説明

静電誘導検出器用の電圧センサおよびクリップ

【課題】非常に丈夫であり、かつ簡単な構造にて小型化によく対応させることができるばかりでなく、絶縁を確実にしてその組み込みも容易であり、製造コストに関しても非常に安価なものとすることができる静電誘導検出器用の電圧センサを提供する。
【解決手段】プリント配線板12の表層に銅箔層を付着して形成される表面導電層131aは、プリント配線板12におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が第1貫通ビア16に接続され、表面基板層131bを介して表面導電層131aと絶縁されたプリント配線板12の内層に銅箔層を付着して形成される第1導電層132aは、プリント配線板12におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が第2貫通ビア17に接続され、表面導電層131aがセンサ電極として機能し、第1導電層132aがシールド電極として機能し、一体構造の電圧センサ11となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検相器や検電器などの静電誘導検出器が備えるクリップに配設する、被測定導体から静電誘導させるセンサ電極の構造を簡素化して、クリップの小型化に対応することで、静電誘導検出器に容易に組み込むことができるようにした電圧センサおよびクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
検相器や検電器などの静電誘導検出器が備えるクリップには、検出対象である被測定導体から静電誘導により電荷を検出するためのセンサ電極が配設されている。この種のクリップは、一側クリップ部と他側クリップ部とが、略V字形を呈する捩りコイルばねを介装させた支軸を介することで、被測定導体を保持するために開閉できる構造であり、一対のクリップ部において相対する保持部が常閉状態となって、被測定導体を狭持する。また、各保持部の内側には、電圧センサが各別に配設されており、被測定導体を保持させた際には、静電誘導により電荷を検出することができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような静電誘導検出器のクリップにおける各電圧センサは、被測定導体側に配置されるセンサ電極片と、他の近接交流電路より発生する外乱静電誘導を遮蔽するために、センサ電極片の外側近傍にてこれに沿わせるように配置されるシールド電極片とを、絶縁塗料を塗布した絶縁層や、絶縁フィルムや絶縁テープなどの絶縁材を介在させた上で組み合わせることにより形成されている。そして、センサ電極片とシールド電極片とには、例えばプレスや機械加工などの成形手法を用いて形成された銅板などの板状導電金属材が使用されている。
【0004】
また、従来の検相器には、環状モールド成形体の中に電圧検出用電極と電流検出用電極とを封入し、電圧検出用電極を電流検出用電極の内側に配置し、かつ、両者間に遮蔽層を設けたものもある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−30141号公報
【特許文献2】特公平1−26510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリップに設ける電圧センサは、別体として用意されるセンサ電極片とシールド電極片とを組み合わせて形成されるものであることから、絶縁をとって相互を近接配置することは困難であり、一側クリップ部と他側クリップ部への組み込みも難しいなど、製造工程における作業性が良いとは言えず、比較的小型なものに対応させることも構造的な難しさがあった。
【0007】
また、柔軟性があり大きく変形するフレキシブルプリント基板にて、電圧センサを形成する場合、センサ電極片とシールド電極片とを薄い絶縁シートにて各別に配設する必要があり、一定の強度を保ちながらセンサ電極片とシールド電極片とを密接させた状態にて一体形成することは難しく、組立て時の折り曲げなどの影響により断線および短絡する可能が非常に高くなるだけはでなく、新規作成時にかかるイニシャルコストとセンサ一枚辺りの単価が、非常に高くなる問題がある。
【0008】
更に、特許文献2に記載された検相器においても、異相線からの静電誘導を防ぐ遮蔽層が電圧検出用電極とは別体となって設けられており、特許文献1と同様な課題をかかえるものであった。
【0009】
