説明

静電成膜装置

【課題】対象物の表面上に粉体を堆積させて所望の厚さの膜を均一に形成することができる静電成膜装置を提供する。
【解決手段】静電成膜装置は、メッシュ部を有するスクリーン2と対象物1との間に静電界を形成して、粉体からなる膜を対象物1上に形成する。この静電成膜装置は、スクリーン2に粉体を供給するホッパ61と、スクリーン2上の粉体をスクリーン2に摺り込むスクリーンブラシ31と、ホッパ61をスクリーン2の表面に対して平行に移動させるホッパ移動機構11と、スクリーンブラシ31をスクリーン2の表面に対して平行に移動させるスクリーンブラシ移動機構6とを備える。ホッパ移動機構11とスクリーンブラシ移動機構6は、互いに独立に動作可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンと対象物との間に静電界を形成して、粉体を該対象物の表面上に堆積させ、粉体からなる膜を形成する静電成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電スクリーン印刷装置は、食品への印刷や工業製品の製造などの様々な用途に使用されている。この静電印刷の原理について、図30を参照して説明する。図30に示すように、静電スクリーン印刷装置は、被印刷物200が載置されるパレット201と、メッシュを有するスクリーン202と、スクリーン202上のロールブラシ203とを備える。
【0003】
スクリーン202は直流電圧源DCの負極に接続され、パレット201は直流電圧源DCの正極に接続されるとともに接地される。直流電圧源DCによってスクリーン02とパレット201との間には高電圧が印加され、これによりスクリーン202とパレット201上の被印刷物200との間には静電界が形成される。粉体はホッパ204から回転するロールブラシ203上に供給され、スクリーン202上に落下する。スクリーン202上の粉体は、回転するロールブラシ203によってスクリーン202のメッシュに摺り込まれ、スクリーン202の下側に押し出される。このとき、粉体は、回転するロールブラシ203との摩擦によって負に帯電する。したがって、粉体は、接地されている対象物200に引き付けられて被印刷物200の表面に付着する。
【0004】
このような静電スクリーン印刷装置は、食品の表面に模様を形成する工程に広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。静電印刷技術は、粉体からなる膜を形成することが可能であるため、最近では、燃料電池や二次電池、化粧品など、さまざまな工業製品の製造にも使用されつつある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−347221号公報
【特許文献2】特開2002−367616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の静電スクリーン印刷装置の改良技術を提供するものであり、その目的は、対象物の表面上に粉体を堆積させて所望の厚さの膜を均一に形成することができる静電成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、メッシュ部を有するスクリーンと対象物との間に静電界を形成して、粉体からなる膜を前記対象物上に形成する静電成膜装置であって、前記スクリーンに粉体を供給するホッパと、前記スクリーン上の粉体を前記スクリーンに摺り込むスクリーンブラシと、前記ホッパを前記スクリーンの表面に対して平行に移動させるホッパ移動機構と、前記スクリーンブラシを前記スクリーンの表面に対して平行に移動させるスクリーンブラシ移動機構とを備え、前記ホッパ移動機構と前記スクリーンブラシ移動機構は、互いに独立に動作可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記スクリーンブラシを前記スクリーンから離間させるスクリーンブラシ離間機構をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記スクリーンブラシを上下動させるスクリーンブラシ上下動機構と、前記ホッパを上下動させるホッパ上下動機構とをさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記ホッパは、粉体が貯留されるホッパ箱と、前記ホッパ箱内に配置されたホッパブラシと、前記ホッパブラシを回転させるホッパモータとを備え、前記ホッパ箱は、粉体を通過させる複数の孔が形成された底板を有し、前記ホッパブラシは前記複数の孔を塞ぐように前記底板に接触しており、前記ホッパは、前記ホッパブラシと前記底板とを離間させるホッパブラシ離間機構をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ホッパは、前記ホッパ箱内に配置された少なくとも1つの仕切りをさらに有していることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記スクリーンブラシの外周面に接触して該スクリーンブラシに付着した粉体を掻き落とすクリーニングメッシュをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記スクリーンブラシとともに移動し、前記スクリーン上の粉体の一部を前記スクリーンブラシの外側に押し出す羽根をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スクリーンブラシおよびホッパをそれぞれ独立に駆動するスクリーンブラシ移動機構およびホッパ移動機構を設けたので、目標の膜厚に適した速度で、スクリーンブラシおよびホッパをそれぞれ移動させることができる。その結果、所望の厚さの膜を対象物の上に均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電成膜装置の正面図である。
