説明

非侵襲生体計測装置

【課題】計測精度を向上させること。
【解決手段】 生体の計測領域から生体関連情報を取得する取得部と、計測領域の近傍の生体を圧迫する圧迫部と、生体の状態に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する制御部と、圧迫部によって生体を圧迫した状態で取得部によって取得された生体関連情報を解析する解析部とを備える非侵襲生体計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は非侵襲生体計測装置に関し、とくに生体の一部から光学的に得られる情報を解析し、血液情報、たとえばヘモグロビン濃度を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明の背景技術としては、生体へ光を照射する発光手段と、前記発光手段が照射した光に係る前記生体からの反射光を受光して受光量に応じた生体情報信号を生成する受光手段と、前記受光手段よりも前記生体における心臓に近い部分に配置され、前記生体に密着してこれを圧迫することにより、前記生体の運動に起因した末梢側の変動を抑制する生体圧迫手段とを備える生体情報計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、カフにより押圧力を作用させて被測定部位の静脈血流を停止させた状態で、光源から近赤外光を生体被測定部位に照射し、透過した透過光の強度を光検出器により検出し、被定部位による近赤外光の吸光度に基づき生体中の血糖値を求める装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3475427号公報
【特許文献2】特開2000−189404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非侵襲生体計測装置は、経皮的に血液分析が可能で簡便であると共に連続モニターが可能であるが、分析精度を従来の血液採取による血液分析に匹敵する程度に向上させることが望まれている。
例えば、特許文献1および特許文献28に示す生体計測装置では、生体圧迫手段またはカフにより生体を押圧した状態で生体情報を得るようにしているが、測定中に押圧力を一定に維持するための具体的な構成については開示されていない。
この発明はこのような事情を考慮してなされたもので、生体に加える押圧力を適正に調整し、それによって分析精度をさらに向上させた非侵襲生体計測装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の第1の局面による非侵襲生体計測装置は、生体の計測領域から生体関連情報を取得する取得部と、計測領域の近傍の生体を圧迫する圧迫部と、生体の状態に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する制御部と、圧迫部によって生体を圧迫した状態で取得部によって取得された生体関連情報を解析する解析部とを備える。
【0006】
この発明の第2の局面による非侵襲生体計測方法は、生体の計測領域の近傍の圧迫部位を圧迫する工程と、生体の状態に基づいて前記圧迫力を制御する工程と、圧迫部位を圧迫した状態で生体の計測領域から生体関連情報を取得する工程と、取得された生体関連情報を解析する工程とを含む。
【0007】
この発明の第3の局面による生体圧迫装置は、生体に密着して生体を圧迫する圧迫部と、圧迫部の圧迫力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出値に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記検出値に基づいて生体に加える圧迫力を算出し、前記圧迫力に基づいて生体に加える圧迫力を制御する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、検出される脈動に基づいて圧迫部の圧迫力を制御することにより、測定される血流が安定することが見出された。
つまり、検出部が脈動を検出できる範囲の圧迫力で生体を圧迫することにより、測定部位の血流が安定し、精度の高い測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。これによってこの発明が限定されるものではない。
