常シーケンスモードM4としておく。その結果、定常状態ではアクチュエータZ1及びアクチュエータZ2の充電電圧は0[V]となり、また、キャパシタ2の充電電圧はE/2[V]となる。このため、次の駆動の際に、シーケンスモードM1に入ったときにキャパシタ2を充電する電荷Qsは通常殆ど0[V]となる。
【0044】
上述したような第1のシーケンスモードM1から第4のシーケンスモードM4までの一連の充放電シーケンスによって、各スイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,…のオン、オフを切り替えることにより、互いに隣接するアクチュエータZ1,Z2は、所定の充放電動作を行う。この充放電動作により、これらのアクチュエータZ1,Z2を吐出用として共有する1つのノズルからインクが吐出される。
【0045】
以上説明したように、各シーケンスモードM1〜M4の遷移時におけるアクチュエータZ1,Z2の電圧変化の大きさは全てE/2[V]であり、従ってQとQc、Qzは全て等しい。
【0046】
このように、駆動装置100は、第2のシーケンスモードM2においてキャパシタ2から放出される電荷Qcの量と、第3のシーケンスモードM3においてキャパシタ2に帰還する電荷Qzの量とが等しくなるように、各モードM1,M2.M3.M4の切替タイミングを制御する。そうすることにより、第2の電圧源は電力を消費しない。したがって、第2の電圧源であるキャパシタ2に電力を供給するための回路を必要としない。その上、第1の電圧源である直流電源1は、アクチュエータZ1,Z2,Z3,…で必要な最大電圧Eの半分であるE/2[V]を出力すればよい。したがって、駆動装置100の消費電力を一度にE[V]まで充電する駆動装置のほぼ半分に削減することができる。
【0047】
以上、インク室を拡張させた後、圧力の上昇を待ってから元に戻す方法でインクを吐出させる手順について説明したが、アクチュエータの動作はもっと複雑なものであってもよい。例えば、上記シーケンスモードM4の後圧力の減少を待ってからインク室を収縮させ適切なタイミングでインク室を戻すことにより、吐出するインク滴の切れを良くして印字品質を改善するとともに、インク吐出後の圧力振動を止めてより速い周期でインクを吐出することができる。このようにインク室を収縮させ適切なタイミングでインク室を戻す動作では上記シーケンスモードM1〜M4におけるアクチュエータZ1,Z2の充電方向を逆転させれば良いので、後半の駆動方法は当該チャネルと隣接チャネルの駆動方法を入れ替えて行えば良い。
【0048】
また、シーケンスモードM4の放電終了後すぐ、圧力の減少を待たずにインク室を収縮させてインク吐出を補うこともできる。この場合も同様に、シーケンスモードM1〜M4におけるアクチュエータZ1,Z2の充電方向を逆転させれば良いので、後半の駆動方法は当該チャネルと隣接チャネルの駆動方法を入れ替えて行えば良い。この場合にはE/2[V]の電源電圧を用いて2E[V]に相当するアクチュエータの振幅を吐出に使うことができるので、効率はさらに向上する。
【0049】
さらに複雑な駆動方法であったとしても、一般にアクチュエータを駆動する一連の動作の区間内で第2の電圧源から放出される電荷の量と、第2の電圧源に帰還する電荷の量とを一致させておけば、第2の電圧源への電力の供給を省略することが可能である。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図7〜図12を用いて説明する。
図7は、第2の実施形態における駆動装置200の回路構成図である。なお、図1と共通する部分には、同一符号を付している。
因みに、図7においては、1つのアクチュエータZ1の駆動に必要な回路要素のみを示している。第2の実施形態においても、図示はしないが、第1の実施形態と同様に多数のアクチュエータZ2,Z3,…が直列に接続されている。しかし、個々のアクチュエータの駆動に必要な回路要素については同一なので、ここでは一つのアクチュエータZ1を充放電動作させる場合について説明し、他のアクチュエータに関する説明とインクの吐出動作に関する説明の詳細は省略する。
【0051】
第1の実施形態と同様に隣接する2つのアクチュエータを同時に充放電動作させるときは、各々のアクチュエータを充放電する電荷の合計が電源及びキャパシタ2から出入りすると考えれば良い。
【0052】
図7に示すように、駆動装置200は、第1の直流電源1と、キャパシタ2と、第2の直流電源21と、ダイオード22と、N型チャネルのMOSトランジスタQcom,Q11,Q21と、P型チャネルのMOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23と、各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御するためのスイッチコントローラ23とを備える。
【0053】
第1の実施例と同様に、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…の静電容量はほぼ等しい。また、キャパシタ2の静電容量は各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定しておく。
【0054】
具体的には、駆動装置200は、直流電圧E/2[V]を出力する第1の直流電源1の正極に第1の電源ラインL1を接続し、この第1の直流電源1の負極に、直流電圧E/2[V]を出力する第2の直流電源21の正極を接続し、この第2の直流電源21の負極に第2の電源ラインL2を接続する。そして、第1の直流電源1の負極と第2の直流電源21の正極との接続点に、0[V]の電源ラインL0を接続する。こうすることにより、第1の直流電源1の正極に接続される第1の電源ラインL1は、E/2[V]の電源ラインとなり、第2の直流電源21の負極に接続される第2の電源ラインL2は、−E/2[V]の電源ラインとなる。この他、駆動装置200は、第3の電源ラインL3と第4の電源ラインL4とを備える。
【0055】
駆動装置200は、MOSトランジスタQcomのソース電極を0[V]電源ラインL0に接続し、ドレイン電極を第3の電源ラインL3に接続する。また、駆動装置200は、MOSトランジスタQcomのソース電極と0[V]電源ラインL0との接続点にダイオード22のカソードに接続し、ダイオード22のアノードを第4の電源ラインL4に接続する。そして、MOSトランジスタQcomのドレイン電極と第3の電源ラインL3との接続点と、ダイオード22のアノードと第4の電源ラインL4との接続点との間に、キャパシタ2を接続する。さらに、このキャパシタ2に対して並列に、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路と、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路とを、並列に接続する。
【0056】
MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ13のソース電極を第3の電源ラインL3に接続し、MOSトランジスタQ11のソース電極を第4の電源ラインL4に接続して構成する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路は、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ23のソース電極を第3の電源ラインL3に接続し、MOSトランジスタQ21のソース電極を第4の電源ラインL4に接続して構成する。
【0057】
さらに駆動装置200は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ12のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ12のソース電極を第1の電源ラインL1に接続する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ22のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ22のソース電極を第1の電源ラインL1に接続する。そして、MOSトランジスタQ11,Q12,Q13の各ドレイン電極の接続点と、MOSトランジスタQ21,Q22,Q23の各ドレイン電極の接続点との間に、静電容量性のアクチュエータZ1を接続する。
【0058】
N型チャネルのMOSトランジスタQcom,Q11,Q21のうち、MOSトランジスタQcomのバックゲートは0[V]電源ラインL0に接続され、MOSトランジスタQ11,Q21のバックゲートは−E/2[V]の第2の電源ラインL2に接続される。一方、P型チャネルのMOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23のバックゲートは、いずれもE/2[V]の第1の電源ラインL1に接続される。