【図2】図1に示す静電成膜装置の背面図である。
【図3】図1に示す静電成膜装置の上面図である。
【図4】スクリーンブラシユニットの詳細な構造を示す上面図である。
【図5】図4に示すスクリーンブラシユニットの側面図である。
【図6】スクリーン上でのスクリーンブラシの動きを示す上面図である。
【図7】図7(a)はスクリーンブラシがスクリーンに接触している状態を示す図であり、図7(b)はスクリーンブラシがエアシリンダーにより持ち上げられた状態を示す図である。
【図8】図8(a)乃至図8(c)は、ガイドレールに接触するガイドローラの動きを説明する図である。
【図9】図9(a)乃至図9(c)は、図8(a)乃至図8(c)に対応したスクリーンブラシの動きを示す図である。
【図10】ホッパユニットの詳細な構造を示す上面図である。
【図11】図10に示すホッパユニットの側面図である。
【図12】図12(a)乃至図12(c)は、ガイドレールに接触するガイドローラの動きを説明する図である。
【図13】図13(a)乃至図13(c)は、図12(a)乃至図12(c)に対応したホッパの動きを示す図である。
【図14】ホッパ内部に設けられた仕切りをホッパブラシの軸方向から見た図である。
【図15】ホッパの内部をホッパブラシの軸方向から見た図である。
【図16】エアシリンダーによりホッパ箱の底板が押し下げられた状態を示す図である。
【図17】底板がホッパブラシから離間している状態を示す図である。
【図18】ホッパの変形例を示す水平断面図である。
【図19】図18に示すホッパをホッパブラシの軸方向から見た図である。
【図20】図20(a)乃至図20(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作の一例を示す図である。
【図21】図21(a)乃至図21(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作の他の例を示す図である。
【図22】図22(a)乃至図22(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作のさらに他の例を示す図である。
【図23】図23(a)乃至図23(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作のさらに他の例を示す図である。
【図24】クリーニング部材を備えたスクリーンブラシユニットを示す上面図である。
【図25】図24に示すクリーニング部材とスクリーンブラシを軸方向から見た図である。
【図26】図25に示すクリーニング部材の正面図である。
【図27】粉体が供給されたスクリーンを示す上面図である。
【図28】クリーニングメッシュの一部をコーティング材で被覆した構成例を示す図である。
【図29】粉体をスクリーンブラシの外側に押し出す羽根を備えたスクリーンブラシユニットの例を示す上面図である。
【図30】従来の静電スクリーン印刷装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る静電成膜装置の正面図であり、図2は図1に示す静電成膜装置の背面図であり、図3は図1に示す静電成膜装置の上面図である。
【0014】
図1乃至図3に示ように、静電成膜装置は、スクリーンブラシユニット30およびホッパユニット60を備えている。ホッパユニット60は、スクリーン2の上面に粉体を供給するホッパ61を有している。このホッパ61内には粉体が貯留されている。ホッパ61とスクリーン2とは非接触に保たれる。スクリーンブラシユニット30は、スクリーン2の上面に供給された粉体をスクリーン2に摺り込むスクリーンブラシ31と、このスクリーンブラシ31をその軸心を中心として回転させるブラシモータ32とを有している。スクリーンブラシ31の軸心は、スクリーン2の表面に対して平行に延びている。
【0015】
スクリーンブラシユニット30およびホッパユニット60は、スクリーン2の表面(上面)と平行に延びる直動ガイド4,5によりスライド自在に支持されている。スクリーンブラシユニット30は、該スクリーンブラシユニット30をスクリーン2の表面に対して平行に移動させるスクリーンブラシ移動機構6に連結されている。このスクリーンブラシ移動機構6は、複数のガイドローラ7a,7b,7c,7dと、これらガイドローラ7a,7b,7c,7dに掛けられたベルト8と、複数のガイドローラ7a,7b,7c,7dのうちの1つ(図1ではガイドローラ7a)を回転させるモータ9とを備えている。ベルト8の大部分は、スクリーン2の表面と平行に延びている。スクリーンブラシユニット30はベルトクランプ34を有しており、ベルト8の一部はベルトクランプ34によって把持されている。したがって、モータ9によりベルト8を駆動すると、スクリーンブラシユニット30は、直動ガイド4,5に沿ってスクリーン2の表面に対して平行に移動する。
【0016】