本発明は、従来技術にみられた上記課題に鑑み、非常に丈夫であり、かつ簡単な構造にて小型化によく対応させることができるばかりでなく、絶縁を確実にしてその組み込みも容易であり、製造コストに関しても非常に安価なものとすることができる静電誘導検出器用の電圧センサおよびクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る静電誘導検出器用の電圧センサは、印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板と、前記プリント配線板の面内に納まるように、絶縁基板を介して絶縁を保持しつつ、異なる層に各別に配設された一対の導電層にて構成され、前記導電層のそれぞれは、前記プリント配線板の面サイズの大半を覆う主面部が半田付け用のランド銅箔部と接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の静電誘導検出器用の電圧センサにおいて、前記一対の導電層は、何れもプリント配線板の内層に配置したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に記載の静電誘導検出器用の電圧センサにおいて、前記プリント配線板の内層に配設された導電層は、主面部につながる貫通ビアにて半田付け用の銅箔部を形成したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る静電誘導検出器用のクリップは、被測定導体を保持するために開閉される各プリント配線板保持部側が常閉方向に付勢されて一体的に軸支される一側クリップ部と他側クリップ部とで構成され、前記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の静電誘導検出器用の電圧センサを、前記一側クリップ部と他側クリップ部との各プリント配線板保持部の内側に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る静電誘導検出器用の電圧センサによれば、印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板と、前記プリント配線板の面内に納まるように、絶縁基板を介して絶縁を保持しつつ、異なる層に各別に配設された一対の導電層にて構成され、前記導電層のそれぞれは、前記プリント配線板の面サイズの大半を覆う主面部が半田付け用のランド銅箔部と接続されており、一対の導電層相互を完全に絶縁できると共に、一方の導電層をセンサ電極として、他方の導電層をシールド電極として、それぞれ用いることにより一体構造とすることができる。
【0015】
また、請求項2に係る静電誘導検出器用の電圧センサによれば、前記一対の導電層は、何れもプリント配線板の内層に配置したので、両方の導電層を外部からも完全に絶縁することが可能であると共に、外部からの衝撃などから導電層を保護することもでき、プリント配線板の構造上から表裏面間よりも多層プリント配線板の隣接する層間の方が、それぞれの導電層間隔を簡単に狭めることが可能なため、結果として、外部からくるノイズなどの影響を受けにくくすることができる。
【0016】
また、請求項3に係る静電誘導検出器用の電圧センサによれば、前記プリント配線板の内層に配設された導電層は、主面部につながる貫通ビアにて半田付け用の銅箔部を形成したので、内層に設けた導電層を簡単に線材などと接続することができる。しかも、プリント配線板に接続されている線材に、外部からの力が加わった場合でも、プリント配線板上のランドが剥離しにくい構造にできる。
【0017】
請求項4に係る静電誘導検出器用のクリップによれば、被測定導体を保持するために開閉される各プリント配線板保持部側が常閉方向に付勢されて一体的に軸支される一側クリップ部と他側クリップ部とで構成され、前記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の静電誘導検出器用の電圧センサを、前記一側クリップ部と他側クリップ部との各プリント配線板保持部の内側に設けたので、クリップ自体の小型化を実現できるばかりでなく、その組立て作業も簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は第1実施形態に係る電圧センサの概略平面図、(b)は第1実施形態に係る電圧センサの概略底面図、(c)は図1(a)におけるC−C線矢視断面図、(d)は図1(a)におけるD−D線矢視断面図である。
【図2】(a)は第2実施形態に係る電圧センサの概略平面図、(b)は第2実施形態に係る電圧センサの概略底面図、(c)は図2(a)におけるC−C線矢視断面図、(d)は図2(a)におけるD−D線矢視断面図である。
【図3】(a)は第3実施形態に係る電圧センサの概略平面図、(b)は第3実施形態に係る電圧センサの概略底面図、(c)は図3(a)におけるC−C線矢視断面図、(d)は図3(a)におけるD−D線矢視断面図である。
【図4】本発明に係るクリップの概略構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る電圧センサの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る電圧センサの第1実施形態を示すもので、図1(a)は電圧センサ11の平面(被測定導体側に配置される表面)を示し、図1(b)はその底面(裏面)を示し、図1(c)は図1(a)におけるC−C線矢視方向での断面を示し、図1(d)は図1(a)におけるD−D線矢視方向での断面を示す。
【0021】
第1実施形態に係る電圧センサ11は、プリント配線板12の面内に納まるように、異なる積層面である表面導電層131aと第1導電層132aとに、各別に配設され、表面導電層131aに関してはソルダーレジスト15により外部と絶縁することが可能なように形成されている。
【0022】