【0059】
第1の直流電源1は、アクチュエータZ1を充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源として機能する。キャパシタ2は、アクチュエータZ1を充電するための第2の電圧を出力する第2の電圧源として機能する。ダイオード22とMOSトランジスタQcomとを含む回路24は、アクチュエータZ1,Z2,Z3,…に対する充放電用の共通の通電路を形成する。各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23を含む回路25は、アクチュエータZ1に対する充放電用の個別の通電路を形成する。
【0060】
MOSトランジスタQcomがオフのとき、P型チャネルのMOSトランジスタのQ12及びQ13をONするか、Q22及びQ23をONすると、ダイオード22が導通して、第1の直流電源1とキャパシタ2とが並列に接続される。あるいは、P型チャネルのMOSトランジスタのQ12及びQ13をONするとともに、Q22及びQ23をONすると、ダイオード22が導通して、第1の直流電源1とキャパシタ2とが並列に接続される。このとき、キャパシタ2が充電される。
【0061】
これに対し、電源ラインL3が個別の通電路によって他の電源ラインと接続されていない状態でMOSトランジスタQcomをオンすると、ダイオード22が遮断され、直流電源1とキャパシタ2とが直列に接続される。したがって、第1の直流電源1から出力される電圧E/2[V]の2倍の電圧E[V]が第1の電源ラインL1と第4の電源ラインL4の間に供給される。すなわち、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様にチャージポンプ動作をさせることができる。
【0062】
各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートは、スイッチコントローラ23に接続される。スイッチコントローラ23は、図8に示すデータテーブル20に従い、各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートにドライブ信号を供給して、各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御する。このようなスイッチコントローラ23は、論理回路によって構成される。スイッチコントローラ23はマクロコンピュータを含んでいても良い。
【0063】
各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替制御により、駆動装置200は、アクチュエータZ1に対して一連の充放電シーケンスを実行する。
【0064】
先ず、アクチュエータZ1を充電する第1のシーケンスモードM1として、スイッチコントローラ23は、MOSトランジスタQ11,Q22,Q23をオンし、MOSトランジスタQcom,Q12,Q13,Q21をオフする。
【0065】
そうすると、図9に示すように、E/2[V]の第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQ22と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ11と、ダイオード22との直列回路が形成される。また、MOSトランジスタQ22と、MOSトランジスタQ23と、キャパシタ2と、ダイオード22との直列回路が形成される。
【0066】
したがって、第1の直流電源1から出力される電荷Q+Qsのうち、電荷QがMOSトランジスタQ22を介してアクチュエータZ1に供給される。さらに、電荷QsがMOSトランジスタQ22とMOSトランジスタQ23とを介してキャパシタ2に供給される。すなわち、キャパシタ2は、直流電圧E/2[V]で充電される。同様に、アクチュエータZ1は、直流電圧E/2[V]で充電される。
【0067】
次に、アクチュエータZ1をさらに充電する第2のシーケンスモードM2として、スイッチコントローラ13は、MOSトランジスタQcom,Q11,Q22をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q21,Q23をオフする。
【0068】
そうすると、図10に示すように、MOSトランジスタQcomがオンしたことによって、E/2[V]で充電されたキャパシタ2の正極が0Vとなるため、キャパシタ2の負極は−E/2[V]となる。したがって、ダイオード22は、カソードが0[V]であり,アノードが−E/2[V]となるため、導通しなくなる。その結果、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間には、MOSトランジスタQ22、アクチュエータZ1、MOSトランジスタQ11、キャパシタ2、MOSトランジスタQcomの直列回路が形成される。
【0069】
したがって、第1の直流電源1の正極から出力される電荷QcがMOSトランジスタQ22を介してアクチュエータZ1の正極に供給される。同時に、直流電圧E/2[V]で充電されたキャパシタ2からは電荷Qcが放出され、MOSトランジスタQcomを介して第1の直流電源1の負極へ供給される。このとき、アクチュエータZ1の負極はMOSトランジスタQ11を介してキャパシタ2の負極に接続されているので、アクチュエータZ1は、第1の直流電源1から出力される直流電圧E/2[V]の2倍の電圧E[V]で充電される。
【0070】
次に、アクチュエータZ1を放電させる第3のシーケンスモードM3として、スイッチコントローラ13は、MOSトランジスタQ11,Q23をオンし、MOSトランジスタQcom,Q12,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0071】
そうすると、図11に示すように、アクチュエータZ1の正極→MOSトランジスタQ23→キャパシタ2→MOSトランジスタQ11→アクチュエータZ1の負極の閉回路が形成される。
【0072】
キャパシタ2にはVA/2[V]が充電されている。したがって、直流電圧E[V]で充電されたアクチュエータZ1から電荷Qzが放出されて、アクチュエータZ1がVA/2[V]まで放電する。そして、アクチュエータZ1から放出される電荷Qzは、キャパシタ2に帰還する。このとき、キャパシタ2に帰還する電荷Qzの量は、直前の第2のシーケンスモードM2において、キャパシタ2から放出される電荷Qcの量と等しくなる。
【0073】
キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、シーケンスモードM2、M3におけるキャパシタ2の充電電圧は、電荷Qc、Qzの出入りがあったとしてもVA/2[V]のまま殆ど変化しないと考えて良い。
【0074】
次に、アクチュエータZ1をさらに放電させる第4のシーケンスモードM4として、スイッチコントローラ13は、MOSトランジスタQ11,Q21をオンし、MOSトランジスタQcom,Q12,Q13,Q22,Q23をオフする。
【0075】
そうすると、図12に示すように、アクチュエータZ1の正極→MOSトランジスタQ21→MOSトランジスタQ11→アクチュエータZ1の負極の閉回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1から電荷がさらに放出されて、アクチュエータZ1が0[V]まで放電する。
【0076】
上述したような第1のシーケンスモードM1から第4のシーケンスモードM4までの一連の充放電シーケンスによって、各MOSトランジスタQcom,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフを切り替えることにより、アクチュエータZ1は、インクの吐出に係る充放電動作を行う。
【0077】
以上説明したように、各シーケンスモードM1〜M4の遷移時におけるアクチュエータZ1の電圧変化の大きさは全てE/2[V]であり、従ってQとQc、Qzは等しい。
【0078】
第1のシーケンスモードM1においてキャパシタ2を充電する電荷Qsは、その直前にキャパシタ2に充電されている充電電圧がE/2[V]に近いほど小さな値となる。アクチュエータを駆動しない定常状態において、MOSトランジスタQcom,Q11,Q12をオフとする。また、MOSトランジスタQ12、Q13、Q22、Q23をONする。そうすることにより、第1の直流電源1の正極とキャパシタ2の正極とは、Q12とQ13の直列回路、及び/または、Q22とQ23の直列回路を介して導通する。また、同時に第1の直流電源1の負極とキャパシタ2の負極とはダイオード22を介して導通する。したがって、キャパシタ2に充電されている充電電圧を定常的にE/2[V]に保つことができる。よって、電源立ち上げ時を除き、Qsをほぼ0とすることができる。
【0079】