同様に、ホッパユニット60は、該ホッパユニット60をスクリーン2の表面(上面)に対して平行に移動させるホッパ移動機構11に連結されている。このホッパ移動機構11は、複数のガイドローラ12a,12bと、これらガイドローラ12a,12bに掛けられたベルト13と、複数のガイドローラ12a,12bのうちの1つ(図1ではガイドローラ12a)を回転させるモータ14とを備えている。ベルト13の大部分は、スクリーン2の表面と平行に延びている。ホッパユニット60はベルトクランプ63を有しており、ベルト13の一部はベルトクランプ63によって把持されている。したがって、モータ14によりベルト13を駆動すると、ホッパユニット60は、直動ガイド4,5に沿ってスクリーン2の表面に対して平行に移動する。
【0017】
図3に示すように、スクリーン2は、矩形状のスクリーンフレーム2aと、金属メッシュから形成されたメッシュスクリーン2bとを有している。メッシュスクリーン2bは、張力が付与された状態でスクリーンフレーム2aに保持されている。メッシュスクリーン2bは、粉体の通過を許容するメッシュ部2cを有しており、このメッシュ部2c以外の部分は粉体を通過させないように樹脂などのコーティング材で覆われている。
【0018】
スクリーン2は、絶縁材からなる支柱20によって水平に支持されている。スクリーン2の下方には、ステージ21が配置されている。スクリーン2とステージ21とは所定の距離だけ離れている。ステージ21には、粉体を付着させる対象物1が載置される。スクリーン2およびステージ21はそれぞれ直流電圧源(直流電圧発生器)DCに電気的に接続されている。より具体的には、スクリーン2は直流電圧源DCの負極に接続されており、ステージ21は直流電圧源DCの正極に電気的に接続されている。さらにステージ21は接地されている。スクリーン2とステージ21(およびステージ21上の対象物1)との間には直流電圧源DCによって電圧(例えば、5000V〜6000Vの直流高電圧)が印加され、これによりスクリーン2と対象物1との間には、静電界が形成される。
【0019】
スクリーンブラシユニット30は、スクリーンブラシ移動機構6により、スクリーン2上の粉体摺り込み位置と、スクリーン2の外側の退避位置との間を移動する。図1に示すように、スクリーンブラシユニット30には、ブラシ位置センサ23が設けられている。直動ガイド4が固定される水平プレート27には、複数のセンサターゲット26が所定の間隔で配置されている。ブラシ位置センサ23は、これらセンサターゲット26を検知することにより、スクリーンブラシユニット30の位置を検出することができる。
【0020】
同様に、ホッパユニット60は、ホッパ移動機構11によりスクリーン2の上方の粉体供給位置と、スクリーン2の外側の退避位置との間を移動する。ホッパユニット60には、ホッパ位置センサ24が設けられている。ホッパ位置センサ24は、水平プレート27上のセンサターゲット26を検知することにより、ホッパユニット60の位置を検出することができる。
【0021】
ホッパ61は、スクリーン2の上方を移動しながら、スクリーン2の上面に粉体を供給するように構成されている。スクリーンブラシ31は、スクリーン2上を移動しながら回転することにより、スクリーン2上の粉体をメッシュ部2cに摺り込む。粉体は、回転するスクリーンブラシ31との摩擦によって負に帯電し、スクリーンブラシ31によりメッシュ部2cに押し込まれてスクリーン2の下面に移動する。さらに、スクリーン2とステージ21上の対象物1との間に形成された静電界により、粉体は対象物1に向かって進行し、対象物1上に堆積し、対象物1上に膜を形成する。
【0022】
なお、粉体の種類によっては、スクリーンブラシ31でスクリーン2に摺り込まれるときに粉体が正に帯電することがある。このような粉体を使用するときは、スクリーン2は直流電圧源DCの正極に接続され、ステージ21は直流電圧源DCの負極に接続される。
【0023】
図4は、スクリーンブラシユニット30の詳細な構造を示す上面図であり、図5は図4に示すスクリーンブラシユニット30の側面図である。スクリーンブラシユニット30は、上述したスクリーンブラシ31と、スクリーンブラシ31をその軸心周りに回転させるブラシモータ32と、直動ガイド4,5に取り付けられた水平可動部材35と、鉛直方向に延びる直動ガイド36を介して水平可動部材35に連結された上下動部材37とを有している。スクリーンブラシ31は、円筒形状のロールスポンジであり、連続気泡が内部に形成されたウレタンから形成されている。
【0024】
ブラシモータ32は、上下動部材37に取り付けられている。スクリーンブラシ31とブラシモータ32とは、ボールスプライン機構40により連結されている。ボールスプライン機構40は、ブラシモータ32の回転をスクリーンブラシ31に伝達しつつ、スクリーンブラシ31の軸方向の移動を許容する機構である。図4および図5に示すように、ボールスプライン機構40は、ブラシモータ32に連結されたスプライン軸40Aと、スクリーンブラシ31に固定されたスプライン軸受40Bとを備えている。スプライン軸受40Bは、円筒部材41の内周面に固定されている。この円筒部材41はスクリーンブラシ31に固定されている。円筒部材41とスクリーンブラシ31とは一体に回転するようになっている。
【0025】
円筒部材41の外周面には環状の溝41aが形成されており、この溝41aに係合するピン42が保持部材43に固定されている。保持部材43は、上下動部材37に固定された2本の支持アーム45,45に取り付けられている(図5では支持アーム45,45は省略されている)。環状の溝41aは、図4に示すように、上から見たときに軸方向と垂直な方向に対して傾いている。したがって、スクリーンブラシ31が回転すると、ピン42と溝41aとの係合によりスクリーンブラシ31は軸方向に往復運動する。このように、溝41aを有する円筒部材41と、溝41aに係合するピン42とにより、スクリーンブラシ31を軸方向に移動させる機構が構成されている。
