説明

非可視光線反射パターン印刷透明シート

【課題】広い読取角度を有する読取性能に優れた非可視光線反射パターン印刷透明シートを提供する。
【解決手段】基材と撥液層とからなる透明基板における撥液層の表面に非可視光線反射性の透明パターンが印刷されてなる非可視光線反射パターン印刷透明シートであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含有し、該非可視光線を反射する材料が非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を有する固定化されたコレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料であり、該撥液層がガラス転移温度70〜300℃の電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなるものである、非可視光線反射パターン印刷透明シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可視光線反射パターン印刷透明シートに関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック構造を有する液晶は、その液晶分子が透明基材の表面に対して法線の方向に、多層構造となる一定周期のらせん構造(コレステリック構造)を有し、これに起因する特徴的な光学的性質である、らせんの向きに対応し、かつらせんピッチに対応した波長の円偏光を反射するという波長選択反射性を有する。コレステリック構造を有する液晶は、このような波長選択反射性を有し、取り扱いが容易であり、そして加工性に優れていることから工業的に広く適用することができるとされている。
【0003】
このようなコレステリック構造を有する液晶の特性を用いたものとして、特許文献1には、コレステリック構造を有する液晶を用いたフィルムの製法が開示されている。このようなフィルムは、コレステリック構造が基板の表面に対して一様に法線の方向に向いており、一定の方向からの入射光に対する鏡面反射による反射光の輝度は非常に大きく優れているが、鏡面反射領域外では輝度が急激に低下してしまうという問題があった。
【0004】
ところで、近年、手書きした文字、絵及び記号などを、情報処理装置が扱うことができる電子データに変換する必要性が高まっており、特に、スキャナーなどの読取装置を経由せず、手書き情報をリアルタイムでコンピューターなどへ入力する方式への需要が高まっている。
例えば、ディスプレイ装置の表示面に直接手書きした内容を情報処理装置に入力することを可能にしたものであって、コンパクトで安価に製造することが可能な入力装置が望まれている。
【0005】
このような要求を満たす透明シートとして、例えば、特許文献2には、ディスプレイ装置の前面又は前方に装着される透明シートであって、入力用電子ペンなどによる入力軌跡の位置を示すための位置情報を提供可能なマークを所定波長の光を照射されて当該入力軌跡読取手段に読み取り可能な光を発光するインキを用いて印刷したものが開示されている。しかしながら、特許文献2には、そのような透明シートを具現化するインキの種類などは記載されておらず、透明シートのアイデア又は願望が記載されているに過ぎず、具体的な透明シートの例示はない。
また、特許文献3には、赤外線領域を反射する特殊インキを印刷した透明部材を用いた座標入力装置が開示されているが、特許文献3にも、そのような装置を具現化するインキの種類などは記載されておらず、アイデア又は願望が記載されているに過ぎず、具体的な透明シートの例示はない。
【0006】
そこで、本発明者らは、印刷インキとして、架橋固化したコレステリック液晶を用い、該コレステリック液晶層の選択反射波長を赤外線領域に設定することにより、可視光線では透明で、かつ赤外線にてペンの描画軌跡入力が可能な座標入力シートを発明し、これを特許出願した(特願2006−150121、特願2006−269220)。しかしながら、さらに鋭意検討の結果、新たな課題として、一般にコレステリック液晶層の下層には液晶を配向するための配向層があり、その配向層にラビング処理などの配向処理を施すことによって、コレステリック液晶は綺麗ならせんを描いて、基材平面に対してらせん軸が垂直になるように整列して配向する。ここで、らせん軸が基材平面に亙って垂直に揃っている(すなわち多層膜構造の各膜面が平行平面群になる)と、ペンで読取る場合には、この種の入力ペンは再帰反射成分のみを検知可能な為、0°(垂直)方向の読取のみとなってしまうため、入力ペンが少し傾斜すると検知の感度は激減することがわかった。そしてそのようなペンで読取を行う場合、使用する側は様々なペンの持ち方が想定されるため、広い読取角度が要求される。
【特許文献1】特開平6−186534号公報
【特許文献2】特開平2003−256137号公報
【特許文献3】特開平2001−243006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、広い読取角度を有する読取性能に優れた非可視光線反射パターン印刷透明シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、コレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料が印刷されてなる透明パターンの下に撥液性を有する配向層(以下、撥液層という。)を設け、該撥液層が所定のガラス転移温度を有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものとすることで、前記の目的を達成することを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
【0009】
1.基材と撥液層とからなる透明基板における撥液層の表面に非可視光線反射性の透明パターンが印刷されてなる非可視光線反射パターン印刷透明シートであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含有し、該非可視光線を反射する材料が非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を有する固定化されたコレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料であり、該撥液層がガラス転移温度70〜300℃の電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなるものである、非可視光線反射パターン印刷透明シート。
2.透明パターンの上に、さらに透明化層を有する前記1に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
3.画像表示可能なディスプレイ装置の前面に対向して装着される前記1又は2に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広い読取角度を有する読取性能に優れた非可視光線反射パターン印刷透明シートを提供することができる。本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、特にディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに好適に使用することができ、作業スペースを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シート1(以下、透明シートともいう。)は、図1及び2に示すように、基材21と撥液層22とが積層してなる透明基板2の撥液層22上に、必要に応じて透明化層4が積層し、撥液層22又は透明化層4の表面上に、非可視光線反射性の透明パターン3が印刷されてなるシートである。そして、透明パターン3を形成する透明インキは、非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を持つ固定化されたコレステリック構造を有する液晶材料を含有している。
なお、本発明における非可視光線としては、赤外線又は紫外線が好ましい。赤外線としては、800〜2500nmの近赤外領域の光が好ましく、紫外線としては、190〜380nmの近紫外領域の光が好ましい。
【0012】