図13は本実施形態の非侵襲生体計測装置の構成例を示す斜視図であり、生体計測装置5と生体圧迫装置4を備える。生体計測装置5は、検出部1、解析部2、ケーブル3、入力部28及び出力部17から構成されている。ヒト(被検者)の手首WRに装着された検出部1はケーブル3を介して解析部2に接続されている。解析部2には入力部28が接続されている。検出部1からの情報は解析部2を介して出力部27に出力される。また、生体圧迫装置4は、加圧帯101、エアチューブ103および圧迫制御装置102から構成されている。加圧帯101はエアチューブ103を介して圧迫制御装置102に接続されている。そして、被検者の腕部、つまり手首WRよりも心臓に近い部位にカフ(血圧測定用加圧帯)のような加圧帯101を巻き付けて圧迫し、後述するように手首WRの血管(静脈)の血流を制御するようになっている。
【0010】
図1は手首WRに装着された検出部1の上面図である。
図2は検出部1の側面図、図3は図1のA−A矢視断面図、図4は図3のB−B矢視図である。
これらの図に示すように、検出部1は、支持台31と、支持台31の中央開口に垂直に挿入され矢印EおよびF方向に(図1)回転可能に支持される回転台32と、回転台32の中央開口に装着されたハウジング33と、支持台31を手首WRに固定するための一対の挟持片34,35を備える。
【0011】
図3に示すように、ハウジング33は底部に開口46を有し、内部に撮像部36を収容する。撮像部36は、対物レンズを内蔵する円筒状の鏡筒37と、CCD撮像素子38を搭載した基板39と、CCD撮像素子38の駆動用電子部品を搭載した基板40,41とを備える。撮像部36は円筒形の支持部材42に挿入され垂直に支持される。
【0012】
支持部材42は、底部に円形の開口部43を有し、図4に示すように、円形の開口部43の周囲に6つの発光ダイオードR1,R2,L1,L2,N,Fと1つのフォトセンサPSが開口部43と同心の円周上に配置される。支持部材42は下端外壁面から水平方向に突出する一対の係止部44,45を有する。係止部44,45は開口部43がハウジング33の底部の開口46から下方へ突出するようにハウジング33の底部周縁に係止される。
【0013】
ハウジング33は内壁面から水平に突出する一対の突出部47,48を備え、突出部47と係止部44との間および突出部48と係止部45との間が、それぞれ圧縮スプリング49と50によって接続される。スプリング49と50は係止部44と45をそれぞれ矢印Z方向に付勢する。
【0014】
ハウジング33は外壁面から水平に突出する一対の係止部51,52を有する。係止部51,52は、回転台32の開口周縁に係止される。回転台32は上面に一対のスプリング収容部53,54を有し、スプリング収容部53,54は係止部51,52をそれぞれ矢印Z方向に付勢する圧縮スプリング55,56を収容する。
【0015】
支持台31の開口内周面と回転台32との介面にはリング状の弾性部材57が装着される。弾性部材57は支持台31から回転台32が上方へ離脱することを防止する抜け止めとして作用すると共に、回転台32の回転時に支持台31と回転台32との間に適当な摩擦力を与える摩擦部材として作用する。
【0016】
ハウジング33は開口46の周縁から下方に突出する一対の突出部58,59を備え、突出部58,59は手首WRの表面に接触し、スプリング55,56の弾性により適当な圧力で手首WRの表面を押圧するようになっている。また、開口部43も手首WRの表面に接触しスプリング49,50の弾性により適当な圧力で手首WRの表面を押圧するようになっている。これにより、突出部58,59および開口部43は血管を圧迫することなく、手首WRの表面に接触できる。
【0017】
図2に示すように、挟持片34はセグメント34a,34bに分割され、貫通ピン60により支持台31に枢支される。ピン60にはセグメント34a,34bをそれぞれ矢印C方向(図3)に付勢するスプリング62a,62bが設けられる。
【0018】
挟持片35も同様にセグメント35a,35bに分割され(図1)、貫通ピン61により支持台31に枢支される。ピン61にはセグメント35a,35bをそれぞれ矢印D方向(図3)に付勢するスプリング63a,63bが設けられている。
【0019】
スプリング62a,62b,63a,63bは、支持台31が手首WRに確実に固着される力でセグメント34a,34b,35a,35bを付勢する。また、挟持片34,35はそれぞれ2つのセグメントに分割されているので、装着部位に突起(手首の骨)が存在しても、支持台31を安定して手首WRに装着できる。
