説明

静電荷像現像用トナーの製造方法

【課題】フィルターを使用した洗浄において効率よく固相部を洗浄することで良好な性能のトナーを得ることを目的とする。
【解決手段】水系媒体中にトナー粒子を含む固液混合物に対して重力加速度をかけ、混合物中の真比重差を利用して固液分離をした後、分離された固相成分をフィルターにより洗浄することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。前記固液混合物中の固相成分と液相成分との真比重差が0.2以下であること、前記重力加速度が5000G以上10
0000G以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電荷像現像用トナーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電荷像現像用トナーの製造方法は、粉砕法、重合法に大別される。粉砕法では、樹脂、着色剤等の原料を混合、混練し、冷却工程を経、ジェットミル等で微粉砕後分級し、必要に応じて添加剤を加えた後、篩別後容器に充填し製品となる。また、重合法では、モノマー、ワックス等の原料を重合し、着色剤、帯電制御剤等を加え、必要に応じて、得られた重合粒子を凝集した後に脱水・洗浄・乾燥工程を経て、必要に応じて添加剤を加えた後に容器に充填し製品となる。
【0003】
重合法のトナー製造の洗浄工程においては、特許文献1等に例示されるように、洗浄後のトナー粒子と洗浄液との固液分離のために、フィルターを用いるのが一般的であり、フィルタープレスや遠心分離機などの装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等が上記方法について検討したところ、洗浄工程においてはトナー粒子のケーキ層を形成し、洗浄液により不要成分を洗い流すが、その際不要成分がフィルターの目詰まりを引き起こしてしまうので洗浄液がフィルターを通過できる速度が低下し、最終的には固液分離できなくなってしまうという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、フィルターを使用せずに真比重差によって固液分離することで、固相部分の中からフィルターの目詰まりの原因となる不要成分を予め取り除き、その後のフィルターを使用した洗浄において効率よく固相部を洗浄することで良好な性能のトナーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記の不要成分は、トナー中に取り込まれずに残存したり、遊離したりしてしまった原料樹脂粒子やワックス粒子が主であることを突き止め、このワックス粒子をフィルターに詰まらせないことが不可欠と考えて検討を重ねた結果、本発明に至った。本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)水系媒体中にトナー粒子を含む固液混合物に対して重力加速度をかけ、混合物中の真比重差を利用して固液分離をした後、分離された固相成分をフィルターにより洗浄することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
(2)前記固液混合物中の固相成分と液相成分との真比重差が0.2以下であることを特徴とする(1)記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(3)前記重力加速度が5000G以上100000G以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(4)前記フィルターの通気度が100(cc/cm2/min)以下であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(5)前記トナー粒子を含有する固液混合物が、トナー粒子を重合法又はケミカルミリング法により製造したものであることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトナーは、フィルターを使用せず固液分離し、重力加速度を活かし、不要成分を除去後に固相部を洗浄しているので、洗浄する際に目詰まりを起こさない。よってそのトナーを作るに当たり、過剰な洗浄液量や洗浄時間、エネルギーを必要とせず、適量の液、時間、エネルギーで製造できる。
また、不要成分が洗浄前によく除去されているので フィルミングなどの画像不良が発生
せず、良好な画像を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例において、トナー洗浄回数毎の時間経過とフィルターを通過する水量との関係を示す概念図である。
【図2】比較例1において、トナー洗浄回数毎の時間経過とフィルターを通過する水量との関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、通常、重合トナーやケミカルミリングトナーの製造プロセスなどトナー粉体を液体で湿らせたり、液体中にトナーが分散したりした状態で洗浄液により不要成分を除去する場合に採用することができる。