[コレステリック構造を有する液晶]
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートには、非可視光線反射材料としてコレステリック構造を有する液晶が用いられる。コレステリック(カイラルネマチック)構造を有する液晶は、その液晶分子が透明基材の表面に対して法線の方向(下記の光の入射角θ=0°)に、多層構造となる一定周期のらせん構造(コレステリック構造)を有し、これに起因する特徴的な光学的性質を発現する。そのコレステリック構造の特徴は、らせんの向きに対応し、かつらせんピッチに対応した波長の円偏光を反射するという波長選択反射性を有することである。選択反射波長λ(ピーク波長λnm)は、一般に次式で与えられる。
λ=p・n・cosθ
p:コレステリック液晶のらせんピッチ(nm)
n:液晶のらせん軸に直交する面内の平均屈折率
θ:光の入射角(面の法線からの角度)
また、該選択反射波長λ(ピーク波長λ)の帯域幅Δλ(nm)は、一般に次式で与えられる。
λ=p・Δn・cosθ
p:コレステリック液晶のらせんピッチ(nm)
Δn:液晶のらせん軸に直交する面内の複屈折率
θ:光の入射角(面の法線からの角度)
コレステリック構造を有する液晶は、このような選択反射性能を有し、取り扱いが容易であり、そして加工性に優れていることから工業的に広く適用することができるとされている。しかし、選択反射波長λに関する上記の式から、コレステリック構造を有する液晶は入射角が増加すると反射される光の波長が減少するため、反射波長が所定の波長から逸脱する、すなわち読取角度が制限されることがわかる。
【0013】
コレステリック構造の1ピッチとは、細長い液晶分子がらせんを描いて360°回転する軸の長さであるが、実際に断面を観察すると、180°回転するごとに繰り返しの層構造が見える。したがって、断面を観察したときに見える見掛けの層間ピッチは、液晶のらせんピッチの1/2であり、例えば、断面観察したときに見える見掛けの層間ピッチが250nmであれば、液晶のピッチは500nmとなる。
なお、円偏光を入射した場合、樹脂、ガラスなどの一般に基板として用いられる材料からなる透明基板については、表面で反射する光の円偏光成分の回転方向は反転する。一方、コレステリック液晶の表面においては、表面で反射する光の円偏光成分の回転方向はそのままで不変である。よって、その性質を利用すれば、円偏光フィルターなどと組み合わせることにより、非可視光線反射性透明パターンからの反射光とその背景光(パターン部以外からの反射光)のSN比を改善することが可能である。
【0014】
上記のように、通常のコレステリック液晶の塗膜においては、該コレステリック構造のらせん軸は、実質上、基板の法線方向に一様に向いている、言い換えると、該コレステリック構造がなすBragg反射面は平行平面群をなしている。その場合、特定の一入射角に対しては特定の一反射角のみとなるため、書込み時の入力端末(入力ペン)の傾きに応じて、入力端末に戻る光量は増減し、結局、読取角度(許容できる入力端末の傾斜角)は狭くなる。
一方、本発明の透明シートは、所定の撥液層を設けることで、25°程度までの広い読取角度が得られるものであり、その機構は以下のように説明される。本発明の透明シートに設けられる撥液層は、透明パターンを形成する非可視光線反射材料として固定化されたコレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料の液滴を撥く性質を有する。この性質により、図1及び2に示すように、透明パターンの液滴は各々が略半球状に盛り上がり、その表面は大きく湾曲する。これらの湾曲は、液滴の乾燥及び架橋硬化により固定化され、透明パターンは湾曲部を有する多層構造を含むことになる。この湾曲部の形成により、特定の一入射角の入射光線に対して、複数の反射角の反射光線を生じる特性を有するので、書込み時の入力端末(入力ペン)がある範囲内で傾斜しても、入力端末にいずれかの光線が入射すれば、透明パターンの検知が可能となる。この特性により、本発明の透明シートは、入力端末に戻る光量の増減の変動は少なくなり、かつ光量もある角度の範囲内で一定量以上に保つことが可能となり、0〜25°と広い読取角度(許容できる入力端末の傾斜角)を有することができる。
【0015】
[透明基板2:撥液層22]
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートにおける透明基板2は、基材21と撥液層22とからなる。
透明基板2における撥液層22は、ガラス転移温度70〜300℃、好ましくは75〜300℃の電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなり、その厚さは0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmの層である。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させることができるエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する電離放射線硬化性樹脂、その他の必要に応じて添加される成分、及び各種添加剤からなる組成物である。なお明細書中においては、例えば電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂が電子線硬化性樹脂である場合は、これを電子線硬化性樹脂組成物という。
【0016】
電離放射線硬化性樹脂としては、種々の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーが好適に用いられる。反応性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つモノマーが挙げられ、例えば多官能性(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく挙げられ、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。また、反応性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーが好ましく挙げられ、なかでもラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。
これらの反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーの官能基数は、複数であれば特に制限はないが、広い読取角度を得る観点から、2〜10が好ましく、3〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。
【0017】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、前記の多官能性(メタ)アクリレートとともに、単官能性(メタ)アクリレートを、粘度を低下させるなどの目的で、効果を損なわない範囲で含有することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などのオリゴマーが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0020】
さらに、(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどが挙げられる。
【0021】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、該紫外線硬化性樹脂組成物は、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度含有することが好ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン系、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類が挙げられる。
また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、光増感剤としては、例えば、p−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などが挙げられる。