なお、鏡筒37に内蔵される対物レンズの光軸と、円形の開口部43の中心軸と、回転台32の回転軸とは、互いに一致している。
【0020】
図6はこの発明の非侵襲生体計測装置の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにこの生体計測装置は、検出部1と解析部2と入力部28から構成される。検出部1は光源部11と受光部12からなり、光源部11は6つの発光ダイオードR1,R2,L1,L2,N,F(図4)を備え、受光部12はCCD撮像素子38(図3)とフォトセンサPS(図4)を備える。
【0021】
検出部1を図1に示すようにヒトの手首WRに装着すると、図5に示すように、発光ダイオードR1,R2,L1,L2,N,Fによって囲まれた計測領域が形成される。発光ダイオードR1,R2,L1,L2は開口部43の中心を通り互いに直交する第1軸AYと第2軸AXにそれぞれ対称に配置される。発光ダイオードR1,R2,L1,L2は血管BVを両側から照明し、発光ダイオードN,Fは、血管BVを含まない領域を照明するようになっている。そして、CCD撮像素子38は、照明された血管BVを含む撮像領域CRの光像(ここでは反射光像)を撮像する。フォトセンサPSは、血管BVを含まない生体部分を発光ダイオードNとFから経由して光センサに入力される光の光量を測定する。なお、発光ダイオードNはフォトセンサPSに対して発光ダイオードFよりも近くに設置されている。
【0022】
プロファイル抽出部21は、受光部12のCCD撮像素子38により撮像された画像の分析領域AR(図5)について画像濃度分布を輝度プロファイルとして抽出する。定量化部22は、抽出された輝度プロファイルの形態的特徴を定量化する。記憶部23は、受光部12により得られた光学情報をデジタルデータに変換して記憶する。
【0023】
演算部24は、定量化された特徴や光量データに基づいて血液の成分濃度等を演算する。光量制御部25は、光源部11の光量を受光部12から得られた情報に基づいて適正にフィードバック制御する。記憶部26は、演算部24によって演算された結果を記憶する。出力部27は、演算結果やモニタ画像を出力する。入力部28はキーボードとマウスなどからなり、計測条件や演算条件の設定を入力する。また、入力部28は測定を開始するためのスタートキーを備えている。
【0024】
図14は加圧帯101の圧迫力を制御する圧力制御装置の構成説明図である。
圧力制御装置102はエアーチューブ103を介して加圧帯101に接続され、加圧帯101に対してエアーを供給又は排気する。圧力制御装置102はエアーポンプP、電磁バルブSV1、SV2、圧力センサPD、オリフィスOR、コントローラ104、およびドライバー回路105を備える。また、圧力制御装置102には、図示しないが、スタートキーとストップキーを備えている。
【0025】
エアーポンプPはエアーチューブ103に接続されると共に、電磁バルブSV1、SV2と圧力センサPDとに接続されている。エアーポンプPを駆動することによりエアーが加圧帯101に供給される。電磁弁SV1を開くことによって加圧帯101内のエアーが大気に開放される。電磁弁SV2を開くことによって加圧帯101内のエアーがオリフィスORを介して徐々に大気に開放される。コントローラ104は制御部106と脈動検出部107と格納部108と演算部109を備え、マイクロコンピュータにより構成される。
脈動検出部107は圧力センサPSからの出力をうけて圧力の検出を行い、検出した圧力の脈動の有無を検出する。格納部108は処理データを格納し、演算部109は処理データの演算を行い、制御部106はドライバー回路105を制御してエアーポンプP、電磁バルブSV1、SV2を駆動させる。
【0026】
このような構成における加圧帯101の圧力制御装置102による圧力の最適目標Ttの算出設定処理と血流制御処理を図20に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、図13に示すように、加圧帯101を被検者の腕に巻き付ける。ステップ501において、コントローラ104(図14参照)により加圧帯101の圧力の最適目標値Ttが算出される。最適目標値Ttが算出されると、ステップS502へ進む。ステップS502において、最適目標値Ttを設定するか否かがコントローラ104により判定され、最適目標値Ttを設定すると判定された場合、ステップS503に進む。最適目標値Ttを設定しないと判定された場合、終了する。ステップS503において、コントローラ104により最適目標値Ttに基づいて加圧帯101の圧力が制御される。