重合トナーの製造方法は、懸濁重合法と乳化重合法とに大別される。本発明はケミカルミリングトナーの製造やいずれの重合方法にも適用可能であるが、ここでは主に、乳化重合法によって得られる重合トナーを例として説明する。
【0010】
重合トナーの通常の製造方法としては先ず原料となるモノマー、ワックス等を重合開始剤と必要に応じて連鎖移動剤の存在下に水中で重合槽を用いて重合し、顔料等の着色剤や帯電制御剤等の補助原料を加え、加熱して重合体粒子を凝集・溶融、冷却固化した後に種々の添加剤を加えてトナー材料を得る。トナー原料としてはモノマーおよびワックスが必須成分として使用されるが、必要に応じて例えば着色剤や帯電制御剤やその他のトナー特性付与剤を使用することができる。
【0011】
本発明で用いられるモノマーとしては、重合トナーに用いられるモノマーであれば特に限定されるものではなく、種々の公知の酸性極性基あるいは塩基性極性基を有するモノマーを用いることが出来る。酸性極性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
【0012】
また、塩基性極性基を有するモノマーとしては、アミノスチレン及びその4級塩、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、これらのアミノ基を4級化したアンモニウム塩を有する(メタ)アクリル酸エステル、更には、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミドを挙げることができる。
【0013】
その他のコモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタ
クリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。この中で、スチレン、ブチルアクリレート等が特に好ましい。
【0014】
これらのモノマーは単独または混合して用いられるが、その際、重合後に得られる重合体のガラス転移温度が40〜80℃となるよう決定することが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると定着強度が弱くなり、フルカラートナーにおいては、OHPシートに印字した際の透明性の悪化や普通紙においても光沢の低下が問題となることがあり、一方、重合体のガラス転移温度が低すぎる場合は、トナーの保存安定性が悪くなりすぎて問題を生じる。特に、酸性極性基を持つモノマーとしてアクリル酸が、その他のモノマーとしてスチレン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に使用される。
【0015】
ワックスとしては、重合トナーに用いられる公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド等が例示される。これらのワックスの中で定着性を改善するためにより好ましいのは、融点が100℃以下のワックスであり、更に好ましいワックスの融点は40〜90℃の範囲、特に好ましいのは50〜80℃の範囲である。融点が100℃を越えると定着温度低減の効果が乏しくなる。
【0016】
乳化重合法において、ワックス微粒子を、上記ワックスを公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から選ばれる少なくともひとつの乳化剤の存在下で乳化して得る。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等が挙げられる。
【0017】
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等があげられる。
【0018】
使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4‘−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロペーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2‘−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0019】
必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができるが、その様な連鎖移動剤の具体
的な例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン、等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5質量%用いられる。