【0022】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、広い読取角度を得る観点から、レベリング剤(撥液性物質)を好ましく含有することができる。これにより、撥液層の撥液性が向上し、透明パターンの液滴をはじく傾向となり、該液滴は著しい湾曲部を有することになるので、より広い読取角度を得ることができる。
レベリング剤としては、透明パターンを形成するインキをはじくものであれば、特に限定されず、例えばシリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル系、チタネート系などの種々の化合物を用いることができる。なかでも、固定化されたコレステリック構造を形成する液晶材料のインキをはじくためには、シリコーン系、アクリル系の化合物が好ましく、特にアクリル酸共重合物系レベリング剤が好ましい。このようなレベリング剤としては、例えば、アクリル系の化合物として「BYK−361(商標名)」,「BYK−354(商標名)」:いずれもビックケミー社製、シリコーン系の化合物として「BYK−300(商標名)」:ビックケミー社製のような市販品を用いることができる。
レベリング剤の含有量は、所望する読取角度に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整すれば良いが、電離放射線硬化性樹脂組成物全量に対して0.01〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%がより好ましく、0.025〜0.075質量%がさらに好ましい。
【0023】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、広い読取角度を得る観点から、さらに微粒子を好ましく含有することができる。これにより、撥液層上に形成される液晶のコレステリック構造のBragg反射面が、適度に凹凸や褶曲を形成するので、より広い読取角度を得ることができる。
微粒子としては、通常用いられるものを特に制限なく適量添加することができるが、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、硝子、炭酸カルシウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの透明な粒子が挙げられる。粒子形状は、球、回転楕円体、多面体、截頭多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。なかでも、透明性が高く、球状の粒子を得やすい点で、α−アルミナ及びシリカが好ましく、球状のものが特に好ましい。微粒子の粒径は、50nm〜10μm程度であり、好ましくは50nm〜5μmである。
また、微粒子の含有量は、所望する読取角度に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整すれば良いが、電離放射線硬化性樹脂組成物全量に対して1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0024】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、本発明における透明パターンの非可視光線反射機能、モアレ防止効果、及び透明性を妨げない範囲で、必要に応じて、例えば、塗液やインキにおける公知の各種添加剤を適宜含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤などの光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、界面活性剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0025】
[撥液層22の形成]
撥液層22の形成においては、まず電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて添加されるレベリング剤、微粒子、及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合して電離放射線硬化性樹脂組成物を調製する。この電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成することができる粘度であればよく、特に制限はないが、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどの非水溶性有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒、水、又はこれらの混合溶剤などが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物中の溶媒の量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度に応じて適宜選定すればよいが、通常電離放射線硬化性樹脂組成物が65〜85質量%(固形分基準)となるような量である。
【0026】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、基材21の表面に、硬化後の厚さが0.1〜10μm程度、薄膜を形成でき、安価であるという観点から好ましくは0.1〜5μmとになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工して、未硬化樹脂層を形成させる。
【0027】
このようにして形成された未硬化樹脂層は、必要に応じて加熱乾燥した後に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して硬化させて、撥液層を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定することができるが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
【0028】
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0029】
[透明基板2:基材21]
透明基板2における基材21は、可視光を透過する材料(波長380nm〜780nmにおいて平均透過率が60%以上、好ましくは80%程度以上)であり、ドットパターンに比べて読み取りに使用される赤外線の反射率が十分低いものでれば特に限定されないが、光学的不具合の少ない材料で形成されたものが好ましい。いわゆるフィルム、シート、あるいは板の形態のものが適宜用いられる。また、平坦なもののほか、ディスプレイ表面の湾曲面に合わせるように曲面形状であっても良い。透明基材の材料としては、例えば、ガラスやTAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリオレフィンなどが好適に用いられる。
基材21の厚みは20〜100μm、好ましくは30〜80μmの範囲から、材料、要求性能、及び使用形態に応じて適宜選定する。また、基材21の厚みが上記範囲内にあれば、基材21が液晶、及びカイラル剤などを含むコーティング液を塗工する際にかかる張力によって破断することない。
【0030】
基材21として、TACフィルムなどの高分子フィルムなどのような溶媒に溶解又は膨潤しやすい材料を用いる場合には、透明パターン印刷時に使用するコーティング液中の溶媒で基板が侵されないように、基板上にバリア層を設けてもよい。例えば、PVA(ポリビニルアルコール)やHEC(ヒドロキシエチルセルロース)などの水溶性物質をバリア層として用いれば良い。
【0031】
また、広い読取角度を得る目的で、基板21の表面上(撥液層22が設けられる側)に凹凸層を好ましく設けることができる。この凹凸層の形成方法としては、基板の表面に凹凸が形成できれば特に制限はないが、ドライプロセス及びウェットプロセスを好ましく用いることができる。
【0032】