【0026】
図6は、スクリーン2上でのスクリーンブラシ31の動きを示す上面図である。図6に示すように、スクリーンブラシ31は、スクリーン2のメッシュ部2cを横切るように水平に移動しながら、スクリーンブラシ31の軸方向に往復移動する。このようなスクリーンブラシ31の軸方向の動きにより、スクリーン2上に供給された粉体を均一にならすことができる。特に、メッシュ部2cが形成されていない部分に供給された粉体を、スクリーンブラシ31の軸方向の動きによりメッシュ部2cに移動させることができる。したがって、スクリーン2上での不要な粉体の堆積を防止することができる。メッシュ部2c以外の部分に堆積した粉体は、スクリーンブラシ31とスクリーン2との接触を妨げてしまい、スクリーンブラシ31による粉体の摺り込みに悪影響を与えるおそれがある。本実施形態に係るスクリーンブラシ31は、メッシュ部2cを横切って移動すると同時に、スクリーンブラシ31の軸方向にも移動するので、このようなスクリーン2上の不要な粉体の堆積を防止することができる。
【0027】
スクリーンブラシユニット30全体は直動ガイド4,5に支持されており、これによりスクリーンブラシユニット30全体が図4の矢印Aで示すように水平方向に移動可能となっている。上下動部材37は、水平可動部材35に対して相対的に上下方向に移動することができる。したがって、ブラシモータ32およびスクリーンブラシ31は、図5の矢印Bで示すように上下動部材37と一体に上下方向に移動可能となっている。
【0028】
上下動部材37にはエアシリンダー47が固定されており、水平可動部材35にはストッパー49が固定されている。図示しない気体供給源からエアシリンダー47に空気などの気体が供給されると、エアシリンダー47のピストンロッド48がストッパー49に接触し、これにより上下動部材37が上方に持ち上げられる。スクリーンブラシ31は上下動部材37とともに上方に持ち上げられ、これによりスクリーンブラシ31はスクリーン2から離間する。
【0029】
図7(a)はスクリーンブラシ31がスクリーン2に接触している状態を示す図であり、図7(b)はスクリーンブラシ31がエアシリンダー47により持ち上げられた状態を示す図である。粉体をスクリーン2に摺り込むときは、図7(a)に示すように、スクリーンブラシ31はスクリーン2の上面に接触している。一方、粉体をスクリーン2に摺り込む必要がないときは、図7(b)に示すように、エアシリンダー47によりスクリーンブラシ31をスクリーン2から離間させる。例えば、1回の摺り込み動作で所望の厚さの膜を対象物1上に形成することができる場合は、スクリーンブラシ31がスクリーン2のメッシュ部2cを横切って移動した後、スクリーンブラシ31をエアシリンダー47によりスクリーン2から離間させ、その状態でスクリーンブラシ31をその退避位置に移動させる。
【0030】
このように、エアシリンダー47は、スクリーンブラシ31をスクリーン2から離間させるスクリーンブラシ離間機構を構成する。エアシリンダー47に代えて、他のリニアアクチュエータを用いることも可能である。例えば、サーボモータとボールねじとの組み合わせからなる機構を用いてもよい。
【0031】
上下動部材37には、ガイドローラ51が取り付けられている。このガイドローラ51は、スクリーンブラシユニット30がその退避位置に移動するときに、図2に示すガイドレール53に接触するようになっている。このガイドレール53は、水平面に対して傾斜する傾斜部53aと、この傾斜部53aの頂部から外側に延びる水平部53bとを有している。ガイドレール53の傾斜部53aは、スクリーンフレーム2aに対応した位置に配置されている。図8(a)乃至図8(c)に示すように、スクリーンブラシ移動機構6によりスクリーンブラシユニット30が外側に移動されると、ガイドローラ51がガイドレール53の傾斜部53aに接触し、ガイドローラ51は傾斜部53aに沿って上方に移動する。したがって、上下動部材37、ブラシモータ32、およびスクリーンブラシ31は、ガイドローラ51の動きに従って上方に移動する。
【0032】
ガイドローラ51およびガイドレール53は、スクリーンブラシ31を上下方向に移動させる機構を構成する。ガイドローラ51およびガイドレール53の組み合わせに代えて、エアシリンダーなどの他の機構を用いることも可能である。図9(a)乃至図9(c)は、図8(a)乃至図8(c)に対応したスクリーンブラシ31の動きを示す図である。図9(a)乃至図9(c)に示すように、スクリーンブラシ31は、スクリーン2の外側の退避位置に移動するときに、スクリーンフレーム2aを避けるように上昇する。一方、スクリーンブラシ31がスクリーン2上の粉体摺り込み位置に移動するときは、図9(a)乃至図9(c)に示す動きとは逆の動きをする。すなわち、スクリーンフレーム2aを越えるまではスクリーンブラシ31は水平に移動し、スクリーンフレーム2aを越えた後は下方に移動してスクリーン2の上面に接触する。
【0033】
このように、スクリーンブラシ31をスクリーン2の外に移動させることができるので、ホッパ61は、スクリーンブラシ31に邪魔されることなくスクリーン2のメッシュ部2cの全体に粉体を供給することができる。もし、ガイドローラ51およびガイドレール53が設けられていないとすると、スクリーンブラシ31はスクリーンフレーム2aを越えて移動することができない。結果として、スクリーンブラシ31の退避位置をスクリーン2上に設けなければならなくなり、スクリーン2のサイズが大きくなってしまう。スクリーン2は消耗品であるため、そのコストを低くすることが要請される。ガイドローラ51およびガイドレール53を設けることにより、上述したようにスクリーン2の外側にスクリーンブラシ31を移動させることが可能となるので、スクリーン2のサイズを小さくすることができる。したがって、スクリーン2のコストを下げることができる。