先述のワックス類を乳化剤の存在下に分散してエマルションとし、樹脂のシード重合に供する。エマルション中のワックス粒子の平均粒径は、0.01μm 〜3μm が好ましく、さらに好ましくは0.03〜1μm、特に0.05〜0.8μmのものが好適に用いられる。なお、平均粒径は、例えばマイクロトラックUPA(日機装社製)を用いて測定することができる。ワックス粒子の平均粒径が大きすぎる場合にはシード重合して得られる重合体粒子の平均粒径が大きくなりすぎる傾向があり、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当な場合がある。また、ワックス粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、シード重合後の重合体一次粒子中のワックス含有量が低くなりすぎるためワックスの効果が低くなる傾向がある。
【0020】
ワックスエマルションの存在下でシード重合をするに当たっては、逐次、極性基を有するモノマー(酸性極性基を有するモノマーもしくは塩基性官能基有するモノマー)、及び、その他のモノマーを添加する事により、ワックスを含有するエマルション内で重合を進行させる。この際、モノマー同士は別々に加えても良いし、予め複数のモノマー混合しておいて添加しても良い。更に、モノマー添加中にモノマー組成を変更することも可能である。また、モノマーはそのまま添加しても良いし、予め水や界面活性剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。界面活性剤としては、前記の界面活性剤から1種又は2種以上の併用系が選択される。
【0021】
シード重合を進行させるにあたっては、乳化剤を一定量ワックスエマルションに添加してもかまわない。また重合開始剤の添加時期は、モノマー添加前、モノマーと同時添加、モノマー添加後のいずれでも良く、またこれらの添加方法の組み合わせであっても構わない。
以上の様にして得られる重合体一次粒子は、実質的にワックスを包含した形の重合体粒子であるが、そのモルフォロジーとしては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型、等いずれの形態をとっていてもよく、またこれらの形態の混合物であってもよい。特に好ましいのはコアシェル型である。ワックスは、通常、バインダー樹脂100質量部に対して1 質量部〜40質量部で用いられ、好ましくは2質量部〜35質量部、更に好ましくは5質量部〜30質量部で用いられる。また、本発明の趣旨をはずれない範囲では、ワックス以外の成分、例えば顔料、帯電制御剤、等を同時にシードとして用いても構わない。さらに着色剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わない。
【0022】
重合体一次粒子の平均粒径は、通常0.05μm〜3μmの範囲であり、好ましくは0.1μm〜1μm、更に好ましくは0.1μm〜0.5μmである。なお、平均粒径は、例えば先述のマイクロトラックUPAを用いて測定することができる。粒径が小さすぎると凝集速度の制御が困難となる傾向がある。また、大きすぎると凝集して得られるトナー粒径が大きくなり、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当な場合がある。
【0023】
上記のようにして得られた重合体一次粒子は、凝集工程において、攪拌槽で攪拌しながら必要に応じて上記の添加剤等を加えながら、重量平均粒径が約3〜12μm、好ましくは約5〜10μmの範囲になるように凝集粒子を生成させる。
重合、凝集工程では攪拌翼を有する公知の攪拌槽が使用できる。粒子同士の凝集をより強固にするために加熱処理を行ってもよい。
【0024】
なお、上記の重合工程において重合体一次粒子を得る際に、顔料等の着色剤をワックスと同時にシードとして用いたり、着色剤をモノマー又はワックスに各々溶解又は分散させて用いたりしても構わないが、凝集工程で重合体一次粒子と同時に着色剤一次粒子を凝集
させて会合粒子を形成し、重合トナーとすることが好ましい。この時、ワックスを内包化した重合体一次粒子が用いられるが、必要に応じて2種類以上の重合体一次粒子を用いても良い。また、ここで用いられる着色剤としては、無機顔料又は有機顔料、有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせでも良い。これらの具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100質量部に対して3〜20質量部となるように用いられる。
【0025】
これらの着色剤も乳化剤の存在下で水中に乳化させエマルションの状態で用いるが、平均粒径としては、0.01〜3μm のものを用いるのが好ましい。
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すれば良いが、通常はバインダー樹脂100質量部に対し0.01〜10質量部用い、更に好ましくは0.1〜10質量部用いる。
【0026】