ドライプロセスとしては、エンボス版を用いた熱プレスにより表面に微小凹凸を形成させる方法、サンドブラスト法により、表面に微小凹凸を形成させる方法などがある。ウェットプロセスとしては、例えばアクリル樹脂、ジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びシリコーン系樹脂などの硬化性樹脂中に、通常平均粒子径が30μm以下、好ましくは2〜15μm程度のシリカ粒子を、樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度分散してなる硬化性組成物をグラビアコート、リバースロールコート、ダイコートなどで、乾燥後の厚さが5〜30μm程度となるように、塗布乾燥し、必要に応じて熱、あるいは紫外線、電子線などの電離放射線の照射で硬化させる方法などがある。
【0033】
また、ウェットプロセスとして、電離放射線硬化性樹脂と、所望により光重合開始剤を含む塗工液を、凹凸を有する版胴へ塗布し、この塗膜とPET系基材フィルムを接触させた状態で電離放射線を照射して硬化させたのち、該版胴を剥離し、PET系基材フィルム表面に凹凸を転写する方法、あるいは凹凸を有する賦型フィルムへ前記塗工液を塗布し、この塗膜とPET系基材フィルムを接触させた状態で電離放射線を照射して硬化させたのち、該賦型フィルムを剥離し、PET系基材フィルム表面に凹凸を転写する方法なども用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、前述した撥液層に用いられるものと同様のものを好ましく用いることができる。
【0034】
[透明パターン3:透明インキ]
本発明における非可視光線反射性の透明パターン3は、固定化されたコレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料を含有する透明インキにより形成される。
なお、一般に「液晶」は、狭義には流動性を有する状態のものを指すが、本願発明の明細書中においては、流動性を有する液晶材料を架橋、冷却などの手段により、液晶の持つ光学特性、屈折率、異方性などの所望の性能を維持する状態で固化させ、非流動状態としたものも「液晶」と呼称することにする。
以下、透明インキについて、説明する。
【0035】
本発明における透明パターンを構成する非可視光線反射材料は、コレステリック規則性を有するコレステリック液晶相を呈する液晶材料である。
コレステリック液晶相を呈する(発現する)液晶材料としては、重合性のネマチック液晶に重合性のカイラル剤を混合した重合性のカイラルネマチック液晶材料(重合性モノマー又は重合性オリゴマー)、又は高分子コレステリック液晶材料を好ましく使用することができる。なかでも、架橋可能な官能基を有する重合性モノマー又は重合性オリゴマーを用いることが好ましく、重合性官能基としてアクリレート構造を有しているとさらに好ましい。本発明の透明シートをディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力するような用途に適用する場合には、透明パターンを形成した後は、流動性が発現しないように液晶材料を固定化させる必要があるからである。
【0036】
また、液晶材料としては、赤外線領域の少なくとも一部の波長において高反射率(通常5〜50%程度)を有するものであれば、本来、可視光線領域の波長において必ずしも高い透過性は要求しない。それは、仮に前記のコレステリック構造を呈する液晶材料が完全不透明であったとしても当該液晶材料の非形成部(余白部)の面積を適度に大きく取り、そこからの透過光を利用すれば、当該透明パターン全体としては、所望の透明性を得ることが可能だからである。ただし、当該液晶材料自体の可視光線透過率は高い方が好ましいことは勿論である。そして、通常、このようなコレステリック構造を呈する液晶材料は、高反射波長域を赤外線領域に持っていくと、可視光線領域においては、数μm程度の厚みで70%程度以上の可視光線透過率を得る。一方、赤外線領域においては5〜50%程度の高反射率を得ることが一般的である。また、重合性液晶材料がコレステリック相を呈する温度範囲については特に制限はなく、コレステリック相の状態で架橋により固定化できることが好ましく、コレステリック相を呈する温度が30〜140℃の範囲にある材料は、パターン印刷時の乾燥工程と、液晶の相転移を同時に行えるため好ましい。
【0037】
以上のような材料であれば、液晶分子をコレステリック液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、透明シートとしての取り扱いが容易な、常温で安定したパターンを形成することができる。
また、高いガラス転移点を有し、加熱後冷却することにより常温でガラス状態に固化することが可能な液晶ポリマー(高分子コレステリック液晶)を好ましく用いることもできる。これらの材料も、液晶分子を、コレステリック規則性を有した液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、光学シートとしての取り扱いが容易な、常温で安定したパターンを形成することができるからである。
【0038】
架橋可能な重合性モノマーとしては、特開平7−258638号公報、特表平11−513019号公報、特表平9−506088号公報及び特表平10−5088822号公報に開示されているような、液晶性モノマー及びカイラル化合物の混合物を用いることができる。例えば、ネマチック液晶相を呈する液晶性モノマーにカイラル剤を添加することによりカイラルネマチック液晶(コレステリック液晶)が得られる。なお、コレステリック液晶の製膜法は、特開2001−5684号公報や特開2001−110045号公報にも記載されている。
【0039】
本発明で用いることができるネマチック液晶分子(液晶性モノマー)としては、例えば下記式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。ここに例示した化合物はアクリレート構造を有し、紫外線照射などにより重合させることが可能である。
【0040】
【化1】

【0041】
【化2】

【0042】
[化合物(11)において、X1は2〜5(整数)である。]
【0043】
また、前記架橋可能な重合性オリゴマーとしては、特開昭57−165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物などを用いることができる。
さらに、前記液晶ポリマーとしては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9−133810号公報に開示されているような液晶性高分子、特開平11−293252号公報に開示されているような液晶性高分子などを用いることができる。
【0044】
本発明で用いられる透明インキに含まれるカイラル剤は、不斉炭素原子を有し、ネマチック液晶と混合することでカイラルネマチック相を形成する材料であって、重合性を有するものであれば特に制限はないが、式(12)に例示するような、アクリレート構造を有する材料は、紫外線照射により重合可能であるため好ましい。
【0045】
【化3】

【0046】
[X2は2〜5(整数)である。]
【0047】
本発明における透明パターンの非可視光線を反射する性質は、前記の通り、コレステリック構造を持った液晶材料の波長選択反射性(X線回折におけるBragg反射と同様な原理)を利用したものであり、その選択反射ピーク波長(Bragg反射条件を満たす波長)は、パターン内に含まれるコレステリック構造のピッチ長で決定されるが、液晶材料としてネマチック液晶とカイラル剤を用いる場合には、カイラル剤の添加量を調整することによりピッチ長を制御できる。透明シートの用途に応じて異なるが、例えば波長800〜950nmの赤外線領域の選択反射ピーク波長を得るためのカイラル剤添加量は、使用する液晶の種類やカイラル剤の種類により異なり、例えば式(11)の液晶および式(12)のカイラル剤を用いる場合には、液晶100質量部に対しカイラル剤3質量部程度の添加で赤外領域に反射ピークを持つコレステリック相が形成される。液晶材料に高分子コレステリック液晶を用いる場合は、目的とするピッチ長を有するポリマー材料を選べばよい。
【0048】
このようにして得られる透明パターンの選択反射ピーク波長は、カイラル剤の添加量などを調整することにより、透明シートの用途に応じて所望の範囲とすることが可能である。本発明の透明シートの用途、例えば、手書き入力データを処理する情報処理装置に接続されたものなどのディスプレイ装置などにおいては、透明パターンの選択反射ピーク波長は、800〜950nmとすることが好ましい。
【0049】