【0034】
図10は、ホッパユニット60の詳細な構造を示す上面図であり、図11は図10に示すホッパユニット60の側面図である。ホッパユニット60は、スクリーン2の上面に粉体を供給するホッパ61と、ホッパ61を支持するホッパアーム62,62と、直動ガイド4,5に取り付けられた水平可動部材65と、鉛直方向に延びる直動ガイド66を介して水平可動部材65に連結された上下動部材67とを有している。ホッパアーム62,62は上下動部材67に固定されている。
【0035】
図10および図11では、ホッパ61は断面図で表されている。ホッパ61は、粉体が貯留されるホッパ箱70と、ホッパ箱70の内部に配置されたホッパブラシ71と、ホッパブラシ71をその軸心周りに回転させるホッパモータ72とを有している。ホッパブラシ71とホッパモータ72とはベルト74を介して連結されている。ホッパブラシ71は、円筒形状のロールスポンジであり、連続気泡が内部に形成されたウレタンから構成されている。ホッパブラシ71の軸心は、スクリーン2の表面に対して平行に延びている。
【0036】
ホッパユニット60全体は直動ガイド4,5に支持されており、これによりホッパユニット60全体が図10の矢印Cで示すように水平方向に移動可能となっている。上下動部材67は、水平可動部材65に対して相対的に上下方向に移動することができる。したがって、ホッパ61およびホッパアーム62,62は、図11の矢印Dで示すように上下動部材67と一体に上下方向に移動可能となっている。
【0037】
上下動部材67には、ガイドローラ76が取り付けられている。このガイドローラ76は、ホッパユニット60がその退避位置に移動するときに、図2に示すガイドレール77に接触するようになっている。このガイドレール77は、水平面に対して傾斜する傾斜部77aと、この傾斜部77aの頂部から外側に延びる水平部77bとを有している。ガイドレール77の傾斜部77aは、スクリーンフレーム2aに対応した位置に配置されている。図12(a)乃至図12(c)に示すように、ホッパ移動機構11によりホッパユニット60が外側に移動されると、ガイドローラ76がガイドレール77の傾斜部77aに接触し、ガイドローラ76は傾斜部77aに沿って上方に移動する。したがって、上下動部材67、ホッパアーム62,62、およびホッパ61は、ガイドローラ76の動きに従って上方に移動する。
【0038】
ガイドローラ76およびガイドレール77は、ホッパ61を上下方向に移動させる機構を構成する。ガイドローラ76およびガイドレール77の組み合わせに代えて、エアシリンダーなどの他の機構を用いることも可能である。図13(a)乃至図13(c)は、図12(a)乃至図12(c)に対応したホッパ61の動きを示す図である。図13(a)乃至図13(c)に示すように、ホッパ61は、スクリーン2の外側の退避位置に移動するときに、スクリーンフレーム2aを避けるように上昇する。一方、ホッパ61がスクリーン2上方の粉体供給位置に移動するときは、図13(a)乃至図13(c)に示す動きとは逆の動きをする。すなわち、スクリーンフレーム2aを越えるまではホッパ61は水平に移動し、スクリーンフレーム2aを越えた後は下方に移動してスクリーン2の上面に近づく。
【0039】
このように、ホッパ61をスクリーン2の外に移動させることができるので、スクリーンブラシ31は、ホッパ61に邪魔されることなくスクリーン2のメッシュ部2cの全体に粉体を摺り込むことができる。また、スクリーン2の外側にホッパ61の退避位置を設けることができるので、スクリーン2のサイズを小さくすることができる。さらに、ホッパ61はスクリーンフレーム2aを回避するように移動するので、粉体を供給するときにホッパ61をメッシュ部2cに近づけることができる。したがって、粉体が気流の影響を受けにくくなり、粉体をスクリーン2上に均一に供給することができる。
【0040】
ホッパ箱70は、上板70a、側板70b、底板70c、前面板70d、および背面板70eとから基本的に構成されている。上板70aは取り外し可能となっており、粉体をホッパ箱70に投入するときは上板70aが取り外される。底板70cはばね78によって前面板70dおよび背面板70eから吊り下げられている。これらのばね78は、底板70cを引き上げて前面板70dおよび背面板70eに押し付けている。底板70cには、粉体が通過する複数の孔70fが形成されている。ホッパブラシ71は、底板70cに接触しており、孔70fを塞ぐように配置されている。ホッパブラシ71がその軸心周りに回転することにより、ホッパ箱70内の粉体が底板70cの孔70fに送り込まれ、孔70fから落下する。ホッパユニット60は、ホッパ移動機構11によりスクリーン2のメッシュ部2cを横切るように移動しながら粉体をスクリーン2上に供給する。
【0041】
ホッパ箱70の内部には、2つの仕切り80,80が設けられており、これら仕切り80,80はホッパブラシ71の軸方向に移動可能となっている。図14は、仕切り80をホッパブラシ71の軸方向から見た図である。図14に示すように、仕切り80には、ホッパブラシ71に対応した形状の切り欠き80aが形成されている。これらの仕切り80,80の位置を変えることにより、粉体の供給位置および供給面積を変えることができる。仕切り80,80の位置は、スクリーン2のメッシュ部2cの位置に合わせて設定することが好ましい。すなわち、メッシュ部2cにのみ粉体が供給されるように仕切り80,80を配置することが好ましい。このような配置により、メッシュ部2cが形成されていない部分に粉体が供給されることを防ぐことができる。