このように、駆動装置200は、第2のシーケンスモードM2においてキャパシタ2から放出される電荷Qcの量と、第3のシーケンスモードM3においてキャパシタ2に帰還する電荷Qzの量とが等しくなるように、各モードM1,M2.M3.M4の切替タイミングを制御する。そうすることにより、第2の電圧源は電力を消費しない。したがって、第2の電圧源であるキャパシタ2に電力を供給するための回路を必要としない。その上、第1の電圧源である第1の直流電源1は、アクチュエータZ1で必要な最大電圧Eの半分であるE/2[V]を出力すればよい。したがって、第1の実施形態と同様に、駆動装置200の消費電力を削減することができる。
【0080】
なお、第2の実施形態における第2の直流電源21は、N型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q21のバックゲートにバイアスを与えるためのものであって、アクチュエータの充放電動作には関係なく、電流は殆ど流れない。したがって、第2の直流電源21の消費電力はごく僅かである。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図13〜図21を用いて説明する。
図13は、第3の実施形態における駆動装置300の回路構成図である。なお、図7と共通する部分には、同一符号を付している。
因みに、図13においては、1つのアクチュエータZ1の駆動に必要な回路要素のみを示している。第3の実施形態においても、図示はしないが、第1,第2の実施形態と同様に多数のアクチュエータZ2,Z3,…が直列に接続されている。しかし、個々のアクチュエータの駆動に必要な回路要素については同一なので、ここでは一つのアクチュエータZ1を充放電動作させる場合について説明し、他のアクチュエータに関する説明とインクの吐出動作に関する説明の詳細は省略する。第1の実施形態と同様に隣接する2つのアクチュエータを同時に充放電動作させるときは、各々のアクチュエータを充放電する電荷の合計が電源及びキャパシタ2から出入りすると考えれば良い。
【0082】
図13に示すように、駆動装置300は、第1の直流電源1と、キャパシタ2と、第2の直流電源21と、N型チャネルのMOSトランジスタQn,Q11,Q12,Q21,Q22と、P型チャネルのMOSトランジスタQp,Qp2,Q13,Q23と、各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御するためのスイッチコントローラ31とを備える。
【0083】
第1〜2の実施携帯と同様に、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…の静電容量はほぼ等しい。また、キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定しておく。
【0084】
具体的には、駆動装置300は、直流電圧E/2[V]を出力する第1の直流電源1の正極に第1の電源ラインL1を接続し、この第1の直流電源1の負極に、直流電圧E/2[V]を出力する第2の直流電源21の正極を接続し、この第2の直流電源21の負極に第2の電源ラインL2を接続する。そして、第1の直流電源1の負極と第2の直流電源21の正極との接続点に、0[V]の電源ラインL0を接続する。こうすることにより、第1の直流電源1の正極に接続される第1の電源ラインL1は、E/2[V]の電源ラインとなり、第2の直流電源21の負極に接続される第2の電源ラインL2は、−E/2[V]の電源ラインとなる。この他、駆動装置200は、第3の電源ラインL3と第4の電源ラインL4とを備える。
【0085】
駆動装置300は、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQp,Qp2,Qnの直列回路を接続する。直列回路は、MOSトランジスタQpのソース電極を第1の電源ラインL1に接続し、MOSトランジスタQpのドレイン電極をMOSトランジスタQp2のソース電極に接続し、MOSトランジスタQp2のドレイン電極をMOSトランジスタQnのドレイン電極に接続し、MOSトランジスタQnのソース電極を0[V]電源ラインL0に接続して構成する。
【0086】
駆動装置300は、MOSトランジスタQpのドレイン電極とMOSトランジスタQp2のソース電極との接続点に第3の電源ラインL3を接続する。また、MOSトランジスタQp2のドレイン電極とMOSトランジスタQnのドレイン電極との接続点にキャパシタ2の一端を接続し、このキャパシタ2の他端を第4の電源ラインL4に接続する。
【0087】
駆動装置300は、第3の電源ラインL3と第4の電源ラインL4との間に、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路と、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路とを、並列に接続する。
【0088】
MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ13のソース電極を第3の電源ラインL3に接続し、MOSトランジスタQ11のソース電極を第4の電源ラインL4に接続して構成する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路は、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ23のソース電極を第3の電源ラインL3に接続し、MOSトランジスタQ21のソース電極を第4の電源ラインL4に接続して構成する。
【0089】
さらに駆動装置300は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ12のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ12のソース電極を0[V]の電源ラインL0に接続する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ22のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ22のソース電極を0[V]の電源ラインL0に接続する。そして、MOSトランジスタQ11,Q12,Q13の各ドレイン電極の接続点と、MOSトランジスタQ21,Q22,Q23の各ドレイン電極の接続点との間に、静電容量性のアクチュエータZ1を接続する。
【0090】
N型チャネルのMOSトランジスタQn,Q11,Q12,Q21,Q22のうち、MOSトランジスタQnのバックゲートは0[V]電源ラインL0に接続され、MOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22のバックゲートは−E/2[V]の第2の電源ラインL2に接続される。第2の直流電源21は、このようにN型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22にバックゲートにバイアスを与えるための電源であって、アクチュエータの充放電動作には関係なく、電流は殆ど流れない。したがって、第2の直流電源21の消費電力はごく僅かである。
【0091】
P型チャネルのMOSトランジスタQp,Qp2,Q13,Q23のうち、MOSトランジスタQp,Q13,Q23のバックゲートは、第1の電源ラインL1に接続され、MOSトランジスタQp2のバックゲートは、第3の電源ラインL3に接続される。
【0092】
第1の直流電源1は、アクチュエータZ1を充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源として機能する。キャパシタ2は、アクチュエータZ1を充電するための第2の電圧を出力する第2の電圧源として機能する。各MOSトランジスタQp,Qp2,Qnを含む回路32は、アクチュエータZ1,Z2,Z3,…に対する充放電用の共通の通電路を形成する。各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23を含む回路33は、アクチュエータZ1に対する充放電用の個別の通電路を形成する。
【0093】
MOSトランジスタQp,Qp2がオンでかつMOSトランジスタQnがオフのとき、N型チャネルのMOSトランジスタのQ11及びQ12をONするか、または、Q21及びQ22をONすると、第1の直流電源1とキャパシタ2とが並列に接続される。あるいは、N型チャネルのMOSトランジスタのQ11及びQ12をONするとともにQ21及びQ22をONすると、第1の直流電源1とキャパシタ2とが並列に接続される。したがって、キャパシタ2が電圧E/2[V]で充電される。これに対し、電源ラインL3が個別の通電路によって他の電源ラインと接続されていない状態でMOSトランジスタQp,Qnをオンし、かつMOSトランジスタQp2をオフすると、直流電源1とキャパシタ2とが直列に接続される。したがって、第1の直流電源1から出力される電圧E/2[V]の2倍の電圧E[V]が回路33の電源ラインL3と電源ラインL4の間に供給される。すなわち、回路32は、チャージポンプ動作を行うチャージポンプ回路として機能する。