このうち、プリント配線板12は、例えば紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、アルミナ基板、コンポジット基板などにて組成されており、多層基板、ビルドアップ基板などの構造にて形成されている。
【0023】
プリント配線板12の表層に銅箔層を付着して形成される表面導電層131aは、プリント配線板12におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第1貫通ビア16に接続された状態で形成されている。
【0024】
また、プリント配線板12の前記表面導電層131aとは異なる、プリント配線板12の内層(表面基板層131bを介して表面導電層131aと絶縁された内層)に銅箔層を付着して形成される第1導電層132aは、プリント配線板12におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第2貫通ビア17に接続された状態で形成されている。
【0025】
表面導電層131aのようにプリント配線板12の表面上に導電層が形成されている場合はソルダーレジスト15により絶縁させており、これにより半田付け用の第1,第2貫通ビア16,17が位置する面領域を除く前記プリント配線板12の表面導電層131aの全面が覆われている。
【0026】
すなわち、本実施形態に係る静電誘導検出器用の電圧センサ11は、印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板12により絶縁を保持して一対の導電層(表面導電層131aと第1導電層132a)を形成することで、センサ電極用の導電層とシールド電極用の導電層を一体に組み込んだセンサ構造(電圧センサ11の表面側をセンサ面13、裏面側をシールド面14とする構造)を実現でき、非常に丈夫であり、かつ簡単な構造にて小型化によく対応させることができるばかりでなく、絶縁を確実にしてその組み込みも容易であり、製造コストに関しても非常に安価なものとすることができる。
【0027】
なお、電荷検出用の表面導電層131aに対するシールド用の導電層を形成する層は、第1導電層132aに限定されるものではなく、第1基板層132bを介して第2導電層133aとしたり、更に第2基板層133bを介して第3導電層134aとしたりしても良い。また、プリント配線板12の平面形状、表面導電層131a,第1導電層132aの平面形状は、特に限定されるものではなく、適宜変形して構わない。また、特に耐電圧特性の向上を図ったり、結露の影響を回避したりする必要がない場合には、表面導電層131aをソルダーレジスト15などで覆わなくても構わない。
【0028】
また、電圧センサ11は、そのいずれか一方の面に予め接着剤を塗着しておくことで、この接着剤を有する面をセンサ電極側として、接着剤を有しない面をシールド電極側として用いることができる。あわせて、プリント配線板12の表面にシルクスクリーン印刷などを施すことで電圧センサ11に識別番号および取り付け時の位置決めなどに使える目印を付加することも可能となり、この電圧センサ11をクリップへ組み込む作業を一層効率的に行える。
【0029】
図2は、本発明に係る電圧センサの第2実施形態を示すもので、図2(a)は電圧センサ11′の平面(被測定導体側に配置される表面)を示し、図2(b)はその底面(裏面)を示し、図2(c)は図2(a)におけるC−C線矢視方向での断面を示し、図2(d)は図2(a)におけるD−D線矢視方向での断面を示す。
【0030】
第2実施形態に係る電圧センサ11′はプリント配線板12′の面内に納まるように、異なる積層面である第1導電層132a′と、第1基板層132b′を介して絶縁が保持される第2導電層133a′とに、各別に配設され、全ての導電層がプリント配線板12′の内層に配置される。なお、プリント配線板12′は、例えば紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、アルミナ基板、コンポジット基板などにて組成されており、多層基板、ビルドアップ基板などの構造にて形成されている。
【0031】
プリント配線板12′の内層に銅箔層を付着して形成される第1導電層132a′は、プリント配線板12′におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第1貫通ビア16′に接続された状態で形成されている。
【0032】
また、プリント配線板12′の前記第1導電層132a′とは異なる、プリント配線板12′の内層に銅箔層を付着して形成される第2導電層133a′は、プリント配線板12′におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第2貫通ビア17′に接続された状態で形成されている。
【0033】