【0042】
図15は、ホッパ61の内部をホッパブラシ71の軸方向から見た図である。図15に示すように、ウレタンから形成されたホッパブラシ71の下部は、底板70cとの接触により変形している。この状態でホッパブラシ71の回転を開始すると、変形した部分が底板70cと良好に接触することができない。結果として粉体を均一にスクリーン2上に供給することができなくなってしまう。そこで、ホッパブラシ71が回転していないときは、ホッパブラシ71と底板70cとを離間させるホッパブラシ離間機構としてのエアシリンダー81,81が設けられている。このエアシリンダー81,81は、ホッパ箱70の前面板70dおよび背面板70eにそれぞれ隣接して設けられており、ホッパアーム62,62により支持されている。
【0043】
エアシリンダー81,81には図示しない気体供給源から空気などの気体が供給されるようになっている。エアシリンダー81,81が動作すると、図16に示すように、エアシリンダー81,81のピストンロッドが底板70cを押し下げ、これにより底板70cがホッパブラシ71から離間する。図17は、底板70cがホッパブラシ71から離間している状態を示す図である。図17に示すように、粉体をスクリーン2に供給しないときは、エアシリンダー81,81によってホッパブラシ71を底板70cから離間させることができる。一方、粉体をスクリーン2に供給するときは、エアシリンダー81,81への気体の供給を停止することで、ばね78により底板70cをホッパブラシ71に接触させる。
【0044】
このように、粉体をスクリーン2に供給しないときはホッパブラシ71と底板70cとを互いに離間させることができるので、ホッパブラシ71の部分的な変形を防止することができる。したがって、ホッパ61は粉体を均一にスクリーン2上に供給することができる。
【0045】
図18は、ホッパ61の変形例を示す水平断面図であり、図19は、図18に示すホッパ61をホッパブラシ71の軸方向から見た図である。図18および図19に示すように、底板70cとホッパブラシ71との間には、底板70cの孔70fを塞ぐためのカバー板83が配置されている。このカバー板83は、ホッパ箱70の側板70bに形成されたスリット(図示せず)から挿入されている。側板70bにスリットを形成せずに、カバー板83をホッパ箱70の内部に配置してもよい。カバー板83は薄く形成されており、カバー板83との接触によるホッパブラシ71の変形を最小限にしている。
【0046】
カバー板83は、ホッパブラシ71の軸方向に関して所望の位置に配置することが可能となっている。したがって、スクリーン2のメッシュ部2cに合わせてカバー板83の位置を変えることができる。例えば、スクリーン2のメッシュ部2cがパターン化された複数のメッシュ部から構成されている場合は、これらメッシュ部の間にカバー板83が位置するように配置される。このような配置により、メッシュ部にのみ粉体を供給することができる。したがって、スクリーン2上の不要な粉体の堆積を防止することができる。カバー板83は、1つまたは複数配置することができる。
【0047】
静電成膜装置は、スクリーンブラシユニット30およびホッパユニット60の動作を制御する制御部90をさらに備えている。この制御部90は、スクリーンブラシ移動機構6により駆動されるスクリーンブラシ31の横方向の速度、スクリーンブラシ31の回転速度、ホッパ移動機構11により駆動されるホッパブラシ71の横方向の速度、ホッパブラシ71の回転速度などを制御することができるようになっている。
【0048】
対象物1上の粉体の堆積量(すなわち、膜厚)は、粉体のスクリーン2への摺り込み量に依存する。スクリーンブラシ31の回転速度を一定としたとき、粉体のスクリーン2への摺り込み量は、スクリーンブラシ31の移動速度に大きく依存する。したがって、スクリーンブラシ31の移動速度は、目標とする膜厚によってほぼ決定される。スクリーンブラシユニット30およびホッパユニット60は、それぞれスクリーンブラシ移動機構6およびホッパ移動機構11によって独立に駆動される。したがって、スクリーンブラシ31は成膜条件に最適な速度で移動することができ、ホッパ61は目標膜厚を達成するための粉体の供給量に最適な速度で移動することができる。成膜条件や粉体の性質によっては、スクリーンブラシ31の移動速度およびホッパ61の移動速度は同じであってもよいことはもちろんである。
【0049】
図20(a)乃至図20(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作の一例を示す図である。図20(a)に示すように、ホッパ61は、スクリーン2の上方を横方向に移動しながら(メッシュ部2cを横切るように移動しながら)、スクリーン2に粉体を供給する。粉体の供給が完了すると、ホッパ61はその退避位置に戻る。同時に、図20(b)に示すように、スクリーンブラシ31がホッパ61とは異なる速度で移動しながら粉体をスクリーン2に摺り込む。スクリーンブラシ31がホッパ61と同じ速度で移動してもよい。粉体の摺り込みが終了すると、スクリーンブラシ31がエアシリンダー47(図5参照)により持ち上げられ、これによりスクリーンブラシ31がスクリーン2から離間する。この状態で、図20(c)に示すように、スクリーンブラシ31はその退避位置まで戻る。
【0050】
図21(a)乃至図21(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作の他の例を示す図である。図21(a)および図21(b)に記載の動作は、図20(a)および図20(b)に記載の動作と同じである。この例では、図21(c)に示すように、スクリーンブラシ31が退避位置に戻るときにも粉体の摺り込みを行う。図21(c)に示す動作においては、スクリーンブラシ31の進行方向の切り替えに伴い、スクリーンブラシ31の回転方向も反転される。粉体の性質によっては、より長い摺り込み時間が必要となることがある。図21(a)乃至図21(c)に示す例はそのような場合に適している。
【0051】
図22(a)乃至図22(c)は、粉体の供給動作および粉体の摺り込み動作のさらに他の例を示す図である。図22(a)に示すように、ホッパ61は、粉体を供給せずに、スクリーン2のメッシュ部2cを横切って移動する。次に、ホッパ61がその退避位置に戻りながら、粉体をスクリーン2上に供給する。同時に、図22(b)に示すように、スクリーンブラシ31がホッパ61とは異なる速度で移動しながら粉体をスクリーン2に摺り込む。スクリーンブラシ31がホッパ61と同じ速度で移動してもよい。粉体の摺り込みが終了すると、スクリーンブラシ31がエアシリンダー47(図5参照)により持ち上げられ、これによりスクリーンブラシ31がスクリーン2から離間する。この状態で、図22(c)に示すように、スクリーンブラシ31はその退避位置まで戻る。スクリーンブラシ31が退避位置に戻るときに、図21(c)に示すように、粉体の摺り込みを行ってもよい。
【0052】
スクリーンブラシ31の移動速度およびホッパ61の移動速度は、予め制御部90に入力されている。スクリーンブラシユニット30およびホッパユニット60は、それぞれスクリーンブラシ移動機構6およびホッパ移動機構11によって独立に駆動されるので、目標の膜厚を達成するのに適したスクリーンブラシ31の移動速度およびホッパ61の移動速度をそれぞれ設定することができる。したがって、所望の厚さの膜を対象物1の上に均一に形成することができる。
【0053】
図23(a)乃至図23(c)に示すように、粉体の摺り込みの最中に、スクリーンブラシ31の移動速度を変えることもできる。図23(a)乃至図23(c)の矢印の大きさは、速度の大きさを表している。上述したように、スクリーンブラシユニット30はブラシ位置センサ23を備えており、スクリーンブラシ31の位置はブラシ位置センサ23によって検出される。ブラシ位置センサ23の出力信号は制御部90に送信され、制御部90はスクリーンブラシ31が所定の位置に到達したときにその移動速度を変えることができる。例えば、成膜後の膜厚測定結果から、膜の中央部が他の部分よりも薄く形成されていることが分かった場合には、次の成膜工程では、膜の中央部でのスクリーンブラシ31の移動速度をより遅い速度に設定することができる。同様に、ホッパ位置センサ24からの出力信号に基づいて、制御部90はホッパ61の移動速度を粉体の供給中に変えることもできる。
【0054】
スクリーンブラシ31はウレタンから形成されているために、摺り込み工程が繰り返されていくうちに粉体がスクリーンブラシ31の表面に堆積することがある。スクリーンブラシ31の表面に堆積した粉体は、スクリーンブラシ31とスクリーン2との良好な接触を妨げてしまう。そこで、図24乃至図26に示すように、スクリーンブラシ31に付着した粉体を掻き落とすクリーニング部材92,92を設けることが好ましい。
【0055】
クリーニング部材92,92は、スクリーンブラシ31を挟むように支持アーム45,45にそれぞれ取り付けられている。各クリーニング部材92は、スクリーンブラシ31の外周面に接触するクリーニングメッシュ92aと、このクリーニングメッシュ92aを支持するメッシュフレーム92bとを備えている。メッシュフレーム92bの下部は、クリーニングメッシュ92aによって掻き落とされた粉体を受け取る粉体容器92cを構成している。スクリーンブラシ31が回転すると、その外周面に付着した粉体がクリーニングメッシュ92aによって掻き落とされ、粉体容器92c内に落下する。このようなクリーニングメッシュ92aを設けることにより、スクリーンブラシ31を常に良好な状態に維持することができる。したがって、対象物1上に均一な膜を形成することができる。図24および図25に示す例では2つのクリーニング部材92,92が配置されているが、1つのクリーニング部材92を設けてもよい。
【0056】
図27は、粉体が供給されたスクリーン2を示す上面図である。図27に示すように、粉体は、スクリーン2のメッシュ部2cのみならず、メッシュ部2cの周囲領域にも供給される。メッシュ部2c以外の領域に供給された粉体の一部は、図6に示すスクリーンブラシ31の軸方向の動きによりメッシュ部2cに移動されるが、残りの粉体はその場所に留まる。このため、メッシュ部2cの周囲領域に対応するスクリーンブラシ31の表面には粉体が堆積しやすい。一方、メッシュ部2cに対応するスクリーンブラシ31の表面に付着した粉体は、次の粉体摺り込み工程に使用することができるので、すべてをクリーニングメッシュ92aで除去せずにある程度スクリーンブラシ31上に残しておくことが好ましい。
【0057】
そこで、図28に示すように、スクリーン2のメッシュ部2cに対応するクリーニングメッシュ92aの部分をコーティング材(例えば、樹脂)94で被覆して、スクリーニングメッシュ92aの開口部を塞ぐことが好ましい。この場合、スクリーニングメッシュ92aの開口部を完全に塞ぐのではなく、ある程度開口部を残しておくことが好ましい。図28の符号Fは、コーティング材94が形成されていない箇所を示している。コーティング材94で被覆されたクリーニングメッシュ92aの部分は、粉体を除去することができないが、コーティング材94で被覆されていないクリーニングメッシュ92aの部分は、粉体を除去することができる。このようにクリーニングメッシュ92aをコーティング材94で部分的に被覆することにより、粉体の除去量を調整することができる。したがって、スクリーン2のメッシュ部2cに対応したスクリーンブラシ31の部分では粉体をある程度残留させ、スクリーン2のメッシュ部2cの周囲領域に対応したスクリーンブラシ31の部分からは粉体を除去することができる。
【0058】
図29は、スクリーンブラシユニット30の変形例を示す上面図である。この例では、スクリーンブラシユニット30は、スクリーン2上の粉体の一部を外側に押し出す2枚の羽根96,96を備えている。羽根96,96は矩形状の板であり、粉体摺り込み時のスクリーンブラシ31の進行方向(矢印で示す)に関してその前方に位置する支持アーム45に取り付けられている。羽根96,96の下端はスクリーン2のメッシュスクリーン2bに接触している。羽根96,96は、スクリーン2上の粉体の一部をスクリーンブラシ31の外側に押し出すように、スクリーンブラシ31の進行方向に対して傾斜している。これら羽根96,96は、スクリーン2のメッシュ部2cの両側に位置している。
【0059】
羽根96,96とスクリーンブラシ31とは、スクリーンブラシ移動機構6により一体に移動する。図29に示すように、スクリーンブラシ31が矢印で示す方向に移動すると、メッシュ部2cの外側の領域に供給された粉体が羽根96,96によってスクリーンブラシ31の外側に押し出される。したがって、スクリーン2上での不要な粉体の堆積を防止することができ、さらには、上述したようなスクリーンブラシ31上の不要な粉体の堆積を防止することができる。
【0060】
本発明に係る静電成膜装置に使用される粉体の種類としては、食品に使用される可食性粉体や、工業製品に使用される機能性粉体が挙げられる。特に、燃料電池や二次電池などの各種電池に使用される機能性膜の形成に本発明は好適に適用可能である。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 対象物
2 スクリーン
6 スクリーンブラシ移動機構
11 ホッパ移動機構
21 ステージ
23 ブラシ位置センサ
24 ホッパ位置センサ
26 センサターゲット
30 スクリーンブラシユニット
31 スクリーンブラシ
32 ブラシモータ
60 ホッパユニット
61 ホッパ
80 仕切り
83 カバー板
90 制御部
92 クリーニング部材
92a クリーニングメッシュ
96 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ部を有するスクリーンと対象物との間に静電界を形成して、粉体からなる膜を前記対象物上に形成する静電成膜装置であって、
前記スクリーンに粉体を供給するホッパと、
前記スクリーン上の粉体を前記スクリーンに摺り込むスクリーンブラシと、
前記ホッパを前記スクリーンの表面に対して平行に移動させるホッパ移動機構と、
前記スクリーンブラシを前記スクリーンの表面に対して平行に移動させるスクリーンブラシ移動機構とを備え、
前記ホッパ移動機構と前記スクリーンブラシ移動機構は、互いに独立に動作可能であることを特徴とする静電成膜装置。
【請求項2】
前記スクリーンブラシを前記スクリーンから離間させるスクリーンブラシ離間機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の静電成膜装置。
【請求項3】
前記スクリーンブラシを上下動させるスクリーンブラシ上下動機構と、
前記ホッパを上下動させるホッパ上下動機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の静電成膜装置。
【請求項4】
前記ホッパは、粉体が貯留されるホッパ箱と、前記ホッパ箱内に配置されたホッパブラシと、前記ホッパブラシを回転させるホッパモータとを備え、
前記ホッパ箱は、粉体を通過させる複数の孔が形成された底板を有し、前記ホッパブラシは前記複数の孔を塞ぐように前記底板に接触しており、
前記ホッパは、前記ホッパブラシと前記底板とを離間させるホッパブラシ離間機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電成膜装置。
【請求項5】
前記ホッパは、前記ホッパ箱内に配置された少なくとも1つの仕切りをさらに有していることを特徴とする請求項4に記載の静電成膜装置。
【請求項6】
前記スクリーンブラシの外周面に接触して該スクリーンブラシに付着した粉体を掻き落とすクリーニングメッシュをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の静電成膜装置。
【請求項7】
前記スクリーンブラシとともに移動し、前記スクリーン上の粉体の一部を前記スクリーンブラシの外側に押し出す羽根をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の静電成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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