【0027】
次に、ステップS502(図20)における「Tt算出設定」処理に対応する3つの方法について図16、図17、図18のフローチャートを用いてそれぞれ説明する。
つまり、加圧帯101が被検者の腕に巻き付けられると、図16、図17、図18に示すいずれか1つの工程が実施される。
まず、図16に示す方法では、圧力制御装置102のスタートキー(図示せず)がONである否かがコントローラ104(図14参照)により判断され(ステップS101)、スタートキーがONであればステップ102に進む。ステップS102において、コントローラ104によりドライバー回路105を介してバルブSV1とSV2が閉じられる。次に、エアーポンプPが駆動し(ステップS103)、加圧帯101の圧力Ctが圧力センサPDにより検出され、Ct≧t(tは設定値)になると(ステップS104)、エアーポンプPが停止する(ステップS105)。
【0028】
そして、脈動検出部107が圧力センサPDの出力に脈動が存在するか否かを判定し(ステップS106)、脈動が存在する場合にはバルブSV2が開き(ステップS107)、加圧帯101のエアーが徐々に大気に開放され、脈動が存在しなくなる時点の圧力Ctが圧力センサPDで検出され、格納部108に格納される。
【0029】
そこで、最適目標値Ttは、演算部109において、Tt=Ct+α(αは別に実験的に求めた定数)として算出されて格納され、バルブSV1が開いて加圧帯101のエアーが大気に開放される(ステップS108、S109)。なお、ステップS106において脈動が存在しない場合には、設定値tがt+Aに増加され(ステップS110)、tが上限ULより大きくない場合には(ステップS111)、ルーチンはステップS103へ戻る。
【0030】
tが上限値ULより大きい場合には、バルブSV2が開き加圧帯101のエアーが徐々に大気に開放され(ステップS112)、脈動が存在すると(ステップS113)、ルーチンはステップS108へ戻り、脈動が存在しない状態で加圧帯101の圧力Ctが下限値LLより小さくなると(ステップS114)、バルブSV1が開く(ステップS115)。この場合、最適目標値Ttは算出されない。
【0031】
次に、図17に示す方法では、ステップS201において、圧力制御装置102のスタートキー(図示せず)がONであるとコントローラ104(図14参照)により判断されると、バルブSV1、SV2が閉じ(S202)、エアーポンプPが駆動して(ステップS203)、圧力Ctが徐々に増大しCtが下限値LLより大きくなり(ステップS204)、Ctが上限値ULに達するまでに脈動が検出されると(ステップS205、206)、脈動が検出され始めた時点の圧力Ctが最低適正圧力TLとして格納される(ステップS207)。
【0032】
さらに、ポンプPが駆動して圧力Ctが上限値ULに達するまでに脈動がなくなると(ステップS208、S209)、脈動がなくなり始めた時点の圧力Ctが最大適正圧力TUとして格納部108に格納される。そして、最適目標値Ttは、演算部109でTt=f(TU,TL)として算出されて格納され、バルブSV1が開いて、エアーポンプPが停止する(ステップS210)。なお、ステップS205、S208において、圧力Ctが上限値ULを超えた場合には、バルブSV1が開いてエアーポンプPが停止する(ステップS211)。この場合、Ttは算出されない。
【0033】
次に、図18に示す方法では、ステップ301において、圧力制御装置102のスタートキー(図示せず)がONであるとコントローラ104(図14参照)により判断されると、バルブSV1、SV2が閉じ、エアーポンプPが駆動する(ステップS302、S303)。圧力Ctが徐々に増大し、Ctが上限値ULに達するまでに脈動が検出され(ステップS304、S305)、さらにCtが上限値ULに達するまでに脈動が消滅すると(ステップS306、S307)、ポンプPが停止して、バルブSV2が開く(ステップS308、S309)。
それによって、圧力Ctが徐々に低下し始め、Ctが下限値LLに達するまでに脈動が発生すると、その発生時点の圧力Ctが最大適正圧力TUとして格納される(ステップS310〜312)。
【0034】
さらに、圧力Ctが低下してCtが下限値LLに達するまでに脈動が消滅すると(ステップS313、S314)、その消滅時点の圧力Ctが最小適正圧力TLとして格納される。そして、最適目標値Ttは、Tt=f(TU、TL)として算出されて格納され、バルブSV1が開く(ステップS315)。
【0035】
なお、ステップS304、S306において圧力Ctが上限値ULを超えた場合と、ステップS310、S313において圧力Ctが下限値LLを下回った場合には、バルブSV1、SV2が開き、ポンプPが停止し、最適目標値は算出されない(ステップS316)。
【0036】
図17、図18において、最適目標値Ttを算出する関数Tt=f(TU,TL)としては、例えば
Tt=(TU+TL)/2や
Tt=a・TU+b・TL(a、bは定数)
などが挙げられる。
【0037】
次に、ステップS502(図20)における「血流制御」処理について図15のフローチャートを用いて詳述する。圧力制御装置102のスタートキー(図示せず)がONである否かがコントローラ104(図14参照)により判断され(ステップS21)、スタートキーがONであればステップ22に進む。ステップS22において、コントローラ104によりドライバー回路105を介してバルブSV1とSV2が閉じられる。
【0038】
エアポンプが駆動され(ステップS23)、加圧帯101の圧力Ctが圧力センサPDにより検出され、圧力Ctが予め設定された最適目標値Ttを上限公差Urだけ超えると、エアーポンプPが停止し、圧力制御装置102は測定可能である旨の通知を行う(ステップS25)。後述する測定処理が行われ測定が終了すると、圧力制御装置102のストップキー(図示せず)がONされる。圧力制御装置102のストップキーがONである否かがコントローラ104(図14参照)により判断され(ステップS26)、ストップキーがONであればステップ28に進む。ステップS28において、バルブSV1が開いて加圧帯101のエアーが大気に開放される。ステップS26において、ストップキーがONでないと判断されると、ステップS27に進む。ステップS27において、加圧帯101の圧力Ctが監視され、圧力Ctが目標値Ttを下限公差Lrだけ下回るとルーチンはステップS23へ戻る。つまり、圧力Ctが減少すると、エアーポンプPが駆動して加圧帯101の圧力Ctが増大する。従って「血流制御」処理においては、圧力CtはTt−Lr≦Ct≦Tt+Urという最適圧力範囲に維持される。
【0039】
次に、ヘモグロビン濃度の測定処理について説明する。圧力制御装置102が加圧帯101により最適目標値まで圧迫して手首の血管(静脈)の血流を制御された状態において、検出部1を図1のように手首に装着し、計測領域の位置を調整する。この場合、出力部27の出力するモニター画像を観察しながら、ハウジング33を矢印E又はF方向(図1)に回転させて撮像領域CRの位置を調整し、図5のように発光ダイオードR1とL1との間および発光ダイオードR2とL2と間に対象とする血管BVを配置させる。
【0040】
入力部28のスタートキー(図示せず)がONである否かが解析部2(図13参照)により判断され(ステップS1)、スタートキーがONであればステップ3に進む。ステップ3において、光量制御部25及び光源部11は血管BVを含む生体の一部(ここではヒトの手首)の測定領域を発光ダイオードR1,R2,L1,L2(左右点灯モード)によって適切な光量で照明し、撮像領域CR(図5)をCCD撮像素子38で撮像する。それによって、撮像領域CR内の血管(静脈)BVの像を含む組織の画像が得られる。
【0041】
次に、プロファイル抽出部21が解析領域AR(図5)内の血管BVを横切る輝度プロファイル(位置Xに対する輝度Bの分布)PFを図8に示すように作成し、高速フーリエ変換などの手法を用いてノイズ成分を減少させる(ステップS4)。
【0042】
定量化部22はステップS4で得た輝度プロファイルPFをベースラインBL(図8)で規格化する。ベースラインBLは血管による吸収部分の輝度プロファイルPFの形状を基に求める。このようにすることによって、図9に示すような入射光量に依存しない濃度プロファイル(位置Xに対する濃度Dの分布)NPを得ることができる(ステップS5)。
【0043】
演算部24は、規格化された濃度プロファイルNPについて、ピーク高さh及び半値幅wを算出する。すなわち、ここで得たhは計測対象の血管(血液)により吸収された光強度と組織部分を通過してきた光強度の比を表し、wは血管径に相当する長さを表す(ステップS6)。
【0044】
ステップS3で撮像した部位と同じ部位を発光ダイオードR1,R2(右点灯モード)によって適切な光量で照明し、撮像する。それに引き続き発光ダイオードL1,L2(左点灯モード)によって適切な光量で照明し、撮像する(ステップS7)。次に、プロファイル抽出部21はステップS7によって得られたそれぞれの画像についてステップS4と同様の処理を行い、図10に示すような輝度プロファイルPF1,PF2を得る(ステップS8)。
【0045】
定量化部22はステップS8によって得られた輝度プロファイルPF1,PF2について、ステップS5と同様の処理を行い、それぞれ入射光量に依存しない濃度プロファイルNP1,NP2(図11)を得る(ステップS9)。
【0046】
演算部24は発光ダイオードR1,R2の照明により得られた濃度プロファイルNP1からピーク高さh1及び重心座標cg1を、発光ダイオードL1,L2の照明により得られた濃度プロファイルNP2からピーク高さh2及び重心座標cg2を、それぞれ算出する(ステップS10)。
次に、演算部24はステップS10で得られた結果を用いて次の算出式からなる血管部散乱量指標Sを算出する(ステップS11)。
S=(cg2−cg1)/[(h1+h2)/2]……(1)
【0047】
光量制御部25及び光源部11は、発光ダイオードNにより撮像領域CRの近傍の生体部分を適切な光量で照明し、フォトセンサPSにより生体部分を経由して入射した光の光量v1を測定する。測定結果は記憶部23に保存する(ステップS12)。
【0048】
光量制御部25及び光源部11は、ステップS12で発光ダイオードNを発光させたと同じ光量で発光ダイオードFを発光させ、ステップS12と同様にフォトセンサPSに入射した光の光量v2を測定・保存する(ステップS13)。
【0049】
演算部24はステップS12とS13で得られた結果を用いて次の算出式からなる組織血液量指標Dを算出する(ステップS14)。
D=log(v1/v2)……(2)
【0050】
演算部24はステップS11で得た血管部散乱量指標S、およびステップS14で得た組織血液量指標Dが次の条件を満たすか否かを判定する(ステップS15)。
a1・Sb≦D≦a2・Sb……(3)
(ただしa1<a2、a1、a2、bは実験的に求めた定数)
【0051】
式(3)の条件を満たさない場合は計測結果の信頼性が低いと判定し、再計測または計測中止とする。式(3)の条件を満たす場合は計測結果の信頼性が高いと判定し、次のステップS16へ進む。
【0052】
演算部24はDおよび実験的に求めた補正検量線を用いて補正率を決定する。また、近似的にBerrの法則が成り立っているとしてhおよびwから血管内の血液濃度を演算し、これに補正率を乗じたものをヘモグロビン濃度HGBとして算出し、記憶部23に記憶する(ステップS16)。そして、撮像した画像や各濃度プロファイル、算出されたHGBなどを出力部27に表示する(ステップS17)。
このようにして、被験者の血液中のヘモグロビン濃度が計測される。
【0053】
図12は、複数の被験者のヘモグロビン濃度について、血球計数器などから得られた実測値とこの発明の計測装置による算出値とをプロットしたグラフである。これによって、この発明の計測装置がヘモグロビン濃度を高精度で計測できることが分かる。
【0054】
このように、本実施形態の非侵襲生体計測装置では、生体に加える圧迫力の最適目標値を算出し、最適目標値に基づいて圧迫力を制御するようにしているので、生体に加えられる圧迫力が適正に保たれ、被検者の測定姿勢や環境温度変化などによって生体の計測領域の血流が変化するのを抑制することが可能となり、計測領域から安定した光学情報が得られ、精度の高い測定結果が得られる。
【0055】
上記実施形態では、検出部1と解析部2とが別々の構成となっていたが、検出1に解析部2が組み込まれた一体構成としても良い。
【0056】
上記実施形態では、検出部1からの光学情報を解析する解析部2と、加圧帯101の圧迫力を制御する圧力制御装置102のコントローラ104は、別々の構成となっているが、解析部2にコントローラ104が組み込まれた一体構成としても良い。この第2実施形態においては、加圧帯101の圧力の最適目標値Ttの算出、最適目標値Ttに基づく加圧帯101へ加える圧力の制御(血流制御)、ヘモグロビン濃度の測定を連続して行うことができる。
【0057】
図19は、第2実施形態における非侵襲生体計測装置のフローチャートである。第2実施形態において、解析部2にコントローラ104が組み込まれた一体構成であること以外、生体計測装置5と生体圧迫装置4の構成は、上記実施形態と同様な構成である。本実施形態による制御では、図19に示すように、入力部2のスタートスイッチ(図示せず)がONであるか否か解析部2(図13参照)により判断され(ステップS401)、スタートキーがONであればステップS402に進む。ステップS402において、加圧帯101の圧力の最適目標値Ttが算出され、最適目標値Ttに基づいて加圧帯101の圧力が調整される。ステップS402における最適目標値Ttを算出する工程は、図16,図17,図18のそれぞれのフローチャートで示される最適目標値Ttを算出する一連の工程を利用できる。次に、バルブSV1とSV2が閉じられ(ステップ22)、エアポンプが駆動され(ステップS23)、加圧帯101の圧力Ctが圧力センサPDにより検出され、圧力Ctが予め設定された最適目標値Ttを上限公差Urだけ超えると、エアーポンプPが停止する(ステップS25)。次に、ヘモグロビン測定ステップへ進み、図7に示すステップS3〜S17が実行され、バルブSV1が開いて加圧帯101のエアーが大気に開放される。
【0058】
本実施形態による非侵襲生体計測装置では、スタートスイッチをONにするだけで、生体に加える圧迫力の最適目標値を算出し、最適目標値に基づいて圧迫力を制御し、ヘモグロビン濃度を測定するので、非常に簡便である。
【0059】
上記実施形態において、生体とはヒト,うさぎ,イヌ,ネコ,ラット,マウスなどを含む哺乳動物であり、計測領域とは生体から分離した組織ではなく、生体のありのままの組織の一部であり、例えばヒトでは手首,手のひら,足首,足のうら又は頸部などがあげられる。
【0060】
また、光源部には、半導体レーザ(以下、LD)やLEDあるいはハロゲン光源などの光源が使用でき、直接生体の一部に照射してもよいし、ファイバーを介して照射してもよい。波長としては、400〜950nmの範囲にあることが好ましい。
また、受光部は、フォトダイオードやCCDなどの受光素子から構成できる。なお、受光部はレンズなどの光学系を含む構成であってもよい。
また、解析部は、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータで構成できる。
【0061】
上記実施形態では、生体の状態として、生体に加える圧迫力を圧力センサでの検出に基づいて脈動を求めていたが、生体の状態として、年齢、性別、体重、血圧、体脂肪率、圧迫部位の太さ等を求めるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施例の要部を示す上面図である。
【図2】この発明の実施例の要部を示す側面図である。
【図3】図1のA−A矢視断面図である。
【図4】図3のB−B矢視図である。
【図5】この発明の実施例の生体の一部に対する配置を示す説明図である。
【図6】この発明の実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施例の画像処理を示す説明図である。
【図9】この発明の実施例の画像処理を示す説明図である。
【図10】この発明の実施例の画像処理を示す説明図である。
【図11】この発明の実施例の画像処理を示す説明図である。
【図12】実測値と算出値との一致の程度を示すグラフである。
【図13】この発明の実施例の構成を示す斜視図である。
【図14】この発明の実施例の要部構成を示す説明図である。
【図15】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【図17】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【図18】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【図19】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【図20】この発明の実施例の要部動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 検出部
2 解析部
31 支持台
32 回転台
33 ハウジング
34 挟持片
35 挟持片
36 撮像部
37 鏡筒
38 CCD撮像素子
39 基板
40 基板
41 基板
42 支持部材
43 開口部
44 係止部
45 係止部
46 開口
47 突出部
48 突出部
49 スプリング
50 スプリング
51 係止部
52 係止部
53 スプリング収容部
54 スプリング収容部