【0094】
各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートは、スイッチコントローラ31に接続される。スイッチコントローラ31は、図14に示すデータテーブル30に従い、各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートにドライブ信号を供給して、各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御する。このようなスイッチコントローラ31は、論理回路によって構成される。スイッチコントローラ31は、マイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0095】
各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替制御により、駆動装置300は、アクチュエータZ1に対して一連の充放電シーケンスを実行する。
【0096】
先ず、アクチュエータZ1を充電する前の待機状態である第1のシーケンスモードM1として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp,Qp2,Q11,Q12,Q21,Q22をオンし、MOSトランジスタQn,Q13,Q23をオフする。
【0097】
そうすると、図15に示すように、E/2[V]の第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQpと、MOSトランジスタQp2と、キャパシタ2と、MOSトランジスタQ11(又は(and/or)Q21)と、MOSトランジスタQ12(前出トランジスタがQ21の場合にはQ22)との直列回路が形成される。したがって、第1の直流電源1から出力される電荷Qsは、MOSトランジスタQp及びMOSトランジスタQp2を介してキャパシタ2に供給される。すなわち、キャパシタ2は、直流電圧E/2[V]で充電される。また、第3の電源ラインL3は、MOSトランジスタQpを介して第1の直流電源1に接続される。したがって、第3の電源ラインL3の電位は、E/2[V]となる。
【0098】
次に、アクチュエータZ1の充電を開始する直前、例えば1μs前に実行する第2のシーケンスモードM2として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp,Qn,Q12をオンし、MOSトランジスタQp2,Q11,Q13,Q21,Q22,Q23をオフする。
【0099】
そうすると、図16に示すように、キャパシタ2の一端がMOSトランジスタQnを介して0[V]電源ラインL0に接続される。これにより、直流電圧E/2[V]で充電されたキャパシタ2の他端の電位は、−E/2[V]となる。また、アクチュエータZ1の負極が0[V]電源ラインL0に接続されて、負極の電位が0[V]となる。
【0100】
次に、アクチュエータZ1を充電する第3のシーケンスモードM3として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp,Qn,Q12,Q23をオンし、MOSトランジスタQp2,Q11,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0101】
そうすると、図17に示すように、E/2[V]の第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQpと、MOSトランジスタQ23と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ12との直列回路が形成される。したがって、第1の直流電源1から出力される電荷Qは、MOSトランジスタQ23を介してアクチュエータZ1に供給される。すなわち、アクチュエータZ1は、直流電圧E/2[V]で充電される。
【0102】
次に、アクチュエータZ1をさらに充電する第4のシーケンスモードM4として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp,Qn,Q11,Q23をオンし、MOSトランジスタQp2,Q12,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0103】
そうすると、図18に示すように、E/2[V]の第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQpと、MOSトランジスタQ23と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ11と、キャパシタ2と、MOSトランジスタQnとの直列回路が形成される。そして、アクチュエータZ1の負極電位が0[V]からキャパシタ2の他端電圧である−E/2[V]まで低下する。したがって、第1の直流電源1から出力される電荷Qcが、MOSトランジスタQ23を介してアクチュエータZ1に供給される。同時に、直流電圧E/2[V]で充電されたキャパシタ2からは電荷Qcが放出され、MOSトランジスタQnを介して第1の直流電源1の負極へ供給される。すなわち、アクチュエータZ1は、第1の直流電源1から出力される直流電圧E/2[V]の2倍の電圧E[V]で充電される。
【0104】
次に、アクチュエータZ1を放電させる直前、例えば1μs前に実行する第5のシーケンスモードM5として、スイッチコントローラ13は、MOSトランジスタQp2,Q11をオンし、MOSトランジスタQp,Qn,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23をオフする。
【0105】
そうすると、図19に示すように、第3の電源ラインL3は、MOSトランジスタQp2を介してキャパシタ2に接続される。そうすると、第3の電源ラインL3と、MOSトランジスタQp2、キャパシタ2、MOSトランジスタQ11、アクチュエータZ1からなる回路はフローティングとなって、第3の電源ラインL3の電位は、E/2[V]から低下し始める。
【0106】
次に、アクチュエータZ1を放電させる第6のシーケンスモードM6として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp2,Q11,Q23をオンし、MOSトランジスタQp,Qn,Q12,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0107】
そうすると、図20に示すように、アクチュエータZ1の正極→MOSトランジスタQ23→MOSトランジスタQp2→キャパシタ2→MOSトランジスタQ11→アクチュエータZ1の負極の閉回路が形成される。
【0108】
キャパシタ2にはE/2[V]が充電されている。したがって、直流電圧E[V]で充電されたアクチュエータZ1から電荷Qzが放出されて、アクチュエータZ1がE/2[V]まで放電する。そして、アクチュエータZ1から放出される電荷Qzは、キャパシタ2に帰還する。このとき、キャパシタ2に帰還する電荷Qzの量は、直前の第4のシーケンスモードM4において、キャパシタ2から放出される電荷Qcの量と等しくなる。
【0109】
キャパシタ2の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、シーケンスモードM3、M4におけるキャパシタ2の充電電圧は、電荷Qc、Qzの出入りがあったとしてもE/2[V]のまま殆ど変化しないと考えて良い。
【0110】
次に、アクチュエータZ1をさらに放電させる第7のシーケンスモードM7として、スイッチコントローラ31は、MOSトランジスタQp2,Q11,Q12,Q21,Q22をオンし、MOSトランジスタQp,Qn,Q13,Q23をオフする。
【0111】
そうすると、図21に示すように、アクチュエータZ1の正極→MOSトランジスタQ21→MOSトランジスタQ11→アクチュエータZ1の負極の閉回路が形成される。また、アクチュエータZ1の正極→MOSトランジスタQ22→MOSトランジスタQ12→アクチュエータZ1の負極の閉回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1から電荷がさらに放出されて、アクチュエータZ1が0[V]まで放電する。
【0112】
このとき、第4の電源ラインL4は、0[V]電源ラインL0と同電位、すなわち0[V]となる。したがって、MOSトランジスタQp2を介してキャパシタ2に接続される第3の電源ラインL3の電位は、キャパシタ2の充電電圧であるE/2[V]となる。
【0113】