更に、重合体一次粒子を得る際に、帯電制御剤をワックスと同時にシードとして用いたり、帯電制御剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わないが、重合体一次粒子と同時に帯電制御剤一次粒子を凝集させて会合粒子を形成し、重合トナーとすることが好ましい。この場合、帯電制御剤も水中で平均粒径0.01〜3μmのエマルションとして使用する。
【0027】
添加する時期は、重合体一次粒子と着色剤一次粒子を凝集させる工程で同時に添加して凝集させても良いし、これらの一次粒子が会合して2次粒子が生成した段階で加えても良いし、さらには粒径が最終的な重合トナーの粒径まで会合粒子が成長した後に添加しても良い。
重合トナーを製造するに当たっては、凝集粒子の粒径が実質的に最終的なトナーの粒径まで成長した後に、更に同種又は異なった種類のバインダー樹脂エマルションを添加し、粒子を表面に付着させることにより、表面近傍のトナー性状を修飾する事も可能である。
【0028】
本発明は、得られたトナー粒子を含む固液混合物に対して重力加速度をかける。従来は、トナー粒子を含む固液混合物に対してフィルタープレスや遠心分離器などのフィルターを用いる濾過装置で洗浄したが、フィルターを使用せずに真比重差を活かしトナー粒子を含む固液相に重力加速度を与えることで溶媒よりも軽い成分と溶媒よりも重いトナー粒子を分離した後、溶媒よりも軽い成分を除去し、溶媒よりも重い沈降したトナー粒子を回収することでトナー粒子から目詰まりの原因となる不要成分を取り除き、効率よくトナー粒子を洗浄することができ、さらに不要成分をよく除去することにより良好な性能のトナーを得ることができる。
【0029】
固液混合物中の不要成分の中で、固体微小粒子の不要成分としては、前記の重合体一次粒子と着色剤一次粒子の内、凝集せず残った残存粒子、凝集中に再度遊離した粒子などがある。乳化状態で存在している不要成分としては、前記のワックス乳化物でのシード重合
の際、モノマー成分と殆ど出会わず、ワックス成分リッチのまま残ってしまったもの、凝集中にトナー粒子から浸み出して来たワックス成分などがある。
【0030】
従来はフィルターを使用していたため、フィルターに不要成分が目詰まりした状態で固相部をきれいになるまで洗う必要があり、洗浄液も時間もエネルギーも過剰に必要となる。不要成分は上記のような状態で残存しているので、当初よりもさらに洗い落し難くなっている。このような不要成分を多く含んだトナーは、感光体へのフィルミングが発生しやすく、適正な摩擦帯電が得られず画像欠陥を生じ易かった。
【0031】
固液分離する際の重力加速度(遠心分離機の場合は遠心力)は不要成分を効率的に分離するために5000G以上、特には6000G以上であることが好ましく、また、100000G以下、特には50000G以下であることが好ましい。重力加速度を与えられる手段は目的を達成できるものであれば特に限定されないが、例えばディスク型遠心分離機、「ナノカット/マイクロカット」(商品名、クレテック社製)等の湿式遠心分級機、「CARR」(商品名、ニューマチック・スケール社製)等の連続遠心分離機など各種遠心分離機が好ましい例として挙げられる。またこの際、液相主成分である溶媒の比重と溶媒より重く主にトナー粒子を主成分とする固相成分との真比重差は0.2以下であることが好ましい。真比重差をこのような条件にすることによって、フィルターの目詰まりの原因となったワックス成分を多く含む不要物はワックスの真比重が溶媒の真比重以下であるために、液相部へ分けられる。つまり、固相部には不要物が少なくなり目詰まりの原因となる成分が少なくなる。なおこの固液分離における溶媒としては比重0.85〜1.15が好ましく、さらに好ましくは比重約0.95〜1.05が好ましい。
【0032】
この不要物が除去された固相部を、従来使用されていたフィルタープレスや遠心分離器などの濾過装置で洗浄することで、ケーキ層はきれいに洗うことができるので効率的かつより性能の良いトナーを製造できることとなる。なお、この不要物が除去された固相部をフィルタープレスや遠心分離器での洗浄の際に使用するフィルターの通気度は100(cc/cm2/min)以下が好ましく、さらに好ましくは30(cc/cm2/min)以上70(cc/cm2/min)以下が好ましい。
【0033】
フィルターを用いた濾過により固液分離することにより、トナー粒子のケーキが得られる。さらにトナー粒子のケーキに対し、洗浄液を懸洗することでトナー粒子を洗浄することが好ましい。この洗浄工程においては、トナー粒子に付着する不純物を低減し、幅広い環境に渡ってトナーの性能を発揮できるという点で、電気伝導度が2μS/cm以下のイオン交換水を、濾液の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで懸洗するのが望ましい。イオン交換水や濾液の電気伝導度は、通常の電気伝導度計により測定することができ、測定器の一例として「CM−25R」(東亜ディーケーケー製)を挙げることができる。
上記したフィルターとしては、SUS316Lなどの金属ワイヤーを織ったメッシュや、ポリエステルやポリプロピレンなどの繊維を織って作成した布、不織布、濾紙などが挙げられるが、取り扱いが楽で比較的耐久性の高い布製のフィルターを装着したフィルタープレスや遠心分離器などが、濾過装置として好ましい。