55 スプリング
56 スプリング
57 弾性部材
58 突出部
59 突出部
60 貫通ピン
61 貫通ピン
62a スプリング
62b スプリング
63a スプリング
63d スプリング
R1 発光ダイオード
R2 発光ダイオード
L1 発光ダイオード
L2 発光ダイオード
N 発光ダイオード
F 発光ダイオード
PS フォトセンサ
WR 手首
101 加圧帯
102 圧力制御装置
103 エアーチューブ
104 コントローラ
105 ドライバー回路
106 制御部
107 脈動検出部
108 格納部
109 演算部
SV1 電磁バルブ
SV2 電磁バルブ
P エアーポンプ
PD 圧力センサ
OR オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の計測領域から生体関連情報を取得する取得部と、計測領域の近傍の生体を圧迫する圧迫部と、生体の状態に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する制御部と、圧迫部によって生体を圧迫した状態で取得部によって取得された生体関連情報を解析する解析部とを備える非侵襲生体計測装置。
【請求項2】
前記取得部が、生体の血管を含む計測領域を照明する光源部と、照明された計測領域から光学情報を検出する受光部とを含む請求項1記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、生体の状態に基づいて生体に加える圧迫力を設定する請求項1または2に記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項4】
前記圧迫部の圧迫力を検出する圧力センサを備え、前記制御部は圧力センサの検出値に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、圧力センサの検出値に基づいて生体に加える圧迫力を設定する請求項4記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項6】
前記圧力センサの検出値に基づいて脈動を検出する請求項5記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項7】
前記制御部は、脈動を検出可能な最大圧迫力と最小圧迫力との間に圧迫力を設定する請求項6記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、設定された圧迫力に基づいて生体に加える圧迫力を制御する請求項7記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項9】
前記生体関連情報が光学情報である請求項1〜8のいずれか1項に記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項10】
前記光学情報が画像信号である請求項9記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項11】
前記圧迫部が圧迫部材と、圧迫部材に空気圧を印加する空気圧源と、圧迫部材の空気圧を減ずるためのバルブとを備える請求項1〜10のいずれか1項に記載の非侵襲生体計測装置。
【請求項12】
生体の計測領域の近傍の圧迫部位を圧迫する工程と、生体の状態に基づいて前記圧迫力を制御する工程と、圧迫部位を圧迫した状態で生体の計測領域から生体関連情報を取得する工程と、取得された生体関連情報を解析する工程とを含む非侵襲生体計測方法。
【請求項13】
生体に密着して生体を圧迫する圧迫部と、圧迫部の圧迫力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出値に基づいて圧迫部の圧迫力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出値に基づいて生体に加える圧迫力を算出し、前記圧迫力に基づいて生体に加える圧迫力を制御する生体圧迫装置。
【請求項14】
前記検出値に基づいて生体に加える圧迫力を算出した後、一旦、生体に加える圧迫力を解放し、算出された圧迫力に基づいて、再度生体を圧迫する請求項13記載の生体圧迫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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