説明

静電霧化装置

【課題】安定して帯電微粒子液体を発生させることができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】帯電微粒子液体の放出方向と同じ方向に空気流を発生させるファンモータM及びファンFを設けたハウジング11内に静電霧化部12を配設した際に、放電電極13の先端部にその空気流が当たらないように、絶縁材料からなる防風壁21を形成し、その防風壁21内に放電電極13を収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象により帯電微粒子液体を発生させる静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極に高電圧を印加して放電させることにより、放電電極に供給された液体(以下の説明では、水として説明する)を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子液体を発生させる静電霧化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の静電霧化装置では、放電電極がペルチェ素子(圧電素子)を備えたペルチェユニットにて冷却されることで空気中の水分が結露するようになっており、その結露した水分によって放電電極に水が供給されるようになっている。そして、放電電極に高電圧を印加することで、供給された水が静電霧化され、ナノメータサイズの帯電微粒子液体が生成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−68711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述したように、結露水は、ペルチェ素子によって放電電極を冷却して空気中の水分を結露させることにより生成されるようになっている。つまり、放電電極が冷却されるほど結露水が生成されやすくなるため、これに伴って帯電微粒子液体も生成されやすくなる。なお、図6に示すように特許文献1に記載の静電霧化装置50では、放熱部51にファンFの回転によって生じた空気流を当てることで、放熱部51の放熱効率を向上させるようになっている。
【0006】
ところで、放電電極52は、その基端部ほど冷却され易くなっている一方で、放電電極52の先端部(放電部52a)ほど冷却され難くなっている。ところが、特許文献1に記載の静電霧化装置50では、ケース53の側周壁に複数の取入口54を設けている。このため、取入口54から流入する空気量が多くなるほど孔55から効率よく帯電微粒子液体を放出することができるものの、取入口54から流入する空気が放電電極52に当たり易くなっている。そして、取入口54から流入した空気が放電電極52に当たることで放電電極52が吸熱してしまい、放電電極52の冷却効率、特に放電電極52の先端部(放電部52a)の冷却効率が悪くなってしまう。これにより、安定して帯電微粒子液体を発生させることが困難となってしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、安定して帯電微粒子液体を発生させることができる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、高電圧の印加によって放電を生じさせる第1電極と、前記第1電極との間で放電を生じさせる第2電極と、前記第1電極に液体を供給する供給部と、放電方向に向けて流れる空気流を発生させる空気流発生部と、を収容部材内に収容し、前記第1電極の放電に基づいて前記液体を静電霧化させる静電霧化装置であって、前記空気流が前記第1電極の放電部に当たることを防ぐ防風部を設けたことをその要旨とする。
【0009】
この発明では、放電方向に向けて流れる空気流が第1電極の放電部に当たることを防ぐ防風部を設けたことにより、前記防風部が、第1電極の放電部に空気流が当たることを防ぐことになる。これにより、第1電極の放電部の冷却阻害を抑制することができるので、安定して帯電微粒子液体を発生させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の静電霧化装置において、前記防風部は、前記第1電極の周囲を放電方向に沿って囲繞するとともに前記放電方向側が開口した防風壁として構成されており、前記防風部の開口端部側に前記第2電極を配置したことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、第1電極の周囲を放電方向に沿って囲繞する防風壁の開口端部側に第2電極を配置したことにより、第1電極での放電によって生成された帯電微粒子液体を第2電極によって引きつけることができるので、帯電微粒子液体の推進力を増加させることができる。これにより、生成された帯電微粒子液体を静電霧化装置の外部に素早く放出させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の静電霧化装置において、前記防風部には、静電霧化された液体を放出させる放出口とは異なる位置に空気を取り込む吸気部を設けたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、防風部に空気を取り込む吸気部を設けたことにより、放電によって放出口から放出された風圧の分だけ、吸気部から新たな空気が取り込まれることになる。これにより、放電によって発生した風によって防風部内に負圧が生じることを防ぐことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の静電霧化装置において、前記吸気部には、前記収容部材の外から外気を取り込む外気導入管が接続されていることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、吸気部に、収容部材の外から外気を取り込む外気導入管を接続したことで、防風部内に水分を含んだ外気を取り入れることができる。これにより、防風部内が減圧されることを防ぐとともに、空気中の水分を結露しやすい状況を作り出すことができるので、安定して帯電微粒子液体を発生させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の静電霧化装置において、前記第1電極よりも放電方向の下流側に乱気流を発生させる乱気流発生手段を設けたことをその要旨とする。
【0017】
この発明では、第1電極よりも放電方向の下流側に乱気流を発生させる乱気流発生手段を設けたことで、空気流が乱気流発生手段によって乱流化される。そして、その乱流化された空気流によって第1電極への放電によって生成された帯電微粒子液体が拡散されることで、発生した帯電微粒子液体を乱気流によって広範囲に拡散することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の静電霧化装置において、前記第2電極は、開口形状を成しており、前記乱気流発生手段は、開口形状を成した乱気流発生板となっており、前記第2電極の開口部と該電極よりも放電方向の下流側に位置する前記乱気流発生板の開口部の位置をずらして配置したことをその要旨とする。
【0019】
この発明では、第2電極の開口部と乱気流発生板の開口部の位置をずらして配置したことにより、第2電極及び乱気流発生板に空気流が当たることで乱気流が発生する。そして、その乱流化された空気流によって第1電極への放電によって生成された帯電微粒子液体が拡散されることで、発生した帯電微粒子液体を乱気流によって広範囲に拡散することができる。また、第2電極の開口部と乱気流発生板の開口部の位置をずらして設置するだけで乱気流を発生させることができるので、乱気流発生手段としてファンなどの大型な装置を設ける必要がなくなり、静電霧化装置の小型化にも繋がる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の静電霧化装置において、前記乱気流発生板を複数配置したことをその要旨とする。
この発明では、複数の乱流発生板を配置したことにより、各乱気流発生板に空気が当たることで乱気流が発生する。これにより、静電霧化装置自体を大型化させることなく、より効率的に乱気流を発生させることができ、発生した帯電微粒子液体を乱気流によって広範囲に拡散することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安定して帯電微粒子液体を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態における静電霧化装置を示す模式断面図である。
【図2】第2の実施形態における静電霧化装置を示す模式断面図である。
【図3】第2の実施形態における静電霧化装置を示す平面図である。
【図4】第3の実施形態における静電霧化装置を示す模式断面図である。
【図5】(a)は、第3の実施形態における静電霧化装置を示す平面図、(b)は、図4に示すB−B線部分断面図、(c)は、図4に示すC−C線部分断面図である。
【図6】背景技術における静電霧化装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明を静電霧化装置に具体化した第1の実施形態を、図1に従って説明する。なお、以下の説明では、図1に示すような静電霧化装置を縦置きとした状態を基準に方向を規定している。
【0024】
図1に示すように、静電霧化装置10は、底部に空気吸込口K(例えば、格子状)が形成された円筒状のハウジング11(収容部材)を備えており、その内部には、帯電微粒子ミストを生成するための静電霧化部12が収容されている。静電霧化部12は、棒状の放電電極13(第1電極)と所定の間隔を隔てて対向する位置に配置したリング状の対向電極14(第2電極)とからなる。
【0025】
放電電極13は、ディスク状の被挟持部13aから略円柱状の主体部13bを立設し、さらに主体部13bの先端に略球状の放電部13cを形成して成る。その一方で、対向電極14は、グランド電極となっている。また、対向電極14の孔としての放出部14aの中心は、放電電極13における軸心の延長線上に位置している。
【0026】
放電電極13の下方には、空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極13上に液体(水)を供給する供給部としてのペルチェユニット15が設けられている。ペルチェユニット15は、熱伝導性の高い絶縁板の片面側に回路が形成された冷却側のペルチェ回路板16aと放熱側のペルチェ回路板16bとで構成される一対のペルチェ回路板16を備えている。そして、冷却側のペルチェ回路板16a及び放熱側のペルチェ回路板16bは、互いの回路が向き合うように対向配置されている。
【0027】
そして、冷却側のペルチェ回路板16aと放熱側のペルチェ回路板16bにより、複数の熱電素子17が挟持されるとともに、隣接する熱電素子17同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線18を介して図示しない電源から熱電素子17に電気を供給するようになっている。熱電素子17に電気が供給されることで、冷却側のペルチェ回路板16aから放熱側のペルチェ回路板16bに向けて熱が移動するようになっている。
【0028】
また、冷却側のペルチェ回路板16aにおいて回路が形成されていない面には、冷却部19が接続されるとともに、放熱側のペルチェ回路板16bにおいて回路が形成されていない面には、放熱部20(例えば放熱フィン)が接続されている。
【0029】
また、放電電極13の周囲は、絶縁材料で形成された無底筒状の防風壁21(防風部)によって囲繞されている。防風壁21は、ハウジング11の底部に配置されたファンモータMの回転軸に固着されたファンFの回転によって生じた空気流が放電電極13に当たることを防ぐために設置されている。本実施形態では、ファンモータM及びファンFが空気流発生部となる。また、空気流の下流側及び帯電微粒子ミストの放出方向の下流側が静電霧化装置10における上方となる一方で、空気流の上流側及び帯電微粒子ミストの放出方向の上流側が静電霧化装置10における下方となる。
【0030】
この防風壁21は、壁面において厚み方向に貫通する孔が形成されておらず、壁面から空気流が流入することがない。そして、防風壁21には、上流側の開口部21aの外周縁の全周に亘って連結用のフランジ22が突設されているとともに、下流側の開口部21bの端部に対向電極14が配置されている。これにより、防風壁21と対向電極14との接続部から空気流が流入することがない。さらに、防風壁21の内周面には、その内部空間を放電空間S1と封止空間S2とに二分割するための隔壁23が延設されている。そして、この隔壁23の中央には、両空間S1、S2を連通させる連通孔24が形成されている。
【0031】
そして、防風壁21をペルチェユニット15(放熱部20)に連結させる際には、放電電極13の主体部13bを防風壁21の連通孔24に嵌め込んで放電部13c側を放電空間S1内に収容させる一方で、放電電極13の被挟持部13a側を封止空間S2内に収容させている。これにより、放電電極13の周囲を防風壁21によって囲繞することができる。さらに、防風壁21の隔壁23が、封止部材25を介して、放電電極13の被挟持部13aと冷却部19とを挟持することになる。この挟持によって、防風壁21をペルチェユニット15(放熱部20)に連結させている。これにより、防風壁21とペルチェユニット15との接続部から空気流が流入することがない。
【0032】
このように放電電極13の周囲を防風壁21によって囲繞することで、ファンFの回転によって生じた空気流が下方から当たることを防ぐことができる。つまり、ハウジング11と繋がっているのは、放出部14aのみとなる。
【0033】
また、防風壁21の放電空間S1内には、高圧リード線26が収容されており、その一端側が放電電極13に接続されるとともに他端側が防風壁21外に引き出されて高電圧印加部27に接続されている。そして、この高圧リード線26を介して放電電極13と対向電極14とを電気的に接続させることで、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加するようになっている。
【0034】
次に、上記構成の静電霧化装置10による静電霧化動作について説明する。なお、以下の説明では、ファンモータMのファンFを回転させてハウジング11内に下方から上方へ向かって空気流を発生させているものとする。
【0035】
上記構成の静電霧化装置10では、電源からペルチェ入力リード線18を介してペルチェユニット15に電源が供給されると、熱電素子17への通電による冷却側のペルチェ回路板16aから放熱側のペルチェ回路板16bへの熱移動によって冷却部19が冷却される。そして、冷却部19が冷却されることで冷却部19に接続されている放電電極13が冷却されるとともに、放電電極13の周囲の空気が冷却され、空気中の水分が結露して放電電極13に水(結露水)が供給されるようになっている。つまり、放電電極13が冷却されるほど結露水が生成されやすくなる。なお、放電電極13は、その基端部(被狭持部13a)が冷却部19と接続されているため、放電電極13の基端部ほど冷却されやすくなっている一方で、放電部13cほど冷却されにくくなっている。
【0036】
また、放熱部20の下方にはファンFが配置されているので、ファンFの回転によって生じた空気流が放熱部20に当たることで、放熱部20が冷却されるため、それに伴って放電電極13の冷却効率も向上する。
【0037】
そして、放電電極13に水が供給された状態において高電圧印加部27により放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、以下のような現象が生じることになる。すなわち、放電電極13と対向電極14との間にかけられた高電圧により、放電電極13の放電部13cに供給された水と対向電極14との間にクーロン力が働き、水の液面が局所的に錐状に盛り上がってテーラーコーンが形成される。テーラーコーンが形成されると、テーラーコーンの先端に電荷が集中するとともに、テーラーコーンの先端に生じるクーロン力が大きくなり、さらにテーラーコーンが成長するようになる。
【0038】
テーラーコーンが成長し、テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度になると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受ける。そして、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子ミスト(帯電微粒子液体)が大量に生成される。なお、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、放電電極13の放電によってイオン風が生じ、そのイオン風によって放出部14aまで帯電微粒子ミストが運搬され、防風壁21の外部に放出されるようになっている。そして、ファンFの回転によって生じた空気流によって、帯電微粒子ミストが放出部14aから静電霧化装置10の外部に放出されるようになっている。すなわち、放出部14aは帯電微粒子ミストを放出するための放出口として機能する。
【0039】
なお、防風壁21内からは、下流側に向かってイオン風が放出されるようになっているので、ファンFの回転によって生じた空気流が、放出部14aから防風壁21内部に流入することはない。したがって、本実施形態の静電霧化装置10では、放電電極13の全周が防風壁21によって囲繞されているため、ファンFの回転によって生じるともに静電霧化装置10の下方から上方に向かって流れる空気流が、放電電極13に直接当たることがない。そして、放電電極13の放電部13cに空気流が当たることもないので、放電電極13の冷却効率が低下することがない。
【0040】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)静電霧化装置10において、空気流が放電電極13に当たることを防ぐ防風壁21を設けたことにより、防風壁21が、放電電極13の放電部13cに空気流が当たることを防ぐことになる。これにより、放電電極13の冷却阻害を抑制することができるので、結露水の安定供給によって、安定して帯電微粒子ミストを発生させることができる。
【0041】
(2)防風壁21の開口部21bに対向電極14を配置した。これにより、放電電極13での放電によって生成された帯電微粒子ミストを対向電極14によって引きつけることができるので、帯電微粒子ミストの推進力を増加させることができる。したがって、生成された帯電微粒子ミストを静電霧化装置10の外部に素早く放出させることができる。
【0042】
(3)また、防風壁21の開口部21bに対向電極14を配置したことにより、防風壁21を利用して対向電極14を設置することができるので、対向電極14を配置するためだけの部材を新たに使用する必要もなくなり、構成の簡略化に繋がる。
【0043】
(4)ファンFの回転によって生じた空気流によって、帯電微粒子ミストを静電霧化装置10の外部に放出させるとともに放熱部20を冷却するようにした。これにより、帯電微粒子ミストの放出と放熱部20の冷却を同時に行うことができるので、静電霧化装置10自体の小型化に繋がる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図2及び図3に従って説明する。
同図に示すように、本実施形態の静電霧化装置10は、外気を防風壁21内に取り入れるための外気導入管をハウジング11内に設けた点が、第1の実施形態の静電霧化装置10と異なっている。このため、以下に説明する実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成(同一制御内容)については同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0045】
図2及び図3に示すように、防風壁21の側周壁の厚み方向であって放電電極13の基端部側には、外気を防風壁21内に取り入れるための取入孔30(吸気部)が形成されている。また、ハウジング11の側周壁(壁面)において取入孔30と対向する位置には、外気をハウジング11内に取り入れるための取入孔11aが形成されている。そして、ハウジング11内部には、取入孔30と取入孔11aとを連結する円筒直線状の外気導入管31が形成されている。これにより、外気導入管31を介して、ハウジング11外の外気を防風壁21内部に取り込むことができるようになっている。
【0046】
次に、本実施形態の静電霧化装置10による静電霧化動作について説明する。
前述したように、放電電極13を冷却することによって空気中の水分が結露し、放電電極13に結露水が供給される。その状態で、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると帯電微粒子ミストが生成される。なお、前述したように、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、放電電極13の放電によってイオン風が生じる。そのイオン風が防風壁21から流出した分だけ、外気導入管31を介して防風壁21内に外気が取り込まれるようになっている。なお、外気導入管31から取り込まれる外気量は、ファンFの回転によって生じる空気量よりも少ない量となっている。
【0047】
また、外気導入管31を介して取り入れた外気は水分を含んでいるため、新たに結露水を生成することができる。これにより、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、再度、帯電微粒子ミストを生成することができる。
【0048】
さらに、外気導入管31を放電電極13の基端部側に位置するように形成したことにより、外気導入管31を介して取り込まれた外気が、放電電極13の先端部としての放電部13cに直接当たり難くなっている。これにより、冷却効率の低い放電電極13の先端部(放電部13c)へ外気が当たることを抑制することができるので、結露水の生成効率の低下を抑制することができる。
【0049】
次に、前記第1の実施形態の作用効果(1)〜(4)に加え、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(5)防風壁21の側周壁において、放出部14aとは異なる位置に空気を取り込む取入孔30を設けた。放電電極13の放電によって生じたイオン風が防風壁21の外部に流出することにより、その風量だけ防風壁21の内部が減圧されることになるが、取入孔30から新たな外気が取り込まれるので、防風壁21内部に負圧が生じることを防ぐことができる。
【0050】
(6)ハウジング11の取入孔11aと防風壁21の取入孔30を連通する外気導入管31を形成した。これにより、水分を含んだ外気を取り入れることができるので、防風壁21内部の減圧を防ぐとともに、空気中の水分を結露しやすい状況を作り出すことができるので、安定して帯電微粒子ミストを発生させることができる。
【0051】
(7)放電電極13の放電によって生じたイオン風が防風壁21の外部に流出した分だけ、外気導入管31を介して外気が補充されるようにした。これにより、防風壁21内部に外気が過剰に補充されることがないので、防風壁21内部の気圧を一定に保つことができる。
【0052】
(8)外気導入管31を放電電極13の基端部側に位置するように形成した。これにより、外気導入管31を介して取り込まれた外気が放電電極13の先端部(放電部13c)に直接当たり難くなるので、結露水の生成効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0053】
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を図4及び図5に従って説明する。
同図に示すように、本実施形態に静電霧化装置10は、静電霧化部12の上方に乱気流を発生させるための遮蔽板40〜42をハウジング11内に設けた点が、第2の実施形態の静電霧化装置10と異なっている。このため、以下に説明する実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成(同一制御内容)については同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0054】
図4及び図5に示すように、対向電極14の上方には、複数枚(本実施形態では3枚)の乱気流発生手段及び乱気流発生板としてのリング状の遮蔽板40〜42が、配置されている。
【0055】
以下、遮蔽板40〜42の具体的構成について説明する。
第1遮蔽板40は、その外径がハウジングの内径と略同じ大きさに形成されたリング状の第1リング板40aの内周面に、放出部14aより大きく形成されたディスク状の第1ディスク板40bを支持部材43で支持固定されて成る。また、第1リング板40aと第1ディスク板40bとの間には、第1遮蔽板40の厚み方向に貫通する通風部40c(開口部)が形成されている。なお、第3遮蔽板42も、第1遮蔽板40と同一構成となっている。
【0056】
また、第2遮蔽板41は、その外径が第1リング板40aの内径よりも大きく形成されるとともに、その内径が第1ディスク板40bの外径よりも小さく形成されたリング形状を成している。また、第2遮蔽板41の内周面は、第2遮蔽板41の厚み方向に貫通する通風部41c(開口部)となっている。
【0057】
そして、これらの遮蔽板40〜42について、対向電極14から5mm〜10mm程度上方に第1遮蔽板40が、支持部材44にてハウジング11に対して支持固定されている。さらに、第1遮蔽板40から5mm〜10mm程度上方に第2遮蔽板41が、支持部材44にてハウジング11に対して支持固定されている。また、第2遮蔽板41から5mm〜10mm程度上方に第3遮蔽板42が、支持部材44にてハウジング11に対して支持固定されている。
【0058】
このように、放出部14aの上方には、第1遮蔽板40の第1ディスク板40bが対向しているので、第1ディスク板40bは放出部14aから放出される帯電微粒子ミストが真っ直ぐ上方へ上昇することを遮る壁として機能することとなる。また、通風部40cの上方には、第2遮蔽板41が対向しているので、第2遮蔽板41は通風部40cから放出される帯電微粒子ミストが真っ直ぐ上方へ上昇することを遮る壁として機能することとなる。さらに、通風部41cの上方には、第3遮蔽板42の第3ディスク板42bが対向しているので、第3ディスク板42bは通風部41cから放出される帯電微粒子ミストが真っ直ぐ上方へ上昇することを遮る壁として機能することとなる。
【0059】
次に、本実施形態の静電霧化装置10による静電霧化動作について説明する。
前述したように、放電電極13を冷却することによって空気中の水分が結露し、放電電極13に結露水が供給される。その状態で、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、帯電微粒子ミストが生成される。
【0060】
そして、ファンFの回転によって生じた空気流によって、帯電微粒子ミストが対向電極14より上方へ案内されることになる。つまり、空気流と帯電微粒子ミストが混合されることになる。このとき、空気流及び帯電微粒子ミストは、まず、放出部14aの上方に位置する第1ディスク板40bの下面に当たり、その放出方向が変更されることになる。つまり、放出部14aと第1遮蔽板40の通風部40cが重ならないように配置することで通風部同士がずれることとなり(図5(c)参照)、放出部14aから放出された帯電微粒子ミストが、真っ直ぐ上方に放出されない。これにより、空気流に乗って放出される帯電微粒子ミストは、第1遮蔽板40の通風部40cから上方に放出されることになる。
【0061】
次に、第1遮蔽板40の通風部40cから放出された帯電微粒子ミストは、第1遮蔽板40の通風部40cの上方に位置する第2遮蔽板41の下面に当たり、その放出方向が変更されることになる。つまり、第1遮蔽板40の通風部40cと第2遮蔽板41の通風部41cが重ならないように配置することで通風部同士がずれることとなり(図5(b)参照)、第1遮蔽板40の通風部40cから放出された帯電微粒子ミストが、真っ直ぐ上方に放出されない。これにより、空気流に乗って放出される帯電微粒子ミストは、第2遮蔽板41の通風部41cから上方に放出されることになる。
【0062】
続いて、第2遮蔽板41の通風部41cから放出された帯電微粒子ミストは、第2遮蔽板41の通風部41cの上方に位置する第3ディスク板42bの下面に当たり、その放出方向が変更されることになる。つまり、第2遮蔽板41の通風部41cと第3遮蔽板42の通風部42cが重ならないように配置することで通風部同士がずれることとなり(図5(a)参照)、第2遮蔽板41の通風部41cから放出された帯電微粒子ミストが、真っ直ぐ上方に放出されない。これにより、空気流に乗って放出される帯電微粒子ミストは、第3遮蔽板42の通風部42cから上方に放出されることになる。
【0063】
このように、遮蔽板40〜42への衝突を繰り返すことで、ファンFの回転によって生じた空気流が乱流化される。そして、この乱流化された空気流と帯電微粒子ミストが混合されることで、帯電微粒子ミストをより広範囲に拡散することができる。そして、帯電微粒子ミストは、第3遮蔽板42の通風部42cを通って上方に案内され、ハウジング11の上側通風部から放出される。
【0064】
次に、前記第1の実施形態の作用効果(1)〜(4)及び前記第2の実施形態の作用効果(5)〜(8)に加え、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(9)放電電極13の上方に第1遮蔽板40を設けた。これにより、空気流が第1遮蔽板に当たることで乱流化されるので、発生した帯電微粒子ミストを乱気流によって広範囲に拡散することができる。
【0065】
(10)対向電極14及び第1遮蔽板40をリング形状とした。なお、第1遮蔽板40は、その外径がハウジング11の内径と略同じ大きさに形成されたリング状の第1リング板40aの内周面に、放出部14aより大きく形成されたディスク状の第1ディスク板40bを支持部材43で支持固定されて成る。そして、放出部14aと第1遮蔽板40の通風部40cの位置が重ならないように配置することで、通風部同士をずらすようにした。これにより、対向電極14及び第1ディスク板40bに空気流が当たることで乱気流が発生する。そして、乱気流によって帯電微粒子ミストが攪拌されることで、帯電微粒子ミストを乱気流によって広範囲に拡散することができる。また、放出部14aと第1遮蔽板40の通風部40cの位置をずらして設置するだけで乱気流を発生させることができるので、静電霧化装置10の小型化にも繋がる。
【0066】
(11)帯電微粒子ミストの放出方向に対して上下に位置する各遮蔽板40〜42の通風部40c〜42cの位置をずらして設置した。これにより、空気流が各遮蔽板40〜42に当たる度に乱気流が発生することになるので、各遮蔽板40〜42の設置間隔を狭くしても乱気流を発生させることができる。つまり、静電霧化装置10自体を大型化させることなく、より効率的に乱気流を発生させることができ、発生した帯電微粒子ミストを乱気流によって広範囲に拡散することができる。
【0067】
(12)各遮蔽板40〜42をリング形状とした。これにより遮蔽板40〜42の通風部も円となり、通風部が四角形状となっている場合よりもその周長が短くなるので、防風壁21から放出された空気流をスムーズかつ効率よくハウジング11外に放出することができる。
【0068】
尚、各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第3の実施形態において、遮蔽板40〜42の形状はリング状に限られない。例えば、通風部を多角形の形状となるように構成しても良い。また、遮蔽板40〜42は、平板に限られず、例えば、下流側に向かってその開口幅が狭くなるように構成した円錐キャップ形状のものとしても良い。
【0069】
・第3の実施形態において、遮蔽板の数は3枚に限られない。つまり、1枚のみとしても良いし、4枚以上としても良い。
・第3の実施形態において、乱気流発生手段は板を層状に配置したものに限られない。例えば、遮蔽板を格子状に配置したり、網目状に配置したりしても良い。つまり、放出部14aから放出された帯電微粒子ミストが真っ直ぐ上方に放出されることを抑制できる構成であれば良い。
【0070】
・第3の実施形態において、遮蔽板40〜42の設置位置を防風壁21内部としても良い。
・第1の実施形態の静電霧化装置10に遮蔽板40〜42を配置しても良い。
【0071】
・第2の実施形態において、取入孔30の形成位置は、防風壁21の周壁であれば、どの位置に形成されていても良い。例えば、放電電極13の放電部13c側であっても良い。
【0072】
・第2の実施形態及び第3の実施形態において、外気導入管31を形成せず、防風壁21の取入孔30を形成するだけとしても良い。この場合、防風壁21内に取り込まれる空気は、ハウジング11外の外気ではなくハウジング11内の空気となる。
【0073】
・第2の実施形態及び第3の実施形態において、ハウジング11に取入孔11aを形成せず、取入孔30と連通する外気導入管31をハウジング11外に延長し、外気を外気導入管31から直接取り入れる構成としても良い。
【0074】
・第3の実施形態の静電霧化装置10において、外気導入管31、取入孔11a、及び取入孔30を形成しなくても良い。
・各実施形態において、静電霧化部12全体を覆う有底円筒状の防風部を設けても良い。
【0075】
・各実施形態において、放電電極13の先端部(放電部13c)よりも上流側に、放電電極13の先端部(放電部13c)の直径と略同じ直径の孔が形成された板状部材を装着し、この板状部材を防風部としても良い。この場合、板状部材によって下方から上方に向かって流れる空気流が放電電極13の先端部に当たることを防ぐことができる。
【0076】
・第1の実施形態及び第2の実施形態において、対向電極14の設置位置は、放電電極13よりも下流側であれば良く、その設置位置は防風壁21の開口部21bに限られない。例えば、ハウジング11の先端開口部に設置されていても良いし、防風壁21の内部に設置されていても良い。
【0077】
・各実施形態において、防風壁21は、ファンFの回転によって生じた空気流が直接当たらない構成であれば、多少の空気流が放電電極13に当たることを許容するような構成であっても良い。例えば、防風壁21とペルチェユニット15との接続面に間隙が形成されていたり、防風壁21と対向電極14との接続面に間隙が形成されていたりしても良い。
【0078】
・各実施形態において、放熱部20冷却用のファンモータMと空気流発生用のファンモータMを設けても良い。
・各実施形態では、水を貯留するタンクを設置し、放電電極13をタンク内の水に浸して、毛細管現象にて放電電極13の先端部に水を供給する構成としても良い。
【0079】
・各実施形態では、水以外の液体(例えば、化粧水、薬液等)を霧化してナノメータサイズの帯電微粒子液体を生成するようにしても良い。
・各実施形態において、対向電極14をプラス電極としても良い。これにより、放電によって生じた帯電微粒子ミストを対向電極14によってより一層引きつけることができるので、より帯電微粒子ミストの推進力を増加させることができる。
【0080】
・各実施形態は、正の電荷を帯びた帯電微粒子ミストを発生する静電霧化装置に応用しても良い。この場合、放電電極13をプラス電圧にする一方で、対向電極14をグランドにした高電圧を印加してプラスイオンを放出させる場合と、放電電極13をグランドにする一方で、対向電極14をマイナス電圧にした高電圧を印加してプラスイオンを放出させる場合とがある。
【符号の説明】
【0081】
10…静電霧化装置、11…ハウジング、11a…取入孔、12…静電霧化部、13…放電電極、13c…放電部、14…対向電極、15…ペルチェユニット、30…取入孔、31…外気導入管、40〜42…遮蔽板、40c〜42c…通風部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧の印加によって放電を生じさせる第1電極と、前記第1電極との間で放電を生じさせる第2電極と、前記第1電極に液体を供給する供給部と、放電方向に向けて流れる空気流を発生させる空気流発生部と、を収容部材内に収容し、前記第1電極の放電に基づいて前記液体を静電霧化させる静電霧化装置であって、
前記空気流が前記第1電極の放電部に当たることを防ぐ防風部を設けたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電霧化装置において、
前記防風部は、前記第1電極の周囲を放電方向に沿って囲繞するとともに前記放電方向側が開口した防風壁として構成されており、前記防風部の開口端部側に前記第2電極を配置したことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の静電霧化装置において、
前記防風部には、静電霧化された液体を放出させる放出口とは異なる位置に空気を取り込む吸気部を設けたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の静電霧化装置において、
前記吸気部には、前記収容部材の外から外気を取り込む外気導入管が接続されていることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記第1電極よりも放電方向の下流側に乱気流を発生させる乱気流発生手段を設けたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項6】
請求項5に記載の静電霧化装置において、
前記第2電極は、開口形状を成しており、
前記乱気流発生手段は、開口形状を成した乱気流発生板となっており、
前記第2電極の開口部と該電極よりも放電方向の下流側に位置する前記乱気流発生板の開口部の位置をずらして配置したことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項7】
請求項6に記載の静電霧化装置において、
前記乱気流発生板を複数配置したことを特徴とする静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200823(P2011−200823A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72110(P2010−72110)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】