【0034】
この洗浄工程により、洗浄液に容易に溶解するような不要成分は比較的容易に洗い流すことができる。
洗浄工程によって得られたトナー粒子のケーキは、気流乾燥機、流動乾燥機又は真空乾燥機あるいはこれらの組み合わせによる乾燥機を用いて乾燥させることによって、重合トナーを得ることが出来る。
【0035】
本発明のトナーは、必要により流動化剤等の添加剤と共に用いることができ、そのような流動化剤としては、具体的には、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の微
粉末を挙げることができ、通常、バインダー樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部用いられる。
また、各種のトナー特性付与剤として、流動性および耐凝集性の向上のために、チタニア、アルミナ、シリカ等の無機微粒子を使用することができる。
【0036】
これらのトナー特性付与剤は、バインダー樹脂100質量部当たり、通常0.1〜10質量部の割合で使用される。更に、トナーが磁性トナーである場合には、フェライト、マグネタイトを始め、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性元素を含む合金又は化合物などの磁性粒子を含有することができる。磁性粒子は、バインダー樹脂100質量部当たり、通常、20〜70質量部の割合で使用される。
【0037】
上記のトナー特性付与剤を重合トナーに外添処理する場合には、それぞれを所定量配合の上、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機等で攪拌・混合をするのが良い。その際に、外添処理機内部で発熱があり、凝集物が生成しやすくなることがあるので、外添処理機周囲を水等で冷却するなどの手段で温度調節をしても良い。その場合には、外添処理機内部の温度を重合トナーの樹脂のガラス転移温度より低め、具体的には、5〜20℃、好ましくは10℃程度低めにするのが良い。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
なお、以下において「部」は「質量部」を示す。
(実施例1)
<ワックスエマルジョンAの製造>
パラフィンワックス(HNP9:日本精蝋製 融点77℃)27部(720kg)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、アニオン性界面活性剤20質量%水溶液(ネオゲンS−20D:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液 第一工業製薬製、以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.9部と共に、イオン交換水68.3部に加え90℃に加熱して、ホモミキサー(APV社製)を用い、28MPaの加圧条件で180分間循環乳化し、パラフィンワックスのエマルジョン(以下、「ワックスエマルジョンA」と略す)を作製した。なお、マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒径(mv)は0.25μmであった。
ワックスの融点は、セイコーインスツルメンツ製DSC−20を用いて、昇温速度10℃/minで測定を行い、DSCカーブにおいて最大の吸熱を示すピークの頂点の温度とした。
【0039】
<重合体一次粒子エマルジョンB1の製造>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、上記ワックスエマルジョンAを35.6部(1670kg)、イオン交換水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。表1の<重合性モノマー類等>と<乳化剤水溶液>との混合物を5時間かけて添加した。前記混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、「重合開始」の30分後から、前記の操作と併行して<開始剤水溶液−1>を4.5時間かけて添加した。前記混合物と<開始剤水溶液−1>の添加が終了後、<開始剤水溶液−2>を2時間かけて添加した。<開始剤水溶液−2>の添加が終了した後も更に攪拌を続け、内温90℃のまま1時間保持した。
【0040】
[表1]
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.75部
アクリル酸ブチル 23.25部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
イオン交換水 67.1部
[開始剤水溶液−1]
8質量%過酸化水素水溶液 15.52部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.52部