すなわち、本実施形態に係る静電誘導検出器用の電圧センサ11′は、印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板12′の内層に、絶縁を保持して一対の導電層(第1導電層132a′と第2導電層133a′)を形成することで、センサ電極用の導電層とシールド電極用の導電層を一体に組み込んだセンサ構造(電圧センサ11′の表面側をセンサ面13′、裏面側をシールド面14′とする構造)を実現でき、非常に丈夫であり、かつ簡単な構造にて小型化によく対応させることができるばかりでなく、絶縁を確実にしてその組み込みも容易であり、製造コストに関しても非常に安価なものとすることができる。しかも、一対の導電層は全てプリント配線板12′の内層に設けるので、上述した第1実施形態の電圧センサ11のように、表面導電層131aの外表面にソルダーレジスト15を設けて絶縁を保持する必要がないという利点もある。
【0034】
なお、電荷検出用の第1導電層132a′に対するシールド用の導電層を形成する層は、第2導電層132a′に限定されるものではなく、更に第2基板層132b′を介して第3導電層134a′としても良い。また、プリント配線板12′の平面形状、第1導電層132a′,第2導電層133a′の平面形状は、特に限定されるものではなく、適宜変形して構わない。
【0035】
また、電圧センサ11′は、そのいずれか一方の面に予め接着剤を塗着しておくことで、この接着剤を有する面をセンサ電極側として、接着剤を有しない面をシールド電極側として用いることができる。あわせて、プリント配線板12′の表面にシルクスクリーン印刷などを施すことで電圧センサ11′に識別番号および取り付け時の位置決めなどに使える目印を付加することも可能となり、この電圧センサ11′をクリップへ組み込む作業を一層効率的に行える。
【0036】
図3は、本発明に係る電圧センサの第3実施形態を示すもので、図3(a)は電圧センサ31の平面(被測定導体側に配置される表面)を示し、図3(b)はその底面(裏面)を示し、図3(c)は図3(a)におけるC−C線矢視方向での断面を示し、図3(d)は図3(a)におけるD−D線矢視方向での断面を示す。
【0037】
第3実施形態に係る電圧センサ31は、プリント配線板32の面内に納まるように、異なる積層面である表面導電層331aと裏面導電層335とに、各別に配設され、表面導電層331a、裏面導電層335共に、ソルダーレジスト35により絶縁することが可能なように形成されている。なお、プリント配線板32は、例えば紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、アルミナ基板、コンポジット基板などにて組成されており、両面基板、多層基板、ビルドアップ基板などの構造にて形成されている。
【0038】
プリント配線板32の表層たる表面基板層331bの外面に銅箔層を付着して形成される表面導電層331aは、プリント配線板32におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第1ランド36に接続された状態で形成されている。
【0039】
また、プリント配線板32の前記表面導電層331aとは異なる、プリント配線板32の裏層たる裏面基板層334bの外面に銅箔層を付着して形成される裏面導電層335は、プリント配線板32におけるその周囲に余白を残して面サイズの大半をほぼ覆う主面部が、第2ランド37に接続された状態で形成されている。
【0040】
すなわち、本実施形態に係る静電誘導検出器用の電圧センサ31は、印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板32の表層および裏層に、各々導電層(表面導電層331aと裏面導電層335)を形成することで、センサ電極用の導電層とシールド電極用の導電層を一体に組み込んだセンサ構造(電圧センサ31の表面側をセンサ面33、裏面側をシールド面34とする構造)を実現でき、非常に丈夫であり、かつ簡単な構造にて小型化によく対応させることができるばかりでなく、絶縁を確実にしてその組み込みも容易であり、製造コストに関しても非常に安価なものとすることができる。
【0041】
なお、第1ランド36および第2ランド37は、ソルダーレジスト35を塗布しない領域として形成できるので、上述した第1,第2実施形態に係る電圧センサ11,11′のように、第1貫通ビア16,16′や第2貫通ビア17,17′を設けるよりも簡単な構造で半田付け用の銅箔部を形成できる。
【0042】
また、電圧センサ31は、そのいずれか一方の面に予め接着剤を塗着しておくことで、この接着剤を有する面をセンサ電極側として、接着剤を有しない面をシールド電極側として用いることができる。あわせて、プリント配線板32の表面にシルクスクリーン印刷などを施すことで電圧センサ31に識別番号および取り付け時の位置決めなどに使える目印を付加することも可能となり、この電圧センサ31をクリップへ組み込む作業を一層効率的に行える。
【0043】
次に、本発明に係るクリップ40について、図4に基づいて説明する。なお、このクリップ40には、上述した第1〜第3実施形態の電圧センサ11,11′,31の何れを設けても構わないが、以下の説明では、電圧センサ11を用いる。
【0044】
図4は、クリップ40を半割りした状態を示すもので、一側クリップ部41と他側クリップ部42とは、略V字形を呈する捩りコイルばね43を介装させた支軸44を介することで、被測定導体を保持するために開閉される各鉤爪形の保持部45,46側が常閉状態となって一体的に軸支されてクリップ40の全体が形成されている。
【0045】
なお、クリップ40自体の形状や構造は、特に限定されるものではなく、被測定導体を挟む一対の保持部に各々電圧センサ11を組み込める構造を有していれば良い。すなわち、各鉤爪形の保持部45,46の内側には、電圧センサ11が各別に配設され、被測定導体を保持させた際に静電誘導により電荷を検出することができる。
【0046】
例えば、一側クリップ部41の鉤爪形の保持部46内側には、電圧センサ11のセンサ面13を対面させ、かつ、第1,第2貫通ビア16,17を形成した側が支軸44側に向くような配置とし、電圧センサ11が鉤爪形の保持部46の内面に接するように接合固着するなどして位置固定されている。
【0047】
また、他側クリップ部42も、一側クリップ部41と同様の構造で、鉤爪形の保持部45内側には、電圧センサ11のセンサ面13を対面させ、かつ、第1,第2貫通ビア16,17を形成した側が支軸44側に向くような配置とし、電圧センサ11が鉤爪形の保持部45の内面に接するように接合固着するなどして位置固定されている。
【0048】
このため、クリップ40に配設された一対の電圧センサ11は、一側クリップ部41側の表面導電層131aと他側クリップ部42側の表面導電層131aとを、それぞれ被測定導体側に配置して、センサ電極として機能させることができる。
【0049】
また、クリップ40に配設された一対の電圧センサ11は、一側クリップ部41側のシールド面14と他側クリップ部42側のシールド面14が、三相交流電路や束ねられている交流電路における他の近接交流電路側に配置されることとなり、これらから発生する外乱静電誘導を遮蔽するシールド電極として機能させることができる。
【0050】
しかも、一対の電圧センサ11自体は、それぞれ一体物として形成されているので、一側クリップ部41側と他側クリップ部42側に単にはめ込むなどして、ごく簡単に組み込んでクリップ40を形成することができる。また、電圧センサ11のセンサ面13とシールド面14とは、ソルダーレジスト15および各基板層によって確実に絶縁されているので、結露などの短絡要因が存在しても相互間の抵抗が下がりにくく、したがって、電荷を安定的に検出することができる。
【0051】
以上は、本発明に係る電圧センサおよびクリップの実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明の包摂範囲は、これらの実施形態に限定されるものではなく、公知既存の手法を適宜転用することで実現しても構わない。
【符号の説明】
【0052】
11,31 電圧センサ
12,32 プリント配線板
13,33 導電層
15,35 ソルダーレジスト
16,17 貫通ビア
36,37 ランド
131a,331a 表面導電層
131b,331b 表面基板層
132a,332a 第1導電層
132b,332b 第1基板層
133a,333a 第2導電層
133b,333b 第2基板層
134a,334a 第3導電層
134b,334b 裏面基板層
335 裏面導電層
40 クリップ
41 一側クリップ部
42 他側クリップ部
43 コイルばね
44 支軸
45,46 鉤爪形の保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷回路基板製造技術により製造した適宜の平面形状を呈するプリント配線板と、
前記プリント配線板の面内に納まるように、絶縁基板を介して絶縁を保持しつつ、異なる層に各別に配設された一対の導電層にて構成され、
前記導電層のそれぞれは、前記プリント配線板の面サイズの大半を覆う主面部が半田付け用のランド銅箔部と接続されていることを特徴とする静電誘導検出器用の電圧センサ。
【請求項2】
前記一対の導電層は、何れもプリント配線板の内層に配置したことを特徴とする請求項1に記載の静電誘導検出器用の電圧センサ。
【請求項3】
前記プリント配線板の内層に配設される導電層は、主面部につながる貫通ビアにて半田付け用の銅箔部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電誘導検出器用の電圧センサ。
【請求項4】
被測定導体を保持するために開閉される各プリント配線板保持部側が常閉方向に付勢されて一体的に軸支される一側クリップ部と他側クリップ部とで構成され、
前記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の静電誘導検出器用の電圧センサを、前記一側クリップ部と他側クリップ部との各プリント配線板保持部の内側に設けたことを特徴とする静電誘導検出器用のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−169568(P2010−169568A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13034(P2009−13034)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(390025623)共立電気計器株式會社 (7)
【Fターム(参考)】