上述したような第1のシーケンスモードM1から第7のシーケンスモードM7までの一連の充放電シーケンスによって、各MOSトランジスタQp,Qp2,Qn,Q11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフを切り替えることにより、アクチュエータZ1は、インクの吐出に係る充放電動作を行う。
【0114】
以上説明したように、各シーケンスモードのうち充放電時におけるアクチュエータZ1の電圧変化の大きさは全てE/2[V]であり、従ってQとQc、Qzは等しい。第1のシーケンスモードM1においてキャパシタ2を充電する電荷Qsは、その直前にキャパシタ2に充電されている充電電圧がE/2[V]に近いほど小さな値となる。第7のシーケンスモードによる放電が終了した後シーケンスモードM1に戻しておき、M1を定常状態としておけば、キャパシタ2に充電されている充電電圧を定常的にE/2[V]保つことができ、電源立ち上げ時を除きQsをほぼ0とすることができる。
【0115】
このように、駆動装置300は、第4のシーケンスモードM4においてキャパシタ2から放出される電荷Qcの量と、第6のシーケンスモードM6においてキャパシタ2に帰還する電荷Qzの量とが等しくなるように、各モードM1,M2,M3,M4,M5,M6,M7の切替タイミングを制御する。そうすることにより、第2の電圧源は電力を消費しない。したがって、第2の電圧源であるキャパシタ2に電力を供給する為の回路を必要としない。その上、第1の電圧源である第1の直流電源1は、アクチュエータZ1で必要な最大電圧Eの半分であるE/2[V]を出力すればよい。したがって、駆動装置300の消費電力を大幅に削減することができる。
【0116】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、図22〜図29を用いて説明する。
図22は、第4の実施形態における駆動装置400の回路構成図である。なお、図13と共通する部分には、同一符号を付している。
因みに、図22においては、1つのアクチュエータZ1の駆動に必要な回路要素のみを示している。第4の実施形態においても、図示はしないが、第1〜第3の実施形態と同様に多数のアクチュエータZ2,Z3,…が直列に接続されている。しかし、個々のアクチュエータの駆動に必要な回路要素については同一なので、ここでは一つのアクチュエータZ1を充放電動作させる場合について説明し、他のアクチュエータに関する説明とインクの吐出動作に関する説明の詳細は省略する。第1の実施形態と同様に隣接する2つのアクチュエータを同時に充放電動作させるときは、各々のアクチュエータを充放電する電荷の合計がキャパシタ43,44から出入りすると考えれば良い。
【0117】
図22に示すように、駆動装置300は、可変電圧VA/2[V]を出力する可変スイッチング電源41と、VA/2[V]の最大値よりも大きな電圧、例えば+24[V]の直流電圧を出力する直流電源42と、第1のキャパシタ43と、第2のキャパシタ44と、オペアンプ45と、抵抗R1,R2,R3と、N型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22と、P型チャネルのMOSトランジスタQ13,Q23と、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御するためのスイッチコントローラ46とを備える。
【0118】
第1〜3の実施形態と同様に、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…の静電容量はほぼ等しい。また、第1のキャパシタ43及び第2のキャパシタ44の静電容量は、各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定しておく。
【0119】
具体的には、駆動装置400は、可変スイッチング電源41の正極に第1の電源ラインL1を接続し、この可変スイッチング電源41の負極に、直流電源42の正極を接続し、この直流電源42の負極に第2の電源ラインL2を接続する。そして、可変スイッチング電源41の負極と直流電源42の正極との接続点に、0[V]の電源ラインL0を接続する。これにより、直流電源42の負極に接続される第2の電源ラインL2の電圧は、−24[V]に固定される。この他、駆動装置400は、第3の電源ラインL3を備える。
【0120】
駆動装置400は、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、第1のキャパシタ43を接続する。また、0[V]電源ラインL0と第3の電源ラインL3との間に、第2のキャパシタ44を接続する。さらに、可変スイッチング電源41と第1の電源ラインL1との接続点と、第2のキャパシタ44と第3の電源ラインL3との接続点との間に、抵抗R1,R2,R3の直列回路を接続する。そして、オペアンプ45の負入力端子を抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続し、正入力端子を0[V]電源ラインL0に接続する。さらに、オペアンプ45の出力端子を、抵抗R2と抵抗R3との接続点に接続する。オペアンプ45の負電源は第2の電源ラインL2に接続し、オペアンプ45の正電源には正の固定電位Vcc(例えば+5V)を与える。
【0121】
駆動装置400は、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路と、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路とを、並列に接続する。
【0122】
MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11との直列回路は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ13のソース電極を第1の電源ラインL1に接続し、MOSトランジスタQ11のソース電極を0[V]電源ラインL0に接続して構成する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21との直列回路は、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極間を接続し、MOSトランジスタQ23のソース電極を第1の電源ラインL1に接続し、MOSトランジスタQ21のソース電極を0[V]電源ラインL0に接続して構成する。
【0123】
さらに駆動装置400は、MOSトランジスタQ13とMOSトランジスタQ11の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ12のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ12のソース電極を第3の電源ラインL3に接続する。同様に、MOSトランジスタQ23とMOSトランジスタQ21の各ドレイン電極の接続点に、MOSトランジスタQ22のドレイン電極を接続し、MOSトランジスタQ22のソース電極を第3の電源ラインL3に接続する。そして、MOSトランジスタQ11,Q12,Q13の各ドレイン電極の接続点と、MOSトランジスタQ21,Q22,Q23の各ドレイン電極の接続点との間に、静電容量性のアクチュエータZ1を接続する。
【0124】
N型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22のバックゲートは、いずれも−24[V]の第2の電源ラインL2に接続される。一方、P型チャネルのMOSトランジスタQ13,Q23のバックゲートは、第1の電源ラインL1に接続される。
【0125】
可変スイッチング電源41は、アクチュエータZ1を充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源として機能する。第1のキャパシタ43は第1の電圧源のバッファとして機能する。第2のキャパシタ44は、アクチュエータZ1を充電するための第2の電圧を出力する第2の電圧源として機能する。オペアンプ45と、抵抗R1,R2,R3とを含む回路48は、第2のキャパシタ44の充電電圧を調整する電圧調整回路として機能する。各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23を含む回路47は、アクチュエータZ1に対する充放電用の個別の通電路を形成する。
【0126】
オペアンプ45と、抵抗R1,R2,R3とを含む電圧調整回路48は、第2の電源ラインL2の電圧から第2のキャパシタ44に充電するための電圧を生成するリニアレギュレータである。リニアレギュレータとしてトラッキング式でない通常の電圧レギュレータを使用することも可能だが、ここでは第1の電源ラインL1に発生するプラス電位に逆極性で追従するトラッキングレギュレータを構成した。この実施例の場合トラッキングレギュレータの方がむしろ回路が簡単で、かつ第1の電圧源の電圧の絶対値にキャパシタ44を充電するための電圧が追従するので、駆動電圧を可変制御する際に都合が良いからである。抵抗R1とR2は等しい抵抗値とする。これによって、オペアンプ45の出力電圧は第1の電源ラインL1に出力される正の電圧VA/2[V]と逆極性で大きさが等しい−VA/2[V]となるようにフィードバックが働く。抵抗R3はトラッキングの速度が必要以上に高速にならないようにオペアンプ45の出力電流を抑えている。トラッキングの速度が高速になるとここで無駄な電力を消費してしまうからである。