[開始剤水溶液−2]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.21部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子エマルジョンB1を得た。マイクロトラックUPAを用いて測定した体積平均粒径(mv)は0.28μmであり、固形分濃度は21.3質量%であった。
【0041】
<重合体一次粒子エマルジョンB2の製造>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に20%DBS水溶液を1.72部(117.4kg)、イオン交換水を309部仕込み、窒素
気流下で攪拌しながら、90℃に昇温した。表2の<開始剤水溶液−3>を一括添加した。
【0042】
その後も攪拌を続けたまま、表2の<重合性モノマー類等>と<乳化剤水溶液>との混合物を5時間かけて添加した。また、前記混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、前記の操作と併行して<開始剤水溶液−4>を重合開始から6時間かけて添加した。<開始剤水溶液−4>の添加が終了した後も更に攪拌を続け、内温90℃のまま1時間保持した。
【0043】
[表2]
[重合性モノマー類等]
スチレン 100.0部
アクリル酸 0.5部
トリクロロブロモメタン 0.63部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
イオン交換水 66.0部
[開始剤水溶液−3]
8質量%過酸化水素水溶液 3.2部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 3.2部
[開始剤水溶液−4]
8質量%過酸化水素水溶液 18.9部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子エマルジョンB2を得た。マイクロトラックUPAを用いて測定した体積平均粒径(mv)は0.15μmであり、固形分濃度は19.7質量%であった。
【0044】
<トナー粒子分散液の製造>
表3の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程・シェル被覆工程)・円形化工程を実施することによりコアシェル型の構造を持ったトナー粒子の分散液を得た。
【0045】
[表3]
重合体一次粒子エマルジョンB1 固形分として90部
重合体一次粒子エマルジョンB2 固形分として10部
着色剤(ピグメントイエロー74) 分散液 着色剤固形分として6.7部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.05部
円形化工程では、固形分として6部
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子エマルジョンB1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で5分間ゆっくりと攪拌混合した。続いて攪拌速度を上げ、第一硫酸鉄の0.5%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分間かけて添加し、5分間保持した。次に着色剤分散液を8分かけて連続添加し、5分間保持した後、イオン交換水20部を3分かけて連続添加してから、5分間保持した。
【0046】
その後、高速を保持したまま内温を54℃まで96分かけて昇温した。次いで、その状
態で130分保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定したところ、6.8μmまで成長した。
○シェル被覆工程
その後、重合体一次粒子エマルジョンB2を13分かけて連続添加してそのまま40分保持した。このとき、粒子のDv50は7.0μmであった。
【0047】
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)を仕込んだ。次にコア材凝集工程以降の水分を含む全仕込み重量の0.04倍の重量のイオン交換水を計15分かけて添加した後、98℃に昇温し、その後、120分保持した。その後、90分かけて30℃まで冷却し、トナー粒子分散液を得た。この時トナー粒子のDv50は6.9μm、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000(シスメックス社製)を用いて測定した平均円形度は0.968であった。
【0048】
<トナー粒子の固液分離>
このトナー粒子分散液をディスク型遠心分離機(斉藤遠心機工業株式会社、商品名「サイトウセパレーター ADS-1001CS型」)を用い、以下条件で固液分離した。なお、トナー
(固相成分)の真比重は1.06であり、液相(水)の比重は1であるため、固相成分と液相成分の真比重差は0.06であった。
「固液分離条件」
容量 3000L/H
モーター 2.2KW