前述した液晶材料を含む透明インキで透明パターンを印刷する際、透明インキは、溶媒を含有することが好ましい。透明インキに含有される反応性モノマー、反応性オリゴマー、及びカイラル剤などの液晶材料を溶媒に溶解することで、透明インキの塗工性は向上する。
この溶媒としては、材料に対し十分な溶解性を持つ限り特に限定されず公知のものを用いれば良く、例えば、アノン(シクロヘキサノン)、シクロペンタノン、トルエン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチルなどの一般的な溶媒や、それらの混合溶媒が挙げられる。
透明インキ中の溶媒の含有量は、通常20〜80質量%であり、塗工性の観点から30〜70質量%が好ましい。
【0050】
透明インキは、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びシリコーン系樹脂などの硬化性樹脂や、電離放射線硬化性樹脂が挙げられ、なかでも電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、前記の撥液層に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0051】
また、透明インキには、広い読取角度及び塗工性を得る目的で、レベリング剤及び微粒子などを配合することができる。レベリング剤及び微粒子としては、液晶の配向を必要以上に(液晶材料のらせん軸に所望の角度(分布)を付与する以上に)乱さないものであれば特に制限なく用いることができ、前記の撥液層に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0052】
[透明パターン3]
本発明における透明パターン3は、センサーを備えた入力端末にて読み取った部分的なパターンから、シート面上における入力端末の位置情報を導き出すことができるよう設定されたものである。
そのようなパターンについては特許文献1及び2にも幾つか例示されており、例えばドットの形状を複数設定し、平面内において、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したようなもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたものなどが挙げられる。特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用するドットパターンによる方法が挙げられる。この方法は、ドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利であり、より広い読取角度を得る観点からも好適である。また、より広い読取角度を得る観点から、透明インキにより透明パターンを形成後、エンボス板などを用いて機械的に凹凸処理を施すこともできる。凹凸処理は、通常の手段によって行うことができる。
【0053】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートにおいて、入力端末に備えられた赤外線センサーにより反射パターンを検知するには、選択反射ピーク波長における赤外線反射率が大きいほうが好ましい。通常は、選択反射ピーク波長において反射率5〜50%程度であり、20%以上であると好ましい。なお、コレステリック構造による反射は、コレステリックらせんと同じ向きの円偏光のみを反射する性質があるため、最大でも50%程度にしか到達しない。
コレステリック構造による反射の場合、一般に印刷厚みが厚いほど反射強度が大きくなるが、厚すぎると液晶の配向性の不必要な乱れや透明性の低下、乾燥負荷増大を招くため、非可視光線反射パターンの印刷厚みは1〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。コレステリック液晶構造のらせんピッチ数が10〜20ピッチ程度で、反射率は飽和状態になるとされているが、液晶組成と固化条件が決まれば、実際の製造上は、反射強度が飽和する膜厚を実験的に求め、反射率の最適化を図れば良い。なお、上記の範囲内の膜厚(又はピッチ数)であれば、印刷パターンの磨耗、損傷を防止することができ、製造原価の必要以上な高騰を抑えることができる。
【0054】
印刷パターンがドットパターンである場合、ドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、通常円盤状であるが、半球状や凹面状であってもよい。
本発明の透明シートにおいて、透明パターンの印刷方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インキジェット印刷法などが挙げられる。また、このようにして印刷された透明パターンの硬化は、例えば、重合性ネマチック液晶と重合性カイラル剤に公知の光重合開始剤などを添加し、紫外線を照射してラジカル重合させればよく、前記の撥液層と同様に行うことができる。
【0055】
[透明化層4]
本発明の透明シートは、図2に示すように透明基材2上に透明化層4が形成されていることが好ましい。透明化層4は、本発明の透明シートに、ペン型などの入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えうる強度を与えるため、また見た目を完全に透明化するために、透明パターンを形成する透明インキと屈折率の近い透明体で透明パターン同士の隙間を埋めるように覆うものである。また、透明化層4は、別の機能として、耐摩耗性、反射防止、すべり防止、帯電防止、防汚性、防眩性などの機能を加えて用いることができる。
【0056】
透明化層4は、図2に示すように、透明基材2上に透明パターン3とほぼ同じ厚さ、又は透明パターン3を覆う厚さであることが好ましい。透明基板2上に透明パターン3とほぼ同じ厚さで透明化層4が形成される場合、(透明パターン3の厚さ)−(透明化層4の厚さ)が0.15μm以下で、透明パターン間が埋められていることが好ましい。また、透明パターン3を覆う厚さで透明化層4が形成されている場合も、透明化層4の表面の凹凸段差は0.15μm以下の平坦性を有することが好ましい。
このようにすることにより、モアレ(縞)を低減することができる。なお、モアレとは、ある程度の規則性がある繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。LCDなどの画像表示装置は、微細な発光ドットの配列により画像を表現しており、この場合のモアレは、ディスプレイの発光ドットの配列が前記ドットパターンと干渉することで発生する。
【0057】
透明化層4の材質としては、特に限定されず、樹脂や金属酸化物、ガラスなどの各種透明材料が使用可能であるが、特に塗工による層形成が可能という点で有機系樹脂、無機系樹脂などの透明樹脂層が好ましい。また、透明化層は、ハードコート層、粘着剤層、接着剤層、衝撃吸収層、各種フィルター層などの、透明化以外の機能を1つ以上併せ持ったものであってもよい。
【0058】
透明化層4に用いる樹脂としては、前述したようにドットパターンとの屈折率差が十分小さく、ドットパターンに比べて読み取りに使用される赤外線の反射率が十分低い、透明な樹脂であれば特に限定はなく、透明基板2や透明パターン3を形成する透明インキなどへの密着性などを勘案して公知の樹脂を適宜採用すればよい。具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられ、これらのなかでも、耐久性、耐溶剤性などの点から、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、さらには、電離放射線により短時間で架橋させることができる電離放射線硬化性樹脂が好ましい。この電離放射線硬化性樹脂は、透明パターンによる凹凸を埋め易いという点では、無溶剤又は無溶剤に近い状態で塗工形成できるため有利である。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられ、基板がTACの場合、熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂、硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤などの硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤などをさらに添加して使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂としては、前述した撥液層で用いられるものと同様の樹脂を用いることがきる。
【0060】
また、透明化層4には、適宜必要に応じて、樹脂に加え、例えば、塗液やインキにおける公知の各種添加剤や各種色素を添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散安定剤などが挙げられ、色素としては、例えば、外光反射防止用色素などのディスプレイ用フィルターに於いて公知の色素が挙げられる。
透明化層4は、前記樹脂に加え、通常は溶剤と、その他必要に応じ各種添加剤、色素などとを含む組成物を、塗液又はインキとして用いて、塗工法や印刷法などの公知の層形成法で形成することができる。具体的には、透明パターン3を印刷した透明基板2の該印刷面に対して、ロールコート、コンマコート、ダイコートなどの塗工法、又は、スクリーン印刷、グラビア印刷などの印刷法により形成すればよい。印刷法は任意形状での部分形成が容易であるが、塗工法でも間欠塗工で部分形成可能である。
【0061】
[その他の層]
本発明の透明シートにおける、透明パターン3又は透明化層4は、ペン型などの入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えられる強度を与えるために、さらにハードコート層を設けてもよい。ハードコート層の材質としては、特に限定されず、通常のシートやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、紫外線、電子線、熱などで架橋硬化したアクリル樹脂、珪素系樹脂などが代表的なものであり、ガラス転移温度が100℃以上であるアクリル樹脂が好ましい。
さらに、本発明の透明シートをディスプレイ装置に取り付ける場合、その視認性を確保するために、シート表面又は内部に反射防止膜などを設けても良い。反射防止膜の材質としては、特に限定されず、通常のディスプレイ用シートやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、フッ化マグネシウム、フッ素系樹脂などの低屈折率物質の薄膜と、酸化ジルコニウム、酸化チタニウムなどの高屈折率物質の薄膜とを該低屈折率の薄膜が最表面になるように積層した誘電体多層膜などが代表的なものである。
【0062】
[ディスプレイ装置への適用]
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、手書き入力データを処理する情報処理装置に接続されたものなどのディスプレイ装置に好ましく用いることができる。本発明の透明シート1をディスプレイ装置9に用いる場合の好ましい一態様は、図3に示される。
図3において、本発明の透明シート1は、画像表示可能なディスプレイ装置9の前面に対向して装着されている。ここで「ディスプレイ装置9の前面に対向して装着されている」とは、例えば、透明シート1がディスプレイ装置9の表面に直接接触して配置される場合や、粘着剤層又は接着剤層を介して接着される場合、さらには空隙を介して非接触の状態でディスプレイ装置9の前方に配置される場合を含む概念である。該透明パターン3を構成する透明インキは、非可視光線反射材料を含み、非可視光線の照射及び検知が可能な入力端末6により非可視光線の反射パターンを読み取って、透明シート1上における入力端末の位置情報(位置座標)を提供可能とする。そして、前記非可視光線反射材料は、非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を持つ、固定化されたコレステリック構造を有する液晶材料を含む液晶シートを断裁又は粉砕したものである。本発明の透明シートは、このような非可視光線反射材料を用いることで、0〜25°という広い読取角度を有するものである。
【0063】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートにおいて、該パターンは、センサーを備えた入力端末にて読み取った部分的なパターンから、シート面上における入力端末の位置情報を導き出すことができるよう設定されたものである。
そのようなパターンについては特許文献2及び3にも幾つか例示されており、例えばドットの形状を複数設定し、平面内において、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したようなもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたものなどが挙げられる。特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用するドットパターンによる方法が挙げられる。この方法はドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利であり、より広い読取角度を得る観点からも好適である。また、より広い読取角度を得る観点から、透明インキにより透明パターンを形成後、エンボス板などを用いて機械的に凹凸処理を施すこともできる。凹凸処理は、通常の手段によって行うことができる。
【0064】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートにおいて、入力端末に備えられた非可視光線センサーにより反射パターンを検知するには、選択反射ピーク波長における非可視光線反射率が大きいほうが好ましい。通常は、選択反射ピーク波長において反射率5〜50%程度であり、20%以上であると好ましい。なお、コレステリック構造による反射は、コレステリックらせんと同じ向きの円偏光のみを反射する性質があるため、最大でも50%程度にしか到達しない。
コレステリック構造による反射の場合、一般に印刷厚みが厚いほど反射強度が大きくなるが、厚すぎると液晶の配向性の不必要な乱れや透明性の低下、乾燥負荷増大を招くため、非可視光線反射パターンの印刷厚みは通常1〜20μm程度であり、好ましくは3〜15μm程度である。コレステリック液晶構造のらせんピッチ数が10〜20ピッチ程度で、反射率は飽和状態になるとされているが、液晶組成と固化条件が決まれば、実際の製造上は、反射強度が飽和する膜厚を実験的に求め、反射率の最適化を図れば良い。なお、上記の範囲内の膜厚(又はピッチ数)であれば、印刷パターンの磨耗、損傷を防止することができ、製造原価の必要以上な高騰を抑えることができる。
印刷パターンがドットパターンである場合、ドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、通常円盤状であるが、半球状や凹面状であっても良い。
【0065】
[ディスプレイ装置]
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートを好適に装着しうるディスプレイ装置は、手書き入力データを処理する情報処理装置に接続されたものであってもよく、独立したものであっても良いが、前者は手書き入力時の軌跡を画面上に表示することができ直感的な入力が可能であるため好ましい。
ここで手書き入力情報を扱う情報処理装置としては、携帯電話、PDAなどの各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などが例示できる。
【0066】
本発明で用いることができる入力端末6としては、図3に示すように、非可視光線iを発し、前記パターンの反射光rを検知できるものであれば特に限定されず公知のセンサーを用いれば良く、例えば、ペン型の入力端末6が読取データ処理装置7も具備する例として、特開2003−256137号公報に開示されている、インキや黒鉛などを備えないペン先、非可視光線照射部を備えたCMOSカメラ、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術などを利用したワイヤレストランシーバなどの通信インタフェース、及びバッテリなどを内蔵しているものなどが挙げられる。
ペン型入力端末6の動作としては、ペン先を平面視が図4に示される透明パターン3(ドットパターン)が印刷された透明シート1の前面に接触させてなぞるように描画すると、ペン型入力端末6がペン先に加わった筆圧を検知し、CMOSカメラが作動して、ペン先近傍の所定範囲を非可視光線照射部から発する所定波長の非可視光線で照射するとともに、パターンを撮像する(パターンの撮像は、例えば、1秒間に数10から100回程度行われる)。ペン型入力端末6が読取データ処理装置7を具備する場合には、撮像したパターンをプロセッサで解析することにより手書き時のペン先の移動に伴う入力軌跡を数値化・データ化して入力軌跡データを生成し、その入力軌跡データを情報処理装置へ送信する。
なお、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術などを利用したワイヤレストランシーバなどの通信インタフェース、及びバッテリなどの部材は、図3に示すように、読取データ処理装置7として、ペン型入力端末6の外部に有っても良い。この場合には、ペン型入力端末6は読取データ処理装置7にコード8で接続されていても、電波、非可視光線などを用い無線で読取データを送信しても良い。
この他、入力端末6は、特開2001−243006号公報に記載された読取器のようなものであっても良い。
【0067】
本発明において適用できる読取データ処理装置7は、入力端末6で読み取った連続的な撮像データから位置情報を算出し、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供する機能を有するものであれば特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリなどの部材を具備していれば良い。
また、読取データ処理装置7は、特開2003−256137号公報のように入力端末6に内蔵されていても良く、また、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に内蔵されていても良い。また、読取データ処理装置7は、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に無線で位置情報を送信しても良く、コードなどで接続された有線接続で送信しても良い。
ディスプレイ装置5に接続された情報処理装置は、読取データ処理装置7から送信されてきた軌跡情報に基づき、ディスプレイ装置5に表示する画像を順次更新することによって、入力端末6で手書き入力した軌跡を、紙の上にペンで書いたかのようにディスプレイ装置上にリアルタイムで(又は必要に応じて適宜時間を遅らせて)表示することができる。
【0068】
このように、本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、既存のディスプレイ装置にそのまま装着することができ、ディスプレイ装置に組み込むタイプの静電式、感圧式などの位置入力装置よりも容易に作製することができ、軽量化、コスト低減、及び大型化も容易に可能となる。また、印刷された位置情報を提供可能なパターンが薄くなったり、傷が付いたりするなどして、位置情報提供の機能が低減した場合であっても、透明シートのみを交換すれば良いので、使用者にとって扱いやすいものとなる。
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、液晶ディスプレイに装着すれば、液晶保護シートとしても使用可能なものとなる。
【0069】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、ディスプレイ装置の前面に対向して着脱可能に装着するようにすることもできる。このようにすれば、一つのディスプレイ装置のみならず、別のディスプレイ装置にも装着することができるようになる。また、ディスプレイ装置側には装着のための加工を施さないようにして透明シートを装着することができるようにするために、透明シート自体が、ディスプレイ装置に対する装着手段を備えていると好ましい。なお、この装着手段とは、透明シートと一体に設けられたものであっても、別体に設けられたものであっても良い。
このような装着手段として、例えばバックル状のものをディスプレイ装置のコーナ部に引っ掛けるようなものや、ディスプレイ装置の端部を挟み込むようなものなどが挙げられるが、簡単で好適な具体的態様としては、ディスプレイ装置の前面に装着するような場合において、ディスプレイ装置に接触する接触面側に設けられ、ディスプレイ装置に貼り付けるための接着性又は粘着性を有する貼着具が挙げられる。また、貼着具としては、透明シートに一体的に取り付けられた接着性又は粘着性を有するものや、接触面に直接塗装された接着剤や粘着剤などをも含むものが挙げられる。
【0070】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、その製造の利便性を向上するために、透明シートを、切り離し可能なものとすると好ましい。具体的には、鋏などの切断具又は専用の切断具などで切り離せるようなものや、ミシン目、ハーフカット(包装材料の分野で多用される手段であり、厚み方向に全厚みに満たない程度の深さの切り目を入れる手法。)などを入れることにより手で切り離すことができるようなものなどが挙げられる。このようなものであれば、使用者側で、各使用者所有のディスプレイ装置大きさに対応して切断することができるようになるため、製造者側は、数種の所定のサイズに設定したシートを製造すれば良いからである。さらに、汎用のディスプレイ装置の規格サイズにミシン目を入れるようにしても良い。
また、このような使い方が可能であれば、位置情報を提供するパターンが印刷された一のシートを分割し、それぞれのシートが異なる座標範囲を示すようにすることが可能になる。このようなシートを用いる場合、例えば隣接したディスプレイ装置に対して連続した座標を示すシートを適用すれば、入力データに連続性を与えることができる。また、1つの入力装置に対し異なる座標範囲の透明シートを複数切り替えて使用することで、それぞれの透明シートに対し異なる意味を付与することができる。
【実施例】
【0071】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)透明インキの調整
両末端に重合可能なアクリレート基、中央部にメソゲン基、前記アクリレート基との間にスペーサーを有し、ネマチック−アイソトロピック転移温度が110℃付近であるモノマー(前記化合物(9)で示される分子構造を有するもの)100質量部と、両末端に重合可能なアクリレート基を有するカイラル剤(前記化学式(12)で示される分子構造を有するもの)3.3質量部とをシクロヘキサノンに溶解させたシクロヘキサノン溶液を調製した。なお、このシクロペンタノン溶液には、4質量部の光重合開始剤(「ルシリンTPO(商品名)」:ビーエーエスエフジャパン株式会社製)と、0.054質量部のレベリング剤(「BYK−361N(商品名)」:ビッグケミー株式会社製)を添加した。
【0072】
(2)電離放射線硬化性樹脂組成物の調整(撥液層)
MEK(メチルエチルケトン)と酢酸ブチルとを1:1の割合で混合したものを溶媒として、2官能を有するイソシアヌレートジアクリレート(「M−215(商品名)」:東亞合成株式会社製、ガラス転移温度:160℃)100質量部、レベリング剤(「BYK−361N(商品名)」:ビッグケミー株式会社製)0.06質量部、及び重合開始剤(「イルガキュア184(商品名)」:チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)4質量部を溶媒に50質量%(固形分基準)となるように添加混合して、撥液層の形成に用いる電離放射線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0073】
(3)透明シートの作製
125μm厚の透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に、上記(2)で調整した電離放射線硬化性樹脂組成物を厚み1μmとなるようにバーコーターで塗工した後、紫外線を照射して撥液層を形成した。次いで、撥液層上に上記(1)で調整した透明インキをグラビア印刷にて6〜8μmの厚みでドットパターンを塗工した後、加熱乾燥させると同時に液晶のコレステリック相転移を進行させた。これに紫外線を照射し、透明インキ中の光重合開始剤から発生するラジカルによってイソシアヌレートジアクリレートを架橋してポリマー化させて、透明シートを作製した。
得られた透明シートの透明基板と直交する断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、印刷ドットの該断面形状は略半円状となっており、コレステリック液晶のらせんピッチの半周期に対応する多層構造の各膜面が、該略円形の表面輪郭形状に沿って、同様に湾曲していることが確認された(図5及び6参照)。また、得られた透明シートに赤外線を照射して、その反射光を画像として検知したところ、読取角度は15°であった。
【0074】
実施例2〜6
実施例1の透明インキ中のイソシアヌレートジアクリレートを、表1に示す液晶材料とした以外は、実施例1と同様にして透明シートを作製した。各実施例で得られた透明シートの読取角度は表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
比較例1
MEK(メチルエチルケトン)と酢酸ブチルとを1:1の割合で混合したものを溶媒として、非結晶性ポリエステル樹脂(「バイロン200(商品名)」:東洋紡株式会社、ガラス転移温度:67℃)100質量部、レベリング剤(「BYK−361N(商品名)」:ビッグケミー株式会社製)0.06質量部、及び重合開始剤(「イルガキュア184(商品名)」:チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)4質量部を溶媒に50質量%(固形分基準)となるように添加混合して、組成物を調製した。
125μm厚の透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に、得られた組成物を厚み1μmとなるようにバーコーターで塗工した後、加熱乾燥させることで、該組成物を基材上に固定化した。次いで、その上に上記(1)で調整した透明インキをグラビア印刷にて4μmの厚みでドットパターンを塗工した後、加熱乾燥して、これに紫外線を照射して硬化させてシートを得た。
得られたシートのドットは厚み4μmであったが、コレステリック液晶が全く配向しなかったため、赤外線を照射しても、その反射光を画像として検知することができなかった。
【0077】
比較例2
比較例1の非結晶性ポリエステル樹脂を、非結晶性ポリエステル樹脂(「バイロン220(商品名)」:東洋紡株式会社、ガラス転移温度:53℃)にかえた以外は、比較例1と同様にしてシートを作製した。
得られたシートにおいて、コレステリック液晶が全く配向しなかったため、赤外線を照射しても、その反射光を画像として検知することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートは、広い読取角度を有する読取性能に優れている。このため、ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに好適に使用することができ、実用性能が高く、携帯電話、PDAなどの各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などの種々の情報処理装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートの好ましい一実施態様を示す、透明基板に直交する面で切断した断面図である。
【図2】本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートの好ましい一実施態様を示す、透明基板に直交する面で切断した断面図である。
【図3】本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートを用いるシステム全体の概略図である。
【図4】本発明の非可視光線反射パターン印刷透明シートにおいてドットパターンが不規則に配列した例を示す要部拡大平面図である。
【図5】本発明の実施例の透明パターンの形状を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例のコレステリック液晶の繰り返しの層構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0080】
1:非可視光線反射パターン印刷透明シート(透明シート)
2:透明基板
21:基材
22:撥液層
3:透明パターン
4:透明化層
6:入力端末(ペン型)
7:読取データ処理装置
8:コード
9:ディスプレイ装置
11:液晶シート
12:透明基板
13:液晶層
i:非可視光線
r:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と撥液層とからなる透明基板における撥液層の表面に非可視光線反射性の透明パターンが印刷されてなる非可視光線反射パターン印刷透明シートであって、
該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含有し、
該非可視光線を反射する材料が非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を有する固定化されたコレステリック構造を有する液晶を含む液晶材料であり、
該撥液層がガラス転移温度70〜300℃の電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなるものである、
非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項2】
透明パターンがドットパターンである請求項1に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項3】
透明パターンの印刷厚さが1〜20μmである請求項1又は2に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項4】
電離放射線硬化性樹脂が反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項5】
電離放射線硬化性樹脂が(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系オリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項6】
(メタ)アクリレート系モノマーが3官能又は4官能である請求項5に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項7】
コレステリック構造を有する液晶が、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶からなる請求項1〜6のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項8】
ネマチック液晶及びカイラル剤がそれぞれ架橋可能な官能基を有し、これらを架橋させることによりコレステリック構造が固定化される請求項7に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項9】
ネマチック液晶及び/又はカイラル剤が、アクリレート構造を有する化合物である請求項8に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項10】
透明パターンの上に、さらに透明化層を有する請求項1〜9のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項11】
非可視光線が赤外線又は紫外線である請求項1〜10のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項12】
透明パターンが800nm〜950nmに選択反射ピーク波長を有する請求項1〜11のいずれかに記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。
【請求項13】
画像表示可能なディスプレイ装置の前面に対向して装着される請求項1〜12に記載の非可視光線反射パターン印刷透明シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28953(P2009−28953A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193387(P2007−193387)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】