【0127】
このようにして、第2のキャパシタ44の負極側に接続される第3の電源ラインL3には、第1の電源ラインL1に出力される正の電圧VA/2[V]に対して逆極性で追従する負の電位−VA/2[V]が出力される。
【0128】
各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートは、スイッチコントローラ46に接続される。スイッチコントローラ46は、図23に示すデータテーブル40に従い、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートにドライブ信号を供給して、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御する。このようなスイッチコントローラ46は、論理回路によって構成される。スイッチコントローラ46は、マイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0129】
各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替制御により、駆動装置400は、アクチュエータZ1に対して一連の充放電シーケンスを実行する。
【0130】
先ず、アクチュエータZ1を充電する前の待機状態である第1のシーケンスモードM1として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q21をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23をオフする。
【0131】
そうすると、図24に示すように、アクチュエータZ1の一方の電極が、MOSトランジスタQ21を介して0[V]電源ラインL0に接続される。同様に、アクチュエータZ1の他方の電極が、MOSトランジスタQ11を介して0[V]電源ラインL0に接続される。したがって、アクチュエータZ1の両端の電位は、いずれも0[V]となる。このとき、アクチュエータZ1の充電電圧は0[V]である。
【0132】
次に、アクチュエータZ1の充電を開始する直前、例えば1μs前に実行する第2のシーケンスモードM2として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ13,Q23をオンし、MOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22をオフする。
【0133】
そうすると、図25に示すように、アクチュエータZ1の一方の電極が、MOSトランジスタQ23を介して第1の電源ラインL1に接続される。同様に、アクチュエータZ1の他方の電極が、MOSトランジスタQ13を介して第1の電源ラインL1に接続される。したがって、アクチュエータZ1の両端の電位は、いずれもVA/2[V]となる。このとき、アクチュエータZ1の充電電圧は0[V]のままであり、アクチュエータは作動しない。
【0134】
次に、アクチュエータZ1を充電する第3のシーケンスモードM3として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ13,Q21をオンし、MOSトランジスタQ11,Q12,Q22,Q23をオフする。
【0135】
そうすると、図26に示すように、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQ13と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ21との直列回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1のMOSトランジスタQ13が接続されている側の電極の電位は、第1の電源ラインL1の電位VA/2[V]と等しくなり、MOSトランジスタQ21が接続されている側の電極の電位は0[V]となる。その結果、キャパシタ43からアクチュエータZ1へ電荷Qが流入し、アクチュエータZ1は電圧VA/2[V]まで充電される。
【0136】
次に、アクチュエータZ1をさらに充電する第4のシーケンスモードM4として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ13,Q22をオンし、MOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q23をオフする。
【0137】
そうすると、図27に示すように、第1の電源ラインL1と第3の電源ラインL3との間に、MOSトランジスタQ13と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ22との直列回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1のMOSトランジスタQ13が接続されている側の電極の電位は、第1の電源ラインL1の電位VA/2[V]と等しくなり、MOSトランジスタQ22が接続されている側の電極の電位は、第3の電源ラインL3の電圧−VA/2[V]と等しくなる。その結果、キャパシタ43からアクチュエータZ1へ電荷Qcが流入し、アクチュエータZ1は、電圧VA/2[V]の2倍の電圧VA[V]まで充電される。同時に、キャパシタ44の正極からキャパシタ43の負極へ電荷Qcが流入する。
【0138】
次に、アクチュエータZ1を放電させる第5のシーケンスモードM5として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q22をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q21,Q23をオフする。
【0139】
そうすると、図28に示すように、0[V]電源ラインL0と第3の電源ラインL3との間に、MOSトランジスタQ11と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ22との直列回路が形成される。0[V]電源ラインL0と第3の電源ラインL3との間に接続された第2のキャパシタ44には、電圧VA/2[V]が充電されている。したがって、電圧VA[V]で充電されたアクチュエータZ1から電荷Qzが放出されて、アクチュエータZ1が電圧VA/2[V]まで放電する。このとき、アクチュエータZ1から放出される電荷Qzは、MOSトランジスタQ11を介してキャパシタ44に帰還する。このとき、第2のキャパシタ44に帰還する電荷Qzの量は、直前の第4のシーケンスモードM4において、第2のキャパシタ44から放出される電荷Qcの量と等しい。
【0140】
キャパシタ43、44の静電容量は各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、キャパシタ43、44の充電電圧は、電荷Q、Qc、Qzの出入りがあったとしてもVA/2[V]のまま殆ど変化しないと考えて良い。
【0141】
次に、アクチュエータZ1をさらに放電させる第6のシーケンスモードM6として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q21をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23をオフする。
【0142】
そうすると、図29に示すように、アクチュエータZ1の図29左側→MOSトランジスタQ11→MOSトランジスタQ21→アクチュエータZ1の図29の右側の閉回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1から電荷がさらに放出されて、アクチュエータZ1が0[V]まで放電する。
【0143】
上述したような第1のシーケンスモードM1から第6のシーケンスモードM6までの一連の充放電シーケンスによって、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフを切り替えることにより、アクチュエータZ1は、インクの吐出に係る充放電動作を行う。
【0144】
以上説明したように、各シーケンスモードのうち充放電時におけるアクチュエータZ1の電圧変化の大きさは全てVA/2[V]であり、従ってQとQc、Qzは等しい。キャパシタ43の正極からは、シーケンスモードM3とM4で各々電荷Q(=Qc)が放出されるので、キャパシタ43は全シーケンスを通じて電荷2Qが不足する。不足する2Qは可変スイッチング電源41の正極から供給される。この2Qに可変スイッチング電源41の出力電圧VA/2[V]を掛け算したものが、この回路の一回の充放電に係る消費エネルギーである。キャパシタ44の正極からは、シーケンスモードM4で電荷Q(=Qc)が放出され、シーケンスモードM5で同量の電荷Q(=Qz)が帰還するのでシーケンス全体では電荷の出入りはゼロとなる。電源投入後の初回に限りキャパシタ44には比較的大きな電荷を充電する必要があるが、電源投入直後には一般にある程度待ち時間が許容されるので、電圧調整回路48がキャパシタ44をVA/2[V]まで充電するまでの時間待てばよい。
【0145】
このように、駆動装置400は、第4のシーケンスモードM4において第2のキャパシタ44から放出される電荷Qcの量と、第5のシーケンスモードM5において第2のキャパシタ44に帰還する電荷Qzの量とが等しくなるように、各モードM1,M2,M3,M4,M5,M6の切替タイミングを制御する。そうすることにより、第2の電圧源は電力を消費しない。従って、第2の電圧源であるキャパシタ44に電力を供給する必要が無く、すなわち比較的小出力のオペアンプ45と、抵抗R1,R2,R3とからなる電圧調整回路48、すなわち小出力のリニアレギュレータであっても電源ラインL3の電位を十分に安定させることができる。その上、第1の電圧源である可変スイッチング電源41は、アクチュエータZ1で必要な最大電圧VAの半分であるVA/2[V]を出力すればよい。したがって、駆動装置400の消費電力を大幅に削減することができる。
【0146】
なお、直流電源42は、N型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22にバックゲートにバイアスを与えるとともに、オペアンプ45の負電源として働く。アクチュエータの駆動電力には関係しない。直流電源42の消費電力はアクチュエータ駆動のための電力に比べればごく僅かである。
【0147】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について、図30〜図34を用いて説明する。
第4の実施形態では、第3のシーケンスモードM3において、アクチュエータZ1の図22の左側、すなわちMOSトランジスタQ13が接続されている側の電極を正極として第1の電源ラインL1の電位VA/2[V]と等しくし、図22の右側、すなわちMOSトランジスタQ21が接続されている側の電極を負極として0[V]とし、アクチュエータZ1を、電圧VA/2[V]で充電した。
【0148】
第5の実施形態では、逆に、アクチュエータZ1の図22の右側の電極の電位を正極として第1の電源ラインL1の電位VA/2[V]と等しくし、図22の左側の電極を負極として電位を0[V]とし、アクチュエータZ1を、電圧VA/2[V]で充電する。
【0149】
したがって、第5の実施形態の駆動装置は、第4の実施形態の駆動装置400と同一であるので、図22を用いてその説明を省略する。なお、アクチュエータZ1の動作の充電方向を逆にしたい場合には、第1の実施形態で説明したように個別の通電路の各チャネルの駆動方法を単純に入れ替えれても良いわけだが、ここでは、充電方向を逆転させる別の方法として第5の実施形態を説明する。
【0150】
第5の実施形態において、スイッチコントローラ46は、図30に示すデータテーブル50に従い、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のゲートにドライブ信号を供給して、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替を制御する。このようなスイッチコントローラ46は、論理回路によって構成される。スイッチコントローラ46は、マイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0151】
各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフ切替制御により、駆動装置400は、アクチュエータZ1に対して一連の充放電シーケンスを実行する。
【0152】
先ず、アクチュエータZ1を充電する前の待機状態である第1のシーケンスモードM1として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q21をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23をオフする。すなわち、第4の実施形態の第1のシーケンスモードM1と同一である。したがって、図24に示すように、アクチュエータZ1の一方の電極が、MOSトランジスタQ21を介して0[V]電源ラインL0に接続される。同様に、アクチュエータZ1の他方の電極が、MOSトランジスタQ11を介して0[V]電源ラインL0に接続される。したがって、アクチュエータZ1の両端の電位は、いずれも0[V]となる。このとき、アクチュエータZ1の充電電圧は0[V]である。
【0153】
次に、アクチュエータZ1を充電する第2のシーケンスモードM2として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q23をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0154】
そうすると、図31に示すように、第1の電源ラインL1と0[V]電源ラインL0との間に、MOSトランジスタQ23と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ11との直列回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1のMOSトランジスタQ23が接続されている側の電極の電位は、第1の電源ラインL1の電圧VA/2[V]と等しくなり、MOSトランジスタQ11が接続されている側の電極の電位は0[V]となる。その結果、キャパシタ43からアクチュエータZ1へ電荷Qが流入し、アクチュエータZ1は、電圧VA/2[V]まで充電される。
【0155】
次に、アクチュエータZ1をさらに充電する第3のシーケンスモードM3として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ12,Q23をオンし、MOSトランジスタQ11,Q13,Q21,Q22をオフする。
【0156】
そうすると、図32に示すように、第1の電源ラインL1と第3の電源ラインL3との間に、MOSトランジスタQ23と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ12との直列回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1のMOSトランジスタQ23が接続されている側の電極の電位は、第1の電源ラインL1の電位VA/2[V]と等しくなり、MOSトランジスタQ12が接続されている側の電極の電位は、第3の電源ラインL3の電圧−VA/2[V]と等しくとなる。その結果、キャパシタ43からアクチュエータZ1へは、電荷Qcが流入し、アクチュエータZ1は電圧VA/2[V]の2倍の電圧VA[V]まで充電される。同時に、キャパシタ44の正極からキャパシタ43の負極へ電荷Qcが流入する。
【0157】
次に、アクチュエータZ1を放電させる第4のシーケンスモードM4として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ12,Q21をオンし、MOSトランジスタQ11,Q13,Q22,Q23をオフする。
【0158】
そうすると、図33に示すように、0[V]電源ラインL0と第3の電源ラインL3との間に、MOSトランジスタQ12と、アクチュエータZ1と、MOSトランジスタQ21との直列回路が形成される。0[V]電源ラインL0と第3の電源ラインL3との間に接続された第2のキャパシタ44が充電されている。したがって、電圧VA[V]で充電されたアクチュエータZ1から電荷Qzが放出されて、アクチュエータZ1が電圧VA/2[V]まで放電する。このとき、アクチュエータZ1から放出される電荷Qzは、MOSトランジスタQ21を介してキャパシタ44に帰還する。このとき、第2のキャパシタ44に帰還する電荷Qzの量は、直前の第3のシーケンスモードM3において、第2のキャパシタ44から放出される電荷Qcの量と等しい。キャパシタ43、44の静電容量は各アクチュエータZ1,Z2,Z3,…のうち同時に駆動可能なものの静電容量の合計値と比べて十分大きな値に設定してあるので、キャパシタ43、44の充電電圧は、電荷Q、Qc、Qzの出入りがあったとしてもVA/2[V]のまま殆ど変化しないと考えて良い。
【0159】
次に、アクチュエータZ1をさらに放電させる第5のシーケンスモードM5として、スイッチコントローラ46は、MOSトランジスタQ11,Q21をオンし、MOSトランジスタQ12,Q13,Q22,Q23をオフする。
【0160】
そうすると、図34に示すように、アクチュエータZ1の図34の右側→MOSトランジスタQ21→MOSトランジスタQ11→アクチュエータZ1の図34の左側の閉回路が形成される。したがって、アクチュエータZ1から電荷がさらに放出されて、アクチュエータZ1が0[V]まで放電する。
【0161】
上述したような第1のシーケンスモードM1から第5のシーケンスモードM5までの一連の充放電シーケンスによって、各MOSトランジスタQ11,Q12,Q13,Q21,Q22,Q23のオン、オフを切り替えることにより、アクチュエータZ1は、インクの吐出に係る充放電動作を行う。
【0162】
以上説明したように、各シーケンスモードのうち充放電時におけるアクチュエータZ1の電圧変化の大きさは全てVA/2[V]であり、従ってQとQc、Qzは等しい。キャパシタ43の正極からは、シーケンスモードM2とM3で各々電荷Q(=Qc)が放出されるので、キャパシタ43は全シーケンスを通じて電荷2Qが不足する。不足する2Qは可変スイッチング電源41の正極から供給される。この2Qに可変スイッチング電源41の出力電圧VA/2[V]を掛け算したものが、この回路の一回の充放電に係る消費エネルギーである。キャパシタ44の正極からは、シーケンスモードM3で電荷Q(=Qc)が放出され、シーケンスモードM4で同量の電荷Q(=Qc)が帰還するのでシーケンス全体では電荷の出入りはゼロとなる。電源投入後の初回に限りキャパシタ44には比較的大きな電荷を充電する必要があるが、電源投入直後には一般にある程度待ち時間が許容されるので、電圧調整回路48がキャパシタ44をVA/2[V]まで充電するまでの時間待てばよい。
【0163】
このように、駆動装置400は、第3のシーケンスモードM3において第2のキャパシタ44から放出される電荷Qcの量と、第4のシーケンスモードM4において第2のキャパシタ44に帰還する電荷Qzの量とが等しくなるように、各モードM1,M2,M3,M4,M5の切替タイミングを制御する。そうすることにより、第2の電圧源は電力を消費しない。従って、第2の電圧源であるキャパシタ44に電力を供給する必要が無く、すなわち比較的小出力のオペアンプ45と、抵抗R1,R2,R3とからなる電圧調整回路48、すなわち小出力のリニアレギュレータであっても電源ラインL3の電位を十分に安定させることができる。その上、第1の電圧源である可変スイッチング電源41は、アクチュエータZ1で必要な最大電圧VAの半分であるVA/2[V]を出力すればよい。したがって、駆動装置400の消費電力を大幅に削減することができる。
【0164】
なお、直流電源42は、N型チャネルのMOSトランジスタQ11,Q12,Q21,Q22にバックゲートにバイアスを与えるとともに、オペアンプ45の負電源として働く。アクチュエータの駆動電力には関係しない。直流電源42の消費電力はアクチュエータ駆動のための電力に比べればごく僅かである。
【0165】
なお、第5の実施形態に対して第1の実施形態で説明したようにして個別の通電路の各チャネルの駆動方法を単純に入れ替える駆動方法も考えられる。そうすると第4の実施形態と同一方向の充放電動作となる。
【0166】
なお、インクジェットヘッド用のアクチュエータでは、インクの粘度によって適正な駆動電圧が変化するが、インクの粘度はインクの種類やインクの温度に拠って変化する。又アクチュエータの特性にもばらつきや温度特性があるので、様々な観点からアクチュエータを適正に駆動するには駆動電圧が可変であることが望ましい。第4、第5の実施形態では第1の電圧源として可変スイッチング電源41を用いたが、第1、第2、第3の実施形態における第1の電圧源1も同様に可変スイッチング電源であっても良い。第4、第5の実施形態では第2の電圧源としてのキャパシタ44の充電電圧をオペアンプ45によって第1の電圧源の電源電圧にトラッキングさせたが、第1、第2、第3の実施形態の場合、第2の電圧源としてのキャパシタ2の充電電圧は、第1の電圧源から直接充電されるので、特別な制御を行わなくても第2の電圧源の電圧が第1の電圧源の電圧にトラッキングする。すなわち第1〜第5の全ての実施形態において第2の電圧源の電圧は第1の電圧源の電圧にトラッキングする。従って本実施形態によれば一つの駆動電圧を調整するだけで+側と−側の両方の電圧源の電圧を一度に調整でき、調整が簡単であるとともに調整の精度を高くできる利点がある。
【0167】
なお、第4、第5の実施形態では第1の電圧源と並列にバッファとしての第1のキャパシタ43を設けたが、バッファ機能は第1の電圧源に内蔵されていても良い。また、逆に第1、第2、第3の実施形態では第1の電圧源と並列にバッファが設けられていないが、第4、第5の実施形態と同様にバッファとしてのキャパシタを第1の電圧源と並列に追加しても良い。
【0168】
なお、第1の実施形態では例として多チャンネルのシェアドウォール型インクジェットヘッドに於ける実施形態を示し、第2〜第5の実施形態では一つのアクチュエータに注目して充放電動作を説明したが、各々これに限るものではない。全ての実施形態においてアクチュエータは第1の実施形態で説明したような多チャンネルのシェアモード・シェアドウォール型インクジェットヘッドであっても良く、シェアドウォール型ではなく隣接するノズルでアクチュエータを共有しないものであっても良い。又アクチュエータが一つだけしか存在しないものであっても良く、充電動作と放電動作とによって駆動されるアクチュエータであれば広く適用可能である。
【0169】
なお、どの実施形態においても、各アクチュエータの端子を駆動する個別の駆動回路の動作を他の端子を駆動する個別の駆動回路の動作と交換すれば、実施形態とは逆方向に充電、放電することが可能である。或いは全てのP型チャネルトランジスタをN型チャネルに、N型チャネルトランジスタをP型チャネルに入れ替え、且つ全ての電源とキャパシタの極性を反転することによって、実施形態とは逆方向に充電、放電することも可能である。さらにその両方を同時に実施して実施形態と同一方向の充電、放電を行っても良い。
【0170】
なお、本実施形態における一つのアクチュエータは例えば静電容量250pFを持ち、これが例えば同時に最大400個同時に駆動されると合計の静電容量は最大0.1μFとなる。第1、第2、第3の実施形態におけるキャパシタ2と、第4、第5の実施形態におけるキャパシタ43、44の静電容量は、各々この0.1μFに対して十分に大きい必要があるので、例えば100倍に設定して10μFとすれば良い。
【0171】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0172】
1…直流電源、2,43,44…キャパシタ、3,23,31,46…スイッチコントローラ、100,200,300,400…駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量性アクチュエータを充電するための第1の電圧を出力する第1の電圧源と、
前記アクチュエータを充電するための第2の電圧を出力する第2の電圧源と、
前記第1の電圧源から出力される第1の電圧を前記アクチュエータに供給する第1の充電、前記第1の電圧源から出力される第1の電圧と前記第2の電圧源から出力される第2の電圧との合計電圧を前記アクチュエータに供給する第2の充電、前記第1及び第2の充電の作用により前記アクチュエータに蓄積された電荷を放出させて前記第2の電圧源に導く第1の放電、及び、前記アクチュエータに蓄積された電荷を前記第2の電圧源に導くことなく放出させる第2の放電を、一連の充放電シーケンスにしたがって切換える駆動手段とを具備し、
前記第2の充電によって前記第2の電圧源から出力される電荷量と前記第1の放電によって前記第2の電圧源に導かれる電荷量とが等しいことを特徴とする静電容量性アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
前記第2の電圧源は、キャパシタであることを特徴とする請求項1記載の静電容量性アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記第1の電源から出力される第1の電位に逆極性で追従するトラッキングレギュレータを有し、トラッキングレギュレータの出力が前記第2の電圧源に供給されることを特徴とする請求項1記載の静電容量性アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記キャパシタの充電電圧を調整可能に接続されたリニアレギュレータを有することを特徴とする請求項2記載の静電容量性アクチュエータの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−125039(P2012−125039A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273249(P2010−273249)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】