遠心力 8200G
回転数 8000rpm
原液供給速度=80L/h
トナー粒子分散液 トナー成分濃度 16.6%
トナー粒子分散液 投入量 200.4kg
図1に示すように、分離をしながら、経過時間毎のフィルター通水量を測定した。トナー粒子分散液をディスク型遠心分離機で固液分離し、フィルターを所定量のイオン交換水が通水するのに要した時間Tnが、新品のフィルターを用いた際に要する時間T1の2倍以上になった時点でのフィルターの状態を目詰まりによるフィルターの使用限界とした。但し、本実施例では、後記するように同様の洗浄を10回繰り返しても、洗浄水量は低下しなかった。
【0049】
本条件の分散液投入で約30kgの水分を含む固相が得られので、これをコンテナにて再度170kgの水を加え、攪拌しで分散させ、この合計200kgトナー粒子再分散液
を得た後に、以下の条件で洗浄した。
<トナー粒子の洗浄>
○粗大粒子の濾過
得られたスラリーAを全量、目開き24μmの篩を装着した湿式電磁篩振盪機(AS200/株式会社レッチェ)を用いて、粗大粒子の除去を目的に濾過処理を行い、攪拌装置つきのタンクにて一旦蓄えた。
【0050】
○基礎ケーキ層の形成
その後、このスラリーを、フィルター(ポリエステル TR815C、中尾フィルター工業/厚み0.3mm/通気度48(cc/cm2/min)、溶解度パラメーター21.5(MPa)1/2)が装着された横型遠心分離機(Hz40Si型/三菱化工機株式会社)へ、加
速度800G条件で回転させた状態にて7リットル分だけ供給し、当該スラリーの固液分離を行った。ケーキ層が形成されるまでは着色したスラリー液が濾液出口から漏れたので、着色分がなくなるまで別に濾液を回収した。上澄み液が無くなって乾固したケーキ層の面が露出してから30秒間、800Gの加速度のまま振り切りを行った後、6.68リットル/分の量のイオン交換水(電気伝導度0.9μS/cm)を供給し、濾液の電気伝導度が5.0μS/cm以下になるまで洗浄した。尚、漏れ出した量は乾燥ケーキにして、53g相当だった。
【0051】
目標伝導度以下になったら、そのままの回転で3分間振り切って十分に固液分離を行った。このときのバスケット内のケーキ層の厚みは7mmであった。
○スラリー供給
遠心分離機バスケット内に均一に基礎ケーキ層が形成されたことを確認した後、再び加速度800Gでバスケットを回転させ、その状態でスラリーAをタンクよりバスケット内に14リットル供給した。
【0052】
○1次洗浄
上澄み液が無くなって乾固したケーキの面が露出してから30秒間、800Gの加速度のまま振り切りを行った後、6.68リットル/分の量のイオン交換水(電気伝導度1.0μS/cm)を供給し、濾液の電気伝導度が5.0μS/cm以下になるまで洗浄した。この時の供給水量を時間ごとに記録した。また、濾過速度が低下して、供給水量が濾過水量を超えるとバケットリム幅を超えて水が溢れてしまうので、適宜供給を止めて調整した。ただし、所定伝導度になるまではケーキの面が露出しないよう水層が必ず存在するように、供給水量を調整した。
【0053】
○硝酸洗浄
上記1次洗浄で所定伝導度に達したらイオン交換水の供給を停止し、水面が下がってケーキ面が露出したら30秒間、800Gの加速度のまま振り切りを行った。直ぐに続けて、5規定硝酸水28gを10.0リットルのイオン交換水で希釈した希薄硝酸水を、遠心分離機に5.0リットル/分の速度で供給して、ケーキ層を洗浄した。供給は前述の通り、溢れない様に適宜止めたり再開したりしながら、全量を入れた。
【0054】
○2次洗浄
希薄硝酸水を入れ終わってから、水面が下がってケーキ面が露出したら30秒間、800Gの加速度のまま振り切りを行った。その後、続けて10リットル/分の量のイオン交換水を供給し、濾液の電気伝導度が5.0μS/cm以下になるまで洗浄した。供給は前述の通り、溢れない様に適宜止めたり再開したりしながら、所定伝導度になるまで給液と遠心濾過を継続した。
○最終振り切りとケーキ排出
上記2次洗浄で所定伝導度に達したらイオン交換水の供給を停止し、水面が下がってケ
ーキ面が露出したら300秒間、800Gの加速度のまま振り切りを行った。振り切り終了時間が到達したら、高速回転のまま掻き取り用のステライト刃をケーキ面に当てて、ケーキ層を掻き取った。装置前面蓋に付随しているケーキ排出口に回収袋を取り付け、落ちてきた粉状のケーキを回収した。この時、装置内のケーキ層は5mmの厚み分を残した。
【0055】
得られた含水ケーキは3.17kgであり、また水分量は市販の熱天秤方式の測定器で測定したところ、37.9%であった。従って、乾燥ケーキとしては、1.97kgとな
った。これは、投入スラリー量とスラリー濃度から算出された量2.10kgと比較することで、収率が得られるが、その値は93.7%であった。また、スラリー給液からケーキ排出終了までの時間は24分52秒、希薄硝酸水も含めた総洗浄水量は60.4リトッル、乾燥ケーキ1kg当たりの洗浄水量は33.4リットルとなった。これを洗浄1サイクル目とした。
【0056】
引き続き、遠心分離機を再稼動させて、スラリーAを14リットル供給するところから、上記と同様にして掻き取りまでを行ったところ、含水ケーキが3.08kg、含水率38.1%、乾燥ケーキ換算で1.96kgが得られ、その収率は93.4%であった。そ
の時間は24分51秒、総洗浄水量は59.5リトッル、乾燥ケーキ1kg当たりの洗浄水量は31.1リットルとなった。これを洗浄2サイクル目とした。
【0057】
同様にして、引き続きスラリー洗浄を行ったところ、含水ケーキが3.17kg、含水率38.5%、乾燥ケーキ換算で1.95kgが得られ、その収率は92.8%であった。その時間は24分28秒、総洗浄水量は59.5リトッル、乾燥ケーキ1kg当たりの洗浄水量は30.9リットルとなった。これを洗浄3サイクル目とした。
同様にして、引き続きスラリー洗浄を行ったところ、含水ケーキが3.13kg、含水率38.3%、乾燥ケーキ換算で1.93kgが得られ、その収率は92.0%であった。その時間は24分53秒、総洗浄水量は59.5リトッル、乾燥ケーキ1kg当たりの洗浄水量は31.4リットルとなった。これを洗浄4サイクル目とした。
【0058】
同様にこれを洗浄10バッチ目まで繰り返したが、洗浄水量が低下することはなかった。
<トナー製造、評価>
洗浄したトナーを乾燥、外添、プリント試験を実施したところ、OPC感光体にフィルミングが観察されず、良好な結果となった。
【0059】
(比較例1)
実施例1と比較してディスク型遠心分離機を使用せず、不要成分を取り除かずにスラリ
ーをそのまま三菱化工機社製ピーラーセントリフュージHZ160L(サイホン付き)型にてフィルターを使用して下記条件で洗浄した。図2の概念図で示すように洗浄を繰り返す毎に徐々に洗浄流量が低下し、3回分の洗浄を繰り返したところで洗浄時間T3が一回目時間T1の2倍以上となり、フィルターが使用限界に達した。
【0060】
「洗浄条件」
三菱化工機社製ピーラーセントリフュージHZ160L(サイホン付き)型
円筒ろ布 面積5.0平方メートル 材質ポリエステル
回転数 950rpm
遠心力 800G
トナー粒子分散液 トナー成分濃度 16.6%
トナー粒子分散液 投入量 1.4立方メートル
本条件の分散液投入量で厚さ約8cmのケーキ層が形成され、8立方メートルのイオン交換水により洗浄した。このケーキ層からケーキを掻き取り、フィルターの目詰まり成分
を分析し、主成分がワックスであることを確認した。
【0061】
<トナー製造、評価>
この回収した上流側ケーキ層を目標例1と同様に乾燥、外添、プリント試験を実施した
ところ、OPC感光体にフィルミングが発生し、プリント物にも画像不良が発生した。
(比較例2)
実施例1と比較してディスク型遠心分離機を使用せず、代わりにタナベウィルテック社
製 スクリューデカンターを使用して下記条件にて不要成分を取り除こうとしたが、重力加速度(G)が不十分であり、固形物を回収しきれず、液相側に17.3%の固形物が混入してしまった。
【0062】
なお、その後実施例1記載の条件で洗浄したところ、図1の概念図と同様に洗浄流量が
低下することはまく、10回繰り返し洗浄をしてもフィルターが使用限界に達しなかった。「洗浄条件」
タナベウィルテック社製 スクリューデカンター
型式:Z1LS-VE,(11kW)
条件:
遠心力:3500G
回転数:5220rpm
原液供給速度=200L/h
<トナー製造、評価>
この回収した上流側ケーキ層を目標例同様に乾燥、外添、プリント試験を実施したところ、OPC感光体にフィルミングはなく、プリント物にも画像不良はなかったが、回収できなかった液相側の固形分重量は17.3%であり、収率が悪いために原単価が大幅に上昇してしまうというデメリットがあり、実際の生産で使用するのは困難な結果となった。
【符号の説明】
【0063】
W:洗浄水流量
t:経過時間
Tn:繰り返しn回目の洗浄時間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系媒体中にトナー粒子を含む固液混合物に対して重力加速度をかけ、混合物中の真比重差を利用して固液分離をした後、分離された固相成分をフィルターにより洗浄することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記固液混合物中の固相成分と液相成分との真比重差が0.2以下であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記重力加速度が5000G以上100000G以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記フィルターの通気度が100(cc/cm2/min)以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記トナー粒子を含有する固液混合物が、トナー粒子を重合法又はケミカルミリング法により製造したものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate